研究所紹介  

   

活動  

   

情報発信  

   

あいんしゅたいんページ  

   

コップの中の嵐・・・お茶の葉はなぜ中心に集まるか

詳細

コップの中の嵐とティーカップ問題

「コップの中の嵐」という言葉がある。当事者には大変なことでも、外から見ればたいしたことがないことの例えである。英語ではStorm in a teacupといい、語源は19世紀の劇の題名から来ている。映画女優ヴィヴィアン・リー主演の映画では「茶碗の中の嵐」と訳されている。この場合のコップとは硝子のコップではなく、ティーカップつまり紅茶カップのことである。実際のコップの中は嵐が吹いている。

どういうことだろうか。流体力学においてティーカップ問題(Tea cup problem)というものがある。紅茶カップに葉の入った紅茶を入れてスプーンでかき混ぜる。液体であるお茶と葉っぱは、一緒に回転運動をする。時間がたつと葉は底に沈み始める。底に沈んだ葉は、カップの中心周りを回転しながら、だんだんと中心に集中し始める。最後にはお茶の葉は中心部に山のように集まる。次のビデオはその現象を示している。

Tea Leaf Paradox Stirring

アインシュタインはお茶の葉が中心に集まる問題を「お茶の葉のパラドックス: Tea leaf paradox」とよんだ(1926年)。なぜパラドックスかというと、ちょっと考えると、お茶の葉は中心に集まるのではなく、周辺に吹き飛ばされると思えるからだ。アインシュタインはティーカップ問題と川がなぜ蛇行するかという問題が関係することも明らかにした。

本解説は、ティーカップ問題あるいはお茶の葉のパラドックスと、低気圧について解説する。続編で、川の蛇行、遠心分離器について解説する。

 この現象が起きるメカニズムと気象学における低気圧や台風のメカニズムは基本的には同じなのだ。それは紅茶カップや地面付近に出来るエクマン境界層(Eckman boundary layer)の概念で説明できる。こういった学問を回転流体力学という。筆者はウラン濃縮用の遠心分離器理論の研究を通じて、回転流体力学を勉強した。

剛体回転と微分回転

まずカップの中で回転する流体を考えよう。流体は大まかに分けて、粘性(摩擦)がほぼ無視できるような領域と、粘性が重要になる領域に分けることが出来る。前者を非粘性域とよび、後者を境界層と呼ぶ。ティーカップ問題の場合、流れの大部分は非粘性域で、これを専門的には内部非粘性域とかコアとよぶ。境界層は壁に接したごく薄い層である。境界層については後で詳しく説明する。

ティーカップ問題の場合、内部非粘性域は角速度がどこでも同じである剛体回転(rigid rotation)をしている。剛体回転とは、たとえばCDのように全体が一体となって回転しているような回転のことを言う。

剛体回転に対して、角速度が場所によって異なる回転を微分回転(differential rotation)とか差動回転とよぶ。本解説では英語の直訳的に微分回転という言葉を使うことにする。なお微分回転の微分と、微分・積分の微分は関係ない。

内部非粘性域における流れを考える。流れの円周方向の速度を回転速度と呼ぶ。また回転角速度とよぶ概念がある。単位時間に、どのくらいの角度、回転するかという速さである。これは通常、単位時間(例えば1秒)あたり回転する角度である。ただし角度は度ではなくラジアンで表す。回転の一週は360度だが、ラジアンで言うと2πである。また回転周期という概念もある。回転が一周する時間である。これらの間には次の関係がある。

回転速度=半径×回転角速度,  v=rω

回転周期=2π/回転角速度,    T=2π/ω

ただしvは回転速度、rは半径(動径位置)、ωは回転角速度、Tは周期である。

剛体回転の場合、回転角速度は場所によらず一定であるから回転周期はどこでも一定である。また回転速度は、中心にある回転軸からの距離rに比例する。

微分回転している例としては、太陽を回る惑星の運動がある。太陽に近い惑星ほど、太陽の周りを回る時間(周期)が短い。従って回転角速度は大きい。またこの場合、回転速度も内惑星ほど大きい。

