定期勉強会報告一覧 - NPO法人 知的人材ネットワーク・あいんしゅたいん 知的人材の活用を通じて、科学技術の発展に寄与することを目的に設立されたNPO法人です。 https://www.jein.jp/networkofcs/information-list/regularly-workshop/workshop-report.feed 2024-04-28T05:27:08+09:00 Joomla! - Open Source Content Management 放射線研究・・・今後の展望と異分野交流 報告 2019-04-12T09:40:10+09:00 2019-04-12T09:40:10+09:00 https://www.jein.jp/networkofcs/information-list/regularly-workshop/workshop-report/1678-workshop2019-3.html JEin事務局 <div class="feed-description"><p><a href="networkofcs.html"><img src="images/networkofcs/networkofcs-title2.png" border="0" style="margin-right: auto; margin-left: auto; display: block;" /></a></p> <div> </div> <p style="text-align: center;"><span style="font-size: 16px;"><strong>放射線研究・・・今後の展望と異分野交流 報告</strong></span></p> <p>1.概 要</p> <p style="padding-left: 26px;">日  時:2019年3月8日(金)10:30~17:00<br />場  所:京都大学東京オフィス<br />話  題:放射線研究・・・今後の展望と異分野交流</p> <p> 2.坂東昌子(NPO法人あいんしゅたいん理事長)コメント</p> <table style="width: 95%;" border="1" cellpadding="8" align="center"> <tbody> <tr> <td> <p><strong>ミニシンポジウム放射線研究・・今後の展望と異分野交流 (3月8日)・討論会「市民と科学者の共同作業を進めるために」(3月9日)を終えて</strong></p> <p>3月8日9日と、京都大学東京オフィスにおいて開催した上記会合に至るには長い道のりでした。</p> <p>● きっかけ</p> <p>福島第一原発事故からまもなく8年が経ちます。<br />しかしながら、放射線の生物への影響については、いまだに社会には極端な意見の蔓延や深刻な対立があり、市民や若者が本当に知りたいことになかなか到達できない状態が続いています。</p> <p>そもそもの始まりを振り返ると、この問題がずっと私には頭にこびりついていました。科学者も科学もその信頼を失いました。信頼していた科学者真っ向から割れて、その背景に政治的な思惑があるように感じた市民も多かったと思います。科学者本人はそれほど偏見を持っているとは思わないでも、世の中の動きや政治的背景に左右されかねない現状がたくさん見られました。<br />そして、こうした偏見や誤解が重なると、科学者を疑う人が出てきて、市民の中にも、科学者自身の中にも、「陰謀説」がはびこります。科学者でさえ、こんな状態ですから、市民はなおさらです。</p> <p> ~ 市民や若者は迷子になっているのです ~</p> <p>私たちはこの3年間、市民と科学者のネットワークを強め、「ほんとのことを知ろう」という1点だけで、共通した熱にもって支えられてここまで来たと思います。<br />まだまだその厚い壁がとれていません。そして震災直後から手探りで、分野の異なる科学者と市民、そして若者たちと「低線量放射線影響勉強会(LDM)」を立ち上げて、みんな同じ目線で、知らないことはお互いに説明し合い、元に戻って読まなければならない時は論文を探して元論文を手に入れ、みんなで勉強しました。<br />その蓄積が「データ32」という本になって世に出たのです。この中心は市民の2人の女性でした。ほんとによく勉強されて鋭い質問を投げかけて、時には専門家を困らせるぐらいでした。そしてその続きとして、今回この3年間、JSTの支援によって、この動きを全国展開できました。</p> <p>この3年間、私たちは、市民と科学者のネットワークを強めるための研究活動を続けてきました。福島第一原発事故からまもなく8年が経ちます。<br />しかしながら、放射線の生物への影響については、いまだに、社会には極端な意見の蔓延や深刻な対立があり、市民や若者が本当に知りたいことになかなか到達できない状態が続いています。</p> <p>科学者は本来そこに手を差し伸べるべきですが、それもなかなかうまく行っていませんでした。しかし私たちはそこをなんとかしたいと思い、この問題に関心のある市民と科学者が立場や予見を排して協力してきました。</p> <p> 私たちの目標は、あくまで、今対象にするべき疑問について、どこまでわかっているか、どこがまだこれから検討の必要があるか、そういうことをみんなで率直に話し合い共有することです。<br />いかに現在意見が分かれていても評価が違っていても、この目標で、異なった意見の方々が集まって、そこから、どこまでわかっている事か、どこはまだ明確でないかといった見方さえしっかりしておけば、そのあと、社会に公表するときは、「ここまでは共通だがここからは私の価値観が入っている」としっかり断って発言されればいいのです。専門家も、専門家同士でも分野の異なる科学者が専門分野の枠を超えて一緒になって検討し、そこに市民からの率直な疑問に真正面から答えることを目標にすれば、他分野の専門家にも通じるのです。<br />しかし、科学者の中にも、偏見や固定概念をもっていろいろな形で主張される方もあります。そういう主観を排して、市民と科学者が率直にギャップを埋めて、できるだけ正直に真実に近づく努力をしていこう、これが私たちの目標でした。その最初の成果が『放射線 必須データ32:被ばく影響の根拠』という本でした。<br />実は、この本は市民の皆さん向けということで始まったのですが、だんだん市民のお二人のレベルが上がってきて、実際には出来上がったときは、市民が読むにはちょっと難しい本になりました。ですので、専門家が「これは役に立つ」というような評価が多いです。<br />会議に持っていったら、「こんないろいろな分野を全部見渡して元論文に戻って解説した本はないので、とても役に立ちます。英語に直してください。」とも言われたりしますが、まだ実現していません。でも世界でも珍しい本です。こうして仲間がどんどん増えていきました。こうしてこのJSTの企画が実現したのです。</p> <p>● 若者たちと女性の介入</p> <p>この、いわばすでに古典として出されている論文をみんなで読んで解説するという作業を一つの段階として、次のステップは、今議論が巻き起こっている様々な問題を取り上げることを視野に入れておりました。<br />しかし、これは古典論文とは違って格段に難しい作業です。これは決して簡単なことではありません。まず身近な仲間の科学者たちに声をかけました。<br />ところが、「何か発言するとすぐたたかれる」「自分は専門家ではないので遠慮する」「そんなたいそうなことはできない」としり込みをする人が多くいました。確かに何か言うと反対側からいろいろと誤解されたり、非難されたりと、思わぬ攻撃を受けてしぼんでしまうことがあります。</p> <p>しかし、そういう中で少しずつ市民と科学者の間で情報共有ができるようになってきました。そして、心が打ち解けるにつれて対話ができるようになりました。<br />みんながどういうところで引っかかっているのか、どのようにすれば正しいことにたどり着けるのか。科学者と市民とが、身分も専門分野も乗り越えて話し合える場が徐々にできてきたのです。<br />そんな中で、みんな真剣なのに、どうしてお互いにいがみ合わなければならないのか、それを乗り越えて一緒に本当のことを探していくにはどのようにすればいいのか、こんな試行錯誤を繰り返してきました。一生懸命主張しておられる方々は、みんないい方々です。人のため世のためと思って主張しているのですから。<br />でも、けっこう頑固で、なかなか感情と理性を分離できず、時には感情的になり、時には人を馬鹿にする、時には自分がわからないことをごまかして避けて通る、そういうことが起こりがちです。誰でもその場で否定されるとかんかんになりますからね。<br />議論の時には、仲が良くても言い合いをよくするので横から見ていると喧嘩しているように見えることもありますが、あくまで議論をしているのですから、仲が悪いわけではないのですが、過ちを指摘されると、人格まで否定されたと思う場合もあり、科学的訓練が足りないなと思うことも結構ありました。</p> <p>そのような中で中学生や高校生の皆さんも一緒に参加するようになり、なんと言いますか〝希望の光〟あるいは〝新たなエッセンス〟が見えてきました。<br />中高生も大人である専門家や市民に向けて、素朴な疑問を心おきなく出し合える場が形成されるようになってきたのです。特に、2016年夏の高校生・中学生の集まり『<a href="http://radi.rirc.kyoto-u.ac.jp/hss2/index.html" target="_blank">おこしやす 京の夏</a>』がひとつのエポックでした。こういうところで議論すると、大人が感情的になったり「わかってないなあ」と相手を馬鹿にしたりできないからです。<br />もちろん、ごまかしたりもできません。</p> <p>そんな中で、もう一つ発見がありました。それは、女性たちの参加がさらに場を和やかなものにし始めたのです。<br />その象徴的な役割を果たしたのが河本さんや鈴木さんです。女性たちが積極的に関わることによって、この科学者グループには、たくさんの異なった意見を持つ方々と話すことを厭わないムードが芽生えてきました。<br />どうもその原因の1つはその場にお菓子が出ることのようです。おいしいものを共有することで心が和らげられる、そんな効果は私には思いもかけませんでしたが、みんなで食べて「おいしいなあ」と喜ぶのと同時に、仲間意識が芽生えます。最近、心理学専門の仲間が入ってきてくれて、このことを心理学の立場から提案してくださったのです。<br />このようして徐々に意見の異なる方々が同じ場所で語り合えるだけでなく、共通の目標を持てるようになりました。私もよくお菓子を持っていきますが、こういう心理学的効果というより、みんなで食べたいなと思うからだけでしたが、面白いものです。 <br />そういえば、私は「昌子の部屋」というインタビューをしたことがありました。<a href="https://int.search.tb.ask.com/search/GGmain.jhtml?ct=ARS&amp;n=7857d713&amp;p2=%5ECP5%5Exdm202%5ETTAB03%5Ejp&amp;pg=GGmain&amp;pn=1&amp;ptb=75D5537F-41C3-4EFD-937D-8736AF971626&amp;qs=&amp;si=43595821573&amp;ss=sub&amp;st=sb&amp;searchfor=%E6%98%8C%E5%AD%90%E3%81%AE%E9%83%A8%E5%B1%8B+YouTube&amp;feedurl=ars%252Ffeedback%253ForiginalQuery%253D%2525E6%252598%25258C%2525E5%2525AD%252590%2525E3%252581%2525AE%2525E9%252583%2525A8%2525E5%2525B1%25258B%2526relatedQuery%253D%2525E6%252598%25258C%2525E5%2525AD%252590%2525E3%252581%2525AE%2525E9%252583%2525A8%2525E5%2525B1%25258B%252Byoutube&amp;tpr=jre10&amp;ots=1554535468525" target="_blank">昌子の部屋</a> YouTubeで引くとたくさん出てきますが、いろいろな科学者にいろいろなご意見を聞きました。今だったらもっとたくさんの方々にインタビューしたいなと思うでしょうね。こういうのって学ぶことがたくさんありますね。<br />動画ではありませんが、いろいろな意味でインタビュー異分野交流では先進的な先生方のインタビューを<a href="http://radi.rirc.kyoto-u.ac.jp/sci/interview.html" target="_blank">科研費の仕事として行いました</a>。なかなか面白いですよ。</p> <p>●エビデンスってなに?</p> <p>このような経緯のなかで、私たちはエビデンス(根拠・証拠)に基づいた医療(Evidence-based Medicine: EBM)について関心を持つようになりました。<br />そこでは、単に論文が出たからといって、それがどれだけ正しい情報であるかについては一歩引いて慎重になります。現場の医療にとっては〝エビデンスによる裏付けがしっかりしているかどうか〟はとても深刻な問題です。だからこそ、こういう方法論が生まれたのだろうと思います。<br />なるほど、論文が出ただけでは信用できない時代に突入している・・・というか論文は、間違いもありレフリーの検閲を受けとはいえ、まだまだ間違いもあるわけで、そういうのをしっかり見ておきたいというのは、特に医療分野では切実でしょうね。素粒子の場合は、例えば「ニュートリノが光速を超えた」という論文が出たことがありましたが、この時でも、すぐに社会に影響を与えるということはない(ほんとはあるんですけどね。<br />だって因果関係が言えなくなると、いろいろなところで困りますね)ので、大騒ぎに放っても、社会の実際の場面で影響を与えません。しかもこの論文には、「どう見ても測定の間違いがないみたいなんですが、皆さんのご意見ご指摘をお願いします」と書いてある論文なのに、マスコミでは「因果律が成り立たない」とか大騒ぎの記事が出て物理学者は辟易しました。もっとも、半年もたたないうちに、いろいろと点検しなおし、測定の誤りであったことがわかり、一件落着しましたが。こんな風に論文は絶対まちがいないとは言えないので、多くの科学者が検証し点検を繰り返してやっと本物の法則になるのです。<br />論文に誤りがあった、と攻撃しかされないと、科学の進歩は遅れるでしょう。みんなで確かめ合って本物を探すことが大切なのです。最近も「間違っていた」と非難されている話がありますが、間違いは正せばいいのではないか、と思います。<br />しかし、医療の場合は人に命にかかわることもあり、大変深刻ですんで、こういう取り組みが発展したのでしょう。とても大切なことですね。そうすると、放射線の影響に関わる論文も、社会的な影響が大きいわけですから、これに見習う必要がありますね。 そこで、私たちも同様の方法論を用いて、今、意見が割れている問題をみんなで検討する中で、本当のことを追及するやり方を学んでいきたいと考えています。<br />つまり初めから安全だとか危険だとかいう先入観にとらわれないで、真正面から向き合っていこう、という決心につながりました。</p> <p>● 今回の4つのテーマ</p> <p>とはいえ、私たちは、まだまだ小さな組織でもあり、権威のある方ばかりが参加しているわけでもありません。このような取り組みは始まったばかりです。それに、実際には学会や原子力規制委員会、政府機関の規制庁や環境庁などが莫大なお金を費やして、こういう仕事をしています。<br />3月8日のトップでお話しいただいた神田玲子先生のお話「放射線防護アンブレラの活動:学会の活動を中心に」は、そういう組織で、今どういうことに取り組んでいるかをお話願いました。これはいわば、トップダウン的取り組みです。そこには予算もあり、たくさんのプロの先生方がそれなりの見識をもって議論を進めてくださっています。そしてそれは大変貴重な情報を私たちに提供してくださいます。<br />私たちの取り組みは、これと市民を繋ぎ、いわばボトムアップで、皆さんの疑問や理解しにくい点、あるいは時には、「ちょっと違うんじゃない」といったコメントを出して、全体として正しい情報が共有できるように、下支えしていく取り組みだと思います。ですから、すべての問題に取り組むだけの力量もないし、そうする必要もないと思います。<br />少しずつですが、何とか、着実に皆さんと共有する情報を整理していきたいと思っています。(すでに、3月9日にご参加いただいた方から、いろいろな問題が提起されています。さて、これをどのように整理し、情報発信していくか、試行錯誤を繰り返しながら、道を探り当てていきたいです。)</p> <p>今回のミニシンポでは、2日目に、こうした糸で話題を2つほど取り上げて議論しました。今回は4つのテーマを取り上げ、そのうち2つについて時間をかけて議論するというやり方を取りました。</p> <p>● 話題提供&amp;議論②線量評価の実態(田口さん提案、一瀬さんの解説) <br />● 話題提供のみ③健康調査(和田さんの問題提起を基礎に) <br />● 話題提供&amp;議論④福島の野生動物への影響調査(福本先生の議論を基礎に)</p> <p>あるべき科学の結論の捉え方、まだわからない問題についての情報発信の仕方など、これからどのようにしてこのようなネットワークを広げていけるか、これから試行錯誤が繰り返されると思います。<br />このような話し合いが成功するかどうか、いささか不安もあったのですが、参加いただいた皆様の熱意で乗り切れたのではないかと思っています。</p> <p>今回、とても参考になったのは、UNSCEARの議論でした。米倉先生がほぼ全容を把握されていて、事あるごとに問題を整理し、現状の到達点をご説明くださったことで、問題が整理でき、納得のいく議論ができたと思います。そのことが、例えば白血病の疫学の議論で、しっかり学べることを知りました。<br />こうした経験をお持ちの先生が、このJSTの企画の評価委員をしてくださったことは、本当にありがたいことでした。こうして、さらに、未解決の問題へと移って、今後の方向性をお互いに建設的な方向で探りたいと思います。<br />2日間、建設的な議論をしていただき、とても感謝しています。皆様のご協力に感謝いたします。本当に正しいことを伝えるために、また科学的に十分わかっていないことと分かっていることをしっかり分けて理解することの大切さを市民と共有できることを心から願っています。</p> <p>なお、3月9日の初めに、「放射線防護アンブレラの活動:学会の活動を中心に」のお話をいただいた神田玲子さま(国立研究開発法人 量子科学技術研究開発機構)、「基礎科学と社会への実装の理念 ・・・アセスメント科学にむけて」という新しい科学と社会の科学の在り方をお話下さった長我部信行さま(日立製作所ヘルスケア社)、そしてさらに「SDGsと科学技術 :STI for SDGs vs SDGs for STI」という国際的視野に立った世界像をお示しいただいた 有本建夫さま(政策研究大学院大学)の御三方には大変お忙しい中ぎりぎりまでお付き合いくださり、内容の濃い議論ができました。<br />そして実は陰になり日向になり、いつも全体を見渡してご援助いただいた米倉義晴さま(元UNSCEAR 議長)には、本JST企画の<a href="networkofcs/information-list/introduction.html">評価委員</a>として評価いただきました。  いつも変わらぬ誠実な対応に心から感謝申し上げます。</p> <p>                                        </p> <p style="text-align: right;">世話役代表 坂東昌子</p> </td> </tr> </tbody> </table> <p> 3.参加者感想</p> <table style="width: 95%;" border="1" cellpadding="8" align="center"> <tbody> <tr> <td> <p> </p> <p>午前は坂東昌子先生の主旨説明のあと、神田玲子先生(国立研究開発法人量子科学技術研究開発機構)の御講演からスタートした。神田先生は現在の我が国における放射線防護や規制研究のキーパーソンである。放射線を規制する側がどのようなプロセスで学識者の意見や研究成果を反映させようとしているのか、その全体像をつかむことができた。</p> <p align="left">長我部信行氏(日立製作所ヘルスケア社)からは、基礎科学の成果が企業活動等に実装される際にどのようなことが必要で、またどういった課題が発生し得るかについて学ばせていただいた。科学が独善的であってはいけないし、また企業ももはや利益のみを追求する時代でもない。科学と社会との間をとりもつ仕組み、あるいは仕掛けのようなものの必要性を感じた。</p> <p align="left">有本建夫先生(政策研究大学院大学)からは、大局的かつ国際的な視点から、SDGs達成のための科学技術イノベーションなどに関する御講演を賜った。そもそも科学や科学者が社会にとってどうあるべきか、何を目指すべきかという人類規模のテーマについて 見つめなおす大変良い機会となった。</p> <p>当初は、これらの講演を受けて異分野交流の場としてどのような組織や形態が望ましいのか、などについて話し合われる予定であった。しかし実際にはなかなかそこまでに至れず、我が国に現存する放射線に関するいくつかの問題について熱い議論が行われた。参加された市民のみなさまのご意見は貴重でありまた鋭いもので、それに対して科学者もまた熱い論議を重ねることとなった。まだまだ科学者と市民との間に大きな隔たりがあることを痛感されられたが、それでもこのような壁や偏見のない議論の場が存在することに大きな意義を感じた。</p> <p>今後もこのような取り組みが継続されることを切に願っている。</p> <p>原発事故から得た教訓をどう活かすのか、科学者同士の異分野交流はもちろんのこと科学界と実社会との間での対話交流の継続が極めて重要な鍵となると感じた。                                   </p> <p style="text-align: right;">3月8日参加(角山雄一様 研究者)</p> </td> </tr> <tr> <td> <p>この会議のおもしろいところは、単に多分野の基礎研究者の研究報告に留まらず、神田玲子氏、有本建夫氏といった第一線の放射線生物学、リスク学の第一人者の話、長我部信行氏の基礎科学から社会実装への話が盛り込まれている点であろうか。さらにこのような方々に、高関心の市民でも直接質問できたという点にあったかと思う。<br />3.11以降、あいんしゅたいんが行ってきた異分野連携の活動、その中で培われた人脈がここまで花開いてきたかとも思った。<br />もう一つ、議論はデータに基づいて行うという、この場での暗黙のルールも大事だと思っている。(感情的議論が出てくると、坂東発言が飛んでくるのも重要かと)</p> <p>思えば、2011年7月3日に京都で開いた「シリーズ 東日本大震災にまつわる科学 第一回公開講演討論会」の時にフロアからの「原発賛成・反対」を明らかにして議論すべきとの発言を一喝して、「あいんしゅたいんの講演会はそんな場ではない、あくまで科学的事実に基づいて、議論する場である」との坂東理事長の言葉に、あいんしゅたいんの立場が表明されたといえるであろう。<br />一介のNPOが、3.11以降、国内外のその道の専門家を一同に集めて議論の場を多少なりとも作れてきた事、またその周辺に頼もしい若手が集まってきていることを確認した会議であった。                                   </p> <p style="text-align: right;">3月8・9日参加(宇野賀津子様 研究者)</p> </td> </tr> <tr> <td> <p>異分野交流、文理融合などの掛け声はかなり前から耳にしているが、少なくとも私の周りでそのことに実質感をもって取り組むことができているケースはまず見かけない。</p> <p>異分野交流や文理融合の前に、そもそも学術とか科学とはなにを意味するのであろうか。日本語の科学に関していえば、どうやらサイエンス(Science)とは別物のように見える。 Scienceの語源はラテン語のscienticaであって、それは知識全体を示しているようである。日本語の科学とは、どうやら細分化された学科を問うているにすぎないようである。</p> <p>私たち大学にいるもの、なかでも科学の教育研究に携わっているものは、少なくともこの〈知識全体〉を俯瞰しようとする〝心意気〟だけは常に持っていたい??むしろ無理にでもそうしなければならないと思う。しかるに、現実の大学まわりは実に深刻な状況である。</p> <p>業績主義が跋扈している。それはひとことで言えば、査読付き論文や特許の数である。業績を数多くあげるには、専門分野に閉じこもりそのコミュニティで共同研究仲間をつくって共著論文を量産する。まあ言ってみれば世知辛い話だ。</p> <p>学術や科学の源泉はどこにあるのか。アリストテレスは人間の本性とは知を愛することだと考え、約2300年以上前にその〈知の全体〉像を著した。その全体像の構成は今もそう大差ないように思う。アリストテレスはプラトンの弟子とされているが、そのプラトンが後世に遺したものにソクラテスの哲学がある(ソクラテス自身は著作を遺していない)。ソクラテスとは対話と〝産婆術〟だと思う。</p> <p>何をどう考え、どのように表現していいのかよくわからないこと〟を自己にも他者にもよくわかることにして産み出す。それが対話という手法にあると思う。</p> <p>坂東さんの意志と情熱は、この対話と産婆にあると思っている。だから、今回のような会に参加すると、異分野交流などという表層の出来事ではない、もっと深層の〝知を愛する欲望〟のようなものが鼓舞されるのである。</p> <p style="text-align: right;">3月8・9日参加(澤田哲生様 研究者)</p> </td> </tr> <tr> <td> <p>専門家の間でも意見が分かれる低線量放射線の生体影響について、「これまでの取り組みを紹介しつつ今後の展開を見据えるべく踏み込んだ議論を行う機会」というご案内に魅力を感じて参加しました。<br />私が参加させていただいた初日の3月8日には、錚々たる先生方のお話をうかがい大変勉強になりましたが、後半の議論の部は、「話し合うのも簡単ではない」というのが正直な感想です。自分の非力も噛みしめております。2日目には踏み込んだ議論が行われたことと拝察しますので、その内容等もご共有いただけると有り難く存じます。</p> <p>初日の学術的な雰囲気に感じたのは、やはり、「一般市民」との乖離でした。もちろん、一般市民を十把一絡げにすることはできず、日頃接する範囲に限られますが、多くの人は今やほとんど関心を失ったまま、なんとなく「どんなに低線量でも放射線被ばくは怖い」というLNT仮説に拠っているように見えます。<br />この漠然とした恐怖が固定されている限り、福島を取り巻く風評被害も、甲状腺がん発症の解釈も、原発の廃棄物の最終処分場の問題も、エネルギーのベストミックスについても、健全な議論が成り立たず、解決不能の空気が支配していることに危機感を持っております。<br />細かい話はともかく、「どの程度の放射線までは人体に影響がないと言えるのか」について、普通の市民にも理解でき、納得でき、「ゼロリスクはない」という覚悟を持てば受け容れられるような「許容量」が共有されるようになることを切に望みます。そのためにどうすればいいのか・・という焦燥感や無力感は持ち越したままですが、すぐに解決できる問題ではないのでしょう。</p> <p>なにぶん福島第一原発の事故までは放射線の知識が皆無であった不勉強な市民ですので、今頃ですが、坂東先生をはじめ皆様方の努力の結晶である『放射線 必須データ32 被ばく影響の根拠』を購入しました。ぜひ拝読いたします。<br />今回は、このような会に集まられた皆様と、限られた時間ながらお話できたことが大きな収穫でした。今後とも皆様と情報交換、意見交換させていただきながら、「低線量被ばくへの過度の恐怖」を払拭するためになんらかの形でお役に立てれば幸いです。</p> <p style="text-align: right;">3月8日参加(井内千穂様 ジャーナリスト)</p> </td> </tr> <tr> <td> <p>福島の事故が社会的な問題になって以来、様々な意見対立が生まれました。その中に科学者と市民の間で意見が対立したこともあり、主催者の皆様はそうしたことに心を傷められて今回の会議を科学者だけのものではなく、科学者と市民の対話という形にされたのだと思います。</p> <p>福島の事故については福島の市民も科学者も巻き込まれた側であるにもかかわらず、この二者が対立しなければならないとすればとても残念なことです。会議の前の個人的な印象としては、政府や東京電力が被害者の方々に背を向けた結果、できるだけ市民の疑問に応えようとしてきた科学者の方々の方へと非難が向かってしまったのではないかと考えていました。<br />それは恐らく一面として事実なのだと思います。しかし一方で、科学者の方々は知らず知らずの内に政治的意見を述べ、その結果として世間から政治的な反応を受けているのではないかということもまた、会議での議論に接した結果感じるようになったのです。</p> <p>会議では、科学者側の参加者が何となく述べた政治的意見が福島の被害者側の感情に触れてしまう場面も見られました。ここでは科学者の政治性が良いとか悪いとかいうことを言いたいわけではありません。むしろ、人が社会性を伴う議題について意見を表明するときに個人の政治性が入らないということは有り得ないということ、それが公の場での発言であれば政治的結果が必ず伴うということ、そしてそれを認識した上で意見表明をどうするかということは科学者個人の決定に委ねられるだろうということなのです。</p> <p>科学者の意見が政治に影響を与えるケースには次のようなものがあるかと思います。ここではそれを4つに場合分けし、それぞれに例示や補足説明を行いました。</p> <p>(1) 純粋な科学的事実が政治的結果を生む<br />例えば、数学上の未解決問題の解決が軍事暗号の解読に繋がる。</p> <p>(2) 政治的影響を受けた科学研究が政治的結果を生む<br />アメリカ政府の主導で行われたマンハッタン計画、日本政府の資金で行われた原子力関連の研究など。論文が科学的に正しいとしても政治的結果を生んだり、特定の利害関係者のみを利するような事実の一面だけに焦点を当てる結果となる。</p> <p>(3) 論文の非科学的側面が政治的結果を生む<br />科学分野の論文であっても、結論を導くために必要な情報が欠けている場合などは論文執筆者の裁量で推論を行う必要がある場合がある。こうした科学論文の非科学的要素には個人の政治性が(意識的にも無意識的にも)入り込む余地がある。</p> <p>(4) 科学的に誤りである論文が政治的結果を生む<br />故意または過失によって誤った科学的結論が導き出され、それが政治利用される。</p> <p>便宜的に4つのケースを挙げましたが、実際にはこれほど綺麗に分けられるものではないと思います。<br />例えば、数学者が未解決問題の解決が軍事暗号の解読に繋がることを知りながらそれを解決した場合、そこには本当に政治性が全く無かったのでしょうか?実際には人がある問題について知っていた場合、意識的であれ無意識的であれ人は何らかの価値判断を下しているはずなのです。実際に今回の会議でも科学者の方々は自分の発言が科学的事実なのか、政治的意見なのかという区分に完全に自覚的であったわけではないというのが個人的感想です。</p> <p>恐らくは、人間が社会問題に関わる話題について意見を表明する場合、完全に政治性を取り除くということは不可能に近いのです。上記に述べた様に純粋な科学論文を書く場合でもそうなのであれば、例えば科学者がマスコミに露出して意見を求められる場合などでは尚更だと思います。</p> <p>そしてそうした言動には必ず政治的結果が伴います。科学者という信頼できる肩書で意見表明をした場合、それが世論を動かし、それによって得をする側と損をする側が必ず出てくるからです。科学者が公に意見表明する場合、それを完全に避けることは出来ないということを先ず認識することが必要なのでしょう。その上で科学者個人がその意見表明を行うのか、行わないのかを決めることになるのでしょう。しかしその行動から必然的に生じる結果は、その行動を行なった個人が受けなければならないことになります。その上で個人は選択を行わなければならないのだと思います。</p> <p style="text-align: right;">3月8・9日参加(市民)</p> </td> </tr> <tr> <td> <p>一方的な情報や見解だけではなく、多くの知見や異論にも耳を傾け、真摯に検討し議論する重要性を我々は原発事故以降学びました。<br />この事が日本の科学技術の進展に貢献し、失われた科学者の信頼を取り戻す事に繋がるだろうと思います。</p> <p>科学者や政府、利権者が真実を隠し続け、物事を進めて来た事が原発の安全神話の崩壊によって明らかとなりました。そして国民も科学者も真実が何なのかわからなくなり、日本中が混乱してしまいました。<br />原発事故が起きた一要因は原子力むら社会で異論を排除してきた事です。日本政府や放射線防護がICRPを神様として崇める神話も、もしかすると崩れる可能性もあります。<br />そして、早野・宮崎論文の不正、原子力規制庁や環境省の対応、福島県や福島医大の対応をみていると、科学者や政府、学会や大学等への不信感は益々増大しているようにも感じます。</p> <p>不信感払拭の為には、良識ある科学者や専門家が、政府や自治体、そして科学者や学会、福島医大等に批判的言動(異論)を出す事は重要だろうと考えています。市民は異論が物事を正しい方向に動かす事、異論の中に真実が隠されている事を学びました。<br />その為に『あいんしゅたいん』としての役割・活動は以下であって欲しいと思います。</p> <p>1.政治的な議論は排斥し、純粋に科学的・医学的議論に徹する事。</p> <p>2.他の科学者の見解や論文、そして政府や行政の見解や施策に対しても科学的視点で議論・検証し批判もする。科学者同士が異論を言わない習性が日本の科学者の国民からの信頼を益々損ねています。科学者同士の議論が日本の科学者のリテラシーの向上や科学者の倫理観向上にも寄与します。</p> <p>3.テーマはある程度絞った研究会(放射線や健康被害)を定期的(2~3か月に1回程度)に開催し専門家同士で議論する。徐々にテーマを広める。</p> <p>4.異論にも耳を傾け、真摯に検討し議論もしてみる。</p> <p>5.『ふくしまの真実を学び伝えたい』市民(主に福島県民)を支援する。<br />(例:疑問や質問に答えてくれる体制の構築等)</p> <p>6.福島の被災者・被ばく者・健康被害者を支援する。(具体的な支援の仕方は検討要)</p> <p>7.メンバーや会員同士の意見交換はML上でも実施する。但し、常に福島県民、被ばく者の立場にたって議論する。</p> <p>8.最後にあるジャーナリストの言葉。<br />  『知らない事は怖い事。<br />  知らせないのはもっと怖い事。<br />  知ろうとしないのはあなたの責任。<br />  知っていて何もしないのは、いったいあなたは誰ですか』<br />  小生の原発事故以降の行動もこの言葉が基本にあります。</p> <p style="text-align: right;">3月8・9日参加(田口茂様 市民)</p> </td> </tr> <tr> <td> <p>民間企業にいる身としては、やはり、長我部先生、和田先生が進められている学術振興会の産学連携委員会に期待したく存じます。</p> <p style="text-align: right;">3月8日参加(市民)</p> </td> </tr> <tr> <td> <p>8日の会議には、放射線の人体への影響に関心を寄せる一般市民から、ジャーナリスト、産業界、そして放射線科学を専門とする研究者まできわめて多様な背景を持つ参加者が集まり、それぞれの立場から活発な意見交換を行った。<br />翌9日には、前日の議論を受けて、福島において問題となっている甲状腺がんの検査や個人線量評価など個別のテーマについて議論が進められた。</p> <p>本事業では、低線量放射線の生体影響に関する様々な考え方や意見がある中で、低線量放射線の人体への影響について市民と科学者が共通の場で意見を交換できるネットワークの構築を目指してきた。<br />市民と科学者の垣根を取り払い、さらに科学者がそれぞれの専門性の枠を超えて率直な意見交換と議論を進めてきた。その中で、現在の科学で明らかにできることの限界や、その情報を幅広く市民に向けて発信することの困難さといった課題が浮かび上がってきた。<br />この2日間の会議においても、異なる考え方を持つ人々が激論を交わす中で、参加者の意識がお互いの立場や意見の相違を乗り越えて、科学的エビデンスに基づいて放射線の生体影響に関する共通の理解を深め、その情報を発信する方向へと意見が集約されていったことは興味深い。</p> <p>本来、科学者もまた一市民としての立場があり、市民と科学者は対立する構造ではない。<br />ところが、原子力発電所事故のような異常事態が発生すると、それによる被害を受けた立場の市民と、客観的な立場から科学的事実を説明しようとする科学者の間には、意識の点で大きな乖離が生じてしまう。<br />単に安全であるという説明だけでは逆に不安を増大させ、科学者に対する不信感を招くことになる。科学者や研究者は、自分たちの専門領域の知識や情報には精通しているが、他の領域を幅広く見通すことは必ずしも得意ではない。異なる専門性を持つ研究者が分野を超えて協力することによって、科学技術の新たな展開が生まれるが、このような異分野交流が成功する鍵はお互いの専門的立場の相互理解から始まる。<br />市民と科学者の垣根を超えた交流を進める上でも、お互いの立場を理解することが出発点となる。さらには、率直な市民感覚からの問題提起が新しい科学の礎となる。このような活動を進めることによって、低線量放射線の影響についての共通の理解を深めるための基盤が構築されつつあることを実感した。</p> <p style="text-align: right;">3月8・9日参加(米倉義晴様 研究者/本事業評価委員)</p> </td> </tr> </tbody> </table> <p style="text-align: center;">※ 間違いがある場合や、ご意見・ご感想がある場合には、<a href="https://www.secure-cloud.jp/sf/1469640914VQwGkRDZ" target="_blank">お問い合わせ</a>、もしくは<a href="https://www.facebook.com/events/1740734299473054/permalink/1743390419207442/" target="_blank">Facebook</a>のコメント欄にてご一報ください</p> <p> </p></div> <div class="feed-description"><p><a href="networkofcs.html"><img src="images/networkofcs/networkofcs-title2.png" border="0" style="margin-right: auto; margin-left: auto; display: block;" /></a></p> <div> </div> <p style="text-align: center;"><span style="font-size: 16px;"><strong>放射線研究・・・今後の展望と異分野交流 報告</strong></span></p> <p>1.概 要</p> <p style="padding-left: 26px;">日  時:2019年3月8日(金)10:30~17:00<br />場  所:京都大学東京オフィス<br />話  題:放射線研究・・・今後の展望と異分野交流</p> <p> 2.坂東昌子(NPO法人あいんしゅたいん理事長)コメント</p> <table style="width: 95%;" border="1" cellpadding="8" align="center"> <tbody> <tr> <td> <p><strong>ミニシンポジウム放射線研究・・今後の展望と異分野交流 (3月8日)・討論会「市民と科学者の共同作業を進めるために」(3月9日)を終えて</strong></p> <p>3月8日9日と、京都大学東京オフィスにおいて開催した上記会合に至るには長い道のりでした。</p> <p>● きっかけ</p> <p>福島第一原発事故からまもなく8年が経ちます。<br />しかしながら、放射線の生物への影響については、いまだに社会には極端な意見の蔓延や深刻な対立があり、市民や若者が本当に知りたいことになかなか到達できない状態が続いています。</p> <p>そもそもの始まりを振り返ると、この問題がずっと私には頭にこびりついていました。科学者も科学もその信頼を失いました。信頼していた科学者真っ向から割れて、その背景に政治的な思惑があるように感じた市民も多かったと思います。科学者本人はそれほど偏見を持っているとは思わないでも、世の中の動きや政治的背景に左右されかねない現状がたくさん見られました。<br />そして、こうした偏見や誤解が重なると、科学者を疑う人が出てきて、市民の中にも、科学者自身の中にも、「陰謀説」がはびこります。科学者でさえ、こんな状態ですから、市民はなおさらです。</p> <p> ~ 市民や若者は迷子になっているのです ~</p> <p>私たちはこの3年間、市民と科学者のネットワークを強め、「ほんとのことを知ろう」という1点だけで、共通した熱にもって支えられてここまで来たと思います。<br />まだまだその厚い壁がとれていません。そして震災直後から手探りで、分野の異なる科学者と市民、そして若者たちと「低線量放射線影響勉強会(LDM)」を立ち上げて、みんな同じ目線で、知らないことはお互いに説明し合い、元に戻って読まなければならない時は論文を探して元論文を手に入れ、みんなで勉強しました。<br />その蓄積が「データ32」という本になって世に出たのです。この中心は市民の2人の女性でした。ほんとによく勉強されて鋭い質問を投げかけて、時には専門家を困らせるぐらいでした。そしてその続きとして、今回この3年間、JSTの支援によって、この動きを全国展開できました。</p> <p>この3年間、私たちは、市民と科学者のネットワークを強めるための研究活動を続けてきました。福島第一原発事故からまもなく8年が経ちます。<br />しかしながら、放射線の生物への影響については、いまだに、社会には極端な意見の蔓延や深刻な対立があり、市民や若者が本当に知りたいことになかなか到達できない状態が続いています。</p> <p>科学者は本来そこに手を差し伸べるべきですが、それもなかなかうまく行っていませんでした。しかし私たちはそこをなんとかしたいと思い、この問題に関心のある市民と科学者が立場や予見を排して協力してきました。</p> <p> 私たちの目標は、あくまで、今対象にするべき疑問について、どこまでわかっているか、どこがまだこれから検討の必要があるか、そういうことをみんなで率直に話し合い共有することです。<br />いかに現在意見が分かれていても評価が違っていても、この目標で、異なった意見の方々が集まって、そこから、どこまでわかっている事か、どこはまだ明確でないかといった見方さえしっかりしておけば、そのあと、社会に公表するときは、「ここまでは共通だがここからは私の価値観が入っている」としっかり断って発言されればいいのです。専門家も、専門家同士でも分野の異なる科学者が専門分野の枠を超えて一緒になって検討し、そこに市民からの率直な疑問に真正面から答えることを目標にすれば、他分野の専門家にも通じるのです。<br />しかし、科学者の中にも、偏見や固定概念をもっていろいろな形で主張される方もあります。そういう主観を排して、市民と科学者が率直にギャップを埋めて、できるだけ正直に真実に近づく努力をしていこう、これが私たちの目標でした。その最初の成果が『放射線 必須データ32:被ばく影響の根拠』という本でした。<br />実は、この本は市民の皆さん向けということで始まったのですが、だんだん市民のお二人のレベルが上がってきて、実際には出来上がったときは、市民が読むにはちょっと難しい本になりました。ですので、専門家が「これは役に立つ」というような評価が多いです。<br />会議に持っていったら、「こんないろいろな分野を全部見渡して元論文に戻って解説した本はないので、とても役に立ちます。英語に直してください。」とも言われたりしますが、まだ実現していません。でも世界でも珍しい本です。こうして仲間がどんどん増えていきました。こうしてこのJSTの企画が実現したのです。</p> <p>● 若者たちと女性の介入</p> <p>この、いわばすでに古典として出されている論文をみんなで読んで解説するという作業を一つの段階として、次のステップは、今議論が巻き起こっている様々な問題を取り上げることを視野に入れておりました。<br />しかし、これは古典論文とは違って格段に難しい作業です。これは決して簡単なことではありません。まず身近な仲間の科学者たちに声をかけました。<br />ところが、「何か発言するとすぐたたかれる」「自分は専門家ではないので遠慮する」「そんなたいそうなことはできない」としり込みをする人が多くいました。確かに何か言うと反対側からいろいろと誤解されたり、非難されたりと、思わぬ攻撃を受けてしぼんでしまうことがあります。</p> <p>しかし、そういう中で少しずつ市民と科学者の間で情報共有ができるようになってきました。そして、心が打ち解けるにつれて対話ができるようになりました。<br />みんながどういうところで引っかかっているのか、どのようにすれば正しいことにたどり着けるのか。科学者と市民とが、身分も専門分野も乗り越えて話し合える場が徐々にできてきたのです。<br />そんな中で、みんな真剣なのに、どうしてお互いにいがみ合わなければならないのか、それを乗り越えて一緒に本当のことを探していくにはどのようにすればいいのか、こんな試行錯誤を繰り返してきました。一生懸命主張しておられる方々は、みんないい方々です。人のため世のためと思って主張しているのですから。<br />でも、けっこう頑固で、なかなか感情と理性を分離できず、時には感情的になり、時には人を馬鹿にする、時には自分がわからないことをごまかして避けて通る、そういうことが起こりがちです。誰でもその場で否定されるとかんかんになりますからね。<br />議論の時には、仲が良くても言い合いをよくするので横から見ていると喧嘩しているように見えることもありますが、あくまで議論をしているのですから、仲が悪いわけではないのですが、過ちを指摘されると、人格まで否定されたと思う場合もあり、科学的訓練が足りないなと思うことも結構ありました。</p> <p>そのような中で中学生や高校生の皆さんも一緒に参加するようになり、なんと言いますか〝希望の光〟あるいは〝新たなエッセンス〟が見えてきました。<br />中高生も大人である専門家や市民に向けて、素朴な疑問を心おきなく出し合える場が形成されるようになってきたのです。特に、2016年夏の高校生・中学生の集まり『<a href="http://radi.rirc.kyoto-u.ac.jp/hss2/index.html" target="_blank">おこしやす 京の夏</a>』がひとつのエポックでした。こういうところで議論すると、大人が感情的になったり「わかってないなあ」と相手を馬鹿にしたりできないからです。<br />もちろん、ごまかしたりもできません。</p> <p>そんな中で、もう一つ発見がありました。それは、女性たちの参加がさらに場を和やかなものにし始めたのです。<br />その象徴的な役割を果たしたのが河本さんや鈴木さんです。女性たちが積極的に関わることによって、この科学者グループには、たくさんの異なった意見を持つ方々と話すことを厭わないムードが芽生えてきました。<br />どうもその原因の1つはその場にお菓子が出ることのようです。おいしいものを共有することで心が和らげられる、そんな効果は私には思いもかけませんでしたが、みんなで食べて「おいしいなあ」と喜ぶのと同時に、仲間意識が芽生えます。最近、心理学専門の仲間が入ってきてくれて、このことを心理学の立場から提案してくださったのです。<br />このようして徐々に意見の異なる方々が同じ場所で語り合えるだけでなく、共通の目標を持てるようになりました。私もよくお菓子を持っていきますが、こういう心理学的効果というより、みんなで食べたいなと思うからだけでしたが、面白いものです。 <br />そういえば、私は「昌子の部屋」というインタビューをしたことがありました。