子供たちから学ぶ・・科学としての科学教育実践編 - NPO法人 知的人材ネットワーク・あいんしゅたいん 知的人材の活用を通じて、科学技術の発展に寄与することを目的に設立されたNPO法人です。 https://www.jein.jp/activity-report/symposium/science-instruction.feed 2024-05-05T07:44:06+09:00 Joomla! - Open Source Content Management シンポジウム報告 その1 2010-12-12T19:52:43+09:00 2010-12-12T19:52:43+09:00 https://www.jein.jp/activity-report/symposium/science-instruction/422-report1.html JEin事務局 <div class="feed-description"><p>11月27日(土)13:00~17:30に行われた上記シンポジウムは、70名に届く方々にご参加いただき充実した議論をすることができました。また、交流会には、40名近い方々がご出席いただき、お互いに仲良くなり、新鮮で意欲的な大学院生、学生といった若い層と定年退職組の好奇心あふれるシルバーの層、そしてそれをつなぐ現役研究者や先生方、それに元気な女性陣など、みんながあちこちで議論の花を咲かせ、大変沢山のことを学びました。</p> <p class="feed-readmore"><a target="_blank" href ="/activity-report/symposium/science-instruction/422-report1.html">続きを読む...</a></p></div> <div class="feed-description"><p>11月27日(土)13:00~17:30に行われた上記シンポジウムは、70名に届く方々にご参加いただき充実した議論をすることができました。また、交流会には、40名近い方々がご出席いただき、お互いに仲良くなり、新鮮で意欲的な大学院生、学生といった若い層と定年退職組の好奇心あふれるシルバーの層、そしてそれをつなぐ現役研究者や先生方、それに元気な女性陣など、みんながあちこちで議論の花を咲かせ、大変沢山のことを学びました。</p> <p class="feed-readmore"><a target="_blank" href ="/activity-report/symposium/science-instruction/422-report1.html">続きを読む...</a></p></div> シンポジウム報告 その2 2010-12-12T20:17:49+09:00 2010-12-12T20:17:49+09:00 https://www.jein.jp/activity-report/symposium/science-instruction/421-report2.html JEin事務局 <div class="feed-description"><p>シンポジウムに出席された、あいんしゅたいん会員である日下和信さんからいただいたシンポジウムへのコメントを、ご本人の許可を得て、ここでご紹介させていただきます。<br />日下会員からは、「長く科学教育に関わってきた“授業屋として”一筆書かせていただきます。実際の実験教室は、ごくわずかしか見学しておりませんので、違った視点から書かせていただきます。」ということです。</p> <hr /> <p>先ずは、このシンポのタイトルから取り上げさせていただきましょう。<br /> <br />「子供たちから学ぶ・・科学としての科学教育実践編」。「子供達から学ぶ…」このタイトルがありきたりながら、実質が伴えば、凄い意味を持ってきます。幼児教育や初等教育では、ついつい「決まり文句としての子ども達から学ぶが闊歩しまして」、指導者側にフィードバックしない授業が横行するのですが、名誉教授先生もこの「親子実験教室」からあふれる好奇心で学んでいただけたようで、まことに慶賀なことでございます。それは、“まさに大人も子供も学べる実験教室になり得ていた”と言って良いわけです。ただ、この環境をこの後もずっと維持していくことは、そう簡単でないと思われるわけです。