微分回転の別の例として渦巻銀河の回転がある。次のビデオはその数値シミュレーションである。銀河の回転の場合、横軸に中心からの距離、縦軸に回転速度をプロットした図を回転曲線という。観測に基づく回転曲線を見ると、銀河回転は中心部分は剛体回転しているが、外側の部分は微分回転している。ビデオをよく観察するとそれが分かる。

Spiral Galaxy with Differential Rotation

後で話題になる台風を含む低気圧は、低気圧の中心を空気が回転している渦巻きである。その風速は台風などでよく知られているように中心ほど大きい。つまり微分回転である。なぜなら剛体回転の場合、回転速度は中心に近いほど小さいからである。

ティーカップ中の液体の運動

さてティーカップの中のお茶、つまり流体の運動を考えよう。ある流体の中の小さな部分を考えると、これを流体要素という。流体要素は中心軸の周りに半径一定の剛体回転をしている。

観察すると分かるように、流体の表面は真ん中がくぼんで、周辺が盛り上がっている。流体表面は厳密に言えば、放物線を軸周りに回転させて出来る回転放物面の形をしている。なぜそうなるのか?

コップの底からある一定の高さの水平面を考える。そこでの圧力は、その水平面より上の流体の重さで決まる。ティーカップ問題のように、外ほど流体表面が高いと、水平面上の圧力は、外ほど高くなる。一種の低気圧である。従って液体要素には中心軸に向かって圧力の勾配による力、圧力勾配力とよばれる向心力が働く。

今、この問題の理解のために、流体要素とともに回転している回転系で考える。考えているティーカップの中の流体は、ほとんど剛体回転しているので、回転系の回転角速度はどこでも一定である。

回転系で考えると、流体要素には外向きに遠心力が働く。この遠心力と圧力勾配による向心力の大きさが等しい場合は、力の方向が反対なので、合力は0になる。その場合、流体要素は、いつまでも同じ半径の位置を回転する。

遠心力は中心からの距離rに比例する。だから圧力勾配力も中心からの距離に比例しなければならない。そうでないと力がバランスしないので、流体要素は動径方向に移動してしまう。圧力勾配力は水面の高さHをrで微分したものである。それらを式で書くと

遠心力=rω2

遠心力=向心力=圧力勾配力

圧力勾配力=dH/dr

故に

dH/dr= rω2

この式を積分すると、ωは定数だから

H= r2ω2/2

つまりティーカップ問題の場合、流体表面の形は回転放物面になるわけだ。

もっとも、以上に述べたことはティーカップ問題の理解には、それほど重要ではないので、式が理解できなくても問題はない。

ここでひとことコメント。この解説で、回転系で考えると言ったのは、カップの静止系(慣性系)では、遠心力は存在しないからである。ティーカップ問題を理解するには、遠心力を考慮するとわかりやすいので、回転系で考えたのである。

境界層

ティーカップ問題の本質は、ティーカップに底が存在することである。カップの底付近を考えると、底の近くにある流体は底との摩擦により、回転速度が遅くなる。底に接した部分では流体の速度は0である。底の摩擦の影響が顕著な領域を境界層という。境界層内で、流体の回転速度は下から上に向かって、0からだんだんと大きくなり、境界層の外で内部非粘性域の速度になる。

境界層の厚みとは、例えば速度が非粘性域の速度の99%になるところとでも定義できる。境界層の厚みは通常、非常に薄い。今の問題では、容器の深さの1%程度である。なぜ1%程度であるのかは、後で説明する。回転流体と容器の底の間の境界層を、発見者の名前を取ってエクマン境界層とよぶ。回転流体に特有のエクマン境界層については、後で説明する。

ここではまず境界層一般について説明しよう。物体が液体や気体などの流体の中にあるとしよう。例えば飛行機が空気中を飛行する場合を想像すればよい。流体が静止していて物体がその中を運動しているか(飛んでいる飛行機)、あるいは同じことだが物体が静止していて、流体が物体に対して流れている(風洞におかれた飛行機の模型の場合)とする。つまり物体と流体に相対速度があるとする。

