京都秘密名所巡り 9・・・下鴨神社
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- 2011年3月15日(火曜)14:01に公開
- 作者: 松田卓也
下鴨神社は秘密名所どころの話ではない。れっきとした観光名所である。京都で人気の観光名所はどこだろうか。金閣・銀閣を始めとして、清水寺、八坂神社、平安神宮と並んで、上賀茂神社、下鴨神社があげられる。下鴨神社はれっきとした観光名所である。
しかし下鴨神社を訪れた観光客の典型的な足取りは、次のようなものだろう。まず南の端から北に向かって、長い参道を歩く。非常に長い参道である。ようやく本殿にたどり着くとほっとする。そこでお参りをして、後はその近くを少し見て回るか、おみくじを買って大凶を当てて、がっくりして帰る程度だろう。あるいは婚活中の女性なら縁結びの神様のおられる社にある「連理の賢木」に願をかけるであろう。
糺の森と御手洗池、泉川、奈良の小川、瀬見の小川
私は一時、ほとんど毎日のように下鴨神社に出かけたものだ。お参りに行ったというのは正確ではない。お参りもするが、主な目的は糺の森(ただすのもり)を散策することだ。糺の森は下鴨神社にある原生林である。下鴨神社全域が世界遺産に登録されている。ここの良いところは非常に整備されていること、人手が入っていることだ。私から見た欠点は、ベンチがほとんど無いことだ。散策にはよいが、休息には向いていない。
糺の森の一部の小道が烏の縄手として整備されている。そこには古代の祭祀場が復元されている。ここを散策すると、リフレッシュして良いアイデアが思いつきそうである。
糺の森には、いくつもの川が流れている。南から見て、一番右端に泉川が流れている。泉川は高野川から分流した流れが、下鴨神社境内に入って流れ、やがてまた高野川に戻る。
後で述べる御手洗池(みたらしいけ)から流れ出た水は、まずは御手洗川となり、それが奈良の小川と名前を変え、そしてさらに瀬見の小川と名前を変えて、最後には高野川に合流する。瀬見の小川の最下流で、流れが暗渠に落ちる部分がある。ここが少し深くなっていて、鯉が住んでいるのだ。私はこの鯉の無病息災を確かめに、よく見に行ったものだ。
これらの川を詠んだ和歌として、以下のようなものがある。
風そよぐ 奈良の小川の 夕暮れは みそぎぞ夏の しるしなりける 藤原家隆
石川や 瀬見の小川の 清ければ 月も流れを たずねてぞすむ 鴨長明
みたらし祭
土用の丑の日の前後4日間にあり、足つけ神事が行われる。本殿の右の方にある御手洗池(みたらしいけ)は普段は水が少ないが、この祭りの時はいっぱいになる。そこに足を浸すと、罪、汚れを祓い、疫病、安産に効き目があるという。昼も夜も混んでいるが、夜に行く方が、お灯明の明かりが神秘的に瞬いて良い。夜店もいっぱい出ている。池の入り口で200円払うと、ろうそくを1本くれる。人々の後に従って、池に入る。夏にもかかわらず水はとても冷たく、気持ちがよい。大人には適当な深さだが、小さな子供はパンツまでつかることがある。ろうそくに火をつけて、それを灯明台に差し込む。風があると消えてしまい、なかなか難しい。この1年の無病息災を祈る。池から出て足を拭く。タオルかハンカチを持参していないと困ることになる。足形のお札に無病息災祈願を書いて神水が流れるお札入れに入れて供養してもらう。その後は夜店にどうぞ。連れて行ったアメリカ人は、金魚すくいにえらく興味をそそられていた。
下鴨納涼古本まつり
私がこの古本祭りの存在を知ったのは、森見登美彦の小説「夜は短し 歩けよ乙女」によってである。黒髪の乙女が納涼古本祭りに行くことを知った主人公の私も、彼女の求める本を求めて、古本市に行くのである。
このイベントはちょうどお盆の頃に開催される。私は家内とゼミの学生諸君をつれて出かけたものだ。そこで旧知の吉岡書店社長の吉岡さんに出会った。この古本祭りでの売り上げは結構な割合を占めるという。古本祭りというと、京都大学本部キャンパスの北、吉岡書店の横の知恩寺でも秋に開催される。