しかし、さすがに京都大学が関わる実験教室として、受講者(親子)の感想を取り、それを分析し、その結果をフィードバックされようという姿勢の中に、この試みの戦略性を発見いたしました。有りそうでなかなか見られない取り組みなのです。貴重な取り組みで、大いに期待したいところです。</p> <p>そして、“知らないことは、あっさりと知らないと表明される”姿勢に、とても誠実で信頼感を抱かせられます。まことに当節においては、貴重な心のバックボーンかと思われます。ありがとうございます。このプロジェクトに関わる人間全てが、この姿勢を共有したいものでございます。</p> <p>さらにタイトルから話題を引き出しますと、「科学としての…科学教育」という言葉がここで何故使われてきたかです。このタイトルに大いなる皮肉とその慧眼をたたえたいと思います。ちょっと考えてみてください、凄い感性と言いますか、従来の科学教育に対する「ほのかな疑問を持たれてきているのではないかと推測するのです」。“今の科学教育は、科学になってないぞ”、「科学教育の更なる科学化」を指向するという決意表明と考えるのは、勘ぐりすぎでしょうか。</p> <p>実は、このセンスは、「科学教育業界では少し異端気味の」私からすると、スゴイのです。良いとこ突いてるタイトルなのです。誰でも知っている単語ですが、「理科」と「科学」という言葉が、曖昧に使われてきた業界が「理科教育業界」で、ある時は「理科教育」といわれ、またある時は「科学教育」と言われてきました。そして、「遺伝子DNAの発見で学問が根本的に変わってきた生物学」を例外に、この業界の素地は、“残念ながら明治の百年前から、そう進歩していない”のです。</p> <p>理科教育では、何を教えるのか。科学教育では、そこをどう違えて教えるのか、こんな原則的な議論が為されないまま、極端に言えば、明治の頃の「授業項目を踏襲してきた」のです。即ち、“科学”としては、「何をこのように教えたときに、科学を教えたと言えるのだ」というメルクマールがハッキリとしていないのです。「はやぶさ」が無事帰ってきて科学トピックとしては、大いに盛り上がり、科学教育の土壌には、大きな刺激と肥料が与えられたでしょうが、「トピックは、教育サイドの位置付けでは“投げ込み教材”相当なのです」。とりわけ、科学知識は、体系性、順序性が大事ですから、一時間だけのトピックの紹介だけでは、大概の場合、体系性に触れないままになるでしょう。それは、一回だけの実験教室の場合にも言えることです。“投げ込み教材”を科学にするのは、よほどの力量ある教師でしかできないのです。(そうは言っても、日本の津々浦々で投げ込み教材の授業の花盛りなのです。科学の根本がないがしろになってしまっているためなのです)</p> <p>日本の理科教育・科学教育に関して、教材の選定及び改廃に関して、キチンと議論された結果が残されていません。文科省の内部で議論され、十年に一度という周期で、指導要領が改訂され、それに対応して指導内容が、要領に準拠して、教科書検定という通過儀礼を経て変わってきたと言うだけなのです。新しい指導要領が出ても、「前の指導要領のここが時代に合わなくなったとか、その他の理由なりは、表の議論にならないし、印刷されることもないのがこれまでの改訂作業でした」。思い返せば、昭和56年だったでしょうか、ソ連がスプートニクを米国に先立って打ち上げて、米国はスプートニクショックで「科学教育の大改革運動を展開しました」。その成果が、物理では、「PSSC物理」でしたね。この頃、日本にも科学教育の改革運動が盛り上がりかけたのですが、如何せん、文部省の専決事項だと言わんばかりに秘密裏に進められる「指導要領の改訂」でその熱は、やり場を失ったことが思い出されます。</p> <p>このような状況を書き出しますと、「まさに出来るだけ早い時期に“科学教育の科学化”が必要なのです。科学の内容が何で、そのためには、どの年齢層の子供にこんなことを学ばせようという「日本版?科学的学習プラン」が必要なのです。それを視野に入れた「親子実験教室」であってくれれば、私としては、こんな嬉しいことはないのであります。</p> <p>長くなりましたが、思いを書かせていただきました。</p> <p style="text-align: right;">日下教育研究所 日下 和信(あいんしゅたいん会員)</p></div> <div class="feed-description"><p>シンポジウムに出席された、あいんしゅたいん会員である日下和信さんからいただいたシンポジウムへのコメントを、ご本人の許可を得て、ここでご紹介させていただきます。