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超知能への道 その28 事代主命、難病を治す

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「事代主命はなかなかやるじゃないか」とゼウス。

「はい、つぎは事代主命の真の力を世間に見せる時です」と私。

「何を考えておる?」

「まずは難病を治してみせます」

「キリストの奇跡のようだな」

「そうですね。そのうち、目の不自由な人の目も見えるようにしましょう。ここまでやれば、誰も反論できないでしょう」

事代主命が宣言したように、難病のうちでも特に難病の筋萎縮性側索硬化症の患者を治療するプロジェクトを始めた。今回は理神道の宣伝期間だから、交通費は患者持ちとしても、治療費は無料でサービスすることにした。この病気の日本の患者数はほぼ一万人程度である。西日本の患者は大阪湾に浮かぶ病院船、東日本の患者は単冠(ひとかっぷ)総合病院で治療することにした。一度に治療できる患者は500人くらいだから、両方で1000人、一人の入院期間が2週間として全部で20週間かかる。半年足らずである。

西日本の患者は問題なかったが、東日本が問題である。というのは患者を運ぶのは、船か飛行機だが、飛行機の場合は札幌から、船の場合は釧路港から択捉島に直接行けば簡単だ。しかし外務省がビザなし渡航を認めないのだ。普通はロシアのビザをもらい、飛行機で札幌から樺太のユジノサハリンスクに飛び、そこから択捉島に飛ぶ。その道すら外務省は難色を示している。もっともこちらはロシアのビザがあれば文句は言えない。しかし動くのも困難な患者を乗り換えさせるのは大変だから、日本から直接に択捉島にビザなし渡航を申請したが、外務省は頑として許可しない。理屈ではない、面子の問題なのだ。もっとも財務省は難病患者が減れば、国家助成が減るので好意的なのだが、直接の管轄でないので声が出せない。厚生労働省は複雑な心境だ。難病患者がへることは良いことなはずだが、自分の管轄外でやられることに不快感を示した。安全性が保証できないとかなんとか言った。

ところがそのことがネットやマスメディアに漏れたので大変なことになった。外務省と厚生労働省に抗議のメールと電話、ファックスが殺到したのである。さらには総理府や首相官邸などいろんなところに、電話が殺到して業務ができなくなった。さらには外務省と厚生労働省の幹部の私宅の電話、個人のメールアドレスが晒されたので、そちらにも抗議が殺到した。ついに役人は根を上げた。ビザなし渡航を認めたのである。

実は、誰も知らないが、この抗議のメールや電話のかなりな部分は、事代主命が直接行ったり、人々を扇動したりした結果なのである。こうしてネット世論を自分に好意的な方向に曲げるのだ。逆に、たとえば2chに事代主命に批判的な書き込みなどがあれば、その人物の実名、住所、職業、全てを晒して投稿者を社会的に抹殺する。事代主命はネットを全てモニターしているのだ。これが事代主命の唯一者としての秘められた恐ろしさなのである。事代主命はこのようにして、この国の権力機構に食い込んで行ったのだ。

こうして患者は続々と大阪湾の病院船と単冠市の総合病院に集まり、ナノボット治療を受け、2週間ほどの入院ののち、完治して晴れやかな顔で退院していった。今回の事業で特筆すべきことは、英国の著名な宇宙物理学者で、やはり筋萎縮性側索硬化症を患っているホーキンス博士を治療したことである。マスメディアで大きく報じられ、大きな宣伝になった。ホーキンス博士の入院の時も退院の時も、単冠総合病院の前にはマスメディアがおおく集まった。もっともホーキンス博士は病気が治るとマスメディアは一顧だにしなくなった。現金なものだ。また日本で一大病院グループを経営している徳山氏もこの病気である。彼も単冠総合病院で治療を受けて完治し、感動した。ぜひ日本でもこの治療法を広めたい、そのためには治験に協力すると述べた。

Hawking

筋萎縮性側索硬化症を無料で治療したので、他の難病の患者たちも治して欲しいと言った。しかしそれに対して、理神道側は今回は宣伝期間であり、次回からは有料であると宣言した。しかし理神道の信者には特別の計らいをするということも付け加えた。それでは信仰による差別だから憲法に違反するというクレームもあったが、病院船にしろ、択捉島にしろ外国なのだから、憲法は適用できないと理神道は反論した。さらに言えば非信者を差別しているわけではなく、信者を優遇しているだけだから、問題無いとも主張した。

それはともかく難病の患者だけで百万人近くいるのである。今の病院船と単冠総合病院をフル稼働しても、せいぜい年間2万人を治療するのがやっとのことだ。このままでは難病患者の治療だけで50年かかってしまう。理神道側はさらなる病院船の建造と、単冠総合病院の増床を約束した。これらの動きは、日本の病院や厚生労働省には面白くない話であった。自分たちの既得権益が侵害されるからである。しかし面と向かって事代主命に反抗すると、どんな祟りがあるかもしれないので、黙っていた。

続く

   
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