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新型コロナ: 亜鉛とクロロキン/ハイドロキシクロロキン

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新型コロナと亜鉛

新型コロナの話が続く。今回は亜鉛である。亜鉛はいわゆるミネラルのひとつである。普段はあまり気にすることはないが、亜鉛不足はたとえば味覚異常になることが知られている。この亜鉛が風邪予防や治療に効果があるのではないかということも、以前から言われていて、そのような研究もある。しかし亜鉛が新型コロナに効くという証拠はなかった。しかし、ここにとても興味のある話を聞いた。

私は新型コロナウイルスに関する情報を発信している米国のお医者さんのゼールト博士のMedCramというYouTubeチャネルを毎日聞いている。彼の話は非常に明快で、情報満載である。そのなかで今回の話の主役である亜鉛とクロロキン/ハイドロキシクロロキンについて話された(付録参照)。

クロロキンはイオノフォア

結論を先に言ってしまえば、亜鉛は肺の上皮細胞内部に入ることができれば、新型コロナウイルスの増殖を妨害する効果がある。しかし亜鉛は簡単には細胞内に入り込めない。亜鉛が細胞に入り込むのを助けるのがイオノフォアであり、クロロキンはそのイオノフォアのひとつなのである。だからクロロキンを処方すれば、新型コロナ感染症を治療できる可能性がある。クロロキンという薬品はマラリヤの薬としてひろく知られているもので、日本では処方箋がないと買えないが、外国では薬局で買える所もある。つまり広く出回っている薬品である。

クロロキンが新型コロナ感染症の治療に有効かもしれないという話は、すでに中国の経験の中からわかって来た。さらに韓国でもクロロキンが手に入らないので、そのかわりとしてハイドロキシクロロキンを用いて効果を上げている。さらにフランスでも、著名な医者が比較的少数の患者で試して、効果があることを認めた。それでクロロキンとハイドロキシクロロキンが注目されるようになった。

さらに実験室の実験ではクロロキンよりもハイドロキシクロロキンの方が、効果があることが分かっている。ただし人間を対象にした正式な二重盲検テストは、現時点ではなされていない。この非常時に正式な二重盲検テストをしている時間的余裕はないかもしれない。そもそも新型コロナに感染した患者に偽のプラセボを投与するのは非人道的であろう。

ゼールト博士の話を聞いて、一つ腑に落ちたことは亜鉛の効果である。先に亜鉛は風邪予防に効果があるような、ないようなという話をした。例えば亜鉛のサプリメントを摂ったとしても、それは肺の上皮細胞の外にある。それを細胞中にいれる機構がなければ、ウイルスの増殖を防げない。だからイオノフォアを同時にとれば、亜鉛が効くというアイデアだ。

クロロキンをめぐるトランプと科学顧問の暗闘

クロロキンの話は予想以上の展開をみせる。トランプ大統領がスピーチの中でクロロキン/ハイドロキシクロロキンが新型コロナに効くと言ったのだ。多分周りの誰かが教えたのだろう。しかしこれには思わぬ副作用が伴った。トランプの話を聞いたある男性が、魚タンクの洗浄用のクロロキンを飲んで死んだという。奥さんも重体だそうだ。常識で分かりそうなものだが、米国の国民の科学レベルを表す逸話ではある。クロロキンにしろ、ハイドロキシクロロキンにしろ、副作用があり使用には注意が必要で医師の処方の元に使うべきだ。

トランプはさらにクロロキンが米国食品医薬品局(FDA)の認可を得ていると言った。ところがそれはあとでFDAに否定された。クロロキンを新型コロナ感染症の治療に使うことの十分な研究がないからである。官僚組織としてのFDAは安全性を重視する。つまりトランプは役人に恥をかかされたのだ。もっともFDAは後に、クロロキン/ハイドロキシクロロキンの使用許可を与えた。

