基礎科学研究所

(NPO法人 知的人材ネットワーク・あいんしゅたいん 附置機関)

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所長挨拶

基礎科学研究所設立にあたって


個別科学が発展した20世紀を受けつぎ、21世紀は、地球環境問題・教育問題・都市問題・医療問題など、多様な課題へのアプローチがますます重要になってきています。これらの課題は、特定の分野にとどまらず、分野を横断する考察が必要になります。

こうした課題に対して、新しい知見をえるためには、大学や学会のみならず市民社会のあらゆる活動の中からさまざまな形で蓄積された経験知が、科学の体系に取り込まれなければならないと思います。
時代は、科学技術専門家からの情報発信、専門家から非専門家へという命令型から、市民が歴史を形成する主体となる方向へと確実に進んでいるのです。そして、こうしたなかで、NPOが果たすべき役割は大きくなっているのです。

今、私たちは、NPOとして、共同研究を組みながら、可視化技術を生かした教材開発に取り組んでいます。そして、大学の一角に研究室おかりしています。
この間、沢山のことを経験しました。例えば、小山田研究室との定例部門会議では、可視化の意味を深く掘り下げることもできました。そして、訪問される研究者や業界の方々との懇談などを通じてネットワークを広げています。訪問客は、教育界、出版界、研究の最前線で活躍する方々、国際会議にご出席の海外研究者、女性研究者、はては、7ヶ国以上の言葉を操るヒッポクラブの方々など、数えきれません。
そこで得た、さまざまな知的刺激を、単に趣味に終わらせず、どのように定着させ、科学活動の一環として生かしていけるのか、それが今私たちの課題です。そのためには、さらに大きな1歩を踏み出す必要があります。若い人にも、仕事をする、それを世に問うということを通じてさらに世界を広げることができる機会にしなければなりません。

学術月報2010年9月号に、金沢一郎学術会議会長のエッセイがあり、そのなかに、「65歳になると、年金生活を楽しんでいる人も少なくないが、彼らの能力が衰えているわけでもないのに、もったいないことだ」と思ったとあります。「定年退職後の老人が研究を続ける為の研究所」を提案していらっしゃる先生もいるそうです。それが、「老人研究所構想」です。老人を研究するのではなく、知的な老人を活用するという趣旨の研究所です。
これは、知的人材ネットワークを目標にしている私たちの1つの側面をとてもよくあらわしています。ただ、博士号を持つ若い人たち、といっても今では40歳を超す場合が稀ではありませんが、この若手研究者の活用も考えるべきだなと思っています。
少子高齢化といいますが、若い人も定年退職組も、もっと生き生きと活動できる社会であれば、それも十分にパワーになる筈です。そういう仕組みをどう作れるのか、自らの手で探っていきたいですね。ポスドク力発揮、老人パワー発信!です。

また、私たちは、この1年、親子理科実験教室を開催し、子供たちの素朴な質問に接する中で、私たち科学者が、気がつかなかった様々な日常生活の中にある不思議を探究する面白さを体感することができました。
日本の明治初期の突出した思想家であり科学者であった寺田寅彦の精神を思い出します。実際、私自身も、交通流や経済物理を手掛け、また、さまざまな出会いを通じて、ソフトマタ―などのより幅広い物理学の面白さが、物理として研究の対象になってきている時代だと実感しました。まさに、「天下に新しきににもののないということわざを思い出すと同時に、また、地上には古い何者もない」(寺田寅彦:「ルクレチウスと科学」より)ということを、この年になって実感している毎日です。

寺田寅彦の文章の中に、次のような1節があります。

「今かりに現代科学者が科学者として持つべき要素として三つのものを抽出する。一つはルクレチウス的直観能力の要素であってこれをLと名づける。次は数理的分析の能力でこれをSと名づける。第三は器械的実験によって現象を系統化し、帰納する能力である。これをKと名づける。今もしこの三つの能力が測定の可能な量であると仮定すれば、LSKの三つのものを座標として、三次元の八分一空間を考え、その空間の中の種々の領域に種々の科学者を配当する事ができるであろう。ヘルムホルツや、ケルヴィンやレイノルズのごときはLSKいずれも多分に併有していたものの例である。現存の学者ではジェー・ジェー・タムソンがこのタイプの人であろう。ファラデーや現代のラザフォードやウードのごときはLK軸の面に近く位している。ボルツマン、プランク、ボーア、アインシュタイン、ハイゼンベルク、ディラックらはLS面に近い各点に相当する。ただ L = 0 すなわちSKの面内に座する著名の大家を物色する事が困難である。あるいはレーリー卿のごときは少なくもこの座標軸面に近い大家であったかもしれない。
ゾンマーフェルトやその他の数理物理学者はS軸の上近くに座するものであり、純実験、純測定の大家らはK軸に羅列される。これらは科学の成果に仕上げをかける人々である。そうして科学上のピュリタニズムから見て最も尊敬すべき種類の学者である。しかるにL軸の真上に座する人はもはや科学者ではない。彼らは詩人である。最善の場合において形而上学者であるが最悪の場合には妄想者であり狂者であるかもしれない。こういう人は西洋でも日本でも時々あって科学者を困らせる。しかしたいていの場合彼らの言う事は科学者の参考になるあるものを持っている。すなわち彼らはわれわれにLの要素を供給しうるのである。もちろん座標中心の付近には科学者の多数が群集していて、中心から遠い所に僅少の星が輝いているのである。」