<br />日下会員からは、「長く科学教育に関わってきた“授業屋として”一筆書かせていただきます。実際の実験教室は、ごくわずかしか見学しておりませんので、違った視点から書かせていただきます。」ということです。</p> <hr /> <p>先ずは、このシンポのタイトルから取り上げさせていただきましょう。<br /> <br />「子供たちから学ぶ・・科学としての科学教育実践編」。「子供達から学ぶ…」このタイトルがありきたりながら、実質が伴えば、凄い意味を持ってきます。幼児教育や初等教育では、ついつい「決まり文句としての子ども達から学ぶが闊歩しまして」、指導者側にフィードバックしない授業が横行するのですが、名誉教授先生もこの「親子実験教室」からあふれる好奇心で学んでいただけたようで、まことに慶賀なことでございます。それは、“まさに大人も子供も学べる実験教室になり得ていた”と言って良いわけです。ただ、この環境をこの後もずっと維持していくことは、そう簡単でないと思われるわけです。しかし、さすがに京都大学が関わる実験教室として、受講者(親子)の感想を取り、それを分析し、その結果をフィードバックされようという姿勢の中に、この試みの戦略性を発見いたしました。有りそうでなかなか見られない取り組みなのです。貴重な取り組みで、大いに期待したいところです。</p> <p>そして、“知らないことは、あっさりと知らないと表明される”姿勢に、とても誠実で信頼感を抱かせられます。まことに当節においては、貴重な心のバックボーンかと思われます。ありがとうございます。このプロジェクトに関わる人間全てが、この姿勢を共有したいものでございます。</p> <p>さらにタイトルから話題を引き出しますと、「科学としての…科学教育」という言葉がここで何故使われてきたかです。このタイトルに大いなる皮肉とその慧眼をたたえたいと思います。ちょっと考えてみてください、凄い感性と言いますか、従来の科学教育に対する「ほのかな疑問を持たれてきているのではないかと推測するのです」。“今の科学教育は、科学になってないぞ”、「科学教育の更なる科学化」を指向するという決意表明と考えるのは、勘ぐりすぎでしょうか。</p> <p>実は、このセンスは、「科学教育業界では少し異端気味の」私からすると、スゴイのです。良いとこ突いてるタイトルなのです。誰でも知っている単語ですが、「理科」と「科学」という言葉が、曖昧に使われてきた業界が「理科教育業界」で、ある時は「理科教育」といわれ、またある時は「科学教育」と言われてきました。そして、「遺伝子DNAの発見で学問が根本的に変わってきた生物学」を例外に、この業界の素地は、“残念ながら明治の百年前から、そう進歩していない”のです。</p> <p>理科教育では、何を教えるのか。科学教育では、そこをどう違えて教えるのか、こんな原則的な議論が為されないまま、極端に言えば、明治の頃の「授業項目を踏襲してきた」のです。即ち、“科学”としては、「何をこのように教えたときに、科学を教えたと言えるのだ」というメルクマールがハッキリとしていないのです。「はやぶさ」が無事帰ってきて科学トピックとしては、大いに盛り上がり、科学教育の土壌には、大きな刺激と肥料が与えられたでしょうが、「トピックは、教育サイドの位置付けでは“投げ込み教材”相当なのです」。とりわけ、科学知識は、体系性、順序性が大事ですから、一時間だけのトピックの紹介だけでは、大概の場合、体系性に触れないままになるでしょう。それは、一回だけの実験教室の場合にも言えることです。“投げ込み教材”を科学にするのは、よほどの力量ある教師でしかできないのです。(そうは言っても、日本の津々浦々で投げ込み教材の授業の花盛りなのです。科学の根本がないがしろになってしまっているためなのです)</p> <p>日本の理科教育・科学教育に関して、教材の選定及び改廃に関して、キチンと議論された結果が残されていません。文科省の内部で議論され、十年に一度という周期で、指導要領が改訂され、それに対応して指導内容が、要領に準拠して、教科書検定という通過儀礼を経て変わってきたと言うだけなのです。新しい指導要領が出ても、「前の指導要領のここが時代に合わなくなったとか、その他の理由なりは、表の議論にならないし、印刷されることもないのがこれまでの改訂作業でした」。