一般講演会報告 - NPO法人 知的人材ネットワーク・あいんしゅたいん https://www.jein.jp/networkofcs/information-list/lecture/lecture-report.html Tue, 30 Apr 2024 14:26:03 +0900 Joomla! - Open Source Content Management ja-jp 平成30年度「科学技術コミュニケーション推進事業ネットワーク形成型」報告会 報告 https://www.jein.jp/networkofcs/information-list/lecture/lecture-report/1638-report-181124.html https://www.jein.jp/networkofcs/information-list/lecture/lecture-report/1638-report-181124.html

 

平成30年度「科学技術コミュニケーション推進事業ネットワーク形成型」報告会
「福島の事故を未来へ生かすために」 ~高校生・市民・科学者の出会い、語らい、そして未来へ~

 

第1部(午前の部):若者・高校生と大人を結ぶ交流会(10時~12時)

          ● ポスターセッション
          ● 全国高校生ワークショップ(中・高校生が福島の問題を語り合いました)

第2部(午後の部):市民と若者と科学者で作る未来(13時~17時)

1.挨拶:対立を科学の心で克服しよう

<有馬朗人先生のメッセージ>
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動画編集 石井敬之(JAIF)
 

2.3年間を振り返って
 ● 避難者からのメッセージ 伊藤早苗 紙芝居「へったれよめっこ」
 ● 高校生代表からのメッセージ 京都女子高校・東京学芸大附属国際中等教育学校・福島県立安達高校

 ● 福島訪問(宇野賀津子)

あいんしゅたいんの福島関連の活動を、3.11直後からさかのぼってまとめました。改めて、ずいぶんと色々やったねとおもいました。直後の坂東さんを含む物理学者との議論、分野間の意見の相違や育ってきた環境による認識の違いを実感しました。その後のそれを埋めて行く努力と議論も懐かしく思いました。避難者と一緒に、京大原子炉、美浜発電所へいってホールボディカウンター検査を受けたこと、京都や神戸で福島からのWBC検診車を迎えたこと。等々、その課程で勉強したことなど。その過程で、JSTの助成金や福島からの助成金が大きな役割を果たして、ここまでこれたと改めて思いました。

3.子供が大人を変える
 ● 子供への科学普及(教材披露)(角山雄一・吉田裕介・大川真澄)

放射線影響に関する諸問題を理解し解決するためには、数量的に問題を捉えるとともに統計的な理解に基づいて判断することが求められる。しかしながら我が国では統計について学ぶ機会や統計的な思考法をトレーニングする場はかなり限られている。そこで当事業に参加する学生や院生たちが、小学生でも体験的に理解ができるような統計実験カリキュラム「夜店のおっちゃんの嘘をあばけ!」及びテキスト「めざせ統計マスター」を作成した。実験カリキュラムについては、実際に福島でのイベント等で実演を行なったが、参加者の子ども達には大変好評価であった。こういった教材等の拡充を今後も検討したい。

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 ● 白熱教室の経験(澤田哲生・大学生)

参加型対話プラットフォーム『白熱教室』による3・11後の福島県健康調査の課題解決について紹介した。
福島県で実施されている未成年者への甲状腺検査に関して、低線量放射線被ばく環境下で長く生活して行く上での〝相場観〟の構築を旨として、効果的な参加型ダイアローグ(対話)を探求することを目的に、首都圏と福島県浜通りの中高校生30名程度が参加した対話型『白熱教室』を2回に亘って実施した。その結果、図に示す12項目の専門家への疑問などがマニフェストとしてまとめられアドボカシー*に到達できた。これにより参加型ダイアローグの有効性が確認された。今後の課題は、中高生と専門家のボトムアップ型の問題共有そして解決の機会を協創し、中高生/専門家/一般市民の参加型対話ネットワークを拡充して行くことにある。
*弱い立場にある者の生命や権利を擁護し代弁することをいう。

 ● ゆりかもめによせる思い(角山雄一)

およそ2年前に始まった中学生・高校生たちの手による自然環境放射線マッピングプロジェクト「TEAMユリカモメ」は、当初は放射線を実際に測定をすることで測定の難しさやデータの読み方、さらにはリスク感覚を養うことを目指す活動であった。
それが参加生徒や指導教諭の皆様のご協力により、福島と東京、関西の生徒たちが顔を合せて討論を行う場へと大きく飛躍した。
議論を通じ、生徒たちは自分とは異なる考え方がいくつもあることを知り、より多角的に物事を捉えることを意識するようになる。また機会があればこのような活動が実施されることを切に望んでいる。
ご協力くださった皆様に感謝申し上げます。

