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超知能への道 その1 高学歴ワーキングプアーな私

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私はポスドクである。名前は森法外。京都の大学の理系の博士課程を出て、理学博士になった。専門は宇宙物理学である。ポスドク(ポストドクトラルフェロー)であるということは、決まった職がないということだ。我々ポスドクの理想は大学や研究所などの任期なしの研究職に就くことだ。大学なら理想は任期なしの教授、少なくとも准教授になることである。昨今はなかなかこの種のアカデミックなポジションにつくのは難しい。任期なしの助教になれたら、もはや勝ち組とさえ言えるだろう。それほど大変なのだ。昨今は助教、一部の准教授ですら2年から5年の任期付きのものが多い。しかしそれでもその種の地位につけたら非常に幸運といえよう。

その下は学術振興会の奨励研究員である。これは、給与は良いのだが、任期付きであるのが辛い。その下は職なしのボスドクで、いわゆる高学歴ワーキングプアーと呼ばれている人たちだ。私がそれだ。大学の非常勤講師、塾の講師や家庭教師、ひどい場合はコンビニのアルバイトなどをして食いつないでいる。いつかは教授、そこまでいかなくても任期なしのアカデミックポストにつくことを夢見て、研究を続けながら生活している。ポスドクのひとつの逃げ道は外国に行くことだ。外国の大学の給与つきのポスドクになるのだ。当然、任期はある。アメリカだとポスドクの上が任期付きの助教授、さらにその上が任期なしの准教授となり、任期なしの教授があがりである。

ところで私は、今言ったように、アカデミックなポストについていないポスドクである。博士課程に在学中は成績も良く、論文も数編書いたので、博士課程修了と同時に学術振興会の奨励研究員になり、東京の大学の任期付きポスドクの地位をゲットした。これで幸先の良いスタートを切ったのだが、その後が良くなかった。日本ではその後のポストがなかったので、英国の大学のポスドクになった。そこでは研究成果もかなり出た。そこまでは順調であったのだが、英国の大学の任期が切れた時に、その続きが見つからなかったのだ。どこを受けても落とされた。自分が無能とは思いたくないが、自分より頭の良い奴は世界には掃いて捨てるほどいるのだ。

しかたなく日本に戻ってきて、以前の京都の大学の指導教授の温情で大学に机だけはもらっている。これも教授の世話で京都の私立大学の非常勤講師の地位を得て、教養の科学を教えている。これだけでは生活できないので、家庭教師もしている。ひどい時はコンビニのバイトすらやった。30歳代の半ばになってこれだから、結婚はおろか恋人もいないのだ。

その私の身に驚天動地の事件が発生したのだ、その話をしよう。

高学歴ワーキングプアー

続く

   
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