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世界征服計画 その29

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29. SEALs襲撃

CIAのエージェントによる森君襲撃が失敗したことで、ブラックハウスでは再度、首脳会議がもたれた。今回はオババ皇帝、ペイン副皇帝、クリキントン国務長官、バッタ国防長官で女性ばかりである。新しいCIA長官としてはナポリタン女史が任命されたが、今回は会議から外された。まずはオババ皇帝が、ケーツ前CIA長官の失敗に対して怒り心頭に発して、テキサス弁丸出しでまくし立てた。

「あのケーツのバカたれが、失敗しくさった。それもテレビの前でや。米帝は世界の笑いものになったわ。ワテは腹が煮えくりかえっとるんや。ケーツ長官は即刻クビにしたった。ざま見さらせじゃ。それでも森某は、絶対にいてもたらなアカン。CIAがでけへんのやったら、今度は軍の出動や。バッタ国防長官、あんさんの案を言うてんか」

バッタ女史はおそるおそる口を開いた。自分も失敗したら、ケーツの二の舞になることを恐れているのである。

「ええっー、国防省としては2案を考えています。まず第1案を実行して、それが失敗したら第2案を実行するという二段階作戦です」

「それは、ええのちゃうか」

「はい、まず海軍の精鋭部隊SEALsを太平洋に浮かぶ空母からヘリコプターで派遣して、森某の居宅兼事務所を急襲します。衛星写真や現地でのスパイ活動によれば、この住宅は要塞のようになっていて、なかなか襲撃は難しいと思います。しかしSEALsがビン・ラディンの住居を急襲して成功した実例がありますので、何とかなると思います」

<海軍の精鋭部隊SEALs>

「何とかなるとは頼りないな。それでそれが失敗したら、第2案は何や?」

「それはもう、太平洋艦隊の総力を挙げて、船隊大和を攻撃します」

ここでまたペインが口を挟んだ。

「核攻撃で、いてまえ」

バッタ国防長官は、ペイン副皇帝はアホやと腹の中で毒づきながらも、口では丁寧に応対した。

「お言葉ですが、それは乱暴に過ぎますし、後世に禍根を残すかも知れません。それに我が太平洋艦隊は無敵です。船隊大和の護衛艦は数隻の駆逐艦だけです。空母はまだ完成していません。今がチャンスと思います。最新鋭空母バラク・オバマを主力とする太平洋艦隊を派遣します。敵船隊が艦載機の航続距離範囲に入ったら、艦載機を飛ばして船隊大和を撃沈します。また駆逐艦は敵船がハプーン対艦ミサイルの射程距離に入ったら、それで攻撃します。いずれにしても、我々の攻撃力は地球上最大ですので、これに対抗できる海軍はどこの国にもありません。

心配は敵の潜水艦です。潜水艦はいるらしいのですが、索敵にはかかっていません。理由はよく分かりません。潜水艦だけは最大限の注意を払う必要はあると思いますが、我々も駆逐艦、攻撃型原潜を多数配備して、それに備えます」

「それは心強いでんなあ。まずはSEALsの成功に期待しようやおまへんか」

というオババ皇帝の言葉で、今回の会議は簡単に終わった。

バッタ国防長官は早速、海軍作戦部長を呼びつけて、海軍SEALsの出動を命令した。海軍作戦部長は特殊作戦海軍司令官を呼びつけて作戦遂行を命令した。彼はSEALsの対テロ専門部隊であるチーム6の司令官を呼びつけて、命令を下した。チーム6では、早速作戦計画が練られた。まずは空母ジョージ・ブッシュを紀伊半島沖に派遣する。それには空母の神戸港への友好訪問の形式を取る。空母から4機のヘリコプターに分乗した20人のSEALs隊員が、要塞住宅を急襲する。その際、自衛隊のレーダー網を避けるため、紀州山地をぎりぎりの超低空で飛行する。京阪奈の要塞住宅についたヘリコプターから実際に降下するのは3機の15人として、残りは空中待機をして、バックアップをする。チーム6では早速訓練を開始した。まずは要塞住宅の模型が作られた。内部がよく分からないのだが、ビン・ラディン邸を参考にして作られた。問題は建物の屋根は外に向かって急傾斜していて、その上には降下できないことであった。口の字型の建物の中庭は池であるので、そこに隊員をロープで降下させることにした。降下してからは建物の内壁を爆破して、建物内部に潜入する作戦が立てられた。

ところが前回同様、SEALsの作戦計画は、オリンポス山の神々にはバレバレであった。そこでは今回はポセイドンも加わって、ゼウス、ビーナス、アテナ、マーズたちによる対策会議がもたれた。今回は軍事作戦であるので、本来はマーズ担当であるのだが、マーズの乱暴さとアホさを懸念して、ゼウスが指揮を執ることになった。