さらに話は続く。新型コロナウイルスのタスクフォースの顧問である、米国アレルギーおよび感染症研究所所長のアンソニー・ファウチ博士は、記者会見でクロロキンの話を聞かれて、それは単なる逸話だと否定したのだ。トランプ大統領はまたも公衆の面前で恥をかかされたのだ。記者会見の写真を見ると、ファウチ博士が話している後ろで、トランプ大統領は渋い顔をしている。

これは友人から聞いた内部情報だが、トランプ大統領がアレルギー感染症研究所を訪れて、自分の意見に逆らう奴はクビにしろと言ったらしいが、それはできなかったようだ。たしかにあれほど、公衆の面前で侮辱されたら怒るのは当然だろう。ファウチ博士はタスクフォースの主要メンバーであり、彼をクビにすることは米国の新型コロナ対策の根幹をひっくり返すことになる。

ただ私の印象ではFDAもファウチ博士も役人だなあと思う。クロロキンとハイドロキシクロロキンの効果は、査読論文がないにしても中国、韓国、フランスで効果があったという経験があり、またゼールト博士の言う機構ももっともらしい。だからファウチ博士も、単に否定するのではなく、やってみますといえばよかったのだ(注 やることに決まった)。さらにファウチ博士はあまりの忙しさに、そもそも勉強している時間がないのではないかと感じる。ここは政治家としてのトランプ大統領と、学者というよりは役人であるファウチ博士の差だと思う。ちなみにファウチ博士は79歳だ。私より年上なのに元気だなあ。

マスメディアとトランプの暗闘

話はさらにややこしくなる。マスメディアが参戦したのだ。リベラル系のマスメディアはトランプ大統領が大嫌いである。なんとかしてトランプの足を引っ張りたいとうずうずしている。そのトランプがクロロキン/ハイドロキシクロロキンを推奨したものだから、マスメディアはなんとかしてクロロキン/ハイドロキシクロロキンの足を引っ張りたい。それらに効果がないと言いたい。

そこで「専門家」と称する一部のテレビ役者の医者からこれらは効かないというお墨付きをもらって、トランプを攻め立てた。なんでそんな効きもしない薬を勧めるのだと。マスメディアはクロロキン/ハイドロキシクロロキンが新型コロナに効いたらいいなとは思わずに、どうか効かないでほしいと願っているのだ。実際、メディアはレミデシベルという別の薬を押している。これはファウチも押しているからだ。レミデシベルの効果を検証する研究も、効くという話と効果がないという話がある。クロロキン/ハイドロキシクロロキンも同様だ。それは実は日本のアビガンにも言える話なのだ。つまり現状では、いわゆる銀の弾丸という、絶対これだという薬はまだないのである。

これらのニュースを追っての感想だが、トランプ大統領をはじめとする政権幹部の無能さ、それをサポートすべき顧問団の頑なさ、トランプの足を引っ張りたいだけのメディアと、三者三様の争いが米国の国益を大いに損ねていると思う。これが、米国が世界一の感染者数と死者数を出している原因ではなかろうか。

まとめ

クロロキンまたはハイドロキシクロロキンが新型コロナ感染症に効果があるという、中国、韓国、フランスの経験がある。またその作用機序に関するゼールト博士のもっともらしい話もある。しかし米国ではこれが政治問題と化して本質から離れてしまった。

付録

ゼールト博士のMedCramの該当部分

コロナウイルスは肺の上皮細胞のACE-2受容体に取り付いて一体化して、自分のRNAを上皮細胞内に入れる。すると細胞内のリボゾームはそれを複製してしまう。つまりウイルスは人間の細胞を乗っ取って自分のRNAの複製を作る。

