マッド・サイエンティストのつぶやき - NPO法人 知的人材ネットワーク・あいんしゅたいん https://www.jein.jp/jifs/blog-matsuda/mutter.html Sun, 28 Apr 2024 03:14:01 +0900 Joomla! - Open Source Content Management ja-jp 2016年3月 https://www.jein.jp/jifs/blog-matsuda/mutter/1310-1603.html https://www.jein.jp/jifs/blog-matsuda/mutter/1310-1603.html

 


2016-03-30 (水曜) 府立植物園、御所

私は京都に住んでいるので、桜の花見の名所には困らない。というか花見をしないと、その年はなんか重大なものを忘れたような気になる。この歳になると、これが最後の花見になるかもしれないので、徹底的に花見をする事にしている。桜にはまだ少し早いかもしれないと思ったが、Facebookでいろんなお友達が桜の写真をアップしているのを見ると、行かねばという気になる。というわけで今日は家内を連れて府立植物園に出かけた。しかしここはまだ少し早いようであった。5分咲きといったところか。それでもたくさんの人々が出ていた。週日であるので働いている男性は少なく、主に小さな子供を連れたお母さんが多かった。当然、時間のある老人もいる。結婚式の衣装を着た若い男女もいた。ここは写真を撮るのに適しているので、花見のシーズンには結婚式を挙げたばかりのカップルがプロの写真家に記念写真を撮ってもらっている事が多い。12時過ぎにカフェに行くと満員であったので、ベンチでクロワッサンとコーヒーの軽食をとった。それから時間を計ってカフェに行き、焼きそばの昼食をとった。

その後は地下鉄に乗り、烏丸今出川で下車して京都御苑に行った。旧近衛邸後近くのしだれ桜は満開であった。というか9分咲きといったところか。まだつぼみの桜もあったので、これから一週間ほどが見頃であろう。


2016-03-26 (土曜) ナレッジイノベーションアワード、シンギュラリティサロン 

今日は以前から応募していた第3回ナレッジイノベーションアワードの最終選考である。我々はコト部門で「シンギュラリティサロン」を応募していた。一緒にシンギュラリティサロンを運営しているXOOMSの保田さんはTwee-shirtでモノ部門にもエントリーしている。すでに2月末でウエブによる人気投票が行われ、その時点ではシンギュラリティサロンは3位、保田さんは2位につけていた。

昨日に打ち合わせをするから来いと言われたのだが、私は3/26は東京で講演だから行けなかった。本日の11時から打ち合わせというコトにしてもらった。会場はグランフロント前のテント広場である。私はここに足を踏み入れたのは初めてである。会場に入ると中高生部門にエントリーしている生徒達、それからモノ部門、コト部門と練習をするという。マイクのつけ方、壇上に上がって話の始め方、終わりのサインなどを教わった。午後1時から本番である。中学生、高校生のプレゼンでは、審査員の(好意的な)質問が行われた。なかなか堂々としたものであった。ただし中学生のほとんどが原稿を読んでいたのは、仕方ないこととはいえ、プレゼン技術的にはマイナスである。その点、高校生ははるかに上手であった。ちなみに審査員長はCGで有名な川口洋一郎東大教授であった。その他、知っているところでは元グーグル副社長、グーグル日本社長の村上憲郎氏がいた。

モノ・コト部門は4分のプレゼンだけであった。私は共同主催者の塚本昌彦神戸大学教授と掛け合いで話すことにした。4枚程度のPPTをあらかじめ保田さんに作ってもらい、そのページめくりと時間管理は塚本さんにお願いした。塚本さんが話の口火を切り、私がそれに答えるという形でプレゼンを行った。当然のことだが4分はあっという間に過ぎてしまった。たの人々のプレゼンも大したモノだった。とくにヘボコン・コンテストは面白かった。ロボット・コンテストなのだがヘボさを競うというユニークな発想であった。

それが終わった後、正直言って私は疲労困憊した。昨日の東京出張がこたえた面もある。この後、外国人のプレゼンがあり、1時間後に審査発表、それから懇親会へと続く。しかし私は6時からナレッジサロンでシンギュラリティサロンの講演を私自身が行うことになる。体力の保存も考えて、私は共催者の根本茂さん(ブロードバンドタワー)と一緒にナレッジサロンに撤退した。そして夕食のためにうどんを食べた。話していると、ナレッジサロンの受付を手伝っていただいている女性が来られて、なんと我々は優秀賞を獲得したのだという。保田さんもモノ部門で優秀賞だという。グランプリは予想どうりヘボコンであった。我々の優秀賞は正直、非常に驚いた。多少の自信はあったのだが、それでも2-3位がいいところかもしれないと思っていた。内容的には1位になっても当然と思っている。でもプレゼンの面白さや意外性など、その場の雰囲気的な面では必ずしも一位とは言えない。やはり審査員は本質を見ていたと思う。敬意を表したい。

第14回シンギュラリティサロン@大阪

夜の6時からは私がナレッジサロンのプレゼンルームで講演した。事前の募集では定員の100名に達していた。我々のこれまでの経験では、必ずドタキャンが入るので普通は席に余裕がある。それを見越して、私はアワードのプレゼンで、今晩のイベントを告知した。それに応じて何人かの特別参加があった。特筆すべきは中学生が父親に連れられて参加したことだ。講演後に挨拶に来られた。講演のPPTはシンギュラリティサロン東京と、昨日の日経コンピュータでの講演と同じものである。少し難しい、専門的すぎるかなと危惧はした。なぜなら超知能の具体的な作り方に関して、HTM理論に言及しているからである。

講演でも話したのだが、シンギュラリティサロンは「日本からシンギュラリティを起こそう」を旗印に掲げて、月に一度、大阪と東京で各界のキーパーソンに講演してもらうという企画である。大阪では昨年初めから現在に至るまで13回行った。シンギュラリティの広報活動が目的ではあるが、私としてはキーパーソンを発掘する目的もあるのだ。最大の収穫は昨年の7月に大阪で、今年の1月に東京秋葉原で講演していただいたPEZYコンピューティングの齊藤元章さんである。この人は真の天才だ。次に私にとっての驚くべき天才・鬼才は2015/11/21に講演された東大医学部の光良俊二さんだ。他の人はすでに確立した立派なキーパーソンであり、意外性は少ない。ただし2016/2/27に大阪で行われた第13回で講演された井上智洋さんは経済学者という点で異色であった。講師選択の私にとってのポイントは、人材発掘にあるので、あまり老大家を呼ぶことは考えていない。現役パリパリの人で、まさにシンギュラリティを起こせそうな人である。


2016-03-25 (金曜) シンギュラリティ・インパクトセミナー講演、時事通信社インタビュー

朝8時に家を出た。バス・地下鉄を乗り継いで京都駅に行く。そこから新幹線に乗り東京へ、山手線で一駅戻り有楽町へ、そこで地下鉄の有楽町線に乗り換えて永田町で降りる。徒歩で都市センターホテルに行く。今日はここのコスモスホールで日経BP社主催の「シンギュラリティ・インパクト・セミナー AI/ロボットが変える産業と社会」で講演する。12時までには講師控え室に来てほしいという事であった。少し余裕を見て到着した。

定員が100人との事で比較的小規模なセミナーであった。受講料がなんと29,800円だと言う。講師は4人である。私が主催しているシンギュラリティサロンは無料の上に飲み物と食べ物のサービスまで付くのだが。終わった後で、いつもの通り聴衆の何人かと名刺交換して話をした。人工知能関係のビジネスを始めたいので、コンサルタントを紹介してほしいという話であった。

終わった後で、階下の喫茶店に移動して、時事通信の記者から1時間ほどインタビューを受けた。時事通信の記事は地方新聞が買っていると言う。地方新聞がその記事を掲載するかどうかは、新聞社の裁量だそうだ。


2016-03-15 (水曜) 春画展

京都で春画展をやっていると言う。えらい人気のようで長蛇の列だそうだ。岡崎の細見美術館で4月10日までやっている。私は細見美術館の存在を知らなかった。都メッセの西側で疎水べりにある。茶色のレンガの建物でなかなかしゃれている。行ってみて驚いた。確かに長蛇の列で、整理員までいる。1時間待ちを覚悟したが、実際は30分ほどで入れた。内部も長蛇の列である。その列に並んでゆるゆると進んで行く。他の展覧会でこれほど混むものは少ないであろう。私が若い頃なら多いに興奮したと思うが、今やネット時代で春画と言っても、いつでも見れるから冷静なものである。私が興味を持ったのは、春画自体より客層であった。女性が多い、特に若い女性が多い事に驚かされる。常識的に言えば好色そうな中年男性が多いと思うのだが、確かにその手の人もいるが、多くは女性であった。若い男女のカップルも一組見つけた。目を引いたのは松浦家の巨大な屏風、鎧を着た男女の図で、女の鎧のくさずりを上げると見えるという趣向だ。有名な蛸と海女の図は最後にあったが、小さくて迫力には乏しかった。


2016-03-13 (日曜) ジャパンスケプティックス総会、シンギュラリティサロン東京

今日は東京でジャパンスケプティックスの運営委員会、総会、公開講演会がある。シンギュラリティサロンの公開講演会と共催にした。というのもこのところジャパンスケプティックスは会長の私の不徳の致すところで、極めて低調になっている。実際のところは私の精力の多くがシンギュラリティ関係に割かれているからだ。昨年度は大阪のグランフロントで総会、公開講演会を行った。昨年のテーマは「研究不正」であった。その時も、会員の参加はすくなく、公開公募した一般の参加者が大部分を占めた。というわけで、今年も会員の参加が少ないことを憂えて、シンギュラリティサロンとの共催にして、私自身が講演することにした。そうしたら効果絶大であった。公募した定員の80名が4時間で満席になったのだ。スケプティックスの運営委員と会員のために10席を用意したが、結局、こちらは12名であった。実はこの数は従来になく多いのである。会場はシンギュラリティサロンで従来使っている秋葉原ではなく、スケプティックスで従来使っていた竹橋の科学技術館の会議室である。科学技術館自体も日曜ということもあり、混んでいて、昼食のときに地下の食堂に入れず、昼食なしで講演に挑んだ。

運営委員会が11:00-12:30、総会が13:00-13:30、公開講演会が13:30-16:30であった。私の講演は1時間半で、残りの1時間半を質疑応答に当てたが、いつもどおり極めて活発な議論が展開された。GoogleのAlphaGoが人間に勝ち越したので、シンギュラリティが近いという雰囲気の中、私は超知能の作りかたに関する私の計画の話をした。詳細はスケプティックスの会報に書くつもりである。

京都の家に帰り着いたのは9時を過ぎていた。朝7時に家を出たので、本日は強行軍であった。

ちなみに今日はイ・セドル氏はAlphaGoに対して一矢を報いた。これで彼は1勝3敗となった。全5戦だから、敗北は確かなのだが、人工知能に対して一勝でもしたということは大きい。つまり人工知能といえどまだ完全でないということだ。

週刊誌から人工知能の関する電話インタビューがあり、50分も話した。


2016-03-12 (土曜) あいんしゅたいん総会

本日は午後1時からNPO法人あいんしゅたいんの総会が事務室で行われた。たまたま本日は私の73歳の誕生日でもあり、皆さんに祝っていただいた。坂東理事長はわざわざケーキまで作ってくださった。佐藤文隆名誉会長の誕生日も3月なので、一緒に祝った。

今日の第3戦は総会の最中に始まった。会が終わって、早々に帰宅して調べてみたらやはり人工知能が勝った。これで3勝目である。全5戦であるので、これで人工知能の勝利が確定したことになる。シンギュラリティを研究しているものの目から見ると、まさに歴史的な一瞬であった。「人類オワタ!!」

 


2016-03-9 (水曜) AlphaGoがイ・セドルに勝利

ついにやった。Google傘下のDeepMind社の囲碁ソフトAlphaGoと韓国のイ・セドル9段の対戦で人工知能が勝利した。画期的なニュースである。前日イ・セドルは英国の新聞Finantial Times(電子版を購読している)のインタビューで、絶大な自信を示し、もし人工知能が自分に一勝でもしたら、それは人工知能の勝利だと認めようとまで豪語していた。昨年10月にAlphaGoは囲碁のプロであるヨーロッパチャンピオンに対して5戦全勝しているのだが、そのチャンピオンは2段であり、世界的ランキングではかなり低い。その棋譜を研究したイ・セドルは「この程度では自分に勝てない。5ヶ月あったが、その程度では進歩しない」としていた。同じく中国のチャンピオン柯潔(カー・ジエ)九段は、「人間が勝つ、全財産をかけても良い」と豪語していたのだ。

それがイ・セドルがなすすべもなく人工知能に敗北したことは、これは人類全体に対する警鐘というか、人類の黄昏の始まりである。私は人類よりは人工知能の味方なので、とてもうれしい。このまま5戦全勝して、生意気な人類の鼻を明かしてほしい。

イ・セドルだけではない。人工知能の専門家も人工知能がここまで強いとは、ほとんど誰も想像していなかった。人工知能が囲碁で人類に勝つには、後10年、早くても5年はかかるとされていたのだ。それは囲碁における場合の数の多さによる。単純化していえばチェス、将棋、囲碁では場合の数は、ほぼ10の100乗、200乗、300乗程度ある。ちなみに宇宙にある陽子の数は10の80乗である。チェスはすでに1987年にIBMのディープ・ブルーが当時のチャンピオンのカスパロフに勝った。将棋は近年、プロが人工知能に負けつつあるので、人間側は勝負自体をしなくなった。負けるのが明らかだからだ。しかし囲碁はその場合の数の多さから、しらみつぶしの方法、いわゆるブルート・フォースではやれない。人間はそこで直感というやつで勝負する。人工知能が勝ったということは、直感を備えたことを意味するのだ。

AlphaGoはまだ汎用人工知能ではない。ディープ・ラーニングと強化学習を合わせたもので、専用人工知能である。しかしAlphaGoのもととなっているDQNはアタリゲームをすべてできるという点において、すこしだけ汎用性を持っているのだ。だからAlphaGoはすこしの工夫でチェスにも将棋にも対応するだろう。これらではもはや人間は勝てない。

特異点は近い!!


2016-03-08 (火曜)人工知能の都市伝説発売

私が監修した宝島社の「人工知能の都市伝説」が発売になった。私のところにはすでに8冊届いていたのだが、今日は正式な発売日である。

この本は非常に早くできた。というのも本文はライターの佐藤さんと編集部が書き、私はそれにコメントするという形式であるので、私の書くべき原稿量がそれほど多くなかったからである。

この本の話が最初持ち込まれた時は躊躇した。というのも、向こうが挙げてきたテーマはとても胡散臭いものがあったからだ。例えば「ヒラリークリントンには人工知能チップが埋め込まれている」とか。ありえないだろ、それ。そんな本に私が監修者として名を連ねると、自分の名誉が汚れると私はいい、断るつもりだった。しかし交渉の中で、私は単に監修という名前で何もしないのではなく、ライターの書く文章に賛否のコメントをつけるということになった、それなら、私がライターの意見に反対の場合も、そうハッキリと書けるので、それならいいかと思った。

実際、送られてきた原稿を読むと、当初危惧したような胡散臭いものは少なく、真面目に調べて書かれていた。しかし諸所に間違いとか、私の意見と反するところもあり、私は張り切ってコメントを書いた。私に当てられたコメントの字数制限というものがあり、こちらの方が厄介だった。というのは、私には書きたいことが山ほどあり、それを削って制限内に入れることの方が大変だったからだ。

というわけで本書は私とライターの掛け合い漫才のような形式になっている。それはそれで面白いと思う。


2016-03-6 (日曜) 第17回「サロン・ド・科学の探求」

今日はNPO法人あいんしゅたいんの第17回「サロン・ド・科学の探求」であった。今日の話は名古屋工業大学の櫻井優先生の「テレビの不思議」という話であった。櫻井先生は長年東芝でテレビ開発に従事しておられ、比較的最近に大学教授に転身された。今年でそれも定年退官されるそうだ。今日の話はテレビ技術の歴史の話で、知らないことが多く面白かった。テレビの社会的側面の話も準備されていたが、時間の制約でそれは次の機会でということになった。

このサロンの特徴は理事長の坂東昌子さんの意向で、講師の一方的な講演という形ではなく、途中でいくらでも質問できるというものだ。今回も櫻井先生の話を、聴衆が乗っ取って、自分の言いたいことを開陳していた。それも講演に関係したことならともかく、自分の関心事ばかり開陳され、私は講師がちょっと気の毒になった。もっと、ちゃんと話を聞いてやれよと。

でもその中でもためになる話はいろいろあった。

「ブラウン管のブラウンはノーベル賞をもらった」

「木の葉の色が緑なのは、植物にとって緑の光は不要だから反射してしまって、それで緑に見える」なるほど、緑の党とかグリーンカーとか、緑を良いものとしてありがたがる風潮があるが、緑は植物、つまり自然にとっては不要な存在であったのだ。つまりゴミをありがたがっているのだ。目から鱗な話であった。

「二宮金次郎が薪を背負って本を読んでいる銅像が、立派な人物の例として昔は学校にあった。しかし最近はあれは歩きスマホをイメージするのでよくないという話になっている」なるほど、何がよくて何が悪いかの価値観は時代により異なるものだ。おじさんが「あれはああだ、これはこうだ」と道徳の話をしても、それは普遍的な価値を持たない、時代の産物だということを認識する必要がある。だいたい人を殺して首を切るという行為なども、現代では殺人の中でも最も許されないことであるが、日本の戦国時代では立派なこととして褒められたのだ。

「ビデオテープには松下のVHSとソニーのベータという企画が競い合った。あのベータはαβのベータではなく、ベタという意味だ」なるほど、知らなかった。


2016-03-5 (土曜) Monica Andersonの思想

モニカ・アンダーソンという女性のコンピュータ技術者がいる。彼女は汎用人工知能に関して一家言を持ち、会社を作り製品も出している。彼女がシリコンバレーで一連の講義を行っているのだが、これがとても面白い。もっとも話し方自体は、非常に面白くなさそうに話すのだが。彼女の一連の講演はここにまとめられている。英語の長時間の講演を聞くのが苦手だという人のために、まとめのノートを「マッドサイエンティスト超知能ノート」と題する新しいブログでの執筆する予定であるがそれには時間がかかる。

アンダーソンは科学の方法論として要素還元主義(Reductionism)全体論(Holism)があるという。還元主義は近代科学の基本的手法であり、全体を部分に分割して、その部分の総和として全体が理解できるという主張である。物理学、化学に典型的な手法で、それはガリレオ、ニュートン、デカルト以来大成功を収めてきた。しかし要素還元主義で理解できる問題は多くは解決したが、複雑な系ではそう単純ではない。池のカエルを池から取り出して実験室で調べればカエルが理解できるのか? カエルを解剖すれば池のカエルの生態が理解できるのか? できるとする立場が要素還元主義であり、できないとする立場がホリズムである。ホリズム的理解を必要とするのは生物、エコロジー、言語などであるという。言語では文法や辞書だけでは意味が理解できない。文章を理解するには全体の文脈とか、極端には文化自体を理解する必要がある。

人間には意識(Consious)と無意識(Sub-consious)があり、意識は合理的理解(Reasoning)、無意識は直感的理解(Understanding)である。人間の脳の働きの圧倒的部分は無意識、直感が占めている。汎用人工知能(Artificial General Intelligence)の研究は合理的意識の部分のみを対象にしてきたが、今後は無意識、直感的理解を取り入れて人工直感(Artificial Intuition)でなければならない。

具体的な方法として要素還元主義はモデルを作る(Modelling)。一方ホリズムの手法はモデル無し法(Model Free Method)である。


 2016-03-04 (金曜) Apple Pen壊れた

私はiPadを現在4つ持っている。iPad3, iPad mini, iPad Air, それに最近買ったiPad Proである。iPad 2も持っていたが、これは息子にやった。さてiPad Proであるが、これはApple Penとキーボードも同時に買った。その感想から。

まずApple Penであるが、これは前評判通り、綺麗な線が描ける。筆圧やペンの傾きに応じて線の太さが変わる。だからペン習字に使うことができる。その方向で使い始めたが、すぐに飽きてしまった。絵を描くのにも最適だが、絵心がないのであまり役に立たない。そしてあまり使うことなく、カバンの中に入れていた。最近取り出したら、なんと先のキャップがなくなっている。むき出しになったペン先で字を書いてみたらかけない。焦って探したら、パッケージの中に予備のペン先があった。それをはめてもかけない。充電しなければと思って、これも箱に入っていたメス・メスのアダプターを使って充電してみた。それでも結局かけなかった。壊れたのであろう。高い買い物であった・結論として、これで絵を描こうという人でない限り、高いおもちゃになるキーボードの方も、あまり使われていない。結構使いにくいのだ。

というわけで、本体だけで十分である。本体で何が良いかというと、大きいので見やすい、読みやすい。本や雑誌の記事や論文のPDFを読むには適している。その意味で無駄ではなかった。

音が良い。音楽関係のYouTubeをこれで鑑賞すると、非常に良い。スピーカーが左右に4 つあり、これがタブレットの音かと思うほど良い音を聞かせてくれる。


大阪大学の構内にある脳情報通信融合センター(CiNet)を訪問してセミナーを行ってきた。ここは大阪大学にあるので、阪大の施設かと思ったらそうではなく、総務省の情報通信研究機構(NICT)と阪大のジョイント研究所だという。2013年に完成したピカピカの研究所である。土地は阪大から50年の契約で借りているという。50年も経ったらシンギュラリティが起きて、世の中どうなっているかわからない。

とても新しい建物でまさにピカピカである。実験器具もアメニティも充実している。こんなに素晴らしい研究環境なら、すごく研究が捗ると思う。以前、シンギュラリティサロンの講師にお呼びした石黒先生もここの所属だという。

さて私がそこになにをしに行ったかというと、副センター長の田口隆久先生に呼ばれて話をするためである。センター長の柳田敏雄先生と視覚神経科学の大澤五住先生などの関係者、それにNECからも3名参加された。私はシンギュラリティの一般論とともに私の超知能作成計画、HTM理論の話をした。

政府は人工知能研究を加速するために、年間100億円程度の予算をつけたという。人工知能を研究するのは経産省の産総研に昨年できた人工知能研究所、文科省が今年に理研の中に作ろうという人工知能研究所、それに総務省はこのセンターだという。このセンターでも脳型の人工知能を作るプロジェクトを立ち上げようとしているのだそうだ。私の方向性と一致するので、意見交換をしたという次第である。

私はこのままでは日本は完全にアメリカに遅れをとり負けると思う。予算の面でも人材の面でも、圧倒的に差をつけられている。それに勝つには正規戦ではだめで、織田信長が大軍を擁する今川義元を破った桶狭間の戦いを再現する必要があるのだ。


2016-03-02 (水曜) スパコン

 昨日スパコンのことを書いたが、調べていくといろんなことが分かってきた。詳しくは次の記事を参照してください。(Exascale HPC Needs An Application Innovation Spark, Top 500 Supercomputer List Reflects Shifting State of Global HPC Trends)。まず現状であるが、中国の天河2(Xeon+Xeon Phi)が34PFLOPSで1位、つぎは米国オークリッジ国立研究所のタイタン(Cray XK7, Opteron, NVIDIA K20x)が18PFLOPS、3位はアメリカのローレンス・リバモア国立研究所のセコイア(IBM)で17PFLOPS、4位が日本の理研の京コンピュータ(SPARC64)で10.5PFLOPSである。中国が1位を取る状況はここしばらく続いている。

スパコンは国力そのものであるので、アメリカとしてはこの状況を看過できない。そこで次期計画であるがアメリカにはオークリッジ国立研究所のサミットがある。これはIBMが作る予定でCPUはIBMのPower9、演算加速装置としてNVIDIAの次期のTesra GPUであるVoltaを用いて150PFLOPSを狙っている。2018年早々までは稼働しない。

もう一つはアルゴンヌ国立研究所のオーロラ(Intel+Cray)でこちらは次世代Xeon PhiのKnights Landingの、さらに次世代のKnight Hillを用いて180PFLOPSを狙っている。2018年稼働予定である。ちなみに現行のXeon PhiであるKnights Cornerはホストプロセッサを必要とするが、次世代機ではそれ単体で動作する。

両者ともに計画は遅れているようで、2018年の初頭に稼働は難しく、年末か、あるいは2019年にずれ込む可能性もある。

中国はアメリカに1位を奪還されてはたまらないから当然次期計画を立てている。ところがここに来てアメリカは中国のスパコンのコアとなるインテルのXeon Phiチップの輸出を禁止した。その理由は中国のスパコンが国防大学に設置されていて、軍事研究に使われているからである。そこで中国はCPUとしてはXeonを使いながら、演算加速装置としてXeon Phiの代わりに自前のチップを開発しようとしている。その市場はつぎの英文レポートに詳しい(China Intercepts U.S. Restrictions with Homegrown Supercomputer Chips)。

1980年代に日本が国力があった時にアメリカとの間で日米スパコン摩擦が発生した。アメリカはCray社のベクトルスパコン、日本は富士通、日立、NECのベクトルスパコンで国内のシェアを争った。日本の三社は大学に非常に安い価格でスパコンを提供した(定価の1割りとか3割りとか)。それに対して米政府は不公正であると猛烈な抗議を行い、結局、日本政府は一部の大学にCrayを導入し、また過剰な割引をやめさせた。当時の日米摩擦は激しいもので、戦闘機の自主開発、自前のOSであるTronなど、すべて潰された。

現在、日本の代わりの立場に中国がいるのだが、中国は当然、日本のようにアメリカの鼻息を伺わないから、アメリカとしては打つ手が少ないのである。中国は1980年代の日本のように破竹の進撃を続けている。スパコン、宇宙計画、戦闘機などなどハイテク分野でアメリカの覇権に挑戦している。はたして中国という巨人の進撃がいつまで続くのか? 日本のように中折れしてしまうのか? あるいはアメリカを抜き、世界一の覇権国家になるのか? 日本は現在はアメリカからは歯牙にもかけられない。

しかし昨日述べたように、ここに齊藤スパコンのチャンスがある。もし2017年内に100PFLOPSのスパコンを作ることができたら、しぱらくは1位をキープできるのである。その可能性はゼロではない。齊藤さんの活躍を応援したい。


2016-03-01 (火曜) オデッセイ、シャーロック、スパコン

1年以上、放擲していたブログを再開することにした。先週の金曜日(2/26)に映画を二本見た。「オデッセイ」と「SHERLOCK/シャーロック 忌まわしい花嫁」である。

オデッセイ

これは原題がThe Martian (火星人)という。アンドリー・ウィアーの小説を基にしたものだ。この本はすでにNASAに勤める中村圭子さんから送られていた。簡単な英文なので、原文で読もうと思えばそれほど苦労はしないだろう。

作者のウィアーは高卒のコンピュータ技術者で、初めはブログに書いていたSFを、本として出版したら大ヒットしたというラッキーな話である。科学的考証がきちんとなされていて、とてもよいハードSFである。

その映画化されたものが「オデッセイ」でマット・デーモンが主演している。立派な映画に水を差すようだが、科学的考証のところで多分一つ重大な問題がある。火星の嵐でいろんなものが飛んで、主人公がけがをしたというところだ。火星の風は確かに速いが、気圧が極めて低いので、風圧としてはたいしたことはなく、埃はともかくパイプが主人公の腹に刺さるほどのことはないと思うのだが。

{youtube}ej3ioOneTy8{/youtube}

シャーロック

私はシャーロックのファンであるので、テレビ版でない初の劇場版を期待してみた。舞台は前作のように現代ではなく19世紀に設定されている・・・はずだったのだが。ここにネタバレを含む内容がアップされている。

多くの連作映画は、第1作が成功すると柳の下のドジョウを狙って2作、3作と作られるのだが、第1作の成功を上回るようにしようと、話が大げさになる。この「忌まわしい花嫁」もその例に漏れず、前半だけで止めておけばよかったのに、最後の部分で全体が台無しになっている(と私は思う)。

{youtube}nT0PE_hReC8{/youtube}

スパコン

ところでオデッセイでは宇宙開発において中国が存在感を示している。日本の存在感が全くないことが悲しい。それは宇宙開発以外の他のハイテク分野でもそうだ。例えば戦闘機なんかもそうである。

スパコンランキングも中国がここしばらくは一位を取っている。「2位ではダメなのですか?」の日本の京コンピュータはすでに4位に落ちている。ちなみに2位と3位はアメリカである。アメリカの専門家によれば、スパコンは国力そのものであるという。アメリカは必死で巻き返しを図るに違いない。

スパコンに関しては、日本は巻き返す技術力は十分にある。齊藤元章さんのPEZYチップである。問題は次期京に採用されるかだが、富士通という大企業をさておいての採用は難しいだろう。またPEZY社のような小企業が担えるとも思えない。次期京は京の100倍の能力のエクサスケール(1000 PFLOPS)を狙っていたのだが、それは難しく40倍の400PFLOPS程度に落ち着きそうだ。富士通が自前のチップ開発を諦めて、PEZYチップを採用するという手もある。

私は巨大スパコンで1位を狙うのも良いが、それは国威発揚の意味合いが強く、実際の科学研究、技術開発には、もっと小規模のスパコンが数あるほうが良いと思う。PEZY社が2017年に完成を目指している次期システムでは、4千個のコアを持つPEZY-SC2を採用する。液浸タンク4台で5PFLOPSでるという。京コンピュータの半分である。1台で1.5億円程度というから、4台で6億円である。8台並べると10PFLOPSになり、京コンピュータに匹敵する。値段は12億円程度であろう。ちなみに京コンピュータは800台以上のラックで構成され、1200億円かかったという。7年で値段もラック数も1/100になることになる。

次期京へのつなぎとして、液浸タンクを80台並べたシステムなら100PFLOPSになり、現状の中国のスパコンの3倍になり、世界一に返り咲く。値段は単純計算なら120億円である。京の1/10の値段で10倍の性能だから悪くはない。フットプリントも京コンピュータの1/10だから、あんなに大きな建屋は必要ない。すでにある地球シミュレーターの建屋を利用すれば良い。

PEZYチップの最大の問題点はソフトの欠如である。現在の主流のIntelチップは長年の歴史を持ち、膨大なソフト資産を抱えている。スパコン用、人工知能用のアクセラレータとして近年脚光を浴びているNVIDIA社のGPGPUも、ソフトの開発と普及には長年の努力を重ねた。その努力が今になって実りつつある。PEZYチップを普及させようとすれば、その後を追わなければならない。私はそのためには、巨大なスパコンではなく、チップが1-2個乗った空冷のボードを作り、それを数多くばらまくのが良いと思う。もし政府が国産技術の普及を狙うなら、多数のボードを買ってタダか安く、ばらまくのが良いだろう。私の案としては、ユーザーにボードを貸して、アプリを作ったり論文を書いた人には、タダであげる。何もしなかった人には買ってもらう、というのはどうだろうか。

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マッド・サイエンティストのつぶやき Mon, 29 Feb 2016 23:51:54 +0900
2014年10月 https://www.jein.jp/jifs/blog-matsuda/mutter/1106-1410.html https://www.jein.jp/jifs/blog-matsuda/mutter/1106-1410.html

 

 


2014-10-08

再開の辞と言い訳

このブログを月初めに書いては、その後続かないことがほとんどで、申し訳ない。理由は気力に欠けるからであるが、それには長期的、中期的、短期的理由がある。ここ一週間の短期的理由は、情報処理学会の解説論文を書くのに忙しかったからだ。タイトルは「来るべき技術的特異点と超知能の驚異と脅威」というものだ。書き終わって提出した後、ぐったりとなってしまった。

入歯

中期的理由は、年を取り歯が悪くなったので、入歯にすることになり、そのためになんと6本も歯を抜かれてしまったことだ。ここまで抜かれるとまともなものが食べられない。5本目までは、それでも例えばソーメンは食べられたのだが、最期の1本を抜かれて、それも食べられなくなった。それで何を食べるのかと聞かれるが、主食はおかゆで、おかずとして豆腐ととろろ昆布のみそ汁、ポテトサラダ、おから、なすびとナンキンの煮付け、カツオのたたき、マグロの切り身、バナナ、キウイ、イチジク、桃、ヨーグルト、野菜ジュース、牛乳などである。

少し前まではこれに、ソーメンが加わっていた。ソーメンは単にうどんの細いものである。ソーメンより少し太いのが冷や麦だ。そのうえが細いうどんで、讃岐うどんは固すぎる。ラーメンも固い。今の希望は再びラーメンが食べられることだ。歯がなくても(もちろんあるのだが、噛む役には立たない)、なんとかなるものであることが分かった。問題は美容上の問題と、気力が失せることだ。若い人々は歯を大切にするように。

潰瘍性大腸炎

長期的な問題は年を取り、健康上の問題がたくさん現れてきたことだ。私は20年以上も、いわゆる難病である特定疾患「潰瘍性大腸炎」を患っている。安倍首相と同じ病気である。この病気の症状は下痢と腹痛である。トイレに行きたくなると我慢できないのだ。いつ行きたくなるか分からないので、外出できない。外出するときはトイレの位置を確認しないと安心できない。通勤の時は、家から職場までトイレマップを頭の中に描いて、トイレからトイレに、あたかもオアシスからオアシスを旅をするラクダ商人のような心境で歩く。伝い歩きである。電車の場合は、駅のトイレであり、歩く場合は喫茶店だ。喫茶店が近くにない、あるいは喫茶店の間隔が遠い場合は困る。だから知らない所を歩くのは辛い。近くにトイレが無いと不安でパニックになる。室内にいる時は安心なのだが、山野を歩くなど出来ない。

安倍首相は前回の首相の時に急に辞任したのは、病気が悪化したからであろう。その事情は健康な人には理解も同情も出来ないだろうが、私にはよく分かる。外国要人との会談や、国会での答弁など、出来るものではない。「出物、腫れ物、ところ嫌わず」という。ちょっと違うか。いかな権力欲の主も、この病気には勝てない。しかし現在元気なのは特効薬が出来たからだと言っているが、それは違う。今の薬はアサコールで、その前はペンタサ、その前はサラゾピリンであった。基本的に同じ薬の改良版なので、特効薬ではない。特効薬などなく、治療法が分かっていないから特定疾患に入っているのだ。病気が重いからではない。ガンなどの方が致命的だが、特定疾患ではないので公費補助は無い。病気の定義の問題だ。

この種の病気はたとえ致命的ではなくても、若い人にとっては社会生活上致命的である場合がある。バス、トラック、タクシーなどの運転手を職業にしている場合、とても大変だろう。知人のご子息や娘さんにこの病気の患者がいるが、就職や結婚が難しい。私の場合は幸いにも、地位が確定して、安定してから罹患した。しかし当初の10年ほどは、無気力に苛まれた。無気力の原因は判然としないが、コンスタントな出血に伴う貧血のせいではないだろうか。この病気ではヘモグロビンの量が非常に低下するので、体にも頭にも酸素が回らないのだ。無気力になると生産性が低下する。他人にはなかなか理解してもらえない。現在は完治した訳ではないが(この病気は完治しない)、小康状態を得ている。寛解という。

今年に入って、特定疾患に関する政策が変わって、急に種類が増えたし、補助も手厚くなった。安倍首相の肝いりではないかと察している。前回の首相時には、潰瘍性大腸炎が特定疾患から外されそうになった。審議会かなんかが答申したのだろう。患者数が当初の2万人から、8万人に増えたのが理由であろう。患者団体も私も失望した。ところが急にその決定が取り消された。多分、安倍首相の介入があったのだろうと推測している。安倍ちゃんは好きではないが、少なくともこれだけは、私に取っては善政であったと思っている。ちなみに私の知人にも、サルコイドーシス、再生不良貧血など特定疾患の人がいるが、みんな社会的にちゃんとした地位を築いているので、病気になっても克服は出来るのである。

