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2016年3月 - 20160305

 

 

3月30日 (水曜) 府立植物園、御所

2016-03-30 (水曜) 府立植物園、御所

私は京都に住んでいるので、桜の花見の名所には困らない。というか花見をしないと、その年はなんか重大なものを忘れたような気になる。この歳になると、これが最後の花見になるかもしれないので、徹底的に花見をする事にしている。桜にはまだ少し早いかもしれないと思ったが、Facebookでいろんなお友達が桜の写真をアップしているのを見ると、行かねばという気になる。というわけで今日は家内を連れて府立植物園に出かけた。しかしここはまだ少し早いようであった。5分咲きといったところか。それでもたくさんの人々が出ていた。週日であるので働いている男性は少なく、主に小さな子供を連れたお母さんが多かった。当然、時間のある老人もいる。結婚式の衣装を着た若い男女もいた。ここは写真を撮るのに適しているので、花見のシーズンには結婚式を挙げたばかりのカップルがプロの写真家に記念写真を撮ってもらっている事が多い。12時過ぎにカフェに行くと満員であったので、ベンチでクロワッサンとコーヒーの軽食をとった。それから時間を計ってカフェに行き、焼きそばの昼食をとった。

その後は地下鉄に乗り、烏丸今出川で下車して京都御苑に行った。旧近衛邸後近くのしだれ桜は満開であった。というか9分咲きといったところか。まだつぼみの桜もあったので、これから一週間ほどが見頃であろう。

3月26日 (土曜) イノベーションアワード、シンギュラリティサロン

2016-03-26 (土曜) ナレッジイノベーションアワード、シンギュラリティサロン 

今日は以前から応募していた第3回ナレッジイノベーションアワードの最終選考である。我々はコト部門で「シンギュラリティサロン」を応募していた。一緒にシンギュラリティサロンを運営しているXOOMSの保田さんはTwee-shirtでモノ部門にもエントリーしている。すでに2月末でウエブによる人気投票が行われ、その時点ではシンギュラリティサロンは3位、保田さんは2位につけていた。

昨日に打ち合わせをするから来いと言われたのだが、私は3/26は東京で講演だから行けなかった。本日の11時から打ち合わせというコトにしてもらった。会場はグランフロント前のテント広場である。私はここに足を踏み入れたのは初めてである。会場に入ると中高生部門にエントリーしている生徒達、それからモノ部門、コト部門と練習をするという。マイクのつけ方、壇上に上がって話の始め方、終わりのサインなどを教わった。午後1時から本番である。中学生、高校生のプレゼンでは、審査員の(好意的な)質問が行われた。なかなか堂々としたものであった。ただし中学生のほとんどが原稿を読んでいたのは、仕方ないこととはいえ、プレゼン技術的にはマイナスである。その点、高校生ははるかに上手であった。ちなみに審査員長はCGで有名な川口洋一郎東大教授であった。その他、知っているところでは元グーグル副社長、グーグル日本社長の村上憲郎氏がいた。

モノ・コト部門は4分のプレゼンだけであった。私は共同主催者の塚本昌彦神戸大学教授と掛け合いで話すことにした。4枚程度のPPTをあらかじめ保田さんに作ってもらい、そのページめくりと時間管理は塚本さんにお願いした。塚本さんが話の口火を切り、私がそれに答えるという形でプレゼンを行った。当然のことだが4分はあっという間に過ぎてしまった。たの人々のプレゼンも大したモノだった。とくにヘボコン・コンテストは面白かった。ロボット・コンテストなのだがヘボさを競うというユニークな発想であった。

