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一帯一路とシルクロード

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中国の習近平政権が推進する一帯一路計画の陸上版はシルクロード経済計画といわれている。また中国によるウイグル人への弾圧が問題になっている。ウイグル人は昔のシルクロード沿いに住んでいる人たちである。

シルクロードとは何か?それは歴史上、中国とアジアの西の国々を結ぶ交易路であり、ローマ帝国にいたる道であった。そこで中国から輸出されたものは主に絹であったのでシルクロードと呼ばれている。現在、中国の政権がウイグル人を弾圧していると欧米からは批判されているが、中国人のメンタリティでは、そのあたりは紀元前から中国のものであったのだ。今回は中国と西域、シルクロードの関係を歴史的な観点から述べる。

シルクロード

1980年代にNHKで「シルクロード」という連続テレビドキュメンタリーが放映された。物悲しい喜多郎のテーマ音楽が懐かしい。私は米国から英語版のビデオテープを買って何度も見直したものだ。私の研究室にいたロシア人の助教授に貸したら、非常に喜んでいた。

シルクロードは中国の西にある西域(せいいき、さいいき)を東西に通る道である。シルクロードには草原の道とオアシスの道の二つがある。西域は現在の東トルキスタンつまり新彊ウイグル自治区で、シルクロードはそこを東西に横断する道である。

草原の道は中国から北上してモンゴルやカザフスタンの草原地帯を通ってアラル海やカスピ海の北側から黒海にいたる交易路である。オアシスの道は中国の西からタクラマカン砂漠の南北のオアシス伝いを通っている道だ。

西のかた陽關を出ずれば故人無からん

中国の唐の時代の有名な詩人に王維という人がいる。王維が詠んだ「元二の安西に使いするを送る」という漢詩は有名である。

渭城の朝雨 軽塵を潤し
客舎青青柳色新たなり
君に勧む更に盡くせ一杯の酒
西のかた陽關を出ずれば故人無からん

「元二の安西に使いする」元二とは元家の次男である。「安西に使いする」その人が長安から安西都護府に使いに行くのを、送ったときの漢詩だ。「西の方、陽関をいずれば故人なからん」。故人とは知り合いという意味だ。つまり中国の西の端の敦煌のさらに西の陽関をでて、さらに西に安西都護府はあったわけだ。それほど唐の支配領域は西に伸びていた。

オアシスの道 

ここではオアシスの道を中心に話す。中国の唐代の首都の長安をでて西に行き河西回廊(かせいかいろう)という狭い地帯を通って西に進むと敦煌(とんこう)に達する。敦煌から道は二つに分かれて玉門関と陽関という関所を通過する。「西の方、陽関をいずれば故人なからん」の陽関である。

その西には昔、楼蘭(ろうらん)という国があった。ロブノルという湖のほとりである。ただしその湖は、今はない。さまよえる湖と呼ばれている。そこから道はタクラマカン砂漠を挟んで南北に分かれる。

タクラマカン砂漠の北側に天山山脈という雪を頂く高い山脈がある。その天山山脈とタクラマカン砂漠の間に天山南路がある。さらにタクラマカン砂漠の南側には崑崙山脈(こんろんさんみゃく)がそびえているが、砂漠と山脈の間を通る西域南道があった。砂漠の周辺にはところどころオアシスがあり、古代からそこにはオアシス国家が栄えていた。シルクロードはそれらのオアシス国家をつないでいた。

前漢の武帝と張騫 

中国にとって西域との関わりは紀元前の前漢の時代にさかのぼる。当時の漢帝国は匈奴(きょうど)という遊牧民の侵入に悩まされていた。そこで前漢の武帝は、張騫(ちょうけん)という人を紀元前139年ころに、はるか西にある大月氏国に派遣して、同盟を結び匈奴を挟み撃ちにしようとした。実は大月氏は匈奴との戦いに敗れて北に移動して国を作っていたのだ。

張騫は100人ほどの使節団と出発したが匈奴につかまってしまった。匈奴は張騫の勇気を認めて妻を与えた。しかし張騫は10年後に脱出して大月氏国にたどり着いた。しかし大月氏はその土地を気に入っていたので、匈奴と戦う気持ちはなくなっていた。仕方なく張騫は帰国しようとする。今回は安全と思われる西域南道を通ったのだがまた匈奴につかまってしまった。しかし再び脱出して紀元前126年に中国に帰還した。13年にも及ぶ大旅行で100人いた随行員は2人に減っていた。張騫のもたらした情報の価値は大きく、紀元前123年に武帝は匈奴討伐軍を起こした。

紀元前60年には天山南路と北路が班超(はんちょう)という将軍の活躍で漢の支配下に入り、西域都護をおいて西域36国を支配した。

唐と西域

前漢をついだ後漢が滅んだ後は、西域はしばらく中国の支配を離れていたが、唐の時代になりそれが復活する。唐は640年に西域に安西都護府(あんせいとごふ)をおいた。唐は始めは高昌国に置いたが、658年にさらに西のクチャに置かれた。

西域を旅した有名な人たち

シルクロードは漢がその存在を認識する前から、商人たちはそこを通って交易していた。シルクロードを旅した有名な人として玄奘三蔵法師が入る。西遊記のモデルになった人である。三蔵法師はインドに行き、たくさんの仏典を持ち帰った。

さらに時代を下って元の時代にマルコポーロがシルクロードを通ってベニスから中国にやってきた。

まとめ

つまり習近平の一帯一路計画は、紀元前以来の中国の支配圏であったシルクロードを再現しようという野心的試みであるということだ。中国人のメンタリティでは現在のウイグル人が居住する地域は紀元前から中国のものであったのだ。

   
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