冷水シャワーの効能
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- 作成日 2023年2月01日(水曜)12:43
- 作者: 松田卓也
フバーマン教授のポッドキャスト
私は2023年の正月元旦にYouTubeで面白い動画を発見した。スタンフォード大学医学部の神経科学・眼科学のアンドリュー・フバーマン教授(Andrew Huberman)による「意識的寒冷被曝を用いての健康と成績向上(Using Deliberate Cold Exposure for Health and Performance| Huberman Lab Podcast #66)」というものだ。意識的寒冷被曝というといかめしいが、要するに冷水浴とか冷水シャワーを浴びて健康を増進しようというものだ。
https://www.youtube.com/watch?v=pq6WHJzOkno&t=4395s
私は冷水シャワーをすでにやっているが、この動画に興味を持ったのはその効能を確認したかったからだ。私が冷水シャワーを始めたのはもう10年以上も前になる。当時の主治医の勧めによるものであった。私は長年、潰瘍性大腸炎を患っていた。故安倍元首相も患っていた難病である。この治療法は確立していないが、症状を抑える薬としてプレドニンというステロイド剤がある。これは確実に炎症を抑えるのだが、重大な副作用がさまざまある。そこで服用をやめたいのだが、なかなか難しい。ステロイドホルモンは本来、副腎から分泌されているのだが、ステロイド剤を常用すると副腎のステロイド分泌能力が落ちるという。そこで副腎を鍛えるために冷水シャワーを浴びなさいというわけだ。冷水を浴びるとなぜ副腎が鍛えられるかのメカニズムはのちに述べるとして、ともかく主治医にそう言われて実行していた。しかし真面目にやっていたとは言い難い。結構チンタラとやっていた。
ちなみに潰瘍性大腸炎の方は、別の記事で述べたがイヌリンという水溶性食物繊維を摂取することで完治した。だからなお冷水シャワーを浴びる動機が減ったので、チンタラとしていたというわけだ。
しかしフバーマンのポッドキャストを聞いて見ると目からウロコであった。もっともこの番組は早口の英語で2時間15分もまくし立てるものだから、30分も聴くとヘトヘトになってしまった。そこで昼寝をして休養し、再度聞いた。三度に分けてようやく聴き終えた。しかし先に述べたように、内容が目からウロコであったので、1月2日に再度全部聞き直した。
そのなかでもっとも私の興味を引いたのは、冷水浴・冷水シャワーが健康に良いというだけでなく、簡単にいえば精神を鍛えられるということだ。その生理学的メカニズムが語られているのだがそれは後で述べる。冷水浴が体の健康に良いことはわかるとしても、精神を鍛えられると言うのは聴き始めだし、嬉しいではないか。私はこれで今年は「鉄人」になろうと決意した。ここで言う鉄人とは、筋肉ムキムキの人間ではなく、気力と意志力が充実した人間ということだ。具体的にいえば、集中力を増し、持久力をまし、フバーマン教授のポッドキャストを一度で聴ききるほどになろうと言うのだ。
もっともこの点に関しては、フバーマン教授が言うには、一度に集中して作業できる時間(これをバウトという)は90分、さらにその中でも45分で一度5分間の休憩を入れると良いということが話されているが、それは「集中」という主題で別に取り上げたい。
フバーマン教授は自分のポッドキャストは、巷にある健康番組とは違い、証拠のあること、具体的にいえば査読論文で証拠が挙げられているものに限定すると言う。私は科学者だから、この言葉は心強い。というのも巷には健康情報が溢れているが、どれが信頼できて、どれが信頼できないかの判断が素人には難しい。だから査読論文で証拠を挙げられたものに限ると言うのは、心強いではないか。