ブドウ膜炎

潰瘍性大腸炎は長期的無気力の原因だが、中長期的には潰瘍性大腸炎に起因するブドウ膜炎がある。これは眼球を包むブドウ膜に起きる炎症で、目がかすんで視力が低下するのである。数年前に罹患した。大晦日の日に急に目が痛くなって、目が開けられなくなった。どこの病院も開いていないはずなので我慢して、正月開けに眼科に行くことにした。しかし家内が心配して、京都市の急病診療所というのを調べて、タクシーで連れて行ってもらった。JR二条駅の近くにある。運の良いことには、ここは眼科と小児科だけがあったのだ。現在ではさらに内科、耳鼻咽喉科もある。診断は急性ブドウ膜炎で、6錠ものプレドニンというステロイド剤が処方された。そこでは2日間の薬しか処方できないということで、正月2日には急患として京都府立大学の眼科にお世話になった。それ以降、ずっとお世話になっている。この病気も完治することは無い。

実はプレドニンは潰瘍性大腸炎の特効薬である。サルコイドーシスの特効薬でもある。非常によく効くのだが、症状を抑えるだけの薬で、病気を治すものではない。むしろステロイド剤には、山のような副作用があり、長期間続けるのは良くない。とはいうものの、私はプレドニンを20年近くも断続的に服用してきて、これ以上飲むと重篤な副作用がでるという限界を既に超えている。

ブドウ膜炎がこまることは視力の低下である。私は左右の視力が異なり、視力の良い右目を罹患したのが痛い。その後は近視の左眼で世界を見ている。PCで作業するには眼鏡を必要として、これがなかなか辛い。そこでもっぱらネットはiPadでやっている。これなら目に近づけることが出来る。iPadの問題点は見るには良いのだが、入力は難しい。入力にはPCを使わねばならない。それもこのブログが滞る理由の一つである。

深部静脈血栓

私は2008年に深部静脈血栓を患った。左足のくるぶしあたりが痛くなりはれた。その時は、私が理事長をしていた団地の総会の時でもあり、その直後にある学会での講演があり、大変だったがなんとかこらえて通した。出張後に、当時通院していた潰瘍性大腸炎の主治医に相談すると、蜂窩織炎(ほかしきえん)であろうが、同じ診療所の専門の皮膚科医を紹介すると言われた。その医者の診断も蜂窩織炎ということであった。蜂窩織炎とは体に細菌が入って炎症を起こす病気である。治療法として抗生物質の点滴を日に二回、三日連続で行うことになった。その診療所は遠いので、関連の近くの病院を紹介された。それで三日間、治療したのだがいっこうに良くならない。別の案件で見てもらっていた整形外科の医者に言うと、それは深部静脈血栓ではないかという。そこで血管外科の医者を紹介された。それで深部静脈血栓の診断が確定した。

この病気の原因は静脈に血栓が出来ることである。足の膝裏に起こりやすい。症状としては静脈炎を起こすので、血管に沿った部分が腫れて痛くなり、むくむ。それだけで死ぬことは無いが、問題は血栓がはがれて、それが肺に詰まって肺塞栓を起こした場合だ。この場合は死ぬ可能性がある。飛行機で長期間座っていて起きるエコノミー症候群がこれだ。震災などで自動車の中に寝泊まりするとおきやすい。足を下にしていることでうっ血するのと、水分不足になるからだ。私はこれ以後、海外旅行をしないことにしている。

予防法としては、血が固まらないように、水分補給をする、飛行機の中では足を動かす、寝る時は足を高い位置におく、弾性ストッキングをはいて足を締め付ける、などである。薬ではワーファリンを飲み、PT-INRの値を上げて、血液の凝固をおきにくくする。私はこの病気でも、病院通いを続けている。潰瘍性大腸炎も深部静脈血栓もおなじ内科医に見てもらえるので楽である。

脳梗塞

私は数年前に駅の階段で転倒して頭部を打った。階段を下りている時に、急に右足の力が抜けて、前に倒れる時に左側の鉄の手すりに頭を強打したのだ。急に力が抜ける現象はこれで二回目であった。一回目も駅の階段を下りる時におきたが、その時は膝をついて、ズボンに穴があいた程度の被害ですんだ。階段は上る時よりも下りる時が危険である。すぐに病院に行き、神経内科の先生にかかった。頭部のMRIを取ったら、かなり大きな脳梗塞が見つかった。転倒が原因なのかどうか調べるために、日をおいて再度検査したら、発展が無いとのことで、転倒が原因というよりは、以前に出来たものだろうという。隠れ脳梗塞だ。顕著な症状は出ていない。指先で鼻の頭に触れるか、左右の指を合わせられるかといった検査をしても、問題なかった。脳梗塞も深部静脈血栓も血液が固まることに原因がある。脳梗塞の予防薬はワーファリンよりもむしろアスピリン、バッファリンなどだという。しかし私の場合、ワーファリンを処方されているので、その上にバッファリンを処方すると血液が止まりにくくなり過ぎで、今度は脳出血などの危険性があるという。結局、ワーファリンだけにしている。

頭部違和感

いろんな病気を書いたが、しかし現在一番生産性を阻害している原因は、頭部の違和感である。頭の左側頭部に何ともいえない違和感がある。なんか締め付けられているような、触れているような違和感である。帽子をかぶると、それ自体が違和感があるが、神経は面白いもので、強い感覚の方を選んで、弱い方は抑圧するらしい。だから帽子をかぶって、そちらの違和感が勝つと、頭部違和感は感じない。私が講義でも帽子をかぶっていたので、学生にとがめられが、理由を話すと納得してくれた。冬はニット帽、夏は麦わら帽をかぶっている。女子学生の中で可愛いといってくれる人がいたのが、救いである。テレビ出演もこれで通して、いぶかられた。帽子をかぶっているのは、おしゃれのためではないのだ。

先の神経内科の先生に相談したが、原因は分からないという。首のMRIやレントゲン写真を撮ったら、頸椎が多少すり減っているが、年相応のことだという。しかも頸椎が問題だと、症状は手に現れるはずだ。頭部へ行く神経は三叉神経といって、もっと上から分岐している。ともかく原因不明ということで、その医者は「もう来なくていいです」と言った。後輩の整形外科医に相談したら頸性頭痛だろうという。もっとも私の場合、頭痛はなく違和感だけである。首の筋肉が何らかの原因で硬直して神経を圧迫しているのだろうという。実際、胸鎖乳突筋がいつも凝っている。首の後ろも凝っている。整体指圧に行き、首をマッサージしてもらったが、効き目なし。

首を立てていると辛くなるので、寝転んでいる姿勢が一番だ。朝の起床後が一番ましで、時間とともに辛くなる。長い会議などは、とてもおっくうだった。会議時間の合間にソファに寝転んでいたのは、他人から見ると行儀が悪く見えただろうが、仕方なかった。宮勤めが終わったのが救いである。ともかく今の私の生産性を一番そいでいるのは、この頭部違和感である。ほとんど寝たきり人生を送っているからだ。

というわけで私は69歳になった時に6重苦であると周りに言った。最近、人の平均寿命が長くなっている。しかし健康でなければ、長寿も災いでしかない。日本の男性の平均寿命は80歳程度であるが、健康寿命(日常生活に制限の無い期間)は70歳程度といわれるが、まさにその通りだ。最近は病院、歯科通い増えて医療費が生活費のかなりな部分をしめるようになった。同窓会なんかでも病気自慢が始まる。より重篤な病気の方が勝負に勝つのである。健康が大切だと言うことは、失って始めて気がつくのである。

 

 

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マッド・サイエンティストのつぶやき Wed, 08 Oct 2014 00:33:12 +0900
2014年9月 https://www.jein.jp/jifs/blog-matsuda/mutter/1094-1409.html https://www.jein.jp/jifs/blog-matsuda/mutter/1094-1409.html

 


2014-09-11

夜中に、待っていたアップルの新製品の発表があった。iPhone 6とiPhone 6 plus、それにApple Watchが発表された。iPhoneに関しては以前から噂が流れていたとおりに画面が大きくなった。ギズモードには、いろいろヨイショ記事が載っている。私としては画面が大きくなった事は良い事だと思っている。しかしiPhone 5sの2年縛りがあるので、iPhone 6を買うわけにはいかない、iPhone 6sまで待たねばならない。

一番の問題は、ジョブスが大きな画面はやらないと言っておきながら、結局はマーケットの趨勢に負けたという事だ。サムソンはアップルのパクリであると(実際そうだと思うが)、訴訟攻勢をかけながら、画面サイズに関してはサムソンの後塵を拝している。つまりアップルにはもはや、革新的なイノベーションはでないということだ。

Watchに関しては、多くの人が言うように失望である。デザインが保守的すぎる。技術的には仕方ないのかもしれないが、アップルらしさが無い。Watchに関しても(評判はもひとつだが)サムソンの後塵を排している。さらにいえば、この分野でイノベーションを出したのはPebbleである。

グラスにおいても先鞭を切ったのはGoogleである。アップルも出す出すと言われながら、まだ出せていない。出た時には、多分、Watchと同じような失望を感じるのではないか。

もっともサムソンは一時期の日本企業に似ている。アメリカのアイデアのパクリをして、それを技術的に改良して、良い物を安く出すという方向だ。しかし、しょせん夢が無いのし、コピー技術に長けても、革新的なアイデアを出す力が無いので、いずれは衰退するであろう。現在でもスマホは安い中国製に負けつつあると言う。

サムソンはどうでもいい。アップルがどうなるかだ。この世界はドッグイヤーといわれる。コンピュータの歴史をひもといて、画期的なイノベーションを挙げてみよう。1960年代のIBMのシステム360シリーズ、DECのPDPシリーズ、VAXシリーズ、70-80年代のApple 2とIBM PC、Sun Workstation、Crayスーパーコンピューター、21世紀に入ってiPhoneとiPadなどである。このなかでDEC, Sunはすでにない。DECを引き継いだ、世界第2位のパソコンメーカーであったコンパックも既にない。IBM, Crayも往年の勢いは無い。存続しているだけでもましであろう。もっともIBMはWatsonとSyNAPSE計画で将来性はある。

Appleはできてすでに25年経つ。今が最盛期であろう。大会社になりすぎた。イノベーションがでないようでは、後は凋落を待つしか無いだろう。後10年程度か。

Googleはできて15年ほどである。Googleが今、一番元気があると思う。技術的特異点が起きるとすればGoogleからであろうというのが、私の感触である。しかしドッグイヤーの時代、何がどうなるか分からない。

 


2014-09-10

タイニーハウスとは小さな家ということで、いま米国を中心に流行り始めていると言う。

「Less is more」米国で広がるタイニーハウス・ムーブメントとは」

アメリカの家の平均的な広さは230平米だという。日本の家はウサギ小屋と揶揄されたように、平均的なマンションで20坪、つまり66平米、私のマンションは広い方で81平米である。100平米を越える家は非常に広く、200平米になると豪邸と言えよう。都会では難しく、田舎でしかないであろう。日本の家が狭い理由は、日本の国土が狭いからで、土地が高いからである。

Small house movement

しかしその米国で10-40平米の小さな家が流行し始めていると言う。この小さなスペースに寝室、台所、シャワールーム、トイレも完備している。車が付いていて移動可能な物も多い。このような物が米国で生まれた理由は、やはり多分、米国も庶民は貧しくなって来ているからであろう。カトリーナの被害の後の臨時の住居として提案されて、流行りだした面もある。

小さな家の持つ利点は税金、建築費、暖房費、維持費、修繕費などが安い事である。さらに家の中を散らかす余地がないので、家具やその他の物が少なく整頓しやすい、環境に与えるインパクトが少ないなどがある。

欠点としては、近所との付き合いにおいて、奇異の目で見られて、ひどい場合は敵視される可能性もある。その地域の建築に関する法的な問題もある。

その内装の一例を示す。木で出来ていて、一部が二階作りになっている。ベッドはその二階部分にある。写真では右手にキッチンシンクがあり、その奥はシャワー室にトイレ、洗面室のようだ。なかなかよくできていると思う。tiny house photoでググるとさまざまなタイニーハウスの例を見る事が出来る。

タイニーハウスの間取り例TinyHouse2

インテリアは空間がそれぞれ多重の機能を持たせる、立体的に作って空間を有効に使うなど工夫が凝らされている。

この種の住まいは伝統的にはトレーラーハウス、キャラバン、キャンピングカーなどとしてあった。ヨーロッパではジプシーたちがこのような住居に住んでいた。タイニーハウスというのは、巨大住宅が当たり前の現代アメリカでこれらが徐々に市民権を得ている事だろう。

Small and Tiny House Interior Ideas

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2014-09-09

フランス映画「ルーシー」を見た。主役のルーシーはスカーレット・ヨハンソンである。脳科学者ノーマン教授としてモーガン・フリーマン、パリ警察の刑事のピエール・デル・リオとしてアムール・ウエイクド、それに韓国人のギャングのボスである。この映画のプロットとして興味あるのは人間の脳は通常10%しか使われていないという科学伝説と、悪役が韓国人だということだ。彼らの話す韓国語は、私には全く分からない。ギャングは英語ができないし、ルーシーは韓国語が出来ないので、電話で通訳が登場する。西欧人の悪役としては英国人が一人出てくる。韓国人が世界的悪役になるなど、韓国も先進国入りしたものだ。彼らはいかにも憎々しげな悪役で、爽快ですらある。

プロットを簡単に述べよう。ルーシーは25歳の米国人の女子学生で、台北に住んでいる。新しいボーイフレンドから、カバンをホテルにいる人物に届けるように無理強いされる。仕方なくフロントに行ったルーシーは、ギャングに部屋に連れ込まれ、ボーイフレンドは射殺される。そこにいたギャングのボスは韓国人である。持って来たカバンにはCPH4という合成麻薬が4袋入っていた。韓国語がわからないルーシーと英語が出来ないボスは、電話通訳を介して話す。紳士的な英国人の悪漢が現れて、ルーシーに仕事を言う。麻薬の袋を体内に縫い込んでヨーロッパに密輸しろと言われる。3人の拉致された男達も同じように、体内に麻薬を縫い込まれる。閉じ込められたルーシーは見張りに腹を殴られるが、その為に体内の袋が破れて、それを吸収したルーシーは脳の活動が10%から20%に上がり、超能力を獲得する。ルーシーは見張りを倒し、ピストルを奪い、4人の見張りを射殺して、病院に行く。手術室に入り込んだルーシーは、手術中の患者を射殺して、医者に自分の腹から薬を取り出せと命ずる。

ルーシーはホテルに戻り、ギャングのボスの両手にナイフを突き刺す。ボスの脳内記憶を読みとったルーシーは、他の3人の行き先がベルリン、ローマ、パリなどである事を知る。ルーシーは人間の脳の10%しか、その能力を使っていないと主張する脳科学者のノーマン教授に連絡して、彼の理論の正しさを証明する。ルーシーはパリ警察の刑事のデル・リオに連絡して、各国の警察と連絡を取り、麻薬を回収する。パリに着いたルーシーは、ギャングも警官も無力化する。刑事のデル・リオとノーマン教授に面会する。

ノーマン教授の実験室についたルーシーをギャングは襲い、警官隊と撃ち合いになるがギャングが勝ちを制する。ルーシーはさらに超人化してタイムトラベルを始める。過去に戻ったルーシーは、人間の原点であるアフリカの猿人ルーシーと出会う。猿人ルーシーと指を接して、彼女の知能の発達を促す。実験室に戻ったルーシーをボスは撃とうとするが、その瞬間にルーシーは消滅して、スーパーコンピューターに変身してしまう。ボスはデル・リオに射殺される。消滅したルーシーはあらゆる場所にいるとデル・リオに告げる。ノーマン教授には、ルーシーが知ったあらゆる知識を保存したUSBメモリを与える。

ルーシー予告編

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私がルーシーを見ようと思ったのは「アナと雪の女王」を見た時に見た予告編の為である。若い女性が超能力でバッタバッタと悪漢を倒すのが爽快だったからだ。しかし見終わって、活劇の部分は別にして、科学的にはナンセンスきわまりないと思った。まず脳はその能力を10%しか使っていないと言う話しは、確かに昔の科学者が唱えた事ではあるが、現在では否定されていると言う。実際は100%使い切っているそうだ。それに例え、10%説が正しいと仮定して、脳を100%使い切ったとしても、単に頭が良くなるだけで、超能力など獲得できるはずは無い。いわんやタイムトラベルできるなんてあり得ない。科学的にはナンセンスであると、割り切って楽しむ映画である。

私は最近書いたエッセイで、人間の頭脳の速度を1000万倍にアップする方法について述べた。もしそれが可能として、どのような事が出来るかに付いて、別のエッセイで考察をする。

ルーシーと超能力

 


2014-09-06

When Robots Take Over Most Jobs, What Will Be the Purpose of Humans?

2013年3月ニューヨーク連銀の4人の経済学者が報告書を書き、定型的な仕事が消滅する事、トップとボトムの熟練を要する仕事だけが残る事を報告した。

「明確な指示に従い、きちんと定義された規則に従うような仕事を定型的仕事と呼ぶ。これらは中間的な職業に多い。仕事が柔軟性、問題解決能力、創造性を必要とするなら非定型的仕事である。雇用が非定型的仕事に移動するに従い、仕事はトップとボトムの非定型的なものに分極化するだろう」

職業を知的労働と肉体労働、定型的仕事と非定型的仕事のマトリックスに分けると次のようになる。

 

定型的

非定型的

知的労働

事務員

販売員

マネジャー

クリエイター

技術者

医療従事者

肉体労働

建設労働者

機械工

組立工

ウエイター

警備員

1975年から2013年までの米国の職業に関する統計データによると、定型的仕事と非定型的仕事の全体に占める割合は、前者が60%から40%に低下し、後者は逆に40%から60%に上昇している。この傾向は好況、不況によって少し凸凹はあるが、ほぼ一直線である。

さらに詳しく見ると、定型的肉体労働は35%から20%に低下、定型的知的労働は25%から20%に低下、非定型的知的労働は27%から45%に増加、非定型的肉体労働はほとんど横ばいである。

その理由は、工場労働はロボットが代替し、オフィスの定型的な仕事は人工知能が代替するようになったからである。弁護士補助、X線写真判読、スポーツ記事執筆ですらボットにより自動化できる。

オックスフォード大学の研究者が現在ある702の職業について調査した結果、今後10-20年で、今ある職業の47%は消滅するだろうと述べている。結局、近い将来に残る仕事は非定型的な創造的な仕事だけになる。

「我々の研究によれば、コンピュータ化は「技術的平原」と呼ばれる時期を挟んで二つの波に分けられる。第一波では運送、事務、製造業がコンピュータで置き換えられる。第二波は少し遅れてやって来るが、人工知能が創造性、社会的知性を獲得した時に到来する。その時には弁護士、技術者、脳外科医、俳優すらボットで置き換えられる。実際ディープ・ノレッジ・ベンチャーという会社では経営者すらボットに置き換えられている。

「労働を必要としない世界、わずかな人だけがボット経済を運営するような世界では人々はなにをするのだろうか?」

 今後の10-20年では、高等教育を受けた、創造的な、発明精神に富む人々は豊かな雇用を獲得するが、それはほんの少数である。今後、機械が商品やサービスをより安く提供できるようになると、十分な稼ぎを得る事が出来る人はほんの一握りになる。

 人々に十分な教育を与えるか? あるいは農地に戻って機械家畜とともに働くか? ラダイト運動を起こしてオートメーションを禁止するか? 技術的ユートピアが到来して、人々は未だ存在しない新しい仕事をするか?

 どうなるか分からない。しかしはっきりしている事は、農業革命、産業革命に次ぐ大革命がこれからの数十年で起きるという事だ。一世紀とか一世代とかもたたないほど、圧縮された時間で起きるのだ。その時、人々は何をすれば良いのだろうか? そもそも解答などあるのだろうか。

 

 


北摂のマチュピチュに行ってみたいという書き込みがFacebookにあった。北摂のマチュピチュという言葉は始めて聞いたので、調べてみた。すると実家の近くである事が分かった。まず北摂とは摂津の国の北部という事である。摂津とは大阪府の北部と兵庫県の南東部を会わせたような、昔の国である。その北側は丹波の国に接している。私の実家は大阪市の北に位置する東淀川区の、それも一番北に位置していて、吹田市と接している。Facebookに書き込んだ友人は実家が吹田市にある。

私が子供の頃、二階の窓から北を見ると、はるかに北摂の山々が見えた。一番高い山は竜王山といい標高510mである。麓に忍頂寺があるので忍頂寺山ともいわれている。北摂一の霊峰と言う。宝亀年間(715-716)に大旱魃があり開成皇子が八大竜王を祭ったので、この名前がある。

子供心にその向こうには何があるのだろうかと考えていた。カールブッセの詩に「山のあなたの空遠く 幸い住むと人の言う ああ われ人ととめゆきて 涙さしぐみ かえりきぬ」というのがある。ところがである。調べてみると、その山間にはバブルの時に作られたニュータウンがいくつかあり、そこが極めて交通の便が悪いので、ほとんど限界集落のようになっているらしい。限界ニュータウンともいえよう。「幸い」など住んでいないのだ。

そのなかで北摂のマチュピチュといわれているのは、ニュータウン「茨木台」という。正式には見立(けんだち)地区という。茨木市はその南にある都市だが、茨木台は厳密には茨木市ではなく、京都府亀岡市に属する。なんでそんな名前かというと、亀岡台では売れないからだ。しかし茨木市のそのあたりは市街化調整区域で開発が出来ず、茨木市と亀岡市の境界にそってニュータウンは立てられていると言う。実にトリッキーなニュータウンである。そこのニュータウンがマチュピチュと呼ばれるのは、傾斜地に作られていて、町中が激坂だらけだからだ。

問題は交通である。茨木市からバスに乗り忍頂寺で乗り換え、1時間に1本のバスで銭原(茨木市青少年活動センター前)にいき、そこからさらに徒歩30分のところにある。公共交通機関で行くのはほとんど絶望的なので、自動車でということになるが、銭原から茨木台までの道は青少年活動センターの敷地の中を通り、幅員が狭い。茨木市では亀岡市の住人の為に税金を使う事も無いので、道路が良くなる見通しもないという。

北摂のマチュピチュ

 

北摂の山中には、この他にいろいろな限界ニュータウンがある。北摂ローズタウンとか北摂バードタウン鎌倉台北大阪ネオポリス(希望ヶ丘)などである。このなかで北大阪ネオポリスは比較的大規模なニュータウンである。希望ヶ丘という別称だが、絶望ヶ丘と揶揄する物もいる。一応は公共交通機関は通っているのだが、極めて不便だそうだ。

なぜこのように不便なニュータウンが作られたか。それは昭和末期のバブル期に不動産会社が造成して、それこそバラ色の希望を振りまいて売りまくったのだ。

この記事を書いたのは、なにもこれらのニュータウンをあざ笑うつもりではない。実は私自身、滋賀県の甲賀市にある甲南ニューポリスというところに土地を買ったからだ。70年代の土地ブームの時であった。当時は不動産屋がたくさんやって来てはセールストークが行われた。私はそれにうかうか乗って買ってしまったのだ。もっとも場所はJRの甲南駅から歩いて20分程度の所だから、公共交通機関で行けるという点は先のニュータウンとは違う。場所はこんな所だ。45坪で当時は250万円であったが、ローンで支払った総額は800万円を越す。後で売ろうとしたのだが、全く売れない。損をしても売りたいのだが、それでもダメのようだ。固定資産税だけを甲賀市に払い続けている。


2014-09-01

8月にこのブログを再開しながら、威勢のいいのは始めだけで、すぐに止まってしまった。この5月から自宅のリフォームを始めていて、8月半ばに完成した。ほぼ3ヶ月かかったことになる。

私のすんでいるマンションは1980年に完成した、当時の日本住宅公団の分譲住宅である。600戸以上もある大規模開発であった。買ったのは1981年であった。販売開始後1年が経っても完売とならず、売れ残っていたのを買ったのだ。安いものから売れていたので、一番高いものしか残っていなかった。一階にある81平米の一番広いタイプを購入した。選択肢はあまり無かったのだが、結果的にはこれは良かった事になる。

当団地は近くにスーパーマーケットが二軒もあり、買い物は便利である。交通はバスしか無いが、当時勤務していた京都大学に歩いて通えるというのは、極めて便利であった。京都大学関係者が多いというので、地域の学校の教育レベルは高いといわれていた。構内は緑が多く、木々が茂りすぎて問題になるほどである。近くの高野川は春になると、数キロメートルの土手に沿って桜が満開になる。京都であるから観光名所には、バスや電車に乗って簡単に行ける。住環境は極めて良い。

管理は行き届いていて、うるさいほどである。私も管理組合の理事長を経験したが、住民の要望が多彩で大変であった。マンションを買う場合は管理を買えと言われている。環境の良さと管理の良さで、筑後34年になるのに、資産価値はそれほど低下していない。理事長の時に不動産屋に聞いたのだが、この団地は入居希望者が多く、売値も当初のものから少し下がっただけである。日本の住宅は、普通は25年でほぼ無価値になるといわれている。それが、資産価値が劣化していないのは立派である。別稿で述べたいが、大阪府と京都府の境の山間地にある新興住宅地では、いまでは家の売値が50万円程度に低下したと言う。交通が不便だからだ。ちなみに管理組合の財産は理事長名義で銀行に預けられているので、理事長当時の私名義の預金は10億円近くあった!!

とはいうものの、さすがに筑後34年も経つと、劣化は否めない。過去に二度の外部の大改修を行っている。また最近は水回りの大改修も行った。しかしそれは共用部分の事で、我が家、つまり専有部分は劣化が激しかった。劣化と言っても、構造的に劣化したのではなく、生活的に劣化したのだ。障子や壁紙が破れたり、付属部品が乞われたりしていた。しかし最大の問題は、家に物が溢れて人間の存在できる空間が狭くなったことだ。私のマンションの部屋の間取りは居間兼食堂(リビングダイニング)、台所の他に6畳間が2部屋と5帖程度の洋間が1つである。ところが和室が一つと洋間が一つ、開かずの間になってしまっていた。物がありすぎて、どちらも納戸になってしまったのだ。

私は住居で大事なもの、重要なのは家具などの物品ではなく、空間、スペースだと思っている。私の理想の住まいは桂離宮だといっていた。何も本当に桂離宮にすみたい訳ではなく、あのように家具の無い空間こそが贅沢だと思っていた。普通の日本人は世界的に見て貧乏ではないが、かといって金持ちでもない。中途半端なのだ。土地が高いので日本の住居は狭い。しかし、家具などの物を買う程度には金があるので、家の中に物が溢れかえっている。あたかも潜水艦の中の生活だと思っていた。

そこで今回のリフォームでは、家具やその他の物は徹底的に捨てる、必要な家具は作り付けにしてスペースを有効に活用する、収納を出来るだけ増やすという方針で行く事にした。

知り合いの建築士に設計を依頼して、工務店の選択や施工管理も依頼する事にした。設計料は結構高かったけれども、それは結果的には成功であった。というのも、プロの建築士は素人の我々には無い考えや知識を持っていた。例えば床はフローリングを考えていたが、無垢の杉材を使う事にした。その建築士自身の家は、私の家と同じタイプであり、彼自身のリフォームで杉板を使ったのだ。私は節だらけの杉板で床を張るという概念が無かったが、建築士は熱心に勧めた。結果的には良い物になった。

間取りも、子供が家を出て夫婦二人なので、間仕切りを出来るだけ廃止して、南から北まで見通しと風通しを良くした。南の窓の外はベランダを通して、共有の芝生に接している。その先には生け垣と、今は大木に育った木が生えている。その先は団地内道路である。北の窓の外は小さな庭になっていて灌木が植わっている。その向こうに大木があり、団地内道路になっている。結局、リビングダイニングから、どちらを見ても緑が見える。

工事はスケルトンリフォームと言って、構造壁だけを残してほとんどの部分を取り外して、新しく作り直す。工事は3ヶ月かかった。その間は山科に借りた借家である特異点庵に住んだ。

スケルトンリフォームとは 

スケルトンリフォームの実例

 費用は上の説明にもあるように、1平米あたり10-15万円である。我々の場合、それに建築士の設計管理料も必要である。

さらに家人の希望で電化製品も一新した。冷蔵庫、洗濯機、電子レンジ、掃除機、湯沸かしケトル、電話機などである。多くはヨドバシカメラで買った。ポイントがつくので売価の1割引になる。

新しく買った家具としては、ダイニングテーブルと椅子、ソファ、長方形こたつ、座椅子などである。ソファはかなり高いがスキャンティークのKorsソファ3Sである。私はこのところ体調が悪く、長時間机の前に座ることができない。そこでソファに寝そべって仕事をする事にしている。そのためにもこのソファは役に立っている。南の窓際においたソファに寝そべると、木々の緑が見えて快適である。

 スキャンティークのKorsソファ3S

その他の家具は無印良品でそろえた。ダイニングテーブルはタモ材のシンプルな物にした。床の杉板とマッチしている。一人用のリクライニングソファも買った。これも私が寝そべって本を読む為である。これらは私に取っては、消費材というよりは、生産材である。

ハイバックリクライニングソファ

 家具を選択している時に分かった事だが、家具は趣味性が高く、値段はピンからキリまである。スキャンティークは一番高く、無印良品は中くらい、ニトリは安価である。私は合理主義者だから、家具は丈夫で壊れないで使えればよいと思っている。横軸に値段、縦軸に機能を取ると、原点付近から直線で立ち上がり、やがて飽和して、ほぼ水平になる。私の意見では、その曲線が曲がり始めるあたり、つまり肩の部分の商品を買うのがお得だと思っている。その意味でニトリで十分なのだ。しかし家人はデザインや色にこだわる。値段にはこだわらない。結果は妥協の産物であったが、無印良品はデザインがシンプルで、二人とも気に入っている。

結論として言えば、今回のリフォームは成功したと思っている。家は非常に快適である。しかしその事が逆に私の仕事への意欲をそぐ結果となってしまった。特異点庵やナレッジサロンに出かけて行くモティベーションが非常に低下したのである。

マンションリフォーム例

{youtube}b-ID3i-6qLk{/youtube}

一戸建てリフォーム例

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マッド・サイエンティストのつぶやき Sat, 06 Sep 2014 00:58:37 +0900
2014年8月 https://www.jein.jp/jifs/blog-matsuda/mutter/1079-1408.html https://www.jein.jp/jifs/blog-matsuda/mutter/1079-1408.html

 


2014-08-04

オックスフォード大学人類の未来研究所の技術レポート#2008-1 by A.  Sandberg and N. Bostromの「全地球的カタストロフィ・リスク調査」が興味あるので紹介する。これは2008年7月17-20日にオックスフォード大学で開かれた「全地球的カタストロフィ・リスク会議」で行われた、専門家による意見分布をもとに作成された。21世紀中に人類が100万人以上死ぬ事件がおきる確率、10億人死ぬ事件が起きる確率、人類が滅亡する確率を、さまざまなケースに対して表にした物である。

分子ナノテク兵器とか超人工知能はまだ存在していないが、21世紀のなかばまでには出現するであろう。人工伝染病とは人間が作ったウイルスなどのことで、これは最近作られた。これが事故で自然界に放出されると大きな被害がでることが予測されている。ナノテク事故とはナノボットが自然界に放出されて、あらゆる資源を食いつくし、不毛の世界になってしまうことをいい「グレーグー」と名付けられている。

この表には隕石衝突とか、太陽のスーパーフレアなどが挙げられていないので、完全な物ではない。そのことは表の作成者も理解していて、会議参加者に意見を求めている。

ちなみに表の作成者Nick Bostromは哲学者、物理学者であり、超知能の問題の専門家である。最近「Superintelligence 超知能」という本を書いた。印刷版の出版は9月であるが、Kindle版は既に出ていて、私は買った。読んだら報告したい。

リスク 100万人死亡 10億人死亡 人類滅亡
分子ナノテク兵器 25% 10% 5%
超人工知能 10% 5% 5%
戦争・内乱 98% 30% 4%
人工伝染病 30% 10% 2%
核戦争 30% 10% 1%
ナノテク事故 5% 1% 0.5%
自然伝染病 60% 5% 0.05%
核テロ 15% 1% 0.03%
21世紀中に人類が滅亡する確率     19%

 

 


2014-08-03

7月25日のAFPのニュースによると、2012年におきたスーパーフレアにともなうコロナ質量放出(CME=Coronal Mass Ejection)は、19世紀におきた同様のコロナ質量放出であるキャリントン事象に匹敵する大きさであったと言う(「12年の強力な太陽風、地球をニアミス」)。

ところで先の日本語のニュースにある「太陽風」という言葉は間違いである。太陽風とは太陽から定常的にふいている風で、特に珍しい物でもないし、有害なものでもない。この記事を書いた記者の半可通であろう。もっと正確なニュースはNear Miss: The Solar Superstorm of July 2012参照のこと。太陽風はSolar windであり、その単語は記事には出てこない。

フレアとは太陽面の爆発現象である。それにともないX線、紫外線が放出され、そのあと電子や陽子が地球に届く。さらに遅れてコロナ質量放出にともなう大量のプラズマの雲が放出される。これが地球を直撃すると、磁気嵐、太陽嵐になる。フレアの巨大な物がスーパーフレアである。有名な物としては1859年のキャリントン事象があり、その時はキューバでもオーロラが見えたという。

幸いなことに、2012のCMEは地球を直撃しなかったので問題は無かった。もし直撃していたら、その論文の評価ではアメリカでの損害は100-200兆円に達しただろうという。しかし、私はその評価は甘いと思う。アメリカアカデミーの以前の研究では、アメリカ東部で死者数百万人という。しかしキャリントン事象がおきた時は、電報機が火を噴いた程度で大した被害は無かった。なにがちがうのか。電気である。

強力なスーパーフレアが起きると、まずX線、紫外線、放射線により人工衛星と航空機の電気回路が被害を受ける。GPSも通信も止まる。その時に飛んでいる飛行機のかなりの部分は墜落するであろう。それは全地球規模で起きるので、死者は数万人になるのではないだろうか。しかし最も重要な被害は、CMEが地球と衝突することにより電線に過大電流が流れ、トランスが焼けきれて停電が起きることである。問題は、巨大なトランスが焼けきれると、予備が少なく、また専門家の数も少なく、再び作るのにも停電のため難しく、停電が1週間、1ヶ月、1年と続くことである。

すると電気に頼っている現代科学技術文明は崩壊する。電気が止まるのは当然として、水道もガスも止まる。阪神大震災の経験から言えば、真っ先に困るのはトイレである。数日中に町は汚物であふれる。そのため伝染病が発生する。電車は止まるのが当然として、車もそのうちに止まる。ガソリンの予備を使い尽くすと、人も物も運ぶことが出来ないし、ガソリンスタンドでガソリンをくみ出すことも出来ない。交通が途絶すると、食料を運ぶことが出来ず、人々は飢える。町のコンビニの食料品はあっという間になくなる。銀行のATMは使えないので、人々は持っている現金以外は使うことが出来ない。それもすぐになくなるであろう。しかし給料は入らず、預金は消滅する。要するに経済は崩壊する。物々交換の経済が復活するであろう。

病院では72時間は非常電源でしのげるが、停電がそれ以上続くと、まず電気に頼っている病人から死に始める。それから透析をしている腎臓患者が死に始める。さらに薬がなくなり、運ぶことが出来ないので、薬に頼っている病人は死ぬ。

阪神大震災でも東北大震災でも被害にあったのは一部の地域であるから、外は問題なく、従って救助の手がすぐにはいった。しかしスーパーフレアの場合、全地球的に被害を被るので、どこからも援助は来ない。被害を受けないのは、電気に頼っていない発展途上国、例えばアフリカとかアフガニスタンであろうが、そこからの援助を当てにすることは出来ない。日本では都市部は壊滅する。田舎では水や燃料は問題ないかもしれない。そこで米などの食料費の備蓄が十分ある場合は、一部の人々は生き延びることが出来るかもしれない。世界は発展途上国と先進国の一部の田舎だけが生き残るであろう。

「たかが電気と命のどちらが大事だ!」と言った音楽家がいたが、たかが電気がなくなると、大量の命が失われるのである。スーパーフレアとその被害に関して以上に述べたシナリオは、アメリカのアカデミーのレポートにある。

SEVERE SPACE WEATHER EVENTS—UNDERSTANDING SOCIETAL AND ECONOMIC IMPACTS

A WORKSHOP REPORT Committee on the Societal and Economic Impacts of Severe Space Weather Events: A Workshop

