新型コロナとファクターXとマスコミ信頼度
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- 作成日 2021年3月30日(火曜)19:04
- 作者: 松田卓也
新型コロナ感染症の感染者数と死者数に関しては欧米と日本を含むアジア諸国には大きな開きがある。
アメリカのジョン・ホプキンス大学のワールドメーターというサイトは毎日、新型コロナに関する統計データを公開している。例えば感染者数でみると、3月時点の値では1位米国3063万人を筆頭として2位ブラジル、3位インド、4位ロシア、5位フランス、6位英国、7位イタリア、8位スペイン、9位トルコ、10位ドイツと並ぶ。日本は36位である。
累積死者数でいうと1位が米国、2位ブラジル、3位メキシコ、4位インド、5位英国、6位イタリア、7位ロシア、8位フランス、9位ドイツ、10位スペインとくる。日本は39位である。
しかしこの数字つまり累積感染者数と累積死者数の絶対値を比較することはあまり意味がない。なぜなら人口の多い国は感染者数や死者数が多いのも当然だからだ。そこでこれらの数字を人口で割った数字、つまり単位人口当たりの累積感染者数と累積死者数が重要になる。ジョン・ホプキンス大学のサイトでは人口100万人あたりの数字が公表されている。
人口100万人あたりの累積感染者数と累積死者数の数字自体は毎日大きくなって行く。累積値だからだ。だからその数字はある時点での値でしかない。しかしその数字を国ごとに並べる、つまりランキングを作ると、そのランキングはあまり変動しないことがわかる。
人口百万人あたりの累積死者数の世界ランキンングを見ると1位はジブラルタルという小さな英国の植民地である。2位もサンマリノというとても小さな国である。このような小国は除いて主要国で見ると、3位がチェコ、4位ベルギー、6位ハンガリー、8位英国、10位ブルガリア、11位イタリア、14位米国、15位ポルトガル16 位スペインと欧米主要国が並ぶ。ちなみに日本は130位である。アジアの主要国は多くが日本以下である。
なぜこのような開きがあるのだろうか? 政府のコロナ対策の差であろうか? それは確かに言える。その極端な例が中国である。新型コロナ感染症は始め中国の武漢で始まり、当初猛威を振るった。それに対して中国は徹底的な封じ込め政策をとった。いわゆるロックダウン、都市封鎖である。その政策は徹底を極めていて、その結果、驚異的な成功を収めた。先に見たように人口あたりの累積死者数の世界ランキングで中国はなんと192位なのである。
でもこのような徹底的な封じ込め政策が取れたのは中国が共産主義国家であり独裁国家だからだ。とても欧米や日本は真似ができない。その意味で中国の成功例はあまり参考にならない。日本は民主主義の西欧先進国と比較しても国家による規制が弱い。実際、西欧先進国ではロックダウン政策をとった場合、市民は不要な外出をすると警察に捕まり罰せられる。日本ではそれはない。法的にできないのだ。だから市民の自粛に頼るしかない。こんなに法規制の緩やかな国は、あまりないのではないだろうか。それでいてコロナの死者数は世界的に見て圧倒的に少ないのだ。その理由はなんだろうか。
ノーベル賞学者の山中先生は、その理由はわからないがそれをファクターXと名付けた。しかし一部の専門家の中にはファクターXなど存在せず、それは単なる偶然、幸運に過ぎないという。その専門家は以前から、二週間後には日本はニューヨークのようになると新型コロナの危険を煽ってきた人だ。それが外れたものだから、偶然だとか幸運だとごまかしているのだ。日本だけなら偶然とか幸運といってもいいかもしれないが、韓国、台湾、香港、ベトナム、タイ、マレーシアなど東アジア、東南アジアは欧米諸国に比べて死者数が圧倒的に少ない。その理由を探求するのが科学者の役割だ。それを幸運の一言で片付けるのは間違いだ。専門家の風上にも置けない人だ。
以前にも述べたのだが、新型コロナが社会経済的に世界に大きな影響を与えている原因は、人々の恐怖心にある。その恐怖心をあおっているのが、マスコミと専門家である。なぜなら彼らはそれで食っているからだ。専門家はそれで脚光を浴びてテレビに出たり、新聞や雑誌のインタビューに出たりすることができる。新型コロナがなければ、脚光を浴びなかった人たちである。だから彼らにとっては、新型コロナは怖くなければならないのだ。
日本を含む東アジア、東南アジアで新型コロナの死者数と感染者数が少ないのはなぜか。その原因を山中先生はファクターXと名付けられた。もっとも名付けただけで、その原因はわからない。よく言われていることは、マスクの着用の習慣、握手やハグをしない社会的慣習、手洗いの習慣、BCGの接種、遺伝的な差異など様々考えられている。
