新型コロナと緑茶、玉ねぎ
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- 2020年6月22日(月曜)15:26に公開
- 作者: 松田卓也
イオノフォア
先にクロロキンとハイドロキシクロロキンいうマラリヤの薬が新型コロナに効くということが、中国、韓国、フランスの経験でわかったという話をした。そのメカニズムとしてアメリカのシュワルト博士(Dr.R.Seheult)の説を解説した。(実は、Seheultの発音は聞き取りづらく、以前はゼールト博士と書いたが、当人の発音を何度も聞いた結果、シュワルトにする。ともかく英語の発音をカタカナで表すことは無理なのだ)。クロロキン/ハイドロキシクロロキンは亜鉛が肺の上皮細胞に入り込む助けをして、亜鉛が細胞内で新型コロナウイルスの増殖を防ぐというアイデアを解説した。
亜鉛のようなイオンを、細胞内に取り込む作用を持つ物質をイオノフォアという。シュワルト博士は、クロロキン以外のイオノフォアがないか調べた。そうしたらあるのだ。ケルセチンとエピガロ・カテキン・ガレートである。なんか難しそうな名前だが、これらは植物に含まれるフラボノイドと呼ばれる有機化合物の一種なのだ。
具体的にはケルセチンは玉ねぎの皮、エピガロ・カテキン・ガレートは緑茶に含まれている。つまりクロロキン/ハイドロキシクロロキンのような処方箋の必要な薬品ではなく、簡単に食物から取れるフラボノイドが、新型コロナウイルスに対抗できるならこんな嬉しい話はない。
もっとも今回の話も、以下に述べるフラボノイドが新型コロナに効くという完全な科学的証拠はないことは断っておきたい。しかし以前流行したA型インフルエンザの予防には効くという論文があるようなものを集めた。だから新型コロナにも効いて欲しいという願望を持っている。ビタミンDや亜鉛と同様に、これらのフラボノイドは他にも体に有益な作用を持っているので、摂って悪いことはない。ダメ元なのだ。
フラボノイド/ポリフェノール
フラボノイドはもっと大きなくくりであるポリフェノールとよばれるものの一種であり、植物にはたくさんの種類のフラボノイドがある。フラボノイドは植物の葉、茎、幹などに含まれていて、種類は4000以上もある。フラボノイドは植物が紫外線による活性酸素から自分の身を守るための抗酸化作用がある。また種子を害虫から守る抗菌作用、殺菌作用がある。フラボノイドは野菜や果物の色の元であり、苦味成分でもある。
フラボノイドの代表例としては先に挙げたケルセチンとカテキンの他に、赤ワインやブドウの皮に含まれるアントシアニン、ゴマに含まれるセサミン、大豆やきな粉に含まれるイソフラボン、紅茶に含まれるテアフラビン、みかんに含まれるヘスペリジン、ピーマンや春菊に含まれるルテオリン、ほうれん草やブロッコリに含まれるルテイン、いちごに含まれるフィセチン、そばに含まれるルチンなど多くある。
これらのフラボノイドには 抗酸化、アンチエイジング、ストレス緩和、ガン抑制、免疫を整えるなどの体に良いさまざまな効果があるのだ。
まずは抗酸化作用について説明する。体内で発生する活性酸素は老化、動脈硬化などを引き起こす。フラボノイドには活性酸素を除去する抗酸化作用を持つものがある。抗酸化作用に関しては大豆やきな粉に含まれるイソフラボン、赤ワインに含まれるアントシアニン、緑茶に含まれるカテキンなどが効果的だ。
免疫力に関しては緑茶のカテキン、紅茶のテアフラビン、玉ねぎのケルセチンがある。
いわゆる血液サラサラの効果に関して、ブルーベリーや赤ワインに含まれるアントシアニンは血小板凝縮抑制作用があり動脈硬化を予防する。また玉ねぎのケルセチン、そばのルチンも同様な効果がある。