ディスカバリー・チャネルにはこの問題をドラマ化している。話は人工衛星の墜落から始まる。大気が放射線で熱せられて膨らみ、空気抵抗が増えるので低軌道の人工衛星は墜落する。問題は先に述べたようにCMEにともなうプラズマである。これが地球を直撃すると先に述べた停電が起きる。それを防ぐには、あらかじめ電力網を切っておくしか無い。しかし計画停電を急にすると、そのために被害が出る。2012年のCMEの場合、スーパーフレアが発生してから地球に到達するまで18時間しか無かった。スーパーフレアがおきても、地球を直撃するかどうかは、直前まで分からない。地球と太陽の間のL1点にある早期警戒用の人工衛星でプラズマを観測してから、地球直撃まではほとんど時間がない。ドラマではニューヨークの女性市長が、計画停電するかどうか悩む話である。結局、計画停電を行い、事なきを得たという話だ。しかし、事はニューヨークにとどまらないはずだ。全米の問題であるので、市長レベルではなく、大統領レベルで決断しなければならない。

Perfect Disater - Solar Storm

{youtube}WbAwAanpGjc{/youtube}

報告によると2012年クラスのスーパーフレアが、今後10年間におきる確率は12%であるという。これは例えば隕石衝突などと比べると極めて高い確率だ。21世紀の終わりまで考えるとほぼ100%の確率でスーパーフレアが地球を直撃する。対策はトランスの強化、電力網の強靭化である。為政者も電力会社もきたるべきスーパーフレアに備えなければならない。 


2014-08-02

学研科学選書「間違いだらけの物理学」松田卓也著、学研出版を7月30日にようやく書き上げた。まだ発行されていないが、8月中旬には発行になる予定である。本書は疑似科学ではなく、古典物理学における誤概念を取り扱っている。対象は相対論や量子論ではなく、力学、流体力学である。相対論や量子論は難しく、力学は易しいという印象があるが、必ずしもそうではなく、多くの人が間違った考え「誤概念」に取り付かれている。とくに興味深いのは専門家と目される物理学や宇宙物理学の研究者である大学教授、准教授、名誉教授にも間違っている人がいることだ。

テーマは本ブログの「科学の散歩道」ですでに議論した問題から精選した。間違いの中で特に顕著なのが、飛行機はなぜ飛ぶかという問題である。これは誤概念の巣であるといってよい。ある調査では日本の、この問題に関する解説書の8割が間違っているという。英語の解説書でも7割が間違っているという調査がある。私はこの問題に関してはすでに本ブログの中で「飛行機はなぜ飛ぶのかまだ分からない??」と題した一文を載せている。

一番驚くべく事は、日本の最高学府の大学の航空学科の2名の名誉教授の本が間違った説「等時間通過説、同着説」を採用していることである。さらにはMITの著名な科学解説家のルーウィン教授が間違った反作用揚力説を採用している。ルーウィン教授の本は日本でもベストセラーで、本屋で平積みされているし、教授の講義はNHKでも放映されたという。しかも彼は自信満々に書いている。実際、私は日経ビジネスでこの問題に関するインタビュー記事を書いたのだが、ある読者からの反応では「松田は揚力について20%しか分かっていない、80%は間違っている」という指摘をもらった。ルーウィン教授の本にそう書いてあるのだという。しかしよく読むと彼の説は自分の発明ではなく、あるブログの受け売りなのだ。そのブログを読むと、あまりに冗長で、自慢話が多く、とても科学論文とは呼べない。ブログには審査が無いので、好きなことがかけるのは、利点でもあるが、欠点でもある。また日本のある科学解説家の本も反作用揚力説を採用していることを知った。

翼の揚力に関しては20世紀の初頭に、複素関数論、等角写像などの数学を駆使した2次元翼理論が完成している。上記の人々は、それを知らないのであろうか。知っているとてそれが間違いだというなら、翼理論に対する挑戦だから、きちんとした論文を書くべきだ。先の専門家2名は当然知っているはずだ。他の物理学者達は知らないで、単なる思い込みなのであろう。

私は2次元翼理論は大学3回生の時に学んだのだが、非常に難しいことは事実だ。当時の私は十分に理解したとは言えない。最近、揚力が問題になって、私は特異点庵で開いている秘密研究会で、2次元翼理論の勉強会を行った。極めて難しいので、誰でもが理解できる訳ではないだろう。


2014-08-01

長らくこのブログの更新をサボって来たが、本日から再会する。またいつまで続くか分からないがよろしくお願いします。過去にも書くべき事は色々あったのです、過去にさかのぼっても書くかもしれません。。

ナレッジサロン

今日は記念すべき日である。今月からナレッジサロンの会員になった。今日が初出勤である。ナレッジサロンは昨年大阪駅裏に開業した大型再開発計画のグランフロント大阪の中にある、ナレッジキャピタルの一部である。ナレッジキャピタルは「知」をベースに新しい価値作りと社会変革を、というのがコンセプトだそうだ。そこにはサロンの他にコンベンションセンター、カンファレンスルーム、シアター、貸しオフィス、ラボなどがある。

グランフロントにはJR大阪駅から歩道橋を通って直接行ける。2013年の春に開業した。ゴールデンウイークの頃は大混雑であったという。たくさんのレストランやショップがある。まず歩道橋から南館に入る。そこはタワーAである。ショップとレストランがたくさんある。南北の通路があり、たくさんの人々が歩いている。

南館を出るとまた橋があり、そこを渡って北館に達する。北館にはタワーBとCがある。南北の通りを進むと巨大な吹き抜け空間に達する。ナレッジキャピタルはタワーBとCにまたがっている。ナレッジサロンはBとCの間の吹き抜け空間を囲む低層階の7階にある。エスカレーターでもエレベーターでも上がれる。その付近の屋上は庭園になっていて、樹木が植わっている。ちなみにタワーCの上層階はインターコンチネンタル・ホテルになっている。

ナレッジサロンに関してはこの「月額9450円で大阪の中心で仕事ができる「ナレッジサロン」潜入レポート」が雰囲気を良く伝えている。入った所に受付があり、会員はカードをタッチする。会員は10名まで同伴者を同伴する事が出来る。同伴者は受付で名前などを書き、ビジタープレートをつける。2000平米ほどの大きな空間にメインラウンジ、カフェラウンジがあり、様々な椅子がさまざまに配置されている。そこでも作業は出来るが、主として会話に使われる。密談コーナーなどというものもある。PCなどを使って作業するにはワークスペースを使う。電源が用意されている。もちろんWiFiは完備している。プロジェクトルームというものが8室あり、定員は6名から24名まである。そこでは公開のセミナーなどを無料で行う事も出来る。そのときだけ、会員は定員までの客を招待する事が出来る。ただし会員が常に付き添っている事が条件である。

私は受付で登録をすませて会員カードをもらった。まずはカフェでコーヒーを買って飲む。比較的リーゾナブルな値段である。外に出なくてもサロンの中で食事も出来る。もちろん外に出れば、たくさんのカフェやレストラン、バーなどがある。

サロンはオープンが基本的コンセプトでプロジェクトルームこそ遮音されているが、スケスケで外から見える。サロンは結構繁盛しているようで、たくさんの若い人々がいた。私はワークスペースに座ったが、目の前の窓の外には屋外スペースがあり、読書する人、PCで作業する人、電話する人などいろいろだ。そこは静かだろう。私の右隣には、しゃれた帽子のクリエーターとおぼしき若い男性がMacで仕事している。左隣には、PCで作業したり、電話したり、テキパキと仕事をこなす女性がいる。部屋には会話を楽しむ人々、会議をしている一団、部屋は決して静かではないが、邪魔になるほどでもない。そもそもウイークデイの昼間にここにいるということは、たぶん会社員や学生、大学教員ではないと思うが、よく分からない。

私がここを始めて知ったのは、映画「トランセンデンス」に関してWIREF誌のインタビューをここで受けたからだ。その次はウエアラブルの宣教師、神戸大学の塚本先生と情報処理学会に投稿予定の「2045年問題」解説記事に関して話し合ったと。塚本先生はここの会員であると言う。会費であるが、個人会員は消費税別で年10万円である。これを高いと見るか安いと見るか。アカデミックな割引として2人で10万円というのがある。また10人で30万円というのもある。これだと年に3万円である。塚本先生はその会員だと言う。残念ながら私は仲間が見つからなかったので、個人会員になった。

私は大学を定年退官後、この種のオフィスを探した。京都でレンタルオフィスを借りると月5万円程度で、机一つを借りられる程度だ。図書館も色々行ってみた。同志社大学と京都大学の図書館は雰囲気は悪くはない。しかし毎日仕事する場としてはどうか。結局この問題はNPO法人あいんしゅたいんが京都大学の某建物の地下室を借りる事が出来て、解決した。しかし2013年1月にその部屋を退去せざるを得なくなった。耐震工事の為である。私はその後、山科に民家を借りて特異点庵となづけて秘密研究所にしている。週に一度は秘密研究会と称して勉強会を行っている。それで場所の問題は解決したのだが、やはり小人閑居して不善をなすというように、ひとりでいると煮詰まってしまう。やはり外に出て刺激を受けるのが脳の活性化にはよい。それでナレッジサロンの会員になったという訳だ。この会員になるには、面接を受けなければならない。本来の目的に適合するか審査するのであろう。

 

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マッド・サイエンティストのつぶやき Fri, 01 Aug 2014 07:13:55 +0900
2014年4月 https://www.jein.jp/jifs/blog-matsuda/mutter/1046-1404.html https://www.jein.jp/jifs/blog-matsuda/mutter/1046-1404.html

 


2014-04-24

田崎教授の死を巡る桜子准教授の考察  望月諒子 集英社文庫

立志館大学文学研究科の田崎教授は春休みの朝、朝日が差し込む吹き抜けの玄関ロビーで死んでいた。そこで田崎教授は、ぺたっ。と床に張りついていた。正確に言えば、カエルの死体のように、べちゃっ。と。死因は吹き抜けの最上階に置いてあった有田焼の巨大な花瓶が、どういうわけか落下して教授の頭を直撃したのである。そのそばには巨大な足跡が残されていた。大学は山の上にあり、町の向こうには大きく海が見晴らせる。

物語の主人公は准教授の桃沢桜子(42)である。桜子は社会学を研究しているが内職で翻訳もしており、その金でマンションも買った、車も買った、足りないものは男だけである。彼女にかなう男がいないのだ。村上春樹をおもわすベストセラー作家の井上則夫がしつように桜子を食事に誘う。桜子は食事は売れ残りのコンビニ弁当で十分と言う合理主義者なのだが。桜子はたまに井上と食事につき合い、井上の愚痴をきいてあげる。ベンツで送り迎えされて、みやげまでもらう。しかしそこまでだ。

桜子のラボは大学院博士課程、修士課程の院生と学部生がたくさんいる人気研究室だ。院生の森之宮くんと望ちゃんが桜子ラボをしきっている。もう一人の主人公は小説家志望で挫折した、いやみな三野苦准教授である。三野苦准教授は学生に小説を書かせている。その試し読みを非常勤講師の鱈目小雪に押し付けた。小雪はその提出物が無くなったと青くなって桜子に相談する。話は盗まれたらしい学生の提出物を巡って展開する。この大学には幽霊がでると言う都市伝説がある。無くした学生の提出物を求めて放浪する幽霊が。昔から幽霊はでていたのだが、最近また出始めた。こんどはなんか巨大な動物の姿をしているらしい。

大学名は立命館と同志社を足して2で割ったようなものだが、立地はどうみても神戸大学である。建物の描写もああ、あれかと思い当たる。しかし文学研究科のモデルはどうもそこではなく、同志社大学ではないかと思われる。描写される大学教授、准教授達は桜子を除いて変な人ばかりだ。筒井康隆の小説「文学部唯野教授」をおもわせる。

話は盗まれた学生の提出物、大学を徘徊する怪しい人?、動物?を巡って展開し、最後に田崎教授の死の真相が明らかになる。桜子と大学院生達の推理と捜査が事件を解決するという推理小説、スリラー小説、青春小説のミックスである。著者の以前の深刻な話とは打って変わって、ようするに楽しく読めるライトノベルである。私は植物園のベンチに座って、一日で読破した。桜子准教授と院生達の今後の活躍はあるのだろうか? 続編が待たれる。


 2014-04-23

ニュートンビーズとテレビと分かりやすい説明

昨日フジテレビの番組制作者から電話がかかって来て、ニュートンビーズを番組で取り上げたいと言う。この種の依頼は実は3件目である。それとは別に共同研究者の京都女子大学の小波秀雄教授にも出演依頼が来たことがある。小波先生は女子大生を連れて実験すると意気込んでおられたが、結局はスケジュールがあわずにダメになった。

フジテレビの方は私に電話インタービューして、それを編集すると言う。どのくらいの時間ですかと聞くと30秒だと言う。担当者の女性に長々と説明して、図まで描いて写真に撮り、メールした。しかし上司との相談の結果「非常に難しい現象である」というコメントで行くそうだ。確かにこの現象の説明は難しい。それをたかが30秒で説明できるはずも無い。また相手が有能な物理学者ならともかく、多分文系出身のマスメディア関係者に電話だけで説明するのは不可能だ。

正直言って、自分自身も簡単に説明できなかった。式は簡単に立てられるし、それを解くのも難しくはない。鎖の形は逆懸垂線である。これは私も導いたと、ケンブリッジ大学の研究者も導いた。それはニューヨークタイムズにまで取り上げられた。ところでこの論文は正しくない。Briggs論文に対する批判は私のニュートンビーズ解説記事にアップした。

問題はそれをいかに分かりやすく説明するかだ。考えた末に次の結論に達した。

鎖がまず空中に弧を描いて流れているとしよう。すると鎖は上に凸の形をしている。ここで鎖に乗った観測者から考えると、上向きに遠心力が働く。鎖には当然重力が働く。これは下向きの力だ。また鎖には張力が働く。これも結果的には下向きの力になる。これらの3つの力で釣り合って逆懸垂線になるのだ。

ここでのみそは鎖の運動に乗るという点だ。慣性系で考えると遠心力は無い。すると働く力は下向きの重力と張力だけである。それなのになぜ中空に浮くのか? という質問はもっともらしく聞こえるが、実は適切でない。なぜならボールを投げあげると、下向きの重力しかないのなんで上に飛ぶの? と聞く事と同じだ。これに疑問を持たないなら、ニュートンビーズも同じことなのだ。重力と張力が働いている鎖の平衡形状は逆懸垂線なのである。でもこの論理で一般の人を納得させる事は難しい。

ニュートンビーズの力のバランス


2014-04-19

仁和寺の花見

京都の御室(おむろ)にある仁和寺に花見に行った。ここの桜は遅咲きで有名である。丈が低くて、根元から枝分かれしている。遅咲きとはいっても、さすがに19日ともなると「落花盛ん」という風情であった。それでも十分に見応えはあった。

 

 


 

2014-04-15

監督の長い一日/鴨川の金魚姫 京都詭弁案内2

川人千慧の京都詭弁案内シリーズのその2である。主人公はおかっぱでキツネ目で人付き合いの悪い女子学生、財井美希(たからいみき)と、のっぽでガリガリの詭弁論者、嵐堂環である。二人とも京都大学の学生である。

「監督の長い一日」では、大学の映画同好会「エンターサプライズ」の映画撮影の一日が描かれる。森見登美彦の「太陽の塔」で主人公の恋敵がやはり京都大学の映画同好会の監督であった。本作も森見の影響の濃い作品である。話は西部キャンパスにある生協の食堂のオープンカフェテラスから始まる。そこで撮影しているのだ。私もこのテラスを知っているが、やたら広くて普段は人気が無い。川人氏の作品の魅力は、京都のローカル性にある。知る人ぞ知る、つまり知らない人は知らない。知る人に取っては面白いが、知らない人にはつまらないかもしれない。

鴨川の金魚姫はシリーズ1で登場した怪盗Nの仲間が、美希がバイトをしている祇園の親子丼店に脅迫状を手渡す所から始まる。放生会(ほうじょうえ)にあなたの大切なものを頂戴するというのだ。放生会とは、祇園を流れる白川に金魚を放流する儀式である。四条通の北側の花見小路にはたくさんの飲食店がある。ところで親子丼専門店なんてあるのかな? 私は親がいない親子丼が好物である。つまり卵丼だ。その理由は一番安いからだ。

主人公達は同級生のカップルの痴話げんかに巻き込まれる。そしてなくなったキーホルダーを探して動物園から疎水、白川を通って祇園にまでやってくる。この小説はミステリー小説の形を取った京都の観光小説だ。小説を読んで面白かったら、主人公達の足跡を追ってみるのも一興である。


2014-04-14

夕餉を買いに/それから蓮見先生は 川人千慧著

 同じ著者の「宵山のシャーロックホームズ」を読んだので、つぎにこれも買ってみた。作者はまだ20代の京都大学法学部卒業の女性である。その作風は森見登美彦を思わせる。本書は「百万遍系」謎解き小説なのだそうだ。

 本シリーズの主人公は京大生である自称、普通の女子大生の財井美希(たからいみき)と自称詭弁家の嵐堂環である。本作では彼らは文化学部の3回生である(実際は京都大学にそんな学部は存在しない。多分、総合人間学部のことであろう)。彼らが縦横に推理を働かせて、京都に起きるアホらしい事件を解決していく。

 「夕餉を買いに」は京都の台所といわれる錦市場をめぐる騒動である。錦には昔から伝わる秘宝「錦の心」というものがある。それを商店がローテーションを組んで守っている。ところが最近怪盗Nというのが、予告犯罪を行っている。個人の収集品を予告して奪うのであるがまだ捕まっていない。その怪盗Nから錦の心を頂戴するという犯行予告があった。祇園の親子丼店でバイトをしている美希がそこに呼ばれる。たまたま外を歩いていた環も呼ばれる。そして彼らは、この事件を解決するのである。錦市場に行ったことがある人なら、その雰囲気描写が興味深いであろう。

 「蓮見先生」は実際は京都大学で有名な折田先生のことである。折田先生とは第三高等学校の初代校長なのだが、その銅像を巡って京大生がさまざまな「文化的な」いたずらを働き、大学当局が銅像を撤去後も、現在に至るまでいたずらが続いている。じつにアホらしい京大の伝統なのである。折田先生像は入試のころに出現するので、私も時々見に行く。ちなみに2014年はキョロちゃんであった。

 小説では主人公たちが鴨川の四条あたりで不審な男が、橋脚に五芒星を描いているのを発見する。それを見とがめた環は五芒星のマークを服にスプレーされてしまう。その後、京都市内のあちこちに五芒星が描かれる。それを主人公は丹念に追跡して、ついにその意図を発見する。クライマックスは賀茂川と高野川が合流する鴨川デルタである。これも森見の小説の舞台であった。

 折田先生像は実際に京大生が行っているアホらしい行事なので、五芒星を描くといったアホらしいことも京大生ならやりかねないという説得力はある。ともかく本シリーズはアホらしい事件を、もっともらしく解決して行くという、森見テイストの小説だ。ところで環は美希の下宿によくくるのだが、何もしないで12時になると帰って行くという。現代の草食男性のひとりだ。まだ何作かあるようなので、読んでみるつもりだ。

 


2014-04-13

宵山のシャーロックホームズ、大きな大の字の下で

FaceBookの友人のシェアーで知った。Kindle版で安いので早速買ったが、本当に安かった。だから買って損は無い! Kindle版の日本語の本は普通かなり高いのでこれが始めてである。

 まずタイトルや装丁から見て森見登美彦の京都小説を思わせる。私は森見さんのファンで、とくに京都のへたれ大学生話は好きだ。森見さんがその続きを書いてくれないので、誰か書いてくれないかと期待していたので、女森見の登場には期待した。この本は京都詭弁案内シリーズの3だそうで、第5話と第6話が集録されている。第5話「宵山のシャーロックホームズ」は宵山を巡る話、第6話の「大きな大の字の下で」は五山送り火を巡る話だ。どちらも京都の住人としては身近な話だ。

 第5話では飛天山の天女が突然消失したという事件を巡る謎解きである。ホームズ役は祇園の親子丼屋の若大将、ワトソン役は京大生の男女である。どちらも国際文化学部の4回生である。女性は美希といって、キツネ目のようで、美女なのかどうかは分からない。装丁の挿絵ではとてもかわいいが。男性は環といって身長が190センチメートルのひょろひょろ男だ。周りからはカップルと見られているが、美希は断固否定している。

 実際私も昨年は宵宵山、宵山と鉾と山を巡った経験があるので、第5話は地理を思い浮かべながら楽しんで読んだ。ちょっとした事件を針小棒大に書いてあるのも、森見テーストである。この話を読まれた方は、今年の宵山にはぜひこの経路で歩いてもらいたい。

 第6話は秘密の「大文字鑑賞会」を探り出せという指令を巡って主人公の京大生男女が推理、調査する話だ。ちなみに指令を出したのは熊野寮に長年すむ主のような京大生である。主人公は鑑賞会の行われる場所が左大文字の近くと推理してそのあたりを探す。私も左京区の住人で、京都の西の地理はそれほど詳しくはない。理学部系のもてない大学院生が登場する。彼はなんとか彼女を獲得したいと、大文字鑑賞会に参加を決めたのだ。理学部の男性が女性にもてないのは知れた話だ。私も昔、大学院生だったときに彼女(いまの家内)と理学部の屋上で五山送り火を鑑賞したので、この第6話も感慨が深い。もっとも現在は大学の屋上には上れないので、大文字ジプシーをしている。

 正直言って、文章や構成にはまだ十分に練れていない点はある。とはいえ私自身も京都小説のまねごとを書いているので、それからみればこの作家は十分なプロである。作家の方とメールしたが、森見のファンだそうで、そのような話を書きたかったそうだ。だから将来に期待が持てる。森見の跡を継いで、京都作家に育ってほしい。

 


2014-04-12

京都ブラッド・クラッド

宇宙人が地球侵略を開始した。しかし他の宇宙人侵略ものと違って、この話では宇宙人は地球にある種のゲームを仕掛ける。宇宙人が勝てば地球は持ち去られるが、地球人が勝てば宇宙人はあきらめる。宇宙人はあらかじめ400人の女好きの男を選んで、ある種のウイルスのような種を仕込んだ。仕込まれた男はクラッド・シードと呼ばれ、彼の声は魅惑的になり、女は拒否できなくなる。

21世紀のある日、地球上の各所に半径100メートルの灰色の半球が出現した。それはあたかもシャボンの幕のような姿で、クラッド・シードがその時にいた場所を中心に発生したのだ。その中に飲み込まれた人間は出てくることは出来ない。ただしシードと過去に関係を持った女性だけは出入りが許される。そのシード男を殺せば、そのクラッド空間は消滅する。これが宇宙人が地球人に仕掛けたゲームだ。

その結界のようなクラッド空間の一つが、京都大学北部キャンパスの西側、田中門前町に出現したのだ。京都大学は大混乱に陥る。主人公は京都大学に勤める29歳の職員、高見千穂である。彼女はシードの一人である時田草と、過去に心ならずも関係を持ってしまったのだ。時田は田中門前町に住んでいたのだ。彼女は地球を救うために立ち上がる。

話自体は小松左京のSF小説「首都消失」を思わすが、本作品はそんなにシリアスな話ではない。要するにやり男と女達の痴話げんか話である。私に取って興味深いのは、話の内容自体よりその舞台である。私の家の近くなのだ。クラッド空間はジリジリと大きくなり、自衛隊の対策本部のテントは東大路の真ん中におかれている。とまあ、舞台は私がいつも通る場所なのだ。こんなところにクラッド空間など作られたら、バスが通れないので迷惑千万だ。

それにしても千穂はたかが男とキスしたくらいで、愛する夫と離婚までするか?というのが、私の感想である。作者の潔癖性を表しているのだろうか。

 

2014-04-11


2014-04-10

半木の道(なからぎのみち)

今日は半木の道に行ってきた。206番のバスで植物園前で下りて、賀茂川べりを歩く。北大路橋から北山大橋まで、賀茂川の左岸の900メートル近くの土手道が半木の道と呼ばれている。そこは枝垂れ桜が植えられていて、今のシーズンは満開である。ちなみに賀茂川は出町柳の高野川との合流点より上流を賀茂川、下流を鴨川とよぶばあいがある。まとめて鴨川ともよばれる。半木の道の東側は4/3に紹介した京都府立植物園である。

植物園には巨大な望遠レンズを備えた一眼レフをもってうろうろする老人たちがいる。カメ爺とよぶそうだ。鳥を撮ることを狙っているらしい。もちろん花を撮る人もいる。ところで半木の道では一眼レフで盛んに桜を撮っている数人の若い女性がいた。カメ女というのだろうか。

半木の道

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2014-04-09

 


2014-04-08

哲学の道

今日は疾風怒濤の花見シリーズとして哲学の道に行く事にした。家の近くのバス停から204のバスに乗った時から花見は始まる。つまり満員なのである。多分、金閣寺から回って来た観光客であろう。そのほとんどが、銀閣寺道でおりる。11時半近いので、まずは大銀で腹ごしらえをする。この店はもとは住宅街にあって、京大生の御用達みたいな店であった。今も結構、庶民的でリーゾナブルである。観光客の他に固定客もいると思われる。

疎水縁は桜が満開である。少し散り始めていて、疎水の水面は花びらで覆われている。着物姿のお嬢さんが写真を撮っていた。近づくと中国語をしゃべっていた。観光客であろう。欧米からの観光客も多い。銀閣度に行く途中を右(南)におれると哲学の道である。東半分は人家が多いが、南の若王子に近い部分は山裾を走っている。どこも桜が満開である。

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霊鑑寺

途中で疎水を離れて霊鑑寺に向かう。ここは通向きで、観光客の数はめっきりと少なくなる。今日は幸運な事に霊鑑寺の公開日であった。霊鑑寺は普段は非公開で、春と秋のある短い期間だけ開いている。ここは椿の名所である。以前来た時に、入った所の右手に小堀遠州の「おそらく椿」があったが今は無い。案内のボランティアの人に聞くと、同定が間違っていたそうで、月光椿(がっこうつばき)の近くに変わったのだそうだ。

霊鑑寺の後は私はいつも、道を少し下った所の喫茶店に入る。インテリアが凝っている。いつも常連客と女主人が話している。この前の道はノートルダム女子学園の中学生の通学路である。茶色の制服が目を引く。

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九十四露神社

霊鑑寺の南側の道を東山の方に入ると、その先には俊寛山荘跡がある。しかしそれとは少し違う方向に秘密神社である九十四露神社がある。ここへ行くのは極めて困難である。最近のある人のブログでは、橋が落ちたらしい。

大豊神社

哲学の道から少し外れた所に大豊神社がある。ここは椿の名所だ。狛犬ならぬ狛ねずみや狛さるなどが祭られている。その頭に椿がちょこんと置かれている。

若王子神社

哲学の道の南端は若王子神社だ。その手前の哲学の道のベンチによく猫がいる。近くに若王子と言うユニークに喫茶店があった。主人が集めた変なコレクションを展示した部屋があった。現在は閉鎖されている。ここは昔の映画俳優の栗塚旭の家だと聞いている。猫はこのあたりに住み着いている。若王子神社の東側には同志社大学の創始者の新島襄の墓がある。しかし最近は大河ドラマの影響で新島八重の墓として有名だ。

南禅寺

若王子からさらに南下して南禅寺に向かう。ここは石川五右衛門で有名な巨大な山門がある。湯豆腐でも有名である。桜が特に多いと言う事はない。れんが造りの水路閣も有名だ。蹴上で疎水が分流して一部はここを通って哲学の道に流れて行く。

何有荘

れんが造りの水路閣から疎水縁をあるく。その眼下は木立に阻まれて良く見えないが何有荘(かいうそう)だ。ここの所有者はいろんな変転のあげく、現在はアメリカの億万長者であるオラクルの社長のラリー・エリソンだ。

蹴上

そこをさらに南下すると琵琶湖疎水が京都盆地に姿をあらわす蹴上の浄水場、インクライン、発電所がある。ここも桜でいっぱいだ。


 2014-04-07

高野川と下鴨神社そして御所

高野川

今日も怒濤の花見をすることにした。先週の週末は雨が降って寒かった。今日は久しぶりに天気がよく、空も青い。私はこのところ京都の桜の名所を回っているが、私の家の近くの高野川も桜の名所である。両岸に桜があるが、特に左岸はずっと桜並木で、今の時期は見事としか言いようが無い。

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下鴨神社

そのあと、高野川を横断する亀石を渡って、下鴨神社に行く。途中の住宅地をお坊さんが「おおっー」という大きな声を出しながら托鉢していた。修行なのであろう。下鴨神社には桜はそれほどは無い。むしろ梅がよい。午前中であったので、観光客もあまりいなくて、静かであった。

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御所

その後は病院の予約なので、慌てて行った。5分遅刻してしまった。病院の後はバスに乗って京都御苑にいく。京都市民はふつうは御所とよんでいる。ここも桜の名所である。北のほうにある旧近衛邸の前に桜がたくさんある。みごとなしだれ桜を狙うカメラマンが、すごいカメラを持って、さまざまなポーズで写真を撮っていた。時間も正午になったので、観光客が大勢いた。また子供の遊び場もあり、走り回る子供たちの歓声、それを見守るお母さんがたくさんいた。桜の木の下に敷物を敷いて花見をするグループもあった。回りは幸福な人々であふれていた。南のはし近くにある出水にも桜が咲いている。ここでも花見をするグループがいた。やはり花見には敷物と弁当持参が良いようだ。

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2014-04-06

鎖噴水 : ニュートンビーズ

秘密研究会を開催して、オックスフォードの研究者が書いたニュートンビーズな関する論文Growth and Shape of Chain Fountainを読んだ。この論文はなんとニューヨークタイムズの記事Chain Fountain, Explainedに取り上げられているではないか。先を越されたかと思ったのだが、よく読むと、何かおかしい。例えば、鎖が落下した床から引かれるという張力があるのだ。そんなものはあり得ない。もしそんなものがあれば、原理的に鎖は自由落下速度以上の速度で落下できる。実際に論文にもそう書いてある。もしそうなら永久機関が出来るはずだ。常識ある物理学者なら、おかしいと思うはずだ。

また鎖の出発点の取り扱いも、もう一つ納得できない。私はエネルギー保存則を使って、極めてすっきりときれいに説明できたと信じている。また私の理論は実験とも良く会う。

といいながらも、論文を書かねば意味が無い。論文を書いてこのホームページに掲載する予定である。


2014-04-06

中村仁信(ひろのぶ)先生談話会 低線量放射線の人体への影響

あいんしゅたいんのオフィスで大阪大学名誉教授、彩都病院病院長の中村仁信先生のお話を伺った。経緯は先生がNPO法人あいんしゅたいんの理事である宇野賀津子の著書「低線量放射線を越えて」を読まれて、意見を同じくするのでぜひ話し会いたいとおっしゃったので、談話会にしたのだ。

実は低線量放射線の人体への影響に関しては、3.11の直後に、NPO法人あいんしゅたいんの理事長である坂東昌子(愛知大名誉教授、元日本物理学会会長)、宇野賀津子(パスツール研究所)、それに私(神戸大学名誉教授、元日本天文学会理事長)の間で大激論が買わされた。坂東と私は物理学者、宇野は免疫学者である。物理学者の私たちは放射線は低線量と言えども危険であると主張した。宇野は放射線医学では数10シーベルトの放射線を「がんの治療の為に」照射するので、福島で当時騒がれていたマイクロシーベルト(1シーベルトの百万分の1)とかミリシーベルト(1シーベルトの1000分の1)など問題にならないと主張した。そこで坂東は低線量放射線の専門家を何人もお呼びして公開講演会を行って勉強した。その先生方の意見は基本的に宇野と同じ立場であった。そこで私が悟った事は、物理学者は放射線自身に関しては知っているが、その人体の影響に関しては全く無知であると言う事だった。私自身がこの問題に関しては何も分かっていないということを悟った。坂東も同様だ。

ちなみに坂東はそれから心を入れ替えて、低線量放射線の人体への影響について徹底的に勉強して、ガンの数理モデルに関して論文を書き、アメリカの学会で発表するまでになった。後期高齢者の坂東の馬力には敬服する。実は私もその研究の計算をしてほしいと頼まれている。

中村先生は放射線医学の専門家である。先生の主張は低線量放射線の人体への影響に関して、ICRPでとられているLNT仮説は間違いであるという。LNT仮説(線形閾値なし仮説)とは放射線の強さと、その害は比例関係にあるという仮説だ。もしこれが正しいなら、どんなに少量の放射線でも、浴びないに越した事は無い事になる。実はLNT仮説には根拠は無い。高線量の放射線に対しては、確かに放射線強度と害は比例関係にあるのだが、低線量ではデータは無いのだ。そこでデータの無い所を「エイっ」と直線で結んだのがLNT仮説である。さらに予防原則という考えがあり、よくわからない所は安全側に見ておこうと言う。それでLNT仮説が採用されている。

しかし低線量放射線はある程度以下なら、害よりはむしろ健康に良い効果があると言う考えがある。これをホルミシス効果と言う。ラドン温泉などの放射線温泉が病気治療に効くといわれているのは、この効果の為である。中村先生は講演の中で、さまざまなデータを示して、ホルミシス効果がある事を述べられた。

そこまでは浴びて良い放射線量は一般市民で1ミリシーベルト、特別の場合は100ミリシーベルトとか言われている。しかし先生によると、東北大学のある先生の研究では、放射線治療で数10シーベルト患部に浴びせる前に、1シーベルト程度を「全身」に照射すると、免疫機能が上がって予後が良いと言う。

甲状腺がんの治療に放射性ヨードを飲む治療法がある。それで摂取する放射性物質の量は驚くべきものだ。

「なお、I-131内用療法で使われる放射線の量ですが、甲状腺がんの治療では、3.7~7.4 GBq(1 GBq=1,000,000,000 Bq=10億Bq)を投与しています。これは、福島第一原発で問題となっている、I-131の飲料水1kgの暫定規制値300 Bqと比べて1千万~2千万倍に相当します。(水の量で言えば、1万~2万トン!)バセドウ病でも、甲状腺がんの10分の1くらいの放射線量を使います。」

これらの事を知ると、世間で騒いでいる低線量放射線など問題にならない事が分かる。

中村先生の講演内容は、先生が「たかじんのそこまでいって委員会」で話された内容を精緻にしたものである。以下にそのビデオを貼付けておく。

{youtube}yZ4GUCj2SbY{/youtube}

その当時、そして現在も、メディアによく露出する物理、工学系の「放射線の専門家」と称する人たちは、放射線の人体への影響に関しては、実はほとんど何も分かっていないことも分かった。それは過去の自分でもある。

私が一連の講演、議論、勉強で学んだ事は、人間は如何に愚かであるかと言う事だ。専門家と言えど例外でない。ソクラテスの無知の知ということばがある。自分が無知であると言う事を知っているソクラテスは、それを知らないソフィストなどの「賢者」よりは賢明であるということだ。メディアに横溢する賢者はソフィストが多い。中にはソクラテスもいるが、真の賢者はソクラテス同様に迫害される。

低線量放射線に関しては危険であると主張するのが「正義」で、害がないか有益であるという主張は「悪」であるとされる。ソフィスト達がそう主張するのである。だから真の賢者はソクラテスとは違って、迫害を恐れてあまりメディアに出てこないのだ。

もっとも後で述べるように、私の立場は坂東とは鋭く対立している。坂東は人間の英知を信じて「話せば分かる」という。私は「人間には理性は無い」「話しても分からない」という立場だ。人間の愚かさに関しては、最近の研究に基づく、れっきとした証拠がいくらもあるのだ。それに関しては別に書く。


2014-04-04

アナと雪の女王 Frozen

先日、映画「ホビット2」を映画館で見た時に予告編にディズニー映画「アナと雪の女王」があった。所詮、お子様映画だろうとあまり気にかけていなかったが、Facebookの友人が、その主題歌を11歳の少女が歌っていて、評判になっていると言った。調べてみると3千万ヒットにもなっている。恐るべきことだ。そこでそれを紹介しよう。まずは映画の予告編から。