流体を構成する、たとえば水分子や空気分子は、物体の表面では物体に対して静止している。というのは、流体を構成する分子が物体の表面を構成する分子に、分子間力で引きつけられているからである。流体力学的に言えば、流体要素と物体の速度差は、物体表面では0である。これを粘着条件と呼ぶ。

物体に対する静止系で考える。物体表面での流体要素の速度は0である。表面から少し離れた非粘性域では、速度は0ではなく流れがある。その途中では流体の速度は0からだんだんと大きくなる。この遷移領域を境界層(boundary layer)と呼び、1904年にドイツの物理学者プラントルによって発見された。境界層の発見は流体力学的にきわめて重要である。

境界層の概念が重要なのは、流れの大部分が非粘性域だとすると、その部分は流れの様子を求める計算が容易だからである。計算が複雑な粘性(摩擦)の効果は、狭い境界層に押し込めることが出来る。このように計算が分離できると、簡単になる。それが境界層概念が重要な理由である。

エクマン境界層

つぎに回転流体に特有なエクマンの境界層の話をしよう。探検家のナンセンは北極海で、風に吹かれた流氷が風の方向に流されるのではなく、その方向から20-40度右にそれて流れることを発見した。その理由について学者に聞いたところ、エクマンという学生がその問題を解決して1902年に博士論文に書いた。

その機構は言葉で書けば次のようになる。例えば南から北に向かって風が吹いているとする。海面に浮かぶ流氷は風の力を受けて、北に流れようとする。ところが地球は自転しているので、コリオリ力が働く。北半球ではコリオリ力は、運動方向に直角に右の方に働く。つまり流氷は北半球では、流れる方向の右の方向にコリオリ力を受ける。さらに流氷には、水面下の海水から抵抗を受ける。この三者の力、つまり風の摩擦力、コリオリ力、下の水からの摩擦力、これらがバランスした方向に流氷は流れる。それが北の方角から20-40度ずれた方向だというわけだ。力のバランスを図で示すと次のようになる。

図で北向き(上向き)のベクトルは氷に働く、南風による摩擦力である。エクマン境界層つまり風が氷を押す力である。赤いベクトルは、結果としての氷の運動方向である。右下の方向に向いているベクトルはコリオリ力を表す。コリオリ力の働く方向は、東向きではなく、氷の運動方向に直角で右向きであるので、東南の方向を向いている。摩擦力は、海面下の水が氷に及ぼす摩擦力である。コリオリ力と摩擦力をベクトル的に加えた合力は下向き(南向き)の、点線で表したベクトルである。力が釣り合うとは、この合力と風の力とが、大きさ等しく、方向が反対であると言うことだ。

海氷の海水面での流れは上記の通りだが、海水面下の海水の流れも複雑である。海水面の少し下の水に働く力のバランスを考えよう。図で言えば、一番上の赤い矢印は海水の表面の流れである。その次の下の矢印について考えよう。その深さにある流体要素(つまり水の塊)に働く力のバランスを考える。

まずは直上の表面にある海水による摩擦力である。それは表面の海水の流れの方向である。それにコリオリ力とさらに下の海水による摩擦力が働く。結果として海水面の少し下の海水の流れは、表面の流れより少し右にずれ、かつ速度は少し遅い。さらに下の海水は・・・となり、結局は図に示すように、海面下の海水の運動方向を表す速度ベクトルは螺旋状になり、深さが10-20mのところで、速度が0に近づく。この螺旋をエクマン螺旋とよび、海面から速度がほぼ0になるまでの領域がエ海のエクマン層クマン境界層である。

エクマン境界層は回転流体に特有な境界層であり、海底付近とか大気と地面の境界付近にも存在する。海水ではその厚さは数100mの程度である。大気の場合厚みは1km以下である。

