メンターとして中馬さんから論文が書けない、といわれて(http://jein.jp/blog-masako/569-blog-45.html)それに対して書いた私のお返事です。
1.論文を書くこと・・中馬さんへの坂東のお返事
私のことも坂東さんとよんでくださいね。私たちの分野では、みんな、お互いに平等で議論するので、先生とは言わない習慣です!)
研究発表会では、興味深いお話を聞かせていただき、ありがとうございました。とても印象に残っています。素晴らしいシステムをうまく使って、研究を発展させていくのはなんとも心豊かになる取り組みで、学問の発展をきちんと見据えた男女共同参画の進め方に感心したと同時に、そのなかで、生き生きしたお仕事を進めておられるお姿に、大変心強く感じるとともに励まされました。
私をメンターに選んでくださって光栄です。これを機会に交流できたたら、こんなうれしいことはありません。
中馬さんのあの時のお話のレジメは、今でも持っております。とりだしてみると、そのときの議論を思い出します。この時、発表なさった皆さん、どの方もとても生き生きして魅力的な方たち、それにさわやかな印象でしたが、それにもまして、お話の中身の方が、より鮮やかに思い出されます。
21世紀、アジアが今発展途上で、工業化が進んでいます。そのうちに食糧危機の時代が訪れるでしょう。そうなる前に、農学、なかでも植物病理学という分野は、大変重要になってきますよね。とても大切な分野ですし、現場のトレーニングも重要な分野とお見受けしました。バーバラマクリントックのトランスボゾンという名前を聞いた時は、私の素粒子の分野でもボゾンというのは、ボーズというインド物理学者がいいだしたもので、フェルミがいい出したフェルミオンとともに素粒子の統計的性格を表す名称で、そんな同じ名前が生物学でも出てきたので、おもしろいなあ、と思っていました。
やはり人の名前からきているのですかねえ。論文を書くことは、とても訓練になると思って頑張ってほしいです。たくさん面白いことを見つけて、わくわくしているうちに書く方が、いいと思います。たくさんのデータもたまって、楽しそうではないですか。論文にしていると、またアイデアがわいてきたり、新しい問題点が見つかったり、整理されてきます。論文を仕上げるための努力は、自分の今やっている実験の位置づけを、大きくとらえて全体像が見えてくること、データを整理し、そこをしっかり見つめなおすことによって、今までの認識が、さらに透明になってくるのだと思います。
あせらずに、たくさんのデータを、どのようにまとめていくかを考えればいいのではないでしょうか。たくさんのデータをいきなり全部整理してどのようにいくつの論文にまとめるかを決めるのは大変ですから、まず、自分が一番わくわくするのから、どのような順序で、どういう風にまとめるかを、整理したらいいと思います。イントロやサマリーは、後回しにして、まず、このデータをこのような論点でこういう風に、まとめてみる、といったやりやすいところから、作っていって、それでいくつかのまとまりができてきたら、サマリーを、そしてイントロを、ということかなあ、私たちの論文の場合、こんな順序ですが、そちらの場合はどうですか?
やさしいところから手をつけてもいいように思います。だって、あんな立派なPPTのまとめがあるのですから、論文書くのはそう難しくないように思います。論文の構成については、中馬さんの場合、あの発表を聞いているのでそれほど困らないのでは、と思ったりします。
なんでしたら、一度構想を日本語でもいいから、整理してみて、私に説明してくだされば? 人に説明していると自分の構想がはっきりしてくるかも…素人に、正確に説明できるというのもけっこう頭を整理するのにいいかも・・・・。
第1章は、測定手段の説明、第2章はデータの提示とか、いかがでしょう。とりあえず、自分で、どこが引っ掛かって論文ができにくいのか、どうもデータはたっぷりあるようですので、その点、一番肝心のものはそろっているように思います。
とりあえず、お返事です。とりあえず、メールにて、それではまた。
坂東昌子
2.中馬さんと会う
それから、中馬さんと実際にあって話し合うことになりました。神戸と京都の間をとって、阪急の大阪駅ということになり、夕食をとりながら、おしゃべりをしました。
私にとっては、生物学は素人の分野ですから、沢山質問があります。そういう質問をしながら、中馬さんのお話を、じっくり聞いていると、十分にデータはある、そして分析もある程度できている、ということが分かりました。それでは何が足りないのでしょうか?