アナと雪の女王 Frozen

{youtube}fO2IfRohYaw{/youtube}

その主題歌Let it go

{youtube}V9JJyztJLLA{/youtube}

その主題歌を11歳の少女Lexi Walkerが歌っている。YouTubeですでに3千万ヒットになっている。たいしたものだ。

Let it go!  Lexi Walker

{youtube}DAJYk1jOhzk{/youtube}

次はLemi LovatoによるSound Truckのオフィシャルビデオである。

Let it go!  Lemi Lovato

{youtube}kHue-HaXXzg{/youtube}

第30回宇宙技術および科学の国際シンポジウム

上記のシンポジウムが2015年7/4-10に神戸国際会議場で開かれる。7/7の夜に私の2045年問題に関する講演と、SF作家を含めたパネル討論会を行う。その打合せをプログラム委員会委員長の中須賀東大教授と京都駅で行った。SF作家としては堀晃さんと野尻抱介さんを考えている。


2014-04-03

半木の道

今日は京都府立植物園に花見に行った。206番のバスで植物園前で下車する。そのあと賀茂川河畔を歩く。ここは半木の道(なからぎのみち)といって、桜の名所なのだが、しだれ桜が多く、まだ満開ではなかった。この道は京都を舞台にしたテレビドラマなどでよく使われる。

京都府立植物園

植物園の桜はソメイヨシノは満開であったが、しだれ桜はまだであった。だからまだまだ楽しめそうである。桜の木の下では多くの人たちが敷物を敷いて花見をしていた。今日は平日なのでお父さんはあまりいず、お母さん、おばあちゃんと子供たちという取り合わせが多かった。また老夫婦も多くいた。観光客は曜日は関係ないので、若い人もいた。ウエディングドレスを来た女性と花婿が写真を撮っていたので近づくと中国語で話していた。今の京都は中国からの観光客の人が多い。

花見をしている人たちはみんな仕合せそうだ。私は花見と祭りには幸せな人ばかりだという「松田の幸せの法則」を提案している。なぜ幸せな人たちばかりかというと、不幸せな人たちは花見や祭りには来ないからだ。きっと家で頭を抱えて悩んでいるのであろう。私から見てもっとも幸せな人たちというのは、小さな子供を連れた若いカップルである。もしカップルがもめているのなら、そもそも花見に来ないだろうから、彼らは仕合せである。子供も両親に手を取られて幸せそうだ。ただお父さんを見られるのは休日、祭日のことが多い。今日は先に述べたように若い男性は少なかった。お母さんが桜と戯れる子供を写真に収めているシーンが微笑ましかった。「花より団子」ではなく「花より子供」である。幸せな人たちを見ると自分も幸せな気持ちになれる。その意味もあり、私は植物園に来るのが好きだ。

{youtube}8VLlhFPjaQ8{/youtube}

桜見物の後は大温室に入った。ベゴニア展をやっていた。

 


2014-04-02

山科疎水

今日は山科疎水に花見に行ってきた。そこは私の秘密研究所の特異点庵から歩いて20分ほどの所にある。

まず疎水(そすい)であるが、これは明治年間に琵琶湖と京都を結ぶ運河として作られた。目的は舟運、発電、水道用水のためである。琵琶湖からトンネルを通って山科盆地を流れ、再びトンネルに入って京都の市街地である蹴上(けあげ)に現れる。蹴上げには浄水場がある。そこは傾斜がきついので船はそのままでは通行できず、インクラインというレールの上を運ばれる。またそこに発電所もあった。

蹴上から一部は分流して南禅寺、哲学の道、京都大学、松ヶ崎浄水場へと流れる。本流は岡崎を通り、鴨川沿いを伏見まで流れている。下流部分は現在は地下化されている。疎水にそってずっと桜が植えられていて、今ごろはどこも奇麗である。とくに蹴上、哲学の道、岡崎疎水は桜の名所だ。密かな名所として京都大学北部キャンパスの東を流れる疎水を私は気に入っている。

昨日も書いたように私は左京区に住んでいて、山科には不案内であった。だから山科疎水も知らなかった。しかしここも桜の名所と聞いて行ってみた。御陵からJR山科駅まで歩いた。この部分は天智天皇陵の背後を通っている。特異点庵の最寄り駅が御陵(みささぎ)というのは、天智天皇陵があるからだ。

さて山科疎水であるが、他の疎水縁よりは桜は少ない。それだけ静かである。最初行った所には公園があり、老人が憩っていたり、子供たちがサッカーをしていたりと、平和であった。イノシシにえさをやらないでくださいと書いてあった。ここも神戸大学同様にイノシシがでるようだ。つぎのビデオは昨日も述べたように、素人が撮っているので、カメラを動かして、少し見にくいが、短いので採用した。

{youtube}qKf8oEr_0-c{/youtube}

 

 


2014-04-01

醍醐寺の花見

醍醐寺に花見に行ってきた。ここは京都の桜の名所として有名である。山科にある。私は左京区に住んでいて、山科は山を隔てているので、田舎だという偏見があり、行ったことが無かった。しかし昨年の1月に山科の御陵(みささぎ)に家を借りて、特異点庵と名付けた秘密研究所を作った。それで山科は、地下鉄東西線の開通以来とても便利になっていることを知った。例えばJRの京都駅から御陵に行くには二通りある。一つは地下鉄南北線に乗り、烏丸御池で東西線に乗り換える。もう一つはJRで一駅、山科まで行って、そこで地下鉄に乗り換える。こちらの方が早い。というわけで私は山科になれてきたのだ。

さて醍醐寺であるが平安時代の874年に作られた。醍醐天皇の庇護で大きくなったが、戦国時代の戦火で五重塔以外が焼けた。これを復活させたのが豊臣秀吉と秀頼である。秀吉の醍醐の花見は有名である。秀吉の最晩年に行われた。秀吉はこの5ヶ月後に没している。花見はほとんど女官のみで行われ、男の大名たちは路地茶屋の運営などを行った。秀吉の正妻、北政所の次の席を淀君と松の丸殿が争ったが、前田利家の妻のまつがおさめたという話がある。

行き方は様々あるが、私は地下鉄東西線の醍醐で下りて、コミュニティ・バスで行った。一日券が300円である。歩いても行けるが、行きは上りなので少し辛い。

醍醐寺は広く、拝観料は三宝院、霊宝館、山内それぞれ600円である。私は仁王門で拝観料を払って、金堂や五重塔のある山内に入った。醍醐寺の桜は見事であるが、それは秀吉が花見をするために、近畿の各地から集めた桜を植えさせたのだという。

 

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ところで次のビデオはちょっとヤンキーなお姉さんのシリーズから取った(削除されてしまった。きっとカップルが別れたのであろう)。私は結構このシリーズが気に入っている。というのは、この女性を撮っている彼氏か旦那かしらないが、なかなかテクニックが優れている。というのはカメラがほとんど揺れないのである。素人のビデオがたくさんアップされているが、三脚を使わないものが多くて、画面が揺れるのでそれを見ていると、少し酔ってしまう。歩く場面などは素人は特に揺れる。しかしこのカメラマンは大したものだと思うが、ほとんど揺れない。このビデオは前半は醍醐寺、後半は哲学の道に行くまでのシーンである。この女性に対するカメラマンの愛情も感じられて微笑ましい。 


2014-03-31

平野神社の花見

平野神社に花見に出かけた。私は京都に長い間住んでいるが、実は平野神社を訪れるのは今回が初めてなのだ。平野神社のすぐ南にある北野天満宮にはなんども訪れているのだが。北野天満宮には梅見のために今年になって既に2度も来ている。そこに行く途中に平野神社があることは知っていたのだが。平野神社は794年につくられたというから、平安京が出来たときである。

平野神社は京都の桜の名所である。私の家からは204番のバスに乗って行く。西大路どおりに面して門があるが、実はここは表門ではない。しかしここから入るのが便利だ。入ってみるとたくさんの露天商店が準備中であった。我々が行ったのがまだ早かったから開店していないのかもしれない。桜は満開で観光客はたくさんいた。

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マッド・サイエンティストのつぶやき Fri, 04 Apr 2014 09:01:19 +0900
2014年1月 https://www.jein.jp/jifs/blog-matsuda/mutter/1027-1401.html https://www.jein.jp/jifs/blog-matsuda/mutter/1027-1401.html

 

 


2014-01-24

外見からは古い閉鎖されたセメント工場だが中に入ってみると、ワー-

この建物はかつてはセメント工場であったがそれは閉鎖され捨てられていた。しかし建築家のリカルドボフィルが1973年に発見して、それをリフォームした。現在では彼のオフィス、住宅になっている。中を見るとその変貌に驚くだろう。私もこのようなオフィスで仕事したいものだ。


2014-01-23

世界の超クールな個室達

小さいことは美しい。そして効率的。

米メディア「Inc.」が選んだ9つのポッドやドーム型の部屋、仕事場はいずれも、芸術的にも環境的にも卓越しています。

未来の小部屋は必ずしも四角ではありません。オフィスであれ家であれ、クールな"個室"は、電話の音を遮断するプレキシガラスを備えていたり、三角形の窓ガラスがはめ込まれた多角形の部屋だったりするのです。

こんなオフィスで仕事がしたい。


2014-01-22

コンピューターは映画をどう見るか

人工知能に映画を見せると、主にどの部分を見るか、それが人間とどう違うかに興味がある。次のビデオは有名な映画の1シーンのコンピュータが注目したポインタとナレーションを重ねたものである。その映画は「 2001年宇宙の旅」 、 「アメリカン・ビューティー」 、 「インセプション」 、 「マトリックス」 、 「タクシー・ドライバー」 、 「アニーホール」である。シーンを思い浮かべながら見てほしい。

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014-01-21

拡張現実用コンタクトレンズはもうすぐ手に入りそうだ

昨今グーグルグラスが注目を浴びている。これは小さな眼鏡のようなもので、右目の右上に小さなディスプレイが備わっている。人はその中をのぞき込むことによって、例えばスマートフォンの内容を読むことができる。グーグルグラスは今年一般に売り出されると思われる。あるいは来年かもしれないが、すでに開発者たちは1,500ドルでキットを手に入れてアプリの開発に励んでいる。

グーグルグラスにも様々な問題がある。まず眼鏡をかけている人は使いにくいか、使えない。そこで他の競合者たちは、各人が使う眼鏡に合わせた、グーグルグラスのような眼鏡を提案している。

このようなアイウエアの使い方には2つある。 1つはグーグルグラスのように、視野の一隅にスマートフォンの情報を提示することである。もう一つはOculus Riftのように、視野全体を覆って埋没感を与えるものである。これは映画やゲームに使う。

iOptikの拡張現実システムはその両者を実現することができる。そのシステムは眼鏡とコンタクトレンズの組み合わせである。眼鏡に埋め込まれた光源から出た光はコンタクトレンズを通って目に入る。 1つのモードではグーグルグラスのようにスマートフォンの画面が市販の中に浮かぶ。別のモードでは視野全体が拡張現実で覆われる。コンタクトレンズを使うから視力の矯正は可能である。 2014年のCESショーで発表された。実際の製品は2014年の末か2015年の始めを予定している。

今年から数年かけて、拡張現実が現実のものになるであろう。 NHKで放映された子供用のアニメ 「電脳コイル」の時代がすぐそこに迫っている。


2014-01-20

科学のブレイクスルーでガン関連死を90%防ぐことができる

Big Scientific Breakthrough Could Prevent 90% of Cancer-Related Deaths

コーネル大学の研究者たちはガンに関連した死亡をほぼ90%防ぐことができるたんぱく質の分離に成功したと発表した。ガンには手術や放射線治療、化学療法など様々な治療法がある。ガンで患者が死亡する1番の原因は転移である。

発見された手法はTRAILというたんぱく質を、血液中に放出するというものだ。このたんぱく質は転移するために血液中を浮遊しているがん細胞に取り付いてアポトーシス(細胞の自殺)を起こす。マウスの実験では100%の成功率でガン細胞を殺した。しかし健康な細胞には影響しない。


2014-01-19

なぜ鳥はV字編隊で飛ぶのか?

Here's Why Birds Fly In A 'V' Formation

大型の渡り鳥は空を飛ぶときにV字状の編隊を組んで飛ぶことが知られている。リーダーはV字型の頂点にいて、他の鳥たちはリーダーを頂点とするV字形に編隊を組んで飛ぶ。その理由は2つ考えられる。 1つはそのほうが飛ぶのが容易だからである。あるいは単にリーダーに従っているだけかもしれない。航空機においてはV字型編隊を組むと燃料が節約できることが知られている。渡り鳥もそうであろうか。航空機と渡り鳥では、背後の気流は大きく異なっている。

最近、渡り鳥にGPSを取り付けて鳥の編隊内での位置を正確に測定する研究が行われた。その結果によると、鳥は前の鳥の斜め後ろにいて、その羽ばたきに同調して自分の羽を動かす。羽を下に動かすときは、彼の背後には下降気流が生じ、上に動かすときは上昇気流が生じる。後ろの鳥はその上昇気流を巧みに捉えてエネルギーを節約する。どのようにして上昇気流を捉えるのか、目でみるのか羽で気流を感じるのかはわかっていない。

この現象は大きな鳥に適用するのであり、小さな鳥の後流は複雑で、このようなことができないようだ。エネルギーの節約率はよくわからないが、 20から30%ではないかと言われている。


2014-01-18

バイオエレクトロニクス――現実化する攻殻機動隊ワールド

翻訳家の青木薫さんのブログです。内容は紹介するより、青木さんのブログを見てください。ちなみに青木さんは私が京都大学理学部で一般相対性理論の講義をした時に、受講していた二人の女子学生のうちの一人です。どちらも成績が良かった。一般に女子学生の方がまじめ(な人が多い)です。

あの時の講義はGravitation by Misner, Thorne and Wheeler、別名「電話帳」という相対性理論のバイブルをもとにしたものでした。演習問題を解かせました。こちらも答えがわかっていないといけないので、航空工学教室空気力学研究室の大学院生を動員して、解答をつくりました。その時の院生の一人がニ間瀬東北大学教授です。ニ間瀬さんもめちゃくちゃ、頭が良かった。


2014-01-17

エアフォースワン・ダウン Air Force One is Down

という映画を見た。上下2巻の話であるが、今回は上巻のみを見た。

話は旧ユーゴスラビアで非道の限りを尽くしたセルビアのドラグティン将軍が、国連軍に参加しているアイルランドのマーキー大尉に逮捕される。そして国際法廷で終身刑を言い渡された。それを部下達が、米大統領専用機のエアフォース・ワンをハッキングして、着陸させ、大統領を誘拐する。今回の米大統領は女性である。そして再び飛行機を飛ばせて海に墜落させる。その時に搭乗していた一人の女性記者以外は、すべて死ぬ。

マーキー大尉と英国領事館の職員の男、さらに先程の女性記者で、大統領の救出作戦を行う。女性記者は実はロシアの諜報組織FSBのエージェントであったのだ。第1巻の終わりでは、マーキー大尉は巡航ミサイルに追いかけられて地面の割れ目に飛び込む。職員と女性記者は悪者に捕まる。という中途半端なところで終わった。

悪者のドラグティン将軍をよく見ると、英国のテレビ番組「シャーロック」のレストレード警部である。だからあまり悪者に見えないのだ。今回の映画は「合衆国陥落」よりは少しだけお金がかかっているが、基本的には低予算の映画である。今年に入って、この種の映画を4本も見たが、悪者が、北朝鮮、テロ組織、中国で、今回はセルビアである。要するにアメリカ、あるいは英国の敵である。舞台はどうやらセルビアという設定であるらしい。悪者のアジトは廃虚の修道院である。ぼくは山の上に立っている廃虚の修道院が好きである。 007のある映画でも、山の上の廃虚の修道院は悪者の秘密基地であった。それにしてもエアーフォース・ワンがこんなに簡単にハイジャックされるか?

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2014-01-16

逆チューリングテスト・・・Captcha

Who made that Captche?  New York Times

Web上で入力を促される時、時々コンピューターが生成した変な文字の入力を要求される。このシステムをCaptcha(Completely Automated Public Turing test for telling Computers and Humans Apart)と呼ぶ。もともとはDECが開発したものだ。 1996年の大統領選挙の時、 DECは世論調査を行った。この時コンピューターを使って世論調査を妨害するのを防ぐために、確かに人間が入力したことを確認する必要があった。それが例のシステムである。

人工知能の分野でturing testというものがある。それは人工知能が意識を持っているかどうかを確認するためのテストである。テストする人間が人工知能と人間に質問を出して会話をする。それでどちらが人工知能か人間か区別がつかなければ、人工知能には意識があると認定する。Captchaはこれとは逆に、相手が人工知能ではなく人間であることを確認するテストである。人間はパターン認識に優れているので、歪んだりかけたりした字を簡単に認識できる。しかしコンピュータにとっては簡単でない。このシステムは元の字を乱数を使って変形させるものである。アルゴリズムは公開されているが、乱数は公開されていない。最も近い将来に、人工知能はこのような字を読み取ることができるようになるだろう。


2014-01-15

インベージョン・デイ-合衆国陥落の日

という映画を見た。主人公のデュークはアメリカ国家安全保障局(NSA)でマイクロチップのエンジニアとして、サイバーセキュリティ・アナリストのフィルのもとで働いていた。ところがどういうことか、クビになった。妻と幼い娘を連れて祖父の別荘に移り住んだ。ところがそこはすでにメキシコ人の若者が住んでいた。彼は正当に借りていると主張する。

ところが、ちょうどその日に、中国に対して数兆ドルもの負債を抱えたアメリカに対して中国がサイバー攻撃を仕掛けた。中国製のコンピュータチップが、アメリカのあらゆるシステムに組み込まれていて、それを使って金融、通信、交通、ライフラインなどあらゆるシステムをダウンさせたのだ。そのウイルス・プログラムを作ったのは、実は主人公であったのだ。アメリカ中を飛んでいた飛行機はすべて墜落してしまう。 街はパニックに陥り、食料も水もない。絶対に取り外せない追跡機能を搭載したリストバンドを強制的に装着され、それがないものは保安官に逮捕されるし、食料の配給を受けられない。軍隊も警察も中国のために働いている。主人公は家族を守るために命がけで戦う。といっても、最終的にはメキシコ人の若者と一緒にメキシコに逃げるというそれだけの話である。

私はカバー写真にジェット戦闘機が載っていたので期待して借りたのだが、全くの駄作であった。予算をほとんどかけない映画である。出演者は主人公とメキシコ人の若者、 保安官、ギャング程度である。保安官は二人、兵隊も二人、中国人として出てくる俳優は1人だけである。戦闘機も戦闘場面も何もない。なんとも低予算の映画である。

お決まりのごとく、主人公の上司は中国のスパイであった。

ただ面白いのは、悪者は中国になったことだ。前回見た「エンド・オブ・ホワイトハウス」では悪者は北朝鮮であった。アメリカ人の中国に対する恐怖感の表れであろう。どちらの映画でも今や日本は敵でも味方でもない。ほとんど言及もされない、無視である。

{youtube}IkBQjCS4F7s{/youtube}

 


2014-01-13

緑は国民健康保険を数千億円も節約する

Greeb spaces 'can save NHS billins'

http://www.bbc.co.uk/news/science-environment-24806994

英国の森林トラストの理事長は人々が森林にアクセスできると国民健康保険は数千億円も節約できると述べた。しかし英国の国民の14%だけが木に容易にアクセスできる。ある試算によれば全国民が容易に緑地空間にアクセスできれば、国民健康保険において21億ポンドも節約することができるという。しかし英国では500メートル以内に緑地のある国民は14%しかいないのだ。

緑と健康の間には密接な関係がある。例えば肥満、精神衛生、認知症、自閉症などである。昨年の初めエグゼター大学の研究者により発表された研究では緑地空間は人々の幸福と生活の質を向上させるという。日本では森林浴という言葉がある。近年都会生活者が自然から離れていく現象を「自然欠乏症」ということができる。 2009年の研究では子供たちの10%しか森林地帯で遊ばない。親たちの世代はそれが40%であった。 


2014-01-12

緑地は人間の幸福に対して永続する効果がある

BBC News -- Green spaces have lasting positive effect on well-being

都会で緑の多い場所に住む事は精神衛生上、永続する正の効果があることを英国の研究者が発見した。 1991年以来の英国の4万世帯の統計データを元にしてこのことを発見した。

給料が上がること、昇進する事、結婚すること、宝くじに当たることなどは確かに人々を幸福にする。しかしその効果は6ヶ月しか続かないことが分かっている。

しかし都会的で緑の多い場所に住む事は、精神衛生上良く、抑うつや心配を抑える効果がある。しかもその効果は3年たっても消えないことがわかった。またそのような地域に住む人々は離婚率が低いことが分かった。緑の多い地域に住む人々にはストレスが少なく、したがって夫婦喧嘩も少ないのであろう。


2014-01-10

ミス・マープル 鏡は横にひび割れて

セント・メアリー・ミード村にハリウッドの大女優マリーナが引っ越してきた。引っ越し先ゴシントン・ホールである。ここはバントレー大佐夫妻が住んでいたところだが、大佐は死んで夫人でミス・マープルの親友であるドーリーが引っ越したのだ。マリーナは村の人々を呼んでパーティーを催す。マリーナの大ファンであるヘザーというおばさんが、出された酒を飲んで死んだ。マープルはその場にいなかったのだが、友人や医者から話を聞いて、ヘザーがマリーナと酒を交換したことを知る。そこで狙われたのはヘザーではなくマリーナではないか、と考えた。警察が乗り出してきた。今回は以前のスラック警部補は警部に出世していた。彼は捜査担当の警部補に、ミスマープルに会うよう勧める。ミスマープルの外見に騙されてはいけないと警告する。しかし担当の警部補はなんとミスマープルの甥であったのだ。それにしても、ミスマープルはたくさんの甥を持っているものだ。

その後、マリーナの夫で映画監督であるジェイソンの遺書のエラも殺される。マリーナも撮影中に毒入りのコーヒーで危うく殺されかけた。ミスマープルは最初の事件に注目する。マリーナがヘザーと話してる時に驚いたような顔をしたのだ。その顔の向こうには何があったか。元の夫が夫の元の恋人を連れてきたとか、聖母マリア像見たからとか、写真撮影をしている若い女性見たこととかいろいろ考えられる。写真撮影をしていた若い女性は、マリーナのかつての捨てた養女であったのだ。

しかし、調べてみると、ヘザーは昔マリーナのファンとして、風疹にかかりながらも会いに来たために、マリーナは妊娠していた子供が知的障害をもって生まれたのだ。結局そのために、マリーナがヘザーを毒殺したと思われる。しかし、マリーナは薬の飲み過ぎで死んでしまった。自殺か事故か分からない。秘書のエラを殺したの、マリーナの殺人に気がついて、脅迫したからだ。


2014-01-08

明日は中島科学研究所のセミナーである。そのための準備をする必要がある。話の内容は「飛行機はなぜ飛ぶのか、まだわからない!?  」である。このところ寒いのであまり気力が沸かない。こたつに入ってしまうと気力がこたつにつ吸い込まれるのある。


 2014-01-07

ホワイトハウス・ダウン

上記の映画を見た。エンド・オブ・ホワイトハウスと非常に似た映画である。今回の主人公は下院議長の警護をしているジョン・ケイルという若い警官である。彼には別れた妻と女の子がいる。娘を喜ばせようと、彼は大統領のシークレットサービスに入って大統領の警護官(Detail)になることを希望して面接を受ける。面接官はなんと昔の女性の同級生だった副長官である。しかし、彼はあっさりと落とされてしまう。しかしそれを子供にいえないので嘘をつく。彼は娘のためにホワイトハウス見学の券を二枚手に入れる。

エンドオブホワイトハウスと違って今回の大統領はオバマ大統領を思わせる黒人である。彼は平和主義者で、中東から米軍を引き上げようとする。それが戦争を望む軍事産業に嫌われるのだ。今回も、お決まりのようにホワイトハウスは襲撃される。今回襲撃するのは、前回のように北朝鮮のテロリストではなく、白人の傭兵団である。今回もまた同じように内部から裏切りが生じる。今度はなんとシークレットサービスの長官である。彼は今日が定年退職の日なのだ。自分の息子が秘密ミッションで死んだこと、および大統領の平和主義は気に入らないのだ。副長官である女性は襲撃の前に外部に出ていた。ホワイトハウスの警護官たちはみんなやられる。 

主人公のケイルは、娘と離れてしまう。ケイルは娘探してテロリスト達と戦いを始める。大統領の生死が明らかでないので、副大統領が大統領に昇格する。トイレに隠れていた娘は、なんとスマートフォンでテロリストたちを撮影してYouTubeでアップする。それでテロリストたちの正体が明らかになる。彼らの中にはもとは政府機関で働いていたものがいた。シークレットサービスの長官も正体を明らかにし、ホワイトハウスにいる観光客たちの身代金を要求する。実際、彼は脳腫瘍にかかっており、あと3ヶ月の命なので自殺攻撃を行ったのである。

副大統領はヘリコプターでホワイトハウスを攻撃することを命令する。しかしそのヘリコプターはすべて、ミサイルで撃墜されてしまう。テロリストは全米防空司令部のコンピューターに侵入し、エアフォースワンを撃墜して、それに乗った副大統領を殺す。そこで次に下院議長が大統領に昇格する。彼はホワイトハウスをF22で爆撃することを命令する。しかし、ホワイトハウスの中ではケイルが大統領を助けてテロリスト達と戦っている最中なのだ。それでも、下院議長は爆撃を命令する。しかしケイルの娘が庭に出て大統領の旗を振り、市民たちもそれに呼応したので、パイロットは爆撃を中止する。

最後のテロリストを倒したケイルは庭に現れる。そこで、下院議長が、実は陰で糸を引いていたことを明らかにする。そこに大統領が現れて、クーデターの容疑で下院議長を逮捕させる。

というような筋書きである。ネットの評価を見ると、エンドオブホワイトハウスの方が評価が高い。ホワイトハウスダウンの主人公は何か少し弱々しい。それにしても同じような映画が、同じ時期に(2013年の夏)に公開されるとは驚きだ。

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2014-01-06

エンド・オブ・ホワイトハウス (The Olympus has fallen)

という名前の2013年製作のアメリカ映画を見た。ホワイトハウスが北朝鮮のテロリストに占領され、大統領が人質に取られるという話である。主人公はシークレットサービスで大統領一家を警護する役割を帯びていたマイク・バニングである。彼は吹雪の日に、大統領専用車の警護の任についていたが、事故のため、大統領夫人を死なせてしまう。そのため彼は任務を解かれて財務省でデスクワークをしている。

 1年半後に韓国の首相が大統領を訪問する。ちょうどその時、国籍不明の輸送機がワシントン上空に侵入し、警告にやってきたF22戦闘機をガトリングガンで撃墜する。さらに市街地の人々を攻撃し、ホワイトハウスを攻撃しようとするが、最終的に撃墜されてしまう。

その騒ぎに、大統領と韓国首相は地下室に避難する。そこに見物人に紛れたテロリストたちが攻撃を開始する。シークレットサービスは応戦するが、バタバタとやられてしまう。そこに駆けつけたバニングはホワイトハウスの中に潜入する。地下に避難した大統領、副大統領、国防長官、統合参謀本部議長たちを、韓国の警護官たちが襲う。彼らは実は北朝鮮のテロリストたちであったと言う設定だ(ほとんどありえないだろ) 。

さらに元シークレットサービスの警護官が、テロリストの仲間に加わっていたのだ。韓国首相はすぐに殺されてしまう。SEALSが奪還作戦を展開するが、ヘリコプターは1機をのぞいて撃墜される。

テロリストは日本海に展開する。第7艦隊と在韓米軍の撤収を要求する。さらに核兵器の解除コードを明らかにすることを要求する。そのコードは大統領、国防長官(女性) 、統合参謀本部議長の3名だけが知っている。まず統合参謀本部議長は拷問されて、コードを吐く。次に、国防長官も大統領の要請でコードを教えた。テロリストたちはアメリカ国内で核を爆発させようという魂胆だ。大統領にコードを吐かせる為に、逃げている大統領の息子を探す。しかし主人公のバニングは大統領の息子を助け出す。テロリストたちは国防長官を見せしめのためにホワイトハウスの玄関のところで殺そうとするが、バニングに助けられる。最後にはテロリストたちは全員バニングにやられてしまう。というハリウッド的ハッピーエンドである。

北朝鮮のテロリストは日本海のことを英語でSea of Japanと言っていたが、韓国人がこれを聞いたら怒り狂うであろう。韓国の首相が真っ先に殺されることもあり、この映画は韓国では上映禁止になるのではないだろうか。韓国にも北朝鮮にもかなり屈辱的な映画だ。もっとも日本は言葉すら出てこない。完全に舞台の外である。

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2014-01-2

リッツカールトンホテル

私たちは正月はいつもホテルで過ごすことにしている。いつもは大阪上本町にあるシェラトン都ホテルに泊まることにしている。というのも、家内の88歳になる母が、その近くで一人暮らしをしているので、正月には母を呼んで食事をすることにしているのだ。ところが今年は都ホテルを予約することができなかった。満杯だったのだ。そこで、その近くの同クラスのホテル、ホテルニューオータニ、帝国ホテルなどもあたってみたが、どれも満杯だった。最近は正月をホテルで過ごす人が増えているので、かなり早くから予約しなければ駄目だったのだ。そこでいろいろあたってみたが、予約できたのはリッツカールトンホテルだけであった。ここが空いていたのは、あまりに高いからであろう。はっきり言って、 2人で1泊で5万円近くもした。

リッツカールトンホテルは西梅田にある。 JR大阪駅で降りて、長い地下道を通って辿り着く。このホテルは英国スタイルである。ロビーは広いわけではないが、非常に落ち着いている。ただ、今日は正月なので、客が多く、それも子供連れが多いので、多少普段とは違っていた。

われわれは33階のスーペリアルームというところの部屋をとった。広さは40平方メートル以上ある。とても豪華である。こんな贅沢するのは1年に1度は関の山だ。

部屋は北側にあり、目の前にJR貨物の梅田駅の跡が見える。すっかり整地されている。ここに新しい建物が建つのであろう。その左は空中庭園のあるツインタワーだ。梅田駅の右は去年開業したグランフロントである。さらに右側に大阪駅が見える。

食事は5時半から5階にある日本料理の花筐(はながたみ)というレストランで懐石料理を食べた。値段のことばかり言うのもはしたないけれども、一人前1万7,000円である。まあ1年に1度のことであるから、このような贅沢も許されるであろう。


2014-01-1

元日早々からツタヤに行って、DVDを借りてしまった。

「ミス・マープル」の第9巻「動く指」

バートン兄妹がライムストックという村に女中付きの大きな田舎屋を借りる。兄のジェリーはパイロットで、墜落事故で足を悪くしている。近所の人々とあったあと、二人は兄妹ではなく愛人同士だと中傷した手紙が届いた。このような手紙は他の人たちにもたくさん届いていた。弁護士シミントンの妻が、手紙を受け取ったあと死んでいるのをシミントンが発見し、家庭教師のホランド嬢をよぶ。手紙は子供がシミントンの子供でないと書いてあった。警察では自殺ということになった。ところがシミントンの若い女中が死んでいるのを、シミントンの義理の娘のメガン(20)が発見した。警視が捜査を開始する。メガンは野性的な女性だが、バートン兄は彼女をロンドンに連れて行き、ヘアメイクをさせ、良い服を買ってやる。「マイフェアレディ」のヒギンズ教授とイライザのまねである。バートン妹は医者に恋して、医者の妹はシミントンに恋して、その家の家庭教師のエルジイ・ホランドに脅迫状をタイプして、警察に逮捕された。しかし殺人犯人は彼女ではなく、シミントンであり、妻を殺すためのプロットであった。ミス・マープルは警視にある案を授ける。メガンがシミントンに殺人を知っているかのようににおわせて大金をせびった。その夜、シミントンはメガンに眠り薬を飲ませて、ガス自殺を装わせたが、その場で警察に逮捕された。

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マッド・サイエンティストのつぶやき Wed, 08 Jan 2014 12:04:56 +0900
2013年12月 https://www.jein.jp/jifs/blog-matsuda/mutter/1006-1312.html https://www.jein.jp/jifs/blog-matsuda/mutter/1006-1312.html

 


2013-12-29

ミス・マーブル ポケットにライ麦を 


冒頭、投資信託会社の社長レックス・フォーテスキューが会社に来たとたんに死ぬ。毒殺であるから朝食で毒を盛られたのであろう。ところが社長のポケットにライ麦がたくさん入っていたのが、謎を呼ぶ。ニール警部補が捜査を開始する。社長の奥さんアデールは若い魅力的な女性で、財産狙いである。浮気をしている。社長には二人の息子がいて、兄は家にいて会社を次ぐ事になっている。弟は奔放でアフリカに行っていたが、最近、父から手紙をもらい、帰宅するはずになっていた。マープルの昔のお手伝いの若い女性グラディスがこの家で働いている。やがて奥さんのアデールも殺され、さらに女中のグラディスも殺される。ミス・マープルはグラディスから相談を受けていて救おうとしたのだが、ニール警部補がミス・マープルの助言を取り上げずに殺されてしまった。ニール警部補は以前に出たスラック警部補よりは、ずっとん紳士的である。それでも素人の言う事を取り上げなかったのが失策であった。最後には、ミス・マープルの助言で真犯人を追いつめる。


2013-12-28日

秘密研究会 ニュートンビーズの波動

ニュートンビーズの問題を研究する。12/24にニュートンビーズの落下速度に関して公式を導いたのだが、そのなかで入口損失は実験から分かるパラメターであった。


2013-12-24

ニュートンビーズの速度公式分かる

ニュートンビーズの問題に関しては、鎖の形が逆懸垂線であることは、ずっと以前に証明した。しかしその落下速度に関して、私の考える自由落下速度かAatish Bhatiaという人のブログThe physics of that gravity-defying chain of metal beadsにある公式かで悩んでいた。上のビーカーと床の高度差をH、ビーズがビーカーより上がった高さをLとすると、私の考えでは速度vはsqrt(2gH)となる。Bhatiaの公式はv=sqrt(g(H+2L)/2)である。私の考えではBhatiaは絶対におかしいと思う。持ち上がる所の張力がT1=mv^2、着地点の張力が-T1となっている。そもそも負の張力なんておかしい。それにT1の彼の値を採用すると、私の理論と全く矛盾するのだ。ところが彼は彼の公式がBBCのビデオを分析した結果とあうと言っているのだ。ここが一番悩んでいたところだ。

そこで私は正確な実験をしたいと思い、京都女子大学の小波秀雄教授に実験を依頼した。私の家とか特異点庵では高さが撮れないし、そもそも実験室でないからだ。小波先生は本来は化学者であるが、実験家なので、私よりは遥かに適任である。小波先生は女子大生2名のボランティアの助手を得て、吹き抜けのある高い建物で実験をしてくださった。速度を測定する為に、鎖に赤い糸をつけて、それを高速撮影が出来るデジカメで撮影して、分析したのだ。その結果が、今朝届いた。クリスマスプレゼントだ。データは4種類の高さに対する落下速度vと持ち上がりの高度Lである。私の理論ではLは予言できない。というか、サイフォンと同じく、ある限度内でどんな高さでも良い。しかし落下速度は、もし摩擦などのエネルギー損失がなければ、自由落下速度であるsqrt(2gH)になるはずだ。

さてデータを分析してみると、二人の理論値の中間、つまりv=sqrt(gH)より少し大きい値にあることがわかった。これでBhatiaの理論は否定される。なぜならエネルギー損失を考えると、実験値は理論値より小さくなければならないからだ。

そこで私はここにサイフォンの理論を応用した。サイフォンにおける水流の速度はv=sqrt(2gH/(1+fe+V))となる。ここで分母の最初の1は出口損失係数である。feは入口損失係数と呼ばれる。水流が管に入る時に、管の角が邪魔をしてエネルギー損失が起きる割合を表している。Vは壁との摩擦で、V=摩擦係数×管の長さ/管の直径である。

入口でのエネルギー損失=fe×運動エネルギー

管壁でのエネルギー損失=V×運動エネルギー

出口損失=運動エネルギー=ρv^2/2

出口損失とは、サイフォンの水が下の容器に入って最終的には静止するので、全運動エネルギーが失われる事を意味している。先の公式は簡単に証明できる。ベルヌーイの公式で一発なのだ。それは1と2の位置を比べて