エクマン層の厚みは詳しい理論によると、エクマン数と呼ばれる無次元数の平方根の程度である。ここにエクマン数とは

エクマン数=粘性力の大きさ/その他の力の大きさ

である。カップの中の流れの場合、エクマン数は1/10000の程度であるので、その平方根は0.01であり、つまり1%である。ティーカップの流体に働く粘性は分子粘性と呼ばれるもので、物理的によくわかっている。それに対して海水や大気で重要な粘性は、分子粘性ではなく乱流粘性と呼ばれるもので、これについてはよく分かっていない。

ティーカップの中の子午面環流

準備が長かったが、いよいよティーカップ問題について議論しよう。ティーカップ内の流体ティーカップの内部非粘性域の流れについてはすでに述べた。それは中心軸を回る剛体回転的な流れである。これを後に述べる2次流と対比するために、1次流とよぶ。図に示したように、内部非粘性域の流体要素は、流体の回転系で考えると遠心力と向心力が釣り合っている。

つぎに底面のエクマン層内の流れを考えよう。ここの流れはエクマン螺旋的で複雑なのだが、単純化して議論しよう。エクマン境界層内の流体要素は、底面からの摩擦のために回転速度が内部非粘性域より遅くなる。すると図に示したように、遠心力は小さくなる。一方、向心力は内部非粘性域と同じである。そこで力のバランスが破れて、エクマン境界層内の流体は中心の方向に流れる。厳密なことを言えば、その運動に対する摩擦力もあり、定常状態では力はバランスしている。このような微少な副次的な流れを2次流とよぶ。あるいは後で述べる流れのパターンから、子午面環流ともよぶ。

ともかくも、エクマン境界層内の流体要素は1次流で回転軸周りに回転しながら、2次流で徐々に中心に近づいていく。1次流と2次流を合わせると、流れは螺旋的になる。だんだん中心軸に近子午面還流づいた流体は、それ以上は内側に行けないので、内部非粘性域に向かって吹き上がる。そして内部非粘性域で円筒外側に向かう。最終的には円筒の側面にある境界層(これをスチュワートソンの境界層と呼ぶのだが)に吸い込まれて、そしてエクマン境界層に戻る。このような循環流を子午面環流とよぶ。子午面とは回転軸を含む平面で切った断面である。

お茶の葉は沈んでエクマン境界層に入り、そこでの流れに運ばれて中心部に集まる。水はそこで内部非粘性域に吹き上がるのだが、お茶は重いので中心部に沈殿したままである。これがお茶の葉パラドックスの解答である。

http://upload.wikimedia.org/wikipedia/commons/5/5c/Ekman_layer.jpg

ここで側面にあるスチュワートソン境界層について少しだけ触れておこう。これは英国の流体力学者のスチュワートソンによって発見されたものである。回転流体の境界層では、エクマン境界層は回転軸に垂直であり、スチュワートソン境界層は回転軸に平行である。その性質は大きく異なる。ティーカップ問題で主導的な役割を果たすのはエクマン境界層であり、スチュワートソン境界層は子午面環流を環流させるという受動的な役割しか果たさない。ここではスチュワートソン境界層についてこれ以上の議論は避ける。

低気圧と高気圧

エクマン境界層の概念は低気圧、高気圧などの気象の力学を理解する上地衡風で重要である。気象学において地衡風という概念がある。風は等圧線に平行に吹くということである。図にあるように気圧の等しい等圧線が縦に走っているとする。右側が高圧側で左側が低圧側とする。この場合、空気は高圧側低圧側に流れるのではなく、北半球では高圧側を右に見るように、等圧線に平行に流れる。というのは、気圧傾度力(圧力勾配力)とコリオリ力がバランスするように風が吹くからである。これを地衡風と呼ぶ。

低気圧の場合、等圧線は円形に近い。図に低気圧の等圧線(円形の線)と、地衡風の風向(黒い矢印)、コリオリ力(赤い矢印)、気圧経度力(青い矢印)を示す。北半球の場合、低気圧の風向は反時計回りで、風向は等圧線に平行である。