<a href="https://int.search.tb.ask.com/search/GGmain.jhtml?ct=ARS&amp;n=7857d713&amp;p2=%5ECP5%5Exdm202%5ETTAB03%5Ejp&amp;pg=GGmain&amp;pn=1&amp;ptb=75D5537F-41C3-4EFD-937D-8736AF971626&amp;qs=&amp;si=43595821573&amp;ss=sub&amp;st=sb&amp;searchfor=%E6%98%8C%E5%AD%90%E3%81%AE%E9%83%A8%E5%B1%8B+YouTube&amp;feedurl=ars%252Ffeedback%253ForiginalQuery%253D%2525E6%252598%25258C%2525E5%2525AD%252590%2525E3%252581%2525AE%2525E9%252583%2525A8%2525E5%2525B1%25258B%2526relatedQuery%253D%2525E6%252598%25258C%2525E5%2525AD%252590%2525E3%252581%2525AE%2525E9%252583%2525A8%2525E5%2525B1%25258B%252Byoutube&amp;tpr=jre10&amp;ots=1554535468525" target="_blank">昌子の部屋</a> YouTubeで引くとたくさん出てきますが、いろいろな科学者にいろいろなご意見を聞きました。今だったらもっとたくさんの方々にインタビューしたいなと思うでしょうね。こういうのって学ぶことがたくさんありますね。<br />動画ではありませんが、いろいろな意味でインタビュー異分野交流では先進的な先生方のインタビューを<a href="http://radi.rirc.kyoto-u.ac.jp/sci/interview.html" target="_blank">科研費の仕事として行いました</a>。なかなか面白いですよ。</p> <p>●エビデンスってなに?</p> <p>このような経緯のなかで、私たちはエビデンス(根拠・証拠)に基づいた医療(Evidence-based Medicine: EBM)について関心を持つようになりました。<br />そこでは、単に論文が出たからといって、それがどれだけ正しい情報であるかについては一歩引いて慎重になります。現場の医療にとっては〝エビデンスによる裏付けがしっかりしているかどうか〟はとても深刻な問題です。だからこそ、こういう方法論が生まれたのだろうと思います。<br />なるほど、論文が出ただけでは信用できない時代に突入している・・・というか論文は、間違いもありレフリーの検閲を受けとはいえ、まだまだ間違いもあるわけで、そういうのをしっかり見ておきたいというのは、特に医療分野では切実でしょうね。素粒子の場合は、例えば「ニュートリノが光速を超えた」という論文が出たことがありましたが、この時でも、すぐに社会に影響を与えるということはない(ほんとはあるんですけどね。<br />だって因果関係が言えなくなると、いろいろなところで困りますね)ので、大騒ぎに放っても、社会の実際の場面で影響を与えません。しかもこの論文には、「どう見ても測定の間違いがないみたいなんですが、皆さんのご意見ご指摘をお願いします」と書いてある論文なのに、マスコミでは「因果律が成り立たない」とか大騒ぎの記事が出て物理学者は辟易しました。もっとも、半年もたたないうちに、いろいろと点検しなおし、測定の誤りであったことがわかり、一件落着しましたが。こんな風に論文は絶対まちがいないとは言えないので、多くの科学者が検証し点検を繰り返してやっと本物の法則になるのです。<br />論文に誤りがあった、と攻撃しかされないと、科学の進歩は遅れるでしょう。みんなで確かめ合って本物を探すことが大切なのです。最近も「間違っていた」と非難されている話がありますが、間違いは正せばいいのではないか、と思います。<br />しかし、医療の場合は人に命にかかわることもあり、大変深刻ですんで、こういう取り組みが発展したのでしょう。とても大切なことですね。そうすると、放射線の影響に関わる論文も、社会的な影響が大きいわけですから、これに見習う必要がありますね。 そこで、私たちも同様の方法論を用いて、今、意見が割れている問題をみんなで検討する中で、本当のことを追及するやり方を学んでいきたいと考えています。<br />つまり初めから安全だとか危険だとかいう先入観にとらわれないで、真正面から向き合っていこう、という決心につながりました。</p> <p>● 今回の4つのテーマ</p> <p>とはいえ、私たちは、まだまだ小さな組織でもあり、権威のある方ばかりが参加しているわけでもありません。このような取り組みは始まったばかりです。それに、実際には学会や原子力規制委員会、政府機関の規制庁や環境庁などが莫大なお金を費やして、こういう仕事をしています。<br />3月8日のトップでお話しいただいた神田玲子先生のお話「放射線防護アンブレラの活動:学会の活動を中心に」は、そういう組織で、今どういうことに取り組んでいるかをお話願いました。これはいわば、トップダウン的取り組みです。そこには予算もあり、たくさんのプロの先生方がそれなりの見識をもって議論を進めてくださっています。そしてそれは大変貴重な情報を私たちに提供してくださいます。<br />私たちの取り組みは、これと市民を繋ぎ、いわばボトムアップで、皆さんの疑問や理解しにくい点、あるいは時には、「ちょっと違うんじゃない」といったコメントを出して、全体として正しい情報が共有できるように、下支えしていく取り組みだと思います。ですから、すべての問題に取り組むだけの力量もないし、そうする必要もないと思います。<br />少しずつですが、何とか、着実に皆さんと共有する情報を整理していきたいと思っています。(すでに、3月9日にご参加いただいた方から、いろいろな問題が提起されています。さて、これをどのように整理し、情報発信していくか、試行錯誤を繰り返しながら、道を探り当てていきたいです。)</p> <p>今回のミニシンポでは、2日目に、こうした糸で話題を2つほど取り上げて議論しました。今回は4つのテーマを取り上げ、そのうち2つについて時間をかけて議論するというやり方を取りました。</p> <p>● 話題提供&amp;議論②線量評価の実態(田口さん提案、一瀬さんの解説) <br />● 話題提供のみ③健康調査(和田さんの問題提起を基礎に) <br />● 話題提供&amp;議論④福島の野生動物への影響調査(福本先生の議論を基礎に)</p> <p>あるべき科学の結論の捉え方、まだわからない問題についての情報発信の仕方など、これからどのようにしてこのようなネットワークを広げていけるか、これから試行錯誤が繰り返されると思います。<br />このような話し合いが成功するかどうか、いささか不安もあったのですが、参加いただいた皆様の熱意で乗り切れたのではないかと思っています。</p> <p>今回、とても参考になったのは、UNSCEARの議論でした。米倉先生がほぼ全容を把握されていて、事あるごとに問題を整理し、現状の到達点をご説明くださったことで、問題が整理でき、納得のいく議論ができたと思います。そのことが、例えば白血病の疫学の議論で、しっかり学べることを知りました。<br />こうした経験をお持ちの先生が、このJSTの企画の評価委員をしてくださったことは、本当にありがたいことでした。こうして、さらに、未解決の問題へと移って、今後の方向性をお互いに建設的な方向で探りたいと思います。<br />2日間、建設的な議論をしていただき、とても感謝しています。皆様のご協力に感謝いたします。本当に正しいことを伝えるために、また科学的に十分わかっていないことと分かっていることをしっかり分けて理解することの大切さを市民と共有できることを心から願っています。</p> <p>なお、3月9日の初めに、「放射線防護アンブレラの活動:学会の活動を中心に」のお話をいただいた神田玲子さま(国立研究開発法人 量子科学技術研究開発機構)、「基礎科学と社会への実装の理念 ・・・アセスメント科学にむけて」という新しい科学と社会の科学の在り方をお話下さった長我部信行さま(日立製作所ヘルスケア社)、そしてさらに「SDGsと科学技術 :STI for SDGs vs SDGs for STI」という国際的視野に立った世界像をお示しいただいた 有本建夫さま(政策研究大学院大学)の御三方には大変お忙しい中ぎりぎりまでお付き合いくださり、内容の濃い議論ができました。<br />そして実は陰になり日向になり、いつも全体を見渡してご援助いただいた米倉義晴さま(元UNSCEAR 議長)には、本JST企画の<a href="networkofcs/information-list/introduction.html">評価委員</a>として評価いただきました。  いつも変わらぬ誠実な対応に心から感謝申し上げます。</p> <p>                                        </p> <p style="text-align: right;">世話役代表 坂東昌子</p> </td> </tr> </tbody> </table> <p> 3.参加者感想</p> <table style="width: 95%;" border="1" cellpadding="8" align="center"> <tbody> <tr> <td> <p> </p> <p>午前は坂東昌子先生の主旨説明のあと、神田玲子先生(国立研究開発法人量子科学技術研究開発機構)の御講演からスタートした。神田先生は現在の我が国における放射線防護や規制研究のキーパーソンである。放射線を規制する側がどのようなプロセスで学識者の意見や研究成果を反映させようとしているのか、その全体像をつかむことができた。</p> <p align="left">長我部信行氏(日立製作所ヘルスケア社)からは、基礎科学の成果が企業活動等に実装される際にどのようなことが必要で、またどういった課題が発生し得るかについて学ばせていただいた。科学が独善的であってはいけないし、また企業ももはや利益のみを追求する時代でもない。科学と社会との間をとりもつ仕組み、あるいは仕掛けのようなものの必要性を感じた。</p> <p align="left">有本建夫先生(政策研究大学院大学)からは、大局的かつ国際的な視点から、SDGs達成のための科学技術イノベーションなどに関する御講演を賜った。そもそも科学や科学者が社会にとってどうあるべきか、何を目指すべきかという人類規模のテーマについて 見つめなおす大変良い機会となった。</p> <p>当初は、これらの講演を受けて異分野交流の場としてどのような組織や形態が望ましいのか、などについて話し合われる予定であった。しかし実際にはなかなかそこまでに至れず、我が国に現存する放射線に関するいくつかの問題について熱い議論が行われた。参加された市民のみなさまのご意見は貴重でありまた鋭いもので、それに対して科学者もまた熱い論議を重ねることとなった。まだまだ科学者と市民との間に大きな隔たりがあることを痛感されられたが、それでもこのような壁や偏見のない議論の場が存在することに大きな意義を感じた。</p> <p>今後もこのような取り組みが継続されることを切に願っている。</p> <p>原発事故から得た教訓をどう活かすのか、科学者同士の異分野交流はもちろんのこと科学界と実社会との間での対話交流の継続が極めて重要な鍵となると感じた。                                   </p> <p style="text-align: right;">3月8日参加(角山雄一様 研究者)</p> </td> </tr> <tr> <td> <p>この会議のおもしろいところは、単に多分野の基礎研究者の研究報告に留まらず、神田玲子氏、有本建夫氏といった第一線の放射線生物学、リスク学の第一人者の話、長我部信行氏の基礎科学から社会実装への話が盛り込まれている点であろうか。さらにこのような方々に、高関心の市民でも直接質問できたという点にあったかと思う。<br />3.11以降、あいんしゅたいんが行ってきた異分野連携の活動、その中で培われた人脈がここまで花開いてきたかとも思った。<br />もう一つ、議論はデータに基づいて行うという、この場での暗黙のルールも大事だと思っている。(感情的議論が出てくると、坂東発言が飛んでくるのも重要かと)</p> <p>思えば、2011年7月3日に京都で開いた「シリーズ 東日本大震災にまつわる科学 第一回公開講演討論会」の時にフロアからの「原発賛成・反対」を明らかにして議論すべきとの発言を一喝して、「あいんしゅたいんの講演会はそんな場ではない、あくまで科学的事実に基づいて、議論する場である」との坂東理事長の言葉に、あいんしゅたいんの立場が表明されたといえるであろう。<br />一介のNPOが、3.11以降、国内外のその道の専門家を一同に集めて議論の場を多少なりとも作れてきた事、またその周辺に頼もしい若手が集まってきていることを確認した会議であった。                                   </p> <p style="text-align: right;">3月8・9日参加(宇野賀津子様 研究者)</p> </td> </tr> <tr> <td> <p>異分野交流、文理融合などの掛け声はかなり前から耳にしているが、少なくとも私の周りでそのことに実質感をもって取り組むことができているケースはまず見かけない。</p> <p>異分野交流や文理融合の前に、そもそも学術とか科学とはなにを意味するのであろうか。日本語の科学に関していえば、どうやらサイエンス(Science)とは別物のように見える。 Scienceの語源はラテン語のscienticaであって、それは知識全体を示しているようである。日本語の科学とは、どうやら細分化された学科を問うているにすぎないようである。</p> <p>私たち大学にいるもの、なかでも科学の教育研究に携わっているものは、少なくともこの〈知識全体〉を俯瞰しようとする〝心意気〟だけは常に持っていたい??むしろ無理にでもそうしなければならないと思う。しかるに、現実の大学まわりは実に深刻な状況である。</p> <p>業績主義が跋扈している。それはひとことで言えば、査読付き論文や特許の数である。業績を数多くあげるには、専門分野に閉じこもりそのコミュニティで共同研究仲間をつくって共著論文を量産する。まあ言ってみれば世知辛い話だ。</p> <p>学術や科学の源泉はどこにあるのか。アリストテレスは人間の本性とは知を愛することだと考え、約2300年以上前にその〈知の全体〉像を著した。その全体像の構成は今もそう大差ないように思う。アリストテレスはプラトンの弟子とされているが、そのプラトンが後世に遺したものにソクラテスの哲学がある(ソクラテス自身は著作を遺していない)。ソクラテスとは対話と〝産婆術〟だと思う。</p> <p>何をどう考え、どのように表現していいのかよくわからないこと〟を自己にも他者にもよくわかることにして産み出す。それが対話という手法にあると思う。</p> <p>坂東さんの意志と情熱は、この対話と産婆にあると思っている。だから、今回のような会に参加すると、異分野交流などという表層の出来事ではない、もっと深層の〝知を愛する欲望〟のようなものが鼓舞されるのである。</p> <p style="text-align: right;">3月8・9日参加(澤田哲生様 研究者)</p> </td> </tr> <tr> <td> <p>専門家の間でも意見が分かれる低線量放射線の生体影響について、「これまでの取り組みを紹介しつつ今後の展開を見据えるべく踏み込んだ議論を行う機会」というご案内に魅力を感じて参加しました。<br />私が参加させていただいた初日の3月8日には、錚々たる先生方のお話をうかがい大変勉強になりましたが、後半の議論の部は、「話し合うのも簡単ではない」というのが正直な感想です。自分の非力も噛みしめております。2日目には踏み込んだ議論が行われたことと拝察しますので、その内容等もご共有いただけると有り難く存じます。</p> <p>初日の学術的な雰囲気に感じたのは、やはり、「一般市民」との乖離でした。もちろん、一般市民を十把一絡げにすることはできず、日頃接する範囲に限られますが、多くの人は今やほとんど関心を失ったまま、なんとなく「どんなに低線量でも放射線被ばくは怖い」というLNT仮説に拠っているように見えます。<br />この漠然とした恐怖が固定されている限り、福島を取り巻く風評被害も、甲状腺がん発症の解釈も、原発の廃棄物の最終処分場の問題も、エネルギーのベストミックスについても、健全な議論が成り立たず、解決不能の空気が支配していることに危機感を持っております。<br />細かい話はともかく、「どの程度の放射線までは人体に影響がないと言えるのか」について、普通の市民にも理解でき、納得でき、「ゼロリスクはない」という覚悟を持てば受け容れられるような「許容量」が共有されるようになることを切に望みます。そのためにどうすればいいのか・・という焦燥感や無力感は持ち越したままですが、すぐに解決できる問題ではないのでしょう。</p> <p>なにぶん福島第一原発の事故までは放射線の知識が皆無であった不勉強な市民ですので、今頃ですが、坂東先生をはじめ皆様方の努力の結晶である『放射線 必須データ32 被ばく影響の根拠』を購入しました。ぜひ拝読いたします。<br />今回は、このような会に集まられた皆様と、限られた時間ながらお話できたことが大きな収穫でした。今後とも皆様と情報交換、意見交換させていただきながら、「低線量被ばくへの過度の恐怖」を払拭するためになんらかの形でお役に立てれば幸いです。</p> <p style="text-align: right;">3月8日参加(井内千穂様 ジャーナリスト)</p> </td> </tr> <tr> <td> <p>福島の事故が社会的な問題になって以来、様々な意見対立が生まれました。その中に科学者と市民の間で意見が対立したこともあり、主催者の皆様はそうしたことに心を傷められて今回の会議を科学者だけのものではなく、科学者と市民の対話という形にされたのだと思います。</p> <p>福島の事故については福島の市民も科学者も巻き込まれた側であるにもかかわらず、この二者が対立しなければならないとすればとても残念なことです。会議の前の個人的な印象としては、政府や東京電力が被害者の方々に背を向けた結果、できるだけ市民の疑問に応えようとしてきた科学者の方々の方へと非難が向かってしまったのではないかと考えていました。<br />それは恐らく一面として事実なのだと思います。しかし一方で、科学者の方々は知らず知らずの内に政治的意見を述べ、その結果として世間から政治的な反応を受けているのではないかということもまた、会議での議論に接した結果感じるようになったのです。</p> <p>会議では、科学者側の参加者が何となく述べた政治的意見が福島の被害者側の感情に触れてしまう場面も見られました。ここでは科学者の政治性が良いとか悪いとかいうことを言いたいわけではありません。むしろ、人が社会性を伴う議題について意見を表明するときに個人の政治性が入らないということは有り得ないということ、それが公の場での発言であれば政治的結果が必ず伴うということ、そしてそれを認識した上で意見表明をどうするかということは科学者個人の決定に委ねられるだろうということなのです。</p> <p>科学者の意見が政治に影響を与えるケースには次のようなものがあるかと思います。ここではそれを4つに場合分けし、それぞれに例示や補足説明を行いました。</p> <p>(1) 純粋な科学的事実が政治的結果を生む<br />例えば、数学上の未解決問題の解決が軍事暗号の解読に繋がる。</p> <p>(2) 政治的影響を受けた科学研究が政治的結果を生む<br />アメリカ政府の主導で行われたマンハッタン計画、日本政府の資金で行われた原子力関連の研究など。論文が科学的に正しいとしても政治的結果を生んだり、特定の利害関係者のみを利するような事実の一面だけに焦点を当てる結果となる。</p> <p>(3) 論文の非科学的側面が政治的結果を生む<br />科学分野の論文であっても、結論を導くために必要な情報が欠けている場合などは論文執筆者の裁量で推論を行う必要がある場合がある。こうした科学論文の非科学的要素には個人の政治性が(意識的にも無意識的にも)入り込む余地がある。</p> <p>(4) 科学的に誤りである論文が政治的結果を生む<br />故意または過失によって誤った科学的結論が導き出され、それが政治利用される。</p> <p>便宜的に4つのケースを挙げましたが、実際にはこれほど綺麗に分けられるものではないと思います。<br />例えば、数学者が未解決問題の解決が軍事暗号の解読に繋がることを知りながらそれを解決した場合、そこには本当に政治性が全く無かったのでしょうか?実際には人がある問題について知っていた場合、意識的であれ無意識的であれ人は何らかの価値判断を下しているはずなのです。実際に今回の会議でも科学者の方々は自分の発言が科学的事実なのか、政治的意見なのかという区分に完全に自覚的であったわけではないというのが個人的感想です。</p> <p>恐らくは、人間が社会問題に関わる話題について意見を表明する場合、完全に政治性を取り除くということは不可能に近いのです。上記に述べた様に純粋な科学論文を書く場合でもそうなのであれば、例えば科学者がマスコミに露出して意見を求められる場合などでは尚更だと思います。</p> <p>そしてそうした言動には必ず政治的結果が伴います。科学者という信頼できる肩書で意見表明をした場合、それが世論を動かし、それによって得をする側と損をする側が必ず出てくるからです。科学者が公に意見表明する場合、それを完全に避けることは出来ないということを先ず認識することが必要なのでしょう。その上で科学者個人がその意見表明を行うのか、行わないのかを決めることになるのでしょう。しかしその行動から必然的に生じる結果は、その行動を行なった個人が受けなければならないことになります。その上で個人は選択を行わなければならないのだと思います。</p> <p style="text-align: right;">3月8・9日参加(市民)</p> </td> </tr> <tr> <td> <p>一方的な情報や見解だけではなく、多くの知見や異論にも耳を傾け、真摯に検討し議論する重要性を我々は原発事故以降学びました。<br />この事が日本の科学技術の進展に貢献し、失われた科学者の信頼を取り戻す事に繋がるだろうと思います。</p> <p>科学者や政府、利権者が真実を隠し続け、物事を進めて来た事が原発の安全神話の崩壊によって明らかとなりました。そして国民も科学者も真実が何なのかわからなくなり、日本中が混乱してしまいました。<br />原発事故が起きた一要因は原子力むら社会で異論を排除してきた事です。日本政府や放射線防護がICRPを神様として崇める神話も、もしかすると崩れる可能性もあります。<br />そして、早野・宮崎論文の不正、原子力規制庁や環境省の対応、福島県や福島医大の対応をみていると、科学者や政府、学会や大学等への不信感は益々増大しているようにも感じます。</p> <p>不信感払拭の為には、良識ある科学者や専門家が、政府や自治体、そして科学者や学会、福島医大等に批判的言動(異論)を出す事は重要だろうと考えています。市民は異論が物事を正しい方向に動かす事、異論の中に真実が隠されている事を学びました。<br />その為に『あいんしゅたいん』としての役割・活動は以下であって欲しいと思います。</p> <p>1.政治的な議論は排斥し、純粋に科学的・医学的議論に徹する事。</p> <p>2.他の科学者の見解や論文、そして政府や行政の見解や施策に対しても科学的視点で議論・検証し批判もする。科学者同士が異論を言わない習性が日本の科学者の国民からの信頼を益々損ねています。科学者同士の議論が日本の科学者のリテラシーの向上や科学者の倫理観向上にも寄与します。</p> <p>3.テーマはある程度絞った研究会(放射線や健康被害)を定期的(2~3か月に1回程度)に開催し専門家同士で議論する。徐々にテーマを広める。</p> <p>4.異論にも耳を傾け、真摯に検討し議論もしてみる。</p> <p>5.『ふくしまの真実を学び伝えたい』市民(主に福島県民)を支援する。<br />(例:疑問や質問に答えてくれる体制の構築等)</p> <p>6.福島の被災者・被ばく者・健康被害者を支援する。(具体的な支援の仕方は検討要)</p> <p>7.メンバーや会員同士の意見交換はML上でも実施する。但し、常に福島県民、被ばく者の立場にたって議論する。</p> <p>8.最後にあるジャーナリストの言葉。<br />  『知らない事は怖い事。<br />  知らせないのはもっと怖い事。<br />  知ろうとしないのはあなたの責任。<br />  知っていて何もしないのは、いったいあなたは誰ですか』<br />  小生の原発事故以降の行動もこの言葉が基本にあります。</p> <p style="text-align: right;">3月8・9日参加(田口茂様 市民)</p> </td> </tr> <tr> <td> <p>民間企業にいる身としては、やはり、長我部先生、和田先生が進められている学術振興会の産学連携委員会に期待したく存じます。</p> <p style="text-align: right;">3月8日参加(市民)</p> </td> </tr> <tr> <td> <p>8日の会議には、放射線の人体への影響に関心を寄せる一般市民から、ジャーナリスト、産業界、そして放射線科学を専門とする研究者まできわめて多様な背景を持つ参加者が集まり、それぞれの立場から活発な意見交換を行った。<br />翌9日には、前日の議論を受けて、福島において問題となっている甲状腺がんの検査や個人線量評価など個別のテーマについて議論が進められた。</p> <p>本事業では、低線量放射線の生体影響に関する様々な考え方や意見がある中で、低線量放射線の人体への影響について市民と科学者が共通の場で意見を交換できるネットワークの構築を目指してきた。<br />市民と科学者の垣根を取り払い、さらに科学者がそれぞれの専門性の枠を超えて率直な意見交換と議論を進めてきた。その中で、現在の科学で明らかにできることの限界や、その情報を幅広く市民に向けて発信することの困難さといった課題が浮かび上がってきた。<br />この2日間の会議においても、異なる考え方を持つ人々が激論を交わす中で、参加者の意識がお互いの立場や意見の相違を乗り越えて、科学的エビデンスに基づいて放射線の生体影響に関する共通の理解を深め、その情報を発信する方向へと意見が集約されていったことは興味深い。</p> <p>本来、科学者もまた一市民としての立場があり、市民と科学者は対立する構造ではない。<br />ところが、原子力発電所事故のような異常事態が発生すると、それによる被害を受けた立場の市民と、客観的な立場から科学的事実を説明しようとする科学者の間には、意識の点で大きな乖離が生じてしまう。<br />単に安全であるという説明だけでは逆に不安を増大させ、科学者に対する不信感を招くことになる。科学者や研究者は、自分たちの専門領域の知識や情報には精通しているが、他の領域を幅広く見通すことは必ずしも得意ではない。異なる専門性を持つ研究者が分野を超えて協力することによって、科学技術の新たな展開が生まれるが、このような異分野交流が成功する鍵はお互いの専門的立場の相互理解から始まる。<br />市民と科学者の垣根を超えた交流を進める上でも、お互いの立場を理解することが出発点となる。さらには、率直な市民感覚からの問題提起が新しい科学の礎となる。このような活動を進めることによって、低線量放射線の影響についての共通の理解を深めるための基盤が構築されつつあることを実感した。</p> <p style="text-align: right;">3月8・9日参加(米倉義晴様 研究者/本事業評価委員)</p> </td> </tr> </tbody> </table> <p style="text-align: center;">※ 間違いがある場合や、ご意見・ご感想がある場合には、<a href="https://www.secure-cloud.jp/sf/1469640914VQwGkRDZ" target="_blank">お問い合わせ</a>、もしくは<a href="https://www.facebook.com/events/1740734299473054/permalink/1743390419207442/" target="_blank">Facebook</a>のコメント欄にてご一報ください</p> <p> </p></div> 科学者グループ会議 報告 2019-02-25T11:11:41+09:00 2019-02-25T11:11:41+09:00 https://www.jein.jp/networkofcs/information-list/regularly-workshop/workshop-report/1652-workshop2018-2.html JEin事務局 <div class="feed-description"><p><a href="networkofcs.html"><img src="images/networkofcs/networkofcs-title2.png" border="0" style="margin-right: auto; margin-left: auto; display: block;" /></a></p> <div> </div> <p style="text-align: center;"><span style="font-size: 16px;"><strong>科学者グループ会議「EBR構築に向けて」 報告</strong></span></p> <p>1.概 要</p> <p style="padding-left: 26px;">日  時:2019年1月17日(木) 10:00~17:00<br />場  所:放射性同位元素総合センター分館<br />話  題:EBR構築に向けて</p> <p>2.参加者感想</p> <table style="width: 95%;" border="1" cellpadding="8" align="center"> <tbody> <tr> <td> <p>この日の集まりには、個人線量計への関心から参加しましたので、その点についての感想を以下に記します。</p> <p>予習のためにネットで探した資料の中では、以下が大変参考になりました。</p> <p>「<a href="https://docs.google.com/document/d/1sm_T9wFOwkZZXrXnGRCto_dACRRdlmcDMQaGEXMVOwg/edit?pli=1" target="_blank">放射線計測についての少し詳しい解説</a>」</p> <p>当日、先生方のお話を伺って、職業被曝については線量測定の枠組みが上手く機能していることが分かりました。<br />それに対して、今回のような原子力発電所の事故によって必要となった住民の線量測定については体制ができておらず、今回は各自治体のそれぞれの考えによって測定が行われ、その結果、測定機器の選定やBGの処理に差異が生じています。その差異を測定の誤差範囲内と考えて気に留めない方もおられます。<br />一方、BGの処理の違いに疑問を感じている方もおられることが紹介されました。 そして、BGの処理を含めて、より正確に測定すべきということの理由としては、そのわずかな差によって健康影響が生じることを恐れているというよりは、定義がある以上、それにより即した測定をするよう努力すべきという考え方のように感じられました。</p> <p>そもそも精緻な計算で定義された実効線量に対して、測定している値の誤差は大きく、実用量と呼ばれている個人線量当量でさえ正確には測れないことを、専門家も当然承知されています。 専門家も今の実効線量や実用量を絶対視しているわけではなく、被曝量については模索中であり、ICRP/ICRUで実用量の見直し等が行われているとのことでした。</p> <p>職業被曝では、正確さよりも実効線量を過小評価しないということに重点が置かれてきたように感じました。そして、測定値と実効線量を関連付けるために個人線量当量を実効線量とすることが法的に定められています。<br />事故後の各自治体の個人線量の測定値に関しては、あくまでも個人線量当量という扱いなのか、聞き落としたのかもしれませんが、分かりませんでした。 <br />外部被曝の個人線量(あるいは被ばく量)という表現では、実効線量、個人線量当量、個人線量計での測定値のどれを指しているのか、特に子どもに関して測定値そのままなのか、年齢を加味して調整しているのか等について見分けられないのではないでしょうか。</p> <p>測定値に正確さを求める心情は当然のことと思いますし、近年、自然放射線と小児白血病の発生に相関があるという論文が複数出されていることもあり、個人線量測定値の細かな数値の差に敏感になる方がおられるのも無理からぬことと思います。<br /> ICRP/ICRUで実用量の見直しが終わるのはまだ先のことのようですので、今の枠組みの中で、個人線量計の測定誤差や子どもの測定値の扱い、用語の使い分け等、一般の者にも分かりやすく伝えて下さるよう、専門家にお願いしたいと思います。</p> <p>事前に多くの資料を整理して下さって、また当日は、研究者の率直なお話を伺うことができ、大変勉強になりました。                                         </p> <p style="text-align: right;">土田理恵子</p> </td> </tr> </tbody> </table> <p style="text-align: center;">※ 間違いがある場合や、ご意見・ご感想がある場合には、<a href="https://www.secure-cloud.jp/sf/1469640914VQwGkRDZ" target="_blank">お問い合わせ</a>、もしくは<a href="https://www.facebook.com/events/1740734299473054/permalink/1743390419207442/" target="_blank">Facebook</a>のコメント欄にてご一報ください</p> <p> </p></div> <div class="feed-description"><p><a href="networkofcs.html"><img src="images/networkofcs/networkofcs-title2.png" border="0" style="margin-right: auto; margin-left: auto; display: block;" /></a></p> <div> </div> <p style="text-align: center;"><span style="font-size: 16px;"><strong>科学者グループ会議「EBR構築に向けて」 報告</strong></span></p> <p>1.概 要</p> <p style="padding-left: 26px;">日  時:2019年1月17日(木) 10:00~17:00<br />場  所:放射性同位元素総合センター分館<br />話  題:EBR構築に向けて</p> <p>2.参加者感想</p> <table style="width: 95%;" border="1" cellpadding="8" align="center"> <tbody> <tr> <td> <p>この日の集まりには、個人線量計への関心から参加しましたので、その点についての感想を以下に記します。</p> <p>予習のためにネットで探した資料の中では、以下が大変参考になりました。</p> <p>「<a href="https://docs.google.com/document/d/1sm_T9wFOwkZZXrXnGRCto_dACRRdlmcDMQaGEXMVOwg/edit?pli=1" target="_blank">放射線計測についての少し詳しい解説</a>」</p> <p>当日、先生方のお話を伺って、職業被曝については線量測定の枠組みが上手く機能していることが分かりました。<br />それに対して、今回のような原子力発電所の事故によって必要となった住民の線量測定については体制ができておらず、今回は各自治体のそれぞれの考えによって測定が行われ、その結果、測定機器の選定やBGの処理に差異が生じています。その差異を測定の誤差範囲内と考えて気に留めない方もおられます。<br />一方、BGの処理の違いに疑問を感じている方もおられることが紹介されました。 そして、BGの処理を含めて、より正確に測定すべきということの理由としては、そのわずかな差によって健康影響が生じることを恐れているというよりは、定義がある以上、それにより即した測定をするよう努力すべきという考え方のように感じられました。</p> <p>そもそも精緻な計算で定義された実効線量に対して、測定している値の誤差は大きく、実用量と呼ばれている個人線量当量でさえ正確には測れないことを、専門家も当然承知されています。 専門家も今の実効線量や実用量を絶対視しているわけではなく、被曝量については模索中であり、ICRP/ICRUで実用量の見直し等が行われているとのことでした。</p> <p>職業被曝では、正確さよりも実効線量を過小評価しないということに重点が置かれてきたように感じました。そして、測定値と実効線量を関連付けるために個人線量当量を実効線量とすることが法的に定められています。<br />事故後の各自治体の個人線量の測定値に関しては、あくまでも個人線量当量という扱いなのか、聞き落としたのかもしれませんが、分かりませんでした。 <br />外部被曝の個人線量(あるいは被ばく量)という表現では、実効線量、個人線量当量、個人線量計での測定値のどれを指しているのか、特に子どもに関して測定値そのままなのか、年齢を加味して調整しているのか等について見分けられないのではないでしょうか。</p> <p>測定値に正確さを求める心情は当然のことと思いますし、近年、自然放射線と小児白血病の発生に相関があるという論文が複数出されていることもあり、個人線量測定値の細かな数値の差に敏感になる方がおられるのも無理からぬことと思います。<br /> ICRP/ICRUで実用量の見直しが終わるのはまだ先のことのようですので、今の枠組みの中で、個人線量計の測定誤差や子どもの測定値の扱い、用語の使い分け等、一般の者にも分かりやすく伝えて下さるよう、専門家にお願いしたいと思います。</p> <p>事前に多くの資料を整理して下さって、また当日は、研究者の率直なお話を伺うことができ、大変勉強になりました。                                         </p> <p style="text-align: right;">土田理恵子</p> </td> </tr> </tbody> </table> <p style="text-align: center;">※ 間違いがある場合や、ご意見・ご感想がある場合には、<a href="https://www.secure-cloud.jp/sf/1469640914VQwGkRDZ" target="_blank">お問い合わせ</a>、もしくは<a href="https://www.facebook.com/events/1740734299473054/permalink/1743390419207442/" target="_blank">Facebook</a>のコメント欄にてご一報ください</p> <p> </p></div> 2018年度第1回定期勉強会報告 2019-02-25T10:53:36+09:00 2019-02-25T10:53:36+09:00 https://www.jein.jp/networkofcs/information-list/regularly-workshop/workshop-report/1651-workshop2018-1.html JEin事務局 <div class="feed-description"><p><a href="networkofcs.html"><img src="images/networkofcs/networkofcs-title2.png" border="0" style="margin-right: auto; margin-left: auto; display: block;" /></a></p> <div> </div> <p style="text-align: center;"><span style="font-size: 16px;"><strong>「福島甲状腺検査の論文解説」勉強会 報告</strong></span></p> <p>1.概 要</p> <p style="padding-left: 26px;">日  時:2019年1月8日(火) 14:00~17:00<br />場  所:<a href="npo-introduction/organization-information.html">NPO法人あいんしゅたいん事務所</a><br />話  題:福島甲状腺検査の論文解説<br />講演資料:<a href="images/networkofcs/takahashi.pdf" target="_blank">福島甲状腺スクリーニング の論文紹介 <img src="images/support/pdficon.png" border="0" width="26" height="26" style="vertical-align: middle; border: 0px;" /></a></p> <p>2.報 告(高橋論文と大津留論文の紹介腺検査の論文解説)</p> <table style="width: 95%;" border="1" cellpadding="8" align="center"> <tbody> <tr> <td> <p>添付のpdfファイルにあるように、高橋論文と大津留論文を紹介しました。<br />これら2つの論文は、福島の甲状腺がんの調査チームのものであり、 最近の発表論文なので重要だとの思いで参加者の皆様と議論しました。</p> <p>高橋論文では甲状腺がんの罹患率(病院で見つかるがんの罹患率)と スクリーニングで発見されるがん数を関係付けています。彼らのモデルは スクリーニング性善説になっていて、スクリーニングで見つかるがんは その後、20?30年後には必ず甲状腺がんになるものを見つけているのだという主張です。<br />このようにモデルを作ると今回の先行調査で見つかった がんの数(100件くらい)は再現できると主張されています。 ただ、このモデリングの問題点は先行調査のがんの年齢分布は全然再現できません。 内部矛盾を含んでいることを指摘しました。</p> <p>大津留論文では本格調査の甲状腺がんの年齢分布を発表しています。この場合もがんの数は年齢とともに増加することが報告されています。<br />残念ながら、この結果と 高橋論文を結びつけることはやっていません。論文を読んでいくと、これくらいのがんの数は高橋モデルで簡単に説明できるということが暗に綴られています。 年齢分布を報告しているし、高橋氏もこの論文に含まれているので、高橋モデルでこれらの年齢分布を計算するべきだというコメントを鈴木さんたちと雑誌に送りました。結果はまだわかりません。</p> <p style="text-align: right;">土岐</p> </td> </tr> </tbody> </table> <p style="text-align: center;">※ 間違いがある場合や、ご意見・ご感想がある場合には、<a href="https://www.secure-cloud.jp/sf/1469640914VQwGkRDZ" target="_blank">お問い合わせ</a>、もしくは<a href="https://www.facebook.com/events/1740734299473054/permalink/1743390419207442/" target="_blank">Facebook</a>のコメント欄にてご一報ください</p> <p> </p></div> <div class="feed-description"><p><a href="networkofcs.html"><img src="images/networkofcs/networkofcs-title2.png" border="0" style="margin-right: auto; margin-left: auto; display: block;" /></a></p> <div> </div> <p style="text-align: center;"><span style="font-size: 16px;"><strong>「福島甲状腺検査の論文解説」勉強会 報告</strong></span></p> <p>1.概 要</p> <p style="padding-left: 26px;">日  時:2019年1月8日(火) 14:00~17:00<br />場  所:<a href="npo-introduction/organization-information.html">NPO法人あいんしゅたいん事務所</a><br />話  題:福島甲状腺検査の論文解説<br />講演資料:<a href="images/networkofcs/takahashi.pdf" target="_blank">福島甲状腺スクリーニング の論文紹介 <img src="images/support/pdficon.png" border="0" width="26" height="26" style="vertical-align: middle; border: 0px;" /></a></p> <p>2.報 告(高橋論文と大津留論文の紹介腺検査の論文解説)</p> <table style="width: 95%;" border="1" cellpadding="8" align="center"> <tbody> <tr> <td> <p>添付のpdfファイルにあるように、高橋論文と大津留論文を紹介しました。<br />これら2つの論文は、福島の甲状腺がんの調査チームのものであり、 最近の発表論文なので重要だとの思いで参加者の皆様と議論しました。</p> <p>高橋論文では甲状腺がんの罹患率(病院で見つかるがんの罹患率)と スクリーニングで発見されるがん数を関係付けています。彼らのモデルは スクリーニング性善説になっていて、スクリーニングで見つかるがんは その後、20?30年後には必ず甲状腺がんになるものを見つけているのだという主張です。<br />このようにモデルを作ると今回の先行調査で見つかった がんの数(100件くらい)は再現できると主張されています。 ただ、このモデリングの問題点は先行調査のがんの年齢分布は全然再現できません。 内部矛盾を含んでいることを指摘しました。</p> <p>大津留論文では本格調査の甲状腺がんの年齢分布を発表しています。この場合もがんの数は年齢とともに増加することが報告されています。<br />残念ながら、この結果と 高橋論文を結びつけることはやっていません。論文を読んでいくと、これくらいのがんの数は高橋モデルで簡単に説明できるということが暗に綴られています。 年齢分布を報告しているし、高橋氏もこの論文に含まれているので、高橋モデルでこれらの年齢分布を計算するべきだというコメントを鈴木さんたちと雑誌に送りました。結果はまだわかりません。</p> <p style="text-align: right;">土岐</p> </td> </tr> </tbody> </table> <p style="text-align: center;">※ 間違いがある場合や、ご意見・ご感想がある場合には、<a href="https://www.secure-cloud.jp/sf/1469640914VQwGkRDZ" target="_blank">お問い合わせ</a>、もしくは<a href="https://www.facebook.com/events/1740734299473054/permalink/1743390419207442/" target="_blank">Facebook</a>のコメント欄にてご一報ください</p> <p> </p></div> 市民と科学者の放射線コミュニケーションネットワーク勉強会報告 2018-01-31T10:56:00+09:00 2018-01-31T10:56:00+09:00 https://www.jein.jp/networkofcs/information-list/regularly-workshop/workshop-report/1558-workshop2017-special.html JEin事務局 <div class="feed-description"><p><a href="networkofcs.html"><img src="images/networkofcs/networkofcs-title2.png" border="0" style="margin-right: auto; margin-left: auto; display: block;" /></a></p> <div> </div> <p style="text-align: center;"><span style="font-size: 16px;"><strong><span style="font-size: 16px;"><strong>市民と科学者の放射線コミュニケーションネットワーク勉強会 </strong></span>報告</strong></span></p> <p>1.