京都秘密名所巡り 2・・・東山の秘密行場、神社
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- 作成日 2010年12月11日(土曜)02:40
- 作者: 松田卓也
私は哲学の道が好きである。しかしそこも昔の静けさを失い、桜や紅葉の頃に行くと、混雑はすさまじいものがある。それでも、少し奥に入ると比較的人が来ない、好ましい場所がある。法然院とか大豊神社などはその例である。さらに奥に入ると、観光客は絶対に来ない、不気味な静けさを漂わせている場所がある。今回はそのいくつかを紹介しよう。
哲学の道の南端に若王子(にゃくおうじ)がある。若王子から東の方、つまり山の方に行くと滝宮神社があるが、ここが目的地ではない。さらに奥に行くと、猪よけの柵があり、本当かどうかは分からないが電流を流しているとある。その戸を開いて入っていく勇気のある観光客はまず居ないであろう。入ってはいけないとは書いていない。入った場合は、戸を閉めて下さいと記されている。そこで勇気をふるって入っていく。少し登ると、千手不動尊に行き当たる。不動明王の像がある。その一番奥に千手の滝がある。ここらはあれてはいるが、しかし新しいろうそくなどがおいてあることを見ても、人手が入っているのは明らかだ。一番不思議なのは、そこらに書かれている字がハングルであることだ。韓国系の人たちの行場であるのだろうか。
若王子の正面に、真新しい和風の大邸宅がある。近年亡くなった、京都の某大富豪の持ち物である。この家が出来る前には、そこに天竜茶屋という茶店があった。谷筋を入っていくと、奥まったところに、古ぼけた和風の建物があり、そこが天竜茶屋であった。20年ほど昔に行ったときは営業していて、ソーメンを食べた覚えがある。その奥には天龍白蛇弁財天が祭られ、一番奥には天龍滝、正式名は如意輪の滝があった。ネットの記事によれば、10年前には天龍茶屋は廃業していて、廃墟になっていたらしい。
哲学の道の途中、鹿ヶ谷の入り口に谷の御所、霊鑑寺がある。ここは椿の名所である。霊鑑寺の南側に、東に向かって山の方に延びる道がある。その奥に俊寛山荘跡があると記されている。俊寛とは平安時代末期に平氏討伐の陰謀を企てた僧侶で、鬼界が島に流されたことで有名である。その密議を凝らしたという山荘跡を、これも20年前に探しに行って、結局は発見できなかったのだが、別の奇妙な神社を発見したという話だ。その道沿いにはミネラルウオーター工場や民宿があったりする。奥に瑞光院という社があり、奥に金胎両部之滝がある。右が飛龍の滝で左は五重の滝である。
最後の人家の庭先を通って、谷沿いの山道を進む。ずっと行けば、俊寛山荘跡に行けたのだろうが、あるところで左、つまり北の方向に進む細い道を見つけた。好奇心に駆られて、その細い木の根道を這うように進むと、とつぜんその神社が現れた。社務所もあるが人気はない。非常に小さな、不気味な静寂をたたえた秘密神社である。たしか語白(ことしろ)神社と書いてあったと思う。事代とも書き、事代主は大国主命の子供である。こんな、誰も来そうにないところに所に、神社を祭ったのは、どのような人々か、どのような思いであったのか。東山山中には、まだまだ、このような隠れた秘境があるに違いない。