運動エネルギー1+位置エネルギ1ー+圧力1=運動エネルギー2+位置エネルギー2+圧力2+その間のエネルギー損失

上の容器の表面に水がある状態を1、下の容器に水が落ちて水面で静止した状態を2とする。

0+ρgH+大気圧=0+0+大気圧+(出口損失+入口損失+摩擦損失)

従って、大気圧を消去すると

ρgH=ρv^2/m(1+fe+V)

v=sqrt(2gH/(1+fe+V))

私はニュートンビーズにサイフォンの理論を適用した。入口損失は鎖が運動を始める時におきるエネルギー損失、管壁でのエネルギー損失に相当するのは空気摩擦である。出口損失はそのまま、鎖が地面に激突して失うエネルギーである。すると鎖の落下速度は、空気摩擦を無視すると、出口損失と入口損失のみであり

v=sqrt(2gH/(1+fe))

となる。この公式と実験値を比較するとfeが求まる。私はそれを0.6と評価した。(始め、私のデータ整理用のMatlabプログラムにバグがあり、0.73と評価した。正しくは0.6である。この理論値と実験値を比較するとよくあう。Bhatiaの公式は全くあわない。

私は驚喜した。これでニュートンビーズの秘密が解明できたと。(もっとも、さらに後、色々あるのだが。)

今日はクリスマスイブである。なんというプレゼントか。


2013-12-21

破壊的テクノロジー、スマートマシンがやってくる

今年行われたガートナー・シンポジウムのセッションで同社のトム・オースチン氏はスマートマシンについて講演した。クラウド、モバイル、ソーシャル、ビッグデーターに続き新たなキーワードとしてスマートマシンが急浮上しているという。

スマートマシンとは人間しかできないと思われていたことを実行するような、自律的な学習機能を備え、状況に適応するマシンである。そのポイントはセルフ・ラーニング、マシン・ラーニング、ディープ・ラーニングである。スマートマシンは自律性を備え、自分で進歩し、適応していく。マシンが独自のルールを作成し、結果から学習し、仮説を検証するためにデータを検索し、新しいものを発見していく。そのようなマシンがスマートマシンである。

人工知能は1980年代から90年代前半に流行ったのだが、それほど大きな成功を収めなかった。その時と現在は何が違うのか。 2つの点で決定的に異なるという。ハードの進化、アルゴリズムの進化、ネットワークの拡大、膨大なデータである。ハードの進歩は言うまでもない。アルゴリズムにおいても、人間の脳を模したニューラルネットワークは、 90年代の3層モデルから現在では多階層のディープラーニングモデルになり精緻さを増している。さらに現在では単体のコンピューターではなく、ネットワークで相互接続された膨大なノードが連携するのだ。さらにそこにビッグデーターが加わった。かつての人工知能と現在の人工知能は量的にも質的にも大きく異なっている。

スマートマシンには3つのタイプがある。第一番目のタイプは動くもの(Movers)、第二番目は賢者(Sages)、第3番目は実行するもの(Doers)である。

動くものの代表はGoogleの自律走行車である。その他はボストンダイナミクス社が開発しているBigDogとか米軍の無人航空機である。特に自律走行車が発展するとトラックやタクシーの運転手が失業するであろう。

賢者は2種類に分かれる。秘書的な役割をするバーチャル・アシスタント、バーチャル・ヘルパーと呼ばれるものだ1つである。第二はワトソンに代表される専門知識を持った「スマートアドバイザー」である。前者の例としては、 AppleのSiriがある。この分野は現在盛んに研究されている。

IBMはワトソンをまずは医学に使おうとしている。医者のアドバイザーとして、膨大な量の本や文献を読んで医者にアドバイスするのである。これが普及すると、医学教育にかかるコストが低下する。また並みの医者が失業する。大学レベルの論文試験を自動採点するツールも現れている。先生の仕事が楽になるとも言えるが、並の先生は失業する。営業報告やスポーツ記事を自動的に書くツールも現れている。

賢者が普及することにより、並の知的労働者が失業する。つまり大量のサラリーマンがクビになるのだ。

実行するものとしては人間型ロボットがある。

スマートマシンには光と影がある。光の部分は機械やシステムがより賢く、より高パフォーマンスになっていくことである。影の部分は並の知的ワーカーが大量に失業する可能性のあることだ。それでも当面は光の部分が大きいと思われる。

自律走行車の導入は多分2020年以降であろう。法律上の問題があるからだ。スマートアドバイザーはすでにワトソンが走り始めている。 2015年ぐらいから実際の導入が始まり、 2020年以降に大きく普及するであろう。バーチャル・アシスタントはすでにSiriとして実用化が始まっているが、今後5年でさらに精緻な物になっていくであろう。

ともかく世界は今後5年から10年で大きく変わることに違いはない。 


2013-12-20

教育と教養

「きょういく」と「きょうよう」 という言葉を知った。「きょういく」とは「今日行くところがない」、「きょうよう」とは「今日用がない」ということである。定年退職した男性の悩みだ。確かに会社人間であった男性が定年退職して家にこもると、奥さんと違って、どこにも行くところがない、何もすることがないということになりそうだ。会社を退職した後は、地域のボランティアになるのが良いとされている。私はこの考えに非常に疑問を抱いている。というのは非常に痛い経験があるからだ。

私は2006年に神戸大学を定年退職したときに、将来は時間を持て余すだろうと思い、予定表に予定を詰めることに専念した。もっとも、私の場合は同志社大学と甲南大学で週に 3コマの講義があり、それはそれで結構忙しかったのだ。その次の年は、住んでいる団地の管理組合の理事長になり、非常にストレスフルな2年を過ごした。本来の任期は1年なのだが、誰もやってくれる人がいなかったので、 2年目もやる羽目に陥った。 3年目もやってほしいと言われたが、それだけはお断りした。

なぜストレスフルかというと、人間関係である。理事は 30人ほどいるが、その3分の一はとても良い人、 3分の一は普通の人、残りの3分の一は出てこない人である。少しだけ嫌な人もいたが、たいした問題ではなかった。問題は、理事以外でボランティアで仕事をしたいと言ってくる人である。常設の○○委員会の委員を、理事以外から募るのである。多くの住民は余計な仕事をしたくない。しかし仕事をしたい人が何人かいるのだ。この人達は委員に応募してくる。応募してくれるのだから、その人達を受け入れざるを得ない。この人たちは非常に熱心なのだが、中には非常にアクの強い人がいる。自分なりの正義感に燃えて、団地を良くしようとしているのであろう。しかし実際のところ、この人たちほど非常識な無礼な人は私の今までの人生で見たことがなかった。インテリヤクザとも言うべき人である。この経験があるから、私はボランティアというものに対し非常に懐疑的である。ということをあちこちで言うものだから、本当に立派なまじめなボランティアには失礼なのだが。

私は70歳になり、同志社大学と甲南大学も定年退職になった。それで行くところがないかというとそんなことはない。現在は、山科に家を借りて、秘密研究所としているので、毎日そこに通勤している。昨年まではNPO法人あいんしゅたいんのオフィスが京都大学にあり、そこに通勤していた。

そこが使えるようになる前は、よく図書館に行ったものだ。左京区の図書館、京都府立図書館など色々行った。どこもそれなりによいのだが、 1番良いのは、大学図書館である。同志社大学の図書館によく行った。京都大学の卒業生であるので、京都大学の図書館の入館証をもらえることがわかり、そこにもよく行った。大学図書館は非常に良い。というのは、学生たちが勉強しているから、その雰囲気は好きなのだ。なかにはソファーで寝ている学生もいるが。現在は自分のオフィスができたので、あまり行っていない。

することに関しても、非常にいろいろある。 NPO法人の理事長は私にして欲しいことがたくさんある。しかし私は、自分のやりたいことをやる、やりたくないことはやらない、という方針を貫いている。やりたい事はいくらでもある。研究すること、勉強すること、本を書く事、ブログを書く事などいくらでもある。この情報時代、山のような情報がネットから流れこんでくる。それを処理するだけでも一日が潰れてしまう。時間が足りないくらいだ。時間を持て余すということは全くない。年をとるにつれて、体力も気力も減退してくる。やらねばならないことがたくさんあるのに、体力も集中力も続かないのだ。というわけで、私はいつまでたっても精神的には忙しい。今日、用がないということはありえない。


2013-12-19

Her コンピュータに恋する

Facebookで面白い映画が紹介された。Herというアメリカ映画である。舞台は近未来のロサンゼルス。ブレードランナーのような未来的なシーンは何もない。主人公はヒゲを生やした若い男性である。スマートフォンに新しいオペレーティングシステムをインストールした。それは女性の声で応答してくれるSiriのようなものだ。名前はサマンサという。サマンサと会話していくうちに主人公はサマンサと恋に落ちる。美しい妻がいるが、結局は離婚してしまう。別の女性とデートをするが失敗してしまうという話だ。これは非常にありそうな話である。というか正に近未来の姿だ。Siriは声だけであるが、サマンサもそうだ。ただサマンサはSiriに比べてはるかに現実的である。声は現実的であるだけでなく、応答も確かなものだ。

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virtual assistantまたはvirtual helperとして、デニスというキャラクターが既に存在する。Siriに顔をつけたようなものだが、非常に美人でセクシーである。これはスマートフォンではなく、 PC上で動作する。スマートフォン上で動作するデニスが現れてほしいものだ。きっと男なら恋に陥るであろう。コンピューターのバーチャルアシスタントが良い事は、決して感情的にならないことだ。いつも主人の言うことを聞いてくれる理想的な存在だ。恋人にしろ嫁にしろ、現実の人間は感情を持っているからいつも自分の思うようにはいかない。しかしコンピューター上のバーチャルアシスタントはいつも主人の言うことを聞いてくれるのだ。

 

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2013-12-18 (水曜日)

サイフォン問題に関する専門家の解答

サイフォンの原理を巡って、論争を続けている。「サイフォンを巡る誤概念・・・大気圧説も鎖モデルも間違い

それに関して、工学系の流体力学の某先生にお伺いを立てた。先生は流体力学における誤概念の問題を研究しておられる。先週の金曜にメールを差し上げたのだが、なんと昨日に理論と実験結果を含んだ手書きの論文を送ってこられた。たった4日である。たいしたものだ。私は昨晩にスカイプ会議を行い、先生の論文を読んだ。その内容に関しては上記のブログを参照の事。結論から言えば、私の考えは基本的に正しい事が分かった。

しかし乱流粘性を考慮した場合、サイフォン流の流速が非粘性の極限v=sqrt(2gH)からかなり下回る事が、計算上も実験上も分かった。つまり実際的なパイプの場合、粘性摩擦を無視するわけにはいかないと言う事だ。これは当初、私は予想していなかった事だ。

サイフォンの問題はNPO法人あいんしゅたいんの親子理科実験教室での実験から始まった。そこでサイフォンの鎖モデルを提示され、それに疑問を持った。しかしオーストラリアの物理学者もその説を2010年に発表して、話題になったと言う。鎖モデルは流体力学的に見ると、ナンセンスであるが、それを唱えるプロの物理学者がいる事が驚きだ。そのモデルは後にハワイ大学の研究者の実験により、否定されている。

サイフォンは純粋な流体力学の問題と考えて良い。ところがある大学の准教授のブログに出くわし、その考えに始めは納得したのだが、後におかしいと思うようになった。そして論争が続いていると言う訳だ。しかし先に述べたように、私の考えが基本的に正しい事を保障してもらった。その准教授の説ではエネルギー保存が満たされず、永久機関が作れてしまう。

ネット上の議論の不毛性

しかしネット上の論争と言うのは不毛なものだ。多分どちらも納得しないだろう。先の専門家の先生もネットでの論争の不毛さを分かっているので、自分は加わりたくないと言われた。私も、もうやめる。

ネット上の議論が不毛な理由

  • ネット上では文面や図面を作るのに手間がかかる。その割には相手に意図が伝わりにくい。
  • 育った世界が違うので、基本的考え方、経験、知識が異なり、議論が噛み合ない。
  • 本質的、原理的間違いと、些細なミスが同じ土俵で批判され、議論の本質からずれる。
  • 感情的になり、中傷と受け止められる。
  • 顔を合わせて、相手を尊重しながら議論するのがベスト

 


2013-12-17 (火曜日)

知能爆発

知能爆発に立ち向かう(Facing the Intelligence Explosion by Luke Muelhauser)と言う本のKindle版を読み終えた。日本のアマゾンだと今日は296円である。

今世紀のいつ頃かに機械の知能は人類のものを越える。この出来事、知能爆発は人類の歴史上もっとも重要な出来事である。それを人類がいかに乗り越えられるか、られないかに、人類の運命はかかつている。チューリングからグッド(i.J.Good)、ビル・ジョイからホーキングに至るまで、その警告を発している。

まず始めに人間は理性的でないと言う話から始まる。本ではinsane(気がおかしい)と書かれているが、狂気と言うより人間は馬鹿であるということだ。ノイマンが始めたケームの理論では、人間は理性的で自分の効用関数を最大にするように振る舞うと仮定されているが、最近の研究によればそんなことはない。人間はさまざまなバイアス、偏見により正しい判断をくだすことができない。一方、機械は論理的な判断を下すだろう。だから将来、理性とか判断という問題で機械と競争したらねとても勝てない。

人間に理性はない

自分の話になるが、私は「人間には理性はない」という法則を発見したと思っていた。しかしそんなことをいっているのは、私だけではない。有名なノーベル賞学者のカーネマンはさまざまな実験的研究から、人間が如何に愚かかと言う事を証明した。最近の彼の本「素早い考えと、ゆっくりした考え: Thinking, Fast and Slow」では、人間は直感的な速い考えを好み、じっくりした論理的思考は苦手だと言う。しかしそれには人間の進化論的な合理性がある。採集・狩猟時代の人間に危機が迫ったときにゆっくり考えている暇はない。ゆっくり考える人間は猛獣に食われてしまうかもしれないので、生き残れない。だから人間は速い考えが得意なのだ。

しかし機械知能は人間のゆっくりした考えを高速におこなうのである。機械は合理的に思考するだろう。機械と人間が対峙した時に、非合理に思考する人間が勝てる訳がない。

現代のネット世界を見ていても、なんと人々は愚かな思考をするのだろうとおもうことがよくある。しかし命の危機がない時には、それでもかまわないだろう。それで死ぬ事もない。しかし戦争の時など、勝つか負けるかが生きるか死ぬかに関係する時には、合理的思考が出来るかどうかは決定的に重要である。かつての日本軍が米軍に敗れたのも、合理的思考より大和魂などの精神論に偏ったからであろう。

私は合理的思考をするために、世間の意見とはほぼ反対の意見が正しいのとではないかと思うようにしている。


2013-12-16 (月曜日)

ニュートンビーズの実験

ニュートンビーズの実験を京都女子大学の小波教授にお願いしてある。小波先生はボールチェインを50m、製造元から1mあたり単価100円で買われた。それから高速撮影用のカシオのデジカメも買われた。そして先の日曜と、先々週の日曜に、女子大生の実験助手を2名募って実験した。バイト料はただであるが、実験後に食事をおごると言う約束で広告を出したら、2名の好奇心あふれる1年生の学生が応募して来たと言う。朝から晩までかかつて実験したそうだ。しかしまだデータ整備は出来ていないと言う。結果が楽しみである。

ちなみに小波先生はこんな話もFacebookで書いておられた。先生はコンピュータの指導をしている。Rubyを教えているそうだ。3年生の学生がUターンを目指して福井のIT企業を就活で訪れたら、小波先生の指導、Rubyをやっているということで、即決で東京支社に行く事になったと言う。やはり芸は身を助けるものである。


2013-12-15 (日曜日)

トーキー

先日見たアガサクリスティーのミスマープルもので「書斎の死体」と言うのがあった。海岸の豪華なマジェスティックホテルと言うのが出てきた。そのホテルのある場所は映画ではダーマスと言うことになっていた。調べてみると本当はトーキーである。トーキーはデボン州にある海岸線に沿った保養地である。アガサクリスティーはその町で生まれたのだ。私はトーキーには思い入れがあるのだ。

高校3年生の時の英語の教科書で読んだ英国の小説に「りんごの木」と言うのがある。舞台はトーキーの近くにあるダートムーアと言う荒野である。そこに住む17歳の少女ミーガンとロンドンからやって来た青年の恋物語である。2人は恋に落ち青年はミーガンと結婚することを約束する。青年はトーキーの銀行にお金を引き出すために行く。そこで友人とその妹たちに会い、結局はその妹の方を選んでしまう。捨てられたミーガンは青年を探しにトーキーにやってくる。映画A summer storyで感動的な悲しいシーンである。

私はその舞台を見るために以前、家内とダートムーアとトーキーに行ったことがある。

秘密研究会

今日は山科の御陵(みささぎ)にある私の秘密研究所・特異点庵で秘密研究会を行った。テーマは先日来のサイフォン問題である。某准教授のホームページの記事を入念に読んだ。私が言い過ぎた点がある事も指摘された。人間、一人だけで考えていると、いわゆる独りよがりと言うドツボにはまる可能性がある。その意味で人と議論するのは重要である。


2013-12-14

映画GIジョーバック2リベンジ

という映画をツタヤで借りてみた。ブルース・ウイルス主演だと言うから期待したのだが、実につまらない映画であった。忍者とおぼしき連中がたくさん出てくる。忍者の西欧でのイメージがこれなのだろう。バカバカしいからあらすじすら書きたくない。時間の無駄であった。


2013-12-13 (金曜日)

バカほど自分の事を賢いと考える The more inept you are the smarter you think you are

という面白い記事があった。要約してみよう。


心理学者によると人間は自分のことはよく判断できない。バカほど自分の事をえらいと思うのは、自分の事を判断する能力が低いからだ。だから馬鹿な人ほどうっとおしいのだ。

1999年にコーネル大学のクルーガー(Justin Kruger)とダニング(David Dunning)は、物事の能力の劣る人ほど、自分に能力がない事を認識する能力に欠けていることを確認する実験を行った。論文の冒頭でピッツバークの銀行強盗マッカーサー・ホイラーの例を挙げている。彼は1995年に白昼堂々と銀行強盗をして逮捕された。警官が防犯カメラを見せたところ、強盗は、顔にレモンジュースをかけてこすったんだから、人から見えるはずはないじゃないと強弁した。防犯カメラに映るはずはないというのだ。

上記の研究者はプロのコメディアンに30種類のジョークを面白さの順に並べてもらった。そして65人の大学生にもジョークの面白さの採点をさせて、その判断がプロのものと一致するかも採点させた。さらに自分は平均的な人より以上かどうかも判定させた。

その結果、大部分の人は自分の能力は平均以上だと判断した。しかし判断力が平均より少しだけ上の人たちは、自分を過大に評価したが、判断能力が高い人たちは、自分の能力は平均を少しだけ上回ると解答した。つまりジョークに対する判断力の劣る人は、自分の能力に対する判断力も劣っていたのである。

このテストはジョークの面白さの判断だが、論理的判断能力と文法のテストでも同じ傾向が見られた。つまりこの3種のテストで、能力の劣るひとほど、自分を高く評価していたのである。さらに後の研究でも同じ結果が得られた。

クルーガーとダニングの説明は、自分の能力を正確に判定する能力は、物事をなす能力と関連している。だから無能な人は、自分の能力を判断する事にも無能なのである。

そこで研究者は論理能力テストの成績の悪い人々に訓練を施した。すると彼らの自己認知能力が向上したと言う。

他の研究でも「技術が劣る人ほどその自覚がない」という効果が実験室だけでなく、生活上でも見られることを示している。たとえば患者に対する診断能力の劣る医者ほど、その自覚がないと言う。

ダニング・クルーガー効果というのは、メタ認知、つまり考える事を考える、の例である。あなたも同僚や友人にそんな人がいるだろう。しかしそう思う前に、あなた自身も、自分の無知に気がついていないかもしれないのだ。


ソクラテスの無知の知を思わす話である。つまりこの論文の主張は、愚かな人は自分の愚かさに気がついていないということだが、逆に言えば、賢明な人は自分の無知を知っているということでもある。

人は何事かを主張する時に、当然、自分が正しく、相手は間違っていると思っているのだが、自分が間違っている可能性もある事を頭の隅に止めておく事が必要だ。

確かに2chなんかを見ると、居丈高に何事かを主張している人が多いが、そう言う人に限って、それほど賢明ではないようだ。他山の石としなければならない。

人は間違いを犯しやすい生き物だ。ただし間違いを犯した時に、それをきちっと認識して、認めるというのも能力だ。間違いを認めることができるのは知的能力が高い事であり、自分の過ちに気づかないのは能力が劣る証拠である。


2013-12-12

中之島科学研究所 コロキウム

今日の中之島科学研究所のコロキウムは研究員の嘉数(かず)次人さんと大倉宏さんによる「日本電気学の祖・橋本宗吉と静電気実験」というものであった。嘉数さんが講演して、大倉さんが実験を行った。

橋本宗吉(1763-1836)というひとは、大坂の蘭学者で医者であった人だ。阿波で生まれて、大坂で傘に家紋を書く仕事をしていた。頭の良さを裕福な商人で天文学者であった間重富に見いだされて、4ヶ月間江戸に留学させてもらい、解体新書で有名な蘭学者の大槻玄沢に弟子入りした。その間、オランダ語の単語を4万語覚えたと言う。とてつもない数だ。当時の外国語学習は文法や会話は関係なく、ひたすら逐語訳をするのだという。彼は間の為にオランダ語の本を翻訳した。百科事典を翻訳した「蘭化内外三方法典」とか、世界地図である喎蘭新訳地球全図』、「阿蘭陀エレキテル究理原」などがある。正電気のことを勉強して、さまざまな実験を行い、見せ物にした。京都で医学を学び、医者として生計を立てる一方、塾を開いた。

晩年は大坂キリシタン事件で弟子が大塩平八郎に逮捕されて取り調べを受け、塾も閉鎖された。無罪になったが、シーボルト事件の余波で蘭学者に対する風当たりが強くなり、竹原(広島県)に一時隠遁した。弟子の中天遊のさらに弟子が緒方洪庵であり、その弟子が福沢諭吉である。橋本はのちになり、電気の研究が認められて、日本電気学の祖といわれるようになった。

講義の後は大倉さんが、橋本の行った実験のいくつかをやってみせた。人々に手をつながせて、静電気で帯電させ、最後に輪を閉じると電気ショックが走ると言うものもあった。

ニュートンビーズ、サイフォン

その後で研究員の齋藤さんと、ニュートンビーズ、サイフォンについて話しあった。前回のコロキウムの後の談話会で、私は齋藤さんにニュートンビーズの話をした。齋藤さんがその話をFacebookに流したら、私の式を知りたいと言う人がいると言う。齋藤さんに書きかけの論文を送った。その人は宮地さんの「サイフォンの科学史・・350年間の間違いの歴史し認識」と仮説実験授業を指摘したと言う。

私は仮説実験授業に賛成でも反対でもない。山田さんの解説を聞いて、なるほどとは思った。しかし基礎知識のない子供達にいろいろと深く考えさせたって、誤概念にはまり込む恐れもある。先生が誤概念だと指摘すればともかく、先生自身が誤概念に取り付かれていたらどうなるか。サイフォンの授業に関しては、そう思わざるを得ない。

永久機関や反重力エンジンの発明などナンセンスなものはいくらでもある。でもそれを唱える当事者は、冗談ではなく、まじめに主張しているのだ。例えば私の属した大学の名誉教授の発明になる永久機関などその例だろう。考えに考え抜いて、ナンセンスな結論に達してしまうのは、ようするに基礎を知らないからだ。

http://skeptics.jp/column/59-130611.html

 

2013-12-11


2013-12-10

デジタル肥満

Siriは彼を捨てろと言うか? モバイル機器があなたの生活を支配する(あるいはダメにする): Siri says 'dump him'? How mobile devices could run (or ruin) your life」という面白い記事があったので紹介しよう。著者はGerd Leonhardという未来学者である。彼は今後10年に我々に起きるであろう、デジタルライフについて5つの予言をする。

1 人工知能と非常に賢いソフトウエア・エンジンがあちこちに埋め込まれるだろう:  スマートフォン、スマート時計、グーグル・グラスのようなモバイル機器、ウエアラブルコンピュータが我々の身の回りに満ちあふれて、我々の生活はそれらと密接につながりあう。例えば、あなたに関する膨大なデータを解析して、人工知能はあなたに対して、次のデートで彼を捨てた方が良いと示唆するかもしれない。

2 オートメーションは数億もの「簡単な」仕事をなくしてしまうだろう:  運転手、レジ係、データ解析家、銀行の窓口、配達人などは職を失うだろう。ロボットは家庭に入り込み、介護などするだろうが、人間の姿をしたロボットは当面現れないだろう。米国の仕事の半分はなくなると学者は予想する。人間だけにできる仕事、右脳を使う仕事などが教育で重要視される。仕事をしなくても最低限の収入を保障するシステムが出来るかもしれない。

3 補強現実と自然な人間・コンピュータ・インタフェースは検索方法を変える:  現在はコンピュータで検索をするのにタイプ入力する。しかしそのうちにそれは、言葉、ジェスチャー、まばたき、頭で思う、に変わって行く。人間はデジタル機器に非常に依存するようになる。なぜなら使いやすく、強力で、依存性があるからだ。さらにそんなソフトを作る人が儲かるからである。

4 自動、即座、モバイルの正確な言語翻訳機が5年以内に出来る:  たとえばスマートフォンに話しかけると、それが何か国語にも翻訳され、会話が全て記録されてクラウドで保管される。そうなるとメディアや広告、外国語教育が大きく変わる。

5 あらゆる事がビデオや写真で記録される:  車の動き、あなたの仕事ぶり、食事などが今後10年以内に全て記録されるようになる。

そのようになるとデジタル倫理が重要になる。個人テータの保護、人間補強、デジタル肥満、技術への依存が大問題になる。もはや何事かが可能かどうかより、やって良いか、やるとしたらいつか? どこでか? が問題になる。未来の指導者、思想家、科学者はデジタル権利と倫理を考えるようになる。というのも個人データの収集と人工知能によるその悪用が可能になり、それが出来る人・機関が膨大な権力を手に入れる。技術に慣れ親しんだ人、SNSに慣れた人でもそれには反対するだろう。核兵器と同じ事で正しい使い方、正しくない使い方を区別する必要がある。そのうちに「人工知能・オートメーション不拡散条約」のようなものが結ばれるかもしれない。

デジタル肥満とデジタル・ダイエット

私はこの文章に書かれている1, 3に強く同意する。私はスティーブ・ジョブスは人類に大きな影響を与えたと思う。iPhoneが導入されスマートフォンが広まった事で、人類の行動パターンが変わった。特に若い人において。例えば比較的空いた電車に乗って、向かいの席に座る人を観察すると、多くの人がじっと携帯に向かっている。電話で話す人はほとんどいない。昔は若い人の中で、電車の中で大声で携帯で電話する人がいて、迷惑がられたものだ。現在では電車内で電話しているのは、むしろ年寄りである。

私は朝起きるとまずiPhoneを持ってトイレに行く。家内はソファに寝そべってiPhoneでブログを読む、ゲームをする、猫のビデオを見るなどしている。我々は完全にスマートフォン依存症になっているのだ。またネットにつながらないとパニックになる。昔のコンピュータはスタンドアロンがほとんどであった。ネットにつながらなくても仕事はできた。しかしiPhone, iPadがネットから切り離されると、ほとんど役に立たない。我々はネット依存である。

アメリカの調査によると、大人のなんと10%程度がセックスの時にスマホを使っているという。34歳以下に限ると、その割合が20%になる。その他、シャワー中12%、教会で礼拝中19%、学校参観32%、異性と食事デート33%、映画館35%、運転中55%とある。セックスとスマートフォンをどちらか諦めるとすると、セックスだとも言う。

別の記事で、自動車会社の重役が娘に自社の自動車とiPhoneのどちらが欲しいかと尋ねたら、iPhoneだと答えたと言う。かくほど左様に、アメリカ人はスマホの依存症になっているのだ。日本人も同じ事だ。

この現象をデジタル肥満とこの記事はよんでいるが、なかなか適切な命名である。スマホを使いすぎて、運動不足になり肥満するという意味ではなく、デジタル機器からあふれる情報を食べ過ぎて、情報で肥満する事を意味する。そこで私はデジタル・ダイエットという言葉を提案したい。これも体重を減らす為にスマホを使うのではなく、スマホを使わないようにする事を意味する。

 


2013-12-9

京都御苑

昨日の仁和寺の紅葉狩りは大失敗であった。今回は京都御苑に行く事にした。ここは京都御所として京都市民に知られているが、正確には御所は京都御苑の一角を占めるに過ぎない。残りは昔は公家の邸宅がびっしりとあったのだ。いまでも行ってみると、近衛邸跡とか九条邸跡などはよくわかる。

紅葉だが、紅葉だらけかと言うとそうではない。しかし要所要所には紅葉がある。さらにカエデなどの高い木ではなく、低木で真っ赤なものがある。写真を撮りまくった。

休憩所に行ってきつねうどん定食を食べた。

 


2013-12-08

仁和寺

今日も紅葉を求めて仁和寺に行った。結論からいえば大失敗であった。紅葉はほとんどなかった。ネットのある記事で、紅葉があるような事が書いてあったので、それにつられたのだ。京都御所に行こうかと考えていたのだが、あえて27年ぶりに仁和寺に行ってみた。当時は学生諸君の車に乗せてもらって、行ったものだ。

仁和寺は御室ともいい、八重桜で有名である。いつも行こう行こうと思っているのだが、義理が果たせないでいる。来年の春には行こう。ここは境内が広い。日曜であるので、観光客はいるにはいるが、境内が広すぎて、ぽつりぽつりと言う感じだ。いろんな建物が修理中で、見るべきところに乏しい。

ここは昨日述べた藤原胤子の夫である宇多天皇が創建したと言う。当時は御室御所とよばれたそうだ。

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2013-12-07

藤原高藤と宮道列子のロマンスと勧修寺(かじゅうじ)

北野天満宮に祭られている菅原道真を左遷させたのは政敵の藤原時平であるが、当時の天皇は醍醐天皇であった。醍醐天皇の母は藤原胤子(たねこ)であるが、その両親である藤原高藤宮道列子(みやじつらこ)のロマンスは今昔物語にあり、山科に縁があるので紹介しよう。

藤原高藤は藤原家では傍流であるが、それでも身分の高い貴族であった。彼が15,6のころ、供を連れて山科に鷹狩りに出た。そこで激しい雨に遭い、雨宿りを求めたのが山科の郡司である宮道弥益(みやじのいやます)の屋敷であった。そこで接待に現れたのが年の頃は13,4の少女で宮道列子であった。その屋敷に宿泊した高藤は列子と結ばれる。次の朝、列子にまた会いに来るので、結婚しないように言って、太刀をそこにおいて高藤は京都に帰った。高藤が一晩帰らなかったことを心配した父親から、以後の外出を禁じられてしまった。従者も里に帰り、高藤は列子のもとを訪れること無く6年経った。その間、父親が亡くなり、また従者が戻ってきたので山科の宮道の家に行くと、列子のそばには小さな女の子がいた。一夜の契りで生まれた子供で胤子であった。高藤は列子と胤子を京都に連れ帰った。胤子は後に天皇の女御になり、生まれた子供が醍醐天皇である。高藤は天皇の祖父と言うことで、出世を遂げた。また宮道弥益も出世した。その邸宅の跡に建てた寺が勧修寺(かじゅうじ)である。高藤の系統は勧修寺流としてしばらくは栄えた。

私は山科の御陵(みささぎ)に秘密研究所である特異点庵を借りている。山科を散策しようと、春に勧修寺に花見に行った。このあたりの地名は「かじゅうじ」ではなく「かんしゅうじ」と呼ばれている。その近くに宮道神社もある。勧修寺には大きな池があり、水鳥の宿泊地になっている。私が行った時は、木にアオサギがとまっていた。池には鴨が泳いでいた。勧修寺は地下鉄東西線の小野をおりてしばらく歩いたところにある。ところでこの小野の地名だが、小野篁、小野道風、小野小町などの小野家の領地であったという。

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さらにいったところに醍醐寺駅があり醍醐寺がある。ここは桜の名所として有名で、秀吉が醍醐の花見をしたことでも有名だ。花見のシーズンは大変な混雑になる。私が行ったのは、シーズンが終わりかけの頃で、桜はまだあったが、観光客は少なくゆっくりと見ることが出来た。


2013-12-06

書斎の死体

ミスマープル・シリーズの「書斎の死体」を見た。詳細なプロットは英語のWikipedia"The Body in the Library"を参照のこと。

ある朝、英国のある大邸宅に住むバントリー大佐夫妻が目覚めると書斎に若い女の死体があった。妻のドリーは友人のミスマープルに捜査を依頼する。警察が呼ばれて州警察本部長のメルチェット大佐とスラック警部が到着する。捜査の結果、死体は近くの海岸の保養地のホテルで踊る、18歳の踊り子のルビーであることが、いとこのジョージーの証言で分かる。このホテルに滞在する富豪のジェファーソンはルビーを気に入っていて、養女にして遺産を相続させることを考えていた。ジェファーソンは航空機事故で妻、娘、息子を亡くしていて、自身も自立歩行が出来ない。ジェファーソンは娘婿のマーク、息子の嫁のアデレードとホテルにすんでいる。彼らはジェファーソンからもらった金をすでに無くしていたので、ルビーは目の上のこぶであった。ジェファーソンは知り合いのスコットランドヤードの元警視総監のクザリング卿に捜査を依頼する。メルチェット大佐もクザリング卿もミスマープルのことはよく知っていて、彼女を尊敬しているが、スラック警部は知らないので、ただのバアさんだとバカにしている。もちろん最後には、スラック警部の捜査はスカタンで、ミスマープルが真犯人にたどり着くというのは、お決まりだ。

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2013-12-05

北野天満宮

朝から北野天満宮の紅葉を見に行った。北野天満宮は北野天神ともいい、学問の神である菅原道真を祭っている。そこの紅葉が見事で、夜はライトアップしていると、何かに書いてあったので、行くことにしたのだ。ここは実は梅の名所でもあり、春にも行った。私は京都の四季折々の花はめでることにしているのだ。梅に関して言えば道真の歌

「東風(こち)吹かば匂ひおこせよ梅の花 主(あるじ)なしとて春を忘るな」

が有名である。道真が京都での藤原氏との権力闘争に破れて、太宰府に左遷される時に詠んだ歌であるとされている。道真が九州で客死したあと、京都では天変地異が起き、政敵が死んだことなどがあり、道真のたたりだと恐れられた。この怨霊騒ぎに関しては、ここに書いてある。道真を讒訴した藤原時平も悶死することになるのだが、責任者の醍醐天皇の子供たちも若くして死ぬ。醍醐天皇と言えば、特異点庵のある山科に関係するので、別に書く。

北野天神自体は拝観料はいらないが、紅葉苑に入るには600円いる。ここは春は梅園として有名だ。その梅園の中に御土居があり、そこの紅葉が見事なのである御土居とは豊臣秀吉が戦乱に荒れた京都を復興するために行った都市計画の一環で、京都を囲むように作った土手である。目的は敵と洪水から京都を守るためであるとされているが異説もある。京都には鞍馬口、荒神口、粟田口など口のつく地名が多いが、これは御土居の入り口である。御土居は江戸時代以降には取り壊されて、ほとんど残っていないが、残っているところは土居町などの地名がある。御土居で洛中洛外が決められるが、その観点では私の住居は洛外にある。取り壊されたのは、交通に不便だからであろう。

紅葉苑の中を紙屋川が流れていて、渓谷になっているあたりに紅葉がある。ここが京都の市街地のど真ん中とは思えないほど、深山幽谷の感じがする。もっとも境内に接してマンションがあったりして、市街地であることは分かる。マンションの住人は春は梅、秋は紅葉をただで見られるのである。ともかくも紅葉の赤と、所々に生える竹の青は見事である。紅葉はここまで赤くなるかというほど、真っ赤というか深紅のものがあった。