調べて見るとフバーマン教授はこの番組をはじめとして100本以上の動画をアップしている。動画はプロが撮影したようで、画質も音質も良い。
ありがたいことに、早口で話した内容をきちんとPDFの文章にしてアップしている。これもプロの作業だろう。だからこの番組には相当お金がかかっていると思われる。それはスポンサーがついているのでできることだろう。
彼の話のほとんどが最低で1時間半、長いと3時間近くも英語でまくしたてるものだから、よほど意を決して聞かないと一度では聴ききれない。しかしどれも私にはとても興味があるものだから、できるだけ多く聞いてみようと思った。私が特に関心を持ったものを順次紹介していきたい。その最初が冷水シャワーというわけだ。
冷水浴・冷水シャワーと安全性
まずここで意識的寒冷被曝の方法だが、いろいろある。冷水浴(いわゆる水風呂)、寒中水泳、冷水シャワーなどだ。さらには液体窒素を用いて零下110度にする方法もあるというが、これは装置が大変だから話から除外する。科学的実験は実験条件のコントロールが大事だから、実験はほとんどが冷水浴で行われる。冷水シャワーは実験条件のコントロールが難しい。しかし我々が実際に行うには、冷水シャワーで十分である。
まずだれでも気になることが安全性である。冷水を頭から浴びで大丈夫なのか。この点に関しては、フバーマン教授は危険性は無しとはしないという。例えば血圧の高い人がいきなり頭から冷水を浴びたり、冷たい水に飛び込んだりしたら、血圧が上がって危険かもしれない。私は冷水シャワーを浴びる場合は、まずは足にかけて、つぎにお尻にかけて、さらに手にかける。そしてお腹から徐々に上に上げていき胸に行き、背中に冷水をかけて、最後に頭からかぶるなどの順序を踏んでいる。
ホルミシス効果
冷水浴・冷水シャワーがなぜ健康に良いのか。それはホルミシス効果(Hormesis)という言葉で括ることができる。ホルミシス効果とは、人間にとって毒であっても、少量の毒はむしろ体に良いという効果のことである。なぜ毒が少量なら体に良いかというと、体は毒に対抗しようとして、免疫を強化するなど様々なことをするからだ。
例えば運動は健康に良いことはよく知られているが、しかし過度の運動は体に良くないことも知られている。激しい呼吸をすることにより活性酸素が発生する。この活性酸素が諸悪の根源である。しかし適度な運動は体に良いのは以下に述べる機構のためだ。
放射線は体に良くないこともよく知られている。しかし適度な放射線はむしろ体に良いことも経験的に知られている。例えばラジウム温泉とかラドン温泉というものがあり、それが健康に良いと宣伝されているのも周知のことだ。それもホルミシス効果のせいである。具体的な機構に触れると、放射線は体内の細胞にある水分子と衝突してそれを電離する。するとそこで活性酸素が生成される。活性酸素は周辺の分子と化合して、その機能を阻害する。いわば体が錆びるのである。しかし少量の活性酸素が発生した場合、体はその作用を中和する抗酸化作用のある物質を生み出す。これがホルミシス効果である。つまり少量の毒を与えると、体はそれになれるのである。
寒冷ショックも同じようなものだ。人間のような恒温生物は体温を一定に保とうとしている。人間では体温が36-37度程度の範囲に保たれている。外因によりそれから外れようとすると、体は体温を元に戻そうとする。それをホメオスタシスとよぶ。体が冷たくなると震えて筋肉を動かして体温を上げようとする。そのほか様々なことが起きる。その機構に関してはのちに述べる。
適度な寒冷ショックが体に良いなら、適度な熱ショック、たとえばサウナも体に良いはずだ。それは確かにそうで、フバーマン教授はサウナのことも取り上げている。しかし我々日本人に取り、サウナはそれほど馴染みがなく、使おうとするとお金がかかる。寒冷ショックの方は冷水シャワーを浴びれば良いだけだから簡単だ。今回は冷水シャワーに話を限る。
どのくらい冷たければ良いのか?