思い返せば、昭和56年だったでしょうか、ソ連がスプートニクを米国に先立って打ち上げて、米国はスプートニクショックで「科学教育の大改革運動を展開しました」。その成果が、物理では、「PSSC物理」でしたね。この頃、日本にも科学教育の改革運動が盛り上がりかけたのですが、如何せん、文部省の専決事項だと言わんばかりに秘密裏に進められる「指導要領の改訂」でその熱は、やり場を失ったことが思い出されます。</p> <p>このような状況を書き出しますと、「まさに出来るだけ早い時期に“科学教育の科学化”が必要なのです。科学の内容が何で、そのためには、どの年齢層の子供にこんなことを学ばせようという「日本版?科学的学習プラン」が必要なのです。それを視野に入れた「親子実験教室」であってくれれば、私としては、こんな嬉しいことはないのであります。</p> <p>長くなりましたが、思いを書かせていただきました。</p> <p style="text-align: right;">日下教育研究所 日下 和信(あいんしゅたいん会員)</p></div> シンポジウム報告 その3 2010-12-12T23:45:37+09:00 2010-12-12T23:45:37+09:00 https://www.jein.jp/activity-report/symposium/science-instruction/420-report3.html JEin事務局 <div class="feed-description"><p>シンポジウムに出席された、あいんしゅたいん会員で小学校の教員である山田明彦さんからいただいた、シンポジウムへのコメントを、ご本人の許可を得て、ここでご紹介させていただきます。</p> <p>山田さんのご意見のように、実践に裏打ちされ、次のステップになるご意見は貴重です。なにより、これまで、いろいろな理科サークルが、個々別々に工夫し取り組んでおられた蓄積を、今一度皆さんで共有し、さらにお互いに連携していける素晴らしいステップになることと思います。科学教育に関与するようになって3年ばかり、経験の浅い私たちで、実際に親子理科実験教室を開催して1年も経過しておりません。その間、今まで私が一番気になっていたことは、これまで、いろいろな実践をしている全国の理科サークルの横の連携、というかお互いの切磋琢磨が少なく、ネットワークが薄いことでした。<br />もちろん、お互いに自分達のやり方が一番優れていると信じて実践しておられるのですが、お互いの批判や協力関係というのが、少ないように思います。</p> <p>その意味で、伝統ある仮説実験サークルの考え方の優れた点をご紹介くださり、そのなかで、他のサークルともしっかり連携しておられる実践を踏まえた実践派、素晴らしいと思います。そして、感激したのは、当NPO会員でも安田さんや谷口さんが、ご一緒に活動なさっていることです。ポスドクの教育普及への取り組み以後、すっと参加されていたお二人が、今では大学教員の1員として、連携されているのは素晴らしいです。これからも、そこでの実践を、私たちにも伝えていただくようお願いします。</p> <hr /> <p>シンポジウムの報告を読ませていただきました。当日の刺激的な議論の様子が脳裏に蘇りました。<br />「科学としての科学教育」というテーマの下に親子理科実験教室が,あいんしゅたいんホームページに「<a href="science-school/qa.html">Q&Aコーナー</a>」を設けて参加者とのコミュニケーションを図るという運営を続けてこられたことに皆さんの誠意を感じました。当日,山下先生が議論のきっかけとして指摘された科学の「実感をともなった理解」(新学習指導要領)について言いたかったのは,たとえ「実感をともなった」という文言が付け加わらなかったとしても,「理解」とは「頭の中にイメージを描けること」だということです。しかしながら,子供でも大人でも生活経験の中から培った常識的な発想は強固です。私の小・中学校での教師経験からしても,それが変わるには多大な時間が必要です。とりわけ常識では予想ができないような現象を科学的に理解して,科学的な考え方の有効性を納得するには,いくつもの問題を考え,実験をする必要があります。</p> <p>そこで,例えば前述した,あいんしゅたいんホームページ「<a href="science-school/qa.html">Q&Aコーナー</a>」で取り上げられているような磁石の理解のために,仮説実験授業の授業書《磁石》では10数時間の授業をします。