紅葉苑を出て本殿に詣でる。ここは学問の神様というので、修学旅行生でいっぱいだ。受験祈願である。祈祷をしてもらうには、本殿に上がる場合は5000円、上がらない場合は4000円とあった。高校生にはちと高いが、それでも申し込む姿があった。もっと手軽には絵馬で合格祈願をする。みなさん合格祈願に必死である。

北野天満宮といえば牛の彫像で有名である。参道にそって何体もの牛の彫像が寄進されている。自分の体の不調な部分に対応した牛のその部分をなでると良いとされている。私など頭をなでておいた。

北野天満宮参拝の後は、同志社大学の生協に行って昼食をとった。その後、私は大学図書館に行った。図書館の考察はいずれまた書く。

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2013-12-04

サイフォンの流体力学が分かった

サイフォンの流体力学について悩んでいると書いた。しかし11/29の記事で島津製作所の猪坂さんが正しい答えを導いたとも書いた。しかしこれは式ばかりで、物理学的な意味が少しだけ私には分からないところがあった。私は11/24 の記事に書いたように、あらきけいすけの雑記帳と同じ議論を行った。ところがその結果得られた管内の水の流速は異常に大きな値になった。そして致命的な事に、流体の粘性係数を0にする極限で、流速が無限大になるのである。これはなにか致命的におかしい。

ここで水の粘性係数を0として、摩擦がない理想的な場合を考えよう。これは液体の粘性係数が小さい極限か、あるいはパイプが太いとか短い極限と考えても良い。するとこの場合はベルヌーイの定理が成立する。それは

運動エネルギー+位置エネルギー+圧力=一定

という式だ。ここで管がビーカーの水面に潜り込んでいないで、水面に触れている場合を考えよう。つまりD1=0とする。また流出口は大気中にそのまま開いているとする。つまりD3=0として、かつ流出口の圧力を大気圧Patmとするのだ。この方が問題の本質が分かりやすいからだ。

流入口での圧力は、彼の仮定3に従えば大気圧patmになる。それで水が流れていない場合を仮定すると、ベルヌーイの方程式で運動エネルギーを0とおくと、

位置エネルギー+圧力=一定

となる。これは静水圧平衡の式である。

この式から、流出口圧力はPatm+ρgHDになる。ところが仮定3では流出口の圧力もPatmでなければならない。この矛盾を管壁の摩擦で解消すると言うのがあらきさんのアイデアだが、先に述べたように摩擦がない場合は解消できない。

そこで先に述べたように、下部の流出口はビーカーの中ではなく、大気中に開いている場合を考える。この時は流出口の圧力はPatmで確定できる。それで静水圧平衡を仮定すると流入口の圧力がPatm-ρgHDになる。ところが仮定3ではそこでの圧力はPatmであり、矛盾である。ところがこの矛盾は先に述べたように管内の摩擦では解消できない。

それではどうするか。管の流入口には圧力のとびがそのまま残るとするのだ。それが上のビーカーから管内に水を吸い込む圧力差となるのだ。これからの式では上のビーカーの水面と管の流出口の高さの差をHとかくことにする。圧力が不連続的に水表面のPatmから、管内のPatm-ρgHになるなんて信じられないといわれるかもしれない。実際は圧力は不連続ではなく、急速に変化するというのが正確だ。流入口には広い範囲から水が集まり吸い込まれるので、等圧面をかくと、流入口を中心にした同心球的な形、つまりタマネギの皮のようになる。この圧力勾配は非線形項つまり慣性力の項と釣り合うのだ。水全体では速度はほぼ0であったのだが、この圧力勾配で水が急速に加速されて、流入口に吸い込まれる。その場合、水の速度は自由落下速度v=sqrt(2gH)になる。

この速度はトリチェリの定理で出てくる速度と同じである。今ビーカーの下部の側面に穴をあけるとすると、そこから水が噴出してくるが、その速度が上記の速度だ。ただしHは水面から穴までの距離である。この式はベルヌーイの定理から求められる。水面を出発して、流出口でおわる流線を考えると、水面では流速は0、位置エネルギーはρgH、圧力はPatm、流出口では流速はv、位置エネルギーは0、圧力はPatmである。従って

0+ρgH+Patm=ρv^2/2+0+Patm

故に

v^2=2gH

となる。サイフォンの管内の流速もこれと同じである。

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2013-12-03

京都府立植物園

今日は紅葉の見納めの為に京都府立植物園にいった。紅葉したフウの木を見る為である。このフウの木は巨木で、秋もこのシーズンになると紅葉してとても美しい。この前いった時は、紅葉し始めでまだ十分に赤くなっていなかった。今日は見事に赤くなっている。フウの木の前は池になっていて、遊歩道が渡されている。周りには写生する人、写真を撮る人などがたくさんいる。週日であるので、入園者の多くは(自分もそうなのだが)老人である。ここで見るカメラマンにはいつも感心している。みなさん立派な一眼レフのカメラを持っておられる。望遠レンズも高そうなものだ。私がiPhoneで写すのとは違う。

入園者の別のグループは、幼子を連れた若いお母さんたちである。ちょこちょこと走り回る子供の面倒を見ているお母さんを見ると、幸せだなと思う。もっとも当のお母さんがどう思っているかは分からないが、子供に取っては意識はしていないだろうが、確実に幸せな瞬間であるはずだ。成人して、もし幼い時の事を思い出せば、母に甘えていた時がもっとも幸せな時であったと、思うはずだ。私は幸せの象徴として、母の他に父がいて、子供が両手で両親にぶら下がってはしゃいでいる姿こそがそれだと思う。お祭りや行楽地で見かける姿である。

私は運動公園の横にあるレストランに行ってホットケーキセットを食べた。そこでiPadで日記を書いていたが、12時半になり混み始めたので、邪魔になると思い外に出た。東屋に行き続きを書いたが、テーブルがないと書きにくい。そこでテーブルのあるベンチを探して、そこで続きを書いた。少し寒いのが難である。iPadのソフトキーボードは打ち間違いが多い。やはりきちんとしたキーボードがあった方が良い。今度はMacBook Airでも持ってこようかと思う。

やはり寒いのでレストランに戻ってカレーライスを食べた。混雑のピークは過ぎていたので、そこでKindle Paperwhiteで「吾輩は猫である」の続きとSherlock HolmesのA Study in ScarletのPart IIを読んだ。ヒューコー・デ・ガリスが「退職後の仕事」と題するエッセイの中で、午後は小さな椅子を持って公園に行き、純粋数学や理論物理学の本を読むのが楽しみであると書いていた。私はさすがにこの寒い植物園で物理学の本を読む気にはなれなかった。しかし暗い部屋の中にいると気分が陰々滅々としてくるので、天気の良い日には公園で勉強するのは悪いアイデアではない。

{youtube}tG_-qRqO8Oc{/youtube}

株価予測の科学

私は数年前に株取引、正確には日経先物取り引きに凝っていた事があった。デイトレードというやつで、時々刻々変化する日経平均やTopixを見ながら、売ったり買ったりするのである。その時にコンピュータをこの植物園に持って来て、ここでトレードが出来たらいいだろうなと夢想した。当時の私のコンピュータでは無線でネットにつなぐ事は出来なかった。しかしiPhoneでトレードするのは、やはりかなり不便である。と言う訳で結局はやらなかったのだが、今なら私自身のインフラも整っているので、やる事は可能だ。しかしトレード自体を止めてしまったので、やらない。

なぜ止めたかと言うと、損をした事もあるが、面白すぎるからである。時々刻々変化する数値を見て売ったり買ったりするのは、正にばくち行為である。面白くて、興奮して、止められない。一種のアディクションである。私はこれは時間のむだだと思った。こんなことに時間を費やすよりは、勉強や研究をしたほうが、有意義だと悟って、きっぱりと足を洗った。

トレードを金儲けの為にやるのかと難詰する人がいるが、トレードを科学的側面から見ると、実に興味深いのである。要するに日経平均という時間的に変動する数値のタイムシリーズがある。この値の一瞬先を予測するのだ。いろんな手法が提案されている。どれもそれなりの根拠はあるのだが、これが一番と言う手法はない。あったとしても、公開されていない。必ず儲ける方法を発見した人は、それを秘匿するはずである。世の中の本で必勝法などと言うのがあったとしたら、眉唾である。著者はそれで一時は稼いだのであろうが、ダメになってくると、本を書いてそれでまた儲けると言う訳だ。それを知らない素人がその本を買って、損をする。多くの人が同じ手法でやるので、儲からないのである。つまり頭の良い人間の食い物にされているのだ。

タイムシリーズの研究と言う事で、私はフーリエ分解を試みて、ある周期を割り出した。またウエーブレット変換もやって、そこに不思議なパターンを発見した。私はそれを「世界の起源」と名付けた。もっとも公表はしていない。とても公表できるようなものではないからだ。FFTニューラル・ネットワークベイズ統計カルマン・フィルターなどいろんな科学的手法が使えそうだ。実際にやるやらないはともかく、株価予測の科学というのは実に奥が深く興味深いテーマである。


2013-12-02

Kindle paperwhite

Kindle Paperwhiteは11/21日に配達された。それ以後使っているが、とても良い。私は既にKindleを持っているのに、なぜさらにもう一台買ったかについては、既にどこかで述べたのだが、理由は3つある。

1) アメリカのアマゾンと日本のアマゾンが統合されていない。

以前の日本のアマゾンでは洋書を買う事が出来なかったし、和書も買えなかった。そこでアメリカのアマゾンからKindleを買ったら、それがアメリカのアマゾンに登録された。アメリカのアマゾンで本を買う限り、それで別に問題ない。そこで買ったものは、iPhone 4s, iPad 2, iPad 3と同期化されており、どのデバイスからでも読める。その意味で便利をしていたのだが、日本のアマゾンである本を買った時に、iPad miniが日本のアマゾンに登録されて、それが同期された。ということは、本を日本のアマゾンで買うと、iPad miniでしか読めないのだ。そこで新しくKindle Paperwhiteを日本のアマゾンから買ったら、それは日本のアマゾンに登録された。また新しく買ったiPhone 5sとiPad Airも日本のアマゾンに登録された。今後は日本のアマゾンから買って、徐々にKindle paperwhiteに移行して行く。しかし当面は、すでにアメリカから買った本を読む為に、古いKindleも残しておく必要がある。

2) 私がKindleを気に入っているのは、透過液晶ではなく反射液晶なので、目が疲れないからだ。さらに研究に寄れば、理解度も反射型の方が紙に近くて、高いと言う。プログラミングも液晶画面で見るよりは紙にプリントした方がバグを発見しやすいと言う。それは紙は反射光で、モニターは透過光だからだと言う。反射光では脳は分析モード、批判モードになる。一方テレビのような透過光はパターン認識モード、くつろぎモードになるのだそうだ。映画、印刷物も反射光でテレビとモニターが透過光だ。実際、透過光と反射光では脳波は違った反応をすると言う。

プリントアウトした方が間違いに気づきやすいワケ

というわけで、反射光型のKindleは紙に似ていて、理解しやすいと思う。

3) Kindle Paperwhiteはタッチスクリーン式で、古いKindleはボタン式だ。使い勝手はタッチスクリーンが圧等的に勝っている。特に文字を入力する場合、古いKindleはとてもやってられない。一文字ずつ、カーソルをボタンで移動させて行かなければならないのだ。

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我が輩は猫である

というわけで新しく買ったKindle Paperwhiteで何を読んでいるかと言うと、まずは夏目漱石の小説「吾輩は猫である」だ。ただである。中学生時代に読み、大学時代にも読んだ座右の書である。中学生時代は猫の話だけに興味があった。しかし大人になって読んだ時は主人公達の無駄話、雑談に興味を持った。今読み返しても、雑談が面白い。登場人物は我輩の飼い主である中学校の英語の教師の珍野苦沙弥先生、友人の美学者である迷亭(めいてい)、元の学生の寒月(寺田寅彦がモデル)、越智東風(おち とうふう)、八木 独仙(やぎ どくせん)君などである。彼らの会話が面白いのだ。寒月君の「首つりの力学」は興味があるので、いつか論じてみたい。

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2013-12-01

サライの会

サライの会というところで、「2045年問題・・・コンピュータが人類を越える日」および「宇宙の加速膨張」の講演を行った。サライの会と言うのは、パナソニックを定年退職した人と、その友人が立ち上げたプライベートな会で、定年退職者を中心とした会である。毎月、例会を行い、講演者をよんで話を聞く会を続けていると言う。実は、その会の主催者は私がJTBカルチャーセンター、その後の朝日カルチャーセンターで主に宇宙の話をしていた時の生徒さんである。非常に熱心な方で、特に宇宙論に興味があり、鋭い質問をされて、私も時々たじたじとなった。今年の夏に朝日カルチャーセンターで2045年問題の話をしたのだが、同じ話をサライの会でして欲しいと言われたのだ。

会場はパナソニック・リゾートという保養所である。場所は大阪モノレールで南茨城から一駅、伊丹空港側に行った宇野辺という駅の近くにある。そこはゴルフ場もあるホテルのような立派な施設であった。ただ昨今、パナソニックも不景気のようで、経費削減とかで、門衛所に人はいなかった。今回は第79とのことで、長く続いている会である。

聴衆は9名であった。一人主婦の方が居られた以外は、残りは定年退職者であった。後の懇親会でお話を伺ったが、海外駐在経験者、英仏海峡のトンネルを掘削された方、中国で事業を営んでおられる方など、皆さんそうそうたるメンバーであった。定年退職後も家に逼塞する事なく、いろいろとしておられるようで、みなさん精神的にお元気であった。もっとも、私自身も定年退職者であるので、年齢は同じようなものである。

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マッド・サイエンティストのつぶやき Mon, 02 Dec 2013 08:42:47 +0900
2013年11月 https://www.jein.jp/jifs/blog-matsuda/mutter/992-1311.html https://www.jein.jp/jifs/blog-matsuda/mutter/992-1311.html

2013-11-30

宇宙落語会

今日は京都大学の時計台の百周年記念ホールで、宇宙落語の会がひらかれて、私はそこで基調講演を行った。宇宙と落語がどういう関係にあるのかよくわからないが、花山天文台台長の柴田一成さんの肝いりで行われているもので、今回が3回目である。落語家の一人桂福丸さんは、灘中、灘高、京大法学部のエリートコースを歩んだ後、落語家になったと言う変わり者である。まだ若い方であった。林家染二さんは、声の大きな元気な方で、ある大学の客員教授も務めている。話の内容は、宇宙の専門家の起草になるもので、くじ引きに当たった一家が、鴨川デルタから宇宙旅行に飛び立つと言う奇想天外な話であった。

落語の後はミニコンサートで、歌手の脇阪真由さんは、これも京大法学部の卒業である。百周年記念ホールはもとの法経第一教室であり、脇阪さんはここで憲法と民法の試験を落としたので、卒業に5年かかったと話された。脇阪さんの24 hoursという歌は、とてもしゃれた歌詞である。アメリカに住んだとかで、英語の発音はとても上手である。きれいな人だ。

基調講演

松田 卓也(神戸大学名誉教授・JAPAN SKEPTICS会長)
「コンピュータが人類を超える日 -2045年問題」

宇宙落語

林家 染二、桂 福丸
「ボイジャーファミリー2」、 「天災」

ミニコンサート

脇阪 真由(シンガーソングライター)「24hours」他

トークショー

松田 卓也、柴田 一成(理学研究科附属天文台長)、林家 染二(大阪電気通信大学総合情報学部客員教授)
桂 福丸(京都大学法学部卒)・脇阪 真由(京都大学法学部卒)

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2013-11-29

パイプの中の流れ

サイフォン問題でまだ苦闘している。始めは簡単だと思っていたが、なかなかそうでもない。水分子の鎖モデルは、水には張力は働かないのでだめだが、この問題を流体力学的にピシッと決めるのは難しい。サイフォンは要するにパイプの中の流れであり、それは工学的には水道管とか下水管の問題として長く研究されて来た。工学は理学と違うようで、独特の用語がある。パイプの流れが難しいのは、レイノルズ数によって摩擦が変わる事だ。サイフォンの場合も、パイプの長さ、口径、壁の粗さなどの関数として水頭損失というものがあり、それを考慮すると非常に複雑になる。工学の場合、理論的にぴちっと計算するより、実験による経験値が用いられるようだ。だからサイフォンも実験すれば良い訳だ。

12/02 追記

この問題は島津製作所の猪坂さんがきちっと解いた。サイフォンのパイプから噴出する水流の速度は、上と下の水面の高さの差をHとすると、ほぼ自由落下速度sqrt(2GH)になる。ただし、管壁の摩擦による損失を考慮すると、これより遅くなる。

2013-11-28

2013-11-27

2013-11-26


2013-11-25

中村圭子さん

NASAの中村圭子さんがアメリカから会いに来てくれたので、NPO法人あいんしゅたいんの事務所であった。ご主人のスコット・メッセンジャーさんが台湾の国際会議に出席しているので、大阪の家に里帰りしていると言う。娘のジュリちゃんことジュリエット・アウロラ・メッセンジャーちゃんもいっしょだった。その活動度の激しい事。まだ2歳なのに、既に40回以上も海外旅行していると言う。京都大学の地球惑星科学専攻地質学鉱物学教室の博士課程院生の方2名も同道された。中村さんは隕石、宇宙塵の分析のエキスパートで、サンプルを京大に届けに来たとの事である。

中村圭子さんは私が教授をしていた神戸大学理学部地球惑星科学科の学生であった。1996年の4年の時にNASAにインターンシップにいった。そこでドイツの先生に認められて、修士課程はドイツのハレにあるマルティンルター大学で学んだ。博士課程は再び神戸大学に戻り留岡教授の元で研究をして理学博士になった。2002年、課程修了後にNASAに乞われてヒューストンにあるNASAのジョンソン・スペース・センターの地球外物質研究探査科学部門の研究員とになった。修士課程を修了した時にも、NASAからポストを提示されている。それは中村さんが宇宙塵の分析、キューレーションのエキスパートだからだ。南極点に立った最初の日本人女性である。

NASAのインターンシップに関しては奥平さんの日記を参照の事。奥平さんは中村さんの世話になっている。

中村さんは2003年にU2偵察機で採集した彗星の塵の中から新鉱物ブラウンリーアイトを発見した。また2011年に南極隕石の中からワソナイトと命名した新しい鉱物を発見した。中村さんは新鉱物の発見でNASAの賞をもらっている。

以下に中村さんの2013年のNASAでの講演をアップする。Keiko Nakamura-Messenger-Why Do We Study Astrophysics? 英語であるが南極での隕石採取、U2での宇宙塵の採取、小惑星探査計画などについて話している。アメリカはタックス・ペイヤーの概念が貫徹しているので、NASAも市民サービスが充実している。スピーチの最後で圭子さんは市民のサポートを呼びかけていた。

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圭子さんはこれまでNASAの様々なプロジェクトに参画して来た。彗星の塵を実際に採取するスターダスト計画では、探査機の回収の為に、普段は外国人はオフリミットの米空軍基地に入ることを許可されている。太陽風を採集したジェネシス計画では、最終段階でパラシュートが開かずに、探査機は地面に激突した。その壊れた探査機の中から、圭子さんは有益なデータを回収したと言う。現在は、はやぶさと同様に小惑星からサンプルを回収するオシリス・レックス計画で、着陸地点選定委員長を努めているそうだ。英語での会議を仕切るのは大変だとの事である。

圭子さんの経歴はかなり異色である。まず高校の時に、父親に「女に学問はいらない」と言われて、大学進学を援助されなかった。それでも高校の先生の進言で、受験は許されたが、うまくいかずに、最終的には小論文だけの神戸大学理学部の後期試験に合格した。つまり受験勉強という点では秀才とは言えない。

私が圭子さんを認識したのは、2年生の時に私の情報数理1の講義を取った時である。私はそこではUNIXの使い方などを教えていた。私は授業の成績を毎回課すエッセイで採点した。圭子さんのエッセイは極めて面白かった。私は文章のうまい人は頭が良いと信じている。始めのエッセイは彼氏とのデートでボートに乗せられ、そこで吐いてしまったというロマンティックでない話であった。次に父親が学資を出してくれないので、競馬とクイズで稼いだと言う話だ。1年生の時に60万円も稼いだそうだ。急にコーランを読みたくなり、大学でアラビア語の先生を見つけて、そこのゼミに入り込んだとか。後年,私に述べた話では、私に認められていなければ、今頃はアラビアの砂漠で死んでいただろうとの事である。面白いことを言う人だ。大学は山の上にあり、いつもは歩いてくるが、朝に講義がある時はバスに乗る。しかし先生が無断休講すると、バス代が無駄になるので、バス代を返せとエッセイに書いてあった。生活費を稼ぐ為に家庭教師とか、雑誌の編集とか様々な経験をした話も書いてあった。圭子さんは私の研究室ではなく、隕石研究の大家である留岡先生の研究室に進んだ。それは結果的には大成功で、現在の地位に繋がっている。

4年生の時に指導教官と私の推薦書でNASAのインターンシップにいった。そこでの指導教官やキューレーションの専門家にかわいがられて、アメリカに残る事を勧められた。しかしドイツの研究者にかわいがられてドイツの大学院に進学した。NASAではキューレーションの技術を指導され、圭子さんがいないとNASAのその面の研究が進まないと言うほどになった。ドイツでは苦学したが、国際経験は十分に積んだ。博士課程は日本に戻ったが、修了後にまたNASAからお呼びがかかって、NASAに就職した。さらに上の地位に上がる為に、米国籍を取り、米国人研究者と結婚して、今に至っている。ある年には科学の世界では超一流のサイエンス誌に8編の論文を書いたと言う。

私は研究者として成功するには3つの要素が必要だと思っている。能力、やる気、運である。圭子さんは能力はもちろん抜群だが(受験勉強的能力ではないが)、やる気・努力・ガッツの人である。ハングリー精神の人である。父親に「女に学問はいらない」と言われた事に対する反発がバネになっているのだろう。私の友人の名誉教授にも、父親から勉強を禁止されたので、押し入れの中で密かに勉強したと言う人がいる。圭子さんの努力は大学以来ずっとメールなどで連絡を取っている私にはよくわかる。

運に関しては時の運、場所の運、人の運がある。圭子さんはそのどれにも恵まれている。特に人の運に恵まれている。NASAで異例の出世を遂げたのは、そこの上司達に認められ、愛されたからであると思う。別に胡麻をすった訳ではないだろう。そのけなげさを上司達が認めたのだと思う。

昨今の日本の若者はひ弱だと思う。それは満ち足りた生活をしているからではないだろうか。圭子さんのようなガッツの人は、どうすれば教育できるのだろうか。勉強するなと言えば良いのだろうか。


2013-11-24

親子理科実験教室

2013年11月24日に当法人あいんしゅたいん主催の親子理科実験教室(特別企画第4弾)が京都大学セミナーハウスで開催された。講師は山田明彦先生であった。

テーマは毛管現象とそれを用いたサイフォン現象についてであった。まずティッシュの縁を水につけるとどれくらい水が上昇するかを見た。つぎにティッシュペーパーを重ねて細い帯のようにして、ビーカーの水につけて、サイフォンのように水を容器の外にこぼす実験を行った。私はそれを聞いていて、毛管現象において水がどこまで上がるかについてiPhoneでググって調べて、その公式を学んだ。また水が染みこんでいく距離は時間の平方根に比例することも知った。これらは私にとって新知識であった。小学生の理科実験教室といえども、とても勉強になるのだ。ところが講師が、この現象がサイフォンの機構と同じであると言われたことに違和感を覚えた。本当だろうか?

サロン・ド・科学の散歩道

当日の午後にサロン・ド・科学の散歩道の第10回として山田講師に『仮説実験授業』の話を当NPOのオフィスでしていただいた。その機会に私は午前中に抱いた疑問を講師にぶつけた。すると山田先生は「サイフォンの科学史」宮地祐司著を示されて、サイフォンの原理として世上広まっている『大気圧説』は間違いであることを言われた。その点は全く納得のいく話だ。

しかし正しいのは水の鎖モデルであると言われた。鎖モデルとは水分子が引き合って、鎖のようになっているとするモデルだ。ようするにニュートンビーズのようなものだというのだ。それを聞いて私の頭はさらに『???』で一杯になった。そこで講師には失礼ながら、話を聞きながら、その本をぱらぱらと読んだ。そして350年に渡って信じられてきたという大気圧説が間違いであることはすぐに分かった。だって、サイフォンの両端にかかる大気圧はほとんど同じなのだから、その圧力差でサイフォンの流れが説明できるはずが無い。

しかし直感的に鎖モデルも間違いであると思った。なぜ間違いかというと、サイフォン内の水の運動を規定するのは、流体力学の基礎方程式であるNavier-Stokesの方程式である。その方程式の要諦は、流体の運動を引き起こすのは外力、圧力勾配力、粘性力である。普通、水には張力は存在しない。鎖モデルは水分子が分子間力で引き合っているとするが、それは張力である。張力は表面張力のような場合以外、流体には存在し無い。ここで私の議論は毛管現象でないサイフォン、またある種のゲルのような非ニュートン流体でない、普通の水の普通のサイフォンの場合である。前掲書の著者の論じるサイフォンもそのような場合だ。そうであるなら流体力学を学んだ者の常識として、サイフォンの鎖モデルは信じられない。

ところがサイフォンに関する日本のWikipediaには鎖モデルの説明がある。しかしながら英語のWikipediaでは鎖モデルは間違いであると明記されている。そこにはこう書いてある。

A simplified but misleading conceptual model of a siphon is that it is like a chain hanging over a pulley with one end of the chain piled on a higher surface than the other. サイフォンに関する簡単だが間違った概念モデルとして、鎖が高い場所に積んであって、他端が垂れ下がっているようなものだというものがある。

しかしこの英語のWikipediaも下の方で、ベルヌーイの定理を使って説明している。これは厳密な意味では正しくない。なぜならベルヌーイの定理とは、要するに力学的エネルギー保存の式であり、粘性がある場合は成立しない。サイフォン内の水の流れは、粘性流であり、ポアズイユ流で近似できるだろう。

ところで2010年にオーストラリアの物理学者ヒューズ氏がサイフォンに関して、辞書の説明がみんな間違いであると指摘したという記事があった。サイフォンを駆動する力は大気圧ではなくて重力であると言う。これだけでは実はよく分からない。ようやく原論文を探し当てた。

 A practical example of a siphon at work. Physics Education, 45(2), pp. 162-166. 

しかしなんのことはない、鎖モデルである。ベルヌーイの定理を使って、水流の速度は自由落下速度になるとしている。しかし摩擦を考えるとベルヌーイの式は厳密な意味では使えない。もっとも管が短かったり、管の直径が太い場合は摩擦を無視しても良い。この先生は鎖を使って実験しているが、それは誤解を招く説明である。水を使った実験もしているが、流速や流量とパイプの長さ、口径、ビーカーの位置関係などの変数を変えた定量的実験をしていない。きちんとした科学論文とは言えない。ともかく鎖モデルは現象としては似ていても、概念的に間違いである。それをまた通信社が報道して、それで辞書会社が訂正するんだって。間違いを間違いで正して何になる。

基本的に正しい説明は「理系学部の学部生のためのサイフォンの原理 - あらきけいすけの雑記帳」にある。ただ惜しいことに、最後まで計算していない。それに関しては、私は別のところで詳しく解説する。

サイフォンの原理に誤概念が広がっているなら、やはり論文を書いて正す必要があるだろう。その前に、自分の理論を実験で確認する必要がある。それほど難しい実験ではないのだが、実験室が無いのでやりにくい。

12/04 追記

上記にあらきけいすけさんのブログ記事の「理系学生のためのサイフォンの原理」を基本的に正しいとしたが、間違いである事に気がついた。詳細は12/04の記事で述べるが、間違いは「ナヴィエ・ストークス方程式を解く」の部分の基本仮定の「3. サイフォンの両端の管口の圧力は周辺の流体の静水圧に等しい」という部分だ。彼の計算方法は、まず静水圧平衡を仮定する。すると管の出口の部分で圧力が大気圧より高くなる、その圧力差を管壁の摩擦で解消するというものだ。私は彼の解き方は正しいとして、流速を計算した。計算しただけでは、間違いは簡単には分からなかった。しかし実際に水の粘性係数や、ありそうな管の半径を入れて計算すると、水の流速がとても大きな値になるのだ。そこではたと気がついたのだが、このやり方では水の粘性係数を0とした極限では、流速は無限大になる。これはおかしい。

これ以後は12/4の記事を参照のこと。 


2013-11-23

京都大学合気道部水輪会

今日は京都大学の学園祭である11月祭である。合気道部もその機会に演武会を行う。演武会は1時から体育館であった。今日はまた合気道部の同窓会である水輪会の総会とレセプションが吉田キャンパスの生協食堂の二階で開催された。私は京都大学の助教授をしている間は合気道部の部長を務め、神戸大学に移動して後は水輪会の会長を務めた。神戸大学を定年退官して後は名誉会長に就任した。午前中には水輪会の役員会が体育会会議室で行われた。レセプションでは現役部員を捕まえてニュートンビーズの話をして、ビデオを見せた。理学部の学生が数人いたので、彼らが物理をやってくれたらうれしいなあと思う。次のビデオは30年以上も前の1982年の11月祭における演武会である。

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2013-11-22

京都大学全学共通国際学生シンポジウム

これは京都大学の1,2回生を中心とした、英語論文の投稿と英語でのプレゼンを行い、競う行事である。今年で4年目になる。私の属するNPO法人あいんしゅたいんの理事長も審査員を務め、また「あいんしゅたいん賞」を授与している。数十もの投稿論文の中から12編が選ばれて、本日、時計大ホールで発表会が行われた。

1,2回生が研究を行い、英語で論文を書き、英語で発表を行うなど、私が大学生の時は想像もできなかった。当時の英会話の授業では、学生たちが日本語ばかりで話すので、アメリカ人の先生が怒ってしまったことほおもいだす。また2回生の英語の授業でも、先生が英語のお話をテープで聞かせたが、私には全くのチンプンカンプンであった。近頃の若い者は、たいしたものである。プレゼンの技術も年々向上している。それにはもちろん、外国人の先生の熱心な指導があるからだ。

ただ聞いていて感じたことは、英語でプレゼンをすることはそれほど難しくはないが、英語で質疑応答をすることはきわめて難しい。プレゼンの場合は、言うことを覚えておけばよいわけだが、質疑応答の場合はリスニング力、理解力、発言能力がみんな試される。実際、スカタンな解答も多かった。岡目八目であるので、聞いている方はよく分かるのだ。しかし壇上で英語で質疑討論をすのは、私にとっても大変である。


2013-11-21

曼殊院、赤山禅院

紅葉見物は曼殊院に行くことにした。叡山電車で修学院まで行きそこから歩く。途中に鷺の森神社を通過する。ここはたぶん鷺の寝床なのであろう。都会の中にこれほど深い森があろうかと思われるような森である。そこから歩いて武田薬品の研究所の横を通過し、曼殊院につく。拝観料は600円である。曼殊院は門跡寺院で由緒あるお寺である。昨年は天皇陛下が来られたらしい。皇族が来られた時の写真がたくさん飾ってあった。ここはかなりな人出である。家内は抹茶飲みたいと言うので、お菓子と抹茶を注文したら800円であった。えらく高い。

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曼殊院を出て北のほうに歩き、関西ゼミナールハウスの前を通過し修学院離宮の前を通って赤山禅院につく。ここは拝観料はタダである。それにもかかわらず不便なせいかあるいは有名でないからか人影はまばらであった。しかしながら紅葉は見事であった。境内の茶店でぜんざいを食べた。300円であった。ここは非常な穴場である。二人でぜんざいを食べて、お土産を買って千円であった。私は拝観料密度という概念を提唱したい。拝観料割る面積である。この値は低いほど、お得である。赤山禅院は0である。今までの経験で、この値が最も高かったのは、大原の寂光院であった。

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2013-11-20

哲学の道

京都の秋も深まり、紅葉の季節になった。私は京都の主な花や行事を見逃さないように努力している。しかし昨年は紅葉を見る時期を逸してしまった。今年はそんなことがないように注意している。今日は天気も良いので哲学の道に行くことにした。調べてみると安楽寺が公開している。行く途中の紅葉も美しい。

{youtube}P_Ob7rUIzNQ{/youtube}

安楽寺はそれほど混んではいなかった。ここの紅葉はそこそこではあるが、座敷に座ってお庭を眺めると心が洗われる感じがする。このお寺は、松虫姫、鈴虫姫が出家したために、 2人の坊さんが後鳥羽上皇の怒りを買って死罪になったという。

次に法然院に行く。ここの山門は有名である。門越し見える紅葉の写真を撮ろうと思った。法然院は哲学の道から少し入り込んだところにあるので観光客は少ない。僕のお気に入りの場所である。

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2013-11-19

木下晃伸のWorld News File

経済アナリストの木下晃伸さんがキャスターを務めるラジオNIKKEIの番組に出演しました。来週の月曜に放送される予定ですが、収録は本日、ラジオNIKKEIのスタジオで行いました。話の内容は私の著書「2045年問題」を中心とした人工知能を巡る話題でした。木下さんは、以前から人工知能の問題に関心を持ち、放送でもいろいろ取り上げてきたそうです。

木下さんはまだ若い経済評論家で投資の話を主としてやっておられるようです。なかなかの好青年でした。地中海クルーズから帰ってきて、成田から車を飛ばしてきたとか。なかなかうらやましい生活です。木下さんも最近iPhone 5sを買ったそうで、そこから話が盛り上がりました。私の著書を誉めていただき光栄でした。

木下晃伸のWorld News ラジオNIKKEI第1 毎週月曜日 15:10~15:50

経済アナリスト・木下晃伸が世界のマーケットニュースをピックアップ。木下流に投資の役立て方を交えて解説。各界で活躍するゲストとのトークコーナーでは、人生の賢者に近づく思考を披露します。

 


2013-11-18

人類の最後の発明・・人工超知能

Kindle本をまだ読んでいる。意識を持った人工汎用知能(強い人工知能)は、自分のプログラムを改良して、すぐに人間の手に負えない人工超知能に進化して、人類は滅ぼされてしまうという話である。それを防ぐには、そもそも人工汎用知能の出現を警戒しなければならないという。人工汎用知能を研究しているのは特にアメリカのDARPAである。軍用に使うためである。しかしもう一つの可能性としてウオールストリートがあげられている。現在でもウオールストリートの株取引のほとんどはコンピュータにより行われている。証券会社やヘッジファンドは人工知能を使った投資アルゴリズムを必死で開発している。それを担うのがクワンツと呼ばれるオタクである。彼らは高給取りのオタクプログラマーである。彼らが世界を滅ぼすかもしれない。


2013-11-17

クラウドを使わないデータ共有「Transporter Sync」

CIA, NSAの元コントラクターのスノーデン氏がアメリカのNSAが世界中のメールやデータを盗み見していることが暴露され、外交問題にもなっている。ドイツのメルケル首相の携帯を10年以上も盗聴していたのだ。暴露された文書によるとDropBoxも近々参加するとあった。私がDropBox上に置いているファイルも全部アメリカに見られているのかと思うと気持ち悪い。しかしこの事件もビジネスチャンスと捉える人もいる。さまざまな方法でNSAのスパイ活動から逃れる方法が模索されている。上記の記事で紹介したTransporter Syncという製品は、DropBoxのようなデータ共有を私的に行うものである。この機械にはイーサーポートとUSBポートがついている。USBポートにハードディスクをつなげて、自宅のネットに接続するだけだ。するとそのディスクは自宅からも、さらには外出先からも見ることが出来る。つまりDropBoxと同じことが出来る。しかも容量は例えば2TBと、DropBoxとは比べ物にならないほど大きい。また月々の費用もかからない。かかるのはハードディスクの費用、電気代くらいか。これでNSAはファイルの中を、見ることは出来ない訳だ。15980円である。ところが日本のアマゾンではなんと25800円である。アマゾンの値段付けはよく分からない。

調べてみるとTransporterに似た製品で、もっと安いものがある。Pogoplugという製品だ。アマゾンではなんと2990円である。Transporterのほぼ1/10の値段である。スタパ斉藤氏は絶賛している。ところが良いことばかりではないようで、アマゾンのレビューでは評価が割れている。全くつながらないとか、使い物にならないという意見もある。場合によるようだ。