4.大阪コールネットワーク

 ● 国際会議 次の段階への飛躍(JSPS報告・和田隆宏)

私たちは、日本学術振興会に「放射線の生体影響の分野横断的研究」に関する研究開発専門委員会を組織し、2015年10月から3年間活動してきました。2018年3月には大阪で国際会議を開催して、低線量放射線の問題や放射線の医療利用について議論し、国際連携を呼びかけるOsaka call-for-actionを採択しました。放射線の影響を科学的立場から定量的に議論することは、放射線を利用していく上でも大変重要で、これからも活動をさらに発展させていきます。

 ● 科学者の動き (大阪コールネットワーク 土岐博)

国際会議(3月)では弱い放射線の生物への影響をヨーロッパ、アメリカ、日本の研究者の協力のもとに推進しようというOsaka Callが採決された。それを受けて大阪大学放射線科学基盤機構が日本側のホストとしての活動することを報告した。弱い放射線の生物への影響を科学的に研究するためには何をすることを意味するか、人工放射線レベルを自然放射線レベルを基準にすることの必要性を述べた。

 

5.パネル討論:我々は福島から何を学んだか(討論含め90分)

問題提起:田中司朗 パネリスト:宇野賀津子・澤田・角山雄一・和田・土岐博・鈴木

「我々は福島から何を学んだか」というテーマでパネル討論を行った。国際市民フォーラム実行委員長、工学者、生物学者、医学者、統計学者、物理学者から、それぞれが得た教訓を述べた。その後、会場からは、「科学者の言葉が市民には難しく伝わらない(たとえばカタカナ用語は避けてほしい)」、「市民のことを理解しようとする姿勢に欠けている」、「その一方で科学者がデータについて情報発信するときは、データソースや解釈について十分な説明が必要」、「震災後のリスクコミュニケーションでは、情報の中身と伝え方の両方に問題があった」、「文系・理系、異分野、高校生と科学者の間には壁がある」、「大学教養課程・哲学と歴史・リスクリテラシー・エビデンスレベルなどを学んだり教えたりすることが必要」といった意見が挙がった。

6.特別アピール(閉会)

問題提起? 3つの提言?
私たちが目指すべきはこの21世紀型の分野横断型プラットフォームの構築だと考えています。その確信を、今回の『ネットワーク基盤構築』活動を通じて多くの仲間と共有し深めてきました。
私たちは今後市民や子供達に幅広く応え、災い転じて福となすために以下のことをここに提言したいと考えます。
1)市民、子供達、そして科学者をつなぐネットワークをより広範囲に深化させていきます(ゆりかもめ)
2)科学者も立場や考え方を乗り越えたネットワーク対話の機会を創出していきます(Osaka Callネットワーク)
3)「分野横断型課題」の解決のマインドを多くのセクターと共有し、その方法論を構築していきます。 

参加者:合計70名(中高生28名・市民23名・科学者19名)

    ● 参加者の感想

小波秀雄さん

高校生、市民、科学者が一同に介して意見を交換したこと自体、画期的な「事件」であったが、共通の関心をもつ人びとの間でさえも現状ではまだまだ「ことば」を共有しきれていないことを痛感した。
それぞれの立ち位置や知識にちがいがあるとはいえ、わかりやすく語ることを、とりわけ科学者は深く考えなければいけないのではないだろうか。また自分にとって最も有意義だったことは、コーヒーブレイクの時間に高校の生徒や生徒たちと話をかわして、活動のようすに触れることができたことだった。
このような機会はさらに発展させてほしい。

 

山崎泰規さん

結構長く研究者生活を送ってきましたが、こういった大変ユニークで貴重な機会をいただいたのは初めてでした。ありがとうございました。

まず、参加していた高校生諸君の的確な発言には舌を巻きました(午前の部に出席できなかったのを大変悔やんでいます)。高校生集団に活動の場を作り、活発な発言のできるグループとして育ててこられた坂東さんをはじめとしてこの会の活動を進めてこられた皆様に深い敬意を表します。今回で取り敢えずの締め、と言うことですが、今後、大学生等になった彼らがautonomousにこういった活動を様々な方向で継続・発展させ、次の高校生諸君を巻き込んでいくようになると、活動の輪が次々広がって、新しい段階を迎えるのではないかと強く期待しています。