問題について予想を立て,各自が選んだ予想の正否を巡って討論をしてから実験で決着をつける…という過程を幾度も繰り返します。そんな中から,自分の既存の生活経験や発想から受け入れられる考えや実験事実に気付き,子供たちは徐々に自ら考えを変えていきます。そして,同時に「仮説-実験」という科学的認識の方法を身につけていきます。</p> <p>親子理科実験教室は,日下さんも指摘しているように,まさに「投げ込み教材」です。魅力的な「投げ込み教材」は,教える人の楽しさという熱意も伝わり,参加者の目も輝きます。私も実験教室で作らせていただいたシャカシャカライトを自ら主催する知多たのしい授業研究会で見せびらかしました。でも,それだけでは「電流と磁場が関係あるんだな」ということ以上にイメージはできないと思います。そのときに思ったのは,仮説実験授業の授業書《電流と磁石》を実施した後で,シャカシャカライト作りをするとき<br />っと感動的だな…ということでした。「投げ込み教材」だけでは,科学的現象の面白さが伝わっても科学的認識の方法は伝わらないのではないかと考えます。教材や科学工作,実験の演示が高度な実験装置で行われることがあっても,それ自体は構いません。教室で教師が再現できないことでも,科学者の研究成果を端的に物語ることや最先端科学技術の成果を知ることも科学理解や科学の魅力を知るのに必要なことだと思います。そして,「戦争と科学」にも最先端科学技術は,深く関わっています。</p> <p>しかしながら,教室で再現できるローテクな実験で科学的な思考を練ることができることも重要な事実です。科学的な認識を深める一連の面白い問題の発見・開発こそ「科学としての科学教育」の課題だと考えています。大方の学習者が授業の終末には,科学的概念と法則性を身につけることができるような,考えるに値する面白い問題・実験群発見し構成することです。科学教育を科学することは,「問題構成と人々の認識のあり方には,一定の法則性がある」という授業科学の立場で研究を進めることだと考えます。それこそが理科離れに対する最も根底的な対策になると考えています。<br />私が赤外線を語る田中先生の魅力的な語り口や表情に惹かれたのは,そうしたほとばしる好奇心こそが授業科学を確立するための面白い問題発見・開発につながると考えているからです。</p> <p>仮説実験授業は,授業科学として確立した科学教育です。仮説実験授業=典型に学び,高等教育での科学教育や「投げ込み教材」を授業科学(科学として信頼できるプラン,つまり,意欲のある教師ならマネをして成果を上げられる教材の構成)に高めていきたい。科学研究の専門家と私のような教育者が手を携えることができれば,その一助になるのではないかと考えています。また,仮説実験授業による親子理科実験教室を行えば,授業科学の典型とは何かという問題意識で「科学教育を科学する」ことができるのではないでしょうか。</p> <p>「科学としての科学教育」シンポジウムをきっかけとして,私が主催する知多たのしい授業研究会に,名城大学の谷口さんや安田さんが参加して下さるようになりました。小学校の教師が興味深い実験を報告すると,翌月の研究会のときに谷口さんや安田さんがその実験を物理的に(化学的に)解析した説明をする…というような協同が確立してきました。専門研究者と教育者がお互いに刺激し合う理想的な協同だと自負しています。きっかけを創って下さった世話人に感謝しています。</p> <p style="text-align: right;">知多たのしい授業研究会 山田明彦</p></div> <div class="feed-description"><p>シンポジウムに出席された、あいんしゅたいん会員で小学校の教員である山田明彦さんからいただいた、シンポジウムへのコメントを、ご本人の許可を得て、ここでご紹介させていただきます。</p> <p>山田さんのご意見のように、実践に裏打ちされ、次のステップになるご意見は貴重です。なにより、これまで、いろいろな理科サークルが、個々別々に工夫し取り組んでおられた蓄積を、今一度皆さんで共有し、さらにお互いに連携していける素晴らしいステップになることと思います。科学教育に関与するようになって3年ばかり、経験の浅い私たちで、実際に親子理科実験教室を開催して1年も経過しておりません。