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万城目学

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先に私は京都作家、あるいは京大作家とでもいえる森見登美彦を紹介した。森見登美彦を紹介するのであれば、万城目学(まきめまなぶ)を紹介しないわけにはいかない。万城目学は森見と並んで、昨今注目を浴びている京都・京大作家である。森見のブログを読んでいても、森見の万城目に対するライバル意識が所々に感じられる。森見も万城目も30歳代始めである。

万城目学は1976年大阪生まれ。清風南海高校卒、京都大学法学部卒、化学繊維会社勤務を経て2005年に「鴨川ホルモー」で第4回ボイルドエッグ新人賞を受賞する。それは『本の雑誌』などの書評誌で絶賛された。それ以降「鹿男あをによし」「ホルモー六景」とヒットを飛ばしている。「鹿男あをによし」は玉木宏主演でドラマ化され、「鴨川ホルモー」も映画化された。

森見のブログを読んでいると、彼は才能の枯渇を恐れてか、図書館勤務のかたわら作家業を営むという二足のわらじを履いている事が分かる。一方、万城目は会社勤めを辞めて専業作家を目指し成功した。日本でどれだけ多くの人たちが作家志望で、どれだけが文学賞に応募して涙をのんでいるか。才能というものは不公平なものだ。万城目の作品がドラマ化、映画化されたのに対して、森見の「夜は短し歩けよ乙女」が漫画化された程度であることに対しても、森見はライバル意識をもやしている。

「鴨川ホルモー」! こんなハチャメチャなおもしろい小説はあまり読んだことがない。ファンタジーノベルというのか、青春小説というのか。「ホルモー」であって「ホルモン」ではない。ホルモーとは京都に千年の昔から伝わる、ある競技の名前である。なぜホルモーというのかは、作品中でおいおい明かされる。

京大新入生の安倍は上賀茂神社での葵祭のバイトの後で、同じく新入生の高村とともに、3回生のスガ氏から「京大青龍会」という謎のサークルに勧誘される。新歓コンパでただメシを食べるだけのつもりの安倍は、早良良子という鼻の美しい女性に一目惚れして入部する。こうして新入生10人は第500代目京大青龍会メンバーとなる。京大青龍会は立命館大白虎隊、京都産業大学玄武組、龍谷大学フェニックス(旧朱雀団)と京都の町を股にかけてホルモーを戦うのである。早良京子に恋した安倍であるが、京子は芦屋と交際する。安倍は陰陽師の安倍晴明、芦屋は安倍晴明のライバルであった芦屋道満、高村は小野篁からきている。鴨川デルタでの戦い、四条烏丸交差点での儀式など、京都を舞台に話は進められる。吉田神社での代替わりの儀式は、レナウン娘のテレビコマーシャルを知らないと話が分からないが、バカバカしさの骨頂である。京都の地理に通じていると、特に興味深い。

   
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