アルツハイマー病は治る
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- 作成日 2021年4月18日(日曜)11:34
- 作者: 松田卓也
アルツハイマー病とはご存知の通り、認知症の一種である。認知症にはさまざまあるが、アルツハイマー病は認知症のひとつであり、一番よく知られており、かつ恐れられている。なぜ恐れられているかといえば、治らないからである。「ガンが治った人はいるが、アルツハイマー病が治った人はいない」と言われている。実際、私自身、胃ガンを患い、治ったのだ。少なくとも現在は胃がんに関しては、全く問題がない。
認知症とくにアルツハイマー病が恐れられているのは、治らないということのほかに、記憶を失うからだ。記憶を失うということは、人格を失うということだ。私が私であり続けるのは、体を作る原子や分子が同じだからではない。そんなものは新陳代謝のために数ヶ月で入れ替わってしまう。私が私であり続けるのは、私という記憶である。
認知症はありふれている。実際、私の母も92歳で亡くなったが、最後は認知症であった。家内の母は96歳で現在も施設にいるが認知症である。多分ふたりともアルツハイマー病であろう。家内の母は娘さえ認識できない時がある。母の夫、つまり家内の父は12年前に亡くなったのだが、母は夫がどうしているか、元気かと家内に尋ねる。それどころか、母の母や父は今元気かと尋ねる。これが認知症だ。
統計的には85歳を超えた人の半数は認知症を患っているという。90を超えると、その割合はさらに大きくなる。私は、体や心が若いままで死ねるか、つまりピンピンコロリで死ねるかに関心がある。その意味でアルツハイマー病にとても関心がある。皆さんも身近な人で認知症の人を抱えている人は多いと思う。
ここで最近、とても興味深い本を知った。アメリカのデール・ブレデセン博士が書いた「The end of Alzheimer’s」という本だ。邦訳もあり「アルツハイマー病・真実と終焉」という題だ。この本は米国でベストセラーになり、また各国語に翻訳されている。アルツハイマーは治らないというのに、それが治るというのだから注目を浴びるのは当然だろう。
私は非常に興味を持ちブレデセン本人の講演をYouTubeでたくさん聞いた。講演を聞くと、立派な紳士であり、学歴も申し分のない大学教授であり、アルツハイマー研究30年という権威者だ。また講演の英語も非常に明快で、いかにも頭が良いという感じである。またブレデセンに対するインタビューもたくさん聞いた。多くの著名な識者がブレデセンにインタビューして、非常に感動している様子だ。
ところがである。アルツハイマー病に関して私はYouTubeの動画を徹底的に調べた。とくに大学関係の権威ある講演をいくつも聞いた。ところがそこではブレデセンは全く無視されているのだ。これはどうしたことか? 私はブレデセンのアルツハイマー病の治し方にも興味を持つ一方、この学界の葛藤は何なのかという問題にも興味を持った。この問題に関する私の回答は、新しい考えに対する既存勢力の拒否反応と、他の学者の嫉妬である。科学史にはよくあることだ。
アルツハイマー病はどんな病気か? 最初に起きるのは記憶障害である。予定をすっぽかす。ものを置き忘れる。言葉が出てこなくなり「あれ」とよくいう。昨日何を食べたか思い出せない。時間、場所、人がわからなくなる。ひどくなると道に迷ったり徘徊したりする。精神障害としては鬱症状とか気力の消失があり、いろんなことに興味を持てなくなる。ものを取られたとかの被害妄想もある。