私は授業でやった流れ図を書く提案をしました。1つの主張をまとめようと思うと、それをどう順番に説得的に並べたらいいか、が問題になります。このとき、論理を図に書くのです。いつか、ポスドク問題で、会社の社長さんにヒアリングに行った時、「絵が描ける」人材が欲しいといわれました。この意味は、論理を整理し、グローバルな描像をしっかり把握できるということではないかと思ったことがあります。
愛知大学では、ゼミ生たちに、あるテーマを決めてまとめるような課題を出すと、みんなエネルギーがあるのでいっぱい調べてくるのですが、それをいざ、まとめるとなると、的を絞り、本当にいいたいことをしっかり見極め、不要な情報を捨てて、筋を通すことが必要になります。この構成力を養うのが、実はとても大切なのですね。
それから英語が苦手な場合があります。こういうときには、読んだ論文で、いい言い回しは利用するといいのですね。そうしているうちに、だんだん慣れてきて、言い回しが分かるようになります(と偉そうなことを言っても、私も苦労したのですが)。
そんな話をしながら、彼女の仕事を教えてもらっていると、如何に彼女がいいところまでいっているか分かってくるし、それに、データがたくさんたまっていること事実でした。話はつきず、最終電車までになってしまいました。
3.中馬さん、猛然と論文を書き始める
それでも、いろいろと研究者としてやっていけるかどうか、きっと悩みは大きかったでしょう。
――――中馬さんから―――――
最近毎日考えているのは、わたしはこのままポスドクを続けていていいのだろうか・・・ということです。何でもいいから安定して働くことのできる仕事を見つけ、もっと親孝行しなければ、という気持ちと、今までとは生活スタイルを変え、なんとかポスドクから正規雇用へ努力し続ければよい、という気持ちが半分ずつです。でも、研究者の道をとれば、おそらく、母とは離れて住まなければならないのではと思います。それに今は、論文の筆がすすまず、「やっぱり、わたしは論文が書けなくて、研究者には向いてないんじゃないかな」と考えてしまいます。
と、書いていると、だんだん後ろ向きになってきました。でも、先生からいただいたお言葉が、とてもうれしく、本当に元気の原動力になっています。研究は楽しい!自分の研究成果を発表できることがうれしい!という気持ちは、今、ポスドク生活が長いからこそ、純粋に感じ、実践することができるのではないかと思います。
今日は、これから育成研究員としてのOJT調査で、コーディネーターの尼川さんと近藤さんと、1時間ほどの面談です。1ヶ月間の進捗とか心境など、大人になって、こんなにたくさん自分だけの話を聞いてもらえる機会がある、というのは本当にありがたいと思います。その後、お昼は、「ランチタイムカフェ」です。隔週水曜日、桜井さんと西谷さんが企画してくださっています。桜井さんが、いろいろなところで勉強してこられたことを、かいつまんで説明してくださるのが、とても楽しみです。
先生のブログ、拝見しました。京都の女性研究者の皆さんが、とても活発に研究されていることが想像でき、わたしも機会があれば、そんな皆さんとお話してみたいと思いました。砂の話は、水で山を作れないけれど、砂では山を作れる、というところが、とてもおもしろいと思いました。物理的思考の方法がわかりませんので、わたしが考えると、哲学のようになってしまいますが、似ているけど違うところを探すというのは、生物学でもよくやることです。また、長々と書いてしまいました・・・。
そして、2010年のお正月には、女性研究者たちと我が家で楽しくおしゃべりもしました。
4.論文賞ゲット
そして・・・。あれから、ほぼ半年がたちました。2009年12月24日に、再び、「神戸大学理系若手女性研究者・研究最前線2009~プロジェクト奨励研究員研究発表会~」が開かれました。なんと、クリスマスイブの2009年12月24日、 神戸大学キャンパスの瀧川学術記念会館で開催されました。 「再チャレンジ!女性研究者支援神戸スタイル」事業による最後のイベントでした。
この報告会では、今度は、中馬さんのタイトルは、「Arms race-イネいもち病菌とイネ品種の軍拡競争」です。以前の面白い結果に加えて、生物生き残りの戦略がグローバルに見えてきた発表でした。他の方々も含めてその際立った成長ぶりが見えるものでした。
ところで、この話がきっかけで、実は、故中西健一さんといろいろ交流が再び始まったのは、丁度、中馬さんとおしゃべりした2009年9月のことでした。「ちょっと、教えてほしいことがあるのですが、ちょっと変わった質問なのでが・・・」というメールを、久しぶりに中西健一さんに出したのです。(あいんしゅたいんホームページの理事長日記(ブログ その43)、ならびに、基礎科学研究所ホームページ「科学の散歩道」の「フェノロジ ー 生物は季節の気配を感じるか?」をご覧ください)
このあと、中馬さんは大変素晴らしい仕事をまとめられました。これは生物の戦略に関することですので、「科学の散歩道」に紹介しようと思います。お楽しみください。