これは地面の摩擦の影響のない高空の場合である。地面の近くは、地面からの摩擦の影響でエクマン境界層がある。その内部の流れは図に示したように、気圧傾度力、コリオリ力、地面からの摩擦力が釣り合う。従って、風向きは等圧線に平行ではなく、低圧側に傾く。つまりカップのエクマン境界層内の流れと基本的に同じである。低気圧の中心付近に流れ込んだ空気は、低気圧行き場を失って上空に逃げる。つまり低気圧の中心付近では、上昇気流が発生する。

上昇気流のあるところは天気が悪い。空気が上昇すると、気圧が低くなるに従い、空気の固まりは断熱膨張を行う。断熱膨張とは、外からエネルギーや仕事をもらわない膨張である。空気塊は外部に対して仕事をするので温度が下がる。すると空気塊に含まれていた水蒸気が飽和して雲になる。そして雨が降る場合もある。低気圧の中心付近はこのようにして雲が多く、雨が降りやすく、つまり天気が悪いのである。

高気圧は低気圧とは逆で、中心付近には下降気流がある。下降気流は上昇気流と逆に好天をもたらす。このあたりの事情を図示したホームページを貼り付けておく。

始めに『コップの中の嵐』という言葉を紹介したが、カップの中の流れ地上付近の風と嵐、つまり低気圧の流れは基本的に同じなのである。

川の蛇行

自然の川は蛇行している。つまり曲がりくねっている。まっすぐな川があるとすれば、それは人工的なものである。

川はなぜ蛇行するか。これに関する多くの教科書やネットの記述は間違っている。その解説はこうである。川が曲がっているとすると、その曲がりは増強される。その理由は、川の流れは曲がった外側では速く、内側では遅い。川の水には泥などが浮いている。それは遅い内側の部分に沈殿する。一方、外側の速い水は、外側の川岸をえぐるので、川の曲がりはますます大きくなる。

この問題に関して、「飛行機はなぜ飛ぶのかまだ分からない??」で、日本の教科書の7割は間違いであるという指摘をした東工大の石綿先生は、ここでも教科書の間違いを指摘している。石綿先生は川が直線部と湾曲部からなる水路で実験を行った。その結果、入り口付近では水の流れは内側ほど速く、外側ほど遅い。しかし下流に行くに従って、内側が遅く外側が速く、つまり剛体回転的な流れになることを示した。私は数値シミュレーションを行って、そのことを確認した。つまり教科書的な説明の前提条件が必ずしも正しくないのである。

それでは正しい仕組みはどんなものか。これに関してのアインシュタインの1926年の論文は、先に述べた「ティーカップ問題」あるいは「お茶の葉パラドック」がその答えだと言う。川の流れの曲がりを、ティーカップの中の回転流と同じだと考えると、川には底があるのでエクマン境界層が出来る。川の子午面断面内で考えると、川底では外から内側に流れる2次流が出来る。その流れに運ばれた土砂が内側に堆積する。要するにお茶の葉が中心部に集まるのと同じ理由だと言うのだ。その説に関する解説は以下のEinstein, tea leaves, meandering rivers, and beer(アインシュタイン、お茶の葉、蛇行する川とビール)を参照のこと。

もっとも、流体力学者なら次の指摘をするだろう。ティーカップ問題とか、実験室での実験ではレイノルズ数が低いが、現実の川では高い。だから同一には論じられないと言うであろう。レイノルズ数とは流体に働く種々の力と(分子)粘性力の比である。レイノルズ数が大きいほど、(分子)粘性の効果は小さい。レイノルズ数が等しいと、流れを記述する方程式が同じになり、起きる現象も同じである。例えば飛行機の模型を風洞に入れて実験する場合、できるだけレイノルズ数を同じにするように苦労するのは、そのためだ。

この批判に関しては、川の流れはティーカップの中の流れと違って、実際は乱流状態であり、その場合、乱流粘性というものが働く。そして結果的にはレイノルズ数が低い流れと同じになる。

 

   
© NPO法人 知的人材ネットワーク・あいんしゅたいん (JEin). All Rights Reserved