ところが亜鉛はその作用を妨害することが知られている。しかし単に亜鉛のサプリを飲むだけで十分であろうか? 言えることは、亜鉛不足はよくないだろうということだ。

以下の動画はコロナウイルスがどのようにして人間の細胞に取り付いて自分自身を複製するかという分子生物学的な説明で、少し難しいが非常に重要である。

Coronavirus Epidemic Update 32:韓国の重要なデータ、亜鉛はCOVID-19の予防に役立つか? (日本語字幕あり)

問題は細胞外の亜鉛は簡単には細胞内に入れないということだ。それを可能にするのがイオノフォアというものだ。ところがクロロキンはイオノフォアであるという別の論文がある。ということは亜鉛とクロロキンを同時に処方すれば、コロナウイルスの増殖を妨害することができるのではないか、というのがゼールト博士のアイデアだ。

実際、韓国ではハイドロキシクロロキンを処方して、致死率を非常に低く抑えている。また中国でもクロロキンは新型コロナの標準的な薬となっている。

Coronavirus Epidemic Update 34: US Cases Surge, Chloroquine & Zinc Treatment Combo, Italy Lockdown
(コロナウイルス伝染病更新34:米国の感染者数爆発、クロロキンと亜鉛の同時処方、イタリアのロックダウン)

以下の論文はゼールト博士のアイデアと同じことの提案している。

Does Zinc Supplementation Enhance the Clinical Efficacy of Chloroquine/
Hydroxychloroquine to Win Todays Battle Against COVID-19?
(亜鉛サプリは現在のCOVID-19に対する戦いに勝利するためにクロロキン/ハイドロキシクロロキンの治療効果を高めるか?)

2020/5/16 追記

ハイドロキシクロロキンとアジスロマイシンに加えて亜鉛を追加することの有効性に関する論文が出た。それによると、患者の容体が悪化する前に亜鉛を追加すると、有意に退院時期を早められる。しかしICUに入った患者に亜鉛を追加しても効果はない。亜鉛はコロナウイルスの増殖を抑えるのであり、ひとたびコロナウイルスが増殖して、サイトカインストーム状態に陥った患者には効果的でないのは当然である。ともかくもハイドロキシクロロキンとアジスロマイシンは亜鉛も加えて適切に使えば効果があるという初めての証拠が出た。つまりゼールト博士のアイデアは正しかったのだ。トランプ憎しのあまりハイドロキシクロロキンをたたいていたメディアはどうする。たぶん無視だろうな。メディアとは無責任なものだから。

Coronavirus Pandemic Update 71: New Data on Adding Zinc to Hydroxychloroquine + Azithromycin
(コロナウイルス伝染病更新71:ハイドロキシクロロキンとアジスロマイシンに亜鉛を加えることに関する新しいデータ)

 

2020/5/23/ 追記

上にある動画が再生できなくなっている。削除されたからだ。その経緯を調べると実に興味深いことが分かった。ハイドロキシクロロキンが効くという動画はWHOの見解と反するとしてYouTubeが削除したのだ。この動画がポルノとかヘイトを煽るものならともかく、純粋に科学的で政治色は一切ない。それでもWHOがハイドロキシクロロキンは効かないという見解を出したので、それに反する動画はYouTubeが削除するのだ。YouTubeはWHOというお上がダメといえば、科学的議論ですら認めないのだ。ちなみにYouTubeの親会社はGoogleであるから、この検閲はGoogleの方針であるともみられる。

米国は自由の国、表現の自由がある国と思っていたし、米国人もそう言うだろうが、どっこい、中国並みの言論の自由のない検閲国家であったのだ。しかも国家による検閲ではなく、民間会社による検閲なのだ。もう一度言うが、この検閲はポルノやヘイトのような社会的に有害なものではなく、純粋に科学的論争に対して、一方の側に肩を持つ検閲なのだ。その肩とは、反トランプの肩であるから、きわめて政治的な検閲である。実に興味深い発見だ。

WHOという組織もダメだな。権威主義体質だ。そもそもマスクをするなと言ったのもWHOだ。欧米でコロナが猖獗を極めたのも、WHOにも責任がある。トランプがWHOにカネを出さないといったのも、これならありかもしれない。有害な組織なら解体しても良いかもしれない。