概 要</p> <p style="padding-left: 26px;">日  時:2018年1月26日(金) 14:30~17:00<br />場  所:ルイ・パストゥール医学研究センター 4階会議室<br />話題提供:坪倉正治(東京大学医学研究所特任研究員)<br />話  題:南相馬の診療から見える、福島原発事故の健康被害の本体<span style="text-align: left; color: #000000; text-transform: none; text-indent: 0px; letter-spacing: normal; font-family: Arial,Verdana,Tahoma,Helvetica,sans-serif; font-size: 12px; font-style: normal; font-variant: normal; font-weight: 400; text-decoration: none; word-spacing: 0px; float: none; display: inline !important; white-space: normal; orphans: 2; background-color: transparent; -webkit-text-stroke-width: 0px;"><br />講演資料:<a href="images/networkofcs/kouensiryo_180126.pdf" target="_blank">相馬地方の診療から見える福島原発事故の健康被害の本体 </a><img src="images/support/pdficon.png" border="0" width="26" height="26" style="vertical-align: middle; border: 0px;" /><br /></span></p> <p>2.参加者所感(報告と感想)</p> <table style="width: 95%;" border="1" cellpadding="8" align="center"> <tbody> <tr> <td> <p>最初に、参加者が簡単に自己紹介を行いました。<br />坪倉医師は、東日本大震災直後、若手医師派遣の一環で福島入りされました。ご自身は大丈夫と判断されていたが、家族からは大きな反対を受けたとのこと。派遣先の病院は、福島第一原発から23kmの南相馬市にあり、当時、20~30kmが緊急時避難準備地域でした。現在は、医師として勤務されるだけでなく、アドバイザー的なお仕事もされているとのことでした。</p> <p>「放射線災害における健康被害の実態とは何か」</p> <p> ● 避難することの影響:</p> <p style="padding-left: 30px;">低線量の放射線災害やインフルエンザのような、元凶が目に見えないものを、津波や洪水のような災害と分けて、silent disaster(沈黙の災害?)というそうです。<br />その場合、弱者を避難させない場合と避難させる場合で、避難しない方が、影響が少ない(死亡リスクが低い)ということもあるとのこと。<br />(弱者は新しい環境に弱いため。)坪倉医師は、ホールボディ検査にも関わられ、福島原発事故後の被曝は低線量であったこと、2017年現在は内部被ばく量は、特殊な食生活例を除きほとんどないことを示されました。また、避難した場合の高齢者の死亡リスクと避難しなかった(被ばくする)場合の若年者のリスクを見積もり、今回の線量では避難しない方がリスクが小さいことを示されていました。<br />このような「結果的に判明した事実」を示しても、実際には「避難しない選択」は難しいという話もされていました。</p> <p>● 放射線の影響:</p> <p style="padding-left: 30px;">実際の甲状腺の計測または線量推定により、福島第一原発事故の場合、最初の甲状腺被ばく量は平均で約4から高くても数十ミリシーベルトだったと推定されていました。<br />チェルノブイリ原発事故の場合は、ベラルーシで平均1100ミリシーベルトだったとのことで、比較にならないほど少ないものでした。福島で行われている甲状腺がんの検査でも、放射線起因性の小児甲状腺がんは(ほとんど?)発生していないという説明でした。<br />これに対し、「小児甲状腺がんが見つかっているという報告がある以上、影響はなかったとはいえないのではないか?」という質問も出ました。坪倉医師は、見つかったのはスクリーニング効果であり、検査をしなければその後の処置もする必要もなかったかもしれず、また、これまで判明しているように被ばく量がほとんどない状況では検査はしないという選択肢もありえるという立場を示されていました。<br />甲状腺がんの発見率と死亡率は関連性がないというデータも示されており、放射線の影響以前に、甲状腺がんに対する知識も必要だと感じました。</p> <p>● 震災後の健康被害について:</p> <p style="padding-left: 30px;">震災後の環境変化から生活習慣病(糖尿病)になった方が増えたというお話がありました。<br />生活習慣病患者はがんになるリスクも上がるそうです。今回の放射線被ばくによってがんになるリスクと糖尿病からがんになるリスクを比較すると、後者の方が40倍高いというお話もされていました。また、乳がんが末期で見つかる方も増えたというデータがあるそうです。<br />これは、同居する家族(特に娘さん)がいなくなったことと関連があるとのことでした。</p> <p>全体を通じ、単に「怖い」「大丈夫」という二択ではなく、どちらの道を選んでも、それぞれのリスクがあることを知ることが大事だと感じました。</p> <p style="text-align: right;">(NPO法人あいんしゅたいんスタッフ 河本恭子)</p> </td> </tr> </tbody> </table> <div> </div> <p style="text-align: center;">※ 間違いがある場合や、ご意見・ご感想がある場合には、<a href="https://www.secure-cloud.jp/sf/1469640914VQwGkRDZ" target="_blank">お問い合わせ</a>、もしくは<a href="https://www.facebook.com/events/1740734299473054/permalink/1743390419207442/" target="_blank">Facebook</a>のコメント欄にてご一報ください</p> <p> </p></div> <div class="feed-description"><p><a href="networkofcs.html"><img src="images/networkofcs/networkofcs-title2.png" border="0" style="margin-right: auto; margin-left: auto; display: block;" /></a></p> <div> </div> <p style="text-align: center;"><span style="font-size: 16px;"><strong><span style="font-size: 16px;"><strong>市民と科学者の放射線コミュニケーションネットワーク勉強会 </strong></span>報告</strong></span></p> <p>1.概 要</p> <p style="padding-left: 26px;">日  時:2018年1月26日(金) 14:30~17:00<br />場  所:ルイ・パストゥール医学研究センター 4階会議室<br />話題提供:坪倉正治(東京大学医学研究所特任研究員)<br />話  題:南相馬の診療から見える、福島原発事故の健康被害の本体<span style="text-align: left; color: #000000; text-transform: none; text-indent: 0px; letter-spacing: normal; font-family: Arial,Verdana,Tahoma,Helvetica,sans-serif; font-size: 12px; font-style: normal; font-variant: normal; font-weight: 400; text-decoration: none; word-spacing: 0px; float: none; display: inline !important; white-space: normal; orphans: 2; background-color: transparent; -webkit-text-stroke-width: 0px;"><br />講演資料:<a href="images/networkofcs/kouensiryo_180126.pdf" target="_blank">相馬地方の診療から見える福島原発事故の健康被害の本体 </a><img src="images/support/pdficon.png" border="0" width="26" height="26" style="vertical-align: middle; border: 0px;" /><br /></span></p> <p>2.参加者所感(報告と感想)</p> <table style="width: 95%;" border="1" cellpadding="8" align="center"> <tbody> <tr> <td> <p>最初に、参加者が簡単に自己紹介を行いました。<br />坪倉医師は、東日本大震災直後、若手医師派遣の一環で福島入りされました。ご自身は大丈夫と判断されていたが、家族からは大きな反対を受けたとのこと。派遣先の病院は、福島第一原発から23kmの南相馬市にあり、当時、20~30kmが緊急時避難準備地域でした。現在は、医師として勤務されるだけでなく、アドバイザー的なお仕事もされているとのことでした。</p> <p>「放射線災害における健康被害の実態とは何か」</p> <p> ● 避難することの影響:</p> <p style="padding-left: 30px;">低線量の放射線災害やインフルエンザのような、元凶が目に見えないものを、津波や洪水のような災害と分けて、silent disaster(沈黙の災害?)というそうです。<br />その場合、弱者を避難させない場合と避難させる場合で、避難しない方が、影響が少ない(死亡リスクが低い)ということもあるとのこと。<br />(弱者は新しい環境に弱いため。)坪倉医師は、ホールボディ検査にも関わられ、福島原発事故後の被曝は低線量であったこと、2017年現在は内部被ばく量は、特殊な食生活例を除きほとんどないことを示されました。また、避難した場合の高齢者の死亡リスクと避難しなかった(被ばくする)場合の若年者のリスクを見積もり、今回の線量では避難しない方がリスクが小さいことを示されていました。<br />このような「結果的に判明した事実」を示しても、実際には「避難しない選択」は難しいという話もされていました。</p> <p>● 放射線の影響:</p> <p style="padding-left: 30px;">実際の甲状腺の計測または線量推定により、福島第一原発事故の場合、最初の甲状腺被ばく量は平均で約4から高くても数十ミリシーベルトだったと推定されていました。<br />チェルノブイリ原発事故の場合は、ベラルーシで平均1100ミリシーベルトだったとのことで、比較にならないほど少ないものでした。福島で行われている甲状腺がんの検査でも、放射線起因性の小児甲状腺がんは(ほとんど?)発生していないという説明でした。<br />これに対し、「小児甲状腺がんが見つかっているという報告がある以上、影響はなかったとはいえないのではないか?」という質問も出ました。坪倉医師は、見つかったのはスクリーニング効果であり、検査をしなければその後の処置もする必要もなかったかもしれず、また、これまで判明しているように被ばく量がほとんどない状況では検査はしないという選択肢もありえるという立場を示されていました。<br />甲状腺がんの発見率と死亡率は関連性がないというデータも示されており、放射線の影響以前に、甲状腺がんに対する知識も必要だと感じました。</p> <p>● 震災後の健康被害について:</p> <p style="padding-left: 30px;">震災後の環境変化から生活習慣病(糖尿病)になった方が増えたというお話がありました。<br />生活習慣病患者はがんになるリスクも上がるそうです。今回の放射線被ばくによってがんになるリスクと糖尿病からがんになるリスクを比較すると、後者の方が40倍高いというお話もされていました。また、乳がんが末期で見つかる方も増えたというデータがあるそうです。<br />これは、同居する家族(特に娘さん)がいなくなったことと関連があるとのことでした。</p> <p>全体を通じ、単に「怖い」「大丈夫」という二択ではなく、どちらの道を選んでも、それぞれのリスクがあることを知ることが大事だと感じました。</p> <p style="text-align: right;">(NPO法人あいんしゅたいんスタッフ 河本恭子)</p> </td> </tr> </tbody> </table> <div> </div> <p style="text-align: center;">※ 間違いがある場合や、ご意見・ご感想がある場合には、<a href="https://www.secure-cloud.jp/sf/1469640914VQwGkRDZ" target="_blank">お問い合わせ</a>、もしくは<a href="https://www.facebook.com/events/1740734299473054/permalink/1743390419207442/" target="_blank">Facebook</a>のコメント欄にてご一報ください</p> <p> </p></div> 2017年度第5回定期勉強会報告 2018-01-12T10:09:24+09:00 2018-01-12T10:09:24+09:00 https://www.jein.jp/networkofcs/information-list/regularly-workshop/workshop-report/1553-workshop12.html JEin事務局 <div class="feed-description"><p><a href="networkofcs.html"><img src="images/networkofcs/networkofcs-title2.png" border="0" style="margin-right: auto; margin-left: auto; display: block;" /></a></p> <div> </div> <p style="text-align: center;"><span style="font-size: 16px;"><strong>2017年度第5回定期勉強会(サロン・ド・科学の探索 2018年第1回)報告</strong></span></p> <p>1.概 要</p> <p style="padding-left: 26px;">日  時:2018年1月7日(日) 14:00~17:00<br />場  所:<a href="npo-introduction/organization-information.html">NPO法人あいんしゅたいん事務所</a><br />話題提供:<span style="text-align: left; color: #000000; text-transform: none; text-indent: 0px; letter-spacing: normal; font-family: Arial,Verdana,Tahoma,Helvetica,sans-serif; font-size: 12px; font-style: normal; font-variant: normal; font-weight: 400; text-decoration: none; word-spacing: 0px; float: none; display: inline !important; white-space: normal; orphans: 2; background-color: transparent; -webkit-text-stroke-width: 0px;">西川伸一(JT生命誌研究館顧問・NPO法人AASJ代表)</span><br />話  題:<span style="text-align: left; color: #000000; text-transform: none; text-indent: 0px; letter-spacing: normal; font-family: Arial,Verdana,Tahoma,Helvetica,sans-serif; font-size: 12px; font-style: normal; font-variant: normal; font-weight: 400; text-decoration: none; word-spacing: 0px; float: none; display: inline !important; white-space: normal; orphans: 2; background-color: transparent; -webkit-text-stroke-width: 0px;">21世紀科学の課題<br />講演資料:<a href="images/networkofcs/kouensiryo_180107.pdf" target="_blank">21世紀を語る4つのキーワード </a><img src="images/support/pdficon.png" border="0" width="26" height="26" style="vertical-align: middle; border: 0px;" /><br /></span></p> <p>2.話 題</p> <table style="width: 95%;" border="1" cellpadding="8" align="center"> <tbody> <tr> <td> <p>21世紀の科学が人間の科学へと向かう中で、科学に何を期待するかという視点から、21世紀科学における課題についての幅広い議論が行われた。</p> <p>西川氏は、その幅広い知識と経験に基づいて、これからの科学のあり方として、情報、エネルギー、生産の単位が個人や家族、あるいはコミュニティーと言った小さな単位に分散した社会が中心になるとの意見を提示された。その中で、情報とゲノムがキーワードとなる新たな文明が生まれつつあるとの考え方が示され、21世紀の科学とその中での医学医療のあり方について参加者と幅広い議論が続けられた。</p> <p>西川氏の持っておられる哲学から生命科学・物理学に及ぶきわめて幅広い知識に圧倒されながら、参加者からもさまざまな質問が出されて活発な議論が展開された。個人が積極的に自らのデータを提供する社会においては、誰もが先端科学活動に参加することが可能になり、それに対応した社会システムの構築が求められる。</p> </td> </tr> </tbody> </table> <p>3.参加者所感</p> <table style="width: 95%;" border="1" cellpadding="8" align="center"> <tbody> <tr> <td> <p>年末から新年にかけてテレビでは、「これから世の中はどうなる?」といった問題を取り上げていますが、必ず出てくるのがAIですね。ふつうの人も、これまで以上に科学に対して期待と不安を抱いていると思います。</p> <p>こういう時代こそ科学を巨視的にとらえ直す、たとえば歴史的、社会的、思想的にきちんととらえ直すことが求められる気がします。<br />でも、そういうことができる科学者は、今少なくなっているのではないでしょうか。昨日の西川先生のような方の語りは、科学(と人間)のことをちゃんと考えていくうえで、とても重要だと思います。私が存じ上げている範囲ですけれど、物理では佐藤文隆先生でしょうか。 佐藤先生も「聞けばたいていのことを答えてもらえる」方ですし、歴史とか人間の視点から科学を語られますよね。こういった方々のお話は、特に若い人にぜひ聞いてほしい話だと思いました。</p> <p>SCIENCEやNATUREで格差や移民の話が取り上げられたのは、「哲学や社会学に科学の視点を持ちこもうとしている(科学で哲学や社会を語り直す)」のだと理解しましたが、その逆もアリだと思いました。 勉強会に哲学とか思想社会学の方を呼んで、科学の人と議論してもらうのも面白いと思いました。</p> <p style="text-align: right;">(フリーライター 艸場よしみ)</p> </td> </tr> </tbody> </table> <div> </div> <p style="text-align: center;">※ 間違いがある場合や、ご意見・ご感想がある場合には、<a href="https://www.secure-cloud.jp/sf/1469640914VQwGkRDZ" target="_blank">お問い合わせ</a>、もしくは<a href="https://www.facebook.com/events/1740734299473054/permalink/1743390419207442/" target="_blank">Facebook</a>のコメント欄にてご一報ください</p> <p> </p></div> <div class="feed-description"><p><a href="networkofcs.html"><img src="images/networkofcs/networkofcs-title2.png" border="0" style="margin-right: auto; margin-left: auto; display: block;" /></a></p> <div> </div> <p style="text-align: center;"><span style="font-size: 16px;"><strong>2017年度第5回定期勉強会(サロン・ド・科学の探索 2018年第1回)報告</strong></span></p> <p>1.概 要</p> <p style="padding-left: 26px;">日  時:2018年1月7日(日) 14:00~17:00<br />場  所:<a href="npo-introduction/organization-information.html">NPO法人あいんしゅたいん事務所</a><br />話題提供:<span style="text-align: left; color: #000000; text-transform: none; text-indent: 0px; letter-spacing: normal; font-family: Arial,Verdana,Tahoma,Helvetica,sans-serif; font-size: 12px; font-style: normal; font-variant: normal; font-weight: 400; text-decoration: none; word-spacing: 0px; float: none; display: inline !important; white-space: normal; orphans: 2; background-color: transparent; -webkit-text-stroke-width: 0px;">西川伸一(JT生命誌研究館顧問・NPO法人AASJ代表)</span><br />話  題:<span style="text-align: left; color: #000000; text-transform: none; text-indent: 0px; letter-spacing: normal; font-family: Arial,Verdana,Tahoma,Helvetica,sans-serif; font-size: 12px; font-style: normal; font-variant: normal; font-weight: 400; text-decoration: none; word-spacing: 0px; float: none; display: inline !important; white-space: normal; orphans: 2; background-color: transparent; -webkit-text-stroke-width: 0px;">21世紀科学の課題<br />講演資料:<a href="images/networkofcs/kouensiryo_180107.pdf" target="_blank">21世紀を語る4つのキーワード </a><img src="images/support/pdficon.png" border="0" width="26" height="26" style="vertical-align: middle; border: 0px;" /><br /></span></p> <p>2.話 題</p> <table style="width: 95%;" border="1" cellpadding="8" align="center"> <tbody> <tr> <td> <p>21世紀の科学が人間の科学へと向かう中で、科学に何を期待するかという視点から、21世紀科学における課題についての幅広い議論が行われた。</p> <p>西川氏は、その幅広い知識と経験に基づいて、これからの科学のあり方として、情報、エネルギー、生産の単位が個人や家族、あるいはコミュニティーと言った小さな単位に分散した社会が中心になるとの意見を提示された。その中で、情報とゲノムがキーワードとなる新たな文明が生まれつつあるとの考え方が示され、21世紀の科学とその中での医学医療のあり方について参加者と幅広い議論が続けられた。</p> <p>西川氏の持っておられる哲学から生命科学・物理学に及ぶきわめて幅広い知識に圧倒されながら、参加者からもさまざまな質問が出されて活発な議論が展開された。個人が積極的に自らのデータを提供する社会においては、誰もが先端科学活動に参加することが可能になり、それに対応した社会システムの構築が求められる。</p> </td> </tr> </tbody> </table> <p>3.参加者所感</p> <table style="width: 95%;" border="1" cellpadding="8" align="center"> <tbody> <tr> <td> <p>年末から新年にかけてテレビでは、「これから世の中はどうなる?」といった問題を取り上げていますが、必ず出てくるのがAIですね。ふつうの人も、これまで以上に科学に対して期待と不安を抱いていると思います。</p> <p>こういう時代こそ科学を巨視的にとらえ直す、たとえば歴史的、社会的、思想的にきちんととらえ直すことが求められる気がします。<br />でも、そういうことができる科学者は、今少なくなっているのではないでしょうか。昨日の西川先生のような方の語りは、科学(と人間)のことをちゃんと考えていくうえで、とても重要だと思います。私が存じ上げている範囲ですけれど、物理では佐藤文隆先生でしょうか。 佐藤先生も「聞けばたいていのことを答えてもらえる」方ですし、歴史とか人間の視点から科学を語られますよね。こういった方々のお話は、特に若い人にぜひ聞いてほしい話だと思いました。</p> <p>SCIENCEやNATUREで格差や移民の話が取り上げられたのは、「哲学や社会学に科学の視点を持ちこもうとしている(科学で哲学や社会を語り直す)」のだと理解しましたが、その逆もアリだと思いました。 勉強会に哲学とか思想社会学の方を呼んで、科学の人と議論してもらうのも面白いと思いました。</p> <p style="text-align: right;">(フリーライター 艸場よしみ)</p> </td> </tr> </tbody> </table> <div> </div> <p style="text-align: center;">※ 間違いがある場合や、ご意見・ご感想がある場合には、<a href="https://www.secure-cloud.jp/sf/1469640914VQwGkRDZ" target="_blank">お問い合わせ</a>、もしくは<a href="https://www.facebook.com/events/1740734299473054/permalink/1743390419207442/" target="_blank">Facebook</a>のコメント欄にてご一報ください</p> <p> </p></div> 2017年度緊急勉強会報告 2017-12-15T09:31:18+09:00 2017-12-15T09:31:18+09:00 https://www.jein.jp/networkofcs/information-list/regularly-workshop/workshop-report/1543-workshop11.html JEin事務局 <div class="feed-description"><p><a href="networkofcs.html"><img src="images/networkofcs/networkofcs-title2.png" border="0" style="margin-right: auto; margin-left: auto; display: block;" /></a></p> <div> </div> <p style="text-align: center;"><span style="font-size: 16px;"><strong>2017年度緊急勉強会(サロン・ド・科学の探索 2017年第11回)報告</strong></span></p> <p> 1.概 要</p> <p style="padding-left: 26px;">日  時:2017年12月10日(日) 14:00~17:00<br />場  所:ルイ・パストゥール医学研究センター 4階会議室<br />話題提供:松田卓也(NPO法人あいんしゅたいん副理事長)<br />話  題:教育の未来像・・・技術的失業時代に生き残るには ・・・<br />     親子理科実験教室100回を目前にして</p> <p>2.参加者感想</p> <table style="width: 95%;" border="1" cellpadding="8" align="center"> <tbody> <tr> <td> <p>今回のサロンは、東京からわざわざでかけて参加したのですが期待に違わないものがありました。行ったかいがいった・・・という以上のものがあったということです。それは何かといえば、<br /> 1)AIの最先端の情報、とりわけシンギュラリティの意義とその時期、そしてそれ以降の未来予測に真実と迫力が感じられた<br />2)講演後の参加者との意見交換に参加できて、とりわけ市民ネットワークの参加者からの教育・研究における体験ならびに意見にサロンがこれまでに育んできたものの独創性と発露と未来への間口の可能性も見た</p> <p>今回の講演者・松田卓也氏は、私が京大理学部の学生だった頃に講義をされていた先生です。ーー約40年前に3回生だった頃の〝一般相対論〟(黒い電話帳GRAVITYがテキスト)は最も面白い講義でしたが、今回の講演も往時を彷彿とさせるものがありました。当時と変わらず、講演は極めて判りやすく〝相変わらず冴えているなあ!〟と、感銘を受けました。ここにもサロンのカルチャーを感じた次第です。 講演の本題であるシンギュラリティの解説は初心者へのイントロダクションとして大変informativeかつstimulativeでした。</p> <p>講演後のQ/A及び意見交換では、九州から親子理科実験教室に参加されたという宮岡さんのお母さんの話はとても興味深く、親子理科教室のこれまでに果たしてきたものの意義深さと同時に現在の教育が抱える問題の断面がよく浮き彫りにされていたと思いました。<br />ありていに言えば、今の中高教育の良いところ(丁寧な指導)と足りないところ(生徒の特性に合わせたフレキシブルな教育の欠如)が対照的にあぶり出されていました。<br />私にも中高生と接する機会がありますが、彼らはとても発想豊かで色々と教えられる言葉あります。その一方で大学生はますます画一化されてきているように感じるところがあります。15年前くらいに相変化があったような気がします。<br />大学の研究教育現場では時の政権の指導のもと、様々な局面で〝選択と集中〟が提唱され実践され始めた頃です。<br /> 大学生の何が変質したかはなかなか一言では言いがたいところがありますが、比較的順応性が高く(言い方を変えれば従順で)授業に真面目に足繁く通う姿が顕著になったと感じます。<br />中高受験の延長で “お勉強のできる良い子”が増えたとの印象です。つまり、与えられた問題を解くのがうまいと同時につねに〝正答〟を追い求めているーその一方で問題提起はあまりしない/できない。<br /> AIの時代に急激に転換している世の中で、単に、暗記したことが最も効果的な今の受験勉強で済ます子供は世の中についていけなくなりますが、急激にか変化している中で、単に受験勉強→大学→有名企業に就職(一生そこでは同じ仕事をする)→定年という構図は急激に世の中についていけなくなる時代へと転換しているとき、一番必要なのは「一生勉強する積極性」「いろいろな新しいものに挑戦する好奇心」がないと職を失ってしまう。<br />そういう時代がもう目の前に来ている。いったいどういう教育システムが生き残っていくのかーーこういう現状は、教育界ではどう受け止められているのか等々。 約3時間の短い時間ではありましたが、この機会に多くの考えるヒントを得ることができたと考えています。</p> <p style="text-align: right;">(澤田哲生(東京工業大学教員)</p> </td> </tr> </tbody> </table> <div> </div> <p style="text-align: center;">※ 間違いがある場合や、ご意見・ご感想がある場合には、<a href="https://www.secure-cloud.jp/sf/1469640914VQwGkRDZ" target="_blank">お問い合わせ</a>、もしくは<a href="https://www.facebook.com/events/1740734299473054/permalink/1743390419207442/" target="_blank">Facebook</a>のコメント欄にてご一報ください</p> <p> </p></div> <div class="feed-description"><p><a href="networkofcs.html"><img src="images/networkofcs/networkofcs-title2.png" border="0" style="margin-right: auto; margin-left: auto; display: block;" /></a></p> <div> </div> <p style="text-align: center;"><span style="font-size: 16px;"><strong>2017年度緊急勉強会(サロン・ド・科学の探索 2017年第11回)報告</strong></span></p> <p> 1.概 要</p> <p style="padding-left: 26px;">日  時:2017年12月10日(日) 14:00~17:00<br />場  所:ルイ・パストゥール医学研究センター 4階会議室<br />話題提供:松田卓也(NPO法人あいんしゅたいん副理事長)<br />話  題:教育の未来像・・・技術的失業時代に生き残るには ・・・<br />     親子理科実験教室100回を目前にして</p> <p>2.参加者感想</p> <table style="width: 95%;" border="1" cellpadding="8" align="center"> <tbody> <tr> <td> <p>今回のサロンは、東京からわざわざでかけて参加したのですが期待に違わないものがありました。行ったかいがいった・・・という以上のものがあったということです。それは何かといえば、<br /> 1)AIの最先端の情報、とりわけシンギュラリティの意義とその時期、そしてそれ以降の未来予測に真実と迫力が感じられた<br />2)講演後の参加者との意見交換に参加できて、とりわけ市民ネットワークの参加者からの教育・研究における体験ならびに意見にサロンがこれまでに育んできたものの独創性と発露と未来への間口の可能性も見た</p> <p>今回の講演者・松田卓也氏は、私が京大理学部の学生だった頃に講義をされていた先生です。ーー約40年前に3回生だった頃の〝一般相対論〟(黒い電話帳GRAVITYがテキスト)は最も面白い講義でしたが、今回の講演も往時を彷彿とさせるものがありました。当時と変わらず、講演は極めて判りやすく〝相変わらず冴えているなあ!〟と、感銘を受けました。ここにもサロンのカルチャーを感じた次第です。 講演の本題であるシンギュラリティの解説は初心者へのイントロダクションとして大変informativeかつstimulativeでした。</p> <p>講演後のQ/A及び意見交換では、九州から親子理科実験教室に参加されたという宮岡さんのお母さんの話はとても興味深く、親子理科教室のこれまでに果たしてきたものの意義深さと同時に現在の教育が抱える問題の断面がよく浮き彫りにされていたと思いました。<br />ありていに言えば、今の中高教育の良いところ(丁寧な指導)と足りないところ(生徒の特性に合わせたフレキシブルな教育の欠如)が対照的にあぶり出されていました。<br />私にも中高生と接する機会がありますが、彼らはとても発想豊かで色々と教えられる言葉あります。その一方で大学生はますます画一化されてきているように感じるところがあります。15年前くらいに相変化があったような気がします。<br />大学の研究教育現場では時の政権の指導のもと、様々な局面で〝選択と集中〟が提唱され実践され始めた頃です。<br /> 大学生の何が変質したかはなかなか一言では言いがたいところがありますが、比較的順応性が高く(言い方を変えれば従順で)授業に真面目に足繁く通う姿が顕著になったと感じます。<br />中高受験の延長で “お勉強のできる良い子”が増えたとの印象です。つまり、与えられた問題を解くのがうまいと同時につねに〝正答〟を追い求めているーその一方で問題提起はあまりしない/できない。<br /> AIの時代に急激に転換している世の中で、単に、暗記したことが最も効果的な今の受験勉強で済ます子供は世の中についていけなくなりますが、急激にか変化している中で、単に受験勉強→大学→有名企業に就職(一生そこでは同じ仕事をする)→定年という構図は急激に世の中についていけなくなる時代へと転換しているとき、一番必要なのは「一生勉強する積極性」「いろいろな新しいものに挑戦する好奇心」がないと職を失ってしまう。<br />そういう時代がもう目の前に来ている。いったいどういう教育システムが生き残っていくのかーーこういう現状は、教育界ではどう受け止められているのか等々。 約3時間の短い時間ではありましたが、この機会に多くの考えるヒントを得ることができたと考えています。</p> <p style="text-align: right;">(澤田哲生(東京工業大学教員)</p> </td> </tr> </tbody> </table> <div> </div> <p style="text-align: center;">※ 間違いがある場合や、ご意見・ご感想がある場合には、<a href="https://www.secure-cloud.jp/sf/1469640914VQwGkRDZ" target="_blank">お問い合わせ</a>、もしくは<a href="https://www.facebook.com/events/1740734299473054/permalink/1743390419207442/" target="_blank">Facebook</a>のコメント欄にてご一報ください</p> <p> </p></div> 2017年度第4回定期勉強会報告 2017-12-01T08:31:34+09:00 2017-12-01T08:31:34+09:00 https://www.jein.jp/networkofcs/information-list/regularly-workshop/workshop-report/1537-workshop10.html JEin事務局 <div class="feed-description"><p><a href="networkofcs.html"><img src="images/networkofcs/networkofcs-title2.png" border="0" style="margin-right: auto; margin-left: auto; display: block;" /></a></p> <div> </div> <p style="text-align: center;"><span style="font-size: 16px;"><strong>2017年度第4回定期勉強会(サロン・ド・科学の探索 2017年第9回)報告</strong></span></p> <p>1.概 要</p> <p style="padding-left: 26px;">日  時:2017年10月29日(日) 15:00~18:00<br />場  所:<a href="npo-introduction/organization-information.html">NPO法人あいんしゅたいん事務所</a><br />話題提供:柿内秀樹(公益財団法人 環境科学技術研究所 環境影響研究部)<br />話  題: 「トリチウム水」をめぐる科学的社会的問題<br />当日資料: <a href="images/networkofcs/benkyokai_10-shiryo.pdf" target="_blank"><img src="images/support/pdficon.png" border="0" width="26" height="26" style="vertical-align: middle; border: 0px;" /></a> <br />参考資料:<a href="http://www.meti.go.jp/earthquake/nuclear/osensuitaisaku/committtee/tritium_tusk/20160603_01.html" target="_blank">トリチウム水タスクフォース報告書について</a><br />      ● <a href="http://www.meti.go.jp/earthquake/nuclear/osensuitaisaku/committtee/tritium_tusk/pdf/160603_01.pdf" target="_blank">トリチウム水タスクフォース報告書 <img src="images/support/pdficon.png" border="0" width="26" height="26" style="border: 0px #4b6b94; vertical-align: middle;" /></a><br />      ● <a href="http://www.meti.go.jp/earthquake/nuclear/osensuitaisaku/committtee/tritium_tusk/pdf/160603_02.pdf" target="_blank">参考資料集 <img src="images/support/pdficon.png" border="0" width="26" height="26" style="border: 0px #4b6b94; vertical-align: middle;" /></a><br />    <a href="http://www.meti.go.jp/earthquake/nuclear/osensuitaisaku.html" target="_blank">経産省・汚染水対策タスクフォースの議事録等</a></p> <p>2.参加者所感</p> <table style="width: 95%;" border="1" cellpadding="8" align="center"> <tbody> <tr> <td> <p>市民と科学者の放射線コミュニケーションネットワークによる2017年度第4回勉強会のテーマは「『トリチウム水』をめぐる科学的社会的問題」を取り上げました。福島第一原子力発電所事故の復旧プロセスの中にはいくつもの困難な課題が含まれていますが,その中のひとつが今回取り上げた「トリチウム水」の問題です。</p> <p>事故を起こした原子炉で今も冷却のために使われている水と地下水等から入り込む水から,トリチウム以外の放射性物質をほぼ取り除いた水に含まれる放射性同位元素のトリチウムは,元素としては水の成分である水素であるために,除去することがきわめて困難です。一方で,トリチウムの害は放射性セシウムなどに比べてかなり低いということも事実です。ではどこかへ放出してしまえばいいのかというと,社会的な合意形成はまだできてないというのが現状です。特に漁業者が被ると予想されている風評被害の問題が大きく横たわっています。</p> <p>問題を切り分けると,トリチウムに関する物理・化学・生理学的な特性を知ること,トリチウム水が発生し,貯蔵されている状況と処理手段等の工学的なバックグラウンドを理解すること,数十万トンにもなり,かつ増え続けているトリチウム水をどのように「処理」すればよいのかを技術的な側面と社会的な視点から考えていくこと,この3つになるかと思われます。</p> <p>当学習会では,環境放射能の専門家で,経産省「トリチウム水タスクフォース」の委員を歴任された環境科学技術研究所の柿内秀樹氏をお招きして,この問題の多岐にわたる話をうかがうことができました。膨大なデータ・資料をもとに展開された講演は3時間を超える圧倒的なものでしたが,参加者の多くが問題のありかについて認識を深めたことと思います。</p> <p>勉強会の内容は,スライド(当日資料:下記にリンクあり)でごらんください。枚数が多いですが,トリチウムについての基礎知識や現状を理解する上でたいへん役に立つまとめになっています。ご活用ください。</p> <p style="text-align: right;">(オーガナイザー・小波秀雄)</p> </td> </tr> </tbody> </table> <div> </div> <p style="text-align: center;">※ 間違いがある場合や、ご意見・ご感想がある場合には、<a href="https://www.secure-cloud.jp/sf/1469640914VQwGkRDZ" target="_blank">お問い合わせ</a>、もしくは<a href="https://www.facebook.com/events/1740734299473054/permalink/1743390419207442/" target="_blank">Facebook</a>のコメント欄にてご一報ください</p> <p> </p></div> <div class="feed-description"><p><a href="networkofcs.html"><img src="images/networkofcs/networkofcs-title2.png" border="0" style="margin-right: auto; margin-left: auto; display: block;" /></a></p> <div> </div> <p style="text-align: center;"><span style="font-size: 16px;"><strong>2017年度第4回定期勉強会(サロン・ド・科学の探索 2017年第9回)報告</strong></span></p> <p>1.概 要</p> <p style="padding-left: 26px;">日  時:2017年10月29日(日) 15:00~18:00<br />場  所:<a href="npo-introduction/organization-information.html">NPO法人あいんしゅたいん事務所</a><br />話題提供:柿内秀樹(公益財団法人 環境科学技術研究所 環境影響研究部)<br />話  題: 「トリチウム水」をめぐる科学的社会的問題<br />当日資料: <a href="images/networkofcs/benkyokai_10-shiryo.pdf" target="_blank"><img src="images/support/pdficon.png" border="0" width="26" height="26" style="vertical-align: middle; border: 0px;" /></a> <br />参考資料:<a href="http://www.meti.go.jp/earthquake/nuclear/osensuitaisaku/committtee/tritium_tusk/20160603_01.html" target="_blank">トリチウム水タスクフォース報告書について</a><br />      ● <a href="http://www.meti.go.jp/earthquake/nuclear/osensuitaisaku/committtee/tritium_tusk/pdf/160603_01.pdf" target="_blank">トリチウム水タスクフォース報告書 <img src="images/support/pdficon.png" border="0" width="26" height="26" style="border: 0px #4b6b94; vertical-align: middle;" /></a><br />      ● <a href="http://www.meti.go.jp/earthquake/nuclear/osensuitaisaku/committtee/tritium_tusk/pdf/160603_02.pdf" target="_blank">参考資料集 <img src="images/support/pdficon.png" border="0" width="26" height="26" style="border: 0px #4b6b94; vertical-align: middle;" /></a><br />    <a href="http://www.meti.go.jp/earthquake/nuclear/osensuitaisaku.html" target="_blank">経産省・汚染水対策タスクフォースの議事録等</a></p> <p>2.