それが終わった後、正直言って私は疲労困憊した。昨日の東京出張がこたえた面もある。この後、外国人のプレゼンがあり、1時間後に審査発表、それから懇親会へと続く。しかし私は6時からナレッジサロンでシンギュラリティサロンの講演を私自身が行うことになる。体力の保存も考えて、私は共催者の根本茂さん(ブロードバンドタワー)と一緒にナレッジサロンに撤退した。そして夕食のためにうどんを食べた。話していると、ナレッジサロンの受付を手伝っていただいている女性が来られて、なんと我々は優秀賞を獲得したのだという。保田さんもモノ部門で優秀賞だという。グランプリは予想どうりヘボコンであった。我々の優秀賞は正直、非常に驚いた。多少の自信はあったのだが、それでも2-3位がいいところかもしれないと思っていた。内容的には1位になっても当然と思っている。でもプレゼンの面白さや意外性など、その場の雰囲気的な面では必ずしも一位とは言えない。やはり審査員は本質を見ていたと思う。敬意を表したい。

第14回シンギュラリティサロン@大阪

夜の6時からは私がナレッジサロンのプレゼンルームで講演した。事前の募集では定員の100名に達していた。我々のこれまでの経験では、必ずドタキャンが入るので普通は席に余裕がある。それを見越して、私はアワードのプレゼンで、今晩のイベントを告知した。それに応じて何人かの特別参加があった。特筆すべきは中学生が父親に連れられて参加したことだ。講演後に挨拶に来られた。講演のPPTはシンギュラリティサロン東京と、昨日の日経コンピュータでの講演と同じものである。少し難しい、専門的すぎるかなと危惧はした。なぜなら超知能の具体的な作り方に関して、HTM理論に言及しているからである。

講演でも話したのだが、シンギュラリティサロンは「日本からシンギュラリティを起こそう」を旗印に掲げて、月に一度、大阪と東京で各界のキーパーソンに講演してもらうという企画である。大阪では昨年初めから現在に至るまで13回行った。シンギュラリティの広報活動が目的ではあるが、私としてはキーパーソンを発掘する目的もあるのだ。最大の収穫は昨年の7月に大阪で、今年の1月に東京秋葉原で講演していただいたPEZYコンピューティングの齊藤元章さんである。この人は真の天才だ。次に私にとっての驚くべき天才・鬼才は2015/11/21に講演された東大医学部の光良俊二さんだ。他の人はすでに確立した立派なキーパーソンであり、意外性は少ない。ただし2016/2/27に大阪で行われた第13回で講演された井上智洋さんは経済学者という点で異色であった。講師選択の私にとってのポイントは、人材発掘にあるので、あまり老大家を呼ぶことは考えていない。現役パリパリの人で、まさにシンギュラリティを起こせそうな人である。

3月25日 (金曜) 日経コンピュータ講演、インタビュー

2016-03-25 (金曜) シンギュラリティ・インパクトセミナー講演、時事通信社インタビュー

朝8時に家を出た。バス・地下鉄を乗り継いで京都駅に行く。そこから新幹線に乗り東京へ、山手線で一駅戻り有楽町へ、そこで地下鉄の有楽町線に乗り換えて永田町で降りる。徒歩で都市センターホテルに行く。今日はここのコスモスホールで日経BP社主催の「シンギュラリティ・インパクト・セミナー AI/ロボットが変える産業と社会」で講演する。12時までには講師控え室に来てほしいという事であった。少し余裕を見て到着した。

定員が100人との事で比較的小規模なセミナーであった。受講料がなんと29,800円だと言う。講師は4人である。私が主催しているシンギュラリティサロンは無料の上に飲み物と食べ物のサービスまで付くのだが。終わった後で、いつもの通り聴衆の何人かと名刺交換して話をした。人工知能関係のビジネスを始めたいので、コンサルタントを紹介してほしいという話であった。

終わった後で、階下の喫茶店に移動して、時事通信の記者から1時間ほどインタビューを受けた。時事通信の記事は地方新聞が買っていると言う。地方新聞がその記事を掲載するかどうかは、新聞社の裁量だそうだ。

