人類の生存危機
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- 作成日 2021年6月01日(火曜)15:51
- 作者: 松田卓也
いったいなんのことか? 人類は生まれて250万年たち、現生人類のホモ・サピエンスが生まれてからでも20万年が経過した。農業開始後1万年、文明が始まって5千年が経つ。この先、人類はどうなるのだろうか。宇宙の終わりまで、生き続けるのだろうか? その問いに対して、人類文明はあと百年くらいしか続かないという可能性がある。つまり人類が滅亡する可能性である。今回はその可能性について話す。
いままでの文明が例えば5千年も続いてきたのに、なぜあと100年しかないのか? それは以前取り上げたフェルミ・パラドックスと関係がある。フェルミ・パラドックスとは、なぜ宇宙人の文明を見つけられないのかというパラドックスだ。十分に文明が発達した宇宙人がいるとすれば、彼らは何らかの信号を発しているはずだ。天文学者は50年以上も宇宙文明探しをしてきたが、まだ発見していない。また過去に宇宙人が地球に来たという科学的に確立した証拠もない。
一方、天文学的にも生物学的にも、宇宙には人間文明と同等か、それより進んだ文明がないはずはないと思われる。それなのになぜ見つからないのか。これがフェルミ・パラドックスである。現在の銀河系の中にどのくらいの数の宇宙文明があるかを決めるドレーク方程式がある。いろんなファクターの掛け算なのだが、そのなかで最もよく分からない要素が、文明の継続時間である。これが1万年以上もあれば、宇宙文明はたくさん見つかって良いことになる。逆に見つからないということは、科学技術の発達した宇宙文明の継続期間が数百年程度だとすると、宇宙文明が見つからないこととつじつまが合う。人類文明は電波を発明してからまだ百年程度しか経っていない。だから後、百年で滅びるとしたら、つじつまが合うという計算なのだ。
それでは人類滅亡にはどんな可能性があるか。自然要因と人的要因がある。自然要因としては、小惑星・彗星・巨大隕石の衝突がまずある。実際、恐竜は6500万年前に突如として滅亡した。それは巨大隕石の衝突が原因だと言われている。
大火山の噴火も人類滅亡の大きな要因だ。7万3000年前にインドネシアのスマトラ島のトバ火山が大噴火した。火山灰が空を覆い、気温が3-3.5度も低下した。そのため人類の人口は1万人にまで激減したとされる。
そのほかの自然要因としては、近くの星の超新星爆発によるγ線照射とか、太陽面の大爆発による巨大太陽フレアとかがある。しかし巨大太陽フレアでは欧米とか日本のように電気に頼っている先進国は滅びるかもしれないが、発展途上国は大丈夫だろうから、人類滅亡には至らないであろう。
あと映画でおなじみの宇宙人の侵略もあるが、それは考えにくい。地球温暖化もたしかに問題だろうが、やはり人類が滅亡するとは考えにくい。例えば縄文時代は現在よりはるかに温度が高く、そのため海面も高かったのだ。関東平野などほとんど水没していた。それでも縄文人は問題なく生き延びたのである。
先に人類滅亡の可能性の自然要因について述べた。しかしこれらはあるとしても、あと百年とかいった短いものでは多分ない。だから人類が滅亡するとしたら、それは人的な要因だろう。
2008年にオックスフォード大学で開かれた国際会議で、人類滅亡の可能性に関する国際会議が持たれた。その時の結論では、人類が2100年までに滅亡する確率は19%とされた。それを高いと見るか低いと見るか。私はとても高いと思う。それでは個別の原因は何だろうか。
まず分子ナノテクノロジー兵器が一位で5%である。つぎに超知能によるものが5%。これは映画「ターミネーター」などでおなじみのパターンだ。核戦争以外の戦争が4%、人為的な伝染病が2%、核戦争が1%、ナノテクノロジーの事故が0.5%、自然の伝染病が0.05%、核テロリズムが0.03%と続く。これらの数字は非常にあやふやなもので、この数字にどれほどの意味があるかはわからない。しかし2100年までに人類が滅亡する確率が19%と専門家が見ているということは、留意すべきだ。この確率が1%以下であれば、たぶん無視して構わないだろうが、10%を越えるとなると、無視はできない。
人為的要因のなかで大きなのがナノテクノロジーを利用した兵器とその事故である。あわせて5.5%もある。ナノテクノロジーとは、非常に小さなロボット、たとえば赤血球サイズのロボットを作ることだ。これをナノボットと呼ぶ。これを自由に操ると、映画「トランセンデンス」や「地球が静止する日」に出てきたスマートダストができる。小さな埃のようなものである。「トランセンデンス」ではスマートダストが集まって太陽光パネルを作った。
ナノボットを兵器に使うとは、目に見えないナノボットを敵方に潜入させて、破壊工作を行うのである。ナノボットの事故とは、自然界に放たれたナノボットが勝手に増殖して地球を食い尽くしてしまうものである。「地球が静止する日」では、宇宙人により地上のあらゆるものがダストにされてしまった。これをグレイ・グーとよぶ。
人工知能の危険性については、今回は触れない。私はいろいろある危険性の中で、人為的な伝染病というのが、最も危険だと考えている。これは人為的に作った細菌やウイルスなどの微生物を、兵器として使うこと、つまり生物兵器である。危険な兵器として、核兵器、化学兵器、生物兵器が挙げられる。このなかで化学兵器では人類は滅亡しないだろう。
しかし生物兵器は自然増殖するから怖いのだ。核兵器を作るには膨大な資金と施設が必要だ。だから例えば北朝鮮のような国家にしか作れない。しかし最近はバイオテクノロジーの進歩で、危険な微生物を人為的に作ることは簡単なのだ。個人でもできるし、テロリストにもできる。昨今では高校生でも、ちょっとした設備さえあればできる。このような設備は、世界中の大学や研究所にいっぱいある。核施設とは比べ物にならないほどたくさんあり、また取り扱いも容易なのだ。
まとめると人類文明が21世紀中に滅亡する確率は19%もあるという専門家の意見がある。滅亡の原因には自然要因と人為的な要因がある。人為的な要因で高い確率を持つのは、ナノテクノロジーの兵器利用と事故、人工知能、バイオテクノロジーの悪用である。私は個人的にはバイオテクノロジーの悪用またはその事故の可能性が高いと思う。