参加者所感</p> <table style="width: 95%;" border="1" cellpadding="8" align="center"> <tbody> <tr> <td> <p>市民と科学者の放射線コミュニケーションネットワークによる2017年度第4回勉強会のテーマは「『トリチウム水』をめぐる科学的社会的問題」を取り上げました。福島第一原子力発電所事故の復旧プロセスの中にはいくつもの困難な課題が含まれていますが,その中のひとつが今回取り上げた「トリチウム水」の問題です。</p> <p>事故を起こした原子炉で今も冷却のために使われている水と地下水等から入り込む水から,トリチウム以外の放射性物質をほぼ取り除いた水に含まれる放射性同位元素のトリチウムは,元素としては水の成分である水素であるために,除去することがきわめて困難です。一方で,トリチウムの害は放射性セシウムなどに比べてかなり低いということも事実です。ではどこかへ放出してしまえばいいのかというと,社会的な合意形成はまだできてないというのが現状です。特に漁業者が被ると予想されている風評被害の問題が大きく横たわっています。</p> <p>問題を切り分けると,トリチウムに関する物理・化学・生理学的な特性を知ること,トリチウム水が発生し,貯蔵されている状況と処理手段等の工学的なバックグラウンドを理解すること,数十万トンにもなり,かつ増え続けているトリチウム水をどのように「処理」すればよいのかを技術的な側面と社会的な視点から考えていくこと,この3つになるかと思われます。</p> <p>当学習会では,環境放射能の専門家で,経産省「トリチウム水タスクフォース」の委員を歴任された環境科学技術研究所の柿内秀樹氏をお招きして,この問題の多岐にわたる話をうかがうことができました。膨大なデータ・資料をもとに展開された講演は3時間を超える圧倒的なものでしたが,参加者の多くが問題のありかについて認識を深めたことと思います。</p> <p>勉強会の内容は,スライド(当日資料:下記にリンクあり)でごらんください。枚数が多いですが,トリチウムについての基礎知識や現状を理解する上でたいへん役に立つまとめになっています。ご活用ください。</p> <p style="text-align: right;">(オーガナイザー・小波秀雄)</p> </td> </tr> </tbody> </table> <div> </div> <p style="text-align: center;">※ 間違いがある場合や、ご意見・ご感想がある場合には、<a href="https://www.secure-cloud.jp/sf/1469640914VQwGkRDZ" target="_blank">お問い合わせ</a>、もしくは<a href="https://www.facebook.com/events/1740734299473054/permalink/1743390419207442/" target="_blank">Facebook</a>のコメント欄にてご一報ください</p> <p> </p></div> 2017年度第3回定期勉強会報告 2017-09-08T08:18:04+09:00 2017-09-08T08:18:04+09:00 https://www.jein.jp/networkofcs/information-list/regularly-workshop/workshop-report/1519-workshop9.html JEin事務局 <div class="feed-description"><p><a href="networkofcs.html"><img src="images/networkofcs/networkofcs-title2.png" border="0" style="margin-right: auto; margin-left: auto; display: block;" /></a></p> <div> </div> <p style="text-align: center;"><span style="font-size: 16px;"><strong>2017年度第3回定期勉強会(サロン・ド・科学の探索 2017年第7回)報告</strong></span></p> <p>1.概 要</p> <p style="padding-left: 26px;">日  時:2017年8月27日(日) 13:00~17:10<br />場  所:京都大学理学研究科セミナーハウス<br />話題提供:小出重幸(日本科学技術ジャーナリスト会議理事・前会長)<br />     伊藤早苗(福島南相馬避難者) <br />     谷畑勇夫(大阪大学核物理センター教授)<br />話  題:市民と科学者学習会 ・・線量の測定で分かること・・</p> <p>2.議事録</p> <table style="width: 95%;" border="1" cellpadding="8" align="center"> <tbody> <tr> <td> <p>挨拶:田中貴浩(京都大学理学部教授、日本物理学会京都支部長) </p> <p>今回の会の経緯について報告いただいた。特に今回物理学会の共催許可が出なかったことについて、時間的問題もあったこと、今後はもっと早くから準備する旨の話があった。</p> <p><img src="images/networkofcs/workshop9-1.jpg" border="0" width="250" style="border: 0px currentColor; margin-right: auto; margin-left: auto; display: block;" /></p> <p>講演1 「世界に広がる線量測定市民運動」 小出重幸(日本科学技術ジャーナリスト会議理事・前会長)<br />小出氏は、ジャーナリストの立場から3.11以降の混乱、特に、地域コミュニティの崩壊と、科学への信頼の失墜をあげられた。そしてSpeediの公開の遅れや、放射線の健康影響において科学的説明のない決定が、混乱を助長したことを指摘した。また安定ヨウ素剤を配布した三春町の取り組みを例に、玄侑和尚中心とした取り組み例を示しながら、Safecastを紹介、自分たちで測ること、次世代を育てる目的など、説明いただいた。また、最悪想定でも30km避難で十分とした英国の例を示して、科学顧問の役割と必要性を強調された。</p> <table border="0" align="center"> <tbody> <tr> <td><img src="images/networkofcs/workshop9-2.jpg" border="0" width="250" style="border: 0px currentColor; margin-right: auto; margin-left: auto; display: block;" /></td> <td><img src="images/networkofcs/workshop9-3.jpg" border="0" width="250" style="border: 0px currentColor; margin-right: auto; margin-left: auto; display: block;" /></td> </tr> </tbody> </table> <p>エンターテインメント:紙芝居 福島の民話、安達ヶ原の鬼婆 および福島の昔話 足長手長 伊藤早苗(福島南相馬避難者)、坂本宗謙(紙芝居助手)<br />いつもながら、伊藤さんのお話は迫力満点、鬼婆の話には皆、背筋がゾクゾクとし、ここで終わったら、夜眠れない!の声も、その次の足長手長でちょっとホットした感じでした。</p> <p><img src="images/networkofcs/workshop9-4.jpg" border="0" width="250" style="border: 0px currentColor; margin-right: auto; margin-left: auto; display: block;" /></p> <p>講演2 「福島事故後の放射線計測に関わって」 谷畑勇夫(大阪大学核物理センター教授)<br />土壌放射線量調査の目的、梅雨に入る前に測定を終える必要があるとの思いから、3月15日から、阪大中心になされた活動について紹介があった。6月になってやっと本格調査が出来たこと、97機関、409人の科学者が参加されたとの紹介。測定法に於いても、基礎的な検討がなされ、80km圏内では2kmx2kmメッシュで各5サンプル採取、その根拠、ばらつきの範囲などのデータが示された。また深さ5cmとした根拠も紹介された。<br />航空機観測との関連も示され、それぞれの特性を説明いただいた。坦々とした発表に、科学者としてのスタンス、研究者として正確な測定への努力と大変さを思いました。今回関係機関の調整に苦労したことから、有事の際に身軽に動ける体制の必要性を強調された。</p> <p><img src="images/networkofcs/workshop9-5.jpg" border="0" width="250" style="border: 0px currentColor; margin-right: auto; margin-left: auto; display: block;" /></p> <p>今回の講演会で感じたのは、科学的データでもって話をすすめ、理解を得るという姿勢が、小出氏にも谷畑氏にも貫かれていたことである。派手なジェスチャーもなく、坦々と事実関係を紹介する中で、たかだか土の採取とは言いながらも解決すべき問題点がたくさんあること。たとえば採取する場所の誤差の問題や個人毎の採取法の誤差を最小化するための努力など、問題点をどう解決し、どの程度を誤差の範囲とするかなどは、聴衆にも参考となったのではとおもいました。ある一つのポイントを測って、公表されているより高い低いもそう簡単には言えないこと、2kmx2kmの範囲でも2倍程度の違いがあって当たり前で時は10倍というのもあったとのこと、基礎データをどれだけもって語っているか、改めて大事だとおもいました。<br />全体の参加者は28名、アンケートも今回の講演会には、18人中とても満足、まあまあ満足が大半を占め、普通は3名であった。</p> <p style="text-align: right;">(文責:宇野賀津子)</p> </td> </tr> </tbody> </table> <div> </div> <p style="text-align: center;">※ 間違いがある場合や、ご意見・ご感想がある場合には、<a href="https://www.secure-cloud.jp/sf/1469640914VQwGkRDZ" target="_blank">お問い合わせ</a>、もしくは<a href="https://www.facebook.com/events/1740734299473054/permalink/1743390419207442/" target="_blank">Facebook</a>のコメント欄にてご一報ください</p> <p> </p></div> <div class="feed-description"><p><a href="networkofcs.html"><img src="images/networkofcs/networkofcs-title2.png" border="0" style="margin-right: auto; margin-left: auto; display: block;" /></a></p> <div> </div> <p style="text-align: center;"><span style="font-size: 16px;"><strong>2017年度第3回定期勉強会(サロン・ド・科学の探索 2017年第7回)報告</strong></span></p> <p>1.概 要</p> <p style="padding-left: 26px;">日  時:2017年8月27日(日) 13:00~17:10<br />場  所:京都大学理学研究科セミナーハウス<br />話題提供:小出重幸(日本科学技術ジャーナリスト会議理事・前会長)<br />     伊藤早苗(福島南相馬避難者) <br />     谷畑勇夫(大阪大学核物理センター教授)<br />話  題:市民と科学者学習会 ・・線量の測定で分かること・・</p> <p>2.議事録</p> <table style="width: 95%;" border="1" cellpadding="8" align="center"> <tbody> <tr> <td> <p>挨拶:田中貴浩(京都大学理学部教授、日本物理学会京都支部長) </p> <p>今回の会の経緯について報告いただいた。特に今回物理学会の共催許可が出なかったことについて、時間的問題もあったこと、今後はもっと早くから準備する旨の話があった。</p> <p><img src="images/networkofcs/workshop9-1.jpg" border="0" width="250" style="border: 0px currentColor; margin-right: auto; margin-left: auto; display: block;" /></p> <p>講演1 「世界に広がる線量測定市民運動」 小出重幸(日本科学技術ジャーナリスト会議理事・前会長)<br />小出氏は、ジャーナリストの立場から3.11以降の混乱、特に、地域コミュニティの崩壊と、科学への信頼の失墜をあげられた。そしてSpeediの公開の遅れや、放射線の健康影響において科学的説明のない決定が、混乱を助長したことを指摘した。また安定ヨウ素剤を配布した三春町の取り組みを例に、玄侑和尚中心とした取り組み例を示しながら、Safecastを紹介、自分たちで測ること、次世代を育てる目的など、説明いただいた。また、最悪想定でも30km避難で十分とした英国の例を示して、科学顧問の役割と必要性を強調された。</p> <table border="0" align="center"> <tbody> <tr> <td><img src="images/networkofcs/workshop9-2.jpg" border="0" width="250" style="border: 0px currentColor; margin-right: auto; margin-left: auto; display: block;" /></td> <td><img src="images/networkofcs/workshop9-3.jpg" border="0" width="250" style="border: 0px currentColor; margin-right: auto; margin-left: auto; display: block;" /></td> </tr> </tbody> </table> <p>エンターテインメント:紙芝居 福島の民話、安達ヶ原の鬼婆 および福島の昔話 足長手長 伊藤早苗(福島南相馬避難者)、坂本宗謙(紙芝居助手)<br />いつもながら、伊藤さんのお話は迫力満点、鬼婆の話には皆、背筋がゾクゾクとし、ここで終わったら、夜眠れない!の声も、その次の足長手長でちょっとホットした感じでした。</p> <p><img src="images/networkofcs/workshop9-4.jpg" border="0" width="250" style="border: 0px currentColor; margin-right: auto; margin-left: auto; display: block;" /></p> <p>講演2 「福島事故後の放射線計測に関わって」 谷畑勇夫(大阪大学核物理センター教授)<br />土壌放射線量調査の目的、梅雨に入る前に測定を終える必要があるとの思いから、3月15日から、阪大中心になされた活動について紹介があった。6月になってやっと本格調査が出来たこと、97機関、409人の科学者が参加されたとの紹介。測定法に於いても、基礎的な検討がなされ、80km圏内では2kmx2kmメッシュで各5サンプル採取、その根拠、ばらつきの範囲などのデータが示された。また深さ5cmとした根拠も紹介された。<br />航空機観測との関連も示され、それぞれの特性を説明いただいた。坦々とした発表に、科学者としてのスタンス、研究者として正確な測定への努力と大変さを思いました。今回関係機関の調整に苦労したことから、有事の際に身軽に動ける体制の必要性を強調された。</p> <p><img src="images/networkofcs/workshop9-5.jpg" border="0" width="250" style="border: 0px currentColor; margin-right: auto; margin-left: auto; display: block;" /></p> <p>今回の講演会で感じたのは、科学的データでもって話をすすめ、理解を得るという姿勢が、小出氏にも谷畑氏にも貫かれていたことである。派手なジェスチャーもなく、坦々と事実関係を紹介する中で、たかだか土の採取とは言いながらも解決すべき問題点がたくさんあること。たとえば採取する場所の誤差の問題や個人毎の採取法の誤差を最小化するための努力など、問題点をどう解決し、どの程度を誤差の範囲とするかなどは、聴衆にも参考となったのではとおもいました。ある一つのポイントを測って、公表されているより高い低いもそう簡単には言えないこと、2kmx2kmの範囲でも2倍程度の違いがあって当たり前で時は10倍というのもあったとのこと、基礎データをどれだけもって語っているか、改めて大事だとおもいました。<br />全体の参加者は28名、アンケートも今回の講演会には、18人中とても満足、まあまあ満足が大半を占め、普通は3名であった。</p> <p style="text-align: right;">(文責:宇野賀津子)</p> </td> </tr> </tbody> </table> <div> </div> <p style="text-align: center;">※ 間違いがある場合や、ご意見・ご感想がある場合には、<a href="https://www.secure-cloud.jp/sf/1469640914VQwGkRDZ" target="_blank">お問い合わせ</a>、もしくは<a href="https://www.facebook.com/events/1740734299473054/permalink/1743390419207442/" target="_blank">Facebook</a>のコメント欄にてご一報ください</p> <p> </p></div> 2017年度第2回定期勉強会報告 2017-09-08T08:16:08+09:00 2017-09-08T08:16:08+09:00 https://www.jein.jp/networkofcs/information-list/regularly-workshop/workshop-report/1521-workshop8.html JEin事務局 <div class="feed-description"><p><a href="networkofcs.html"><img src="images/networkofcs/networkofcs-title2.png" border="0" style="margin-right: auto; margin-left: auto; display: block;" /></a></p> <div> </div> <p style="text-align: center;"><span style="font-size: 16px;"><strong>2017年度第2回定期勉強会(サロン・ド・科学の探索 2017年第8回)報告</strong></span></p> <p>1.概 要</p> <p style="padding-left: 26px;">日  時:2017年8月6日(日) 13:00~17:10<br />場  所:京都大学理学研究科セミナーハウス<br />話題提供:池田香代子(ドイツ文学翻訳家・口承文芸研究家)<br />     松本春野(絵本作家・イラストレーター) <br />     角山雄一(京都大学環境安全保健機構 放射性同位元素総合センター 助教)<br />話  題:福島事故から市民運動が学んだこと<br />     絵本を通じて福島の人たちに学んだこと<br />     放射線測定チームの取り組みについて</p> <p>2.参加者所感</p> <table style="width: 95%;" border="1" cellpadding="8" align="center"> <tbody> <tr> <td> <p>シンポジウムの共同企画者であり司会を務めた坂東昌子さんが、シンポジウムが終わったあと「科学(または科学者魂)が二の次になっている」と言われた。私はこれに引っ掛かり、参加した友人と話しをした。それを軸に、いま頭をめぐっていることを断片的だが記しておく。</p> <p>池田香代子さんと松本春野さんが話されたことは、福島はじめ各地で放射線測定の活動をしている角山雄一さん(京大放射性同位体元素総合センター)も見聞きし体験したことだったようで、そのため角山さんは「二人の話を聞いているのがつらかった」と言われた。福島の人の苦悩、あるいはそれに寄り添う人の苦悩が、改めて思い起こされたという意味だと思うが、フロアにいた他の科学者の方も同じだったのだろうか。それともお二人の話は、初耳のことだったのだろうか。 どちらにしても、質疑応答で科学者の方々の発言――放射線被ばくに関する知見の紹介でもよいし、科学(者)と社会についての考察でもよいので――を聞きたかった。</p> <p>池田さんと松本さんの話から何を学ぶかについて、シンポジウムに参加した私の友人が、次のように言った。 「お二人は、イデオロギーに依存せずに、科学的なデータに基づいて考えることを語られたと思う。しっかりした科学者がいれば、始めは混乱しても、落ち着くべきところに落ち着くものなのだ、という内容と受け止めた」 だから、放射線の被ばく影響を頭では理解しても恐怖心が消えないことを、高所恐怖症と蜘蛛恐怖症の例でたとえられたことについては、 「放射線恐怖症は、最初に放射線はちょっとでも怖いものだという知識が入ったことで生じたものだから、何の学習もなく本能的に生じる高所恐怖症と蜘蛛恐怖症とは別のものだと思う。放射線恐怖症は、知識の上書きで解消されることもあるのではないか」 と言っていた。 また坂東さんの、科学者魂が二の次になっているという感想について、 「それがどのようなことを指しているのか、具体的に思い浮かべることができないのだが」と前置きした上で、 「科学者に、心情に寄り添う姿勢があったほうが、相手に話が受け入れられやすいのは、人間の性だ。それに、寄り添う気持ちがあれば、相手に分かりやすい説明を工夫できるだろう」  そして、坂東さんに次の疑問を投げかけた。 「福島の現場では、説明の仕方を工夫することを超えて、ベビースキャンを作るところまでいったわけだが、坂東さんの『科学者魂が二の次になっていないか』との感想は、寄り添うことに引っぱられて、『科学のある部分が毀損されている』ということだろうか?」 科学者だって、現場に行って当事者の話を聞けば心が動かされ、何とかしてあげたいと思うはずだ。そのとき、「心に寄り添う」ことを第一にすると、科学的真実を曲げる場合があって、それでいいのか?という坂東さんの疑問だろうか?たとえば、1mSv/yを超える場合は避難を保証すべきという主張は、心に寄り添ってはいるけれど、科学的真実を無視しているということだろうか?</p> <p>「被災した人たちに寄り添う」とよく言われる。これは大事なことで、基本的なことだと思う。私は個人的には、寄り添うという言葉よりも、耳をかたむけるとか、相手の立場に立って考えるといった言葉の方がしっくりくるが、それはさておき、私は取材してものを書く仕事をしているが、まず最初は、相手の立場に立って話を聞くことを心掛けている。ただ、そこに留まるのではなく、その先を見ていかないといけないと思っている。そのときの武器は、メディアの人なら、取り上げる物ごとについての勉強と綿密な取材だろうし、科学者ならそれぞれの専門性であり専門的知見だろう。 また、その先に見たこと考えたことを社会に伝えてこそなんぼのもので、メディアの人にとってはそれが仕事なのだけれど、科学者だって同じだと思う。社会が混乱しているほど専門家の役割は大きい。 だが3.11で浮かび上がった問題は、その専門家の中で被ばく影響についての見解が大きく違ったことだ。イデオロギーで科学を語る科学者と、科学的なデータに基づいて語る科学者を、市民が見分けなければならないのは大変だ。</p> <p>もうひとつ、「現場」について考える。現場は大事で、特にメディアの仕事は現場の取材が重要だ。ただ気をつけないといけないのは、現場で起こっている事象にとらわれて、木を見て森を見ない場合がある。じかに見聞きして肌で体験したことと、俯瞰して見ることの両方を、行ったり来たりさせる必要がある。 さらにあえて言うが、現場を体験していなければ、何もできないのか?現場を知らない科学者が何かを発言しても、その価値は低いのか? そうではないと思う。市民にせよ科学者にせよ、一人の人ができることは限られている。できないことがあっても想像力がそれを補うはずだし、他者と補完し合い連携しながら進んでいくものだと思う。</p> <p>「科学(だけ)で人は説得できない」という趣旨のことを、ある科学者が言った。私もほぼ同意見だが、最近、興味深く思ったことがある。 坂東さんはこのところ、ある人と話し込んでいる。その人は、放射線はいかに微量であっても体を蝕むので人類にとって悪魔だと考えて、これまで正義感から発言してきたが、市民からも批判されて孤立することもあったようだ。 この人は、最初は坂東さんの話に聞く耳を持たなかったが、坂東さんが膝付き合わせて様々なデータを見せながら話をしているうち、少しずつ正しい知識と置き換わっているらしい。二人は、考えにまだまだ相いれないところはあるものの、少なくとも話せる間柄になっているようだ。 このエピソードは、科学が人の考えを変える例ではないだろうか? とは言えこれも、坂東さんがこの人の話にまず耳を傾けたことがきっかけではないか? というのは、「私の話を聞いてもらえない」という疎外感や絶望感が、この人から異なる意見を聞く耳を奪った気配があって、それに対して、ともかくあなたの考えを聞こうという坂東さんの態度が、この人の固い心をほぐしたようなのだ。ただ私が興味深く思うのは、そのあと、二人の相互理解を促す共通語が「科学」であることだ。 ある考えに固執するのは何か理由があるはずで、それが科学に関わることなら、思い込みから抜け出させて正すことができるのは理念や情ではなく、科学かもしれない。</p> <p>ただ私は、科学が絶対的な真実だと思っているわけではない。ここで詳しく書く余裕はないが、科学は自然を見るときの一つの見方に過ぎないという「見方」も、科学者の一人から学んだことである。私はずっと、科学とは遠く離れた分野に関心を抱いて仕事をしてきたが、ここ10年ほど科学者と呼ばれる人と身近に接して、それまで考えてもみなかったことを考えさせられている。</p> <p>「科学が二の次になっていないか?」という坂東さんの発言に対して、私は以上のごとく、自分の意見を明確にまとめることがまだできない。そもそも私と友人は、坂東さんの真意と違うことを話しているかもしれない。 にもかかわらずここに書いた理由は、この記事を読んでくださった方が、科学者魂という言葉や概念について、どう考えられるだろう?科学と社会についてどんなことを考えておられるだろう?と思ったからだ。坂東さんとはいずれ話をしたいと思っている。</p> <p>それにしても、放射線被ばく、特に低線量放射線の被ばくとその影響に関する知識を、きちんと分かることが難しい。私は10数名の科学者と『放射線必須データ32』を作って、被ばく影響の根拠となるデータを4年がかりで読み込んだが、それでも今「●●は影響があるのかないのか、根拠を示して説明してほしい」と言われたら、すらすら答えられない。 被ばく影響のことは、根拠をもとに考えたり発言したりしないといけないと思って先の本を作り始めたが、なかなか難しい。放射線は見えないし感じないものだから、「説明」するしかないし、説明されるほうも概念として理解するしかない。 どうすれば、一般の人がもっと理解できるようになるのだろう……などと思っているうちに、一つの優れた方法は、角山雄一さんが取り組んでおられる「測る」ことだと気付いた。理解は、こういうことから始まっていくのだと思う。</p> <p style="text-align: right;">(文責:艸場よしみ)</p> </td> </tr> </tbody> </table> <div> </div> <p style="text-align: center;">※ 間違いがある場合や、ご意見・ご感想がある場合には、<a href="https://www.secure-cloud.jp/sf/1469640914VQwGkRDZ" target="_blank">お問い合わせ</a>、もしくは<a href="https://www.facebook.com/events/1740734299473054/permalink/1743390419207442/" target="_blank">Facebook</a>のコメント欄にてご一報ください</p> <p> </p></div> <div class="feed-description"><p><a href="networkofcs.html"><img src="images/networkofcs/networkofcs-title2.png" border="0" style="margin-right: auto; margin-left: auto; display: block;" /></a></p> <div> </div> <p style="text-align: center;"><span style="font-size: 16px;"><strong>2017年度第2回定期勉強会(サロン・ド・科学の探索 2017年第8回)報告</strong></span></p> <p>1.概 要</p> <p style="padding-left: 26px;">日  時:2017年8月6日(日) 13:00~17:10<br />場  所:京都大学理学研究科セミナーハウス<br />話題提供:池田香代子(ドイツ文学翻訳家・口承文芸研究家)<br />     松本春野(絵本作家・イラストレーター) <br />     角山雄一(京都大学環境安全保健機構 放射性同位元素総合センター 助教)<br />話  題:福島事故から市民運動が学んだこと<br />     絵本を通じて福島の人たちに学んだこと<br />     放射線測定チームの取り組みについて</p> <p>2.参加者所感</p> <table style="width: 95%;" border="1" cellpadding="8" align="center"> <tbody> <tr> <td> <p>シンポジウムの共同企画者であり司会を務めた坂東昌子さんが、シンポジウムが終わったあと「科学(または科学者魂)が二の次になっている」と言われた。私はこれに引っ掛かり、参加した友人と話しをした。それを軸に、いま頭をめぐっていることを断片的だが記しておく。</p> <p>池田香代子さんと松本春野さんが話されたことは、福島はじめ各地で放射線測定の活動をしている角山雄一さん(京大放射性同位体元素総合センター)も見聞きし体験したことだったようで、そのため角山さんは「二人の話を聞いているのがつらかった」と言われた。福島の人の苦悩、あるいはそれに寄り添う人の苦悩が、改めて思い起こされたという意味だと思うが、フロアにいた他の科学者の方も同じだったのだろうか。それともお二人の話は、初耳のことだったのだろうか。 どちらにしても、質疑応答で科学者の方々の発言――放射線被ばくに関する知見の紹介でもよいし、科学(者)と社会についての考察でもよいので――を聞きたかった。</p> <p>池田さんと松本さんの話から何を学ぶかについて、シンポジウムに参加した私の友人が、次のように言った。 「お二人は、イデオロギーに依存せずに、科学的なデータに基づいて考えることを語られたと思う。しっかりした科学者がいれば、始めは混乱しても、落ち着くべきところに落ち着くものなのだ、という内容と受け止めた」 だから、放射線の被ばく影響を頭では理解しても恐怖心が消えないことを、高所恐怖症と蜘蛛恐怖症の例でたとえられたことについては、 「放射線恐怖症は、最初に放射線はちょっとでも怖いものだという知識が入ったことで生じたものだから、何の学習もなく本能的に生じる高所恐怖症と蜘蛛恐怖症とは別のものだと思う。放射線恐怖症は、知識の上書きで解消されることもあるのではないか」 と言っていた。 また坂東さんの、科学者魂が二の次になっているという感想について、 「それがどのようなことを指しているのか、具体的に思い浮かべることができないのだが」と前置きした上で、 「科学者に、心情に寄り添う姿勢があったほうが、相手に話が受け入れられやすいのは、人間の性だ。それに、寄り添う気持ちがあれば、相手に分かりやすい説明を工夫できるだろう」  そして、坂東さんに次の疑問を投げかけた。 「福島の現場では、説明の仕方を工夫することを超えて、ベビースキャンを作るところまでいったわけだが、坂東さんの『科学者魂が二の次になっていないか』との感想は、寄り添うことに引っぱられて、『科学のある部分が毀損されている』ということだろうか?」 科学者だって、現場に行って当事者の話を聞けば心が動かされ、何とかしてあげたいと思うはずだ。そのとき、「心に寄り添う」ことを第一にすると、科学的真実を曲げる場合があって、それでいいのか?という坂東さんの疑問だろうか?たとえば、1mSv/yを超える場合は避難を保証すべきという主張は、心に寄り添ってはいるけれど、科学的真実を無視しているということだろうか?</p> <p>「被災した人たちに寄り添う」とよく言われる。これは大事なことで、基本的なことだと思う。私は個人的には、寄り添うという言葉よりも、耳をかたむけるとか、相手の立場に立って考えるといった言葉の方がしっくりくるが、それはさておき、私は取材してものを書く仕事をしているが、まず最初は、相手の立場に立って話を聞くことを心掛けている。ただ、そこに留まるのではなく、その先を見ていかないといけないと思っている。そのときの武器は、メディアの人なら、取り上げる物ごとについての勉強と綿密な取材だろうし、科学者ならそれぞれの専門性であり専門的知見だろう。 また、その先に見たこと考えたことを社会に伝えてこそなんぼのもので、メディアの人にとってはそれが仕事なのだけれど、科学者だって同じだと思う。社会が混乱しているほど専門家の役割は大きい。 だが3.11で浮かび上がった問題は、その専門家の中で被ばく影響についての見解が大きく違ったことだ。イデオロギーで科学を語る科学者と、科学的なデータに基づいて語る科学者を、市民が見分けなければならないのは大変だ。</p> <p>もうひとつ、「現場」について考える。現場は大事で、特にメディアの仕事は現場の取材が重要だ。ただ気をつけないといけないのは、現場で起こっている事象にとらわれて、木を見て森を見ない場合がある。じかに見聞きして肌で体験したことと、俯瞰して見ることの両方を、行ったり来たりさせる必要がある。 さらにあえて言うが、現場を体験していなければ、何もできないのか?現場を知らない科学者が何かを発言しても、その価値は低いのか? そうではないと思う。市民にせよ科学者にせよ、一人の人ができることは限られている。できないことがあっても想像力がそれを補うはずだし、他者と補完し合い連携しながら進んでいくものだと思う。</p> <p>「科学(だけ)で人は説得できない」という趣旨のことを、ある科学者が言った。私もほぼ同意見だが、最近、興味深く思ったことがある。 坂東さんはこのところ、ある人と話し込んでいる。その人は、放射線はいかに微量であっても体を蝕むので人類にとって悪魔だと考えて、これまで正義感から発言してきたが、市民からも批判されて孤立することもあったようだ。 この人は、最初は坂東さんの話に聞く耳を持たなかったが、坂東さんが膝付き合わせて様々なデータを見せながら話をしているうち、少しずつ正しい知識と置き換わっているらしい。二人は、考えにまだまだ相いれないところはあるものの、少なくとも話せる間柄になっているようだ。 このエピソードは、科学が人の考えを変える例ではないだろうか? とは言えこれも、坂東さんがこの人の話にまず耳を傾けたことがきっかけではないか? というのは、「私の話を聞いてもらえない」という疎外感や絶望感が、この人から異なる意見を聞く耳を奪った気配があって、それに対して、ともかくあなたの考えを聞こうという坂東さんの態度が、この人の固い心をほぐしたようなのだ。ただ私が興味深く思うのは、そのあと、二人の相互理解を促す共通語が「科学」であることだ。 ある考えに固執するのは何か理由があるはずで、それが科学に関わることなら、思い込みから抜け出させて正すことができるのは理念や情ではなく、科学かもしれない。</p> <p>ただ私は、科学が絶対的な真実だと思っているわけではない。ここで詳しく書く余裕はないが、科学は自然を見るときの一つの見方に過ぎないという「見方」も、科学者の一人から学んだことである。私はずっと、科学とは遠く離れた分野に関心を抱いて仕事をしてきたが、ここ10年ほど科学者と呼ばれる人と身近に接して、それまで考えてもみなかったことを考えさせられている。</p> <p>「科学が二の次になっていないか?」という坂東さんの発言に対して、私は以上のごとく、自分の意見を明確にまとめることがまだできない。そもそも私と友人は、坂東さんの真意と違うことを話しているかもしれない。 にもかかわらずここに書いた理由は、この記事を読んでくださった方が、科学者魂という言葉や概念について、どう考えられるだろう?科学と社会についてどんなことを考えておられるだろう?と思ったからだ。坂東さんとはいずれ話をしたいと思っている。</p> <p>それにしても、放射線被ばく、特に低線量放射線の被ばくとその影響に関する知識を、きちんと分かることが難しい。私は10数名の科学者と『放射線必須データ32』を作って、被ばく影響の根拠となるデータを4年がかりで読み込んだが、それでも今「●●は影響があるのかないのか、根拠を示して説明してほしい」と言われたら、すらすら答えられない。 被ばく影響のことは、根拠をもとに考えたり発言したりしないといけないと思って先の本を作り始めたが、なかなか難しい。放射線は見えないし感じないものだから、「説明」するしかないし、説明されるほうも概念として理解するしかない。 どうすれば、一般の人がもっと理解できるようになるのだろう……などと思っているうちに、一つの優れた方法は、角山雄一さんが取り組んでおられる「測る」ことだと気付いた。理解は、こういうことから始まっていくのだと思う。</p> <p style="text-align: right;">(文責:艸場よしみ)</p> </td> </tr> </tbody> </table> <div> </div> <p style="text-align: center;">※ 間違いがある場合や、ご意見・ご感想がある場合には、<a href="https://www.secure-cloud.jp/sf/1469640914VQwGkRDZ" target="_blank">お問い合わせ</a>、もしくは<a href="https://www.facebook.com/events/1740734299473054/permalink/1743390419207442/" target="_blank">Facebook</a>のコメント欄にてご一報ください</p> <p> </p></div> 2017年度第1回定期勉強会報告 2017-05-06T04:41:44+09:00 2017-05-06T04:41:44+09:00 https://www.jein.jp/networkofcs/information-list/regularly-workshop/workshop-report/1496-workshop7.html JEin事務局 <div class="feed-description"><p><a href="networkofcs.html"><img src="images/networkofcs/networkofcs-title2.png" border="0" style="margin-right: auto; margin-left: auto; display: block;" /></a></p> <div> </div> <p style="text-align: center;"><span style="font-size: 16px;"><strong>2017年度第1回定期勉強会(サロン・ド・科学の探索 2017年第4回)報告</strong></span></p> <p>1.概 要</p> <p style="padding-left: 26px;">日  時:2017年4月30日(日) 14:00~17:00<br />場  所:<a href="npo-introduction/organization-information.html">NPO法人あいんしゅたいん事務所</a><br />話題提供:中山昌彦氏(公益財団法人京都健康管理研究会・中央診療所 呼吸器内科)<br />話  題:寿命の話・・どこまで伸び続けるか?<br />当日資料:中山氏自己紹介と概要 <a href="images/networkofcs/nakayama_170430.pdf" target="_blank"><img src="images/support/pdficon.png" border="0" width="26" height="26" style="vertical-align: middle; border: 0px;" /></a><br />参考資料:当日議事録(文責:衣川哲弘氏)<a href="images/networkofcs/report_170430.pdf" target="_blank"><img src="images/support/pdficon.png" border="0" width="26" height="26" style="vertical-align: middle; border: 0px;" /></a></p> <p>2.話題概要</p> <p style="padding-left: 26px;">中山昌彦先生は、長らく京都第一赤十字病院呼吸器科で肺癌をはじめとして、呼吸器疾患の患者治療にあたってこられました。そして今は呼吸器科のご専門を生かして定年後も医療活動を続けておられます。様々な医療の現場で、たくさんの患者を診てこられた先生は、最近は寿命の問題で論文を書かれたとのこと、いったいどこまで寿命が延びるのか、という問いに答える考察をなされたそうです。</p> <p style="padding-left: 26px;">確かに、医学の発展と衛生環境や栄養状態がよくなったことで、寿命はどんどん延びています。今日も、町内会での相談の席で105歳のお母さまがいらっしゃる方がおられ、今も音楽を聴き、新聞を丹念に読んでおられるとか、明治元年生まれだそうですが、びっくりしました。好奇心が満点で、よくお話しされるそうです。そうなるといったいどこまで元気に生きられるのか、いくらでも伸ばせるような気もします。 ところが中山医師の話では、「やっぱり限界がある」ということで、それはなんと、120歳代だそうです。女のほうが少し長いそうですが、へーって感じです。そもそも寿命は人によって決まっているのでしょうか?例えばマウスの実験では、実験室を清潔にして環境を良くしているので寿命を全うして死ぬのは、ほとんどがんが原因だそうです。そうなら、がんは生き物が、「もうそろそろですね」と教えてくれている寿命の終わりだということにもなります。人の場合はいろいろと事故にあったり、環境が悪かったりするので、別の原因で死に至りますが、それでもほとんどの病気が治るようになった今では、だんだんがんで死ぬ人が多くなっています。 「そもそも寿命はどうして決まるのか」という問いに、中山先生は、120歳代までが限度だと、どうして言えるのか、ぜひ知りたくなって、お話をお願いしました。</p> <p style="padding-left: 26px;">ちょうど、放射線の影響がどの程度か推定するにも、「人口放射線の被ばくがない場合にどの程度がんにかかり、どれくらい死亡するのかが分かっていないと、推定できません。 ? Armitage と Dollという疫学者たちが、成人がん罹患率が年齢に応じてどのように増えていくかを研究しています。がん罹患率がどう上昇するかの基本的な情報を基にして、人口放射線の影響でそれがどう変わるか調べるのです。ですから、人の寿命がどのように決まるかもきちんと知っておく必要があります。<br />実は、中山先生は、大手前高校時代の理科クラブでの坂東の2年後輩です。中山先生と知り合いになって、京都で避難者向けのホールボディカウンター集団検診を企画した時にも、お医者様としてご協力いただいたこともありがたく思っています。そして、当アインシュタインの「低線量放射線の影響検討委員会」でお話しいただいたこともあります。そのとき、「60歳をこしたら明日死ぬ確率は福島の放射線の影響より大きいので、今のうちにやりたいことをやるべし」 と言われたことなども楽しく思い出しています。そのときの様子は、ブログにあります。</p> <p style="padding-left: 26px;">久しぶりに去る2017年4月8日、大手前高校時代の理科クラブの集まりがあり、そこで私は「物理屋が生物の研究に乗り出して感じたこと」というようなお話をしました。そ子ではいろいろな議論が飛び交ったのですが、特に、がんの話から、放射線の影響の話、そしてしまいには「寿命はどんどん延びているがどこまで伸びるのが可能か」というような議論になったのです。そしたら中山先生が、「統計的に調べて検討したんですが、ほぼ120歳代がヒトの寿命の限界です。」とおっしゃってので、ぜひ話を聞かせてほしいとお願いしました。今回は、「サロン・ド・科学の探索」と合同の企画です。興味あるお話が聞けると思います。是非ご参加ください。</p> <p>3.議事録</p> <table style="width: 95%;" border="1" cellpadding="15" align="center"> <tbody> <tr> <td> <p>この日はいろいろな階層の方々が集まってくださいました全部で22名で、中学生・大学生を含めて、名古屋・神戸・大阪などから集まりました。</p> <p>寿命がど個まで伸びるかというのは、とても興味深いですね。動物実験では、衛生環境を整え、安全に育てて実験するので、最後はがんで死ぬのが大勢ですが、人の場合にはいろいろな環境で生きているので、様々な事故や感染症などで死亡しますので天寿を全うする比率は低かったのですが、なんといっても、最近の発見を契機に環境が改善し、治療の対策が次第に整ったために、天寿を全うする割合が、増えてきています。とはいえ、貧しい国もあり、環境がまだ十分でないところもある ので、寿命については地域差が大きいですね。</p> <p>中山さんのお話は、関心が高いのと、現在の放射線リスクとも問題が重なるところもあり、みんなよくしゃべりました。話がどんどん広がって、原発の是非やエネルギー問題、さらに、放射線の影響でリスクがどの程度出るかという方向まで、皆さんの関心がどんどん広がっていきました。エネルギー問題は別途取り上げたいと思います。ただ、この問題は科学だけでは済まないでしょう。</p> <p>中山先生からは「昨日は自分の好きなことを話させていただき、鋭い質問やいろいろ反響があり楽しい時間が過ごせました。若い人からの反応を聞きたかったですが「みんな聞きたいことだらけ、またよくしゃべる人ばかり」でそうも行かなかったようです。帰り道、出席者の方と話し合ったのですが、全員が話せるように先生が司会をもっと強くされたほうがよかったかと思います。先生の人柄で、幅広い人たちが集まっておられたようです。スライド原稿は話さなかったものも含め添付します。</p> <p>わいわい議論が出てきて、司会の坂東が、うまく若い人が話せるところまで持っていけなくて、申し訳なかったですが、「昨日は、本当にありがとうございました。とても楽しい有益な情報を得られた 時間が過ごせて、感謝一杯です。