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超知能への道 その3 九十四露(ことしろ)神社

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「やあ、森博士、俺がバルカンだ」とその男は帽子を取って言った。頭はもじゃもじゃの毛で覆われていた。確かに西欧絵画にあるようないでたちだが、そんな扮装は誰にでもできる。

「こんにちは、森です。ビーナスさんに言われてきました」と、乗ってみる私。

「あいつは、先に九十四露神社に行っておる。俺とキューピッドで案内しよう」

その時、空からヒラヒラと羽を動かしながら、キューピッドが地上に降り立った。ヒェー、天使のような姿の子供が空を飛んでいる。私は大いに驚いた。やっぱり、本当だったのだろうか。でも、まだ信じられない。おもちゃかもしれない。あの羽であの体重を支えられるはずはないではないかと、私は心の中で科学的なつっこみを入れていた。

「森博士、僕がなぜ飛べるのか、翼面荷重が大きすぎるのではないかと考えているのでしょう。でも僕の体重は非常に軽いので、問題ないのさ」とキューピッドが言った。

しゃべった! これは単純なおもちゃなどではない。私はキューピッドがなぜそんなに軽いか訝ったが、今はそれは問題ではない。

「さあ、森博士、案内しよう。俺が先に倒木をかたづけておいた」とバルカン。

私はだんだんと信じるほかないような気分になってきた。

以前来た時は、道が倒木だらけで、非常に歩きにくかったのだが、今はバルカンが鉈を入れたようで、倒木は整理され、歩く分には問題はない。私は前を行くバルカンと、その後ろを歩くキューピッドについて、山道を登って行った。20分ほど登っただろうか、バルカンはここだと言って、道を左にそれて藪の中に入っていった。この道は、以前は参道として整備されていたのだが、今は荒れ果ててどこが道かほとんどわからない。九十四露神社は面倒を見る人がいなくなって以来、廃神社になっているのだ。だから参道も荒れているのだ。

東山山中のこの秘密神社を知るものは、少数の東山登山愛好家を除いてはいない。とても簡単に行き着ける場所ではないからだ。この道もバルカンがすでに鉈を入れているようで、少しは歩きやすくなっていた。20分ほど登ったであろうか、やっと九十四露神社社務所についた。この建物もほとんど崩壊していて、屋根の上には倒木が覆いかぶさっている。

「ここじゃない、もっと上だ。上の本殿でゼウス様がお待ちかねだ」とバルカンは声をかけた。

私は登山の疲れと、思いもかけぬ出来事の連続で、かなりヘトヘトになっていた。あと少し登ると本殿にたどり着くのだが、もうクタクタだった。ようやく登りきったところに、少し開けたところがあり、そこにビーナスともう1人の若い女性が待っていた。

「やっと来たわね、森博士。ゼウス様がお待ちかねよ。こちらはゼウス様の娘でアテナよ」

アテナは確か学問と闘いの女神だ。兜をかぶりたてと槍を持っていた。こちらも凄い美人だ。でもちょっと怖い。

Athena

続く

   
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