病院などでお年寄りに幼児語で話しかけることは失礼だという認識が最近ようやく共通のものになりつつあるようです。報告会での高校生や一般の方の議論を拝聴していまして、科学の専門家が高校生や一般の方など非専門家に語りかけるときに、あるいは同様の”幼児語”を使おうとしてしまっているのではないかとふと思い自省しています。これまで、サイエンスインタープリーターやメディアの科学部の方々が専門家との間のブリッジ役を担ってこられたのかとも思いますが、先端的部分で活躍している科学者自身からの通常の言語でのメッセージ発信も同時に重要で、その際適切な言語の開発が必要であろうと感じた次第でした。

上のことに関係しますが、科学研究が社会にとって有用であることがコンセンサスとなり、研究者という職業が成立してその人口が大幅に増加すると、効率的に専門性を高める/最適化することが職業人としての研究者の評価軸となって、分野縦割りによる蛸壺化が促進されざるをえなかったのかと思われます。蛸壺化の回避策、改善策を考えるときにはこの必然性を考慮に入れておかねばと思ったりしました。

報告会で伺った粘土質と砂質等の問題は大変興味深かったです。科学は後付けで観測事実を説明することには得意ですが、様々な境界条件のもとで現象を事前に予言しておくことには実は不得意なのだと改めて認識しました。この辺、原発事故は起こらないとして、具体的な実験的研究を放棄してきた日本と対照的に、例えばフランスでは、原発の模擬事故のようなことを実際に意図的に起し、何が起こるかを調べていると言うことを聞きました。あるいは近代科学の初期からの担い手である彼らは、科学が不得意な部分を明示的に認識しているのかとも思いました。 
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一般後援会報告 Thu, 29 Nov 2018 07:50:33 +0900
福島県郡山市出張授業報告 https://www.jein.jp/networkofcs/information-list/lecture/lecture-report/1595-report-180519.html https://www.jein.jp/networkofcs/information-list/lecture/lecture-report/1595-report-180519.html

 

「福島県郡山市出張授業 ~京都・北海道から科学者達がやって来る」報告

郡山市の安積歴史博物館の講堂において、福島の子供たちを対象としたイベント「京都・北海道から科学者達がやって来る!!」が開催された(主催:未来都市郡山を創る会、共催:NPO法人福島県自然体験合校協会、ベスト学院、NPO法人あいんしゅたいん、後援:郡山市、郡山市教育委員会)。
保護者等もあわせ初日約20名、2日目約50名の参加があった。

まずはNPO法人あいんしゅたいん坂東理事長より、「宇宙、人間、素粒子」と題し、スケールの異なる世界を統一的に理解すること、すなわちミクロとマクロをつなぐ学問とはどのようなものなのか、といった宇宙や生命の本質に迫る内容の話があった。

次いで角山が「生き物の多様性」と題し、現存するめずらしい生物を紹介、その上で生物多様性の意義と多様性をもたらす遺伝子変異についての解説を行った。

その後、免疫学の大家である北海道大学遺伝子病制御研究所・高岡晃教教授を特別にお招きしての、免疫についての講演があった。
免疫細胞をキャラクター化した「免疫戦隊まもるんジャー」を登場させるなど、子供たちが楽しみながら学べる内容であった。
3人の講演後は、宇野も加わってのディスカッションが行われた。坂東と宇野の論争は、参加者たちを大いに沸かせていた。

翌日午前、学生講師による「おもしろ統計教室」が行われた。

大川真澄氏が露天商に、川端庸平氏がその客に扮しての「お祭りの夜店のくじ引きに当たりが含まれる割合を、くじを全部引かずに調べるには」というテーマの寸劇や、手作りガラガラくじを用いた実験などを通して、参加者たちは標本化や大数の法則といった統計学の基礎を体験的に学ぶこととなった。

午後は、高岡教授と宇野より、免疫の仕組みや免疫に関する事柄についての講演があり、その後安積高校よりお借りした40台の顕微鏡を用いての観察実習が行われた。参加者たちは免疫細胞やがん細胞、細菌、カビなどの標本を観察し、「まもるんジャー」の実物を目にすることとなった。

 

 