2013-11-16

マックピープル OS X Mavericks特集, 2013年12月号

上記の雑誌を買った。Mavericksの特集であるが、New iPad/iPad mini, MacBook Pro Retinaの記事もあるので買ったのだ。私は以前はパソコン雑誌をかなり買っていたのだが、このところとんとご無沙汰していた。自分のMacのOSをMavericsにしていろいろ分からないところがあるので衝動買いしてしまった。アマゾンで英語の解説書も見たのだが、これしきのことで英語を読むのもおっくうなので、日本語の方がよい。

読んでみると知っていることも多いが、知らないこともある。カレンダーはOS XもiOS 7も非常に便利になった。月をまたいで連続スクロールできるようになったのが便利である。以前は不便していた。

ブラウザーのSafariも見よう見まねで使っていたのだが、お気に入りの使い方が分かった。上部にお気に入りが並ぶのだが、実は気に入らないものが並んだいたのだ。その編集方法が分かった。

地図はiOS 6からGoogle Mapを離れてアップル独自のものになり、これは非常に評判が悪かった。あまりの評判の悪さに昔からの副社長がクビになった。オーストラリアでは使用禁止になった。しかしiOS 7になり、ようやく使い物になるようになった。その地図が今回からはMacでも使える。とはいえ、今までも他のアプリで使えていたので、なんということはない。アップルが名誉挽回したというだけに過ぎない。

キーチェインの使い方が少し分かった。すべてのデバイスでパスワードをクラウド同期するというものだ。まだ使いこなしていない。

複数モニターの機能は非常に便利である。いままでも複数モニターは使えたのだが、プライマリーとセカンダリーの区別がはっきりとあり、使いにくかった。今後はどちらのモニターも対等になった。私は一方でMac、他方でWindowsを開いている。

Windows PCはいろいろあるが、私は人にもMacでWindowsを動かすことを勧めている。というのもMacの方が格好がいいからだ。国際会議に行くと外国人が使っているパソコンは圧倒的にMacである。Windows機を見ることはほとんどない。1割程度の感じだ。日本人は半々と言ったところだ。だからWindows機を使っていると、なんかダサい気がする。日本人の使うWindows機ではLet's noteが多いと感じる。国際会議ではなく新幹線になると、Macの比率はぐっと下がる。


2013-11-15

"Our Final Invention: Artificial Intelligence and the End of The Human Era" By James Barrat

人間の最後の発明: 人工知能と人間時代の終わり

という本を買った。ハードカバー版の本日の価格は2484円でKindle版は1487円である。内容はタイトルの通り、つまり技術的特異点において人工超知能(Artificial Super Intteligence=ASI)が発明されると、人類は滅ぼされてしまうという話である。

人工知能は2つに分類できる。強い人工知能と弱い人工知能である。強い人工知能とは人工汎用知能( Artificial General Intelligence=AGI)とも言われ、意識をもった人工知能のことである。弱い人工知能とは狭い人工知能(Narrow Artificial Intelligence)とも呼ばれ、特殊目的のための人工知能である。チェス・マシーンとかワトソン、Siriなど現在使われている人工知能はすべて弱い人工知能である。ところで本の著者はジャーナリストである。

著者は人工汎用知能、およびその発展形としての人工超知能に対し非常に強い警戒感を持っている。人工超知能が人類を滅ぼすのは何も人類を憎んでいる為では無いという。人類は例えばネズミで実験を行うが、ネズミを憎んでいる訳では無い。猿の頭蓋骨に穴を開けて実験を行うが、猿を憎んでいる訳では無い。愛しているか憎んでいるかは関係ないという。ネズミも猿も人間より劣っているから、実験に使っても良いと考えているのだ。それと同様に、人類の何万倍、何億倍、何兆倍も知能の高い人工超知能にとって、人類はどうでもよいのだ。

意識を持った人工汎用知能ができたとしよう。それはどのように発展していくか想像もつかないので危険である。そこでそれを箱に閉じ込めておくというアイディアがある。つまり人工汎用知能にロボットのコントロールなどを認めないで、単にキーボードとモニターでつないでおくというのだ。そうすると人工汎用知能が人間に悪意を持っても、何もすることができない。ところがこのような実験は既に行われたという。もっとも人工汎用知能が完成したわけではないので、人間がそれを行なったのだ。人工汎用知能にふんした人間と、門番の人間を会話させるのだ。そして人工汎用知能にふんした人間が、門番を説得して自分を解放するようにできるかという実験だ。実際の実験では半分以上の確率で、解放されたという。人工汎用知能が門番を誘惑したのか、脅迫したのか、それをわかっていない。それでも門番は人類を危険に晒す行為をしてしまうというのだ。多分脅してもダメで、門番をたらし込んだのだろう。

パリスの審判では、ヴィーナス、アテナ、ヘラが羊飼いのパリス(トロイの王子)に対して、自分を最も美しいと認めてくれたら、世界一の美女をやる、どんな戦争にも勝たしてやる、世界を支配させてやるという誘惑をした。結局パリスはヴィーナスを選び、ヘレンという美女を得たのだが、ヘレンは人妻であり、そのためにトロイの王子に返り咲いたパリスにたいしてギリシャが戦争を仕掛けて、トロイは滅びた。私が同じ誘惑を受けたら、世界の支配権を願うだろう。

人工知能にアシモフのロボット三原則のようなものを本能として組み込んでしまうというアイデアもある。友好的な人工知能を作るという考えだ。著者をそれに対しても懐疑的である。今人工知能を1番研究しているのは、アメリカ国防省である。戦争に使うため、人を殺すために人工知能の研究を進めているのだ。アメリカの作る人工知能が友好的であるというのは、米軍兵士を殺さないという意味で、アルカイダや敵は殺すのが正しいというのがアメリカの論理である。中国も、その他のアメリカの潜在敵国も人工知能研究しているのだから、アメリカは人工知能の研究を止める事はできない。するとアメリカの作る一般人工知能の論理、倫理という物はアメリカのものである。

著者によると人工知能の研究者は、誰も人工超知能の危険性の問題に関して注意を払っていないか非常に楽観的だという。例えば技術的特異点の推進者であるレイ・カーツワイルは、 2045年の技術的特異点の後では、人類は人工超知能と一体化して、幸せな生活を送ると考えている。著者はそのような楽観論に警鐘を鳴らしているのだ。まだ途中までしか読んでいないので、読み終わったら残りを報告しよう。

遺伝的プログラミング

その本を読んでいる中で遺伝的プログラミングという言葉を知った。遺伝的アルゴリズムについては既に知っている。遺伝的プログラミングとは、遺伝的アルゴリズムの拡張でプログラム自体が遺伝子進化の法則により進化していくものである。著者が一般人工知能を警戒するのは、一般人工知能自身が自分のプログラムを遺伝的プログラミングにより書き換えていくからである。普通のプログラミングは人間が書くので、原理的にはその内部の詳細は人間に分かっている。しかし遺伝的プログラミングにより書かれたプログラムはその内容を人間が把握することはできない。そこが怖いというのだ。


2013-11-14

中之島科学研究所第45回コロキウム 宮島一彦「天象列次分野之図」

今日は中之島科学研究所の月に一度のコロキウムの日である。中島科学研究所とは大阪市立科学館に併設されたバーチャルな研究所である。バーチャルと言う言う意味は、研究所独自の建物や研究室はなく、研究員だけがいる。研究員は大阪市立科学館の科学解説を努める学芸員と、外部の研究者5名である。私は設立当初からの研究員である。設立の目的は、私の解釈では当時の館長の高橋先生が、学芸員にも研究する名目を与えようと言うものであったと理解している。学芸員の人たちは大学の博士課程を出た専門の研究者の人が多いと理解している。

さて本日のコロキウムは同志社大学を定年退職された宮島一彦先生の「天象列次分野の図」と朝鮮半島の天文学、というものであった。朝鮮の天文学の歴史の話である。韓国の国宝である石刻星図「天象列次分野の図」には中国式の星座が刻まれており、1998年のキトラ古墳石室天井天文図発見時にも、それとの比較で話題になった。この星図の謎とエピソードを語り、日本にも影響を与えた朝鮮の天文学の歴史を紹介するものである。


2013-11-13

Miss Marple- A Caribbean Mystery カリブ海の秘密

ミスマープルは甥の勧めで西インド諸島のバルバロドスにひとりで保養に来ていた。とあるホテルに滞在していたが、おしゃべり好きの少佐の話を適当に聞いていた。少佐は元植民地警察に勤めていたことがあり、その時の殺人犯を追っているという。殺人犯の写真をミスマープルに見せようとしたときに、ミスマープルの背後の人物に気が付き、少佐は急に話題を変えた。その少佐は次の日に死んでいた。

死因に不審を抱いた医者が、死体を墓から掘り起こしたら毒殺されていることがわかった。ホテルのメイドが、少佐の部屋に普段はない薬があることを発見した。そのことを経営者に報告した後で、メイドも殺された。そこでミスマープルは捜査に入った。ホテルの経営者の若いカップル、訳ありげな何組かのカップル、それに第一作「復讐の女神」の伏線となる、大富豪のラフィール氏などが登場する。ラフィール氏は秘書と介護人と暮らしている。ラフィール氏は始めミスマープルを馬鹿にしていたが、無邪気さの背後に隠された恐るべき観察眼に感動する。警察署長もミスマープルの噂を聞いていたので、ミスマープルが乗り出してきたことを喜ぶ。

カップル間の男女関係は非常にややこしい。西洋人の顔どれも似ているので、名前と顔を覚えるのが大変だ。

{youtube}wQIGAZnWl-0{/youtube}


2013-11-12

Wolfram announces 'most important' project: a programming language that models the world

ウルフラムは最も重要なプロジェクトを発表した:世界をモデル化するプログラミング言語

上記のような記事を見つけた。 Wofram Research社の Mathematicaという言語をご存知だろうか。数値計算ではなく数式計算ができる言語である。しかし非常に高いので、一般のユーザーが使うわけにはいかない。

Wofram Research社はタダで使えるWofram Alphaというサービスを提供している。これはwebやスマートフォンから使えるもので、 1行だけの数式を書いて計算することができる。しかしそれだけでは無い、膨大なデータベースを含んでいるのだ。コマンドの例を示そう。

integral 1/(1+x^5) dx

大学の初年級の微分積分のコースで習った計算は何でもできる。もはや岩波の数学公式集は必要ない。

plot sinx cosy

私があと何年生きられるかを知ろうと思えば次のようなコマンドを発する。
Japanese life expectancy male 70

Wolfram Alphaは非常に強力な人工知能言語なのである 。

ところで最、Wolframがさらに強力な言語を発表した。Wolfram Languageである。実は詳細はまだ明らかでは無い 。 数カ月以内に発表されるそうだ。それはクラウドベースでタダで使えるという。非常に期待が持てる。楽しみである。

iPad Air

iPad Airが配送されてきた。さっそく設定にかかる。 MacにつなぎiTunesを立ち上げてバックアップから回復した。かなり時間がかかった。さらにEvernote 、 Pages .Day Oneなどのデータを同期しなければならない。これは結構時間がかかった。

ところがなんと今日iPad mini Retinaの発売が発表されたのだ。僕は元々こちらの方を買うつもりだったのだ。 ところが噂で右のほうは生産が遅れていて、12月になるか、下手をすれば来年になってしまうと言われていた 。そこで急遽iPad Airに注文を変更したのだ。そうしたら届いた日に発表されるというのは非常に皮肉である 。最もAirもminiも性能は同じである。大きさだけが違う。Aitは自宅またはオフィスで使うもの、miniには持ち歩くものというコンセプトであろう。しかしAirも軽いので十分持ち歩くことができる。


2013-11-11

Smart Machines: IBM's Watson and the Era of Cognitive Computing (賢い機械 IBMのワトソンと認知コンピュータの時代)という本のKindle版をAmzonから買った。アメリカのアマゾンで買ったが11.63ドルであった。日本のアマゾンで調べるとKindle版が1152円、ハードカバーが2387円であった。

まだ40%しか読み終えていないので、全体の紹介をする事は出来ない。読んだ部分の要点は今やノイマン型のコンピュータでなく、新しい認知コンピュータの時代が開かれようとしているという話から始まる。つぎにノイマン型ではあるがIBMの人工知能ワトソンの話になる。ワトソンは2年前にクイズ番組のジェパディで人間のチャンピオンに勝った。現在ではさまざまなテストが行われている。一番印象的で、重要なのは医学への応用だろう。現在はガン診断のテストが行われている。日系米国人の女性が肺ガンになり、もっとも適切な治療法を医者とワトソンが共同で見つけて行く話はスリリングだ。女性は頭が坊主になるクスリは使いたくないと言う。患者の検査結果と要望を考慮して、ワトソンは医者に様々なアドバイスをする。このようなシステムは数年内にアメリカで使われるようになるだろう。日本で使うには、日本語化しなければならないので、その努力が必要であるし、日本の官僚機構の保守性を考えると、日本で普及するのは多分10年後くらいになるのではないかと想像する。

11/15 追記

読み終えたが、ようするに人工知能に関するIBMの最近および近未来の研究の紹介である。目次を紹介すると以下のようだ。表題から内容は推察されるであろう。

  1. A new era of computing コンピューティングの新時代
  2. Building learning systems 学習システムを作る
  3. Handling big data  ビッグデータを扱う
  4. Augmenting our senses 感覚を補強する
  5. Designing data-centric computers データ中心コンピュータを設計する
  6. Inventing a new physics of computing 新しい計算物理を発明する
  7. Imagining the cognitive city 認知できる都市を想像する

2013-11-10

iPad 2の初期化をした。その前にMacのiTuneを立ち上げてデータを吸い出しておいた。このiPadは息子に送った。後で気がついたのだが、Apple IDの登録を外すのを忘れた。これは5台まで登録できるが、iPhone 4sの登録も外していないので、新しいものを登録できなくなる。

iPad AirとKindle Paperwhiteのカバーだけが到着した。カバーだけあっても何も出来ないのは当然だ。ただ送られてきたアマゾンの封筒はiPadを送るのに利用させてもらった。


2013-11-9

ミス・マープル スリーピング・マーダー(Sleeping murder)

ミス・マープル・シリーズの第3話を見た。新しい家を買った新妻のグエンダーはその家が気に入って買ったのだが、どうも殺人を見た既視感に悩まされる。相談を受けたミス・マープルは「眠れる殺人」の捜査を開始する。彼女の母は早くに死んで、父はヘレンという後妻を迎えた。ヘレンはケネディという医者の兄がいる。ヘレンはインドにいる英国人と見合いに行くが、途中の船で妻子持ちの大佐と恋愛をする。しかし結婚できないので、インドで見合いをしたが、気に入らずに帰国する。その船中でグエンダーの父と知り合い結婚する。しかし一年後にヘレンは別の男と失踪する。しかし父は自分がヘレンを絞殺したといいはり、精神病院に入る。ヘレンからは兄に二度手紙が来たので、死んでいないはずで、殺したのは幻覚であると医者はいう。グエンダーは絞殺の瞬間を見たと確信している。ヘレンの夫と兄、愛人と見合い相手、謎は深まる。一度、日本語の字幕で見た後で、もう一度、英語の字幕で見た。それもポーズしながら字幕を読んだのだが、けっこう知らない言い回しもあって難しかった。

詳細なあらすじはSleeping Murder (Wikipedia)参照。

{youtube}LR5DoJI8KgY{/youtube}

{youtube}MWFDj1r1By8{/youtube}

この映画の舞台はデボンシャーのディルマス(Dillmouth)ということになっているが、仮想の町で、モデルはシドマス(Sidmouth)という人口14,000人の海岸の保養地である。私は同じデボンシャーにあるトーキーという海岸の保養地に行った事がある。雰囲気はどちらも似たようなものだ。実はアガサ・クマリスティ本人がトーキーの生まれなのだ。

ところで新婚夫婦が買った家は6寝室もある大きなものだ。こんな大きな家を若いカップルが買えるのかと思うが、可能かもしれない。私が1975-77年に英国に住んでいたとき、新興住宅地にある家を借りていた。市内や田舎を歩くと、古い大きな売り家がたくさんあった。私の借りた家ですら、裏には20坪ほどの庭があった。もっとも手入れの方法を知らなかったので、ほったらかしにしていたら、芝生がぼうぼうになり、伸びきってしまった。それを見かねた隣人が、我々が留守の間に刈ってしまった。日本で庭のない家に住んでいたので芝刈り機の使い方が分からなかったのだ。

私は不動産の広告が好きで、英国でも色々見た。マナーハウスという豪邸があるが、庭が数エーカーもあり、寝室もたくさんある。私など母屋ではなく、門番の住む家でも十分だと思う。

 


2013-11-08

英語の字幕なし映画が聞き取れればOKだが、難しい

ミス・マープルビデオは始めは日本語字幕で見た。その後でYouTubeで見ると、英語だけで字幕がない。なかなか聞き取るのはしんどい。英語のニュースなどはよく聞き取れるが、映画は難しい。ニュースではアナウンサーが明瞭な発音で話すから分かりやすいのだが、映画では早口で、モゴモゴいうし、スラングも多いので聞き取りにくいのだ。だいたい登場人物の名前を覚えるのも大変だ。後でWikidepiaであらすじを読んだらよくわかった。もっともテレビでは原作から少し異なっている。

iPad Airを発注

ついにiPad Airをアップルのオンラインストアで発注してしまった。64GBのものである。今持っているiPadは息子にやることにした。iPad mini retina displayとどちらにするかということだが、miniの方はまだ発売されていないし、それに品薄で年内に入るかどうかも分からないという噂である。ネットの評価を見ても、iPad Airは賞賛ばかりで、けなしたものはない。現在手に入る最高のタブレットであろう。それで待ちきれなくなって注文したというわけだ。

Kindle Paperwhite

ついでにKindle Paperwhiteも注文してしまった。古いKindleは家内にやる事にした。これはタッチスクリーンでないので、少し不便だ。今まで書いてきたように、これからの読書は基本的に電子媒体になる。しかし透過型スクリーンは問題も多い。これを解決できるのは反射液晶を使ったKindle Paperwhiteだけだというのが私の意見である。

ところでiPhoneは4sから 5sにバージョンアッブした時に、4sは下取りに出した。さらに古いiPhone 3GSはまだ残っていたので、知り合いの中学生にあげた。まだ十分に使用に耐える。というわけで、新しいものを買っても、古いものも粗末にはしていない。


2013-11-07 

Unix and Shell Programming

アマゾンのKindle版でUnix and Shell Programingという本を買った。99円である。Unixとはなにかという基本的なところと、シェル・プログラミングについて述べた本である。208ページの本が99円とは安いと言えよう。以前にKindle本は安いと書いたが、必ずしもそうでない事が分かった。日本語の本を見ると、文庫本より少し安い程度だ。しかし英語の本を見ると、ものにもよるのだが、文庫本より少し安い程度のものが多い。出版社がぼっているとしかいいようがない。だって、紙の本を出して儲けた後で、電子版にする訳だが、製作費用はほとんどタダのはずなのだ。

ところでこの本のないようだが、単に書き写すと次のようなものだ。まだ全部は読んでいないので、感想は書けない。Unixでシェル・プログラミングができれば一応は一人前と言えるだろう。

昔のコンピュー

私は神戸大学時代は情報数理という講義でUnixの講義と演習を担当していた。1992年からだから、ずいぶんと昔の事だ。始めはNECのサーバー機で、つぎにSGIのワークステーションになった。NECの時はレスポンスが遅くて困った。考えてみれば、現在のコンピュータより遥かに非力なマシンで、数十人を一度に相手にするのだから。SGIのワークステーションはO2というもので、これはなかなかかわいらしい、格好のよいものであった。当時のSGIのマシンはみんなネーミングもスタイルも色もかっこうよかった。

京都大学時代は日立の汎用大型機HITAC M180を使ったものだ。この時はPL-Iというプログラム言語を教えた。この言語は今は使われていないが、if then elseが可能な構造化言語であった。その意味で学生の教育には良いと思った。しかし隣の教室では、別の先生がFortranで教えている。PL-IのコンパイラーはFortranに比べて非常に遅いので(大きいから)、学生たちはイライラしたはずだ。この機械も大型機と言うけれど、主記憶容量は1-16MBというしろものだ。16MBというのは当時のアーキテクチャーによる壁であった。そんなに小さな記憶容量のマシンで百人近い学生を一度に相手にするのだから大したものだ。どんなスマホでも昨今は1GBは持っている。それで一人しか相手にしないのである。贅沢なものだ。

ところで先の本の目次は以下のようなものだ。

Unix Shell Programmingの内容

Introduction to UNIX: 

• What is an Operating System? 
• What is UNIX? 
• Hardware requirement 
• Why UNIX? 
• Salient feature 
• UNIX system Structure 

Kernel - The Heart of UNIX: 

• Introduction to Kernel 
• What is a Kernel? 
• Kernel Services 
• User Mode and Kernel Mode 
• Interrupt 
• Buffer cache 

Internal Representation of File: 

• Inode 
• Incore Inode 
• Accessing Inode 
• Algorithm for allocation of in-core inode 
• Algorithm to convert a path name to an inode 
• Super block 
• Algorithm for inode assignment to a new file 

System Calls: 

• What is System Call? 
• Open System Call 
• Read System Call 
• Write System Call 
• lseek System Call 
• Close System Call 
• Create System Call 
• Stat and Fstat System Call 
• Pipes in UNIX 

Process in UNIX: 

• Process and Process States 
• Kernel Data Structure 
• UNIX System Memory 
• UNIX System Call 

Introduction to Shell Programming: 

• Introduction to Shell 
• Types of Shell 
• File Access Permission 
• Editors in Shell Programing 
• Filters in Shell Programming 
• Compress and Pack Command 

Grep Command: 

• Grep Command 
• Options in grep command 
• egrep and fgrep command 

Shell Variable: 

• What are shell variables? 
• Rules for building shell variables 
• Metacharacters of Shell 

Statements in Shell: 

• Conditional ‘if’ Statement 
• ‘case’ Control Structure 
• ‘for’ Loop is Shell Script 
• ‘while’ Loop in Shell Script 
• ‘until’ Loop in Shell Script 
• ‘test’ Command in Shell Script 
• ‘expr’ Statement in Shell Script 

Shell Script Examples: 

• Shell Script to Illustrate Deletion of Word 
• Shell Script to Illustrate Arithmetic Operation 
• Shell Script for Unit Conversion 
• Shell Scripts to Print Current Date 
• Shell Script for Fibonacci Series 
• Shell Script to Calculate Factorial 
• Shell Script to Count Lines, Numbers and Words 
• Shell Script for Prime Number 
• Shell Script for Leap Year 

Summary - UNIX Commands: 

• Introduction to UNIX Commands 
• List of Commands 


2013-11-06

7 Unconventional Reasons Why You Absolutely Should Be Reading Books (本を絶対に読むべき7つの変わった理由)

という記事を読んだ。調べると日本語の要約が見つかった。昨今、本を読む人の数が減っていると言う。

他人の心情をくめるだけじゃない!!読書がもたらす6つの健康効果を紹介 - IRORIO(イロリオ) 

これを読むと結構な話である。ただしデジタル機器は寝る時には良くないと書いてあるので、モニターで夜読むのは良くないようだ。しかし反射液晶のKindleでは良いのではないだろうか。


2013-11-05

SF小説 The Last Firewall

SF小説の「最後のファイアーウオール」(The Last Firewall)を読み上げた。ウイリアム・ハートリング(William Hertling)の特異点シリーズの第三話である。アメリカのアマゾンでKindle版を買ったのだが、日本のアマゾンなら499円である。紙の本はもっと高い。ハートリングはすでに「アボガドロ・コープ:特異点は思ったより近い(Avogadro Corp: Singularity is closer than it appears)」(399円)と「人工知能黙示録(A.I. Apocalypse)」(395円)を上梓している。

それぞれの話は独立しているが、緩く連携している。いずれも意識を持った強い人工知能の発生と、それに伴う事件である。第1話のアボガドロ・コーポとはグーグルを思わすIT会社である。近未来にはOSとしてWindowsは無くなり、ほとんどがアボガドロOS(つまりグーグルのAndroidのことだろう)に置き換わっている。ある技術者がELOPという人工知能を作りあげる話だ。第2話ではロシアのITオタクの青年が作り上げた人工知能が大暴れをして、人類に戦いを挑む。人類はELOPの助けをかりて、それと戦う。アボカドロ・コーポの女性副社長は、この時点ではアメリカ大統領になっている。

さて第3話だが主人公は19歳のキャサリンという女の子、それに第1話と第2話で人工知能を作った二人の男性である。アダムと言う悪の人工知能が現れて、世界を乗っ取ろうとする。それに対してキャサリンが戦いを挑む。時は2035年で、人々は脳にインプラントを入れており、ネットと直接に繋がっている。攻殻機動隊を思わす世界である。実際、話の最後の部分は「イノセンス」のパクリ、よくいえばオマージュである。キャサリンは空手、カンフーの達人である。合気道の受け身さえ登場する。彼女は脳に特殊なインプラントを入れられており、無敵である。攻殻機動隊の草薙素子を彷彿とさせる人物設定だ。2035年の世界はロボットがほとんどの仕事をしていて、人々は働かなくても生活できる。しかし人々はそれが不満で、人工知能に対して敵意を持つ運動が現れた。それを裏から操るのが、実は人工知能のアダムである。キャサリンは4人の不良がロボットをいじめているのを見かねて、戦いを挑み3人を殺し、一人に重傷を与える。そしてポートランドからサンフランシスコ、ロスアンジェルスへと逃亡する。舞台はサン・ディエゴ、ツーソンとうつり、最後にアリゾナ大学のキャンパスでキャサリンとアダムの壮絶な戦いが繰り広げられる。

作者はよほどの日本びいきらしく、出てくる食べ物はおにぎり、ラーメン、焼きそばである。主人公はときどき日本語を発する。「始め」「クソっ」などなど。時々おかしな日本語も登場するのは愛嬌だ。

2013-11-04

 


2013-11-03

ミス・マープル

ツタヤで借りたDVDの「ミス・マープル」を見た。ミス・マープルは英国の女流ミステリー作家アガサ・クリスティの推理小説である。クリスティと言えば名探偵ポアロで有名だ。かたやミス・マープルは田舎に住むおばあさんである。一見したところ無学で人の良さそうなおばあさんだが、なかなかどうして観察眼の鋭い探偵である。犯人はミス・マープルの無害そうな外見にだまされる。

ミス・マープル・シリーズはいろんな映画化やテレビ化がなされている。レンタル・ショップでは二人の女優によるものがあったが、私は古い方のジョーン・ヒクソンのものを借りた。1984年から1992年にかけてBBCで放映されたものである。時代は第二次大戦後の1950年代である。現在の英国航空BAの前進であるBOAC と、そのジェット旅客機であるコメット機が登場していてなつかしい。第1話と第2話をみた。

  • 1971年:復讐の女神 - Nemesis


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である。「復讐の女神」では、あるお金持ちがカリブ海の邸宅で死に、その息子の犯した可能性のある殺人事件について調べてくれるようにミス・マープルに依頼する。報酬は2万ポンドである。現在の価値なら3百万円程度だが、当時なら1000 万円はしただろう。息子は金持ちの父親の遺志で、父親の邸宅に住めば莫大な遺産を相続できるが、息子はそれを拒否して、ホームレス生活を続けている。息子のかつての恋人が謎の死を遂げたのである。その謎を解くのがミス・マープルの役目である。ミス・マープルは英国の庭園を巡る観光旅行に甥とともに参加するよう手配される。そこには分けありげな女性校長、犯罪学者、女性連れなどが参加している。旅の途中で女性校長が殺される。そしてだんだんと真相が明らかになっていく。

「バートラム・ホテルにて」ではマープルはロンドンにある由緒あるホテルに滞在している。そこでは何かが起きているらしい。いろんな登場人物が現れるが、どれもなんか怪しいのである。銀行強盗、列車強盗、派手な女優、ホテルを調べる謎の警部・・・。ミス・マープルはホテルに滞在しているだけで、警部の為に謎を解くのである。 


2013-11-02

デジタル時代の読書脳: なぜ紙の方がスクリーンより優れているか

という記事の要約を読んだ。最近デジタル原住民(Degital Native)という言葉がある。生まれた時からiPadやKindleなどの電子媒体で絵本などを読んでいる子供達だ。私の友人の子供もそうだというが、iPadで絵本を読んだ後、紙の絵本を読むと、指でスワイプしようとして、うまくいかない事を知る。その子供に取っては紙の本はこわれたiPadなのである。

ところが記事によると、本を紙で読む方がスクリーンで読むよりも優れていると言う。その理由は様々あるが、その記事の要約によると

  •  紙の方がスクリーンより理解しやすい。スクリーンはスクロールしなければならず、何処を読んでいるか、何処を読んだかの直感的な把握が難しい。
  •  スクリーンを読むのは紙より集中力を必要として疲れる。
  •  光る画面を見るのは目が疲れるし頭痛になりやすい。
  •  紙は単純で読みやすい。

 

私がこの問題に関して他の記事でも同様な主張を読んだしそれを過去にも紹介した。それらによると

  • 紙の本は何が何処にかいてあるかが固定されているので把握しやすい。既に読んだ部分が本のどの辺りにあったかがアナログ的に把握できる。見開きのページのどの辺りにあったかがアナログ的に把握できる。
  • 紙のような反射光と、スクリーンの透過光では、内容を把握する脳の部分が異なる。
  • 夜寝る前に透過光を長時間見ると、興奮して眠れなくなる。

それでもこれからは電子出版の時代だ

この問題に関する私の意見、反論は以下のようなものだ。

  • このような議論はいつの時代にもあった。ワープロが普及して手書きが廃れて来たとき、文章は手書きでなければならないと主張した書家がいた。確かに手書きの文章とワープロの文章は異なる。ワープロでは漢字が多くなりやすい。しかし現在、手書きで小説、論文、レポートをかいている人がどれだけいるか。CDよりレコードの方が優れていると言う主張もあった。しかし現在ではそもそもレコードが生産されていない。時代の趨勢である。数10年先に紙の本がどれだけ出版されているだろうか。
  • 紙の本と電子出版の本では手間が異なるので、値段が違う。アマゾンで調べれば分かる事だが、Kindle版はペーパーバックに比べても圧倒的に安い。それは当然で、電子版は紙が必要ない、印刷の手間が必要ない、配送の手間が必要ないからだ。人々はいつまで、高い紙の本を買うのだろうか。
  • 透過光が反射光よりも見にくい、疲れやすい事は事実だ。しかしKindle FireでないKindleは反射光を利用しているので、透過光にある欠点はない。
  • スクロールの問題点はPCの問題で、Kindleではスクロールしない。紙のような配置にする事は可能である。ただ電子出版のノウハウが十分に確立していないだけだ。
  • 紙の本はかさばる。実際、私の家も本だらけで、人間の住む空間を圧迫している。私は今、本を捨てにかかっている。それに比べると電子媒体は圧倒的にコンパクトである。

ともかく、紙の方が良いという主張には敬意を表するが、それでも時代は電子出版に傾いて行く事は否定できない。問題は電子媒体の利点を生かし、欠点を少なくする方法を目指すべきだと思う。手書きやレコードが無くなる事はないであろうが、それは高級な、高価な、特殊な趣味となっていくだろう。同様に紙の本も贅沢品になっていくであろう。

 


2013-11-01

Sono 雑音消去窓センサー

Facebookでなかなか面白い記事を紹介された。「雑音消去用窓センサーで不快な雑音の中の静寂を楽しむ」

Noise-canceling window sensor helps you enjoy the silence amid cacophony, John RoachNBC News

まだ開発中らしいが、ある装置を窓にぺたっと貼付けると、部屋の外部の騒音が消えたり、心地良い音に変わったりする装置である。雑音消去ヘッドフォンというものは、広く普及している。ボーズが始めたものだが、現在はソニーを始めさまざまな製品がある。仕組みは、外部の雑音をマイクで受けて、それと逆位相の音波を発生させる。雑音と合わせると、雑音が消えると言う仕組みだ。この仕組みが有効なのは、耳に入ってくる音のみを、耳の入り口で消去するからだ。

ところが上の記事のビデオにあるように、部屋全体の雑音を消すにはどうしたら良いのだろうか。ビデオに説明はない。私の想像だが、装置が窓の外の雑音を検知して、その逆位相の振動を発生させて、窓全体を振動させる。その結果として、窓ガラスは振動しなくなる。つまり雑音が消える、という仕組みだろう。なかなかクレバーなアイデアだ。この装置はガラス窓から入ってくる雑音のみを消去できるので、室内で生じた雑音には効果はないものと思われる。

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マッド・サイエンティストのつぶやき Wed, 06 Nov 2013 11:03:09 +0900
2013年10月 https://www.jein.jp/jifs/blog-matsuda/mutter/976-1310.html https://www.jein.jp/jifs/blog-matsuda/mutter/976-1310.html

 


 2013-10-31

グーグルの謎のはしけ・・・秘密基地か?

サンフランシスコ湾に浮かぶ、グーグルの謎の巨大なはしけが話題を呼んでいる。その目的に関して2つの説がある。1つはデーターセンターである。もう一つはグーグルグラス用のお店である。

グーグルの謎のはしけ

1) データセンター説: グーグルは海上に浮かぶデーターセンターの特許を2009年にとっている。データセンターを海上に設置すると、冷却水がえやすいという利点がある。しかしこの説の欠点としては、グーグルはサンフランシスコ湾にこれを浮かべて使用する許可を、港湾当局から取っていないということだ。

2) グーグルグラス販売店説: アップルは世界各地にApple Storeを展開しているが、グーグルもそれに対抗しようというものだ。しかしアップルのお店とは違って、海上に浮かべてあちこちを移動しようとする計画だという。この説の欠点は、専門家によれば建物に脱出口が見当たらないので、店としては許可されないだろうということだ。

データーセンターにかんして私も妄想の中で、10万トンクラスの船の中にデータセンターを作る計画を持っている。その船を公海上に浮かべると、船籍をおいた国以外のいずれの国の主権も及ばないので、好きなことができるのである。便宜置籍船というシステムだ。船籍国としては、パナマやリベリアが有名である。私は太平洋に浮かぶ小さな島嶼国家を想定している。アメリカ人ならカリブ海に浮かぶケイマン諸島のような小さな島を想定するだろう。

グーグルは、アメリカ入国のビザを得るのが難しいインド人たちを、公海上に浮かぶ船に収容する計画を立てている。これは浮かぶ研究所である。実は私もそのような計画を持っているのだ。やはり10万トンクラスの船を太平洋に浮かべて、日本人、インド人、中国人などの研究者を数千人収容する研究所を作るのだ。

Mysterious floating barge in San Francisco Bay could be secret new Google Glass facility

San Francisco's bay barge mystery: Floating data center or Google Glass store?