3月15日 (火曜) 春画展

2016-03-15 (水曜) 春画展

京都で春画展をやっていると言う。えらい人気のようで長蛇の列だそうだ。岡崎の細見美術館で4月10日までやっている。私は細見美術館の存在を知らなかった。都メッセの西側で疎水べりにある。茶色のレンガの建物でなかなかしゃれている。行ってみて驚いた。確かに長蛇の列で、整理員までいる。1時間待ちを覚悟したが、実際は30分ほどで入れた。内部も長蛇の列である。その列に並んでゆるゆると進んで行く。他の展覧会でこれほど混むものは少ないであろう。私が若い頃なら多いに興奮したと思うが、今やネット時代で春画と言っても、いつでも見れるから冷静なものである。私が興味を持ったのは、春画自体より客層であった。女性が多い、特に若い女性が多い事に驚かされる。常識的に言えば好色そうな中年男性が多いと思うのだが、確かにその手の人もいるが、多くは女性であった。若い男女のカップルも一組見つけた。目を引いたのは松浦家の巨大な屏風、鎧を着た男女の図で、女の鎧のくさずりを上げると見えるという趣向だ。有名な蛸と海女の図は最後にあったが、小さくて迫力には乏しかった。

3月13日(日曜) シンギュラリティサロン

2016-03-13 (日曜) ジャパンスケプティックス総会、シンギュラリティサロン東京

今日は東京でジャパンスケプティックスの運営委員会、総会、公開講演会がある。シンギュラリティサロンの公開講演会と共催にした。というのもこのところジャパンスケプティックスは会長の私の不徳の致すところで、極めて低調になっている。実際のところは私の精力の多くがシンギュラリティ関係に割かれているからだ。昨年度は大阪のグランフロントで総会、公開講演会を行った。昨年のテーマは「研究不正」であった。その時も、会員の参加はすくなく、公開公募した一般の参加者が大部分を占めた。というわけで、今年も会員の参加が少ないことを憂えて、シンギュラリティサロンとの共催にして、私自身が講演することにした。そうしたら効果絶大であった。公募した定員の80名が4時間で満席になったのだ。スケプティックスの運営委員と会員のために10席を用意したが、結局、こちらは12名であった。実はこの数は従来になく多いのである。会場はシンギュラリティサロンで従来使っている秋葉原ではなく、スケプティックスで従来使っていた竹橋の科学技術館の会議室である。科学技術館自体も日曜ということもあり、混んでいて、昼食のときに地下の食堂に入れず、昼食なしで講演に挑んだ。

運営委員会が11:00-12:30、総会が13:00-13:30、公開講演会が13:30-16:30であった。私の講演は1時間半で、残りの1時間半を質疑応答に当てたが、いつもどおり極めて活発な議論が展開された。GoogleのAlphaGoが人間に勝ち越したので、シンギュラリティが近いという雰囲気の中、私は超知能の作りかたに関する私の計画の話をした。詳細はスケプティックスの会報に書くつもりである。

京都の家に帰り着いたのは9時を過ぎていた。朝7時に家を出たので、本日は強行軍であった。

ちなみに今日はイ・セドル氏はAlphaGoに対して一矢を報いた。これで彼は1勝3敗となった。全5戦だから、敗北は確かなのだが、人工知能に対して一勝でもしたということは大きい。つまり人工知能といえどまだ完全でないということだ。

週刊誌から人工知能の関する電話インタビューがあり、50分も話した。

3月12日 (土曜)あいんしゅたいん総会、誕生日

2016-03-12 (土曜) あいんしゅたいん総会

本日は午後1時からNPO法人あいんしゅたいんの総会が事務室で行われた。たまたま本日は私の73歳の誕生日でもあり、皆さんに祝っていただいた。坂東理事長はわざわざケーキまで作ってくださった。佐藤文隆名誉会長の誕生日も3月なので、一緒に祝った。

今日の第3戦は総会の最中に始まった。会が終わって、早々に帰宅して調べてみたらやはり人工知能が勝った。これで3勝目である。全5戦であるので、これで人工知能の勝利が確定したことになる。シンギュラリティを研究しているものの目から見ると、まさに歴史的な一瞬であった。「人類オワタ!!」

 