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一般後援会報告 Mon, 04 Jun 2018 09:48:09 +0900
おもしろ科学教室 in 福島 参加報告 https://www.jein.jp/networkofcs/information-list/lecture/lecture-report/1520-report-170812.html https://www.jein.jp/networkofcs/information-list/lecture/lecture-report/1520-report-170812.html

 

福島県環境創造センター開所半年記念講演会
おもしろ科学教室 in 福島

● 参加報告

コミュタン福島 2017 年夏の祭典 第2弾 参加報告書


● 工作動画

<お手軽実験工作タイム 動画1>
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<お手軽実験工作タイム 動画2>
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一般後援会報告 Fri, 08 Sep 2017 12:32:12 +0900
福島県環境創造センター開所半年記念講演会報告 https://www.jein.jp/networkofcs/information-list/lecture/lecture-report/1467-report-170121.html https://www.jein.jp/networkofcs/information-list/lecture/lecture-report/1467-report-170121.html

 

福島県環境創造センター開所半年記念講演会
これでわかる!放射線データ ~ 科学的に見る目を養おう ~

 ● 講演者報告

{slide=1月21日報告}
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1月21日、郡山駅に集合。福島県三春町にある環境創造センターに宇野賀津子、坂東昌子、角山雄一、吉田慎太郎(京大大学院 工学研究科)、吉田裕介(京大大学院農学研究科)、そして鳥居寛之(東大:ボランティア)が参加、前日に降った雪道を全員で三春に向かった。
空は晴れていたが前日の雪が除雪され路肩に積まれていた。除雪されていなかったら、雪道になれた方に迎えに来て貰わなかったらとても行けなかっただろう、三春への道だった。
途中有名な三春の滝桜が雪桜となって我々を歓迎し てくれた。

環境創造センターの交流棟のコミュタン福島につくと、マスコットキャラクターのキビタン、エ コタンのお出迎えに、一同大喜び、その後午後からの講演会の打ち合わせをした。
OHPとスライドが使えるようお願いして、あとはコミュタン福島を見学、福島の3.11からコーナーでは津波、原子力災害との闘いの記録と記憶を映像とパネルで辿った。
福島の環境の今のコーナーでは、原子力災害からの復旧、復興の今が紹介されていた。放射線ラボでは、放射線について学ぶ工夫がされていた。中でも大迫力は、80cm角はあろうかという霧箱、α線、β線はもちろん、ときどき飛び交う宇宙線も見ることができた。30cm角の装置は見たことがあるが、ここまで大きくなると自然の放射線だけでこんなにもあるのかと改めて思った。
ドームシアターの環境創造シアターに立って、放射線の話や福島ルネッサンスの映像を見た。福島ルネッサンスのあまりに美しい映像に涙が出そうになった。
放射線の話には、「あの図はちょっと!放射線が直接DNAにアタックするのはみんなに誤解を与える。8割は、周りの水にあたって活性酸素など、ラディカルになった分子がDNAを傷つけ るのだから」とか、「原子力を使わない技術の開発というけど、原子力そのもののいい点や悪い点をきちっと指摘すべき。現在の技術を向上させる意味を明確にしないと誤解を与える」など細かい部分にすぐ問題点をあげるメンバーがいて、改良の余地はあるものの、なかなかの出来映えでした。
他に環境創造ラボもあり、ゆっくり見ると、2~3時間は十分楽しめる場所でした。科学館として質の高い展示を心がけているとのことで、お薦めです。入場料が無料というのもうれしいです。2階には実験コーナーもあり、X線撮影や遮蔽の実験のできる霧箱もありました。

午後1時半から本来の目的である「これでわかる!放射線データ~ 科学的に見る目を養おう ~」を行いました。演台代わりに3つの丸テーブルを置いていただき、角山、坂東、宇野が座り、対談の雰囲気を作りました。

まずは角山の司会で聞きたい事、疑問点を聞き出しました。
特に未来のリケジョ(小学校1年)からの「今日は雪が降っているのに、なぜ昨日より小学校グランドの線量計は高い数字なの」という質問(福島の方は、雪が降ると普通線量が下がる事をご存じ! 彼女は毎日、小学校のモニタリングポストの数字を記録していたました。)に、3人は「うーん」、宇野は「美浜原発に行ってホールボディカウンターで測定した時も雨が降って、それにちょっと濡れた人からはラドン(正確には娘核種のビスマス)が出た。」と説明しました。

