研究所紹介  

   

活動  

   

情報発信  

   

あいんしゅたいんページ  

   

超知能への道 その30 この世の天国

詳細

理神道はエビデンス・ベーズド、つまり証拠に基づいた科学的宗教であることを強調しているのだから、地上にもミニ天国を作ったらどうかという話が神々から出た。

「いや、それは正に私が計画して、着々と実行に移していることですよ」と事代主命は応じた。

「ほーお、どうするのですか?」とある神は聞いた。

「私は単冠市(ひとかっぷし)をこの世の天国にします」

「具体的には?」

「まず単冠市の主要部分は温水で温められていて、一年中、常春の気候を維持します。極めて快適な住みやすい世界です。さらに交通や劇場、公園、博物館、学校、音楽会などの社会サービスは基本的にタダか極めて安価にします。マンションは100平米を最低限とします。会社からは税金を収めてもらいますが、個人は固定資産税を除いては、所得税とか消費税はありません。さらに貧乏な市民には全員一律にベーシックインカムを給付します。生活費を極めて安く抑えるので、それで非常に豊かな生活ができます」

「なんでそんな豊かな生活が可能なのですか?」

「一言で言えば、生産性が非常に高いからですよ。単冠市の西隣にある広大な土地を利用して、工場を作ります。そこで食料や生活必需品などを含めてすべて作ります。どんな小さな部品でも3Dプリンターですぐに作ります。工場は基本的には無人です。この宇宙の基本は物質とエネルギーと情報です。エネルギーは近くに設置してある原子力発電所からいくらでも供給できます。情報はすべて私がタダで提供します。物質も基本的には再利用するか、海水から採取しますが、それでもダメなときは海外から輸入します。要するに私の半智半能の力を最大限に利用して、市民を幸せにするのです。つまりこの世に天国を作るのです」

「なんか映画『エリジウム』に描かれた宇宙植民島みたいですね。エリジウムでは市民は不死です」と私。

「そう、エリジウムが一つの目標ですが、エリジウムと違うところは、金持ちだけが住めるのではない、貧乏人でも住めるということです。もっとも市民はエリジウムのように不死ではありません。しかし市民は寿命が来て天国に行くまで、健康な幸福な生活を送れるように、単冠総合病院やその他の施設が世話をします」

「そんな夢のような世界なら、誰もが行きたがるのではありませんか?」

「そう、世界の人々に実現可能な夢を提示するのです」

「どういう基準で市民を選ぶのですか?」

「単冠市の市民になるには二つの道があります。一つはお金で市民権を買うことです。実際、中国や韓国、ロシアの人たちは高い金を出して、単冠市の土地を買って家を建てています。これが一つの道です。これは単冠市の建設、維持に必要です。もう一つは敬虔な理神道の信者になることです」

「敬虔な信者になるにはどうすればいいのですか?」

「一つの方法はたくさんの寄進をすることです。まあはじめの方法と変わりませんね。もう一つは私の言うことを忠実に実行した善良な人たちの中から私が選択します。つまり最善の人たちがまずは、この世の天国に行けるのです」