その間、今まで私が一番気になっていたことは、これまで、いろいろな実践をしている全国の理科サークルの横の連携、というかお互いの切磋琢磨が少なく、ネットワークが薄いことでした。<br />もちろん、お互いに自分達のやり方が一番優れていると信じて実践しておられるのですが、お互いの批判や協力関係というのが、少ないように思います。</p> <p>その意味で、伝統ある仮説実験サークルの考え方の優れた点をご紹介くださり、そのなかで、他のサークルともしっかり連携しておられる実践を踏まえた実践派、素晴らしいと思います。そして、感激したのは、当NPO会員でも安田さんや谷口さんが、ご一緒に活動なさっていることです。ポスドクの教育普及への取り組み以後、すっと参加されていたお二人が、今では大学教員の1員として、連携されているのは素晴らしいです。これからも、そこでの実践を、私たちにも伝えていただくようお願いします。</p> <hr /> <p>シンポジウムの報告を読ませていただきました。当日の刺激的な議論の様子が脳裏に蘇りました。<br />「科学としての科学教育」というテーマの下に親子理科実験教室が,あいんしゅたいんホームページに「<a href="science-school/qa.html">Q&Aコーナー</a>」を設けて参加者とのコミュニケーションを図るという運営を続けてこられたことに皆さんの誠意を感じました。当日,山下先生が議論のきっかけとして指摘された科学の「実感をともなった理解」(新学習指導要領)について言いたかったのは,たとえ「実感をともなった」という文言が付け加わらなかったとしても,「理解」とは「頭の中にイメージを描けること」だということです。しかしながら,子供でも大人でも生活経験の中から培った常識的な発想は強固です。私の小・中学校での教師経験からしても,それが変わるには多大な時間が必要です。とりわけ常識では予想ができないような現象を科学的に理解して,科学的な考え方の有効性を納得するには,いくつもの問題を考え,実験をする必要があります。</p> <p>そこで,例えば前述した,あいんしゅたいんホームページ「<a href="science-school/qa.html">Q&Aコーナー</a>」で取り上げられているような磁石の理解のために,仮説実験授業の授業書《磁石》では10数時間の授業をします。問題について予想を立て,各自が選んだ予想の正否を巡って討論をしてから実験で決着をつける…という過程を幾度も繰り返します。そんな中から,自分の既存の生活経験や発想から受け入れられる考えや実験事実に気付き,子供たちは徐々に自ら考えを変えていきます。そして,同時に「仮説-実験」という科学的認識の方法を身につけていきます。</p> <p>親子理科実験教室は,日下さんも指摘しているように,まさに「投げ込み教材」です。魅力的な「投げ込み教材」は,教える人の楽しさという熱意も伝わり,参加者の目も輝きます。私も実験教室で作らせていただいたシャカシャカライトを自ら主催する知多たのしい授業研究会で見せびらかしました。でも,それだけでは「電流と磁場が関係あるんだな」ということ以上にイメージはできないと思います。そのときに思ったのは,仮説実験授業の授業書《電流と磁石》を実施した後で,シャカシャカライト作りをするとき<br />っと感動的だな…ということでした。「投げ込み教材」だけでは,科学的現象の面白さが伝わっても科学的認識の方法は伝わらないのではないかと考えます。教材や科学工作,実験の演示が高度な実験装置で行われることがあっても,それ自体は構いません。教室で教師が再現できないことでも,科学者の研究成果を端的に物語ることや最先端科学技術の成果を知ることも科学理解や科学の魅力を知るのに必要なことだと思います。そして,「戦争と科学」にも最先端科学技術は,深く関わっています。</p> <p>しかしながら,教室で再現できるローテクな実験で科学的な思考を練ることができることも重要な事実です。科学的な認識を深める一連の面白い問題の発見・開発こそ「科学としての科学教育」の課題だと考えています。大方の学習者が授業の終末には,科学的概念と法則性を身につけることができるような,考えるに値する面白い問題・実験群発見し構成することです。科学教育を科学することは,「問題構成と人々の認識のあり方には,一定の法則性がある」という授業科学の立場で研究を進めることだと考えます。それこそが理科離れに対する最も根底的な対策になると考えています。