雨が降ると空間線量が増えることは、事故直後の当NPOの東日本大震災情報発信ページでも触れていますが、その中で放射線量率の調査に思う(ブログその60)にも、当時の線量が雨の日に増えてことの原因を探ることの説明として書いてあります。
空間線量が増えるのはまた、フロアにいた医学物理専門の吉田慎太郎が、「雨が降ると少しラドンなどの影響で上がることもある」と説明しましたが、フロアからは「院生の説明が一番よくわかった」との声も聞かれ、若い人が丁寧な回答をしたことはとてもよかったと思います。
雪が降ると、空間線量は地面に沈着した放射性物質(ほとんどはセシウム137か?)からくる部分が遮蔽されるので線量が減少するということですが、今度は逆に、空間にある塵に含まれる放射性物質が雪や雨に混じって落ちてくるので増える部分もあるということです。
ただそう考えると、福島の原発由来の放射線が土地に沈着していた量よりも、一般に他の地域で見られる雨の効果のほうが効いていることになり、まあ原発由来の線量がいかに小さくなっているかを示しているようなものでもあります。
「雨が降った時のデータは日常でも、例えば浜岡原発のデータでも少し上昇するのがはっきり出て います」と坂東も説明しました。
また、角山は最後に、モニタリングポストの数字をネットで確認し、長い期間を見ればこの程度は誤差の範囲であることを説明しました。
更に、これらの説明に東大の鳥居氏が補足説明を加えました。生体の中では、セシウムとカリウムは科学的な性質が似ているので、ほぼ同じ振る舞いをするけれども、生物の体の中では、それぞれ原子の種類によって異なった振る舞いをすることもあるので、注意が必要だという話も出ました。
だんだん細かい話になってくるので、角山が、「そこらあたりは生物をやっている人と物理をやっている人で、違った意見もある段階なので、ここで はこれくらいにしましょう」という話で落ち着きました。

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いろいろな放射性核種がある中で、各々の性質を半減期などの物理的性質と、生体内での振る舞いとをすべて考えて、生体への影響を見なければならないことをどのように説明し、まだまだ分からないこともあるにしても、一応「シーベルト」という単位で比べるところまでたどり着いたこともわかってもらわないと、どこまで信用していいかわからない方々に納得してもらえないなあなどと思いました。これもこれからの課題です。
また、旅行で色々なところを訪問するたびに、原爆の被害を見てくるようにしているという方から は、「たくさん被害の現状が出ているが、どれがどの程度でどれくらいの関係にあるのかわからず、ごちゃごちゃに放射線の危険の様子が頭に入っているのだが、これを整理して、位置付けをはっきりしてくれるとうれしい」と言われた。

なるほど、原爆の被害、ビキニ事件の状況、JCO事故の惨事など、様々な被害状況が深刻な形で胸が痛む情景とともに語られることが多いが、いったいどの程度の線量で、どの程度の事故と考 えていいのかという話は全体としてき ちんと説明されないことが多く、そのため、チェルノブイリ事故も、広島・長崎 の原爆も、そして福島も同じ状況として語られると、規模も放射線量も被害状況もごっちゃになって頭に入ってしまう。そこをきちんと量の概念を基にして説明しないと、すべて危険とかすべて安全とかいった感情だけが優先することになる。

科学的にものを見る、数量を理解するということの大切さを痛感しました。「データ32」には一応放射線量で分けた各々の説明があるのですが、これではまだ不十分でしょう。
それは「桁の異な る線量」の捉え方が難しいからだと実感しました。例えば、自然に人間の体内で起こるDNAの損傷、つまり「突然変異」は放射線量に直すとほぼ1~10シーベルトとなるが、自然放射線が1年間に与える被ばくは、ほぼ1mSv、それは、1000分の1のオーダーであるという認識がないと、100のほうが大きいなあと単位を気にしないで見る人は結構多いでしょう。
実際には背中にハエが1匹とまっていたら体重が増えるって思うかどうかだという感覚が身につかないと、なかなか理解できません。今度作るパンフレットでは、こういうところも分かるようにすべきだと教えられました。
線量の違いのこと、第5福竜丸事件のことなどについても質問がありました。宇野は第5福竜丸事件と輸血肝炎について説明しました。
また坂東は、福島の高校生が先日の白熱教室で、「健康調査で甲状腺がんがほぼ1万人に1人出たことで、今問題になっています」という大人の説明に対して、 質問した言葉「この多い少ないは、何と比べて多いと言えるのですか」「どうして、それが放射線の影響だと言えるのですか」という鋭い質問を投げかけたことを紹介して、「これはものすごく大切な鋭い質問です。というのは、これこそ今統計学や疫学で問題になっている重要な点なのです」と説明し、「実際チェルノブイリではこのような議論が出て、その解明に20年もかかったのです」 と言って、そこで活躍した2人の女性研究者、エリザベス・カーディス博士や、エリーネ・ロン博士の仕事を紹介しながら、彼女らの果した役割を紹介しました。
そして、福島の甲状腺検査は研究としても、今後放射線の影響が「どの程度あるか。そしてそれを防ぐにはどうしたらいいか。」ということを明らかにしているためにも、とても重要であると話しました。また、OHPで「データ 32」のデータを映し出して、放射線の影響について説明したりもしました。

