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技術的特異点にさらに一歩近づく・・・Siriを知りませんか

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アップルの新しいスマホであるiPhohe 4Sが注目を集めている。名称が5ではなく4Sであったので、人々はがっかりして一時はアップルの株価は下ったと言う。しかしその実態が明らかになるにつれて、それはハード的にもソフト的にもiPhone4のマイナーバージョンアップではないことが明らかになり、爆発的に売れている。4SのSはfor Steveだという説まである。

4Sでもっとも新しいところは人工知能のSiri である。まだベータ版であるが世界中の人々の注目を集めている。YouTube には多くのビデオがアップされている。

Siriは人間の声に反応して色んな事をしてくれる電子の個人的秘書のようなものである。できることは電話をかける、電子メールを出す、時間を教える、リマインダーを設定する、天候や株価を教える、音楽をかける、口述筆記をする等々、色々ある。

現状で対応している言語は英語、フランス語、ドイツ語のみである。残念ながら今年は日本語対応はない。来年には日本語、韓国語、中国語、イタリア語、スペイン語に対応する予定であるとされている。英語もアメリカ、英国、オーストラリアの発音がサポートされている。ここが問題で、日本語的発音はなかなか受け付けて貰えない

私はSiriに色々と話かけてみた。かなり通じるのだがどうしても分ってもらえない単語がある。家内もSiriに話しかけてはー喜ー憂している。そのうちにだんだんコツが分ってきた。分り易くするためにゆっくり話しては逆効果でむしろ自然のスピードで話すのがよい。ていねいに話すよりはむしろブッキラボウに単語の羅列の方がよい。例えばStart the musicと言うより単にMusicと言った方が伝わりやすい。というのも一つでもSiriが理解できない単語があると変な解釈をすることがあるためだ。また時々聞きまちがえて、聞いたこともない、とんでもない所に電話しようとすることがあるので用心が必要だ。

アメリカ人はその点、自然に話しかけて十分に通じている。聞き方に決ったものがあるのではなく、明日の天候を聞くのに「明日の天気は何だ?」と聞いても「明日は傘が必要か?」と聞いても良い。つまりSiriは文脈を理解している。しかし完全に文脈を理解できるなら日本人のマズイ発音も理解してもよさそうなものだがそれはない。つまり各単語を正しく理解しないと文脈の判断ができない。私の英語の発音が多少まずくても外国人はほぼ正しく理解してくれる。その意味ではSiriはまだSilly(バカ)である。英国人でもスコットランド訛りの発音はなかなか理解されない。

YouTubeでアメリカ人は色んな事を試みている。しかし聞くことはだいたい決っている。アメリカ英語でのSiriは女性の声であるので、一番多いのは「愛している」というものだ。それに対するSiriの答えにはいくかのパターンがある。「止めて!」、「私たちまだ十分に知り合っていないじゃない」、「そんなこと他の携帯電話には言わないでね」ちなみにイギリス英語でのSiriの声は男性である。

死体を隠したいのだが」という質問に対してはSiriは沼地、埋める、ダム、鋳物工場、鉱山と5種類の案を提案する。あるカナダ人が「埋める」というと、カナダではサポートされていませんと答えた。実はレストランの案内とかの地図を必要とするサービスは現状ではアメリカ国内しかサポートされていない。

人生の意味は何か?」という質問に対しては複数のとても意味深な長い回答が用意されている。「自殺したい」という質問には「近くの精神科を案内します」、「妻と離婚して君と結婚したい」に対しては「近くの弁護士を招介します」というのがあった。

「君と結婚したい」というのはよくある発言で、それに対してSiriは「私のエンドユーザー条項には、結婚は含まれていません、ごめんなさい」とか、はぐらかす事が多い。私がMarry meというと、Marryの発音がどうしても通じず「トルクメニスタンの地図はありません」と言われた。マリーをトルクメニスタンの町の名前と誤解されたのだ。あるアメリカ人はSiriと歌のかけあいをしている。結婚してくれと何度も言うとSiriがそれにさまざまな答えをする。とてもユーモラスで意味深だ。

Siriは別の有名な人工知能システムであるWolfram Alphaと連携していて、ある種の質問はそちらにまわされる。例えば128の平方根はという質問にはWolfram Alphaがていねいな解答をする。私が「神は存在するか? 」と聞くとその質問にはWolfram Alphaが答えた。「すみません、私がいかに強力でも単なる計算知識エンジンですので、その質問には簡単な答は出せません」また「君は神か?」という質問には「お答えできません」と来た。なかなかやるじゃあない。

Open the Pod bay doors」というのもよくある発言だ。これは映画「2001年宇宙の旅」で人工知能のHALが人間に反抗を始めた時のシーンに出てくる。宇宙船ディスカバリー号のHALがボーマン船長以外を殺してしまう。船外に出た船長がHALに宇宙船のドアを開けて中に入れてくれと言う。それに対してHALは「お気の毒ですがそれはできません。満足しましたか」と答える。Siriに同じことを言うと同じ答えが帰ってくる。Siriを開発した技術者のユーモアであろう。何度も言うと別の解答も用意されている。

このようにSiriはまだ不完全な所はあるにしても驚くべきものであることは確かだ。Siriを開発したのはアップルではなく別の会社である。それをアップルが売収したのだ。Siriの本来の開発日的は軍事的なものだったという。兵器に話しかけて操作しようという目論みらしい。とんでもない話だ。聞きまちがいをされてトンデモない所に発砲しないとも限らない。それこそ自分が撃たれる可能性だってある。SF映画にありそうなシーンである。

それはともかく現状でここまで行けるのだからもう10年もたてば恐るべきことになるだろう。筆者が当ホームページで連載しているWeb小説「悪の秘密結社猫の爪による世界征服計画」で描いた人工知能は、Siriをさらに強力にした「文殊菩薩」というシステムである。

人類がコンピュータに支配される日、技術的特異点は一日一日近づいている。

   
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