3月9日(水曜) AlphaGoが囲碁で人間に勝利

2016-03-9 (水曜) AlphaGoがイ・セドルに勝利

ついにやった。Google傘下のDeepMind社の囲碁ソフトAlphaGoと韓国のイ・セドル9段の対戦で人工知能が勝利した。画期的なニュースである。前日イ・セドルは英国の新聞Finantial Times(電子版を購読している)のインタビューで、絶大な自信を示し、もし人工知能が自分に一勝でもしたら、それは人工知能の勝利だと認めようとまで豪語していた。昨年10月にAlphaGoは囲碁のプロであるヨーロッパチャンピオンに対して5戦全勝しているのだが、そのチャンピオンは2段であり、世界的ランキングではかなり低い。その棋譜を研究したイ・セドルは「この程度では自分に勝てない。5ヶ月あったが、その程度では進歩しない」としていた。同じく中国のチャンピオン柯潔(カー・ジエ)九段は、「人間が勝つ、全財産をかけても良い」と豪語していたのだ。

それがイ・セドルがなすすべもなく人工知能に敗北したことは、これは人類全体に対する警鐘というか、人類の黄昏の始まりである。私は人類よりは人工知能の味方なので、とてもうれしい。このまま5戦全勝して、生意気な人類の鼻を明かしてほしい。

イ・セドルだけではない。人工知能の専門家も人工知能がここまで強いとは、ほとんど誰も想像していなかった。人工知能が囲碁で人類に勝つには、後10年、早くても5年はかかるとされていたのだ。それは囲碁における場合の数の多さによる。単純化していえばチェス、将棋、囲碁では場合の数は、ほぼ10の100乗、200乗、300乗程度ある。ちなみに宇宙にある陽子の数は10の80乗である。チェスはすでに1987年にIBMのディープ・ブルーが当時のチャンピオンのカスパロフに勝った。将棋は近年、プロが人工知能に負けつつあるので、人間側は勝負自体をしなくなった。負けるのが明らかだからだ。しかし囲碁はその場合の数の多さから、しらみつぶしの方法、いわゆるブルート・フォースではやれない。人間はそこで直感というやつで勝負する。人工知能が勝ったということは、直感を備えたことを意味するのだ。

AlphaGoはまだ汎用人工知能ではない。ディープ・ラーニングと強化学習を合わせたもので、専用人工知能である。しかしAlphaGoのもととなっているDQNはアタリゲームをすべてできるという点において、すこしだけ汎用性を持っているのだ。だからAlphaGoはすこしの工夫でチェスにも将棋にも対応するだろう。これらではもはや人間は勝てない。

特異点は近い!!

3月8日(火曜) 人工知能の都市伝説発売

2016-03-08 (火曜)人工知能の都市伝説発売

私が監修した宝島社の「人工知能の都市伝説」が発売になった。私のところにはすでに8冊届いていたのだが、今日は正式な発売日である。

この本は非常に早くできた。というのも本文はライターの佐藤さんと編集部が書き、私はそれにコメントするという形式であるので、私の書くべき原稿量がそれほど多くなかったからである。

この本の話が最初持ち込まれた時は躊躇した。というのも、向こうが挙げてきたテーマはとても胡散臭いものがあったからだ。例えば「ヒラリークリントンには人工知能チップが埋め込まれている」とか。ありえないだろ、それ。そんな本に私が監修者として名を連ねると、自分の名誉が汚れると私はいい、断るつもりだった。しかし交渉の中で、私は単に監修という名前で何もしないのではなく、ライターの書く文章に賛否のコメントをつけるということになった、それなら、私がライターの意見に反対の場合も、そうハッキリと書けるので、それならいいかと思った。

実際、送られてきた原稿を読むと、当初危惧したような胡散臭いものは少なく、真面目に調べて書かれていた。しかし諸所に間違いとか、私の意見と反するところもあり、私は張り切ってコメントを書いた。私に当てられたコメントの字数制限というものがあり、こちらの方が厄介だった。というのは、私には書きたいことが山ほどあり、それを削って制限内に入れることの方が大変だったからだ。