自由にものの言えるサロンって素敵ですね。思いをみんなが話せたのはよかったと思います」といってくださった方もおられたので、今でた話題をすこしずつ、深めていくように次からも、続けて議論をして いきたいと思います。ただ、疫学のように、論文を綿密に検討するというようなことはできませんでしたが、加齢という現象がどのように人の命とかかわってい るのかは考えさせられました。この地球上に生命が誕生し、そして、人類が誕生してから今日まで、営々と生き続けていけるのは、世代交代があるからで、人はいつか死ぬ存在でもあります。中山先生が言われるように 1回きりの人生だからこそ、しっかり生きている間に、充実した思いを残さない生き方をしたいものですね。 今日はたくさんの宿題が残った状態で終わりました。続きをまたやりましょう。</p> <p>さっそく、大学4年生ので参加した衣川君が、まとめを書いてくださいました。衣川君、ありがとうございました 。</p> <p style="text-align: right;">(文責:坂東昌子)</p> </td> </tr> </tbody> </table> <div> </div> <p style="text-align: center;">※ 間違いがある場合や、ご意見・ご感想がある場合には、<a href="https://www.secure-cloud.jp/sf/1469640914VQwGkRDZ" target="_blank">お問い合わせ</a>、もしくは<a href="https://www.facebook.com/events/1740734299473054/permalink/1743390419207442/" target="_blank">Facebook</a>のコメント欄にてご一報ください</p> <p> </p></div> <div class="feed-description"><p><a href="networkofcs.html"><img src="images/networkofcs/networkofcs-title2.png" border="0" style="margin-right: auto; margin-left: auto; display: block;" /></a></p> <div> </div> <p style="text-align: center;"><span style="font-size: 16px;"><strong>2017年度第1回定期勉強会(サロン・ド・科学の探索 2017年第4回)報告</strong></span></p> <p>1.概 要</p> <p style="padding-left: 26px;">日  時:2017年4月30日(日) 14:00~17:00<br />場  所:<a href="npo-introduction/organization-information.html">NPO法人あいんしゅたいん事務所</a><br />話題提供:中山昌彦氏(公益財団法人京都健康管理研究会・中央診療所 呼吸器内科)<br />話  題:寿命の話・・どこまで伸び続けるか?<br />当日資料:中山氏自己紹介と概要 <a href="images/networkofcs/nakayama_170430.pdf" target="_blank"><img src="images/support/pdficon.png" border="0" width="26" height="26" style="vertical-align: middle; border: 0px;" /></a><br />参考資料:当日議事録(文責:衣川哲弘氏)<a href="images/networkofcs/report_170430.pdf" target="_blank"><img src="images/support/pdficon.png" border="0" width="26" height="26" style="vertical-align: middle; border: 0px;" /></a></p> <p>2.話題概要</p> <p style="padding-left: 26px;">中山昌彦先生は、長らく京都第一赤十字病院呼吸器科で肺癌をはじめとして、呼吸器疾患の患者治療にあたってこられました。そして今は呼吸器科のご専門を生かして定年後も医療活動を続けておられます。様々な医療の現場で、たくさんの患者を診てこられた先生は、最近は寿命の問題で論文を書かれたとのこと、いったいどこまで寿命が延びるのか、という問いに答える考察をなされたそうです。</p> <p style="padding-left: 26px;">確かに、医学の発展と衛生環境や栄養状態がよくなったことで、寿命はどんどん延びています。今日も、町内会での相談の席で105歳のお母さまがいらっしゃる方がおられ、今も音楽を聴き、新聞を丹念に読んでおられるとか、明治元年生まれだそうですが、びっくりしました。好奇心が満点で、よくお話しされるそうです。そうなるといったいどこまで元気に生きられるのか、いくらでも伸ばせるような気もします。 ところが中山医師の話では、「やっぱり限界がある」ということで、それはなんと、120歳代だそうです。女のほうが少し長いそうですが、へーって感じです。そもそも寿命は人によって決まっているのでしょうか?例えばマウスの実験では、実験室を清潔にして環境を良くしているので寿命を全うして死ぬのは、ほとんどがんが原因だそうです。そうなら、がんは生き物が、「もうそろそろですね」と教えてくれている寿命の終わりだということにもなります。人の場合はいろいろと事故にあったり、環境が悪かったりするので、別の原因で死に至りますが、それでもほとんどの病気が治るようになった今では、だんだんがんで死ぬ人が多くなっています。 「そもそも寿命はどうして決まるのか」という問いに、中山先生は、120歳代までが限度だと、どうして言えるのか、ぜひ知りたくなって、お話をお願いしました。</p> <p style="padding-left: 26px;">ちょうど、放射線の影響がどの程度か推定するにも、「人口放射線の被ばくがない場合にどの程度がんにかかり、どれくらい死亡するのかが分かっていないと、推定できません。 ? Armitage と Dollという疫学者たちが、成人がん罹患率が年齢に応じてどのように増えていくかを研究しています。がん罹患率がどう上昇するかの基本的な情報を基にして、人口放射線の影響でそれがどう変わるか調べるのです。ですから、人の寿命がどのように決まるかもきちんと知っておく必要があります。<br />実は、中山先生は、大手前高校時代の理科クラブでの坂東の2年後輩です。中山先生と知り合いになって、京都で避難者向けのホールボディカウンター集団検診を企画した時にも、お医者様としてご協力いただいたこともありがたく思っています。そして、当アインシュタインの「低線量放射線の影響検討委員会」でお話しいただいたこともあります。そのとき、「60歳をこしたら明日死ぬ確率は福島の放射線の影響より大きいので、今のうちにやりたいことをやるべし」 と言われたことなども楽しく思い出しています。そのときの様子は、ブログにあります。</p> <p style="padding-left: 26px;">久しぶりに去る2017年4月8日、大手前高校時代の理科クラブの集まりがあり、そこで私は「物理屋が生物の研究に乗り出して感じたこと」というようなお話をしました。そ子ではいろいろな議論が飛び交ったのですが、特に、がんの話から、放射線の影響の話、そしてしまいには「寿命はどんどん延びているがどこまで伸びるのが可能か」というような議論になったのです。そしたら中山先生が、「統計的に調べて検討したんですが、ほぼ120歳代がヒトの寿命の限界です。」とおっしゃってので、ぜひ話を聞かせてほしいとお願いしました。今回は、「サロン・ド・科学の探索」と合同の企画です。興味あるお話が聞けると思います。是非ご参加ください。</p> <p>3.議事録</p> <table style="width: 95%;" border="1" cellpadding="15" align="center"> <tbody> <tr> <td> <p>この日はいろいろな階層の方々が集まってくださいました全部で22名で、中学生・大学生を含めて、名古屋・神戸・大阪などから集まりました。</p> <p>寿命がど個まで伸びるかというのは、とても興味深いですね。動物実験では、衛生環境を整え、安全に育てて実験するので、最後はがんで死ぬのが大勢ですが、人の場合にはいろいろな環境で生きているので、様々な事故や感染症などで死亡しますので天寿を全うする比率は低かったのですが、なんといっても、最近の発見を契機に環境が改善し、治療の対策が次第に整ったために、天寿を全うする割合が、増えてきています。とはいえ、貧しい国もあり、環境がまだ十分でないところもある ので、寿命については地域差が大きいですね。</p> <p>中山さんのお話は、関心が高いのと、現在の放射線リスクとも問題が重なるところもあり、みんなよくしゃべりました。話がどんどん広がって、原発の是非やエネルギー問題、さらに、放射線の影響でリスクがどの程度出るかという方向まで、皆さんの関心がどんどん広がっていきました。エネルギー問題は別途取り上げたいと思います。ただ、この問題は科学だけでは済まないでしょう。</p> <p>中山先生からは「昨日は自分の好きなことを話させていただき、鋭い質問やいろいろ反響があり楽しい時間が過ごせました。若い人からの反応を聞きたかったですが「みんな聞きたいことだらけ、またよくしゃべる人ばかり」でそうも行かなかったようです。帰り道、出席者の方と話し合ったのですが、全員が話せるように先生が司会をもっと強くされたほうがよかったかと思います。先生の人柄で、幅広い人たちが集まっておられたようです。スライド原稿は話さなかったものも含め添付します。</p> <p>わいわい議論が出てきて、司会の坂東が、うまく若い人が話せるところまで持っていけなくて、申し訳なかったですが、「昨日は、本当にありがとうございました。とても楽しい有益な情報を得られた 時間が過ごせて、感謝一杯です。自由にものの言えるサロンって素敵ですね。思いをみんなが話せたのはよかったと思います」といってくださった方もおられたので、今でた話題をすこしずつ、深めていくように次からも、続けて議論をして いきたいと思います。ただ、疫学のように、論文を綿密に検討するというようなことはできませんでしたが、加齢という現象がどのように人の命とかかわってい るのかは考えさせられました。この地球上に生命が誕生し、そして、人類が誕生してから今日まで、営々と生き続けていけるのは、世代交代があるからで、人はいつか死ぬ存在でもあります。中山先生が言われるように 1回きりの人生だからこそ、しっかり生きている間に、充実した思いを残さない生き方をしたいものですね。 今日はたくさんの宿題が残った状態で終わりました。続きをまたやりましょう。</p> <p>さっそく、大学4年生ので参加した衣川君が、まとめを書いてくださいました。衣川君、ありがとうございました 。</p> <p style="text-align: right;">(文責:坂東昌子)</p> </td> </tr> </tbody> </table> <div> </div> <p style="text-align: center;">※ 間違いがある場合や、ご意見・ご感想がある場合には、<a href="https://www.secure-cloud.jp/sf/1469640914VQwGkRDZ" target="_blank">お問い合わせ</a>、もしくは<a href="https://www.facebook.com/events/1740734299473054/permalink/1743390419207442/" target="_blank">Facebook</a>のコメント欄にてご一報ください</p> <p> </p></div> 2016年度第1回定期勉強会報告 2016-11-22T16:05:43+09:00 2016-11-22T16:05:43+09:00 https://www.jein.jp/networkofcs/information-list/regularly-workshop/workshop-report/1430-workshop1.html JEin事務局 <div class="feed-description"><p><a href="networkofcs.html"><img src="images/networkofcs/networkofcs-title2.png" border="0" style="margin-right: auto; margin-left: auto; display: block;" /></a></p> <div> </div> <p style="text-align: center;"><span style="font-size: 16px;"><strong>2016年度第1回定期勉強会報告</strong></span></p> <table style="width: 100%;" border="0" align="center"> <tbody> <tr> <td valign="top"> <div>1.概 要</div> <div> </div> <div style="padding-left: 30px;">日  時:2016年7月21日(木) 14:00~19:00</div> <div style="padding-left: 30px;">場  所:<a href="npo-introduction/organization-information.html">NPO法人あいんしゅたいん事務所</a></div> <div style="padding-left: 30px;">話題提供:宇野賀津子(ルイパスツール医学研究センター主任研究員・NPO法人あいんしゅたいん常務理事)<br />テキスト:放射線と免疫・ストレス・がん(医療科学社)第6章<br />参考資料:放影研「原爆放射線が免疫系に及ぼす長期影響について」<a href="images/networkofcs/2004SpringJ.pdf" target="_blank"><img src="images/support/pdficon.png" border="0" width="26" height="26" style="vertical-align: middle; border: 0px;" /></a></div> </td> <td><img src="images/networkofcs/regularly-workshop1.jpg" border="0" width="200" style="border: 0px currentColor; margin-right: 50px; margin-left: 15px; float: right;" /></td> </tr> </tbody> </table> <p>2.議事録</p> <table style="width: 95%;" border="1" cellpadding="15" align="center"> <tbody> <tr> <td> <p style="text-align: center;"><strong><span style="font-weight: bolder;">タイトル:「がん、老化、放射線と対峙するヒトの免疫機構」</span></strong></p> <p><span style="font-weight: bolder;">目的</span></p> <p>放射線は細胞内に活性酸素やラジカルをつくり、それらがDNAを傷つけることで、細胞を人体にとって異物にしてしまう。ヒトの免疫系が異物を除去するため活性化した状態を炎症という。</p> <p style="padding-left: 30px;">● どの程度の低線量放射線でどれぐらいの炎症が引き起こされるのか。<br />● どれぐらいの炎症があるとがん化のリスクがどれぐらいあがるのか</p> <p>どれぐらいの炎症があるとがん化のリスクがどれぐらいあがるのか がわかれば、どの程度の低線量放射線が人体に悪影響を及ぼすのかがわかるようになる。ヒトの免疫系について学び、上記2点が今現在どこまでわかっているのかを議論することが勉強会の目的である。</p> <p><span style="font-weight: bolder;">本日の肝</span></p> <p>免疫系も異物(細菌、ガンなど)除去のために活性酸素やラジカルを放出し、周囲の細胞を傷つける面がある。常に免疫系が活性化されている状態はがん化のリスクを上げる一面もある。一方で、異物出現の際に免疫系の反応を活発化し、症状を悪化させずに治癒させやすくするためには、常日頃から少々の刺激があり、免疫系がスタンバイ状態である必要がある。</p> <p><span style="font-weight: bolder;">次の課題</span></p> <p>「日常的にどの程度の刺激があると、免疫系をスタンバイ状態にでき、かつ慢性炎症として周囲を傷つけすぎずに済むか」を知ることができるのか、それとも個人差が大きすぎてそのような量を見極めるのは無理なのか、がわかるように更に学習を進める。どれぐらいの量の低線量放射線がどの程度の炎症を作り出すのかを調べられるのかも議論していく。</p> <p><span style="font-weight: bolder;">コンテンツ</span></p> <div style="padding-left: 30px;">● 免疫学の歴史</div> <div style="padding-left: 30px;">● 免疫機構には大きく2つある。自然免疫と獲得免疫</div> <div style="padding-left: 30px;">● 自然免疫(全ての異物に反応)</div> <div style="padding-left: 30px;">● 皮膚や粘膜などのバリア</div> <div style="padding-left: 30px;">● 血液中に存在する殺菌物質</div> <div style="padding-left: 30px;">● 白血球と呼ばれる、顆粒球、マクロファージ、NK細胞</div> <div style="padding-left: 30px;">● 獲得免疫(特定の異物に反応)</div> <div style="padding-left: 40px;">T細胞、B細胞(長寿命で体内に侵入した異物の形を覚えている細胞。いわゆる、ワクチンなどはこのB細胞のしくみを利用)これらの獲得免疫はマクロファージやNK細胞がだすサイトカインやインターフェロンによって呼び出される。</div> <div style="padding-left: 30px;">● 老化現象</div> <div style="padding-left: 40px;">B細胞:歳とともに若いころの1/10程度に。<br />自然免疫:歳とともに半分程度に。</div> <div style="padding-left: 30px;">● サイトカイン</div> <div style="padding-left: 40px;">マクロファージやNK細胞が異物を発見した時に出す、情報伝達物質。様々な種類があり、状況に応じて組み合わせ、その場に必要なT細胞やB細胞を呼び出す。これが出ていると炎症が起きているということがわかる。</div> <div style="padding-left: 30px;">● インターフェロン</div> <div style="padding-left: 40px;">サイトカインの一種。一番はじめに発見された。他のサイトカインの放出をうながすとともに、細胞を抗ウイルス性にする(細胞がウイルスに感染しても死なないようになる)。</div> <div style="padding-left: 30px;">● 炎症の指標</div> <div style="padding-left: 40px;">サイトカインやインターフェロンの量を測ることで、体内でどの程度の炎症が起きているのかがわかる。</div> <div style="padding-left: 30px;">● 免疫系の反応性の指標</div> <div style="padding-left: 40px;">採取した血液にウイルスなどの異物をある一定量混ぜた時、どの程度のサイトカインやインターフェロンが出るかによって、その人の免疫系がどれぐらい活発に反応し得るかの目安になる。</div> <div style="padding-left: 30px;">● 炎症とがん</div> <div style="padding-left: 40px;">慢性炎症が続くとがんのリスクがあがる。C型肝炎と肝癌。ピロリ菌と胃癌</div> <div style="padding-left: 30px;">● がんの悪性化</div> <div style="padding-left: 40px;">がんの成長には酸素が必要だが、増殖により、内側のがん細胞は豊富な酸素が行き渡りにくい。その結果、グルコースを分解することで呼吸をする、低酸素状態に強いがん細胞が出現する。このように悪性化すると予後が悪い。</div> <p><span style="font-weight: bolder;">議論など</span></p> <p style="padding-left: 30px;">● 疫学はどこまで信用できるのか。<br />● 論文に出たとしても、それが世間一般的に見て、どの程度の正確さを有するかを判断するのが難しい。調査結果や実験結果は調査や実験の条件にも大きく左右される。どのような条件の下での結果なのかということが伝わらずに結果だけが一人歩きしてしまうのは非常に恐ろしい。<br />● どの学術分野も、自分たちの中の暗黙のルールがあり、外から見た時に理解できないことが多い。できる範囲でデータを読み解くことは必要だが、その「できる範囲」が一般社会や他の業界から見て、どの程度の位置にあるものなのかを把握し、周知することが必要ではないか(今回の勉強会参加者は主に物理分野か生物分野出身者)。<br />● 外からの批判はたやすいが、現実にできるかどうかは難しいこともある。現実的に何ができて、そこからどれぐらいのことが言えるのかをきちんと提示するにはどうすればいいか。</p> <p><span style="font-weight: bolder;">(広報の個人的な)感想</span></p> <p style="padding-left: 30px;">4時間にわたる非常に有意義な勉強会でした。議論が白熱し、全くスライドが進まないこともしばしばありました。個人的に印象に強く残ったのは、どんなものにも「いい面」と「悪い面」がある、ということでした。免疫ときくと、体を守ってくれるものですが、悪いものをやっつけるために、人体も多少犠牲にします。また、免疫系が活発すぎるとアレルギーなどを起こすことにもつながるため、免疫系のスイッチを切るマクロファージも存在しており、そのようなマクロファージはがん細胞から見ると攻撃を終わらせてくれる味方とも言えます。生物の体は非常に複雑なしくみのもと成り立っており、あるしくみが、ある時には良いものとして働くし、時には悪いものとしても働きます。そのため、「どれぐらい」働くとよいのかといった「量や程度」についてのとても細かい議論が必要なのだと思いました。</p> <p style="text-align: right;">(文責:廣田)</p> </td> </tr> </tbody> </table> <div> </div> <p style="text-align: center;">※ 間違いがある場合や、ご意見・ご感想がある場合には、<a href="https://www.secure-cloud.jp/sf/1469640914VQwGkRDZ" target="_blank">お問い合わせ</a>、もしくは<a href="https://www.facebook.com/events/1740734299473054/permalink/1743390419207442/" target="_blank">Facebook</a>のコメント欄にてご一報ください</p> <p> </p></div> <div class="feed-description"><p><a href="networkofcs.html"><img src="images/networkofcs/networkofcs-title2.png" border="0" style="margin-right: auto; margin-left: auto; display: block;" /></a></p> <div> </div> <p style="text-align: center;"><span style="font-size: 16px;"><strong>2016年度第1回定期勉強会報告</strong></span></p> <table style="width: 100%;" border="0" align="center"> <tbody> <tr> <td valign="top"> <div>1.概 要</div> <div> </div> <div style="padding-left: 30px;">日  時:2016年7月21日(木) 14:00~19:00</div> <div style="padding-left: 30px;">場  所:<a href="npo-introduction/organization-information.html">NPO法人あいんしゅたいん事務所</a></div> <div style="padding-left: 30px;">話題提供:宇野賀津子(ルイパスツール医学研究センター主任研究員・NPO法人あいんしゅたいん常務理事)<br />テキスト:放射線と免疫・ストレス・がん(医療科学社)第6章<br />参考資料:放影研「原爆放射線が免疫系に及ぼす長期影響について」<a href="images/networkofcs/2004SpringJ.pdf" target="_blank"><img src="images/support/pdficon.png" border="0" width="26" height="26" style="vertical-align: middle; border: 0px;" /></a></div> </td> <td><img src="images/networkofcs/regularly-workshop1.jpg" border="0" width="200" style="border: 0px currentColor; margin-right: 50px; margin-left: 15px; float: right;" /></td> </tr> </tbody> </table> <p>2.議事録</p> <table style="width: 95%;" border="1" cellpadding="15" align="center"> <tbody> <tr> <td> <p style="text-align: center;"><strong><span style="font-weight: bolder;">タイトル:「がん、老化、放射線と対峙するヒトの免疫機構」</span></strong></p> <p><span style="font-weight: bolder;">目的</span></p> <p>放射線は細胞内に活性酸素やラジカルをつくり、それらがDNAを傷つけることで、細胞を人体にとって異物にしてしまう。ヒトの免疫系が異物を除去するため活性化した状態を炎症という。</p> <p style="padding-left: 30px;">● どの程度の低線量放射線でどれぐらいの炎症が引き起こされるのか。<br />● どれぐらいの炎症があるとがん化のリスクがどれぐらいあがるのか</p> <p>どれぐらいの炎症があるとがん化のリスクがどれぐらいあがるのか がわかれば、どの程度の低線量放射線が人体に悪影響を及ぼすのかがわかるようになる。ヒトの免疫系について学び、上記2点が今現在どこまでわかっているのかを議論することが勉強会の目的である。</p> <p><span style="font-weight: bolder;">本日の肝</span></p> <p>免疫系も異物(細菌、ガンなど)除去のために活性酸素やラジカルを放出し、周囲の細胞を傷つける面がある。常に免疫系が活性化されている状態はがん化のリスクを上げる一面もある。一方で、異物出現の際に免疫系の反応を活発化し、症状を悪化させずに治癒させやすくするためには、常日頃から少々の刺激があり、免疫系がスタンバイ状態である必要がある。</p> <p><span style="font-weight: bolder;">次の課題</span></p> <p>「日常的にどの程度の刺激があると、免疫系をスタンバイ状態にでき、かつ慢性炎症として周囲を傷つけすぎずに済むか」を知ることができるのか、それとも個人差が大きすぎてそのような量を見極めるのは無理なのか、がわかるように更に学習を進める。どれぐらいの量の低線量放射線がどの程度の炎症を作り出すのかを調べられるのかも議論していく。</p> <p><span style="font-weight: bolder;">コンテンツ</span></p> <div style="padding-left: 30px;">● 免疫学の歴史</div> <div style="padding-left: 30px;">● 免疫機構には大きく2つある。自然免疫と獲得免疫</div> <div style="padding-left: 30px;">● 自然免疫(全ての異物に反応)</div> <div style="padding-left: 30px;">● 皮膚や粘膜などのバリア</div> <div style="padding-left: 30px;">● 血液中に存在する殺菌物質</div> <div style="padding-left: 30px;">● 白血球と呼ばれる、顆粒球、マクロファージ、NK細胞</div> <div style="padding-left: 30px;">● 獲得免疫(特定の異物に反応)</div> <div style="padding-left: 40px;">T細胞、B細胞(長寿命で体内に侵入した異物の形を覚えている細胞。いわゆる、ワクチンなどはこのB細胞のしくみを利用)これらの獲得免疫はマクロファージやNK細胞がだすサイトカインやインターフェロンによって呼び出される。</div> <div style="padding-left: 30px;">● 老化現象</div> <div style="padding-left: 40px;">B細胞:歳とともに若いころの1/10程度に。<br />自然免疫:歳とともに半分程度に。</div> <div style="padding-left: 30px;">● サイトカイン</div> <div style="padding-left: 40px;">マクロファージやNK細胞が異物を発見した時に出す、情報伝達物質。様々な種類があり、状況に応じて組み合わせ、その場に必要なT細胞やB細胞を呼び出す。これが出ていると炎症が起きているということがわかる。</div> <div style="padding-left: 30px;">● インターフェロン</div> <div style="padding-left: 40px;">サイトカインの一種。一番はじめに発見された。他のサイトカインの放出をうながすとともに、細胞を抗ウイルス性にする(細胞がウイルスに感染しても死なないようになる)。</div> <div style="padding-left: 30px;">● 炎症の指標</div> <div style="padding-left: 40px;">サイトカインやインターフェロンの量を測ることで、体内でどの程度の炎症が起きているのかがわかる。</div> <div style="padding-left: 30px;">● 免疫系の反応性の指標</div> <div style="padding-left: 40px;">採取した血液にウイルスなどの異物をある一定量混ぜた時、どの程度のサイトカインやインターフェロンが出るかによって、その人の免疫系がどれぐらい活発に反応し得るかの目安になる。</div> <div style="padding-left: 30px;">● 炎症とがん</div> <div style="padding-left: 40px;">慢性炎症が続くとがんのリスクがあがる。C型肝炎と肝癌。ピロリ菌と胃癌</div> <div style="padding-left: 30px;">● がんの悪性化</div> <div style="padding-left: 40px;">がんの成長には酸素が必要だが、増殖により、内側のがん細胞は豊富な酸素が行き渡りにくい。その結果、グルコースを分解することで呼吸をする、低酸素状態に強いがん細胞が出現する。このように悪性化すると予後が悪い。</div> <p><span style="font-weight: bolder;">議論など</span></p> <p style="padding-left: 30px;">● 疫学はどこまで信用できるのか。<br />● 論文に出たとしても、それが世間一般的に見て、どの程度の正確さを有するかを判断するのが難しい。調査結果や実験結果は調査や実験の条件にも大きく左右される。どのような条件の下での結果なのかということが伝わらずに結果だけが一人歩きしてしまうのは非常に恐ろしい。<br />● どの学術分野も、自分たちの中の暗黙のルールがあり、外から見た時に理解できないことが多い。できる範囲でデータを読み解くことは必要だが、その「できる範囲」が一般社会や他の業界から見て、どの程度の位置にあるものなのかを把握し、周知することが必要ではないか(今回の勉強会参加者は主に物理分野か生物分野出身者)。<br />● 外からの批判はたやすいが、現実にできるかどうかは難しいこともある。現実的に何ができて、そこからどれぐらいのことが言えるのかをきちんと提示するにはどうすればいいか。</p> <p><span style="font-weight: bolder;">(広報の個人的な)感想</span></p> <p style="padding-left: 30px;">4時間にわたる非常に有意義な勉強会でした。議論が白熱し、全くスライドが進まないこともしばしばありました。個人的に印象に強く残ったのは、どんなものにも「いい面」と「悪い面」がある、ということでした。免疫ときくと、体を守ってくれるものですが、悪いものをやっつけるために、人体も多少犠牲にします。また、免疫系が活発すぎるとアレルギーなどを起こすことにもつながるため、免疫系のスイッチを切るマクロファージも存在しており、そのようなマクロファージはがん細胞から見ると攻撃を終わらせてくれる味方とも言えます。生物の体は非常に複雑なしくみのもと成り立っており、あるしくみが、ある時には良いものとして働くし、時には悪いものとしても働きます。そのため、「どれぐらい」働くとよいのかといった「量や程度」についてのとても細かい議論が必要なのだと思いました。</p> <p style="text-align: right;">(文責:廣田)</p> </td> </tr> </tbody> </table> <div> </div> <p style="text-align: center;">※ 間違いがある場合や、ご意見・ご感想がある場合には、<a href="https://www.secure-cloud.jp/sf/1469640914VQwGkRDZ" target="_blank">お問い合わせ</a>、もしくは<a href="https://www.facebook.com/events/1740734299473054/permalink/1743390419207442/" target="_blank">Facebook</a>のコメント欄にてご一報ください</p> <p> </p></div> 2016年度第2回定期勉強会報告 2016-11-22T16:10:53+09:00 2016-11-22T16:10:53+09:00 https://www.jein.jp/networkofcs/information-list/regularly-workshop/workshop-report/1431-workshop2.html JEin事務局 <div class="feed-description"><p><a href="networkofcs.html"><img src="images/networkofcs/networkofcs-title2.png" border="0" style="margin-right: auto; margin-left: auto; display: block;" /></a></p> <div> </div> <p style="text-align: center;"><span style="font-size: 16px;"><strong><span style="font-size: 16px;"><strong>2016年度</strong></span>第2回定期勉強会報告</strong></span></p> <table style="width: 100%;" border="0" align="center"> <tbody> <tr> <td valign="top"> <div>1.概 要</div> <div> </div> <div style="padding-left: 30px;">日  時:2016年8月12日(金) 14:00~17:00</div> <div style="padding-left: 30px;">場  所:<a href="npo-introduction/organization-information.html">NPO法人あいんしゅたいん事務所</a></div> <div style="padding-left: 30px;">話題提供:宇野賀津子(ルイパスツール医学研究センター主任研究員・NPO法人あいんしゅたいん常務理事)<br />     宮川文(京都大学大学院医学研究科・病理)<br />話  題:免疫とがんについての質問受け<br />テキスト:放射線と免疫・ストレス・がん(医療科学社)第6章<br />当日資料: <a href="images/networkofcs/miyagawa_kaitou.pdf" target="_blank"><img src="images/support/pdficon.png" border="0" width="26" height="26" style="vertical-align: middle; border: 0px;" /></a><br />参考資料:本格調査の結果報告書 <a href="images/networkofcs/167943.pdf" target="_blank"><img src="images/support/pdficon.png" border="0" width="26" height="26" style="vertical-align: middle; border: 0px;" /></a><br />     放影研報告所「小児期に被曝しうた原爆被ばく者における甲状腺結節と放射線量の関連(2007-2011)」<a href="images/networkofcs/rr1409.pdf" target="_blank"><img src="images/support/pdficon.png" border="0" width="26" height="26" style="vertical-align: middle; border: 0px;" /></a><br /><a href="images/networkofcs/160916_tanaka_ekizemi.pdf" target="_blank"></a></div> </td> <td><img src="images/networkofcs/regularly-workshop2.jpg" border="0" width="200" style="border: 0px currentColor; margin-right: 50px; margin-left: 15px; float: right;" /></td> </tr> </tbody> </table> <p>2.質問集</p> <table style="width: 100%;" border="0"> <tbody> <tr> <td style="width: 20px;"> </td> <td colspan="3">回答は、当日資料をご覧ください。</td> </tr> <tr> <td> </td> <td style="width: 20px; ;text-align: right;" valign="top">1)</td> <td colspan="2">IL-6及びCRPの血中濃度と年齢および被ばく量のグラフについて</td> </tr> <tr> <td> </td> <td style="width: 20px; ;text-align: right;" valign="top"> </td> <td style="width: 6px; text-align: right;" valign="top">●</td> <td>サイトカインの中でIL-6が選ばれている事情が、分からずにおります。(他のサイトカインも調べられているが、傾向が顕著だからですか?別の理由があるのですか?)IL-6は、動脈硬化のような持続的な変化のときに、継続的に放出されていて、あまり変動がないと考えてよいのでしょうか?</td> </tr> <tr> <td> </td> <td style="width: 20px; ;text-align: right;" valign="top"> </td> <td style="text-align: right;" valign="top">●</td> <td>CRPは、「炎症」の指標として取り上げているという理解でよろしいでしょうか。IL-6とCRPは並列の関係なのですか。それともCRPは、IL-6の濃度が高いことの結果として取り上げているのでしょうか。(CRP及びIL-6の日々の変動は小さいのか?や、0.01~0.1の違いにどのような意味があるのか?という基礎知識がなくて、この値の見方がよく分かりませんでした。)</td> </tr> <tr> <td> </td> <td style="width: 20px; ;text-align: right;" valign="top"> </td> <td style="text-align: right;" valign="top">●</td> <td>採血の対象は、成人健康調査の対象者で、採血の時期は、被爆の数十年後というように想定しておりましたが、よいでしょうか。</td> </tr> <tr> <td> </td> <td style="width: 20px; ;text-align: right;" valign="top"> </td> <td style="text-align: right;" valign="top">●</td> <td>グラフは、生データではなく、それぞれ、年齢調整、被ばく量調整されたものなのですか。LSSの調査全体に共通する疑問で、ご教示いただければ大変ありがたいのですが、医療被曝をどう考慮しているのですか。</td> </tr> <tr> <td> </td> <td style="width: 20px; ;text-align: right;" valign="top"> </td> <td style="text-align: right;" valign="top">●</td> <td>MI経験者のIL-6およびCRPが高めであること、IL-6の濃度が年齢と共に上昇傾向にあることは、認識できます。</td> </tr> <tr> <td> </td> <td style="width: 20px; ;text-align: right;" valign="top"> </td> <td style="text-align: right;" valign="top">●</td> <td>被ばく線量とIL-6およびCRPのグラフを見ると、2Gy位まではあまり変化がないように見えます。むしろ、非被ばくでの個人差の大きさに目が引かれます。</td> </tr> <tr> <td> </td> <td style="width: 20px; ;text-align: right;" valign="top"> </td> <td style="text-align: right;" valign="top">●</td> <td>まとめとして、4つのグラフから、年齢と共に炎症が上昇傾向にあり、その炎症がMIと関係がありそうだということは、認識できます。しかし、その炎症に対する被ばくの影響はグラフでは2Gy程度にならないと見えてこないように感じます。「被ばくが老化を促進する」というのは、閾値がないという前提にたって、少しの被ばくでも少しは影響があると仮定しての推論なのでしょうか。</td> </tr> <tr> <td> </td> <td style="width: 20px; ;text-align: right;" valign="top"> </td> <td style="text-align: right;" valign="top">●</td> <td>持続的な低線量被ばくの場合、被ばくによる炎症が血管系の疾患やがんに与える影響をどう考えればよいでしょうか。持続的な低線量被ばくの場合は、T細胞のホメオスシタシスに影響しない(?)ので、原爆被爆者のメカニズムは当てはまらないと考えて、持続的な低線量被ばくの影響は、全く別に考えるべきでしょうか。 例えば、『データ32』のデータ6では、21mGy/日の被ばく群で腫瘍による死亡で、寿命が短縮しています。この場合その腫瘍の発生には放射線による炎症が影響していると考えられるのですか。この実験では調べられているかどうかわからないのですが、血管系の疾患が増えていることが予想されるのですか。一方、持続的に被ばくしていても、チェルノブイリの被災地程度の被ばく量では、被ばくによる血管系の疾患の増加は、考えられないのですか。</td> </tr> <tr> <td> </td> <td style="width: 20px; ;text-align: right;" valign="top"> </td> <td colspan="2" valign="top"> </td> </tr> <tr> <td> </td> <td style="width: 20px; ;text-align: right;" valign="top">2)</td> <td colspan="2" valign="top">330ページの5~7行目について、宇野先生のお考えをお伺いしたく存じます。</td> </tr> <tr> <td> </td> <td style="width: 20px; ;text-align: right;" valign="top"> </td> <td style="text-align: right;" valign="top">●</td> <td>「原爆被爆者にみられる炎症性サイトカインの増加および老年性疾患の発生に、さまざまな臓器に蓄積しているそのような老化細胞が関係している可能性を考える必要があるように思われる。」原爆被爆者の老化細胞からのサイトカインの量は、どの程度の被曝線量から、疾患の発生に影響する量となると考えられるのでしょうか。</td> </tr> <tr> <td> </td> <td style="width: 20px; ;text-align: right;" valign="top"> </td> <td colspan="2" valign="top"> </td> </tr> <tr> <td> </td> <td style="width: 20px; ;text-align: right;" valign="top">3)</td> <td colspan="2" valign="top">がんの発生過程は、(腫瘍or結節)のうち他に転移せずやどぬしを殺すに至らないものを良性、至らないものを悪性と呼んでいる。この区別はミクロには遺伝子の変異の差として理解できるのか?</td> </tr> <tr> <td> </td> <td style="width: 20px; ;text-align: right;" valign="top"> </td> <td colspan="2" valign="top"> </td> </tr> <tr> <td> </td> <td style="width: 20px; ;text-align: right;" valign="top">4)</td> <td colspan="2" valign="top">定義では、腫瘍が質的に異なった段階へ進展することをprogressionというらしいですが、それは古い病変の一部にrevolutionaryにおこる(Fouldの定義)とありますが・・・。質的な定義なのでさっぱり量が書いてないのですが、異なった段階 とは何で定義するのですか?また、revolutionaryに起こるという場合、量的な表現はあるのですか?例えば、腫瘍の大きさとか腫瘍の大きくなる割合はどういうスケールですか?