要するに、イメージが豊かで、可視化してものを捉えるのが得意な人、緻密な計算によって納得するタイプ、実際に確かめ実証しないと気が済まないタイプ、こうした様々なタイプの科学者が協力して作り上げたのが、現代の科学の前線です。
基礎科学研究所が、このLSKのどの軸に近い仕事ができるか、それは構成員の力量と個性にかかっています。単なるL軸上の議論に終わらせない仕組みをしっかり整えて、若い人もシニアな年齢の方も、共に協力し合える研究所として発展させていきたいものです。

所長 坂東昌子

副所長挨拶

基礎科学研究所設立にあたって


NPO法人知的人材ネットワーク「あいんしゅたいん」設立時以来の懸案であった、バーチャル研究所としての「基礎科学研究所」が、正式に開設されることになりました。この研究所は、私がブログの第10回目に書いた「バーチャル研究所の提案・・・定年退職研究者のために」を、ある程度、実現したものです。

そこでも書いたように、大学などを定年退職した研究者が、まだ研究を続けたいと思ったときに障害になるのが、1)所属、2)スペース、3)研究費、のなさです。この中で特に問題になるのが所属です。これがないと、論文投稿、学会発表、研究費・計算機申請などに、支障をきたします。その問題を解決するために、我々は「基礎科学研究所」を設立しました。上記の問題は定年退職研究者だけではなく、所属のないポスドクにとっても同様に大きな問題であることを認識して、構成員にはその方々も含めることにしました。

ただし、問題が完全に解決したわけではありません。「所属」ということは、単に研究所の名前を作っただけではだめで、郵便物が届く住所が必要になります。この問題はまだ完全には解決していません。というわけで、研究所の開設を発表したものの、まだ不十分な状態であることは否定できません。

「スペース」は、当面は「あいんしゅたいん」がお借りしている京大内の施設を流用しますが、これとて暫定的な措置であり、恒久的な対策を施す必要があります。「研究費」ともあわせて、要するに必要なものはお金であるという、身も蓋もない結論になります。

以上のような状況で、「基礎科学研究所」の設立を宣言したものの、まだまだ走りながら考えるという状況です。皆様の温かいご支援、ご指導をいただきますように、お願い申し上げます。

副所長 松田卓也


【経歴】

1943年生まれ(大阪)
1961年: 大阪府立北野高校卒業
1970年: 京都大学大学院理学研究科博士課程物理第2専攻天体核物理学 理学博士
1970年: 京都大学工学部航空工学助手
1973年: 同助教授
1992年: 神戸大学理学部地球惑星科学科教授
2006年: 同定年退職

現 在: 神戸大学・同志社大学・甲南大学非常勤講師、中之島科学研究所研究員、朝日カルチャーセンター講師
     元日本天文学会理事長、ジャパンスケプティックス会長、ハードSF研究所客員

専 門: 宇宙物理学、相対性理論  趣味に疑似科学批判、プレゼンテーション理論
著 書: 「なっとくする相対論」(講談社) 「タイムトラベル・・・超科学読本」(PHP出版)
     物理小事典(三省堂)

主管挨拶

基礎科学研究所設立にあたって


NPO法人知的人材ネットワーク「あいんしゅたいん」にメンバーとして参加させて戴いてから、時々京都大学情報メディアセンタ内の事務局を訪問しているうち、基礎科学研究所の立ち上げにも参加させてもらうことになりました。

定年後の大学教員や大学院終了後にもポストを得られないといった、社会がみすみす宝の持ち腐れ状態にしている知的人材は、現在の社会情勢の中でますます増大しています。これらの人材をネットワーク化して現実の社会で、そのキャリアの有効な活用を目指す「あいんしゅたいん」に対して、今回設立することになった「基礎科学研究所」は、坂東所長や松田副所長の挨拶にあるように、まずはそのような人材が研究を継続発展するベースとしての所属場所を提供できる組織にしようとするものです。
まだ場所や研究費を確保する以前の段階ですが、使命感にあふれる所長、副所長のもとで、研究所のミッションを具体化し実行するサポートをして行こうと思っています。