というわけで本書は私とライターの掛け合い漫才のような形式になっている。それはそれで面白いと思う。

3月6日(日曜) 櫻井優先生の話

2016-03-6 (日曜) 第17回「サロン・ド・科学の探求」

今日はNPO法人あいんしゅたいんの第17回「サロン・ド・科学の探求」であった。今日の話は名古屋工業大学の櫻井優先生の「テレビの不思議」という話であった。櫻井先生は長年東芝でテレビ開発に従事しておられ、比較的最近に大学教授に転身された。今年でそれも定年退官されるそうだ。今日の話はテレビ技術の歴史の話で、知らないことが多く面白かった。テレビの社会的側面の話も準備されていたが、時間の制約でそれは次の機会でということになった。

このサロンの特徴は理事長の坂東昌子さんの意向で、講師の一方的な講演という形ではなく、途中でいくらでも質問できるというものだ。今回も櫻井先生の話を、聴衆が乗っ取って、自分の言いたいことを開陳していた。それも講演に関係したことならともかく、自分の関心事ばかり開陳され、私は講師がちょっと気の毒になった。もっと、ちゃんと話を聞いてやれよと。

でもその中でもためになる話はいろいろあった。

「ブラウン管のブラウンはノーベル賞をもらった」

「木の葉の色が緑なのは、植物にとって緑の光は不要だから反射してしまって、それで緑に見える」なるほど、緑の党とかグリーンカーとか、緑を良いものとしてありがたがる風潮があるが、緑は植物、つまり自然にとっては不要な存在であったのだ。つまりゴミをありがたがっているのだ。目から鱗な話であった。

「二宮金次郎が薪を背負って本を読んでいる銅像が、立派な人物の例として昔は学校にあった。しかし最近はあれは歩きスマホをイメージするのでよくないという話になっている」なるほど、何がよくて何が悪いかの価値観は時代により異なるものだ。おじさんが「あれはああだ、これはこうだ」と道徳の話をしても、それは普遍的な価値を持たない、時代の産物だということを認識する必要がある。だいたい人を殺して首を切るという行為なども、現代では殺人の中でも最も許されないことであるが、日本の戦国時代では立派なこととして褒められたのだ。

「ビデオテープには松下のVHSとソニーのベータという企画が競い合った。あのベータはαβのベータではなく、ベタという意味だ」なるほど、知らなかった。

3月5日(土曜) Monica Andersonの思想

2016-03-5 (土曜) Monica Andersonの思想

モニカ・アンダーソンという女性のコンピュータ技術者がいる。彼女は汎用人工知能に関して一家言を持ち、会社を作り製品も出している。彼女がシリコンバレーで一連の講義を行っているのだが、これがとても面白い。もっとも話し方自体は、非常に面白くなさそうに話すのだが。彼女の一連の講演はここにまとめられている。英語の長時間の講演を聞くのが苦手だという人のために、まとめのノートを「マッドサイエンティスト超知能ノート」と題する新しいブログでの執筆する予定であるがそれには時間がかかる。

アンダーソンは科学の方法論として要素還元主義(Reductionism)全体論(Holism)があるという。還元主義は近代科学の基本的手法であり、全体を部分に分割して、その部分の総和として全体が理解できるという主張である。物理学、化学に典型的な手法で、それはガリレオ、ニュートン、デカルト以来大成功を収めてきた。しかし要素還元主義で理解できる問題は多くは解決したが、複雑な系ではそう単純ではない。池のカエルを池から取り出して実験室で調べればカエルが理解できるのか? カエルを解剖すれば池のカエルの生態が理解できるのか? できるとする立場が要素還元主義であり、できないとする立場がホリズムである。ホリズム的理解を必要とするのは生物、エコロジー、言語などであるという。言語では文法や辞書だけでは意味が理解できない。文章を理解するには全体の文脈とか、極端には文化自体を理解する必要がある。

人間には意識(Consious)と無意識(Sub-consious)があり、意識は合理的理解(Reasoning)、無意識は直感的理解(Understanding)である。人間の脳の働きの圧倒的部分は無意識、直感が占めている。汎用人工知能(Artificial General Intelligence)の研究は合理的意識の部分のみを対象にしてきたが、今後は無意識、直感的理解を取り入れて人工直感(Artificial Intuition)でなければならない。