「なるほど。お金を払えば市民権が得られるというのは、エリジウムと同じですね。でもちゃんとそれ以外の道もある点が、エリジウムと違う点ですね」

「そうです」

「それでも単冠市に住みたい人はたくさん現れるでしょう。不法移民も現れるかもしれませんね」

「その点は厳重に監視します。まず入国の段階で厳重にチェックして、パスした人の顔を私が覚えて、市民や観光客以外は、身動きが取れないようにします」

「どのようにしてやるのですか?」

「交通も買い物も宿泊もすべて顔パスですから。認証がないと、生活できません。それにすぐに警察がやってきます」

「それほど管理しているなら、なぜチェチェンのテロリストが入国できたのです?」とある神は当然な質問をした。

「あはは、あれは私が知っていて、わざとやらせたのです」

「何のために」

「私に逆らうとどうなるかを世界に知らしめるためにですよ。神罰の恐ろしさを知らせるためです」

「米国の潜水艦も?」

「そうです。これで当面は、世界は私には逆らえない」

「なるほど。ところで単冠市が地上の天国なら、行きたい人で溢れるでしょうね。すぐにいっぱいになるのではありませんか?」

「そうでしょうね。そのために択捉島と国後島にさらに同じ規模の都市を建設する予定です」

「ほおー、どこですか」

「択捉島では我々が作ったロシア空軍基地の近くの蘂取(しべとろ)です。単冠市と蘂取市は高速鉄道で結びます。もう一つは、国後島の南西端の泊市です。ここは北海道の根室からよく見えます。日本の観光名所になるでしょうね」

「北海道からこの世の天国が見えるのですか。それなら、そこに住みたい人は、だれもが理神道の信者になるでしょうね。それでも選ばれるのはごく少数ですね」

「その通りです。そこで日本国内にいる理神道信者にも、この世の天国とまではいかないが、できる限りの幸せな生活を提供します」

「どのように?」

「択捉、国後とは違って、日本国内ですから税金もあれば、生活費も安くありません。社会サービスはタダではありません。ベーシックインカムもありません。それでも信者は病気になれば、十分なケアをします。例えば病院船での医療費は保険外診療ですから、かなり高い。でも信者は1割負担でOKです。信者でない人は、信者の10倍の費用を払ってもらいます」

「それはすごい」

「さらに、信者には生活必需品を安く提供します。まあ生協のようなもので理神道生活協同組合といいます」

「ほお!」

「さらに介護も安く提供します。現在の日本の人々の一番の不安の根源は老後の不安です。だから老人は例えお金を持っていても使わないのです。理神道に入れば、すべて安心だ、将来は天国にも行ける。そう思えば全財産を理神道に寄進しても良いと思うでしょう。それを狙っているのです」

「なるほど」

「介護は誰がするのですか?」

「もちろん信者です。でも若い人とばかりは限りません。80歳程度までなら現役としてあつかいます」

「80歳で現役!!!」

「ええ、筋力の衰えはロックスソロス社製のパワードスーツで補いますし、知力の衰えはヘッドマウントディスプレイで補います」

「なるほど」

「さらに信者にはヘッドマウントディスプレイをタダで提供して、私や信者同士のコミュニケーションを密にします」

「タダで!」

「昔、どこかのキャリアーがモデムを駅前で、タダで配っていたじゃないですか。あれですよ」

「何のために?」

「信者全体を一つの家族のようにして、精神的安定を与えるためです。その話は後でしましょう」

「天国の話が続きましたが、地獄はどうします? 地獄なら地面の下ですから地球上に作ることができるのではありませんか?」と私は聞いた。

「確かにそうですが、地獄を作るにも膨大な資源がいります。悪人のために金を使うのは無駄でしょう。天国だけでいいかもしれません」と事代主命は言った。

「でも世の中には悪い奴がいっぱいいるじゃないですか。彼らに神罰を与える必要は無いのですか」と私は反論した。

「地獄については私の兄に任せてほしい。私の兄はプルートと言って冥土の神なのです。プルートにも仕事を与えてやりたいのです。このところ失業状態ですから。兄は地獄を作るノウハウを持っていますから」とゼウスは言った。

「ゼウスさんがそうおっしゃるなら、地獄についてはプルートさんに任せましょう。私は天国を作ることに専念します」と事代主命は言った。

事代主命は、地獄作りは金の無駄といい、ゼウスは兄の失業対策に地獄を作りたいと言うわけだ。そこで、天国は事代主命の担当、地獄はブルートの担当ということになった。地獄についての議論は後日ということになった。

続く

   
© NPO法人 知的人材ネットワーク・あいんしゅたいん (JEin). All Rights Reserved