<br />私が赤外線を語る田中先生の魅力的な語り口や表情に惹かれたのは,そうしたほとばしる好奇心こそが授業科学を確立するための面白い問題発見・開発につながると考えているからです。</p> <p>仮説実験授業は,授業科学として確立した科学教育です。仮説実験授業=典型に学び,高等教育での科学教育や「投げ込み教材」を授業科学(科学として信頼できるプラン,つまり,意欲のある教師ならマネをして成果を上げられる教材の構成)に高めていきたい。科学研究の専門家と私のような教育者が手を携えることができれば,その一助になるのではないかと考えています。また,仮説実験授業による親子理科実験教室を行えば,授業科学の典型とは何かという問題意識で「科学教育を科学する」ことができるのではないでしょうか。</p> <p>「科学としての科学教育」シンポジウムをきっかけとして,私が主催する知多たのしい授業研究会に,名城大学の谷口さんや安田さんが参加して下さるようになりました。小学校の教師が興味深い実験を報告すると,翌月の研究会のときに谷口さんや安田さんがその実験を物理的に(化学的に)解析した説明をする…というような協同が確立してきました。専門研究者と教育者がお互いに刺激し合う理想的な協同だと自負しています。きっかけを創って下さった世話人に感謝しています。</p> <p style="text-align: right;">知多たのしい授業研究会 山田明彦</p></div> シンポジウム報告 その4 2010-12-12T23:54:18+09:00 2010-12-12T23:54:18+09:00 https://www.jein.jp/activity-report/symposium/science-instruction/419-report4.html JEin事務局 <div class="feed-description"><p>親子理科実験教室の企画に加わっていただいた藤原清さんのコメントを紹介します。<br />藤原さんは<a href="http://www.riten.jp/index.html" target="_blank">リテン</a>の社長さんですが、SEネットのメンバーで、この親子理科実験教室の企画に加わっていろいろとアドバイスいただきました。宙に浮いた地球儀、たった1つの乾電池で、人間まで釣り上げる電磁石、リニアモーターの仕組みを見せる機材など、また、だれもが好奇心をそそられた磁性流体など、はっと驚く展示品や教材を持ち込んでいただきどんなに力強かったか知れません。また、「磁場すくい」の道具を実際に新しくつくって提供いただきました。<br />以下藤原さんのコメントです。</p> <hr /> <p>サイエンスEネット事務局長(リテン)藤原です。<br />「親子理科実験教室」に協力させていただいた感想を述べさせていただきます。</p> <p>あいんしゅたいん(坂東先生,松田先生,坂東事務局長,前様,石尾様,上田様,高橋様ほか)と京都大学理学部(中家先生,田中先生ほか)とサイエンスEネット(山下,川村,松林,藤原)が協力し,「親子理科実験教室」が最後の1回(12/26)を残し,大変好評のうちに終わろうとしています。この企画に参加出来ましたことを感謝しています。<br />この実験教室はなんと言っても坂東先生の燃える情熱とご活躍があってこそ実現したと藤原は思っています。そして、また、ご意見盤の松田先生,講師の松林先生,中家先生,田中先生が加わられ,素晴らしい教室ができました。<br />11月27日のシンポジウムにも参加しましたが、さすがは、みなさん、運営も司会も参加者の発言も素晴らしかったです。</p> <p>私(藤原)としてはこの「親子理科実験教室」には,さすがは京都大学だと参加者に評価していただくため,「京大ならではの見せ場」があれば良いなあと思っていました。<br />そして、実際、そういう工夫が随所にありました。例えば,研究施設,博物館の見学など、また、最新の研究現場の先生方のお話など、です。</p> <p>欲を言えば子供達が「あっと驚くような実験が見たかった」。<br />私が参加させていただいたのは実験の内容の企画段階でした。日頃私は日常生活で使っていながら,よく理解できていない科学を体験,実験の紹介をしたく思い,我が社の実験器や興味ある実験を提案させていただきました。(磁性流体の実物を使った実験,誘導電線ー杉原先生ご考案など)<br />実験教室の全ての回で松林先生が講師をされ,よく頑張られたと思いました。