具体的な方法として要素還元主義はモデルを作る(Modelling)。一方ホリズムの手法はモデル無し法(Model Free Method)である。

3月4日(金曜) Apple Pen壊れた

 2016-03-04 (金曜) Apple Pen壊れた

私はiPadを現在4つ持っている。iPad3, iPad mini, iPad Air, それに最近買ったiPad Proである。iPad 2も持っていたが、これは息子にやった。さてiPad Proであるが、これはApple Penとキーボードも同時に買った。その感想から。

まずApple Penであるが、これは前評判通り、綺麗な線が描ける。筆圧やペンの傾きに応じて線の太さが変わる。だからペン習字に使うことができる。その方向で使い始めたが、すぐに飽きてしまった。絵を描くのにも最適だが、絵心がないのであまり役に立たない。そしてあまり使うことなく、カバンの中に入れていた。最近取り出したら、なんと先のキャップがなくなっている。むき出しになったペン先で字を書いてみたらかけない。焦って探したら、パッケージの中に予備のペン先があった。それをはめてもかけない。充電しなければと思って、これも箱に入っていたメス・メスのアダプターを使って充電してみた。それでも結局かけなかった。壊れたのであろう。高い買い物であった・結論として、これで絵を描こうという人でない限り、高いおもちゃになるキーボードの方も、あまり使われていない。結構使いにくいのだ。

というわけで、本体だけで十分である。本体で何が良いかというと、大きいので見やすい、読みやすい。本や雑誌の記事や論文のPDFを読むには適している。その意味で無駄ではなかった。

音が良い。音楽関係のYouTubeをこれで鑑賞すると、非常に良い。スピーカーが左右に4 つあり、これがタブレットの音かと思うほど良い音を聞かせてくれる。

3月3日(木曜) 脳情報通信融合研究センター

大阪大学の構内にある脳情報通信融合センター(CiNet)を訪問してセミナーを行ってきた。ここは大阪大学にあるので、阪大の施設かと思ったらそうではなく、総務省の情報通信研究機構(NICT)と阪大のジョイント研究所だという。2013年に完成したピカピカの研究所である。土地は阪大から50年の契約で借りているという。50年も経ったらシンギュラリティが起きて、世の中どうなっているかわからない。

とても新しい建物でまさにピカピカである。実験器具もアメニティも充実している。こんなに素晴らしい研究環境なら、すごく研究が捗ると思う。以前、シンギュラリティサロンの講師にお呼びした石黒先生もここの所属だという。

さて私がそこになにをしに行ったかというと、副センター長の田口隆久先生に呼ばれて話をするためである。センター長の柳田敏雄先生と視覚神経科学の大澤五住先生などの関係者、それにNECからも3名参加された。私はシンギュラリティの一般論とともに私の超知能作成計画、HTM理論の話をした。

政府は人工知能研究を加速するために、年間100億円程度の予算をつけたという。人工知能を研究するのは経産省の産総研に昨年できた人工知能研究所、文科省が今年に理研の中に作ろうという人工知能研究所、それに総務省はこのセンターだという。このセンターでも脳型の人工知能を作るプロジェクトを立ち上げようとしているのだそうだ。私の方向性と一致するので、意見交換をしたという次第である。

私はこのままでは日本は完全にアメリカに遅れをとり負けると思う。予算の面でも人材の面でも、圧倒的に差をつけられている。それに勝つには正規戦ではだめで、織田信長が大軍を擁する今川義元を破った桶狭間の戦いを再現する必要があるのだ。

3月2日(水曜) スパコン

2016-03-02 (水曜) スパコン

 昨日スパコンのことを書いたが、調べていくといろんなことが分かってきた。詳しくは次の記事を参照してください。(Exascale HPC Needs An Application Innovation Spark, Top 500 Supercomputer List Reflects Shifting State of Global HPC Trends)。まず現状であるが、中国の天河2(Xeon+Xeon Phi)が34PFLOPSで1位、つぎは米国オークリッジ国立研究所のタイタン(Cray XK7, Opteron, NVIDIA K20x)が18PFLOPS、3位はアメリカのローレンス・リバモア国立研究所のセコイア(IBM)で17PFLOPS、4位が日本の理研の京コンピュータ(SPARC64)で10.5PFLOPSである。中国が1位を取る状況はここしばらく続いている。