あるいは時間的変化の程度はどのスケールで考えていますか?</td> </tr> <tr> <td> </td> <td style="width: 20px; ;text-align: right;" valign="top"> </td> <td colspan="2" valign="top"> </td> </tr> <tr> <td> </td> <td style="width: 20px; ;text-align: right;" valign="top">5)</td> <td colspan="2" valign="top">がんは原発巣よりは転移先のほうが 肉腫は上皮性のがん(癌腫)より成長が早いそうですね。この理由はどれだけわかっていますか?単なる現象論ですか?例えばがんが生長するためには栄養源として摂取するための血管が周りに必要ですが、がん細胞が増えて血液が不足することもあると思われます。このとき上皮より内臓部のほうが血管が伸びやすいとかありませんか?</td> </tr> <tr> <td> </td> <td style="width: 20px; ;text-align: right;" valign="top"> </td> <td colspan="2" valign="top"> </td> </tr> <tr> <td> </td> <td style="width: 20px; ;text-align: right;" valign="top">6)</td> <td colspan="2" valign="top">がん遺伝子はある種のウイルスから見つかったということですが、定義は「細胞をがん化すさせる遺伝子」という定義だそそうです。一方がん抑制遺伝子は、そもそも細胞のゲノム安定性を維持する遺伝子で、その働きはアポトーシスエラーチェックなど、つまり細胞増殖に際してのブレーキ役を果たす遺伝子群ということだそうです。結局のところ、がん遺伝子は細胞増殖に関してのアクセル役をする遺伝子群で、がん抑制遺伝子は、増殖に際してブレーキ役をする遺伝子群である、としかよめないのです。普通突然変異によって特定の酵素、あるいは特定の機能を持つ器官を作る遺伝子の奇形などによって細胞が「奇形の細胞になる」ことによりある病気が発生したり体の一部の奇形が発生したりすることがありますが、それとは異質で、すなわち細部の増殖に伴う遺伝子群の呼称を生じることのように思われます。以上の2つは「効きすぎても弱すぎても」困る遺伝子は抗原と関係しており、いわば増殖をつかさどる遺伝子群の異常がおこしたものががんなのではと思われます。この理解で間違いないですか?</td> </tr> <tr> <td> </td> <td style="width: 20px; ;text-align: right;" valign="top"> </td> <td colspan="2" valign="top"> </td> </tr> <tr> <td> </td> <td style="width: 20px; ;text-align: right;" valign="top">7)</td> <td colspan="2" valign="top">ついでながら甲状腺がんについて緊急に知りたい事項が出てきたのでお伺いです。現在ふくしまでABC判定と言われるものと甲状腺がんというものは結局のと ころ、どういうところを見分けているのでしょうか。しこりやのう胞の大きさで決まっているのでしょうが、いわゆる甲状腺がんは上記の質問に関係してどういう段階でがんと判定するのでしょうか?甲状腺がんには、いくつか種類があって、乳頭がん(予後が良い)、濾胞がん、低分化がん(未分化がん、予後が悪い)だということですが、これらはどう見分けられるのでしょうか。</td> </tr> <tr> <td> </td> <td style="width: 20px; ;text-align: right;" valign="top"> </td> <td colspan="2" valign="top"> </td> </tr> <tr> <td> </td> <td style="width: 20px; ;text-align: right;" valign="top">8)</td> <td colspan="2" valign="top">『データ32』のデータ20では、0~19歳でCT受診した場合の発がん影響を調べていて、がんの潜伏期間を考慮するためのラグタイムを1年間としています。子どもの場合は、曝露からのラグタイムをこのように短くするのが一般的ですか。</td> </tr> </tbody> </table> <p>3.議事録</p> <table style="width: 95%;" border="1" cellpadding="15" align="center"> <tbody> <tr> <td> <p><strong>病理学からみたがんとは?</strong></p> <p style="padding-left: 30px;">● がんの分類の目的は予後を把握し治療の方針を立てるため<br />● 触診やエコーの検査後、疑いがあれば、組織学的に検査し分類する。ガンになった部分から細胞の塊を採取し、薄くスライスして染色し、観察する。正常な細胞とがん細胞では細胞の形態が違っている<br />● 組織学的ながんの分類とそれらの細胞でどのような遺伝子異常が起きているのかが関連づけられはじめたのは最近のこと。原因となる遺伝子の解明を受けて、がんの分類は変わりつつある。<br />● 病理の基本を知る上でのおススメ本:「基礎病理学(ロビンス)」「がんの分子生物学(ペコリーノ)」(総論)、「がんの分子生物学(デヴィータ)」(腫瘍各論)など</p> <p><strong>組織学的にみたがんの種類とその特徴</strong></p> <p style="padding-left: 30px;">● 例えば、甲状腺がんと一口に言っても組織学的に見て分類できる。乳頭がん、濾胞がん、未分化がん。ほとんどが乳頭がん。<br />● 甲状腺がんで例に挙がった、乳頭がん、および濾胞がんは予後が良い。がんではあるが、進行が遅く、正常組織に近い形態を持っている。このようながん組織を、次に述べる未分化がんに対して、高分化がんとよぶ。<br />● 甲状腺未分化がんは進行が非常にはやく、頸部にすぐに浸潤し、育った癌によって気管がつまる呼吸器不全などで発見から1年ほどで死に至る。<br />● 一般的に分化の度合いが高いがんは進行が遅く、予後がよい。一方、未分化のがんは予後が悪い。進行が早く、悪液質(癌に限らず慢性炎症などでも起こる。食欲がなくなったり、蓄えた脂肪が癌細胞などにエネルギーとして使用されてしまうことで、やせ衰えて消耗状態になること)を経て死亡に至るまでが速い。<br />● 高文化のものより、未分化がんの方が、後に述べる組織学的な悪性腫瘍の特徴が大きい。形もばらばら、核の肥大サイズもばらばら、細胞の並びも無秩序(臓器として機能するためには、ある程度秩序だった並びが必要)。核重積も多数見られる。<br />● がんの予後については、がんの組織学的な種類とも関係するが、甲状腺未分化がんの例のように、がんがどこにできるかにもよる。他の例としては、胆管がんのようなものの場合、細い胆管ががんによってすぐに詰まってしまうため、黄疸が出やすい。また、周辺臓器と密接しているため、発見時にはすでに転移した進行がんであることがほとんどで、予後が悪い。逆に肝癌では、肝臓のがんではない部分の能力(予備能)が十分にあるため、がんを抱えたままでも肝機能が低下しにくく、切除や腫瘍内の血管を塞栓することでがんを兵糧攻めにするような治療を繰り返し行なうことができるため、死に至るまでの時間は長くなる。</p> <p><strong>組織学的に見た悪性腫瘍の特徴。予後の悪いがんは以下の特徴が大きい傾向にある。</strong></p> <p style="padding-left: 30px;">● 細胞の大きさや形態が不規則になる(多形性)<br />● 核クロマチンの増加<br />● 核が細胞質に対して増加する(N/C比。Nuclear/Citoplasmaの増加)<br />● 巨大核を持つ<br />● 1つの細胞に核がいくつも存在する<br />● 隣りの細胞と重なり合って見える(重積)<br />● 細胞が密に存在するようになる<br />● 被膜が周りにある場合、皮膜をやぶり、浸潤する など</p> <p><strong>甲状腺乳頭がんの細胞によく見られる組織学的特徴</strong></p> <p style="padding-left: 30px;">● 核が透けて見える(スリガラス化)<br />● 核に溝ができる(核溝)</p> <p><strong>予後によるがんの状態の分類</strong></p> <p style="padding-left: 30px;">● よくきく「ステージ」はこれまでの知見から見た予後を表す<br />● ステージは3つの基準から決まる。腫瘍のサイズ(T)、リンパ節への転移の度合い(N)、リンパ以外の臓器への転移の度合い(M)<br />● 但し、乳頭がんの場合、ステージに腫瘍のサイズが関係するのは45歳以上。それ以下については、腫瘍のサイズはあまり予後に影響しないとされる。また、45歳以下の乳頭がんは予後が良いため、ステージも1と2のみ。</p> <p><strong>子どものがん</strong></p> <p style="padding-left: 30px;">● 子供のがんは大人のがんとは基本的には種類が違う。上皮がんは少なく、白血病や脳腫瘍が多い。ただし、脳腫瘍も大人のものとは発生元が違う。<br />● 成人では甲状腺がんと診察されたことのない人であっても、剖検時に甲状腺潜在がんが見つかることは珍しくない。一般に上皮性腫瘍(いわゆる固形ガン)は小児では稀ではあるものの、甲状腺乳頭癌は小児にも発生することがある。</p> <p><strong>福島の健康調査(子供の甲状腺がん)について(あくまで勉強会で出た情報、意見)</strong></p> <p style="padding-left: 30px;">● 調査方法(意図):先行調査(3.11の半年後から2年後に実施)でまだ放射線の影響が出る前の福島の状況を調べた。このときは、青森、長崎、山梨でも比較のため調査を行なっている。次に、本格調査(3.11の2年後以降)により、福島での状況を調べ、先行調査との比較より、福島原発事故による曝露分を割り出す。<br />● 先行調査では30万人を調査(悪性ないし悪性疑いが115名)、本格調査では27万人を調査(悪性ないし悪性疑いが57名。14歳以下は14名。2016年3月31日現在)。<br />● 現在の公式見解:多発は認めているが放射線由来であるかについてはまだ調査中としている。<br />● 先行調査では年齢に応じて発症数が高くなっており、通常のがんの傾向と同じ。また、先行調査では福島と他県において差は無かった。<br />● 本格調査では発症数と年齢の間に明らさまな関係は見られない。発症数は先行調査時より少ないが、先行調査でのがん発症数が調査対象者の年齢分のがん発生要因の蓄積によるものだと考え、本格調査では先行調査以降分での蓄積だと考えれば、少ない事自体は大雑把には妥当。本当に蓄積年数に応じているのか、そもそも蓄積年数だと思って処理をすべきなのか、といったことは検証し調べる必要がある。<br />● 本格調査の結果において、対象者の曝露状況などを鑑みて結果を解析する必要がある。<br />● 健康調査が良いことなのかに対する疑問の声が存在する。甲状腺における乳頭がんはそもそも非常に進行が遅く、命の危険が少ないことから、調査によって今までは発見されないような早期の段階で見つけ、切除することがよいかどうかには、考える余地がある。なぜなら、甲状腺は成長等に欠かせない甲状腺ホルモンを分泌する器官であるため、幼少期に取ってしまうことで弊害があり得る。甲状腺ホルモンを補う錠剤を飲むことでカバーできるが、実質、ティーンエイジャーに錠剤を毎日飲むことを徹底して指導するのは難しいという現場の声がある。</p> <p><strong>参加者の疑問</strong></p> <p style="padding-left: 30px;">● 診断の精度は?1ミリ単位でサイズを分けるのは妥当かどうか。結節と膿胞で形が違うがどのようにサイズを決定するか?<br />● 先行調査と本格調査において診断技術の進歩からくる影響は?<br />● 健康調査の是非について、がんの専門家の意見はどのぐらい反映されているのか?<br />● チェルノブイリの子供の甲状腺がんではRETという遺伝子の異常が多かった。福島ではどうなのか?<br />● 調査対象者の3.11後の移動などのデータはあるのかどうか。</p> <p><span style="font-weight: bolder;">研究会の様子・(文責者の個人的な(感想</span></p> <p style="padding-left: 30px;">● 女性の参加者の多い研究会で、自己紹介時には「女性の生き方ガイド」の話などでも盛り上がりました。 ● 病理診断で実際にどのようなことからがんを判定しているのかをわかりやすく提示していただきました。</p> <p style="text-align: right;">(文責:廣田)</p> </td> </tr> </tbody> </table> <div> </div> <p style="text-align: center;">※ 間違いがある場合や、ご意見・ご感想がある場合には、<a href="https://www.secure-cloud.jp/sf/1469640914VQwGkRDZ" target="_blank">お問い合わせ</a>、もしくは<a href="https://www.facebook.com/events/1740734299473054/permalink/1743390419207442/" target="_blank">Facebook</a>のコメント欄にてご一報ください</p> <p> </p></div> <div class="feed-description"><p><a href="networkofcs.html"><img src="images/networkofcs/networkofcs-title2.png" border="0" style="margin-right: auto; margin-left: auto; display: block;" /></a></p> <div> </div> <p style="text-align: center;"><span style="font-size: 16px;"><strong><span style="font-size: 16px;"><strong>2016年度</strong></span>第2回定期勉強会報告</strong></span></p> <table style="width: 100%;" border="0" align="center"> <tbody> <tr> <td valign="top"> <div>1.概 要</div> <div> </div> <div style="padding-left: 30px;">日  時:2016年8月12日(金) 14:00~17:00</div> <div style="padding-left: 30px;">場  所:<a href="npo-introduction/organization-information.html">NPO法人あいんしゅたいん事務所</a></div> <div style="padding-left: 30px;">話題提供:宇野賀津子(ルイパスツール医学研究センター主任研究員・NPO法人あいんしゅたいん常務理事)<br />     宮川文(京都大学大学院医学研究科・病理)<br />話  題:免疫とがんについての質問受け<br />テキスト:放射線と免疫・ストレス・がん(医療科学社)第6章<br />当日資料: <a href="images/networkofcs/miyagawa_kaitou.pdf" target="_blank"><img src="images/support/pdficon.png" border="0" width="26" height="26" style="vertical-align: middle; border: 0px;" /></a><br />参考資料:本格調査の結果報告書 <a href="images/networkofcs/167943.pdf" target="_blank"><img src="images/support/pdficon.png" border="0" width="26" height="26" style="vertical-align: middle; border: 0px;" /></a><br />     放影研報告所「小児期に被曝しうた原爆被ばく者における甲状腺結節と放射線量の関連(2007-2011)」<a href="images/networkofcs/rr1409.pdf" target="_blank"><img src="images/support/pdficon.png" border="0" width="26" height="26" style="vertical-align: middle; border: 0px;" /></a><br /><a href="images/networkofcs/160916_tanaka_ekizemi.pdf" target="_blank"></a></div> </td> <td><img src="images/networkofcs/regularly-workshop2.jpg" border="0" width="200" style="border: 0px currentColor; margin-right: 50px; margin-left: 15px; float: right;" /></td> </tr> </tbody> </table> <p>2.質問集</p> <table style="width: 100%;" border="0"> <tbody> <tr> <td style="width: 20px;"> </td> <td colspan="3">回答は、当日資料をご覧ください。</td> </tr> <tr> <td> </td> <td style="width: 20px; ;text-align: right;" valign="top">1)</td> <td colspan="2">IL-6及びCRPの血中濃度と年齢および被ばく量のグラフについて</td> </tr> <tr> <td> </td> <td style="width: 20px; ;text-align: right;" valign="top"> </td> <td style="width: 6px; text-align: right;" valign="top">●</td> <td>サイトカインの中でIL-6が選ばれている事情が、分からずにおります。(他のサイトカインも調べられているが、傾向が顕著だからですか?別の理由があるのですか?)IL-6は、動脈硬化のような持続的な変化のときに、継続的に放出されていて、あまり変動がないと考えてよいのでしょうか?</td> </tr> <tr> <td> </td> <td style="width: 20px; ;text-align: right;" valign="top"> </td> <td style="text-align: right;" valign="top">●</td> <td>CRPは、「炎症」の指標として取り上げているという理解でよろしいでしょうか。IL-6とCRPは並列の関係なのですか。それともCRPは、IL-6の濃度が高いことの結果として取り上げているのでしょうか。(CRP及びIL-6の日々の変動は小さいのか?や、0.01~0.1の違いにどのような意味があるのか?という基礎知識がなくて、この値の見方がよく分かりませんでした。)</td> </tr> <tr> <td> </td> <td style="width: 20px; ;text-align: right;" valign="top"> </td> <td style="text-align: right;" valign="top">●</td> <td>採血の対象は、成人健康調査の対象者で、採血の時期は、被爆の数十年後というように想定しておりましたが、よいでしょうか。</td> </tr> <tr> <td> </td> <td style="width: 20px; ;text-align: right;" valign="top"> </td> <td style="text-align: right;" valign="top">●</td> <td>グラフは、生データではなく、それぞれ、年齢調整、被ばく量調整されたものなのですか。LSSの調査全体に共通する疑問で、ご教示いただければ大変ありがたいのですが、医療被曝をどう考慮しているのですか。</td> </tr> <tr> <td> </td> <td style="width: 20px; ;text-align: right;" valign="top"> </td> <td style="text-align: right;" valign="top">●</td> <td>MI経験者のIL-6およびCRPが高めであること、IL-6の濃度が年齢と共に上昇傾向にあることは、認識できます。</td> </tr> <tr> <td> </td> <td style="width: 20px; ;text-align: right;" valign="top"> </td> <td style="text-align: right;" valign="top">●</td> <td>被ばく線量とIL-6およびCRPのグラフを見ると、2Gy位まではあまり変化がないように見えます。むしろ、非被ばくでの個人差の大きさに目が引かれます。</td> </tr> <tr> <td> </td> <td style="width: 20px; ;text-align: right;" valign="top"> </td> <td style="text-align: right;" valign="top">●</td> <td>まとめとして、4つのグラフから、年齢と共に炎症が上昇傾向にあり、その炎症がMIと関係がありそうだということは、認識できます。しかし、その炎症に対する被ばくの影響はグラフでは2Gy程度にならないと見えてこないように感じます。「被ばくが老化を促進する」というのは、閾値がないという前提にたって、少しの被ばくでも少しは影響があると仮定しての推論なのでしょうか。</td> </tr> <tr> <td> </td> <td style="width: 20px; ;text-align: right;" valign="top"> </td> <td style="text-align: right;" valign="top">●</td> <td>持続的な低線量被ばくの場合、被ばくによる炎症が血管系の疾患やがんに与える影響をどう考えればよいでしょうか。持続的な低線量被ばくの場合は、T細胞のホメオスシタシスに影響しない(?)ので、原爆被爆者のメカニズムは当てはまらないと考えて、持続的な低線量被ばくの影響は、全く別に考えるべきでしょうか。 例えば、『データ32』のデータ6では、21mGy/日の被ばく群で腫瘍による死亡で、寿命が短縮しています。この場合その腫瘍の発生には放射線による炎症が影響していると考えられるのですか。この実験では調べられているかどうかわからないのですが、血管系の疾患が増えていることが予想されるのですか。一方、持続的に被ばくしていても、チェルノブイリの被災地程度の被ばく量では、被ばくによる血管系の疾患の増加は、考えられないのですか。</td> </tr> <tr> <td> </td> <td style="width: 20px; ;text-align: right;" valign="top"> </td> <td colspan="2" valign="top"> </td> </tr> <tr> <td> </td> <td style="width: 20px; ;text-align: right;" valign="top">2)</td> <td colspan="2" valign="top">330ページの5~7行目について、宇野先生のお考えをお伺いしたく存じます。</td> </tr> <tr> <td> </td> <td style="width: 20px; ;text-align: right;" valign="top"> </td> <td style="text-align: right;" valign="top">●</td> <td>「原爆被爆者にみられる炎症性サイトカインの増加および老年性疾患の発生に、さまざまな臓器に蓄積しているそのような老化細胞が関係している可能性を考える必要があるように思われる。」原爆被爆者の老化細胞からのサイトカインの量は、どの程度の被曝線量から、疾患の発生に影響する量となると考えられるのでしょうか。</td> </tr> <tr> <td> </td> <td style="width: 20px; ;text-align: right;" valign="top"> </td> <td colspan="2" valign="top"> </td> </tr> <tr> <td> </td> <td style="width: 20px; ;text-align: right;" valign="top">3)</td> <td colspan="2" valign="top">がんの発生過程は、(腫瘍or結節)のうち他に転移せずやどぬしを殺すに至らないものを良性、至らないものを悪性と呼んでいる。この区別はミクロには遺伝子の変異の差として理解できるのか?</td> </tr> <tr> <td> </td> <td style="width: 20px; ;text-align: right;" valign="top"> </td> <td colspan="2" valign="top"> </td> </tr> <tr> <td> </td> <td style="width: 20px; ;text-align: right;" valign="top">4)</td> <td colspan="2" valign="top">定義では、腫瘍が質的に異なった段階へ進展することをprogressionというらしいですが、それは古い病変の一部にrevolutionaryにおこる(Fouldの定義)とありますが・・・。質的な定義なのでさっぱり量が書いてないのですが、異なった段階 とは何で定義するのですか?また、revolutionaryに起こるという場合、量的な表現はあるのですか?例えば、腫瘍の大きさとか腫瘍の大きくなる割合はどういうスケールですか?あるいは時間的変化の程度はどのスケールで考えていますか?</td> </tr> <tr> <td> </td> <td style="width: 20px; ;text-align: right;" valign="top"> </td> <td colspan="2" valign="top"> </td> </tr> <tr> <td> </td> <td style="width: 20px; ;text-align: right;" valign="top">5)</td> <td colspan="2" valign="top">がんは原発巣よりは転移先のほうが 肉腫は上皮性のがん(癌腫)より成長が早いそうですね。この理由はどれだけわかっていますか?単なる現象論ですか?例えばがんが生長するためには栄養源として摂取するための血管が周りに必要ですが、がん細胞が増えて血液が不足することもあると思われます。このとき上皮より内臓部のほうが血管が伸びやすいとかありませんか?</td> </tr> <tr> <td> </td> <td style="width: 20px; ;text-align: right;" valign="top"> </td> <td colspan="2" valign="top"> </td> </tr> <tr> <td> </td> <td style="width: 20px; ;text-align: right;" valign="top">6)</td> <td colspan="2" valign="top">がん遺伝子はある種のウイルスから見つかったということですが、定義は「細胞をがん化すさせる遺伝子」という定義だそそうです。一方がん抑制遺伝子は、そもそも細胞のゲノム安定性を維持する遺伝子で、その働きはアポトーシスエラーチェックなど、つまり細胞増殖に際してのブレーキ役を果たす遺伝子群ということだそうです。結局のところ、がん遺伝子は細胞増殖に関してのアクセル役をする遺伝子群で、がん抑制遺伝子は、増殖に際してブレーキ役をする遺伝子群である、としかよめないのです。普通突然変異によって特定の酵素、あるいは特定の機能を持つ器官を作る遺伝子の奇形などによって細胞が「奇形の細胞になる」ことによりある病気が発生したり体の一部の奇形が発生したりすることがありますが、それとは異質で、すなわち細部の増殖に伴う遺伝子群の呼称を生じることのように思われます。以上の2つは「効きすぎても弱すぎても」困る遺伝子は抗原と関係しており、いわば増殖をつかさどる遺伝子群の異常がおこしたものががんなのではと思われます。この理解で間違いないですか?</td> </tr> <tr> <td> </td> <td style="width: 20px; ;text-align: right;" valign="top"> </td> <td colspan="2" valign="top"> </td> </tr> <tr> <td> </td> <td style="width: 20px; ;text-align: right;" valign="top">7)</td> <td colspan="2" valign="top">ついでながら甲状腺がんについて緊急に知りたい事項が出てきたのでお伺いです。現在ふくしまでABC判定と言われるものと甲状腺がんというものは結局のと ころ、どういうところを見分けているのでしょうか。しこりやのう胞の大きさで決まっているのでしょうが、いわゆる甲状腺がんは上記の質問に関係してどういう段階でがんと判定するのでしょうか?甲状腺がんには、いくつか種類があって、乳頭がん(予後が良い)、濾胞がん、低分化がん(未分化がん、予後が悪い)だということですが、これらはどう見分けられるのでしょうか。</td> </tr> <tr> <td> </td> <td style="width: 20px; ;text-align: right;" valign="top"> </td> <td colspan="2" valign="top"> </td> </tr> <tr> <td> </td> <td style="width: 20px; ;text-align: right;" valign="top">8)</td> <td colspan="2" valign="top">『データ32』のデータ20では、0~19歳でCT受診した場合の発がん影響を調べていて、がんの潜伏期間を考慮するためのラグタイムを1年間としています。子どもの場合は、曝露からのラグタイムをこのように短くするのが一般的ですか。</td> </tr> </tbody> </table> <p>3.議事録</p> <table style="width: 95%;" border="1" cellpadding="15" align="center"> <tbody> <tr> <td> <p><strong>病理学からみたがんとは?</strong></p> <p style="padding-left: 30px;">● がんの分類の目的は予後を把握し治療の方針を立てるため<br />● 触診やエコーの検査後、疑いがあれば、組織学的に検査し分類する。ガンになった部分から細胞の塊を採取し、薄くスライスして染色し、観察する。正常な細胞とがん細胞では細胞の形態が違っている<br />● 組織学的ながんの分類とそれらの細胞でどのような遺伝子異常が起きているのかが関連づけられはじめたのは最近のこと。原因となる遺伝子の解明を受けて、がんの分類は変わりつつある。<br />● 病理の基本を知る上でのおススメ本:「基礎病理学(ロビンス)」「がんの分子生物学(ペコリーノ)」(総論)、「がんの分子生物学(デヴィータ)」(腫瘍各論)など</p> <p><strong>組織学的にみたがんの種類とその特徴</strong></p> <p style="padding-left: 30px;">● 例えば、甲状腺がんと一口に言っても組織学的に見て分類できる。乳頭がん、濾胞がん、未分化がん。ほとんどが乳頭がん。<br />● 甲状腺がんで例に挙がった、乳頭がん、および濾胞がんは予後が良い。がんではあるが、進行が遅く、正常組織に近い形態を持っている。このようながん組織を、次に述べる未分化がんに対して、高分化がんとよぶ。<br />● 甲状腺未分化がんは進行が非常にはやく、頸部にすぐに浸潤し、育った癌によって気管がつまる呼吸器不全などで発見から1年ほどで死に至る。<br />● 一般的に分化の度合いが高いがんは進行が遅く、予後がよい。一方、未分化のがんは予後が悪い。進行が早く、悪液質(癌に限らず慢性炎症などでも起こる。食欲がなくなったり、蓄えた脂肪が癌細胞などにエネルギーとして使用されてしまうことで、やせ衰えて消耗状態になること)を経て死亡に至るまでが速い。<br />● 高文化のものより、未分化がんの方が、後に述べる組織学的な悪性腫瘍の特徴が大きい。形もばらばら、核の肥大サイズもばらばら、細胞の並びも無秩序(臓器として機能するためには、ある程度秩序だった並びが必要)。核重積も多数見られる。<br />● がんの予後については、がんの組織学的な種類とも関係するが、甲状腺未分化がんの例のように、がんがどこにできるかにもよる。他の例としては、胆管がんのようなものの場合、細い胆管ががんによってすぐに詰まってしまうため、黄疸が出やすい。また、周辺臓器と密接しているため、発見時にはすでに転移した進行がんであることがほとんどで、予後が悪い。逆に肝癌では、肝臓のがんではない部分の能力(予備能)が十分にあるため、がんを抱えたままでも肝機能が低下しにくく、切除や腫瘍内の血管を塞栓することでがんを兵糧攻めにするような治療を繰り返し行なうことができるため、死に至るまでの時間は長くなる。</p> <p><strong>組織学的に見た悪性腫瘍の特徴。予後の悪いがんは以下の特徴が大きい傾向にある。</strong></p> <p style="padding-left: 30px;">● 細胞の大きさや形態が不規則になる(多形性)<br />● 核クロマチンの増加<br />● 核が細胞質に対して増加する(N/C比。Nuclear/Citoplasmaの増加)<br />● 巨大核を持つ<br />● 1つの細胞に核がいくつも存在する<br />● 隣りの細胞と重なり合って見える(重積)<br />● 細胞が密に存在するようになる<br />● 被膜が周りにある場合、皮膜をやぶり、浸潤する など</p> <p><strong>甲状腺乳頭がんの細胞によく見られる組織学的特徴</strong></p> <p style="padding-left: 30px;">● 核が透けて見える(スリガラス化)<br />● 核に溝ができる(核溝)</p> <p><strong>予後によるがんの状態の分類</strong></p> <p style="padding-left: 30px;">● よくきく「ステージ」はこれまでの知見から見た予後を表す<br />● ステージは3つの基準から決まる。腫瘍のサイズ(T)、リンパ節への転移の度合い(N)、リンパ以外の臓器への転移の度合い(M)<br />● 但し、乳頭がんの場合、ステージに腫瘍のサイズが関係するのは45歳以上。それ以下については、腫瘍のサイズはあまり予後に影響しないとされる。また、45歳以下の乳頭がんは予後が良いため、ステージも1と2のみ。</p> <p><strong>子どものがん</strong></p> <p style="padding-left: 30px;">● 子供のがんは大人のがんとは基本的には種類が違う。上皮がんは少なく、白血病や脳腫瘍が多い。ただし、脳腫瘍も大人のものとは発生元が違う。<br />● 成人では甲状腺がんと診察されたことのない人であっても、剖検時に甲状腺潜在がんが見つかることは珍しくない。一般に上皮性腫瘍(いわゆる固形ガン)は小児では稀ではあるものの、甲状腺乳頭癌は小児にも発生することがある。</p> <p><strong>福島の健康調査(子供の甲状腺がん)について(あくまで勉強会で出た情報、意見)</strong></p> <p style="padding-left: 30px;">● 調査方法(意図):先行調査(3.11の半年後から2年後に実施)でまだ放射線の影響が出る前の福島の状況を調べた。このときは、青森、長崎、山梨でも比較のため調査を行なっている。次に、本格調査(3.11の2年後以降)により、福島での状況を調べ、先行調査との比較より、福島原発事故による曝露分を割り出す。<br />● 先行調査では30万人を調査(悪性ないし悪性疑いが115名)、本格調査では27万人を調査(悪性ないし悪性疑いが57名。14歳以下は14名。2016年3月31日現在)。<br />● 現在の公式見解:多発は認めているが放射線由来であるかについてはまだ調査中としている。<br />● 先行調査では年齢に応じて発症数が高くなっており、通常のがんの傾向と同じ。また、先行調査では福島と他県において差は無かった。<br />● 本格調査では発症数と年齢の間に明らさまな関係は見られない。発症数は先行調査時より少ないが、先行調査でのがん発症数が調査対象者の年齢分のがん発生要因の蓄積によるものだと考え、本格調査では先行調査以降分での蓄積だと考えれば、少ない事自体は大雑把には妥当。本当に蓄積年数に応じているのか、そもそも蓄積年数だと思って処理をすべきなのか、といったことは検証し調べる必要がある。<br />● 本格調査の結果において、対象者の曝露状況などを鑑みて結果を解析する必要がある。<br />● 健康調査が良いことなのかに対する疑問の声が存在する。甲状腺における乳頭がんはそもそも非常に進行が遅く、命の危険が少ないことから、調査によって今までは発見されないような早期の段階で見つけ、切除することがよいかどうかには、考える余地がある。なぜなら、甲状腺は成長等に欠かせない甲状腺ホルモンを分泌する器官であるため、幼少期に取ってしまうことで弊害があり得る。甲状腺ホルモンを補う錠剤を飲むことでカバーできるが、実質、ティーンエイジャーに錠剤を毎日飲むことを徹底して指導するのは難しいという現場の声がある。</p> <p><strong>参加者の疑問</strong></p> <p style="padding-left: 30px;">● 診断の精度は?1ミリ単位でサイズを分けるのは妥当かどうか。結節と膿胞で形が違うがどのようにサイズを決定するか?<br />● 先行調査と本格調査において診断技術の進歩からくる影響は?<br />● 健康調査の是非について、がんの専門家の意見はどのぐらい反映されているのか?<br />● チェルノブイリの子供の甲状腺がんではRETという遺伝子の異常が多かった。福島ではどうなのか?<br />● 調査対象者の3.11後の移動などのデータはあるのかどうか。</p> <p><span style="font-weight: bolder;">研究会の様子・(文責者の個人的な(感想</span></p> <p style="padding-left: 30px;">● 女性の参加者の多い研究会で、自己紹介時には「女性の生き方ガイド」の話などでも盛り上がりました。 ● 病理診断で実際にどのようなことからがんを判定しているのかをわかりやすく提示していただきました。</p> <p style="text-align: right;">(文責:廣田)</p> </td> </tr> </tbody> </table> <div> </div> <p style="text-align: center;">※ 間違いがある場合や、ご意見・ご感想がある場合には、<a href="https://www.secure-cloud.jp/sf/1469640914VQwGkRDZ" target="_blank">お問い合わせ</a>、もしくは<a href="https://www.facebook.com/events/1740734299473054/permalink/1743390419207442/" target="_blank">Facebook</a>のコメント欄にてご一報ください</p> <p> </p></div> 2016年度第3回定期勉強会報告 2016-11-22T16:11:46+09:00 2016-11-22T16:11:46+09:00 https://www.jein.jp/networkofcs/information-list/regularly-workshop/workshop-report/1432-workshop3.html JEin事務局 <div class="feed-description"><p><a href="networkofcs.html"><img src="images/networkofcs/networkofcs-title2.png" border="0" style="margin-right: auto; margin-left: auto; display: block;" /></a></p> <div> </div> <p style="text-align: center;"><span style="font-size: 16px;"><strong><span style="font-size: 16px;"><strong>2016年度</strong></span>第3回定期勉強会報告</strong></span></p> <table style="width: 100%;" border="0" align="center"> <tbody> <tr> <td valign="top"> <div>1.概 要</div> <div> </div> <div style="padding-left: 30px;">日  時:2016年8月17日(水) 14:00~17:00</div> <div style="padding-left: 30px;">場  所:<a href="npo-introduction/organization-information.html">NPO法人あいんしゅたいん事務所</a></div> <div style="padding-left: 30px;">話題提供:田中司朗(京都大学)<br />     川上博人(元JNES)<br />     牧英夫(元日立製作所)<br />話  題:疫学の基礎<br />     低線量域の発がんリスクの統計的有意性について - 年齢依存性の取扱いの重要性 -<br />テキスト:放射線と免疫・ストレス・がん(医療科学社)第6章<br />当日資料:田中氏資料 <a href="images/networkofcs/tanaka_1.pdf" target="_blank"><img src="images/support/pdficon.png" border="0" width="26" height="26" style="vertical-align: middle; border: 0px;" /></a><br />     川上氏資料 <a href="images/networkofcs/kawakami_1.pdf" target="_blank"><img src="images/support/pdficon.png" border="0" width="26" height="26" style="vertical-align: middle; border: 0px;" /></a> <a href="images/networkofcs/kawakami_2.pdf" target="_blank"><img src="images/support/pdficon.png" border="0" width="26" height="26" style="vertical-align: middle; border: 0px;" /></a></div> </td> <td><img src="images/networkofcs/regularly-workshop3.jpg" border="0" width="200" style="border: 0px currentColor; margin-right: 50px; margin-left: 15px; float: right;" /></td> </tr> </tbody> </table> <p>2.話題者略歴</p> <p style="padding-left: 26px;"><strong>田中司朗</strong></p> <p style="padding-left: 50px;">2003年3月、東京大学医学部健康科学看護学科卒業。 2008年3月、東京大学大学院医学系研究科健康科学看護学専攻にて保健学博士を取得。 京都大学医学部付属病院探索医療センター検証部にて特任助教、京都大学大学院医学研究科社会健康医学専攻薬剤疫学分野での特定講師などを経て、2015年4月より、同分野にて准教授。臨床試験、疫学研究における統計関連業務が専門。</p> <p style="padding-left: 26px;"><strong>川上博人</strong></p> <p style="padding-left: 50px;">1969年3月、東京大学原子力工学科修士課程終了。<br />東芝原子力事業部に入社し高速増殖炉「もんじゅ」の研究開発、設計、建設に30年間従事。のち、電力システム社において、経営変革業務に従事し、東芝を退社。<br />退社後、原子力発電技術機構の理事として軽水炉の主要機器の実証試験を担当。<br />2003年には財団法人の統廃合により独立行政法人原子力安全基盤機構(JNES)に移籍し、特任参事として放射性廃棄物の規制研究部門立ち上げに従事。2011年には福島現地対策本部等にてサイト外の汚染状況調査等を実施。2012年3月、JNESを退社。</p> <p style="padding-left: 26px;"><strong>牧英夫</strong></p> <p style="padding-left: 50px;">九州大学工学部機械工学科卒業。<br />東京大学にて工学博士取得。<br />日立製作所に入社。技師長を経て退職。<br />専門分野は核燃料工学、原子炉工学、技術者倫理。日本原子力学会フェロー、日本機械学会名誉員。</p> <p>3.話題概要</p> <p style="padding-left: 26px;"><strong>放射線疫学の統計学的論(田中氏)</strong></p> <p style="padding-left: 50px;">疫学研究において、原因(例えば放射線被ばく)と結果(例えばがんの発生)の関係を、第三の因子がゆがめる現象を交絡と呼んでいる。がん疫学研究においては、交絡因子として年齢、性別、喫煙などの生活習慣、既往歴などが重要である。これらのデータを収集し、回帰モデルなどの適切な統計手法を用いてその影響を排除しなければ、過剰相対リスクなどの推定値に偏りが生じる。本演題では、交絡という現象はどのようなものか、回帰モデルによる交絡調整の考え方や関数関係のモデリングについて解説を行う。</p> <p style="padding-left: 26px;"><strong>低線量域の発がんリスクの統計的有意性についてー年齢依存性の取扱いの重要性(川上氏)</strong></p> <p style="padding-left: 50px;">低線量域の発がんリスクについては、これまで多くのコホート研究や疫学調査の成果 が報告されているが、未だ明確な合意形成に至っていない。これまでの海外と国内のコホート研究の調査対象者を合計すると、約50万人、観察人年は約1,100万人年に達す るが、低線量域の過剰相対リスクについて、国内外で正反対の結論が出されている。これは何故なのか?疫学的な困難さもさることながら、発がんリスクの年齢依存性の取扱いに関する統計的な手法自体に起因する問題があるのではないかと思い、この点に関する調査検討を行った。 この調査結果の概要について話題提供し、低線量域の発がんリスクの不確かさのプ ークスルー技術について、皆さんと意見交換する。</p> <p style="padding-left: 26px;"><strong>議論したいこと(牧氏)</strong></p> <p style="padding-left: 50px;">川上博人氏が行った解析結果「低線量域の発がんリスクの統計的有意性について―年齢依存性の取り扱いの重要性―」は、放射線が人体に与える影響を理解するうえで重要と考える。この度、NPO法人あいんしゅたいんの皆様方と科学的に公平な視点から議論ができる機会を得たため、参加させていただく。<br />原子力の平和利用は人類社会の持続可能性維持のために必要だと考えるが、それを推進のためには社会の理解と合意が不可欠である。その意味でJST事業「市民と科学者を結ぶ放射線コミュミケ―ションのネットワーク基盤構築」は重要かつ画期的である。