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2011年東北地方太平洋沖地震(M=9.0)の近畿地方への影響は?

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国土地理院が調べた過去100年間(1996年4月~1999年12月)の地殻変動図によれば、近畿地方は年間10-7の割合でほぼ東西方向に縮んでいる。この割合でひずみがたまると1000年で(10-7×103=)10-4のひずみに達する。

地殻を構成する岩石は、10-4程度のひずみで破壊する。従って近畿地方の同じ場所で岩石破壊(地震)が起こる繰り返し間隔はざっと1000年。近畿地方の活断層トレンチ調査の結果によれば、直下型の内陸地震と結びつく活断層は、1000~10000年の間隔で活動を繰り返している。この繰り返し間隔から、過去500年以内に動いた活断層が今後100年以内に動く可能性は低いと考えてよいであろう。

過去500年以内に中部・近畿地方で動いた活断層には次のようなものがある(内閣府)。

ⅰ)阿寺断層帯主部 [1586年(天正13年)天正地震]
ⅱ)濃尾断層帯主部(根尾谷断層、梅原断層)および温見断層北西部 [1891年(明治24年)濃尾地震]
ⅲ)木津川断層帯 [1854年(安政元年)伊賀上野地震]
ⅳ)三方断層帯、花折断層帯北部 [1662年(寛文2年)の地震]
ⅴ)有馬-高槻断層帯 [1596年(慶長元年)慶長伏見地震]
ⅵ)六甲・淡路島断層帯主部 [1995年(平成7年)兵庫県南部地震]
ⅶ)中央構造線断層帯(讃岐山脈南縁- 石鎚山脈北縁東部) [16世紀の地震]

これらを除いて、京都府南部に影響を及ぼす要注意の活断層としては、花折断層帯南部、宇治川断層、和束谷断層などがある。

ところで、今回の2011年東北地方太平洋沖地震(M=9.0)の際に、震源域では地殻が約24m東方に移動した。この地震の影響は近畿地方にも及んでいる。近畿地方は東西から押されて年間10-7の割合で縮んでいたものが、今回の地震で東に引っ張られて東西に少し伸びた。これにより、近畿地方のひずみの蓄積も少し解消されたことになる。

いずれやってくる直下型地震に備えて、各自耐震対策を真剣に考えなくてはならないが、若干の時間的余裕を与えられたような気がする。

近畿地方では直下型の内陸地震に加えて、東南海・南海の海溝型地震の心配もしなくてはならないが、現在までのところ、2011年東北地方太平洋沖地震の前と後で西日本の地震活動に目立った変化は見られない (2011年4月18日)。

参考:国土地理院・地殻変動図
   内閣府:中部圏、近畿圏直下の地震の震度分布の公表について

   
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