スパコンは国力そのものであるので、アメリカとしてはこの状況を看過できない。そこで次期計画であるがアメリカにはオークリッジ国立研究所のサミットがある。これはIBMが作る予定でCPUはIBMのPower9、演算加速装置としてNVIDIAの次期のTesra GPUであるVoltaを用いて150PFLOPSを狙っている。2018年早々までは稼働しない。

もう一つはアルゴンヌ国立研究所のオーロラ(Intel+Cray)でこちらは次世代Xeon PhiのKnights Landingの、さらに次世代のKnight Hillを用いて180PFLOPSを狙っている。2018年稼働予定である。ちなみに現行のXeon PhiであるKnights Cornerはホストプロセッサを必要とするが、次世代機ではそれ単体で動作する。

両者ともに計画は遅れているようで、2018年の初頭に稼働は難しく、年末か、あるいは2019年にずれ込む可能性もある。

中国はアメリカに1位を奪還されてはたまらないから当然次期計画を立てている。ところがここに来てアメリカは中国のスパコンのコアとなるインテルのXeon Phiチップの輸出を禁止した。その理由は中国のスパコンが国防大学に設置されていて、軍事研究に使われているからである。そこで中国はCPUとしてはXeonを使いながら、演算加速装置としてXeon Phiの代わりに自前のチップを開発しようとしている。その市場はつぎの英文レポートに詳しい(China Intercepts U.S. Restrictions with Homegrown Supercomputer Chips)。

1980年代に日本が国力があった時にアメリカとの間で日米スパコン摩擦が発生した。アメリカはCray社のベクトルスパコン、日本は富士通、日立、NECのベクトルスパコンで国内のシェアを争った。日本の三社は大学に非常に安い価格でスパコンを提供した(定価の1割りとか3割りとか)。それに対して米政府は不公正であると猛烈な抗議を行い、結局、日本政府は一部の大学にCrayを導入し、また過剰な割引をやめさせた。当時の日米摩擦は激しいもので、戦闘機の自主開発、自前のOSであるTronなど、すべて潰された。

現在、日本の代わりの立場に中国がいるのだが、中国は当然、日本のようにアメリカの鼻息を伺わないから、アメリカとしては打つ手が少ないのである。中国は1980年代の日本のように破竹の進撃を続けている。スパコン、宇宙計画、戦闘機などなどハイテク分野でアメリカの覇権に挑戦している。はたして中国という巨人の進撃がいつまで続くのか? 日本のように中折れしてしまうのか? あるいはアメリカを抜き、世界一の覇権国家になるのか? 日本は現在はアメリカからは歯牙にもかけられない。

しかし昨日述べたように、ここに齊藤スパコンのチャンスがある。もし2017年内に100PFLOPSのスパコンを作ることができたら、しぱらくは1位をキープできるのである。その可能性はゼロではない。齊藤さんの活躍を応援したい。

3月1日(火曜) オデッセイ、シャーロック、スパコン

2016-03-01 (火曜) オデッセイ、シャーロック、スパコン

1年以上、放擲していたブログを再開することにした。先週の金曜日(2/26)に映画を二本見た。「オデッセイ」と「SHERLOCK/シャーロック 忌まわしい花嫁」である。

オデッセイ

これは原題がThe Martian (火星人)という。アンドリー・ウィアーの小説を基にしたものだ。この本はすでにNASAに勤める中村圭子さんから送られていた。簡単な英文なので、原文で読もうと思えばそれほど苦労はしないだろう。

作者のウィアーは高卒のコンピュータ技術者で、初めはブログに書いていたSFを、本として出版したら大ヒットしたというラッキーな話である。科学的考証がきちんとなされていて、とてもよいハードSFである。