その内容や方法について勉強させていただき、議論できれば幸いである。</p> <p>4.議事録</p> <table style="width: 95%;" border="1" cellpadding="15" align="center"> <tbody> <tr> <td> <p><strong>疫学の基礎(田中氏)</strong></p> <p style="padding-left: 30px;">● 疫学は人間集団を対象とした社会医学。健康政策の科学的根拠の提示、医薬品の評価が目的。<br />● 調査目的に応じて対象集団、比較対象となるコントロールを設定して疾病のリスクを知る。<br />● 疾病の存在の指標:有病率、発生の指標:リスク、発生率(人年法)、生存曲線。比較する際は比や差で。<br />● 調査方法:コホート研究(現在から対象を観察、前向きの調査)、ケースコントロール研究(現在から過去にさかのぼって調査)、断面研究(ある時点での調査)、ランダム化臨床試験(薬の治験などで実施。調査対象者の性質をそろえられるなど利点がある。実験に近い。)<br />● ケースコントロール研究:オッズ比などで調べる。例えば、被ばくとある疾病に関連があるかを調べたい場合には、オッズとは被ばくにあった人と被ばくにあわなかった人の比(被ばく者/非被ばく者)。これを疾病になった人の集団(ケース)と、なってない人の集団(コントロール)とで更に比較したものが、オッズ比。疾病と被ばくに関連があった場合、疾病になった人の集団の方が、オッズが高く、オッズ比も大きくなるはずである。通常、コントロールはケースの1~5倍の人数が確保される。チェルノブイリ事故由来のベラルーシとロシアの甲状腺がんの研究はこの方法。<br />● 回帰モデル:オッズ比やリスク差、リスク比などの疾病の指標が、調べたい要因の強弱によって(被ばくとの関連なら、被ばく量によって)どのように変化するかを示すモデル。疾病のメカニズムまで突き止めることは難しいため、比較的簡単な数式で関係をモデル化する。一次関数、二次関数、他にも、何かしらの変換をすると一次関数になるような関数などを用いる。放射線関係の研究では防護で使用されるLNTモデルの存在により、一次関数がよく使われるという経緯がある。<br />● 性別、治療期間、病気の進行具合などを0と1の変数の組み合わせとすることもある。例えばBMIでやせ、普通、肥満と分類する時には、やせ=(0,0)、普通(1,0)、肥満=(0,1)といったし、0か1しか取らない変数2つの組み合わせと考えて解析することもある。このような変数をダミー変数と呼ぶ。<br />● 常に交絡の問題がつきまとう(関連を調べたい要因とそれ以外の要因が見分けがつかない)。例えば、がんなど年齢につよく依存する疾病であれば、年齢ごとに分けて解析したり、年齢の影響を取り除くような解析をしなければ、年齢以外の要因による影響を見極めることができない。</p> <p><strong>低線量域の発がんの統計的有位性について(川上氏)</strong></p> <p style="padding-left: 30px;">● 低線量域の発がんリスクを知る手がかりとして、広島、長崎の被ばく者のデータ以外にも、放射線業務従事者のデータが存在する。欧米ではINWORKS,日本では放影協などの結果がある。<br />● 公式見解として、INWORKSではがん(種類は問わず全てのがんを対象とする)のリスクが上昇する(1+0.48×(浴びた放射線量[Gy])倍)としているが、日本の放影協ではリスク上昇は見られないとしている。→違いはどこから来ているのか?</p> <p style="padding-left: 60px;">● 両者で使っている解析ソフトは同じAMFITというもの。INWORKSの方が、放射線以外の要因について変数が多い。もちろん、INWORKSの対象者は欧米人男女、日本のものは日本人男性という集団の違いはある。</p> <p style="padding-left: 30px;">● 川上氏らによる検証内容1</p> <p style="padding-left: 60px;">● 検証したいこと:解析方法は正しいか?放射線の影響と年齢の影響をきちんと見分けることは可能なのか?(がんという疾患には年齢の影響が大きいため、低線量の影響を見るためには、年齢の影響をきちんと見分けられることが重要)。<br />● 検証内容1:解析ソフト内で解析に用いられている数式の妥当性を検証した。まず、INWORKSで調べられている人たちと似たような年齢構成の集団を<span>仮定し</span>、仮に年齢だけでがんの死亡率が決まる場合の仮想データを作った。これを解析ソフトAMFITで解析し、年齢による影響と被ばくによる影響がどれぐらいあるという結果が出るのかを確認した。<br />● 結果1:AMFITはあくまでも被ばくと年齢には関係がないとして解析するため、年齢と被ばく線量との間に関係性がある場合には死亡率に影響しているのがどちらなのかは分けることができない。被ばく線量と年齢の相関を小さくした場合(被ばく線量の一部には年齢と関係をもたせた場合)もAMIFTではやはり見分けることができない。<br />● 検証内容2:広島、長崎の被爆データを使って、年齢区分を一部細かくして再度解析を行なった。また、高線量域と低線量域(125mGy以下)を分けての解析も行なってみた。<br />● 結果2:0Gyから高線量域まで全て含めた場合、解析時の年齢区分を変えてみても公式の結果と違いは無かった。一方、低線量域のみの場合、年齢区分がこれまでの解析と同じであっても、今回行なった詳細な区分であっても、統計的に有位な値を出すことはできなかった上に、両者では中心値はずれている。→解析に用いている関数が現実を反映しきっていない部分があるのではないか。(そのせいで、高線量域を含む場合と低線量域だけの場合とで結果が違うのではないか)</p> <p style="padding-left: 30px;">● 検証した上での主張</p> <p style="padding-left: 60px;">● 低線量域での影響を知るためには、INWORKSや放影協などの解析結果だけでなく、その元となった解析用データ、年齢と累積被ばく量の関係や、その他のがんの影響となり得る指数との関係がわかる状態でデータを開示をしてほしい。<br />● 開示されたデータをもとに、”累積被ばく線量”の意味や、年齢区分などを反映できるよう、一から数式を立てる必要があるのではないか。そのためにはデータの共有と国際的な協力が必要。</p> <p style="padding-left: 30px;">● 注意点</p> <p style="padding-left: 60px;">● 累積被ばく線量と一口に言っても、放射線作業従事者と原爆被ばく者では意味が違う。(長期にわたって少しずつ浴びたか、比較的短時間で浴びたか)</p> <p><strong>講師、参加者より寄せられた感想</strong></p> <p style="padding-left: 30px;">● 川上氏の論文の参考文献2.に示されている<a href="images/networkofcs/rea_report.pdf">放影協の報告書</a>は、原子力規制委員会からの委託事業の成果であり、各種委員会で審議されオーソライズされて作成され、公開されたものであることが分かります。研究会で議論となった「低線量における年齢依存性」の解明のために必要なオリジナルデータの開示は、データの性格上、簡単ではないように思われます。<br />● 上記報告書を出発点として、「低線量における年齢依存性」の研究を次の段階の研究事業として提案するのはどうでしょうか。まず、放影協へそのような説明の機会ができることが重要だと思います。まずは放影協との共同研究提案という形で・・・。上記報告書に記載されている「放射線疫学調査 評価委員会」のメンバーの何方かに仲介をお願いするのも効果的ではないでしょうか。放影協が興味を示した場合、提案側では当然このテーマに真剣に取り組む方が必要です。川上さんはベストを尽くされると思いますが、若手研究者の参加が必要です。<br />● 研究のターゲットは日本のデータに基ずく「低線量における年齢効果」を織り込んだアルゴリズムの提案だと思いますが、国際的な場での発表が重要です。これを踏まえて次の段階でINWORKS解析メンバーと議論したいものです。INWORKSのオリジナルデータの開示、「0.48/Gy」への挑戦に繋がることを願っています。</p> <p style="text-align: right;">(文責:廣田)</p> </td> </tr> </tbody> </table> <div> </div> <p style="text-align: center;">※ 間違いがある場合や、ご意見・ご感想がある場合には、<a href="https://www.secure-cloud.jp/sf/1469640914VQwGkRDZ" target="_blank">お問い合わせ</a>、もしくは<a href="https://www.facebook.com/events/1740734299473054/permalink/1743390419207442/" target="_blank">Facebook</a>のコメント欄にてご一報ください</p> <p> </p></div> <div class="feed-description"><p><a href="networkofcs.html"><img src="images/networkofcs/networkofcs-title2.png" border="0" style="margin-right: auto; margin-left: auto; display: block;" /></a></p> <div> </div> <p style="text-align: center;"><span style="font-size: 16px;"><strong><span style="font-size: 16px;"><strong>2016年度</strong></span>第3回定期勉強会報告</strong></span></p> <table style="width: 100%;" border="0" align="center"> <tbody> <tr> <td valign="top"> <div>1.概 要</div> <div> </div> <div style="padding-left: 30px;">日  時:2016年8月17日(水) 14:00~17:00</div> <div style="padding-left: 30px;">場  所:<a href="npo-introduction/organization-information.html">NPO法人あいんしゅたいん事務所</a></div> <div style="padding-left: 30px;">話題提供:田中司朗(京都大学)<br />     川上博人(元JNES)<br />     牧英夫(元日立製作所)<br />話  題:疫学の基礎<br />     低線量域の発がんリスクの統計的有意性について - 年齢依存性の取扱いの重要性 -<br />テキスト:放射線と免疫・ストレス・がん(医療科学社)第6章<br />当日資料:田中氏資料 <a href="images/networkofcs/tanaka_1.pdf" target="_blank"><img src="images/support/pdficon.png" border="0" width="26" height="26" style="vertical-align: middle; border: 0px;" /></a><br />     川上氏資料 <a href="images/networkofcs/kawakami_1.pdf" target="_blank"><img src="images/support/pdficon.png" border="0" width="26" height="26" style="vertical-align: middle; border: 0px;" /></a> <a href="images/networkofcs/kawakami_2.pdf" target="_blank"><img src="images/support/pdficon.png" border="0" width="26" height="26" style="vertical-align: middle; border: 0px;" /></a></div> </td> <td><img src="images/networkofcs/regularly-workshop3.jpg" border="0" width="200" style="border: 0px currentColor; margin-right: 50px; margin-left: 15px; float: right;" /></td> </tr> </tbody> </table> <p>2.話題者略歴</p> <p style="padding-left: 26px;"><strong>田中司朗</strong></p> <p style="padding-left: 50px;">2003年3月、東京大学医学部健康科学看護学科卒業。 2008年3月、東京大学大学院医学系研究科健康科学看護学専攻にて保健学博士を取得。 京都大学医学部付属病院探索医療センター検証部にて特任助教、京都大学大学院医学研究科社会健康医学専攻薬剤疫学分野での特定講師などを経て、2015年4月より、同分野にて准教授。臨床試験、疫学研究における統計関連業務が専門。</p> <p style="padding-left: 26px;"><strong>川上博人</strong></p> <p style="padding-left: 50px;">1969年3月、東京大学原子力工学科修士課程終了。<br />東芝原子力事業部に入社し高速増殖炉「もんじゅ」の研究開発、設計、建設に30年間従事。のち、電力システム社において、経営変革業務に従事し、東芝を退社。<br />退社後、原子力発電技術機構の理事として軽水炉の主要機器の実証試験を担当。<br />2003年には財団法人の統廃合により独立行政法人原子力安全基盤機構(JNES)に移籍し、特任参事として放射性廃棄物の規制研究部門立ち上げに従事。2011年には福島現地対策本部等にてサイト外の汚染状況調査等を実施。2012年3月、JNESを退社。</p> <p style="padding-left: 26px;"><strong>牧英夫</strong></p> <p style="padding-left: 50px;">九州大学工学部機械工学科卒業。<br />東京大学にて工学博士取得。<br />日立製作所に入社。技師長を経て退職。<br />専門分野は核燃料工学、原子炉工学、技術者倫理。日本原子力学会フェロー、日本機械学会名誉員。</p> <p>3.話題概要</p> <p style="padding-left: 26px;"><strong>放射線疫学の統計学的論(田中氏)</strong></p> <p style="padding-left: 50px;">疫学研究において、原因(例えば放射線被ばく)と結果(例えばがんの発生)の関係を、第三の因子がゆがめる現象を交絡と呼んでいる。がん疫学研究においては、交絡因子として年齢、性別、喫煙などの生活習慣、既往歴などが重要である。これらのデータを収集し、回帰モデルなどの適切な統計手法を用いてその影響を排除しなければ、過剰相対リスクなどの推定値に偏りが生じる。本演題では、交絡という現象はどのようなものか、回帰モデルによる交絡調整の考え方や関数関係のモデリングについて解説を行う。</p> <p style="padding-left: 26px;"><strong>低線量域の発がんリスクの統計的有意性についてー年齢依存性の取扱いの重要性(川上氏)</strong></p> <p style="padding-left: 50px;">低線量域の発がんリスクについては、これまで多くのコホート研究や疫学調査の成果 が報告されているが、未だ明確な合意形成に至っていない。これまでの海外と国内のコホート研究の調査対象者を合計すると、約50万人、観察人年は約1,100万人年に達す るが、低線量域の過剰相対リスクについて、国内外で正反対の結論が出されている。これは何故なのか?疫学的な困難さもさることながら、発がんリスクの年齢依存性の取扱いに関する統計的な手法自体に起因する問題があるのではないかと思い、この点に関する調査検討を行った。 この調査結果の概要について話題提供し、低線量域の発がんリスクの不確かさのプ ークスルー技術について、皆さんと意見交換する。</p> <p style="padding-left: 26px;"><strong>議論したいこと(牧氏)</strong></p> <p style="padding-left: 50px;">川上博人氏が行った解析結果「低線量域の発がんリスクの統計的有意性について―年齢依存性の取り扱いの重要性―」は、放射線が人体に与える影響を理解するうえで重要と考える。この度、NPO法人あいんしゅたいんの皆様方と科学的に公平な視点から議論ができる機会を得たため、参加させていただく。<br />原子力の平和利用は人類社会の持続可能性維持のために必要だと考えるが、それを推進のためには社会の理解と合意が不可欠である。その意味でJST事業「市民と科学者を結ぶ放射線コミュミケ―ションのネットワーク基盤構築」は重要かつ画期的である。その内容や方法について勉強させていただき、議論できれば幸いである。</p> <p>4.議事録</p> <table style="width: 95%;" border="1" cellpadding="15" align="center"> <tbody> <tr> <td> <p><strong>疫学の基礎(田中氏)</strong></p> <p style="padding-left: 30px;">● 疫学は人間集団を対象とした社会医学。健康政策の科学的根拠の提示、医薬品の評価が目的。<br />● 調査目的に応じて対象集団、比較対象となるコントロールを設定して疾病のリスクを知る。<br />● 疾病の存在の指標:有病率、発生の指標:リスク、発生率(人年法)、生存曲線。比較する際は比や差で。<br />● 調査方法:コホート研究(現在から対象を観察、前向きの調査)、ケースコントロール研究(現在から過去にさかのぼって調査)、断面研究(ある時点での調査)、ランダム化臨床試験(薬の治験などで実施。調査対象者の性質をそろえられるなど利点がある。実験に近い。)<br />● ケースコントロール研究:オッズ比などで調べる。例えば、被ばくとある疾病に関連があるかを調べたい場合には、オッズとは被ばくにあった人と被ばくにあわなかった人の比(被ばく者/非被ばく者)。これを疾病になった人の集団(ケース)と、なってない人の集団(コントロール)とで更に比較したものが、オッズ比。疾病と被ばくに関連があった場合、疾病になった人の集団の方が、オッズが高く、オッズ比も大きくなるはずである。通常、コントロールはケースの1~5倍の人数が確保される。チェルノブイリ事故由来のベラルーシとロシアの甲状腺がんの研究はこの方法。<br />● 回帰モデル:オッズ比やリスク差、リスク比などの疾病の指標が、調べたい要因の強弱によって(被ばくとの関連なら、被ばく量によって)どのように変化するかを示すモデル。疾病のメカニズムまで突き止めることは難しいため、比較的簡単な数式で関係をモデル化する。一次関数、二次関数、他にも、何かしらの変換をすると一次関数になるような関数などを用いる。放射線関係の研究では防護で使用されるLNTモデルの存在により、一次関数がよく使われるという経緯がある。<br />● 性別、治療期間、病気の進行具合などを0と1の変数の組み合わせとすることもある。例えばBMIでやせ、普通、肥満と分類する時には、やせ=(0,0)、普通(1,0)、肥満=(0,1)といったし、0か1しか取らない変数2つの組み合わせと考えて解析することもある。このような変数をダミー変数と呼ぶ。<br />● 常に交絡の問題がつきまとう(関連を調べたい要因とそれ以外の要因が見分けがつかない)。例えば、がんなど年齢につよく依存する疾病であれば、年齢ごとに分けて解析したり、年齢の影響を取り除くような解析をしなければ、年齢以外の要因による影響を見極めることができない。</p> <p><strong>低線量域の発がんの統計的有位性について(川上氏)</strong></p> <p style="padding-left: 30px;">● 低線量域の発がんリスクを知る手がかりとして、広島、長崎の被ばく者のデータ以外にも、放射線業務従事者のデータが存在する。欧米ではINWORKS,日本では放影協などの結果がある。<br />● 公式見解として、INWORKSではがん(種類は問わず全てのがんを対象とする)のリスクが上昇する(1+0.48×(浴びた放射線量[Gy])倍)としているが、日本の放影協ではリスク上昇は見られないとしている。→違いはどこから来ているのか?</p> <p style="padding-left: 60px;">● 両者で使っている解析ソフトは同じAMFITというもの。INWORKSの方が、放射線以外の要因について変数が多い。もちろん、INWORKSの対象者は欧米人男女、日本のものは日本人男性という集団の違いはある。</p> <p style="padding-left: 30px;">● 川上氏らによる検証内容1</p> <p style="padding-left: 60px;">● 検証したいこと:解析方法は正しいか?放射線の影響と年齢の影響をきちんと見分けることは可能なのか?(がんという疾患には年齢の影響が大きいため、低線量の影響を見るためには、年齢の影響をきちんと見分けられることが重要)。<br />● 検証内容1:解析ソフト内で解析に用いられている数式の妥当性を検証した。まず、INWORKSで調べられている人たちと似たような年齢構成の集団を<span>仮定し</span>、仮に年齢だけでがんの死亡率が決まる場合の仮想データを作った。これを解析ソフトAMFITで解析し、年齢による影響と被ばくによる影響がどれぐらいあるという結果が出るのかを確認した。<br />● 結果1:AMFITはあくまでも被ばくと年齢には関係がないとして解析するため、年齢と被ばく線量との間に関係性がある場合には死亡率に影響しているのがどちらなのかは分けることができない。被ばく線量と年齢の相関を小さくした場合(被ばく線量の一部には年齢と関係をもたせた場合)もAMIFTではやはり見分けることができない。<br />● 検証内容2:広島、長崎の被爆データを使って、年齢区分を一部細かくして再度解析を行なった。また、高線量域と低線量域(125mGy以下)を分けての解析も行なってみた。<br />● 結果2:0Gyから高線量域まで全て含めた場合、解析時の年齢区分を変えてみても公式の結果と違いは無かった。一方、低線量域のみの場合、年齢区分がこれまでの解析と同じであっても、今回行なった詳細な区分であっても、統計的に有位な値を出すことはできなかった上に、両者では中心値はずれている。→解析に用いている関数が現実を反映しきっていない部分があるのではないか。(そのせいで、高線量域を含む場合と低線量域だけの場合とで結果が違うのではないか)</p> <p style="padding-left: 30px;">● 検証した上での主張</p> <p style="padding-left: 60px;">● 低線量域での影響を知るためには、INWORKSや放影協などの解析結果だけでなく、その元となった解析用データ、年齢と累積被ばく量の関係や、その他のがんの影響となり得る指数との関係がわかる状態でデータを開示をしてほしい。<br />● 開示されたデータをもとに、”累積被ばく線量”の意味や、年齢区分などを反映できるよう、一から数式を立てる必要があるのではないか。そのためにはデータの共有と国際的な協力が必要。</p> <p style="padding-left: 30px;">● 注意点</p> <p style="padding-left: 60px;">● 累積被ばく線量と一口に言っても、放射線作業従事者と原爆被ばく者では意味が違う。(長期にわたって少しずつ浴びたか、比較的短時間で浴びたか)</p> <p><strong>講師、参加者より寄せられた感想</strong></p> <p style="padding-left: 30px;">● 川上氏の論文の参考文献2.に示されている<a href="images/networkofcs/rea_report.pdf">放影協の報告書</a>は、原子力規制委員会からの委託事業の成果であり、各種委員会で審議されオーソライズされて作成され、公開されたものであることが分かります。研究会で議論となった「低線量における年齢依存性」の解明のために必要なオリジナルデータの開示は、データの性格上、簡単ではないように思われます。<br />● 上記報告書を出発点として、「低線量における年齢依存性」の研究を次の段階の研究事業として提案するのはどうでしょうか。まず、放影協へそのような説明の機会ができることが重要だと思います。まずは放影協との共同研究提案という形で・・・。上記報告書に記載されている「放射線疫学調査 評価委員会」のメンバーの何方かに仲介をお願いするのも効果的ではないでしょうか。放影協が興味を示した場合、提案側では当然このテーマに真剣に取り組む方が必要です。川上さんはベストを尽くされると思いますが、若手研究者の参加が必要です。<br />● 研究のターゲットは日本のデータに基ずく「低線量における年齢効果」を織り込んだアルゴリズムの提案だと思いますが、国際的な場での発表が重要です。これを踏まえて次の段階でINWORKS解析メンバーと議論したいものです。INWORKSのオリジナルデータの開示、「0.48/Gy」への挑戦に繋がることを願っています。</p> <p style="text-align: right;">(文責:廣田)</p> </td> </tr> </tbody> </table> <div> </div> <p style="text-align: center;">※ 間違いがある場合や、ご意見・ご感想がある場合には、<a href="https://www.secure-cloud.jp/sf/1469640914VQwGkRDZ" target="_blank">お問い合わせ</a>、もしくは<a href="https://www.facebook.com/events/1740734299473054/permalink/1743390419207442/" target="_blank">Facebook</a>のコメント欄にてご一報ください</p> <p> </p></div> 2016年度第4回定期勉強会報告 2016-11-22T16:12:37+09:00 2016-11-22T16:12:37+09:00 https://www.jein.jp/networkofcs/information-list/regularly-workshop/workshop-report/1433-workshop4.html JEin事務局 <div class="feed-description"><p><a href="networkofcs.html"><img src="images/networkofcs/networkofcs-title2.png" border="0" style="margin-right: auto; margin-left: auto; display: block;" /></a></p> <div> </div> <p style="text-align: center;"><span style="font-size: 16px;"><strong><span style="font-size: 16px;"><strong>2016年度</strong></span>第4回定期勉強会報告</strong></span></p> <p>1.概 要</p> <p style="padding-left: 26px;">日  時:2016年8月20日(木) 18:00~20:00<br />場  所:<a href="npo-introduction/organization-information.html">NPO法人あいんしゅたいん事務所</a><br />話題提供:真鍋勇一郎(大阪大学)<br />     高垣雅緒(藍野大学・ルイパスツール・京都大学)<br />話  題:福島国際会議の報告<br />当日資料:真鍋氏資料 <a href="images/networkofcs/manabe_161020.pdf" target="_blank"><img src="images/support/pdficon.png" border="0" width="26" height="26" style="vertical-align: middle; border: 0px;" /></a></p> <p>2.話題概要(高垣雅緒氏)</p> <p style="padding-left: 26px;">原子力と原子核研究は、とりわけビキニ第五福竜丸以降違った方向に進展してい るように思われる。湯川秀樹の言説からもその後の原子核研究は原子力研究に は我関せずといった様相を呈していた。そもそも原子力研究は原子核研究から 出てきたはずなのにシュレディンガーやアインシュタインは既に原子力研究に 危機感を持っていた。ところが科学がポリティクスにも利用されるなど異分野 交流を余儀なくされてしまったことで原子力研究が[科学]から乖離し、応用 工学としての原子力工学が政治、経済、社会などといった治政の枠組みに組み 込まれていった感は拭えない。<br /> 同じような構図が低線量域での健康被害の専門家の意見の乖離に見ることがで きる。彼らの意見は両極端でその中間層がサイレントな感じでいるのは何が原 因なのか。つまり原子力研究者の見解が分かれていて被災者の不安に対峙でき ずに右往左往させてしまった。原子力研究者への独自のインタヴューからもリ スク感覚の乖離はポリティクスのみでは説明できそうにない。科学の真理はひ とつだとすればどちらかが[嘘]ということになる。科学における[嘘]とは 何なのか。研究者間の交流不足なのか。あるいはネットワークが破綻していた のか。報告会では福島小児甲状腺癌に関する最近のリスク分析を例に科学にお ける[嘘]とはなんなのか考えることで原子力アカデミズムの再考に繋げたい。</p> <p>3.議事録</p> <table style="width: 95%;" border="1" cellpadding="15" align="center"> <tbody> <tr> <td> <p style="text-align: center;"><strong>真鍋勇一郎氏</strong></p> <p><strong>放射線と甲状腺癌の関係にまつわる歴史</strong></p> <p style="padding-left: 30px;">● 広島長崎での外部被ばくによる甲状腺癌のデータ(1.5倍/Gy, ~1998年までのデータ)。ただし、広島長崎の対象者数では、100mGy以下の甲状腺癌の影響は調べられない。<br />● チェルノブイリ事故</p> <p style="padding-left: 60px;">● 1990年より少し前から甲状腺癌増加の声が上がる。<br />● 1990年前後より、日本の笹川財団を含め、世界各国からの寄付によりベラルーシやウクライナなどで甲状腺癌のスクリーニングが行なわれるようになった。<br />● 1996年頃に事故後に生まれた子供たちでの発症率が下がったとして、事故との関連が指摘。<br />● 2000年頃、スクリーニングのデータより線量との関係が認識された。(但し、明確にデータ元となったのはある一地域で事故後に生まれた約10000人と事故前に生まれた約10000人を調べたもの。対して、福島でのスクリーニング対象者の数は約30万人。)<br />● 20年たった今でも追跡調査が行なわれている(ウクライナ系アメリカ人によるコホート)が、受診率は当初より1パーセント程度で、現在ではその半分以下。20年後においても、放射線による発症のリスクが残っているとされているが、95パーセント信頼区間では有意性は出ていない。また、この調査での甲状腺線量推定に不確定要素も多く、3~4倍程度、被ばく線量を過大評価している可能性がある。</p> <p><strong>スクリーニング効果について</strong></p> <p style="padding-left: 30px;">● がん検診受診率とがん患者登録数が比例してあがっている韓国での例。<br />● チェルノブイリのデータでも、スクリーニングが始まった1990年頃に症例数が増えていることから、スクリーニング効果の可能性が指摘されている。</p> <p><strong>国際会議において福島に対して出されていた意見</strong></p> <p style="padding-left: 30px;">● チェルノブイリと同じく、事故後に生まれた人もスクリーニングの調査の対象にすべきではないか。<br />● チェルノブイリと同じく、甲状腺乳頭がんのバイオマーカーを調べるべきではないか(勉強会での意見:甲状腺癌のバイオマーカー(遺伝子変異)はそれほど特異的ではないのではないか?また、乳頭癌のバイオマーカーをとったとしてもそれが放射線由来かどうかを調べるのには役に立たないのではないか?)<br />● 現場医師たちの疲労が激しい。<br />● 影響がでる可能性はないとはいいきれず、長期的に見て行く必要がある。</p> <p style="text-align: center;"><strong>高垣雅緒氏</strong></p> <p style="padding-left: 30px;">● 文化人類学者として福島の住民や現地の医師、ワイズ博士らと共同研究を現在行っている。<br />● 文化人類学者として福島に入り、被災者の心理面をサポートしている者としての福島国際会議への感想</p> <p style="padding-left: 60px;">● 政治的な質問と政治的な報告書という印象。<br />● 安全と危険どちらなのか、住民が右往左往している中で、責任が問われていない。<br />● 万一増えていた場合の対策が必要なのではないのか。<br />● スクリーニングについて</p> <p style="padding-left: 90px;">● 過剰診断、スクリーニング効果の説明がよくなされていた。<br />● 韓国全土で、検診を受けている世代でのガン診断者の人の数が増えている。<br />● 甲状腺癌の住民全員へのサーベイランスは社会医療。住民へのサービスにあたる。エビデンスベースの科学的な医療という観点ではサーベイランスによる甲状腺癌の早期発見はそのがんによる死亡率の向上には役立たない(そもそも罹患しても死亡率の低いがんであるから。)<br />● 今後、スクリーニング調査の目的を明確にしていく必要がある。住民のため?疫学のため?防護のため?また目的や意義、また調査の結果発見された場合にどのような行動をとるべきかなどについて、住民としっかりとしたコミュニケーションを行なう必要がある。</p> <p style="padding-left: 30px;">● 科学と政治の関係</p> <p style="padding-left: 60px;">● 原子力学会と原子核学会の分離。はじめは湯川博士が原子力に関する委員である時期もあったが、原子炉導入の際に自国での基礎研究を放棄して技術を輸入することが決定した時点でたもとをわかつ。それが発端となって、現在では両者にまったく交流がない。<br />● 脳腫瘍へのホウ素中性子捕捉治療には原子炉の稼働が必須であり、患者が待っている状態だが、京大熊取の原子炉の再稼働もなかなか認められなかった。日本では治療効果向上に関する議論ばかりで、治療中止による影響は議論されてこなかった。研究者が自由に発言する場が確保されておらず、批判すると以降の出世がない。<br />● 原子力以外にも科学に政治が入ってしまっているトピックが多数ある。胎児組織の研究利用をめぐる議論、気候変動の問題、HIV研究など。研究費の分配にも政治や宗教の観点が盛り込まれることもあるが、本来研究費の使い道はその分野に詳しく、研究計画の将来性を正しく評価できる研究者によって決められるべき。<br />● 科学の政治へ利用は継続的に起こっており、科学進歩を妨げ、科学進歩がもたらす経済的、社会的そして医学的利益を失わせることにつながる。</p> <p><strong>科学にまつわる嘘とその理由</strong></p> <p style="padding-left: 30px;">● STAP、多機能幹細胞、玄海原子炉のやらせメール事件など。市民は右往左往してしまう。<br />● 問題の原因は、①制度の問題:科学技術がブラックボックス化し、法制度が複雑になって形式のみ満たされていれば認められてしまう、②市民内部に存在する圧力:賛成派、反対派などの二極分化、③専門家にも非専門家にも広がる餅は餅屋という意識:科学分野外の評論家や行政が主張することそのものを批判してしまうことで、専門家によるブラックボックス的なシステムを強化してしまう。場合によっては主張内容が合理的なものでなくても、主張内容への批判と主張する行為そのものへの批判はわけなければ、市民がリスクを語ることができなくなる。④政治と科学技術の関係、⑤法と科学技術の関係、など幾つか存在する。</p> <p><strong>福島での活動</strong></p> <p style="padding-left: 30px;">● 帰村のために必要なこととして。<br />● 一部の地域では未だに他地域よりも線量が高い地域もある。イノシシなどの動物、山菜、きのこなどの食料資源への汚染などもある。そのような中で、地域のコミュニティー自体に、防護文化を根付かせる必要がある。<br />● 線量測定や勉強会などの活動。医療活動の可能性など。</p> <p style="text-align: right;">(文責:廣田)</p> </td> </tr> </tbody> </table> <div> </div> <p style="text-align: center;">※ 間違いがある場合や、ご意見・ご感想がある場合には、<a href="https://www.secure-cloud.jp/sf/1469640914VQwGkRDZ" target="_blank">お問い合わせ</a>、もしくは<a href="https://www.facebook.com/events/1740734299473054/permalink/1743390419207442/" target="_blank">Facebook</a>のコメント欄にてご一報ください</p> <p> </p></div> <div class="feed-description"><p><a href="networkofcs.html"><img src="images/networkofcs/networkofcs-title2.png" border="0" style="margin-right: auto; margin-left: auto; display: block;" /></a></p> <div> </div> <p style="text-align: center;"><span style="font-size: 16px;"><strong><span style="font-size: 16px;"><strong>2016年度</strong></span>第4回定期勉強会報告</strong></span></p> <p>1.概 要</p> <p style="padding-left: 26px;">日  時:2016年8月20日(木) 18:00~20:00<br />場  所:<a href="npo-introduction/organization-information.html">NPO法人あいんしゅたいん事務所</a><br />話題提供:真鍋勇一郎(大阪大学)<br />     高垣雅緒(藍野大学・ルイパスツール・京都大学)<br />話  題:福島国際会議の報告<br />当日資料:真鍋氏資料 <a href="images/networkofcs/manabe_161020.pdf" target="_blank"><img src="images/support/pdficon.png" border="0" width="26" height="26" style="vertical-align: middle; border: 0px;" /></a></p> <p>2.話題概要(高垣雅緒氏)</p> <p style="padding-left: 26px;">原子力と原子核研究は、とりわけビキニ第五福竜丸以降違った方向に進展してい るように思われる。湯川秀樹の言説からもその後の原子核研究は原子力研究に は我関せずといった様相を呈していた。そもそも原子力研究は原子核研究から 出てきたはずなのにシュレディンガーやアインシュタインは既に原子力研究に 危機感を持っていた。ところが科学がポリティクスにも利用されるなど異分野 交流を余儀なくされてしまったことで原子力研究が[科学]から乖離し、応用 工学としての原子力工学が政治、経済、社会などといった治政の枠組みに組み 込まれていった感は拭えない。<br /> 同じような構図が低線量域での健康被害の専門家の意見の乖離に見ることがで きる。彼らの意見は両極端でその中間層がサイレントな感じでいるのは何が原 因なのか。つまり原子力研究者の見解が分かれていて被災者の不安に対峙でき ずに右往左往させてしまった。原子力研究者への独自のインタヴューからもリ スク感覚の乖離はポリティクスのみでは説明できそうにない。科学の真理はひ とつだとすればどちらかが[嘘]ということになる。科学における[嘘]とは 何なのか。研究者間の交流不足なのか。あるいはネットワークが破綻していた のか。報告会では福島小児甲状腺癌に関する最近のリスク分析を例に科学にお ける[嘘]とはなんなのか考えることで原子力アカデミズムの再考に繋げたい。</p> <p>3.議事録</p> <table style="width: 95%;" border="1" cellpadding="15" align="center"> <tbody> <tr> <td> <p style="text-align: center;"><strong>真鍋勇一郎氏</strong></p> <p><strong>放射線と甲状腺癌の関係にまつわる歴史</strong></p> <p style="padding-left: 30px;">● 広島長崎での外部被ばくによる甲状腺癌のデータ(1.5倍/Gy, ~1998年までのデータ)。ただし、広島長崎の対象者数では、100mGy以下の甲状腺癌の影響は調べられない。<br />● チェルノブイリ事故</p> <p style="padding-left: 60px;">● 1990年より少し前から甲状腺癌増加の声が上がる。<br />● 1990年前後より、日本の笹川財団を含め、世界各国からの寄付によりベラルーシやウクライナなどで甲状腺癌のスクリーニングが行なわれるようになった。<br />● 1996年頃に事故後に生まれた子供たちでの発症率が下がったとして、事故との関連が指摘。<br />● 2000年頃、スクリーニングのデータより線量との関係が認識された。(但し、明確にデータ元となったのはある一地域で事故後に生まれた約10000人と事故前に生まれた約10000人を調べたもの。対して、福島でのスクリーニング対象者の数は約30万人。)<br />● 20年たった今でも追跡調査が行なわれている(ウクライナ系アメリカ人によるコホート)が、受診率は当初より1パーセント程度で、現在ではその半分以下。20年後においても、放射線による発症のリスクが残っているとされているが、95パーセント信頼区間では有意性は出ていない。また、この調査での甲状腺線量推定に不確定要素も多く、3~4倍程度、被ばく線量を過大評価している可能性がある。</p> <p><strong>スクリーニング効果について</strong></p> <p style="padding-left: 30px;">● がん検診受診率とがん患者登録数が比例してあがっている韓国での例。<br />● チェルノブイリのデータでも、スクリーニングが始まった1990年頃に症例数が増えていることから、スクリーニング効果の可能性が指摘されている。</p> <p><strong>国際会議において福島に対して出されていた意見</strong></p> <p style="padding-left: 30px;">● チェルノブイリと同じく、事故後に生まれた人もスクリーニングの調査の対象にすべきではないか。<br />● チェルノブイリと同じく、甲状腺乳頭がんのバイオマーカーを調べるべきではないか(勉強会での意見:甲状腺癌のバイオマーカー(遺伝子変異)はそれほど特異的ではないのではないか?また、乳頭癌のバイオマーカーをとったとしてもそれが放射線由来かどうかを調べるのには役に立たないのではないか?)<br />● 現場医師たちの疲労が激しい。<br />● 影響がでる可能性はないとはいいきれず、長期的に見て行く必要がある。</p> <p style="text-align: center;"><strong>高垣雅緒氏</strong></p> <p style="padding-left: 30px;">● 文化人類学者として福島の住民や現地の医師、ワイズ博士らと共同研究を現在行っている。<br />● 文化人類学者として福島に入り、被災者の心理面をサポートしている者としての福島国際会議への感想</p> <p style="padding-left: 60px;">● 政治的な質問と政治的な報告書という印象。<br />● 安全と危険どちらなのか、住民が右往左往している中で、責任が問われていない。<br />● 万一増えていた場合の対策が必要なのではないのか。<br />● スクリーニングについて</p> <p style="padding-left: 90px;">● 過剰診断、スクリーニング効果の説明がよくなされていた。<br />● 韓国全土で、検診を受けている世代でのガン診断者の人の数が増えている。<br />● 甲状腺癌の住民全員へのサーベイランスは社会医療。住民へのサービスにあたる。エビデンスベースの科学的な医療という観点ではサーベイランスによる甲状腺癌の早期発見はそのがんによる死亡率の向上には役立たない(そもそも罹患しても死亡率の低いがんであるから。)<br />● 今後、スクリーニング調査の目的を明確にしていく必要がある。住民のため?疫学のため?防護のため?また目的や意義、また調査の結果発見された場合にどのような行動をとるべきかなどについて、住民としっかりとしたコミュニケーションを行なう必要がある。</p> <p style="padding-left: 30px;">● 科学と政治の関係</p> <p style="padding-left: 60px;">● 原子力学会と原子核学会の分離。はじめは湯川博士が原子力に関する委員である時期もあったが、原子炉導入の際に自国での基礎研究を放棄して技術を輸入することが決定した時点でたもとをわかつ。それが発端となって、現在では両者にまったく交流がない。<br />● 脳腫瘍へのホウ素中性子捕捉治療には原子炉の稼働が必須であり、患者が待っている状態だが、京大熊取の原子炉の再稼働もなかなか認められなかった。日本では治療効果向上に関する議論ばかりで、治療中止による影響は議論されてこなかった。研究者が自由に発言する場が確保されておらず、批判すると以降の出世がない。<br />● 原子力以外にも科学に政治が入ってしまっているトピックが多数ある。胎児組織の研究利用をめぐる議論、気候変動の問題、HIV研究など。研究費の分配にも政治や宗教の観点が盛り込まれることもあるが、本来研究費の使い道はその分野に詳しく、研究計画の将来性を正しく評価できる研究者によって決められるべき。<br />● 科学の政治へ利用は継続的に起こっており、科学進歩を妨げ、科学進歩がもたらす経済的、社会的そして医学的利益を失わせることにつながる。</p> <p><strong>科学にまつわる嘘とその理由</strong></p> <p style="padding-left: 30px;">● STAP、多機能幹細胞、玄海原子炉のやらせメール事件など。市民は右往左往してしまう。<br />● 問題の原因は、①制度の問題:科学技術がブラックボックス化し、法制度が複雑になって形式のみ満たされていれば認められてしまう、②市民内部に存在する圧力:賛成派、反対派などの二極分化、③専門家にも非専門家にも広がる餅は餅屋という意識:科学分野外の評論家や行政が主張することそのものを批判してしまうことで、専門家によるブラックボックス的なシステムを強化してしまう。場合によっては主張内容が合理的なものでなくても、主張内容への批判と主張する行為そのものへの批判はわけなければ、市民がリスクを語ることができなくなる。④政治と科学技術の関係、⑤法と科学技術の関係、など幾つか存在する。</p> <p><strong>福島での活動</strong></p> <p style="padding-left: 30px;">● 帰村のために必要なこととして。<br />● 一部の地域では未だに他地域よりも線量が高い地域もある。イノシシなどの動物、山菜、きのこなどの食料資源への汚染などもある。