ところで私は最近、とてつもない説を聞いたので紹介したい。それはマスコミ信頼度と新型コロナの被害は強い相関があるという発見だ。その説を唱えているのは、普段から私の秘密研究所での秘密研究会に参加している水野義之京都女子大学名誉教授である。
水野先生は世界主要14カ国のマスコミ信頼度と人口百万人あたりのコロナ累積感染者数を比較した。調べた14か国でマスコミ信頼度が高い順から列挙すると、日本、フィリピン、韓国、中国、ナイジェリア、インド、オランダ、スウェーデン、カナダ、ドイツ、フランス、イタリア、イラン、ロシア、米国、英国である。マスコミ信頼度の具体的な数値を上げれば日本70.2%、韓国64.9%、中国64.3%、欧米ではドイツ35.6%、フランス35.2%、イタリア34.4%、米国24.2%、英国14.2%である。この14カ国の中では日本が断トツ一位である。一方、米英は最下位にある。他のヨーロッパ諸国も軒並み低い。日本、韓国、中国とコロナ感染者の低い国ほどマスコミ信頼度が高い。米英はマスコミ信頼度が最低で、かつ感染者数は断トツの上位にある。
横軸にマスコミ信頼度を取り、縦軸に100万人あたりのコロナの累積感染者数をとって図に描くと、かなり綺麗な反相関関係があることがわかる。つまり国民がマスコミを信頼すればするだけ、コロナの被害は減るという関係だ。とても興味深い関係だ。もっともこのような関係は相関があるということで、必ずしも原因結果の因果関係とは言えないというのは統計の常識だ。それでもこの間に因果関係があるとするのはもっともらしい。
以前私は、人々が新型コロナを怖がる原因としてマスコミをあげた。マスコミが大騒ぎしてコロナの恐怖をばらまいているから人々が怖がるのだと述べた。しかしマスコミがコロナの脅威を煽ると、人々は注意してコロナに感染しないような行動をとるだろう。マスクをする、三密を避ける、人と人の間隔を開ける、これらは政府が国民に注意するのだが、人々がそれを知るのはマスコミを通じてである。だから人々がマスコミの言うことを信じれば、国民は注意深い行動をとって、結果的には新型コロナの蔓延が防げると言うわけだ。
欧米諸国の中で特に米国と英国はマスコミの信頼度が低いと言う点は興味深い。私はときどき英国と米国のテレビのニュース番組をYouTubeでみている。フランスやドイツは残念ながら言葉がわからないので聞いていない。しかし米英のニュース番組を見ているとなかなかよく作られていると思う。それでも人々が信じないのはなぜだろうか? それはよくわからない。私は英国の新聞も購読していた。この記事もなかなかよく書かれているとは思うのだが。
日本人がなぜマスコミを信頼するのだろうか? 日本人は従来からお上の言うことはありがたく拝聴する癖がある。それで説明できるだろうか? 実はマスコミへの信頼度だけではなく他の組織への信頼度も調査されている。具体的には軍隊、警察、国連、労働組合、行政、大企業、国会、宗教団体である。日本人の信頼度はこの順に並んでいる。とても興味深い。信頼度のトップ3がマスコミ、自衛隊、警察なのだ。行政と国会、つまりお上の信頼度は低いのだ。最下位が宗教団体だと言うのも興味深い。日本人の宗教心のなさを象徴している。
それでは英米はどうか。英国で信頼度のランキングを作ると、軍隊、警察、国連、行政、大企業、国会、宗教団体、労働組合、マスコミとなっている。トップ3が軍隊、警察、国連となっている点は日本と近いが、マスコミが最下位である点は日本と大きく異なっている。米国では軍隊、宗教団体、警察、国連、大企業、行政、国会、労働組合、マスコミの順だ。米国は宗教団体の信頼度が一番高いのは、西欧先進国の中では異常である。米国がキリスト教に乗っ取られた国であることを示している。一般的に宗教団体の信頼度が高い国は先進国にはなくて発展途上国の特徴である。その意味で米国は先進国というよりは、文化的には発展途上国と位置付けた方が良いかもしれない。それが如実に現れたのが米国の大統領選挙、つまりトランプ騒動である。とても民主的先進国とは思えない。
日本を含む東アジアと東南アジアの、新型コロナ感染症の人口あたりの感染者数は、欧米と比べて圧倒的に低い。その原因をファクターXと呼ぶが未知である。京都女子大の名誉教授である水野義之先生はマスコミの信頼度とコロナの被害には逆相関があることを見出した。日本はマスコミへの信頼度が断トツに高く、米国と英国はダントツに低い。その関係が単なる相関関係なのか、はたまた因果関係なのかはわからない。しかしマスコミが騒ぐからコロナの死者が少ないとすれば、皮肉な話だ。