いろんなフラボノイドを挙げたが、この中で新型コロナとは言わないが、インフルエンザ予防に有効なフラボノイドはどれだろうか。文献を色々調べて、先にあげたエピガロ・カテキン・ガレートとケルセチンの他にテアフラビンとクルクミンを挙げる。
エピガロ・カテキン・ガレート
カテキンは緑茶に含まれるフラボノイドである。カテキンにはさまざまの種類があり、先に述べたエビガロ・カテキン・ガレートはその一つである。エピガロ・カテキン・ガレートが新型コロナ予防に効くかもしれないというメカニズムとして、先に述べた亜鉛のイオノフォアとしての役割があることはすでに述べた。
実はそれ以外の効果もある。コロナウイルスは丸い格好をしていて、その表面から太陽コロナのように放射状にS蛋白というものが伸びている。コロナウイルスが肺に入ると、肺の上皮細胞にあるACE-2受容体とウイルスのS蛋白がくっついて、その後で上皮細胞内に侵入するのだ。
エピガロ・カテキン・ガレートの分子は、S蛋白とくっつきやすい性質をもっている。つまりエピガロ・カテキン・ガレートはウイルスのS蛋白がACE-2受容体とくっつく能力を阻害する。そのためウイルスが肺の上皮細胞に侵入するのを阻止するわけだ。
いずれのメカニズムにしろ、緑茶に含まれるエピガロ・カテキン・ガレートは新型コロナ予防に効くようなのだ。エピガロ・カテキン・ガレートは緑茶に多く含まれるので、その有効性に関する研究は日本のものが多い。緑茶に含まれるエピガロ・カテキン・ガレートを含む水でうがいをした場合は、プラセボを含む水でうがいした場合より、有意にインフルエンザ感染率が低かった。日本人が緑茶をよく飲む習慣が、日本人に新型コロナの死者が少ないことの一つの原因かもしれない。
緑茶には新型コロナ予防以外にもいろいろ良い効能がある。寿命を延ばし、認知能力の低下を防ぐ効果があると言われている。だから緑茶を飲んで損はない。
ケルセチン
ケルセチンは玉ねぎの皮、ブロッコリ、りんご、緑茶などに含まれるフラボノイドである。ケルセチンはこれまでも抗酸化作用、抗炎症作用、降圧作用、抗肥満作用などがあることが知られていた。しかしケルセチンはインフルエンザ予防にも効果があることが知られている。ケルセチンは玉ねぎに含まれるというが、実は黄色の皮の部分なのだ。だから人によっては玉ねぎの皮を煎じるという。そこまでするよりは、あっさりとサプリメントを買った方が手っ取り早いだろう。
テアフラビン
緑茶にはカテキンが含まれているので良いと述べたが、それでは紅茶はどうか。紅茶はお茶を発酵させるのでその過程でカテキンは失われるようだ。しかしテアフラビンというフラボノイドがあり、それがインフルエンザ予防に効くという話もある。
クルクミン
クルクミンはターメリック(うこん)に含まれるフラボノイドである。ターメリックとは、カレーの黄色の元である。インド料理には常に含まれている。クルクミンは抗炎症作用や抗ガン作用がある。私はターメリックとそのほかのスパイスを買って、自前のカレーを作っている。外で食べるカレーとか、レトルトのカレーとは一味違うカレーである。
まとめ
新型コロナ予防に確実に効く食品というものはない。しかし普通のインフルエンザ予防に効くとされるものはある。それは植物の色や苦味の元になっているフラボノイドである。フラボノイドにはたくさんの種類があるが、ここでは緑茶に含まれるエピガロ・カテキン・ガレート、玉ねぎの皮に含まれるケルセチン、紅茶に含まれるテアフラビン、ターメリックに含まれるクルクミンを取り上げた。これらはたとえ新型コロナ予防に効果がないとしても、インフルエンザ予防には効果があるとする論文はある。これらのフラボノイドは、それ以外にも体に良い効果がさまざまあるのだから、摂って悪いことはない。ダメ元で食べてみよう。特に簡単なのが、緑茶を飲んだりうがいをしたりすることだ。