新型コロナとスウェーデン、アジア諸国
詳細- 詳細
- 作成日 2020年7月31日(金曜)11:50
- 作者: 松田卓也
集団免疫に関してスウェーデンは他の国とは異なった行き方をしている。ヨーロッパのほとんどの国はロックダウンつまり都市封鎖を含む厳しい政策をとることにより。感染爆発を抑えようとしている。しかしスウェーデンは指導的な感染疫学者の指導の下に、積極的に集団免疫を達成しようとしている。そのために都市のロックダウンはしない。また小中学校は閉校しない。レストランなども普通に開いている。人々はマスクもせずに、普通に生活している。
実は考え方は違うのだが、日本も似たようなものだ。日本ではロックダウンしたくても、法的に根拠がないのである。そこで人々の自粛に頼っている。西欧諸国は市民の自由という考えが強いから、国家が強制的に警察力を使って外出禁止を命じないと、人々は従わない。しかし日本では政府が外出を控えるように国民にお願いするだけで、結構それが徹底してしまうのだ。国民性の違いである。それはそうとして、スウェーデンも日本も、思想は違え、やっていることは似ているのだ。その意味でスウェーデンの実験には興味がある。
スウェーデンの行き方には、他国から批判が強い。国内も一枚板ではなく、政府に対する批判もある。スウェーデンと似た北欧の国々、つまりノルウェー、デンマーク、フィンランドと比較すると、人口百万人当たりの死者数はスウェーデンが断トツに多いのだ。そのため、スウェーデンのやり方は間違いだと決めつける論調もある。しかし、厳しいロックダウン政策をとったイタリア、スペイン、英国、フランスも、人口百万人当たりの死者数はスウェーデンより大きいのだ。つまりロックダウンをしてもしなくても、同じという印象を受ける。
一方、スウェーデンと同じような生ぬるい政策を取った日本の、人口百万人当たりの死者数は米国および西欧の主要国と比較すると、圧倒的に少ないのだ。その差は極端に言えば100倍にも達する。日本政府のやり方を批判する人も多いが、結果だけから見れば、日本のコロナ対策は大成功なのである。
この差が何によるものかは、実に興味がある。実は人口百万人当たりの死者数で言うと、日本だけではなく、中国、韓国、台湾を含む東アジア、それに東南アジア、インドやパキスタンを含む南アジアでも低いのだ。
日本の死者数が低い理由は、日本人の清潔信仰に求めることもできるが、インドには適用できないだろう。以前に、結核予防のBCG予防接種がその原因ではないかという説を述べた。BCG予防接種を今までにしてこなかった代表的な国として米国とイタリアがある。これらの国は死者数が非常に多い。他のヨーロッパ諸国の多くは、BCG予防接種をしていたが、今はしていない。そのような国も死者数は多い。
BCGの効果を調べた論文で、結核の罹患率との関係を調べたものがあった。BCG予防接種はある意味、人を軽い結核に罹患させることだ。BCGがコロナ予防に効果があるとするなら、実際に結核にかかった人はコロナにはかかりにくいはずだ。そのような考えのもとに調べると、確かに結核の罹患率と、コロナに感染しにくい程度は相関があるという。
私はBCGとは違う別のアイデアも持っている。アジアの国々は押しなべて、新型コロナの死者の割合か少ない。これらの国々で共通な要素は何だろうか。それはコメだと思う。つまりアジア人は基本的に米食である。一方、欧米人はあまりコメを食べない。コメの代わりに小麦を食べるが、パンは主食というよりは、むしろおかずのようなものだ。欧米人の主食は肉だと思う。
米食と肉食の主な違いは何か。それは食物繊維の摂取量の差だ。食物繊維を多くとると、腸内細菌のバランスが取れる。そのため肥満しにくい。肥満度で調べると欧米人は肥満体質が多い。アジア人にはそれが少ない。肥満は糖尿病などの基礎疾患の温床だ。新型コロナに感染した場合に、重症になりやすいのは肥満した人である。これが新型コロナにおける欧米とアジアの死者数の違いの原因ではないだろうか。あくまでも私の憶測である。
まとめ
新型コロナウイルス感染症を終息させる一つの手として集団免疫という考えがある。それは国民の大多数が新型コロナに感染すれば、集団免疫が達成されて、感染は収束するという考えだ。スウェーデンは積極的に、集団免疫を達成しようとしている。そのためにロックダウンは実施していない。それで結構な数の死者が出ている。しかし日本もスウェーデンと同じような生ぬるい対策しかしていないのに、死者数は欧米に比べて圧倒的に少ない。だから日本では集団免疫状態には程遠い。私は、日本を含むアジア諸国の新型コロナにおける死者が少ない原因は米食による、腸内細菌叢の違いによるのではないかという仮説を考えている。