冷水浴、冷水シャワーが体に良いとして、どれくらい冷たければ良いのか? これに関しては明快な基準はない。フバーマン教授の基準は次のようなものだ。たとえば冷水シャワーを浴びて、寒くてたまらないので早くやめたい、出たい、しかし体には害はないことが体感的には分かる。この程度の寒さにしろというのだ。
どのくらいの時間、寒さに晒せば良いのか? それは冷水浴と冷水シャワーでは異なる。また寒い外気にあたるような場合とも異なる。それは水と空気の熱容量の差によるものだ。具体的にいえば冷水浴はかなりな短時間たとえば数秒でもよく、冷水シャワーは例えば数十秒から数分、寒い戸外に出るなら1時間程度はいなくては効果がない。
いずれにせよ、温度が低ければそれだけ短時間で良い。どのくらいの時間にするかは、各人が経験的に決めれば良い。私の場合、冬場の冷水シャワー1セッションを、冷暖に数回に分けて冷水を合計2 分間ほどにしている。それで毎日すれば一週間に14分になる。のちに述べるがデンマークの研究者のスザンナ・ソバーク博士によると、1週間に11分でよいという。
冷水シャワーが効く生理的機構
冷水浴・冷水シャワーを浴びると体内にアドレナリン(エピネフリン)、ノルアドレナリン(ノルエピネフリン)などが脳内と体内に分泌される。
皮膚の感覚器官が寒さを感じると、その信号は脳に行き、脳幹にある青斑核(Locus ceruleus)という部分からノルアドレナリンが脳内に分泌される。また寒さの刺激を感じると交感神経を通じて副腎髄質に信号が行き、そこでアドレナリンとノルアドレナリンが分泌される。アドレナリンとノルアドレナリンの作用は似たようなものである。動物がストレスにさらされた場合、例えば敵と出会った場合に戦うか逃げるか(闘争・逃走)きめて、それに体が適応するようにする。具体的には血管を収縮させて血圧をあげる、心拍数を増大させる、ブドウ糖の生成を促進するなどである。
アドレナリンとノルアドレナリンの違いは、ノルアドレナリンは脳内で生成されるが、アドレナリンはほとんどが副腎で生成される。アドレナリンは血液脳関門に遮られて脳内には行けない。だから脳内の作用たとえば恐怖、怒り、不安、集中、覚醒、鎮痛などに関与するのはノルアドレナリンである。
冷水浴・冷水シャワーの効果は先に述べた効果のポジティブな部分、つまり集中、覚醒、鎮痛などの効果を利用しようというものだ。つまり冷水シャワーを浴びた後は、目がすっきりと覚めて集中でき、エネルギッシュになるのだ。運動後の筋肉痛も抑えられる。
精神を鍛える、幸せになる
冷水浴・冷水シャワーの効用で私が一番注目したのが、精神を鍛える、つまりメンタルを鍛えるという効果だ。冷水シャワーを浴びている最中は頭がほとんどパニック状態になり、早くやめたい、熱い湯に入りたい、それしか考えられない。しかしそこを無理して何かを考えるのである。そのために前頭前野つまり意思を司る部分を働かせなければならない。私は具体的には数を数える、九九の計算をするということをしている。経験では数を数えるのは比較的容易である。しかし九九の計算をするのは極めて大変である。あまりに冷たいので、頭がパニック状態になり、九九の表が思い出せないのである。九九八十一と唱えた時は、もう寒さを通り越して痛みを感じはじめている。
こんなことをして何の意味があるのか。人間は人生の中で強いストレスを感じたり、パニックになったりする場合はいろいろあるだろう。例えば事故にあった場合、ショックな知らせがあった場合、相手に怒りで頭に血が上った場合、こんな時に人間は冷静に物事が考えられない。しかしその場合に冷静に物事を考えられたら、難局をうまく乗り切れるだろう。つまり冷水浴・冷水シャワーは頭に血が上った場合に冷静になる練習なのである。
そう考えると、武芸者や行者が滝行や水垢離をすることの意味がわかる。彼らは経験的に、それらがメンタルを鍛える、つまり根性を鍛えることができることを知っていたのだ。