これらの症状は軽いものから重いものまで様々だが、知っているはずの言葉が出てこないということは良くあることだ。それは私もよく経験している。アルツハイマー病の段階は、まず1)主観的認知障害、2)軽度認知障害、3)アルツハイマー病と進んでいく。主観的認知障害とは、言葉がでてこないとか、物忘れをすることを自分は認識しているが、外からはわからない状態だ。私はこれではないかと思っている。軽度認知障害とは、約束をすっぽかしたり、言葉がおかしくなったりして、他人からおかしいことがわかる状態だ。みなさんも程度の差こそあれ、自分自身とか周りの人で経験してないだろうか。これらがひどくなったのがアルツハイマー病で、最終的には自活生活ができなくなり、施設に入らなければならない。
アルツハイマー病は20世紀のはじめにアルツハイマー博士が、ある認知症の女性を診断して、その女性が亡くなった後で解剖して、脳にアミロイドβという分子の塊があることを発見した。これをアミロイド班とか老人斑という。班とはしみのことだ。大脳の知的な働きを担う神経細胞をニューロンというが、ニューロンとニューロンの間にアミロイド班があるとニューロン間の信号を邪魔する。
従来アミロイドβこそアルツハイマー病の原因だと考えられて来た。だからアルツハイマー病を治すには、このアミロイド班を取り除けば良いと考えて、そのための薬が膨大な費用をかけて開発されて来た。しかしそれらの薬はほとんど成功していない。だからアルツハイマー病は治らないと言われているのだ。
ブレデセン博士の新しいところは、アミロイドβは病気の原因ではなく、むしろ結果だというのだ。アミロイドβはむしろ脳を守ろうとして作られたものだという。だからアルツハイマー病を治すためにアミロイドβを除去しようというのは見当違いだという。
それではなぜアミロイドβができるのか。その原因は一つではなく、たくさんある。ブレデセンによると原因は全部数えると36もある。これらを緩くまとめると、アルツハイマー病は3つに分類できる。つまりアルツハイマー病は症状が同じでも、原因は様々だというのだ。だから一つの薬では、治せないとブレデセンは言う。
その3つのタイプとは何か。
1) ホット型あるいは炎症型: 炎症の原因もさまざまあり、細菌感染、不適切な食事、その他の原因がある。
2) コールド型あるいは脳萎縮型: 脳を守る栄養素やホルモンの欠如
3) 毒物型: 重金属とか生物毒による中毒
少し具体的に述べよう。炎症型とは脳の慢性炎症に原因があるタイプである。炎症が起きる原因は細菌とか、脳に入り込んだ自分以外の異分子だ。それらが体内に侵入した時に、それを防御するために免疫機構が働く。この慢性炎症が脳で起きると脳を破壊していく。それがアルツハイマー病の原因の一つだ。
いったい脳に細菌が入るのか? 実はアルツハイマー病で亡くなった人の脳を解剖すると、肺に住む細菌とか、口の中にいる歯周病菌が見つかることがある。また今までも盛んに述べたが、リーキーガットと言って、腸壁に微小な穴が空いて、そこから大きな分子や細菌が血流に侵入することがある。不適切な食事とは、砂糖やデンプンなどのいわゆる糖質の過剰な摂取である。それによる高血糖と糖尿病が原因になる。
脳を守る栄養素とは、今までの回でも述べたがビタミンBやビタミンD、性ホルモンなどだ。毒物とは水銀、鉛、ヒ素、カドミウムのような重元素による汚染とか、カビ毒などだ。
つまりアルツハイマー病は治せるといっても、その原因を特定し、それを除去しなければならないから、一筋縄にはいかない。しかし希望が持てることは、ブレデセンはすでに何人ものアルツハイマー病の患者を治してきたという実績があることだ。具体的な治し方はそう簡単でないので、次回に述べよう。
まとめるとアルツハイマー病は治らないと言われていたが、治ると主張する本が現れて米国ではベストセラーになっている。米国のブレデセン博士の本で「アルツハイマーの終焉」という。ブレデセン博士はすでに何人も治した実績がある。いままで治らなかったのは、アルツハイマー病の原因が一つであると考えていたからだ。それもアルツハイマー病に特有のアミロイドβが原因と考えて、それを除去しようとしたのだが、それは見当違いだ。ブレデセン博士によればアルツハイマー病の原因は大きく分けて3つあり、炎症型、脳萎縮型、毒物型である。詳細は次回に述べる。