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超知能への道 その19 大学を作る

「人工知能も作った。会社も作った。産業も起こした。しかしそれだけでは世界征服はおろか、日本の征服すらできんな」とゼウス。

「その通りです。我々は革命を起こすのではなく、日本の指導層に平和裡に浸透しなければいけません」とアテナ。

「どうする?」とゼウス。

「大学を作って、エリートを養成し、指導層に送り込むのです」とアテナ。

「迂遠だな」とゼウス。

「迂遠ですが、確実な方法です。そのためには大学を作ります。日本一の大学です」とアテナ。

「日本一の大学といっても、日本には東大、京大を頂点として大学のヒエラルキーがすでに確立しているじゃないか。それをどうして打ち破るのだ?」とゼウス。

「金です!」とマーキュリーは端的に答えた。「金で買うのです」

我々は京阪奈研究学園都市に超知能研究所を作ったが、もう一つ研究所を作った。所長は私である。 こちらは超知能研究ではなくテーマは何でも良いのだ。名前を京阪奈研究所とした。理科系ではなく文科系でもよい。こちらの目的は高学歴ワーキングプアー対策だ。そんなことをして何になるかと言われそうだが、それは私の罪滅ぼしである。私は長い間、高学歴ワーキングプアーで苦しんできたのだが、それがゼウスの知遇を得て、今の夢のような状態に上り詰めたのだ。昔の仲間に申し訳ない気がするので、多少なりとも償いをさせてもらうことにした。しかし目的はそれだけではない。深遠な意図があるのだ。

我々は新たに大学を京阪奈研究学園都市に作ることにした。京阪奈大学という。この少子化の時代、大学は余っているのに、なぜ今更大学かというのは当然の疑問だ。我々の作ろうとしている大学は実にユニークなのだ。全寮制にして、授業料も寮費、食費もすべてタダというのだ。学生一人あたり、一年にかける費用は300万円である。三食付きの寮費が一月で15万円として1年あたり180万円、授業料が120万円である。それをすべてタダにする。1学年2000人として4学年で8000人だから、それだけで240億円である。大学院の修士課程は定員が半分の1000人で、2学年で2000人だから60億円、博士課程の定員を500人として3学年で1500人だから45億円、総計年間345億円である。

同志社大学

目的はなにかというとエリート養成である。真の目的は国家の権力構造に食い込むことである。国家の支配層は基本的に政治家、高級官僚、大企業経営者、大手マスメディアである。我々はこれらを押さえて、技術的特異点をスムーズに達成するのだ。そのために4年卒の多くは国家公務員上級試験や司法試験などを受けてもらう。そして政府や地方自治体の高級公務員や、その他の社会のエリートになってもらう。修士課程修了者は企業の技術幹部になってもらう。博士課程修了者は研究者や大学教授などを狙う。政治家に関しては、我々の息のかかった人たちを立候補させるのだが、彼らを当選させるには、別のもっと壮大な秘策を考えている。マスメディアに関しては、我々自身がマスメディアを作るのだ。1年に入学した学生が博士課程を修了するのは9年後である。我々は10年-20年先を目指して、日本の権力基盤に食い込むことを考えている。

さらに大学設立とは別に、貸与ではなく給付制の奨学金も作った。人数は先の京阪奈大学の定員と同じで、こちらは年間200万円を給与する。年間に必要な費用は230億円である。京阪奈大学を受験して、惜しくも合格しなかった受験生の中から候補者を選ぶ。京阪奈大学に合格しなかった学生が、東大や京大を含む上位校を受験することになる。その合格者の中から奨学金給付生を選ぶのだ。このようにすると京阪奈大学の偏差値は極めて高くなるはずだ。もちろんすさまじい競争率が予想される。極端に言えば、全高校生が受験を希望するだろう。そこで3段階選抜にする。1段階目は高校の成績である。高校の成績の上位者だけに絞る。これで候補者を大きく絞ることができる。TOEICの成績も利用する。2段階目はネットを使った試験をする。知能テストみたいなものだ。ネットでするのは、わざわざ受験に来なくても良いためだ。そうして定員の3倍くらいまで絞り込んで、最後に筆記試験を行う。受験生は大学寮に泊まり込んで、数日間の試験を受けるのだ。そのために京阪奈大学の入学試験は高校3年の夏休みにやることにした。入学者は初年度は大学1年と3年生編入で4000人、修士課程1年生が1000人、博士課程1年生が500人で、5500人である。

教授は大学を定年退官した名誉教授から選ぶ。ただし給与は普通の大学教授の半分くらいにした。彼らはすでに年金をもらっているだろうからだ。これで安上がりになる。准教授と助教は京阪奈研究所と超知能研究所の所員の中から適当な人を選ぶ。足りない場合は普通に公募で選ぶことにした。研究所の所員の場合は、非常勤講師として採用し、給料は適当な時間給にするのでそれほどかからない。学生に大盤振る舞いした分、教員達には少なめで我慢してもらう。この大学は基本的に教育のための大学であり、研究大学ではない。だから教員の研究は期待していないし、研究費もそれほどには出さない。研究は研究所でしてもらう。

教員の内、独身の人、あるいは単身赴任の人は希望すればフェローとして寮に住んでもらうことにした。もちろん寮費も食費もタダである。英国のケンブリッジとオックスフォード大学の仕組みである。これで給料が少ない分を補えるだろう。毎日、学生達と寝食を共にして、指導してもらうのだ。教育方法は従来のマン・トゥー・マンの方法の他にe-ラーニングを徹底的に使った。学生たちは文殊菩薩システムが相手するのだ。

京阪奈大学は文科省の認可を得るのに少し時間がかかった。東大教授などの審査員が反対したからだ。自分たちの既得権益が侵されるからである。しかしそれが世間に漏れて、彼らは徹底的にメディアで叩かれた。これほど好待遇のユニークな大学の認可をしないとなれば、おかしいと世間が叩いたのである。そこで認可は思ったより早く降りた。

そこで第一回の入学試験を行ったのだが、予想通りにすごい人気で競争率が高かった。京阪奈大学を落ちた学生が東大や京大に行くのである。東大や京大の教授連には非常に不満であったろうが、彼らがこれほどの好待遇を出せないのだから仕方がない。というわけで京阪奈大学はたちどころにして、大学ランキングのトップに躍り出たのだ。マーキュリーのいったように、大学の地位を金で買ったのだ。

京阪奈大学と給付奨学金の学生たちの強力な同窓会も作る。年に一度、夏休みに費用はこちら持ちで、寮に泊まり込みで同窓会をするのだ。こうして卒業生の間の人的ネットワークを強化していく。社会を支配しているのは、人的ネットワークであるからだ。

続く

   
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