京都秘密名所巡り 7・・・鞍馬温泉
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- 2011年2月20日(日曜)12:00に公開
- 作者: 松田卓也
京都秘密名所巡りの第2回配本を行う。前回までは、それぞれの名所に関する記述が短く、また写真や図解もなかった。そこを何とかしてほしいという読者の要望に応えて(ウソ)、今回からは一名所一回とする。まずは鞍馬温泉から始める。
京都の名所と言えば神社仏閣に決まっている。いったい京都に温泉があるのかと思われる方も多いだろう。それに対する答えは「無いことはない」程度のものである。ここでは筆者が京都近辺で経験した温泉を紹介する。
ところがその京都にある鞍馬温泉が2009年外国人注目の日本の観光名所ランキングで、ヨーロッパ人からはなんと8位、アメリカ人からは12位と、驚くほど高い評価を得ているのだ。もっとも大江戸温泉物語7位、スパワールド8位というから、温泉というか、公衆浴場というものにたいする外国人の物珍しさ、それに東京、大阪、京都にあるという交通の便の良さが、この好成績の原因だと思われる。それにしても鞍馬温泉の健闘ぶりは意外である。
鞍馬温泉に行くには出町柳から叡山電車に乗るのが一番便利だ。運賃は片道410円である。私の家は途中の茶山という駅の近くにあるので、いつもそこから乗る。叡電は宝ヶ池で鞍馬線と八瀬線に分かれる。途中まではなんということもない眺めだが、市原を過ぎるあたりから沿線の景色は深山幽谷に急速に変化する。特に二ノ瀬、貴船口から終点鞍馬駅までの景色は特筆に値する。叡山電車の車両も、「きらら」号の座席配置は独特で、車窓を眺めやすいように、中央付近の8席が外向きに配置されている。紅葉の季節には、夜になると貴船口付近で電車はしばしストップして、ライトアップされた紅葉を楽しむことができた。実は筆者は昨日(2011/2/13)に鞍馬温泉に行ったのだが、途中までは冬にしては暖かい穏やかな日差しであったが、市原を過ぎるあたりから一面の雪景色になった。同じ京都とは思えない気候の変化である。
さて鞍馬駅に着くと、駅前には鞍馬温泉の出迎えミニバスが待っている。その時は私たち夫婦の他に客は2名であった。5分ほどで鞍馬温泉に着く。冬でなければ、古い町並みの鞍馬街道を歩くのも悪いものではない。一度、大雪の中を歩いたことがある。駅を出てすぐの所に鞍馬寺への登山道があるが、そこを上ってしまうと鞍馬寺に行くので注意すること。というのは、筆者の友人が間違えて、そっちに行ったからである。その友人は夕方に鞍馬寺に行ったものだから、怖い思いをしたという。というのは、下山途中に耳元でなにやら怪しい音がして、鞍馬の烏天狗ではなかったかという。
鞍馬温泉というのは、単に1軒の温泉旅館である。本館はそれほど趣のない建物である。さて温泉であるが、露天風呂と屋内風呂がある。泉質は単純硫化水素泉というが特筆するほどのことはない。15度の自然湧出だそうだ。入湯料は露天風呂のみのコースだと1100円、日帰りコースと言って、露天風呂の他に本館大浴場、タオル、バスタオル、浴衣レンタル、2階広間休憩所が使用できるコースは2500円である。正直言って安いものではないし、泉質から考えても、この点の評判は芳しくない。露天風呂の場合はタオルを持参するのがよいが、買うこともできる。
筆者は、当初は日帰りコースを利用していたのだが、最近は露天風呂コースに特化している。というのも、鞍馬温泉のウリは泉質ではなく、露天風呂からの眺めなのだ。目の前に鞍馬の山が広がるのである。昨日のように雪の時は雪景色が、紅葉の時は紅葉が、春から夏にかけては新緑が、眼前に展開する。それは爽快そのものである。この景色(のみ)が鞍馬温泉のウリである。
客に外国人が多いのは、観光パンフレットに紹介されているからであろう。あるときロシア人の男性とアメリカ人の女性を家内と二人で案内した。鞍馬山の下山の時に家内が閉口した後なので、登山の汗を流すには温泉はとても良かった。そのほか、外国人の英語の通訳を助けたこともあり、宿の女将に顔を覚えられてしまった。あるときは風呂の中で、ドイツ人の若い男性と英国人の中年の男性と話したことがある。ドイツ人は、なんと私が教えている同志社大学の学生であると言った。出町柳から歩いてきたと、驚嘆するようなことを言った。日本が気に入ったので、住み着きたいそうだ。風呂の中ではいろんな出会いがあるのだ。