「さて、諸君。今度は有名なNavy SEALsのお出ましだ。丁重にお迎えしようではないか。SEALsの襲撃はすでに予想されていて、要塞建築の設計には織り込み済みなので、あまり考えることもない。我々の迎撃手段は主としてロボット鳥だ。それを要塞住宅近傍と、侵入経路になるはずの紀州山地に多数配置しておこう。鳥たちにヘリコプターの空気取り入れ口に突入してもらうのだ。鳥には少量の爆薬も搭載しておこう。やつらが住宅上空にホバリングして、中央の池に降下したら、池に多数植えてある金属製の逆茂木にプスリだ。それでも、それを乗り越えてきたら、小型のロボット鳥が飛んで奴らの顔にへばりつくのだ。鳥には粘着剤を貼り付けてあり、顔とか目にへばりつくのだ。目が開かないようにしてやる。そうして動けなくなったところを、投網銃を撃つ。これで奴らを網で絡め取るのだ。そしてパチンコで攻撃する。まあそれはあまり効果はないかも知れない。最後はシークレットサービスとの白兵戦になるが、多分そこまでは行くまい」

というわけで、こちらの作戦は決まった。

2025年某月某日、米帝のバード・ストライク作戦は実行に移された。この作戦名は鳥のように飛んで攻撃するという意味だが、実に皮肉な命名であることは、後で判明した。作戦通り空母ジョージ・ブッシュを離陸したヘリコプター4機は、紀州山地を這うように飛行した。彼らの飛行経路は、遙か上空のレーダー衛星から把握してあるので、予想侵攻経路にロボット鳥を移動させた。来た、来た、鳥たちは急に元気付いた。ヘリコプターが近づくと、数百羽の鳥たちが一斉に舞い上がった。その中へヘリコプターは突入して行った。操縦士たちはナイトビジョンの中に無数の鳥たちが飛び上がるのを確認したと思うまもなく、鳥たちと激突した。多くの鳥たちは単に機体に衝突して、つぶされたが、そのときに小爆発を起こして、外壁を傷つけた。鳥たちの一羽があるヘリコプターのエンジンの空気取り入れ口に突入して、そこで爆発した。そのヘリコプターはきりもみ状になり墜落していった。指揮官は何が起きたかはよく分からなかった。作戦続行か中止か。即座の判断が要求される。指揮官は空母に衛星経由で1機が撃墜されたこと、それでも作戦を続行することを報告した。残りの3機は漆黒の闇の中を北上した。ところが京阪奈が近づくところで、第2波攻撃にさらされた。数百羽の鳥たちが夜空に一斉に飛び上がり、ヘリコプターに雲霞のように向かってきたのだ。そこでも1機が撃墜された。さあどうする。続行だ。蛮勇をふるって、指揮官は無茶な決断を下した。ようやく要塞住宅が見えてきた。そこに近づいたとき、無念、こんども第3波攻撃にさらされた。ヘリコプターは低空を低速で飛行していたので、鳥たちの格好のターゲットになった。数百羽の鳥たちがヘリコプターに突入してきた。住宅の近くに1機が墜落した。しかし指揮官の乗った1機だけは要塞住宅の上空にようやくたどり着いた。ロープで降下だ。Go, go, go! 5名の隊員がロープで降下していった。彼らが池に着水したとき、3名は逆茂木にプスリと突き刺さってしまった。もずの「はやにえ」状態になってしまったのだ。彼らは苦痛で叫んだ。2名は何とか池に無事に降下した。周りからライトが照らされて、2名の隊員は衆目監視になった。そこにロボット小鳥が飛びかかり、顔にへばりついてしまった。二人は池の中でもがいていた。それを見た指揮官は救出のためにロープを降下させた。しかしその時、ロボット鳥がヘリコプターの吸気口に突入して爆発した。そのためヘリコプターはきりもみ状態になり、池の中に墜落して爆発、炎上した。池に降下した隊員もその巻き添えを被ってしまった。

結局、SEALsの作戦は大失敗に終わり、全機墜落、全員死亡という悲惨な結果になった。しかも最後のシーンはすべて撮影されて、全世界に放映された。日本国民は米帝のやり方に激怒した。しかし政府は抗議できなかった。オババ皇帝も激怒した一人である。もっとも理由は違うが。最精鋭のSEALsが衆人環視の中で全滅したことに対する無念さである。米帝の恥をさらした。彼女は早速、バッタ国防長官を呼んで、太平洋艦隊の出撃と船隊大和の撃滅を厳命した。第二次太平洋戦争の勃発である。

「戦争開始!」

オババ皇帝は子供のように叫んだ。「戦争」なんと魅惑的な言葉であろうか。オババは米帝の最高司令官として、この言葉を発したいために、皇帝に立候補したのである。オババの前任者のアメリカ合衆国大統領の多くは、好きな戦争を楽しんだはずだ。なんでワテが戦争して悪いわけがあろうか。オババは今後の成り行きを想像してわくわくした。

続く

   
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