個人的には、例えば基礎科学に関わる沢山の課題をランダムにリストしておいて、その中から面白いテーマを取り上げて、研究会・シンポジウム・パネルディスカッションなど、それぞれのテーマに適した形式のミーティングを企画開催することを、不定期なアクティビティの一つにしてはどうかと考えています。そのようなミーティングをきっかけにして、研究所に所属するメンバーが増えたり、研究所の追求課題が生まれたりする可能性があるかもしれないと感じています。我々のような退職メンバーが中心で設立はしましたが、今後この研究所には新しい血が入ってきて自己増殖する可能性のある「面白い研究所」になっていくことを期待しています。そのための研究所としての基盤づくりを、この1,2年がんばっていきたいと思います。

主管 舞原俊憲


【経歴】

1942年生まれ(岡山県)
1961年: 岡山朝日高校卒業
1970年: 京都大学理学部物理第2教室助手
1971年: 京都大学理学研究科(宇宙線物理学) 理学博士
1983年: 同助教授
1998年: 京都大学理学研究科宇宙物理学教室教授
2006年: 同定年退職

現 在: 京都大学名誉教授 ナノオプトニクス研究所(㈱ナノオプトニクス・エナジー)所長

専 門: 赤外線天文学、観測的宇宙論、観測装置開発など
著 書: 「21世紀の宇宙観測」(誠文堂、共著) 「見えないもので宇宙を見る」(京大出版、共著)、他

主管挨拶

2011年3月11日、東北・関東の太平洋沿岸地域は、マグニチュード9.0という巨大地震に襲われ、未曽有の被害を受けました。被災された方々に謹んでお見舞いを申し上げます。いまだに避難生活を余儀なくさせられている多くの人々の困難な状況の報道に接し、胸を締め付けられる思いですが、一日も早い復興を心より願っております。科学や技術に携わるわれわれも、今回の現実をあらゆる角度から詳細に検証し、安全に暮らせる環境の再構築に向けて、手を携えて努力していかなければならないと考えます。

私は2006年3月に京都大学を定年退職し、その後しばらく引きこもり生活を続けておりましたが、2009年4月から財団法人国際高等研究所のフェロー・招へい研究員として2年間お世話になりました。そして、2011年4月からNPO法人あいんしゅたいん附置、基礎科学研究所の一員として世の中とのつながりを維持できることになりました。

そこで何ができるかと考えてみたのですが、最近平均寿命も延びてきて、定年退職を迎えた人達でもそれまで得た知識を社会に還元できる可能性が増えつつあると思い始めました。ちょうどそのときに東北関東大震災が起り、時々刻々変化する事態を総合的に判断するためには、さまざまな専門分野の知識を有機的に結びつけることが必要であると痛感致しました。

世の中でこういうことが知りたいという要求があったときに、定年退職者がそれぞれの現役時代に培った人脈を生かして、そのことならこういう人に聞くのが一番よいという的確な情報を提供することや、学位は取ったがそれを生かせる働き口がなかなか見つからないといった人達の存在を新たなニーズにつなげることによって、新しい学術の芽が育つことも期待できます。このようなコミュニケーション・人材ネットワークの橋渡しに、私も及ばずながら協力したいと考えております。今後ともどうかよろしくお願いいたします。

主管 竹本修三


【経歴】

1942年生まれ(埼玉県秩父市)
1961年3月: 埼玉県立熊谷高校卒業
1961年4月: 京都大学理学部入学
1965年3月: 京都大学理学部地球物理学科卒業
1965年4月: 京都大学防災研究所・助手
1983年11月: 京都大学理学博士
1989年10月: 京都大学理学部地球物理学科・助教授
1996年1月: 京都大学大学院理学研究科地球惑星科学専攻・教授
2006年3月: 定年退職
2006年4月: 京都大学名誉教授
2009年4月: 国際高等研究所・フェロー
2010年4月: 国際高等研究所・招へい研究員
2011年4月: 基礎科学研究所(NPO法人 あいんしゅたいん附置)研究主管

専 門: 固体地球物理学・測地学
著 書: レーザホログラフィと地震予知, 共立出版(株), (1987)
     Laser Holography in Geophysics:Ellis Horwood Series in Applied Geology,(編・著), Ellis Horwood Ltd. UK, (1989)
     地球が丸いってほんとうですか?(編・著),朝日選書752,朝日新聞社,(2004)
     京都大学講義「偏見・差別・人権」を問い直す(編・著)(京都大学学術出版会, (2007)
     など

URL: http://www10.plala.or.jp/GEOD/take/

 

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