その映画化されたものが「オデッセイ」でマット・デーモンが主演している。立派な映画に水を差すようだが、科学的考証のところで多分一つ重大な問題がある。火星の嵐でいろんなものが飛んで、主人公がけがをしたというところだ。火星の風は確かに速いが、気圧が極めて低いので、風圧としてはたいしたことはなく、埃はともかくパイプが主人公の腹に刺さるほどのことはないと思うのだが。

シャーロック

私はシャーロックのファンであるので、テレビ版でない初の劇場版を期待してみた。舞台は前作のように現代ではなく19世紀に設定されている・・・はずだったのだが。ここにネタバレを含む内容がアップされている。

多くの連作映画は、第1作が成功すると柳の下のドジョウを狙って2作、3作と作られるのだが、第1作の成功を上回るようにしようと、話が大げさになる。この「忌まわしい花嫁」もその例に漏れず、前半だけで止めておけばよかったのに、最後の部分で全体が台無しになっている(と私は思う)。

スパコン

ところでオデッセイでは宇宙開発において中国が存在感を示している。日本の存在感が全くないことが悲しい。それは宇宙開発以外の他のハイテク分野でもそうだ。例えば戦闘機なんかもそうである。

スパコンランキングも中国がここしばらくは一位を取っている。「2位ではダメなのですか?」の日本の京コンピュータはすでに4位に落ちている。ちなみに2位と3位はアメリカである。アメリカの専門家によれば、スパコンは国力そのものであるという。アメリカは必死で巻き返しを図るに違いない。

スパコンに関しては、日本は巻き返す技術力は十分にある。齊藤元章さんのPEZYチップである。問題は次期京に採用されるかだが、富士通という大企業をさておいての採用は難しいだろう。またPEZY社のような小企業が担えるとも思えない。次期京は京の100倍の能力のエクサスケール(1000 PFLOPS)を狙っていたのだが、それは難しく40倍の400PFLOPS程度に落ち着きそうだ。富士通が自前のチップ開発を諦めて、PEZYチップを採用するという手もある。

私は巨大スパコンで1位を狙うのも良いが、それは国威発揚の意味合いが強く、実際の科学研究、技術開発には、もっと小規模のスパコンが数あるほうが良いと思う。PEZY社が2017年に完成を目指している次期システムでは、4千個のコアを持つPEZY-SC2を採用する。液浸タンク4台で5PFLOPSでるという。京コンピュータの半分である。1台で1.5億円程度というから、4台で6億円である。8台並べると10PFLOPSになり、京コンピュータに匹敵する。値段は12億円程度であろう。ちなみに京コンピュータは800台以上のラックで構成され、1200億円かかったという。7年で値段もラック数も1/100になることになる。

次期京へのつなぎとして、液浸タンクを80台並べたシステムなら100PFLOPSになり、現状の中国のスパコンの3倍になり、世界一に返り咲く。値段は単純計算なら120億円である。京の1/10の値段で10倍の性能だから悪くはない。フットプリントも京コンピュータの1/10だから、あんなに大きな建屋は必要ない。すでにある地球シミュレーターの建屋を利用すれば良い。

PEZYチップの最大の問題点はソフトの欠如である。現在の主流のIntelチップは長年の歴史を持ち、膨大なソフト資産を抱えている。スパコン用、人工知能用のアクセラレータとして近年脚光を浴びているNVIDIA社のGPGPUも、ソフトの開発と普及には長年の努力を重ねた。その努力が今になって実りつつある。PEZYチップを普及させようとすれば、その後を追わなければならない。私はそのためには、巨大なスパコンではなく、チップが1-2個乗った空冷のボードを作り、それを数多くばらまくのが良いと思う。もし政府が国産技術の普及を狙うなら、多数のボードを買ってタダか安く、ばらまくのが良いだろう。私の案としては、ユーザーにボードを貸して、アプリを作ったり論文を書いた人には、タダであげる。何もしなかった人には買ってもらう、というのはどうだろうか。

   
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