さすがは小学校の理科の先生で子ども達に接する姿に感心しておりました。藤原も1回だけ松林先生と一緒に講師をさせていただきました。</p> <p>シンポジウムで保護者代表の方が発表されました。京都大学ならではの実験(電磁石)が見たかったと。<br />これを聞いて思いましたことですが、「乾電池1個で人がぶら下がれる」実験を用意していましたのが,時間の都合であまりできなかったのが残念でした。この巨大な電磁石は、実はリサイクル業界ではスクラップの鉄くず(自動車)を吊り上げるのに活躍しています。この事実を紹介したく思いました。<br />これからも出来れば、大変難しいとは思いますが、あえて、あっと驚く実験(大)を含め,デモ実験,体験と工作を毎回セットにして「京大ならではの親子理科実験教室」が開催されればと願っております。</p></div> <div class="feed-description"><p>親子理科実験教室の企画に加わっていただいた藤原清さんのコメントを紹介します。<br />藤原さんは<a href="http://www.riten.jp/index.html" target="_blank">リテン</a>の社長さんですが、SEネットのメンバーで、この親子理科実験教室の企画に加わっていろいろとアドバイスいただきました。宙に浮いた地球儀、たった1つの乾電池で、人間まで釣り上げる電磁石、リニアモーターの仕組みを見せる機材など、また、だれもが好奇心をそそられた磁性流体など、はっと驚く展示品や教材を持ち込んでいただきどんなに力強かったか知れません。また、「磁場すくい」の道具を実際に新しくつくって提供いただきました。<br />以下藤原さんのコメントです。</p> <hr /> <p>サイエンスEネット事務局長(リテン)藤原です。<br />「親子理科実験教室」に協力させていただいた感想を述べさせていただきます。</p> <p>あいんしゅたいん(坂東先生,松田先生,坂東事務局長,前様,石尾様,上田様,高橋様ほか)と京都大学理学部(中家先生,田中先生ほか)とサイエンスEネット(山下,川村,松林,藤原)が協力し,「親子理科実験教室」が最後の1回(12/26)を残し,大変好評のうちに終わろうとしています。この企画に参加出来ましたことを感謝しています。<br />この実験教室はなんと言っても坂東先生の燃える情熱とご活躍があってこそ実現したと藤原は思っています。そして、また、ご意見盤の松田先生,講師の松林先生,中家先生,田中先生が加わられ,素晴らしい教室ができました。<br />11月27日のシンポジウムにも参加しましたが、さすがは、みなさん、運営も司会も参加者の発言も素晴らしかったです。</p> <p>私(藤原)としてはこの「親子理科実験教室」には,さすがは京都大学だと参加者に評価していただくため,「京大ならではの見せ場」があれば良いなあと思っていました。<br />そして、実際、そういう工夫が随所にありました。例えば,研究施設,博物館の見学など、また、最新の研究現場の先生方のお話など、です。</p> <p>欲を言えば子供達が「あっと驚くような実験が見たかった」。<br />私が参加させていただいたのは実験の内容の企画段階でした。日頃私は日常生活で使っていながら,よく理解できていない科学を体験,実験の紹介をしたく思い,我が社の実験器や興味ある実験を提案させていただきました。(磁性流体の実物を使った実験,誘導電線ー杉原先生ご考案など)<br />実験教室の全ての回で松林先生が講師をされ,よく頑張られたと思いました。さすがは小学校の理科の先生で子ども達に接する姿に感心しておりました。藤原も1回だけ松林先生と一緒に講師をさせていただきました。</p> <p>シンポジウムで保護者代表の方が発表されました。京都大学ならではの実験(電磁石)が見たかったと。<br />これを聞いて思いましたことですが、「乾電池1個で人がぶら下がれる」実験を用意していましたのが,時間の都合であまりできなかったのが残念でした。この巨大な電磁石は、実はリサイクル業界ではスクラップの鉄くず(自動車)を吊り上げるのに活躍しています。この事実を紹介したく思いました。<br />これからも出来れば、大変難しいとは思いますが、あえて、あっと驚く実験(大)を含め,デモ実験,体験と工作を毎回セットにして「京大ならではの親子理科実験教室」が開催されればと願っております。</p></div>