フバーマン教授が強調するのは、冷水浴・冷水シャワーはアドレナリンとノルアドレナリンを分泌する他にドーパミンも分泌して、幸福感を得ることができるという点だ。ドーパミンの増加は数時間も続く。つまり冷水シャワーを浴びると幸福感を感じることができる、これがあまり知られていない効果である。さらにドーパミンは意欲も増大させるのだ。実際、私の経験でも朝に冷水シャワーを浴びた後の数時間は実に清々しいのである。
記憶力が増す
これは別の回にも述べたいのだが、冷水浴・冷水シャワーは記憶の定着に良いというのだ。例えば何か勉強した時にそれをよりよく記憶するにはどうすればよいか。巷にはさまざまな記憶法が語られている。一番知られているのは、何度も復習することである。
フバーマン教授は科学的に実証された別の記憶法について述べている。それは何かを経験した後にショック与えるのである。ネズミの実験では、飼っている箱の一部に行くと電気ショックが与えられる場所があるとする。一度電気ショックを経験したネズミは二度とそこに近づかない。つまり何度も復習することなく、たった一度の経験で記憶するのである。それはアドレナリンが神経細胞(ニューロン)間の結合つまりシナプス結合を強化するからである。
実験的に学生を二群に分けて、それぞれに何事かを記憶させる。一群の学生は、記憶した後に手を氷水に浸す。するとそのグループの方が記憶力のテストで好成績をとった。それから考えると、勉強した後に冷水シャワーを浴びるのは、記憶の定着に良いと思われる。試験の前日など、切羽詰まった場合には良いのではないだろうか。
寒さに強くなる
冷水浴・冷水シャワーを浴びているとだんだん慣れてくる。その生理的機構は何か。それは白色脂肪が褐色脂肪になるからである。ふつう体に溜まっている脂肪は白色脂肪で色が白い。褐色脂肪は褐色である。褐色である理由は細胞内にミトコンドリアが多いからである。
ミトコンドリアとは細胞内にたくさんある小さな器官で、そこでエネルギーが生成される。具体的にはATPが作られる。ATPはエネルギーの通貨と呼ばれていて、細胞はATPを使って様々な仕事をする。ミトコンドリアは、食べることで得られた糖分と、空気を吸うことで得られた酸素を用いてエネルギー通貨のATPを作るのである。
人が寒さに出会った時に、深部低温が低下しすぎると死ぬので、何とかして体温を上げなければならない。そのための機構が震えである。寒くて体が震えるのは、筋肉がATPを使って収縮を繰り返して、その時におまけに熱を発生させて体を温めるからだ。
しかし震える以外にも熱を発生させる機構がある。それはミトコンドリアが直接、熱を発生させるというものである。それが褐色脂肪でおきる。褐色脂肪が多いということは、寒さに強いということである。赤ちゃんは褐色脂肪が多いが、大人にはほとんどない。大人の脂肪はほとんどが白色脂肪である。赤ちゃんに褐色脂肪が多い理由は、赤ちゃんは震えられないからである。なぜなら赤ちゃんは生まれた時は、筋肉の動かし方を知らない。つまり震え方を知らないのだ。赤ちゃんは成長するに従い、筋肉の使い方を学び、震え方も学んでいくので、褐色脂肪は少なくなっていく。
大人になると褐色脂肪はほとんどなくなる。太っている人、腹が出ている人は白色脂肪ばかりである。白色脂肪はもしもの時のエネルギー源としての役割はあるが、普通は体に良いものではない。腹が出ていること、太っていることは体に良いものではない。いわゆるメタボである。
ところが冷水浴・冷水シャワーを繰り返していると、白色脂肪が褐色脂肪に変わっていく。寒さに強くなるというのはそういうことだ。それにより有害な白色脂肪が有益な褐色脂肪に変わるのだ。メタボの人が冷水浴・冷水シャワーをすればよい理由だ。
ウイム・ホフ(Wim Hof)というひとがいる。彼はアイスマンと呼ばれている。様々な動画をアップしているが、氷の海に入ったり氷を満たした風呂桶に入ったりと、とても常人にはできないことをする。まさに鉄人である。彼の体は冷水浴の訓練により褐色脂肪に覆われているのであろう。
最後は冷水で締める