そのような中で、地域のコミュニティー自体に、防護文化を根付かせる必要がある。<br />● 線量測定や勉強会などの活動。医療活動の可能性など。</p> <p style="text-align: right;">(文責:廣田)</p> </td> </tr> </tbody> </table> <div> </div> <p style="text-align: center;">※ 間違いがある場合や、ご意見・ご感想がある場合には、<a href="https://www.secure-cloud.jp/sf/1469640914VQwGkRDZ" target="_blank">お問い合わせ</a>、もしくは<a href="https://www.facebook.com/events/1740734299473054/permalink/1743390419207442/" target="_blank">Facebook</a>のコメント欄にてご一報ください</p> <p> </p></div> 2016年度第5回定期勉強会報告 2016-11-22T16:13:30+09:00 2016-11-22T16:13:30+09:00 https://www.jein.jp/networkofcs/information-list/regularly-workshop/workshop-report/1434-workshop5.html JEin事務局 <div class="feed-description"><p><a href="networkofcs.html"><img src="images/networkofcs/networkofcs-title2.png" border="0" style="margin-right: auto; margin-left: auto; display: block;" /></a></p> <div> </div> <p style="text-align: center;"><span style="font-size: 16px;"><strong><span style="font-size: 16px;"><strong>2016年度</strong></span>第5回定期勉強会報告</strong></span></p> <p>1.概 要</p> <p style="padding-left: 26px;">日  時:2016年10月31日(月) 14:00~17:00<br />場  所:<a href="npo-introduction/organization-information.html">NPO法人あいんしゅたいん事務所</a><br />話  題:白熱教室2016で行なう漫談に関する進行手順や段取りの打ち合わせ、及びテーマに関する議論</p> <p>2.話題概要</p> <p style="padding-left: 26px;">● 12月11日に行なわれる白熱教室2016@東工大のための漫談打ち合わせおよびリハーサルを行ないます。<br />● 漫談は本番と同じく坂東、宇野により行います。テーマは福島甲状腺癌を巡って、です。<br />● 高校生は来られない時間帯なので、勉強会参加者らから質問をしていただくことになるかと思います。奮ってご参加ください。</p> <p>4.議事録</p> <table style="width: 95%;" border="1" cellpadding="15" align="center"> <tbody> <tr> <td> <p><strong>福島県民の健康調査を進めて行くべきか、止めるべきかという議論を行ないました。その後、白熱教室のリハーサルを行いました。</strong></p> <p style="padding-left: 30px;">● 福島の県民調査では過剰診断は起きている。より精密な測定のもと、通常の基準より厳しい基準で診断を下しているため。一方、がんである、もしくはがんの疑いがある、と診断された後は通常の医療の判断の元、手術の有無が決められているため、基本的には過剰診療は起きていない。ただし、患者側と医療側との相談のもと手術の有無が決定されるため、医療側が経過観察を勧めるケースにおいても手術している例もあるという話がある。</p> <p style="padding-left: 60px;">● 過剰診断とはどういうことなのか: 診断するかしないかが、その後の余命に関わらない診断。そこで診断しても、もっと後に診断してもその後の治療成績に響かない。<br />● 過剰診療とは何か:治療してもしなくてもその後の予後に関係がない治療。</p> <p style="padding-left: 30px;">● A2診断は何故存在するのか:これがきっかけで福島では受診者側の家族が不安に見舞われた経緯がある。A2診断は二次検査対象ではないのに、何故設定されたか、という疑問が勉強会中にあがった。設定理由は定かではないが、設定された限りは、あくまでも正直にということで受診者に結果として知らされたのではという推測もなされた。<br />● 健康調査にまつわる倫理についてどう考えるか。</p> <p style="padding-left: 60px;">● 科学者の観点として倫理が足りていないのではないかという意見があがった。<br />● 甲状腺癌はがんの中では非常に予後がよく、調査して早期発見の上で治療をしても、調査せずに日々の生活の中で異変が出た時に調べて治療するということと、予後が変わらない可能性があると言われている。<br />● むしろ、手術後の生活の不便さから早期発見の後すぐに手術するよりも手術よりも経過観察が適切ではないかという声もある。しかし、これまでに県民調査ほどの精度で検査が行なわれて来たことはないため、どのサイズまでは経過観察がよく、どこからが手術が必要なのか明確な線引きはないのではないか。そのような中で治療を受ける側に「どうしますか」と決断を迫るようなことは治療を受ける側にとっては十分に負担になり得る。医療側で〇〇が見つかったら××するといったような治療指針がはっきりするまで、県民の健康維持に関係がなく、単に疫学的な意味だけであれば調査すべきではないのではないか、という意見が出た。<br />● 一方で、罹患者の命を脅かさないケースがほとんどである癌だからこそ、長期的な調査を行い詳細を明らかにすることで、将来のがん対策や、低線量放射線の対策に必要な知見を与える可能性もあり、疫学調査をすることには大きな意味がある、という意見も出た。</p> <p style="padding-left: 30px;">● リハーサルの反省</p> <p style="padding-left: 60px;">● 説明なしに初出の専門用語は使わない。A2などは説明なしにつかってはいけない。<br />● 坂東も宇野も自分の意見だけを言っているわけではなく、ある立場をだいひょうするような形で発言している。それについてもう少しわかりやすく提示すべき。<br />● 話者は言葉をなるべく短く。すぐに時間オーバーしてしまう。</p> <p style="text-align: right;">(文責:廣田)</p> </td> </tr> </tbody> </table> <div> </div> <p style="text-align: center;">※ 間違いがある場合や、ご意見・ご感想がある場合には、<a href="https://www.secure-cloud.jp/sf/1469640914VQwGkRDZ" target="_blank">お問い合わせ</a>、もしくは<a href="https://www.facebook.com/events/1740734299473054/permalink/1743390419207442/" target="_blank">Facebook</a>のコメント欄にてご一報ください</p> <p> </p></div> <div class="feed-description"><p><a href="networkofcs.html"><img src="images/networkofcs/networkofcs-title2.png" border="0" style="margin-right: auto; margin-left: auto; display: block;" /></a></p> <div> </div> <p style="text-align: center;"><span style="font-size: 16px;"><strong><span style="font-size: 16px;"><strong>2016年度</strong></span>第5回定期勉強会報告</strong></span></p> <p>1.概 要</p> <p style="padding-left: 26px;">日  時:2016年10月31日(月) 14:00~17:00<br />場  所:<a href="npo-introduction/organization-information.html">NPO法人あいんしゅたいん事務所</a><br />話  題:白熱教室2016で行なう漫談に関する進行手順や段取りの打ち合わせ、及びテーマに関する議論</p> <p>2.話題概要</p> <p style="padding-left: 26px;">● 12月11日に行なわれる白熱教室2016@東工大のための漫談打ち合わせおよびリハーサルを行ないます。<br />● 漫談は本番と同じく坂東、宇野により行います。テーマは福島甲状腺癌を巡って、です。<br />● 高校生は来られない時間帯なので、勉強会参加者らから質問をしていただくことになるかと思います。奮ってご参加ください。</p> <p>4.議事録</p> <table style="width: 95%;" border="1" cellpadding="15" align="center"> <tbody> <tr> <td> <p><strong>福島県民の健康調査を進めて行くべきか、止めるべきかという議論を行ないました。その後、白熱教室のリハーサルを行いました。</strong></p> <p style="padding-left: 30px;">● 福島の県民調査では過剰診断は起きている。より精密な測定のもと、通常の基準より厳しい基準で診断を下しているため。一方、がんである、もしくはがんの疑いがある、と診断された後は通常の医療の判断の元、手術の有無が決められているため、基本的には過剰診療は起きていない。ただし、患者側と医療側との相談のもと手術の有無が決定されるため、医療側が経過観察を勧めるケースにおいても手術している例もあるという話がある。</p> <p style="padding-left: 60px;">● 過剰診断とはどういうことなのか: 診断するかしないかが、その後の余命に関わらない診断。そこで診断しても、もっと後に診断してもその後の治療成績に響かない。<br />● 過剰診療とは何か:治療してもしなくてもその後の予後に関係がない治療。</p> <p style="padding-left: 30px;">● A2診断は何故存在するのか:これがきっかけで福島では受診者側の家族が不安に見舞われた経緯がある。A2診断は二次検査対象ではないのに、何故設定されたか、という疑問が勉強会中にあがった。設定理由は定かではないが、設定された限りは、あくまでも正直にということで受診者に結果として知らされたのではという推測もなされた。<br />● 健康調査にまつわる倫理についてどう考えるか。</p> <p style="padding-left: 60px;">● 科学者の観点として倫理が足りていないのではないかという意見があがった。<br />● 甲状腺癌はがんの中では非常に予後がよく、調査して早期発見の上で治療をしても、調査せずに日々の生活の中で異変が出た時に調べて治療するということと、予後が変わらない可能性があると言われている。<br />● むしろ、手術後の生活の不便さから早期発見の後すぐに手術するよりも手術よりも経過観察が適切ではないかという声もある。しかし、これまでに県民調査ほどの精度で検査が行なわれて来たことはないため、どのサイズまでは経過観察がよく、どこからが手術が必要なのか明確な線引きはないのではないか。そのような中で治療を受ける側に「どうしますか」と決断を迫るようなことは治療を受ける側にとっては十分に負担になり得る。医療側で〇〇が見つかったら××するといったような治療指針がはっきりするまで、県民の健康維持に関係がなく、単に疫学的な意味だけであれば調査すべきではないのではないか、という意見が出た。<br />● 一方で、罹患者の命を脅かさないケースがほとんどである癌だからこそ、長期的な調査を行い詳細を明らかにすることで、将来のがん対策や、低線量放射線の対策に必要な知見を与える可能性もあり、疫学調査をすることには大きな意味がある、という意見も出た。</p> <p style="padding-left: 30px;">● リハーサルの反省</p> <p style="padding-left: 60px;">● 説明なしに初出の専門用語は使わない。A2などは説明なしにつかってはいけない。<br />● 坂東も宇野も自分の意見だけを言っているわけではなく、ある立場をだいひょうするような形で発言している。それについてもう少しわかりやすく提示すべき。<br />● 話者は言葉をなるべく短く。すぐに時間オーバーしてしまう。</p> <p style="text-align: right;">(文責:廣田)</p> </td> </tr> </tbody> </table> <div> </div> <p style="text-align: center;">※ 間違いがある場合や、ご意見・ご感想がある場合には、<a href="https://www.secure-cloud.jp/sf/1469640914VQwGkRDZ" target="_blank">お問い合わせ</a>、もしくは<a href="https://www.facebook.com/events/1740734299473054/permalink/1743390419207442/" target="_blank">Facebook</a>のコメント欄にてご一報ください</p> <p> </p></div> 2016年度第6回定期勉強会報告 2016-11-30T08:57:23+09:00 2016-11-30T08:57:23+09:00 https://www.jein.jp/networkofcs/information-list/regularly-workshop/workshop-report/1441-workshop6.html JEin事務局 <div class="feed-description"><p><a href="networkofcs.html"><img src="images/networkofcs/networkofcs-title2.png" border="0" style="margin-right: auto; margin-left: auto; display: block;" /></a></p> <div> </div> <p style="text-align: center;"><span style="font-size: 16px;"><strong><span style="font-size: 16px;"><strong>2016年度</strong></span>第6回定期勉強会報告</strong></span></p> <p>1.概 要</p> <p style="padding-left: 26px;">日  時:2016年11月28日(月) 14:00~17:00<br />場  所:<a href="npo-introduction/organization-information.html">NPO法人あいんしゅたいん事務所</a><br />話題提供:今中哲二(京都大学)<br />話  題:チェルノブイリ原発事故:30年間の調査経験から<br />当日資料:今中氏資料 <a href="images/networkofcs/imanaka_161128.pdf" target="_blank"><img src="images/support/pdficon.png" border="0" width="26" height="26" style="vertical-align: middle; border: 0px;" /></a><br />参考資料:● <a href="http://www.rri.kyoto-u.ac.jp/NSRG/Chernobyl/kpss/protocol.html" target="_blank">チェルノブイリ事故にまつわる会議のソ連共産党の議事録</a><br />      ※ 一般市民の放射線障害などが判明<br />     ● <a href="http://www.nature.com/nature/journal/v392/n6671/full/392031a0.html" target="_blank">チェルノブイリでの甲状腺癌と線量の関係に関する論文 1998年 Nature Jacob</a><br />     ● チェルノブイリでの甲状腺癌と線量の関係に関する論文 <a href="images/networkofcs/reference_161128.pdf" target="_blank"><img src="images/support/pdficon.png" border="0" width="26" height="26" style="vertical-align: middle; border: 0px;" /></a><br />     ● <a href="http://www.rri.kyoto-u.ac.jp/PUB/report/04_kr/" target="_blank">ベラルーシ、ウクライナなどにある様々なデータのまとめ(今中氏によるまとめ)</a><br />      ※ 生データや調査方法などがはっきりしないものが多い。「不健康」の中には虫歯などが含まれていることも。<br />     ● <a href="http://www.nashim.org/jp/pdf/" target="_blank">チェルノブイリ事故について当初より研究していたIllynさんによる著作</a><br />      ※ 事故のメカニズムや事故後の動きなど</p> <p>2.話題概要</p> <p style="padding-left: 26px;"> 現在の福島県の状況を知るにあたって、過去の事例であるチェルノブイリ原発事故での調査内容は非常に気になるところです。どこまでのことがチェルノブイリで判明しているのか、またその知見と経験が今回の福島県にはどの程度適応することができるのかといったことも含めて、チェルノブイリでの事故とその後の状況を知っておくことは重要でしょう。今回は長年チェルノブイリ原発事故の調査に携わってこられた今中先生に、原子炉の特徴から、事故影響の社会的側面まで包括的に、チェルノブイリ原発事故の全容についてお話いただきます。</p> <p>3.議事録</p> <table style="width: 95%;" border="1" cellpadding="15" align="center"> <tbody> <tr> <td> <p><strong>ソ連の原子力開発の流れ:原爆開発が発端</strong></p> <p style="padding-left: 30px;">スターリンの指導のもと、原爆開発を発端とし1943年に開始。ファットマンの開発に携わっていた人の中にソ連のスパイがいたため、そのまま情報はソ連へ。オッペンハイマーは知らなかったが、部下にそのような人がいたため、赤狩りにあっていた。情報は得ていたが戦時中は作れる状況ではなかった。戦後、本格的に原爆開発が始動。</p> <p style="padding-left: 60px;">● 1946年に黒煙炉+水冷却でプルトニウム生産を目指した。1948年に成功。 1949年セミパラチンスクの核実験。これはファットマンのコピー。独自開発派もいたが、KGBがまずはアメリカの作ったものを真似させた。<br />● 1950年にはアメリカでマイク(11メガトンの水爆)がつくられた。とても運べるサイズではない。1952年にソ連で大陸間弾道ミサイルに載せられるサイズの水爆が開発された。<br />● 1954年世界最初のオプニスク原発。プルトニウム生産炉を大きくしたもの。<br />● 1974年100万キロワットのレニングラード原発。<br />● 1978年にチェルノブイリ1号機、1983年チェルノブイリ4号機。3年後4号機が事故を起こす。 モスクワまで700km, キエフまで100km、ベラルーシの首都まで300km。1~4号機全て運転中に事故。5,6号機を作っているときだった。</p> <p><strong>チェルノブイリ原発の特徴</strong></p> <p style="padding-left: 30px;">● RBMK型原発とは黒鉛減速軽水冷却チャンネル型炉。280度(タービン条件)ぐらいで稼働。圧力容器の代わりに圧力管。直径8cmの管。炉心全体を囲む圧力容器がない。1661本のチャンネル、211本の制御棒用のチャンネル。チャンネル破断の際には下に蒸気を凝縮させるための凝縮プールがある。<br />● 爆開発からはじまったため、プルトニウム生産炉の流れを汲む。そのため、利点として運転しながらの燃料交換が可能。プルトニウム生産のためにはプルトニウム240になる前の採取が必要。<br />● 圧力管を増やすことで大出力化が簡単。また大きい圧力容器がないため、内陸立地が楽。<br />● 一方で、ボイド係数が+であるため、炉心に泡が増えると出力があがるため扱いが難しい。また制御棒の構造に欠陥があり、ポジティブスクラム(制御棒の一部に使われている減速剤である黒鉛は、中性子吸収率が水よりも低いため、制御棒を入れることで、中性子の吸収が減ってしまう)が起きることがある。(黒鉛の純度が高ければ高いほど、ボイド係数が高く、中性子吸収率は落ちる。)</p> <p style="padding-left: 60px;">● 日本も東海の一号機は黒鉛炉のガス冷却。イギリスは空冷。水冷だと水が無くなると暴走することが弱点。<br />● 東ヨーロッパに出しているのは、軽水炉ばかり。</p> <p style="padding-left: 30px;">● プリペアチ川河畔にあり、近くには冷却水の貯水池がある。3kmほど先に原発関係者の居住区域として作られたプリペアチ市がある。 </p> <p><strong>事故発生の経緯とメカニズム</strong></p> <p style="padding-left: 30px;">● いくつか仮説がある。事故後、数ヶ月で石棺で囲い、その後、炉心の中を確認したのは2年後であったため、詳細にはわからないことも多い。<br />● 4/25 1:00 保守点検のため原子炉を停止作業開始。3:47 出力が半分に。14:00 キエフの給電司令所より運転継続要請。その後、継続要請がなくなり、停止。26日、1:21 出力が下がったが、実験のため再稼働。緊急用電源のための電力供給実験。無理して出力をあげるため、制御棒を除去。32秒ほどで、実験終了。制御棒を一斉に入れたあと爆発事故。26日3時ぐらいにモスクワに連絡が入る。朝10時ぐらいには現地調査。26日午後には事故対策委員会ができている。医療班も夕刻には入り、負傷者はモスクワに送られた。<br />● 仮説:一度全て引き上げた制御棒を一斉挿入したことにより、ポジティブスクラムが発生。何チャンネルかで暴走がはじまって、凝縮プールが容量オーバーになり、更なる圧力チャンネルの破損を招き、爆発。圧力管で蒸気を閉じ込めているため、原子炉全体の耐圧は低い。<br />● 通常、キセノン毒により急な再稼働は難しい。無理に出力をあげるために制御棒を全て引き抜いたことが問題か。(キセノン毒:ヨウ素から崩壊して溜まったキセノンによる中性子のクロスセクションが大きいため、中性子を消費してしまい出力があがらない。普通はキセノンが下がるまで待つ。)<br />● 8月の事故の専門者会議にて、6つのオペレーションミスであったと発表(嘘)。IAEAやアメリカも絡んで報道された。その後、ソ連崩壊時に事故当時の詳細について見直しがなされた。オペレーター並びに責任者は事故の一ヶ月後ぐらいに死亡。<br />● 炉心が浮き上がったことは確か。2年後に中を確認したところ炉心のあるべきところはほぼ空であった。燃料棒が炉心から離れたところで見つかっている(3号機屋上)。圧力管の中心はジルコニウム。上下はステンレス。継ぎ目が弱い。<br />● 暴走後に再臨海したかはわからない。基本的には圧力管内の蒸気による爆発。</p> <p><strong>事故後の状況、除染、避難、情報公開など</strong></p> <p style="padding-left: 30px;">● 事故当時、貯水池で夜釣りをしていた人が多かった。そのため爆発による火花を見ている人は多い。<br />● 事故直後の除染作業:60~80万人の事故処理作業者(主に正規軍)。高すぎて測れる線量計がない状態で作業を行っており、線量管理がなされていない。<br />● 翌日もしくは翌々日に陸軍化学部隊による除染開始。黒鉛が燃えたことにより火事が発生。砂と泥、鉛を5000トンほどヘリコプターで投入。5月6日ごろに消炎。実は砂や泥は標的とした炎上部分には入ってなかった。チェルノブイリでは燃料そのものが飛び出し、雨ざらし状態に。<br />● プリペアチ市(3kmほど離れた場所)では20時間後ぐらいから線量が上がりはじめる。<br />● 事故翌日にはプリペアチ市の5万人が避難。その際、おおよそ10mGy/hぐらいだった。<br />● キエフでは4月30日に線量があがる。5月1日はメーデーで20mSv/hのような状態の中でメーデーは行なわれている。一週間後から30km圏内の避難開始。<br />● 一週間程度で原発周辺の松林が枯れた。ニンジン色の森と呼ばれる。<br />● 4月28日にソ連が事故を認めた。スウェーデンに放射能物質が飛んで行ったため。<br />● 5月6日に記者会見。5月14日にゴルバチョフさんが声明。8月の会議で石棺をつくってもうじき人も帰還するといった。これ以後三年間、公に発表された情報はない。<br />● 9~10月、石棺建設に伴い、作業ロボットが放射線のために動かなくなるため、人の手で3号炉屋上のがれきを除去。但し、このときは線量は管理されていたため、一人あたりの被曝量は当時の制限である25レントゲン(250rem)では収まっているはず。2000人ほどの志願予備役が従事。制御棒や黒鉛がおちていた。<br />● 30km圏外でも避難対象になるほどの放射能汚染地域があったにも関わらず、3年間情報は公開されなかったため、その間は人が住んでいた。気がついた時点でのど付近の線量を40万人で測定。線量評価の作業をその後行なっている。同時に部落ごとに土壌の線量を測定し、89年に汚染状況を公開した。知らされていなかった汚染地域の住民は当然怒り、ベラルーシやウクライナがモスクワに対策を要求、対応しきれないモスクワがIAEAやWHOに手助けを要請し、世界的に管理されることになる。<br />● 2年後の88年に炉心を確認。中身は吹っ飛んで空っぽで底は溶けていた。自然空冷状態。福島と違いは水は入っていない。事故時にあったウランは190トンは炉心内にはほとんど残っていない。<br />● 89年までにチェルノブイリの事故のメカニズムや周辺への影響を研究をしていたのはIllynさん、Izraelさん(詳しいことは参考資料参照)。<br />● 遠方での汚染地域では、除染のため人口降雨を行なった。効果については情報がない。<br />● 被災国の関係性:ベラルーシはロシア寄り。ウクライナは西側に親和性が高く、ロシアには敵対の傾向。<br />● 1991年5月国際チェルノブイリプロジェクト報告会。各国のスクリーニング調査の状況などが報告。ここで甲状腺癌発生の可能性が言われている。<br />● 1998年、natureに線量との関係を示す論文(参考資料、yacob et al.)<br />● チェルノブイリの石棺前は今では観光地。ツアーもある。</p> <p><strong>汚染状況</strong></p> <p style="padding-left: 30px;">● 30km圏内の線量分布は事故から10年後のシンポジウムで公開。発電所、民間の企業などが事故後入って測ったもの。線量の高い低いは距離には関係ない。原子炉の近くでも天候、風向きで線量の低いことはある。しかしながら値がいまいち信用できないデータも含まれる。<br />● セシウム137による汚染については、1キュリー/平方キロメートルを汚染地域とする。37000Bq/平方キロメートル (本州の60パーセントぐらいの面積)が汚染された。移住対象は15キュリー/平方キロメートル(福井+京都+大阪ぐらいの面積)。<br />● 飛散した核種:希ガス類炉内の100パーセント(キセノン133など)、揮発性(ヨウ素131, セシウムなど)炉内の50~60パーセント、不揮発性(ストロンチウムなど)炉内の5パーセント程度。</p> <p style="padding-left: 60px;">● チェルノブイリでは全ての核種が飛んだ。福島では核種は限られている。<br />● ストロンチウムは水に溶けにくいがオキサイドになると水に溶ける。福島ではセシウムは先に洗い流されており、汚染水のほうはセシウムよりはストロンチウムが問題になる。</p> <p><strong>事故による放射線障害</strong></p> <p style="padding-left: 30px;">● 急性障害</p> <p style="padding-left: 60px;">● 消防士(発電所、プリペアチ市)、運転手。28人(モスクワ第六病院)、1人(キエフ)、1人(やけど)、1人(救出できず、遺体が現場に埋まっている)が亡くなっている。300人が運ばれている。<br />● 亡くなった方の骨髄線量:6Gy以上 20人, 4~6Gy 7人、2~4Gy 1人(モスクワ第6病院。臨床症状からの推測。原子力潜水艦での被曝データとの比較から)。<br />● 基本的には骨髄腫が原因。β線熱傷もひどかった。</p> <p style="padding-left: 30px;">● ソ連共産党の議事録(参考資料)には一般の人々に多くの放射線障害があったことが報告されている。</p> <p style="padding-left: 60px;">● ベラルーシ先天性障害:汚染地域と比較対象地域の取り方で影響ありという結果も影響なしという結果も出ている。線量との関係性はでていない。</p> <p style="padding-left: 30px;">● 今中氏によるチェルノブイリ調査 1990年ソ連訪問、1994年~ベラルーシ、ウクライナ、ロシアにおけるチェルノブイリ研究の現状調査:KURレポート(参考資料)。</p> <p style="padding-left: 30px;">● チェルノブイリの人体への影響を調べた報告には確かな情報と不確かな情報があるため、それらを分ける必要がある。<br />● はっきりしない部分についてどうするか?たとえば、ジャーナリストや行政は少しはっきりしない部分にも注意を広げる必要がある。</p> <p style="text-align: right;">(文責:廣田)</p> </td> </tr> </tbody> </table> <div> </div> <p style="text-align: center;">※ 間違いがある場合や、ご意見・ご感想がある場合には、<a href="https://www.secure-cloud.jp/sf/1469640914VQwGkRDZ" target="_blank">お問い合わせ</a>、もしくは<a href="https://www.facebook.com/events/1740734299473054/permalink/1743390419207442/" target="_blank">Facebook</a>のコメント欄にてご一報ください</p> <p> </p></div> <div class="feed-description"><p><a href="networkofcs.html"><img src="images/networkofcs/networkofcs-title2.png" border="0" style="margin-right: auto; margin-left: auto; display: block;" /></a></p> <div> </div> <p style="text-align: center;"><span style="font-size: 16px;"><strong><span style="font-size: 16px;"><strong>2016年度</strong></span>第6回定期勉強会報告</strong></span></p> <p>1.概 要</p> <p style="padding-left: 26px;">日  時:2016年11月28日(月) 14:00~17:00<br />場  所:<a href="npo-introduction/organization-information.html">NPO法人あいんしゅたいん事務所</a><br />話題提供:今中哲二(京都大学)<br />話  題:チェルノブイリ原発事故:30年間の調査経験から<br />当日資料:今中氏資料 <a href="images/networkofcs/imanaka_161128.pdf" target="_blank"><img src="images/support/pdficon.png" border="0" width="26" height="26" style="vertical-align: middle; border: 0px;" /></a><br />参考資料:● <a href="http://www.rri.kyoto-u.ac.jp/NSRG/Chernobyl/kpss/protocol.html" target="_blank">チェルノブイリ事故にまつわる会議のソ連共産党の議事録</a><br />      ※ 一般市民の放射線障害などが判明<br />     ● <a href="http://www.nature.com/nature/journal/v392/n6671/full/392031a0.html" target="_blank">チェルノブイリでの甲状腺癌と線量の関係に関する論文 1998年 Nature Jacob</a><br />     ● チェルノブイリでの甲状腺癌と線量の関係に関する論文 <a href="images/networkofcs/reference_161128.pdf" target="_blank"><img src="images/support/pdficon.png" border="0" width="26" height="26" style="vertical-align: middle; border: 0px;" /></a><br />     ● <a href="http://www.rri.kyoto-u.ac.jp/PUB/report/04_kr/" target="_blank">ベラルーシ、ウクライナなどにある様々なデータのまとめ(今中氏によるまとめ)</a><br />      ※ 生データや調査方法などがはっきりしないものが多い。「不健康」の中には虫歯などが含まれていることも。<br />     ● <a href="http://www.nashim.org/jp/pdf/" target="_blank">チェルノブイリ事故について当初より研究していたIllynさんによる著作</a><br />      ※ 事故のメカニズムや事故後の動きなど</p> <p>2.話題概要</p> <p style="padding-left: 26px;"> 現在の福島県の状況を知るにあたって、過去の事例であるチェルノブイリ原発事故での調査内容は非常に気になるところです。どこまでのことがチェルノブイリで判明しているのか、またその知見と経験が今回の福島県にはどの程度適応することができるのかといったことも含めて、チェルノブイリでの事故とその後の状況を知っておくことは重要でしょう。今回は長年チェルノブイリ原発事故の調査に携わってこられた今中先生に、原子炉の特徴から、事故影響の社会的側面まで包括的に、チェルノブイリ原発事故の全容についてお話いただきます。</p> <p>3.議事録</p> <table style="width: 95%;" border="1" cellpadding="15" align="center"> <tbody> <tr> <td> <p><strong>ソ連の原子力開発の流れ:原爆開発が発端</strong></p> <p style="padding-left: 30px;">スターリンの指導のもと、原爆開発を発端とし1943年に開始。ファットマンの開発に携わっていた人の中にソ連のスパイがいたため、そのまま情報はソ連へ。オッペンハイマーは知らなかったが、部下にそのような人がいたため、赤狩りにあっていた。情報は得ていたが戦時中は作れる状況ではなかった。戦後、本格的に原爆開発が始動。</p> <p style="padding-left: 60px;">● 1946年に黒煙炉+水冷却でプルトニウム生産を目指した。1948年に成功。 1949年セミパラチンスクの核実験。これはファットマンのコピー。独自開発派もいたが、KGBがまずはアメリカの作ったものを真似させた。<br />● 1950年にはアメリカでマイク(11メガトンの水爆)がつくられた。とても運べるサイズではない。1952年にソ連で大陸間弾道ミサイルに載せられるサイズの水爆が開発された。<br />● 1954年世界最初のオプニスク原発。プルトニウム生産炉を大きくしたもの。<br />● 1974年100万キロワットのレニングラード原発。<br />● 1978年にチェルノブイリ1号機、1983年チェルノブイリ4号機。3年後4号機が事故を起こす。 モスクワまで700km, キエフまで100km、ベラルーシの首都まで300km。1~4号機全て運転中に事故。5,6号機を作っているときだった。</p> <p><strong>チェルノブイリ原発の特徴</strong></p> <p style="padding-left: 30px;">● RBMK型原発とは黒鉛減速軽水冷却チャンネル型炉。280度(タービン条件)ぐらいで稼働。圧力容器の代わりに圧力管。直径8cmの管。炉心全体を囲む圧力容器がない。1661本のチャンネル、211本の制御棒用のチャンネル。チャンネル破断の際には下に蒸気を凝縮させるための凝縮プールがある。<br />● 爆開発からはじまったため、プルトニウム生産炉の流れを汲む。そのため、利点として運転しながらの燃料交換が可能。プルトニウム生産のためにはプルトニウム240になる前の採取が必要。<br />● 圧力管を増やすことで大出力化が簡単。また大きい圧力容器がないため、内陸立地が楽。<br />● 一方で、ボイド係数が+であるため、炉心に泡が増えると出力があがるため扱いが難しい。また制御棒の構造に欠陥があり、ポジティブスクラム(制御棒の一部に使われている減速剤である黒鉛は、中性子吸収率が水よりも低いため、制御棒を入れることで、中性子の吸収が減ってしまう)が起きることがある。(黒鉛の純度が高ければ高いほど、ボイド係数が高く、中性子吸収率は落ちる。)</p> <p style="padding-left: 60px;">● 日本も東海の一号機は黒鉛炉のガス冷却。イギリスは空冷。水冷だと水が無くなると暴走することが弱点。<br />● 東ヨーロッパに出しているのは、軽水炉ばかり。</p> <p style="padding-left: 30px;">● プリペアチ川河畔にあり、近くには冷却水の貯水池がある。3kmほど先に原発関係者の居住区域として作られたプリペアチ市がある。 </p> <p><strong>事故発生の経緯とメカニズム</strong></p> <p style="padding-left: 30px;">● いくつか仮説がある。事故後、数ヶ月で石棺で囲い、その後、炉心の中を確認したのは2年後であったため、詳細にはわからないことも多い。<br />● 4/25 1:00 保守点検のため原子炉を停止作業開始。3:47 出力が半分に。14:00 キエフの給電司令所より運転継続要請。その後、継続要請がなくなり、停止。26日、1:21 出力が下がったが、実験のため再稼働。緊急用電源のための電力供給実験。無理して出力をあげるため、制御棒を除去。32秒ほどで、実験終了。制御棒を一斉に入れたあと爆発事故。26日3時ぐらいにモスクワに連絡が入る。朝10時ぐらいには現地調査。26日午後には事故対策委員会ができている。医療班も夕刻には入り、負傷者はモスクワに送られた。<br />● 仮説:一度全て引き上げた制御棒を一斉挿入したことにより、ポジティブスクラムが発生。何チャンネルかで暴走がはじまって、凝縮プールが容量オーバーになり、更なる圧力チャンネルの破損を招き、爆発。圧力管で蒸気を閉じ込めているため、原子炉全体の耐圧は低い。<br />● 通常、キセノン毒により急な再稼働は難しい。無理に出力をあげるために制御棒を全て引き抜いたことが問題か。(キセノン毒:ヨウ素から崩壊して溜まったキセノンによる中性子のクロスセクションが大きいため、中性子を消費してしまい出力があがらない。普通はキセノンが下がるまで待つ。)<br />● 8月の事故の専門者会議にて、6つのオペレーションミスであったと発表(嘘)。IAEAやアメリカも絡んで報道された。その後、ソ連崩壊時に事故当時の詳細について見直しがなされた。オペレーター並びに責任者は事故の一ヶ月後ぐらいに死亡。<br />● 炉心が浮き上がったことは確か。2年後に中を確認したところ炉心のあるべきところはほぼ空であった。燃料棒が炉心から離れたところで見つかっている(3号機屋上)。圧力管の中心はジルコニウム。上下はステンレス。継ぎ目が弱い。<br />● 暴走後に再臨海したかはわからない。基本的には圧力管内の蒸気による爆発。</p> <p><strong>事故後の状況、除染、避難、情報公開など</strong></p> <p style="padding-left: 30px;">● 事故当時、貯水池で夜釣りをしていた人が多かった。そのため爆発による火花を見ている人は多い。<br />● 事故直後の除染作業:60~80万人の事故処理作業者(主に正規軍)。高すぎて測れる線量計がない状態で作業を行っており、線量管理がなされていない。<br />● 翌日もしくは翌々日に陸軍化学部隊による除染開始。黒鉛が燃えたことにより火事が発生。砂と泥、鉛を5000トンほどヘリコプターで投入。5月6日ごろに消炎。実は砂や泥は標的とした炎上部分には入ってなかった。チェルノブイリでは燃料そのものが飛び出し、雨ざらし状態に。<br />● プリペアチ市(3kmほど離れた場所)では20時間後ぐらいから線量が上がりはじめる。<br />● 事故翌日にはプリペアチ市の5万人が避難。その際、おおよそ10mGy/hぐらいだった。<br />● キエフでは4月30日に線量があがる。5月1日はメーデーで20mSv/hのような状態の中でメーデーは行なわれている。一週間後から30km圏内の避難開始。<br />● 一週間程度で原発周辺の松林が枯れた。ニンジン色の森と呼ばれる。<br />● 4月28日にソ連が事故を認めた。スウェーデンに放射能物質が飛んで行ったため。<br />● 5月6日に記者会見。5月14日にゴルバチョフさんが声明。8月の会議で石棺をつくってもうじき人も帰還するといった。これ以後三年間、公に発表された情報はない。<br />● 9~10月、石棺建設に伴い、作業ロボットが放射線のために動かなくなるため、人の手で3号炉屋上のがれきを除去。但し、このときは線量は管理されていたため、一人あたりの被曝量は当時の制限である25レントゲン(250rem)では収まっているはず。2000人ほどの志願予備役が従事。制御棒や黒鉛がおちていた。<br />● 30km圏外でも避難対象になるほどの放射能汚染地域があったにも関わらず、3年間情報は公開されなかったため、その間は人が住んでいた。気がついた時点でのど付近の線量を40万人で測定。線量評価の作業をその後行なっている。同時に部落ごとに土壌の線量を測定し、89年に汚染状況を公開した。知らされていなかった汚染地域の住民は当然怒り、ベラルーシやウクライナがモスクワに対策を要求、対応しきれないモスクワがIAEAやWHOに手助けを要請し、世界的に管理されることになる。<br />● 2年後の88年に炉心を確認。中身は吹っ飛んで空っぽで底は溶けていた。自然空冷状態。福島と違いは水は入っていない。事故時にあったウランは190トンは炉心内にはほとんど残っていない。<br />● 89年までにチェルノブイリの事故のメカニズムや周辺への影響を研究をしていたのはIllynさん、Izraelさん(詳しいことは参考資料参照)。<br />● 遠方での汚染地域では、除染のため人口降雨を行なった。効果については情報がない。<br />● 被災国の関係性:ベラルーシはロシア寄り。ウクライナは西側に親和性が高く、ロシアには敵対の傾向。<br />● 1991年5月国際チェルノブイリプロジェクト報告会。各国のスクリーニング調査の状況などが報告。ここで甲状腺癌発生の可能性が言われている。<br />● 1998年、natureに線量との関係を示す論文(参考資料、yacob et al.)<br />● チェルノブイリの石棺前は今では観光地。ツアーもある。</p> <p><strong>汚染状況</strong></p> <p style="padding-left: 30px;">● 30km圏内の線量分布は事故から10年後のシンポジウムで公開。発電所、民間の企業などが事故後入って測ったもの。線量の高い低いは距離には関係ない。原子炉の近くでも天候、風向きで線量の低いことはある。しかしながら値がいまいち信用できないデータも含まれる。<br />● セシウム137による汚染については、1キュリー/平方キロメートルを汚染地域とする。37000Bq/平方キロメートル (本州の60パーセントぐらいの面積)が汚染された。移住対象は15キュリー/平方キロメートル(福井+京都+大阪ぐらいの面積)。<br />● 飛散した核種:希ガス類炉内の100パーセント(キセノン133など)、揮発性(ヨウ素131, セシウムなど)炉内の50~60パーセント、不揮発性(ストロンチウムなど)炉内の5パーセント程度。</p> <p style="padding-left: 60px;">● チェルノブイリでは全ての核種が飛んだ。福島では核種は限られている。<br />● ストロンチウムは水に溶けにくいがオキサイドになると水に溶ける。福島ではセシウムは先に洗い流されており、汚染水のほうはセシウムよりはストロンチウムが問題になる。</p> <p><strong>事故による放射線障害</strong></p> <p style="padding-left: 30px;">● 急性障害</p> <p style="padding-left: 60px;">● 消防士(発電所、プリペアチ市)、運転手。28人(モスクワ第六病院)、1人(キエフ)、1人(やけど)、1人(救出できず、遺体が現場に埋まっている)が亡くなっている。300人が運ばれている。<br />● 亡くなった方の骨髄線量:6Gy以上 20人, 4~6Gy 7人、2~4Gy 1人(モスクワ第6病院。臨床症状からの推測。原子力潜水艦での被曝データとの比較から)。<br />● 基本的には骨髄腫が原因。β線熱傷もひどかった。</p> <p style="padding-left: 30px;">● ソ連共産党の議事録(参考資料)には一般の人々に多くの放射線障害があったことが報告されている。</p> <p style="padding-left: 60px;">● ベラルーシ先天性障害:汚染地域と比較対象地域の取り方で影響ありという結果も影響なしという結果も出ている。線量との関係性はでていない。</p> <p style="padding-left: 30px;">● 今中氏によるチェルノブイリ調査 1990年ソ連訪問、1994年~ベラルーシ、ウクライナ、ロシアにおけるチェルノブイリ研究の現状調査:KURレポート(参考資料)。</p> <p style="padding-left: 30px;">● チェルノブイリの人体への影響を調べた報告には確かな情報と不確かな情報があるため、それらを分ける必要がある。<br />● はっきりしない部分についてどうするか?たとえば、ジャーナリストや行政は少しはっきりしない部分にも注意を広げる必要がある。</p> <p style="text-align: right;">(文責:廣田)</p> </td> </tr> </tbody> </table> <div> </div> <p style="text-align: center;">※ 間違いがある場合や、ご意見・ご感想がある場合には、<a href="https://www.secure-cloud.jp/sf/1469640914VQwGkRDZ" target="_blank">お問い合わせ</a>、もしくは<a href="https://www.facebook.com/events/1740734299473054/permalink/1743390419207442/" target="_blank">Facebook</a>のコメント欄にてご一報ください</p> <p> </p></div>