上記のYouTubeで紹介された論文を以下に示す。

Hydroxychloroquine and azithromycin plus zinc vs hydroxychloroquine and azithromycin alone: outcomes in hospitalized COVID-19 patients
(ハイドロキシクロロキンとアジスロマイシンに亜鉛を追加した場合対ハイドロキシクロロキンとアジスロマイシンだけ:COVID-19の入院患者の結果)

 2020/6/6 追記

ハイドロキシクロロキンをめぐる奇々怪々な事件

事件はさらに奇怪になっていく。5/23の追記でゼールト博士の動画が削除されたと書いたが、それが復活していたのだ。その理由を調べると、実に奇怪な事情が絡んでいることが分かった。

上でも述べたようにハイドロキシクロロキンはトランプ大統領が効くと勧めた。トランプ大統領の足を引っ張りたい(リベラル系の)メディアは、なんとかしてハイドロキシクロロキンが効かないという根拠を求めていた。そこに都合よく登場したのが、以下の解説記事に述べられた論文である。その論文は英国のLancetという権威ある雑誌に掲載された。論文によれば、ハイドロキシクロロキンはコロナ感染症に効かないだけでなく、むしろ副作用が多くて有害だというのだ。米国のマスメディアはこれに飛びついた。そしてトランプ大統領を攻め立てた。

新型コロナ治療薬が入院患者の死亡・心疾患リスクを増加させていたという調査結果

ところがである。その論文に使われたデータに疑義があるとして120名もの研究者がLancetに抗議の書簡を送ったのだ。

Covid-19 study on hydroxychloroquine use questioned by 120 researchers and medical professionals

Covid-19にハイドロキシクロロキンを用いる研究に関して120名の研究者と医学関係者が疑問を呈した

というのは、上記の研究に使われたデータは、論文の共著者であるサパン・デサイ氏が運営する、病院に関するデータベースを保有する団体・Surgisphereによって提供されたデータである。英国の新聞ガーディアンの調査報道によると、オーストラリアのデータに矛盾があることをオーストラリアのガーディアン紙が発見した。そこでSurgisphereについて調べると、社員が7人の小さな会社で、社員は医学やデータベースの専門家ではなく、SF作家、ホステス、アダルトモデルなどであることが分かった。

これらの疑義を突き付けられた論文の著者はついに論文を撤回した。

新型コロナ治療薬の可能性を持つヒドロキシクロロキンの危険性を主張した論文が撤回される

さらにLancetだけでなく、米国の権威ある雑誌であるThe New England Journal of Medicineに投稿された、同じ著者たちの論文も撤回された。権威ある雑誌としては大失態である。

トランプ大統領と対立するWHOはハイドロキシクロロキンの研究をストップさせていたが、上記論文の撤回を受けて、研究を再開させた。WHOの大失態である。

WHOが新型コロナ治療薬としてヒドロキシクロロキンの研究を再開

これを受けてYouTube/Googleもゼールト博士の動画の削除を取りやめたのだ。それが一連の事件の顛末である。

私の憶測

以下はこの事件をめぐる私の憶測である。

クロロキン/ハイドロキシクロロキンは古くからあるマラリア薬で、製薬会社にとって儲けは少ない。クロロキン/ハイドロキシクロロキンの有効性を否定したファウチ博士は別の薬のレミデシビルを推奨した。これは米国の会社が比較的新しく開発した薬で、儲けは大きい。日本でも米国の圧力で急遽認可された。私は今回の事件は、安いハイドロキシクロロキンではなく、高いレミデシビルを使わせることにより、巨大な儲けを手にしようとした一群の人たちの陰謀ではないかと思う。そうだとしたら科学上の一大スキャンダルである。今後の事件解明を待ちたい。

   
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