冷水浴・冷水シャワーのやり方はいろいろある。人それぞれの流儀がある。しかしここで重要なことは、最後は冷水で締めるということだ。これをフバーマン教授はデンマークのスザンナ・ソバーグ博士の名をとって、ソバーグ原理と呼んでいる。なぜかというと、体は寒さに会うと温めようとするし、逆に熱に出会うと冷やそうとする。冷水浴・冷水シャワーの最後を冷水で締めると、体は体温を上げようとするので、外に出た時に体がほかほかするので気持ちが良い。
運動後の回復
冷水浴・冷水シャワーは運動後の回復に有効である。筋肉痛も抑えられる。ただし問題は、冷水浴は筋力の強化などには逆に働く。だから疲労回復なら冷水浴は直後でよいが、筋肉強化が目的なら数時間は開けたほうが良い。
冷水浴・冷水シャワーはいつするのが良いか
冷水浴・冷水シャワーは朝か早い時間が良い。寝る前は控えたほうが良い。その理由は深部体温の日変化にある。深部体温は夜に低く昼は高い。起床の少し前が深部体温は最も低く、朝から昼にかけて上昇していく。夕方ごろに最高に達して、それ以後は低下していく。深部体温が低くないと、眠るのが困難になる。先に述べたように冷水浴・冷水シャワーは、その後で深部体温を上げるので、寝る前にすると就寝を妨げるのである。逆に、寝る前にサウナとか風呂に入ることは、深部体温を下げるので、睡眠を促進することになる。
その他の効果
ここでフバーマン教授のポッドキャストから離れてエリック・バーク博士(Eric Berg)の動画に述べられている冷水シャワーの10の効果を列挙しよう。フバーマン教授のあげた点と重なるものもあれば異なるものもある。
- 免疫を強化する。
- ノルアドレナリンが出て気分が良くなり、集中力が増し、ウツ気分が減る。
- 褐色脂肪を増やし、新陳代謝が増し、体重を減らすことができる。
- インシュリン感受性を増大させる。
- 抗炎症作用がある。
- 抗酸化作用がある。
- 神経細胞の保護作用がある。
- 長生きのために有効である。
- ストレスホルモンのコルチゾールを減らす。
- 運動後の回復を早める。
優越感に浸れる
以上に述べたように冷水浴・冷水シャワーにはさまざまな良い効果がある。だから私はこれを読んでいる皆さんに勧めるか? いや勧めないのである。なぜか?
私は冷水シャワーの効果に目覚めて以来、毎日のようにそれをしている。そして周りの人たちにも話した。そうしたらどうなったか? 実際に冷水シャワーを始めた人は、たった二人であった。他の人たちは、数回は試みたが止めてしまったか、やらない理由を色々考えだすか、そもそもまったく試みもしないかである。それを聞いて私が感じたことは「勝った!」である。別に勝ちたいわけではないが、周りが自分で膝を屈していくのである。私の周りの人たちは、とても立派な優秀な人たちで、すくなくともある側面では私にはとても及びがつかない。しかしそんな人たちが、この点に関しては自分で膝を屈していくのである。それを見て私が感じたことは優越感である。
Quoraにこんな記事があった。自分は子供の頃は、体力もなく、勉強もできずにいじめられていた。いじめっ子は力も強く、成績も良かった。私は何とかいじめっ子を見返したいと思い、懸垂をして体力をつけたり、一生懸命勉強したりした。大人になった今は、過去の頑張りのおかげでそれなりに成功している。あるとき街で昔のいじめっ子に出会った。彼はなんかしょぼくれた格好をしていて、成功しているようには見えなかった。そこで彼に声をかけて笑ってやろうと思ったのだが、子供がやってきてその男にパパといい、また奥さんもよってきて仲良い家族に見えた。自分はこの家族の平和を乱すのは良くないと思って声をかけるのを止めた。
話はこれだけである。私はこれを読んでいじめられっ子には一つの手があると思った。それは冷水浴・冷水シャワーをすることである。それには体力も知力も必要ない。必要なのは気力だけである。どんなに弱くても頭が悪くても、誰にでも少しはある気力を振り絞れば、いじめっ子に、少なくともその点では勝てるのではないだろうか。体力、知力に優れた人たちがそれができないのだとすれば、優越感が得られるだろう。というわけで、成功して自信のある人、知力、体力に優れた人には、冷水浴・冷水シャワーなど必要ないのである。