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脳梗塞

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いったい突然、なぜ脳梗塞の話か? それは2019年末に私が脳梗塞になりかけて、緊急入院したからである。厳密にいうと脳梗塞の前兆が現れただけであり、実際に脳梗塞になったわけではない。だからこれを書いていられる。

2019年12月20日午後6時半のことであった。私は夕食を済ませて、コタツの中に寝そべってスマホでゲームをしていた。すると突然、画面がよく見えなくなった。手で左目を覆うと全く見えない。視野に薄い幕がかかったように真っ白であった。右目を覆うと普通に見える。つまり右目だけが見えなくなったのだ。

私は持病の潰瘍性大腸炎の関係で右目はぶどう膜炎という病気にかかっている。そのせいかなとも一瞬思ったが、ぶどう膜炎では飛蚊症といって目の前をたくさんの蚊が飛ぶように見えることがあり、視力はだんだんと衰えるが、今のように急に見えなくなることはない。

ところがそうこうしているうちに、視野の周辺からだんだん見えてきた。そうして最後に視野の中でなんか黒い幕がゆっくりと上がり、すっきりと見えるようになった。その間、ほぼ10分程度であった。

いったいなんだろう。さっそくスマホでググってみたら、これは黒内障といって脳梗塞の前兆であるという。目に行く動脈に血栓が詰まって、眼に血が行かなくなり見えなくなったのだ。ところがそのうちにその血栓が溶けるかして、見えるようになったのだ。今回はその程度で済んだが、黒内障が発生すると3ヶ月以内に完全な脳梗塞になる確率が15%程度あり、また数日内に脳梗塞になる確率もその半分はあるという。だからすぐに病院に行くべきだと書いてあった。

時刻を調べるとまだ午後7時前である。自分の行きつけの病院を調べると、まだ夜の診察をしている。そこで私はすぐに病院に行くことにした。バスに乗って病院に行ったが、後で友人に笑われた。タクシーで行くべきだったと。ともかく病院に着いて事情を話すと、救急患者の扱いをしてくれて、救急担当の医者が見てくれた。まずは脳のMRIを取り、心電図を取られた。MRI写真によると脳の血管に詰まった形跡はない、また心電図も異常はない、しかし黒内障だから数日内に脳梗塞になる可能性がある、だから即入院であると言われた。メールで家内に連絡したので、心配して出先から駆けつけてくれた。

というわけで入院になり、血液検査をした。点滴が始まった。血栓ができるのを予防する薬を点滴で入れるのだ。これは標準的な治療である。翌日には頸動脈のエコー検査、心臓のエコー検査、胸部レントゲンを撮った。さらに一日、心電計をつけて計測もした。結果的に言えば6日間入院したが、脳梗塞は発症しなかった。10分間、黒内障で目が見えなくなったというだけであり、それ以外はなんともなかった。クリスマスは病院で過ごして、26日には退院した。それ以降は痛み止めや頭痛の薬であるバファリンを飲んでいる。バファリンのようなアスピリン系の薬は、血液の凝固を防ぎ、脳梗塞を予防する効果があるのだ。

私は潰瘍性大腸炎、胃ガン、盲腸炎その他でこの病院には10回ぐらい入院している。以前のこの病院はとても汚く、入院生活が快適でなかったので、いやだった。しかし今回は改装されて綺麗になっていて、入院生活は快適であった。私の病室は4人部屋で、おもに救急の患者が入っていた。この部屋の患者は別だが、他の病室の患者には認知症の老人が多かった。病室の床に排尿した患者、入院していることが理解できず病院を脱出する方法を私に聞く患者、食事に手をつけない患者、看護師にどなりちらす認知症老人、この病院は今後の日本の姿を暗示していると私は感じた。認知症とその防ぎ方に関しては何度も書いてきたが、今後の日本にとても大事な問題だと思う。

脳梗塞は脳の血管がつまりそれで脳細胞が死んでしまう病気だ。脳梗塞は血管の詰まり方によって三種類に分類できる。1)ラクナ脳梗塞、2)アテローム性脳梗塞、3)心原性脳梗塞である。ラクナ脳梗塞とは脳の細い血管が詰まるもので、脳梗塞部分は小さい。アテローム性脳梗塞とは脳に行く太い動脈が動脈硬化のために、プラークというゴミが溜まって血管が細くなり、その結果、血管が詰まるもので、脳梗塞は中程度である。心原性脳梗塞は心臓で血栓ができて、それが流れて脳の血管が詰まる場合で、この場合、脳梗塞は一番大きい。

私の今回のケースはラクナ脳梗塞ではなく、アテローム性か心原性が疑われた。アテローム性の可能性を調べるために頸動脈のエコー検査を行い、動脈硬化の程度を測定した。また心原性脳梗塞の可能性を調べるために、胸部のエコーと心電図、心電計の検査を行ったのだ。ちなみに以前行った脳のMRI検査では、小さな脳梗塞部分が見つかっている。これはラクナ脳梗塞である。しかし特に症状は出ていない。

私の今回の場合、結果的には頸動脈に軽い動脈硬化は認められたが、そのプラークが破裂したわけではない。また心臓にも特に異常はない。だから原因は分からないということだった。しかし脳梗塞の前兆としての黒内障が起きたのは確実だし、動脈硬化もあるので、今後血栓ができるのを予防するためにバファリンを飲むことになったのだ。

もし不幸にして本当に脳梗塞になった場合、治療は早い方が良い。発症してから4.5時間以内であれば、詰まった血栓を溶かす薬を点滴で注入して治療できる。また8時間以内であれば、太ももから血管にカテーテルという細い管を入れて血栓を取り出すこともできる。だから脳梗塞の治療は時間との勝負なのだ。私がすぐに病院に行ったのは正しい判断であったのだ。

知り合いの中には、脳梗塞の前兆らしい症状を感じたのに、10分ほどで治ったから自動車を運転したとか、数週間のちに病院に行くつもりだとかいう人もいる。その場合、脳梗塞になる確率は15%程度あるので、その確率でのロシアン・ルーレットを回すような自殺行為であろう。

脳梗塞の前兆には次のようなものがある。体の片側だけが動かせないとか力が入らないという運動障害。体の片側だけが痺れるとか感覚が鈍いという感覚障害、ろれつが回らないという構音障害、言葉が出てこない、人の言葉が理解できないという失語症、片側の目が急に見えなくなる同名半盲、ものが二重に見える複視、左右どちらかにあるものが見えているのに認識できない反側空間無視、意識が朦朧とする意識障害、ぐるぐる回るようにめまいが起きる、立てないとか真っ直ぐ歩けない、日用品の使い方が急に分からなくなる。これらの症状を感じた場合は、すぐに病院に直行すべきである。

以前にも述べたのだが、私の合気道部の後輩で、とてつもなく強い人がいたが、その人は脳梗塞で急になくなった。また別の後輩も、軽い脳梗塞を経験した。知り合いの著名な大学教授は、急に真っ直ぐ歩けなくなり、脳梗塞でかなり長期に入院した。その後はリハビリに成功したが、それでも大変だったと思う。

ようするに脳梗塞は脳の血管が詰まる病気で、結構多い。脳梗塞にかかったら時間との勝負なので、できるだけ早く病院に行くべきである。 

   
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