畠福島県副知事、角山環境創造センター所長も聞きに来られ、雪のために人数的には広いホールは少し寂しいところでしたが、これまでの講演会と違った対話型議論がある程度できたかなと思いました。

また、この大人の講演会で質問した小学校 1 年生の女の子は、放射線測定を毎日記録していると のことですが、この子は、毎週のようにこのコミュタンにやってきて分厚いノートを作って勉強し ようと意欲を持っているそうです。わあ、すごい子がいる、質問も素晴らしい!、一度私たちのや っている親子理科実験教室に来てほしいなあ、と思いました。あいんしゅたいんでも放射線をずっ と測定している森田優奈さん(現在中学 2 年)も小学校から始めています。みんながこうしてお友達 になって励ましあうようなグループになればすてきだなと思いました。

この中で一番印象に残ったのは、今福島で行っている「お米の全数調査」です。
ここ数年、何も異常が出ていないのです。しかも、全数調査を行うにはものすごい手間と時間がかかり、ほかの重要な検査もそのためになかなかはかどらない状況を聞いて、統計学の基本をもっとみんなが知ってもらわねばいけないことを痛感しました。
当あいんしゅたいんが開催している「おもしろ算数塾」では、統計におけるサンプリングの大切さと大数の法則を子どもに教えています。どの程度のサンプリングサイズでどの程度のサンプルを取ってくれば、ほぼ全体が分かるとするかというのを体験的に実験して、全数調査をする必要なないことも体験できる試みをやっています。それはまた別途ご報告するとして、日本人に統計的センスがないことは問題ですし、これからの私たちの課題でもあります。

反省点は多々ありましたが、職員の方からは、「今まで講演という形で行うことが多かったのですが、対話型で、先生方の間でも異論があればお互いに疑問を出し合うやり方は、納得がいくしよく理解できる。このやり方はいいですね」と今までの講演会とは違った雰囲気とのお言葉をいただきました。

終了後は、角山は和室で子ども達とラドラボのカードゲーム、大人は玄関のフリースペースで個別質問を受け付けました。
京都から持ってきた「なめてかかれば挫折知らず」の京大飴も人気、三春にはトリウムの多いところがあり、野菜の計測値が上がることがあるなどの話もお 聞きしました。

(宇野賀津子・角山雄一・坂東昌子 記)

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{slide=1月22日報告}

この日は、宇野が1人ということで、午前中は1階のロビーで色々な人の個別質問に答えました。

ナリス化粧品から寄付していただいたハンドクリームを用いてハンドマッサ ージを紹介しつつ、対談、お茶も出して貰って、京都から持ってきた緑寿庵の金平糖を食べながらお話をしました。そのうちにまた色々な人がやってきて、説明の輪に加わったりという調子でした。
午後の「食と健康について考えてみよう!」は、免疫、低線量放射線の人体影響等について紹介、最後は食の重要性ということで、イソジンうがい液を使った食の抗酸化作用を目で見る実験を紹介しました。
その後、個別質問に答えますということで、1階のロビーでまたまたカテキンたっぷりのお茶を飲みながらお話をしました。
当日平成28年度福島県エコ活動実践プロジェクト成果発表会に参加していた安達高校やいわき高校の方も来られ、ハンドマッサージをしながら放射線の話をしました。

次回はもっと季節のよいときにとは、職員の方のお話でした。来年度はもっと早く企画を煮詰めてと考えています。

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(宇野賀津子 記)

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● 参加学生報告

福島県環境創造センター開所半年記念イベントに参加して   吉田慎太郎(京都大学大学院原子核工学専攻)

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一般後援会報告 Thu, 09 Feb 2017 15:40:16 +0900