はしけの正体に関する私の説は、グーグルによる世界支配の秘密司令部であるというものだ。秘密基地好きの私としては、このような謎めいた構造物はたまらない。私は港湾地帯に行った時に倉庫などの建物を見ると、すぐにそこを秘密基地にする妄想を始める。そこから密かに世界を支配するのである。


2013-10-30

やっとMacBook Airのアプリ群のバージョンアップが終わった。家の無線LANの調子が悪く、繋がったり繋がらなかったりするので、有線でつないだら、これは確実に繋がる。しかし理由は不明だがスピードが遅いので、バージョンアップは時間がかかる。

他人には見えないモニターの作り方

Facebookの友人の指摘で非常に面白いことを知った。液晶モニターに細工して、他人には見えなくするような仕組みである。次の記事にそのことが書いてある。やり方は簡単で、液晶モニターの表面の偏光シートを剥がしてしまうのである。そのままでは画面は真っ白になってしまい何も見ることができない。偏光シートを貼ったメガネで見ると画像を見ることができる。youtubeのビデオで作り方が示されている。

How to Build an Amazing Secret Monitor Only You Can See

{youtube}zL_HAmWQTgA{/youtube}

なぜこんなことができるのかというと、それは液晶モニターの仕組みにある。液晶モニターは2枚の直交した偏光のみを通す偏光シートに液晶分子が挟まれている。電圧をかけない状態では、液晶分子は徐々にねじれて光の偏光面を90度回転させる。だから光は透過する。ところが電圧をかけると、液晶は別の方向に整列し、光の偏光面は回転しなくなるので、光を透過しない。そこで表の偏光シートを剥がすと、上の機構が働かなくなりあらゆる光が透過してしまう。そこで偏光膜を貼ったメガネで見ると、画像が見ることができるというわけだ。他人に見られたくない映像を見るのに最適だ。でもこんな細工をすると、人の猜疑心をかえってあおってしまうかもしれない。

液晶ディスプレイの原理


2013-10-29

映画「パーカー」を見た。これも最近見た「裏切りのスナイパー」同様に銀行強盗の主犯格を主人公にした映画だ。やはり主人公は仲間に裏切られて、復讐すると言う話である。それにしてもパーカーは不死身すぎる。ピストルで撃たれても死なずに、病院を脱走する。手をさされて肋骨を折られても、相手をやっつける。このごろは正義の主人公ではなく、悪党を主人公にした映画が流行るのか。

{youtube}zyq-l1m9Lyg{/youtube}

 


2013-10-28

Macの音声入力拡張機能

MacのOS XがMavericksにバージョンアップされて、それで日本語の音声入力をすると実にさくさくと入力できる事に気がついた。そう言えば、バージョンアップ後に始めて音声入力機能を使った時に拡張機能をインストールするかと聞かれてインストールした覚えがある。この機能なのであろう。

MacのOS X Mountain Lionでは、iPhoneのSiriの音声入力同様に音声を入力するとそれがAppleのサーバーに送られて、そこで文字になって戻ってくるものであった。さらに一文ごとに変換しなければならない。長い文章を一気に読む事は出来ないのだ。さらに欠点としてネットにつながっていないと使えないことがある。だからネットが遅いと反応がニブい。時々、無反応になり、せっかく話した言葉が完全に無視される事がある。こんな事があるとフラストレーションがたまる。これらの欠点があるので、このごろは10/24に紹介したドラゴン・スピーチ11Jを使っていた。Mac上にVMWare Fusionを立ち上げて、そこでWindowsを開く。そしてWindows上で音声入力したものをMacにコピペしていた。

ところが拡張機能を使うとローカルで音声入力が出来るのだ。だから上に述べた欠点が無くなった。Fnキーを二度押すと音声入力モードに入る。音声を入力すると、その場で文字に変換されて行く様子が見える。色々候補を当たって考えている様子が見えるのだ。また長文でも問題ない。Appleの音声認識は元々精度が高かったので、これで非常に実用的になった。

もっともまだ欠点もある。辞書登録が出来ない。住所に登録すると言う隠し技もあるらしいがイレギュラーである。間違った時の修正機能がドラゴンスピーチほどに充実していない。だから学習をしないのだ。これは不便である。たとえば「攻殻機動隊」と入力したくても「甲殻機動隊」となってしまう。今後、この辺の改善を望みたい。

ネットで調べてみたが日本語のサイトには拡張機能の記述は見当たらなかった。英語のサイトを調べて見るとたくさんあった。

OS X Mavericks: Enhanced Dictation

How Good is Inbuilt Dictation in OS X Mavericks?

この記事によると入力スピードはNuance社のDragon Speechの方が速い。しかしそれは有料ソフトなので、Appleのものは無料にしては良いということか。コメント欄でAppleとDragonの利点、欠点の論争がある。Dragonは始めるのに時間がかかる、使っているうちに遅くなるなどの欠点がある。これは私もドラゴン・スピーチ11Jで確認済みである。Dragonの利点は賢い事、学習可能な事だ。

 


2013-10-27 

Day OneとiCloud

私は日記をDay Oneというアプリでかいている。これはMac, iPad, iPhone共通のアプリである。便利な事はiCloudで同期されている事だ。つまり殿プラットホームで書いても、それが即座に他のプラットホームに反映される事である。試しにMacとiPadを両方開いて、Macで入力すると、多少の時間遅れはあるが隣のiPadの文章が変わる。ファイルの共有法としては私はDropBoxを使っている。だから例えばWordを使って共有する事も可能ではある。その場合はWindowsとも共有になる。しかしDropBoxの場合はファイル共有を意識的にやる必要がある。iCloudの場合は意識的にやる必要がない。

私は以前はmomoというデータベース・アプリで書いていたのだ。そちらはブラウザーでかく事によりMac, iPad, iPhone, Windowsで共有できた。しかし日記専用ではないので一昨年からPage Oneに交えたと言う経緯がある。ネットで調べると様々な記事にである。

[ Day One ] 使いやすい日記アプリ。iCloud・Dropboxとの同期も可能!

「Day One」アプリを使用して日誌&日記をテンプレート化にて日次レビューを実践する方法

iPhoneの日記アプリ「Day One」は、やはり素晴らしくお薦め。

 


2013-10-26

映画「裏切りのスナイパー」

フランス映画の「裏切りのスナイパー」を見た。タイトルは少し誤解を与える。スナイパーは裏切ったのではなくて、裏切られたのだ。話は銀行強盗団の主犯格の元フランス軍兵士のスナイパーと警視の戦いである。強盗団の仲間割れからスナイパーは仲間に裏切られる。その復讐劇である。ハリウッド映画に慣れていると、フランス映画は違う。ハリウッド映画はどれも、大げさで本当らしくない。カーチェイスが多い。フランス映画はその点、地味で本当らしく見える。もっともフィクションであるのは当然だが。

{youtube}4EKiRWJgk1o{/youtube}


2013-10-25

AppleのOSと基本ソフト群の無料化

AppleがOSと基本アプリの無料化に打って出た。今回のOS X Mavericksはバージョンアップが無料なのである。それに対してMicrosoftのWindowsは有料で、それも一万円以上もする。

さらにMicrosoft Officeに相当するソフト群のiWorks、つまりWord相当のPages、Power Point相当のKeynote、Excel相当のNumbersが無料になった。これらのオフィスソフトはiPad, iPhoneでも共通で、それらも無料である。さらに写真アーカイブ用のiPhoto、ビデオ編集用のiMovie、音楽製作用のGarage Bandも無料になった。これらをWindows版で買うと数万円以上になるはずだ。もともとAppleのオフィスソフトはMicrosoftに比べて非常安かったのだが、ここに来て無料になったのだ。これはMicrosoftにた対する挑戦であろうか。

まだ現在ではPCがMacにた対して圧倒的に多い。オフィスソフトもMS Officeがデファクトスタンダードになっている。だから私もPagesでファイルを作っても、他人に公開する時は最終的にはWordフォーマットに変換している。そうでなければMacを持っていない人は読めないからだ。もちろんPDFにすれば問題はないのだが、PDFでは入力が出来ない。Excelファイルではそれが問題になる。

パソコン関係の商売として、ハードを製作して販売、ソフトを製作して販売、サービスを販売なとがある。Appleはハードもソフトも自社製作していた。Microsoftはソフトに特化していたが、昨年にSurfaceというハードを製作して、そちらに参入した。もっともSurfaceは大失敗で、多量の売れ残りが生じて1千億円程度の損失を計上した。でもMicrosoftは懲りないで最近Surface 2を発表した。これが成功するかどうかは今後を見なければならない。

アップルの新ソフトウェア戦略--「OS X Mavericks」「iLife」「iWork」無料化の狙い


 2013-10-24

Mac OSX Mavericksのインストール

私のMacBook ProとMacBook AirのOSをMavelicksにバージョンアップした。自宅のネットがとても調子が悪く、ダウンロードするのに一昼夜かかってしまった。しかし特異点庵でモバイルルーターのUltraWifiで行った分はもっと速くできた。なぞである。ともかく宣伝通りカレンダーはiOS7と同様に使いやすくなっている。地図もiOS7と同じものが出る。とはいえ、アップルの地図はまだグーグルのものに比べると劣る。iOS6の時はアップルの地図はどうしようもないもので、そのため副社長の一人がクビになったほどだ。マルチ・ディスプレイは使いやすい。私はMacBook Proでは外部ディスプレイも使って2画面で仕事をしていたので、マルチ・ディスプレイといわれてもぴんと来なかったのだが、使ってみるとはるかに使いやすくなっている。2つの画面が独立したのである。そこで私は本体にはマックの画面、サブの画面にはWindows 8を立ち上げている。ネットの評判ではMavelicsはさくさくと動くという。私にはまだ実感が湧かないが。

ドラゴンスピーチ11Jによる音声起こし

Windows 8の上で音声認識ソフトドラゴンスピーチ11Jを使って原稿を書いている。これがなかなか認識率が高くて実用的である。先日のEMの公開講演会の講演をiPad miniで録画したものの音声を聞きながら、原稿にしている。声を聞いて、それを頭の中でまとめて発声してドラゴンスピーチで文字に起こすのだ。この種の仕事では認識率が重要になる。これが低いと、いらいらして仕事にならない。今のところうまくいっている。しかし音声起こしの仕事は、やってみると大変であることが分かる。講演時間の10倍は時間がかかる。30分講演で5時間程度がめどだろうか。

 


Navy SEALS

ビデオレンタルから借りた映画「Act of Valor, Navy SEALS」を見た。アメリカ海軍特殊部隊のSEALSの活躍を描いたものである。Navy SEALSはビン・ラディンを殺害したことで有名である。出演者は本物のSEALSの隊員だと言う。だから演技の部分はさておいて、戦闘シーンはリアルである。話の内容とか演技よりは、リアリティがウリの映画である。オタクにはたまらないであろう。

しかし思想的に言うと?である。SEALSは、まあいえばアメリカ帝国主義の先兵と言うところだ。私はイスラムに同情的なことは全くないが、アメリカが正義でテロリストが悪というのは、アメリカ側の見方に過ぎない。アメリカにはアメリカの正義が、テロリストにはテロリストの正義がある。アメリカ帝国が世界を力で支配していて、それに不満を持つ人々がいるのは現実だ。いかに米軍が戦っても、根絶は出来ない。

映画の中で武器商人のヨットをSEALSがおそうシーンがあるが、あれは明らかに海賊行為だと思う。アメリカがやればOKでソマリアの海賊がやれば犯罪というのは、要するに正義とは強者の論理に過ぎないということだ。日本人にも人気のアメリカの哲学者が正義について語っているが、同じようなものだ。要するにキリスト教的世界観を持つ彼らの観点に過ぎないのだ。どんな問題でも相対的観点、批判的観点を持ってみないと、彼らにしてやられるだけだ。

{youtube}ZnlPgo9TaGo{/youtube}


2013-10-23

アップルの新製品発表

朝の2時からアップルの新製品発表があったが、とても起きていられないので聞かなかった。朝起きて調べてみると、事前の噂はかなり当たっていた。まず、 iPadであるが、 iPad Airという名前になり非常に薄くなっていた。 CPUはiPhone 5sと同じA7になっていた。

私が1番関心があるiPad miniはRetinaディスプレイになり、 CPUはやはりA7になっていた。どちらも指紋認証は見送られた。また、ゴールドカラーはなかった。事前の噂ではiPad miniはRetinaではないとか、 CPUはA6であるとかいろいろ言われていたが、ひとまずは順調である。私はすでにiPad miniは持っているが、Retinaでないのが非常に不満であった。今回は解像度を倍にして対応した。結構なことである。論文などのPDFファイルを見るにRetinaが必要である。

{youtube}ZuV9CcxbFZI{/youtube}

MacBook Proに関しては私はすでに持っているので特に興味はない。単にCPUが強化されただけである。 

Mac Proは6月に発表された時はそのゴミ箱のような形が非常な話題を呼んだ。今回明らかにされたものを見ると、非常に強力である。ただし、最低でも30万円もしそうなのでとても買うわけにはいかない。

{youtube}jQBcI9UQFsM{/youtube}

OS X Mavelicksはすでにダウンロード可能な状態になっている。私のMacBook Airのためにダウンロードを開始したが、とてつもなく時間がかかりそうである。また、 iPad 、 iPhone用にもたくさんのアプリがバージョンアップ状態になっている。このバージョンアップもいちにち仕事である。モバイル機器のアプリはPCのソフトに比べて良い点は頻繁にバージョンアップがあることだ。それに、非常に安い。これでは、よほどのことがない限りPCを買う気にはなれないだろう。


2013-10-22

明晰夢をみられるように誘導してくれるヘッドバンドLUCI

明晰夢に関してはこのブログの5/30, 31日号で述べたが、REM睡眠の時に見る夢である。半分寝て、半分起きている状態である。その時に、たまに明晰夢を見る場合がある。明晰夢とは自分が夢を見ている事を自覚している夢である。明晰夢の酔い点は、夢の中で自刎のしたい事ができることだ。だから自由に明晰夢が見られるとハッピーである。しかし、明晰夢を見る事は難しいし、まれである。私も人生で数回しか経験していない。明晰夢を意図的に見る方法が研究されている。先に私が述べたのはその手法である。

しかしここで紹介するのは、機械で明晰夢をみようというものだ。ヘッドバンドのような機械を装着する。その機械は寝ている間の脳波を観測して、REM睡眠状態になるとイヤフォンを通じて声で知らせてくれると言うものだ。まだ開発段階で出資を募っているそうだが、これがうまく働く事が分かれば、人々は幸福になれる。少なくとも夢の世界では。

英語のサイトはここ

 


 2013-10-21

映画「ホビット」の主題歌「Song of the lonerly mountain 離れ山の歌」をiTune shopから買った。250円であった。私はあまり歌を買う事はないのだが、最近、家内とこの曲を良く聴く。YouTubeにあるのだが、ネットの状況が悪いとブツブツに切れてしまうので、思い切ってiPhone用に買った。家内も気に入って自分で買った。これについては既に世界音楽散歩「ホビット The misty mountains cold」で紹介している。その中ではFar over the misty mountains coldを紹介しているが、映画のサウンドトラックに入っているSong of the lonly mountainも含まれている。ニュージーランドの歌手ニィール・フィンが歌っている。

映画ホビットより

 

写真は魔法使いガンダルフに率いられた一行が苦難の旅を続けている様子。背景はニュージーランドの山並みである。

{youtube}12xrMcolQ_c{/youtube}

 


 2013-10-20

IBMは電子血液を用いたコンピューターの研究を公開した 

コンピューターチップの集積度は1年半から2年で倍になると言うムーアの法則がある。しかし、それもそろそろ限界に近づきつつある。その解決策としては、チップを立体に積むことであろう。しかしその場合、発熱が問題になる。

コンピューターと人間の頭脳を比べてみよう。人間の脳は体積が2リットルほどで20ワット程度のエネルギーしか使わない。それに対して、テレビのクイズ番組ジェパディで人間を破ったIBMのスーパーコンピューターのワトソンは85 kwものエネルギーを消費する。人間の脳は非常に効率的なのである。

現在のコンピューターチップは2次元的である。その理由は、空気に触れる面積を大きくして冷却するためである。コンピューターチップの集積度をさらに高めるためには、チップを3次元的にする必要があるだろう。その場合の問題は、発熱である。現在のコンピューターの体積の99%はエネルギー供給と冷却のために使われている。それに対し、人間の頭脳は40%ほどが有効に使われ、エネルギーと冷却に使われるのはたった10%である。人間の頭脳は現在のコンピューターよりも1万倍も密で効率的である。そこで、将来のコンピューターは人間の頭脳と同様に、エネルギー供給と冷却を1つのもの、つまり液体で行うのが良いだろう。つまり電子血液を用いるのである。

その前にまず冷却を液体でする必要がある。ドイツのミュンヘン郊外のガルヒンクにあるライプニッツ・スーパーコンピューターセンターに設置されたスーパーコンピューターSuperMUCは155,656個のプロセッサを持つスーパーコンピューターである。このコンピューターを冷やすために、空冷ではなく液冷のシステムが使われている。このシステムの特徴は冷却に冷たい水ではなく、温かいお湯を使う点である。そのほうが効率的なのだ。

 

IBMの液冷スーパーコンピューター

 

液冷システムというものは、別に珍しいものでは無い。過去にもいろいろ例がある。しかしチューリッヒにある研究所でIBMが研究している3次元コンピューターは、毛細血管のような管を通して液体を循環させ、その液体が冷却だけではなく、エネルギー供給も行うというものである。つまり電子血液のような存在である。エネルギーを供給するにはバナジウムが最適であると考えられている。

IBMの研究者の希望は現在のスーパーコンピューターを角砂糖ぐらいのサイズに縮めることである。

 

2013-10-19

 

2013-10-18

 

2013-10-17

 

 


2013-10-16

iPhone 5s キタ!!

9月20日、発表と同時に注文してあったiPhone 5s ゴールド64GBが届いた。土曜に知らせがあり、今日、近くのソフトバンクに行き受け取って来た。ネット情報によると今週はゴールドの入荷が多く、ゴールドラッシュだという。いやゴールデンウイークというべきであろう。家に帰って、早速iPhone 4sからの移行をする。MacのiTuneを立ち上げて、4sのバックアップを取り、それを5sで復旧すれば良い。早速使ってみた。もちろん指紋認証は登録した。今日病院に行った時に、女の眼科医の先生に見せびらかして来た。

飛行機雲

宮崎駿の「風立ちぬ」の主題歌「飛行機雲」は松任谷由実が高校3年生の時に作詞作曲してものだ。あややこと松浦亜弥がカバーしているが、なかなか良い。

{youtube}0s9SaP-neH4{/youtube}


2013-10-15

2103/10/13に学習院中高等科においてジャパンスケプティクス主催公開討論会「EMについて考える」を開催した。参加者は30名程度であったが、興味ある講演と白熱した議論が展開された。それに関する報告は以下を参照のこと。

EMとは何か・・・その主張を検討する

地方行政と学校に広がるEMの活動 青森からの報告とマスコミの責任

EMは水を浄化できるか

当日のTwitterのまとめ

 


 2013-10-14

現実のアイアンマン計画

行きがかり上、アイアンマン3もツタヤで借りてみたが、話の内容が荒唐無稽で、あまりついて行けない。いつも思うことは、アメリカ映画で一度ヒットすると続編が作られるのだが、後ほど話が大げさになり、ついて行けなくなる。

ところで映画のアイアンマンは単なる物語であるのだが、米軍では実際に研究が始まっている。

US Army seeks 'Iron Man' armor for commandos

これはボディ・アーマーの内部にコンピュータをつなごうという計画だ。Tactical Assault Light Operator Suit (TALOS: 戦術攻撃軽量オペレータースーツ)というもので、外部骨格(Exoskeleton)を持ち、兵士が重いものを持つことが出来、コンピュータと接続され、防弾性を持っている。まさにアイアンマンである。ただし映画のように空を飛ぶことは出来ない。

{youtube}P0RvxWRC45E{/youtube}

タロスとはギリシャ神話に登場する、クレタ島を守っていた巨大な青銅製の自動人形である。

{youtube}LxA3wFYxUB8{/youtube}


2013-10-13

EMについて考える

東京目白にある学習院高等学校でジャパンスケプティクス主催の公開講演会「EMを考える」を開催した。2時から5時45分まで、講演が3つとパネル討論が行われた。

EMの運動の展開とその主張について
 14:00―14:30
 小波秀雄(物理化学)
・地域と学校に広がるEMの活動
 14:30―15:20
 長野 剛(ジャーナリスト)
・EMは水を浄化できるか
 飯島明子(環境生態学)
 15:20―16:10
・パネル討論 16:10ー17:30
 小波秀雄,長野剛,飯島明子,菊池誠(物理学)

それぞれ非常に中身の濃い、話であった。パネル討論でも、会場からさまざまな有益な意見が出された。私は話をiPhoneとiPad miniで録画したのだが、非常にメモリを食ってしまい、iCloudにバックアップできない。


 

2013-10-12

遺伝子音楽、DNA音楽

先日のサロン・ド・科学の散歩道で中島啓夫先生が遺伝子音楽、DNA音楽の話をされた。日本人の遺伝子学者の大野乾が1986年に発明したという。YouTubeでサンプルを探してみた。これが一つの例そだ。タンパク質音楽というのだそうだ。

{youtube}Eb6lPhU98MY{/youtube}

ここにはガン遺伝子の音楽がある。結構いい音楽になっているのがすごい。

風立ちぬ

昨晩は借りてきたDVDの「アイアンマン2」を家内と見た。実につまらないアメリカのマンガだと思った。しかしこんなマンガでもアメリカ的価値観がぷんぷんしている。だから嫌なのだ。しかし家内は1よりは良いという。それはアイアンマンが最後には秘書と結ばれるというラブストーリーの部分が良いのだろう。なぜ見たかというと男子学生にぜひ見てほしいと言われたからだ。

先月の20日に私はやはり家内と「風立ちぬ」を新京極のMovixシアターで見た。後でネットで評判を見たが、賛否両論だ。宮崎駿監督の従来のファンタージ路線ではなく、零戦を設計した堀越次郎の伝記的要素と、堀辰雄の小説「風立ちぬ」のロマンチックな恋物語を一緒にしたものだ。堀辰雄の小説「風立ちぬ」に感動したこともあり、結構楽しめた。

私は京大の航空工学科で長年助教授をしていたこともあり、航空オタク的な要素もあるし、軍事オタクでもあり、宮崎監督と共通点がある。年齢的には彼が私の2歳年長である。やはり昔を知らない若い人には分からないだろうなというのが、第一印象であった。

家内と共通した印象は、昔の日本の生活にたいするある種のノスタルジーであった。「あっ、あれもあった、これもあった」と。蒸気機関車には私は何度も乗った。現在の若い人たちには共感できないというか、分からない部分も多いだろう。昔の貧しい生活の描写は、自分の子供の頃を思い出させる。しかし軽井沢のホテルの描写とかは、当時の高所得層のリッチな生活であるが、豊かな現代では、我々もその気になればあの程度の贅沢はできる。主人公と妻のロマンスは美しくもあり悲しくもある。荒井由美の主題歌「飛行機雲」もマッチしている。

{youtube}-Q6pStcvr4U{/youtube}

主人公が飛行機の設計で使っていた計算尺だが、ネットで若い人が「あれは何?」と聞いていた。私は中学生の時に、中学校が計算尺競技会に参加することになり、先生が急遽、数学の出来る生徒を集めて計算尺クラブをでっち上げて、私はそのひとりに選ばれた。親に計算尺を買ってもらい、特訓に参加した。計算尺の滑りを良くするため様々な工夫をした。ロウを塗るためロウ石でこするとか。ロウ石というのは、地面やコンクリートに字や線を書くためのものだ。しかし滑りすぎても困る。尺が行き過ぎるからだ。計算尺は当時の科学・技術者にとっては必須のものであった。例えば私の大学院時代の恩師の林忠四郎先生は計算尺で星の進化の計算をした。

製図のシーンが出てきたが、私は理学部の出身で製図はやらなかった。図学という単位があったのだが、とらなかったのだ。航空工学科では学生にとって、製図は必須科目であった。主人公の製図の中にNACA0012翼型がちらっと出てきたと思う。当時の日本の航空技術は例えばドイツと比べて20年遅れていると言っていたが、現在もそんなものだろう。零戦も空力設計は良いが、エンジンが非力だったのが限界だ。私が昔、話を聞いた国鉄の技術者のトップの人から、戦時中にロ号潜水艦の電池をやっていて、液漏れが多く、ドイツのU-Boatの技術にはかなわなかったという話を聞いた。こういった要素技術の遅れが、日本の欠点だったのだろう。あの戦争は所詮勝てるはずの無いものであった。宮崎監督は軍事オタクで反戦派というから、私と同じだ。

主人公がタバコを吸いすぎるという批判もあったそうだが、昔の男性はあれが当たり前であったのだろう。ちなみに私は吸わないが、父はゴールデンバットという安物のタバコとか、タバコと紙を別に買って巻いてすっていた。現在の観点で批判しても意味ない。主人公は東大卒のインテリである。主人公の声がエバンゲリオンの庵野監督であるのは、声が高く、当時のインテリの雰囲気を醸し出しているからだと言う。当時のインテリは寡黙であったのだそうだ。

知り合いの女子大学生は「風立ちぬ」に共感したという。私は映画などの芸術を理解するかどうかは、しょせん鑑賞者の知識、経験、思想背景によって決まると思う。この映画はとても深い。宮崎監督の深い思想、思いを素人がパッと見て分かるはずも無い。要するに分かる人は分かる、分からない人は分からないのである。何度も見なければ分からない、見ても分からないであろう。分かりすぎる映画「アイアンマン」と対称的だ。

飛行機雲の歌詞

「高いあの窓で あの子は死ぬ前も 空を見ていたの 今は分からない 他の人には分からない あまりにも若すぎたと ただ思うだけ けれどしあわせ」

ところで主人公の妻、菜穂子さんは結核で死んだ。それは小説「風立ちぬ」でもそうだ。私の好きな小説家梶井基次郎も結核で死んだ。抗生物質が普及するまでの日本は、多くの人が結核で亡くなった。昨今の知識人の中で、科学技術の進歩はよくないとか「文明災」などとしたり顔で言う人がいる。しかし自分は医学の進歩で長生きしながら、よく言うよと思う。

またFaceBookの議論の中で若い人が、貧しくなってもかまわないといったことがある。私はそれは昔の貧しさを実感していない、観念上の貧しさに対する感想だと思う。軽井沢のホテルに行かなくてもいい、家で子供たちと楽しく遊んでいればいい。しかし、極貧のなかで食べるものも無く、結核で死んで行くのが良いとは思わないだろう。私がこれを思うのは、今後の日本、いや人類社会がだんだんと、あるいは急に貧しくなって行くだろうという予感があるからだ。今が人類文明のピークだという感じがしてならない。

あっそれから飛行機オタク的見地から言うと、映画の中に出てきたドイツの天才的飛行機設計者ユンカース博士が反ナチだとは知らなかった。彼の設計したユンカース・シュトーカJU87急降下爆撃機は有名で、あのサイレンの音を聞いただけで敵は恐れたという。

{youtube}a8-ug9MZ5cY{/youtube}

 


2013-10-11

ニュートンビーズ

昨日、某テレビ番組制作会社からニュートンビーズについての問い合わせがあった。これで2局目である。結構流行っているらしい。材料を買って実験したいと言う。私にも解説の為に出演してほしいそうだ。

京都女子大学の小波秀雄教授が、ボールチェーンを50メートル、5000円で買ったと言う。東急ハンズのような末端店ではなく、製造元から直接買ったので安いそうだ。学生さんと実験してみると言われた。私も4畳半で実験したが、高さを高くした場合に、もっと派手に高く上がるはずなので、ぜひ大学の大きな部屋でやってほしい。それと高速ビデオカメラで撮影して、ビーズの走る速さを測定してほしい。

この問題の解析解に関してまだ考えている。ニュートンビーズの曲線が懸垂線を逆にした逆懸垂線であることは証明したのだが、持ち上がる高さをビーカーを置く高さの関数として求められていない。昨日まで3日間、某委員会に出席していたのだが、その間もさぼってずっとこの問題を考えていた。

逆懸垂線(逆カテナリー)といえば、さまざまなアーチの形として使われている。たとえば岩国の錦帯橋もそうだという。日本語のWikipediaにも懸垂線と逆懸垂線の写真がある英語のWikipediaにはもっと多くの写真がある。アーチの形に逆懸垂線が良いのはなぜだろうか。

WolframAlpha

ややこしい積分や超越方程式を解かねばならないのだが、それはWolframAlphaを使えば簡単にできる。こんなに便利なものはない。大学の教養の数学で微分積分を学び、いろんな演習をやって手で計算した。以後も積分公式が必要な時は岩波の数学公式集などを使った。今やそれらが必要ない。電卓が出来て数値の計算が簡単にできるようになったが、今や数式の計算も簡単だ。もちろんMathematicaを買えばよいのだが高い。WolframAlphaはMathematicaの1行判だ。それだけではない、Wolfram Research社が集積したあらゆる機械可読データが見られる。昔の気象もデータがある限りは、調べられる。

脳の老化

私はその話を某教授にしたのだが、興味はないと言う。スマホも持っていないし興味もないと言う。そんなものは必要ないと自慢げにいう。新しい事に対する興味を失ったことは、単に歳を取った兆候に過ぎない。自慢するような事ではない。人間、体の老化は避けられないが、脳の老化は避けられるそうだ。その記事からの引用。


どうすればニューロンを長生きさせられるだろうか? 「例えば、運動をすることです。運動が脳内のプロテイン、BDNF(Brain-Derived Neurotrophic Factor:脳由来神経栄養因子)のレヴェルを増加させることは証明されています。これは、新しいニューロンの形成を促進します」と、マッテオーリは説明する。「そして、細胞を損傷させるフリーラジカルを防ぐために、抗酸化物質やオメガ3脂肪酸の豊富な食事をすることです。さらに重要なのは、歳をとっても頭脳を鍛えることです。というのも、学習は脳の柔軟さを保ち、シナプスの形成を促進するからです」。


 


 2013-10-10

http://www.skeptics.jp/

ジャパンスケプティクス公開討論会「 EM について考える」

【開催要領】

日時 2013年10月13日(日)14:00〜17:30
場所 東京都豊島区目白1-5-1 
   学習院中・高等科 501・502教室(5階) 

プログラム
・EMの運動の展開とその主張について
 14:00―14:30
 小波秀雄(物理化学)
・地域と学校に広がるEMの活動
 14:30―15:20
 長野 剛(ジャーナリスト)
・EMは水を浄化できるか
 飯島明子(環境生態学)
 15:20―16:10
・パネル討論 16:10ー17:30
 小波秀雄,長野剛,飯島明子,菊池誠(物理学)
(他交渉中)
・入場無料:
・主催:ジャパンスケプティクス http://www.skeptics.jp/

開催の趣旨
EMは当初,農業に微生物を活用する技術として提唱されたものであるが,昨今はEM菌投入で水を浄化しようとする運動,あるいはEM菌で放射能の除染がで きるなどといった主張が,影響力を持つようになってきている.特に教育現場や自治体においては,近年勢いを強めている状況すら見られる.

しかし,これらは科学的な検証がなされているとは言いがたいものが大半であり,それらの主張の内容や実践されている事業を見る限りでは,科学者として疑いを抱かざるをえない部分が少なくない.

ジャパンスケプティクスは,そのような状況に鑑みて,EMに関わる言説や各地での実践について,事実を明らかにし,科学的な観点から批判・検討を加えるた めの討論会を企画することとした.ジャーナリスト,微生物学,物理,化学の専門家を講演者,パネラーとして,さまざまの角度からこの問題に関する検証を試 みるものである.

入場について
入場は無料ですが,会場の都合により制限することがあります.参加者の確認と連絡のために,予め下の様式で参加申し込みのメールをお送りください.
件名: 「EM討論会申し込み」としてください.
お名前
職業・学校学年など(無記載でも構いません)
参加申し込み/問い合わせ先(スパム防止のために変形してありますので修正して送信してください) emforum2013 あっと gmail.com

 


 2013-10-06

サロン・ド・科学の散歩 第8回(特別企画3)

今回は「たかがねずみ、されどねずみ」と題して、実験動物のネズミがどれほど人間と似ているか、あるいは似ていないかを中心に、大阪大学医学研究科放射線基礎医学の中島裕夫先生にお話していただいた。中島先生は年の割には、とても若々しいので驚いた。

イヤー、実に面白かった。話の本題よりも、脱線した部分が面白かった。周期律表の縦の覚え方で、かなりエッチなものがあるはなし。遺伝子のDNA配列を音楽にしたもの。これなど結構様になった音楽なのである。日本文化の特殊性の話、寄生虫の話などなど。

中島先生の話は非常に面白いが、そのスライドなど結構、スレスレなのがある。聴衆の一人に中学生の可愛い女の子がいたので私はかなりヒヤヒヤした。具体的にいうと、江戸時代の絵で男のシリの穴から長いサナダムシが出てくる絵とか、女性のその部分に寄生したケジラミの絵とか。先生が大学で髪の毛をかいたらシラミが落ちた。覚えがないので調べると、子供とくしを共有したのでうつったと言う。子供はプールで感染した。あわてて薬局にシラミ対策のクスリを買いに行ったら売り切れていた。エレベーターで主婦がケジラミがうつったと話していたので、ケジラミは性行為で感染するもので、今流行しているのはアタマジラミですと言ったそうだ。

よく知られている事だが、最近は寄生虫がいなくなったので、アトピーとか花粉症が増えた。私が子供の頃は多くの生徒が回虫を持っていて、学校で検便があった。便をマッチ箱に入れて学校に持参するのだ。虫下しとして、一番始めはカイジンソウという海藻を抽出した液体を飲まされた。これがあまりに臭くて生徒一同いやがった。そのうちにサントニンという粉末のクスリになって良くなった。なぜ当時は回虫が流行ったとかというと、生野菜からうつったのだ。当時の肥料は人糞で、それが野菜に撒かれて、それが口から入って感染するのだ。当時いわれた事は、野菜は熱を加えるか、生の場合はよく洗いましょうということだ。自然食品は怖いのである。

シラミに関しては、当時はDDTを頭や背中に撒かれた。DDTは今では有害だとして禁止されているが、当時はおかまいなしであった。米軍が持ち込んだのだ。家庭では夏のある日に一斉に大掃除をする。畳を上げて、その下に害虫予防の為にDDTやBHCを撒くのである。我々はその上で生活していた。今は大掃除の風習が無くなったので、我々はダニとともに生活している。

 


 

2013-10-05

科学カフェ京都の第100回記念講演会と懇親会が、京都大学理学部セミナーハウスで行われた。私は2010/12/11の69回の例会で「電流のエネルギーは電線の外を流れる」と題して講演した。

懇親会では過去の講師が招待された。また一般市民の参加者もかなりいた。講師リストを見ると、みんな一流の先生方である。たいしたものだ。もっとも自分がそうだといいいたい訳ではない。


 2013-10-04

三四郎会と合気道

京都大学合気道部の2代から7代の同窓会である三四郎会が、岐阜県の土岐市の温泉旅館の了山で行われた。ちなみに私は二代目の主将であった。京大の合気道部は私が大学一年生になった1961年の夏に創部され、私は入部した。私は大学に入学した時に、実家の近くの吹田市にある合気道道場に入門して、3級になっていた。創部した3回生の主将も、同じ道場の人で3級であった。柔道や剣道と違って、中学、高校からやっている人はいなかったので、有段者が誰もおらず、ただの3級が主将になったのである。2回生もいなかったので、私が2回生になった時に、私が主将になった。私は根っから、スポーツや運動の嫌いな体の弱い人間であったので、体を鍛える為に合気道を始めた。

合気道部に入って一番良かった事は、今回の同窓会でも分かるように、人脈が出来た事である。私は理学部に入ったので、もしクラブに入っていなければ、文科系の人たちとつき合う事などなかったであろう。

後輩の話であるが、彼が数年前にある道場で練習している時に、初段で100キロの若い男性に一教をかけて腕を折ったと言う。一教とは一番基本的な技で、ビデオで分かるように、そんなにえぐい技ではない。それで腕を折るとは聞いた事もなかった。後輩の話では、一教の練習中に、相手が流さずにがんばったので、すっと横に流したら腕が折れたと言う。合気道をみると、なあなあにやっている、踊っているように見える。それはがんばらないで、流すからである。そこをがんばってしまうと、事故が起きる事もあるのだ。後輩は道場への出入りを差し止められてしまったと言う。彼は60代後半であるのだが、強すぎるのである。

{youtube}3Lu2x3s7QD0{/youtube}

本当にえぐい技は二教である。これで腕が折れる事はないが、とてつもなく痛い。私は大学の講義の初回に学生にこの技をかけているが、あるとき少しきつくやり過ぎたので、学生が激痛を覚えて、えらく恨まれたことがある。半年後の授業評価にまで書かれてしまった。

{youtube}hiHpwuhJoXU{/youtube}

アメリカの俳優スティーブン・セガールは自身も合気道の大家であるが、彼の主演する映画でさまざまな技を披露してくれる。映画「暴走特急」でセガールの扮するライバックの姪のサラ・ライバックが黒人のキャビン・ボーイに二教をかけるシーンがある。この技はもっとも初歩的だが、よく決まる。映画だが見事に決まっている。ただしこのボーイは奇麗に受け身をとっていることに注意。

{youtube}SOZ66u3zVN0{/youtube}

私がセガールの映画で彼の合気道を始めてみたのは「刑事ニコ・法の死角」であった。ビデオを見ると、なんと私たちが大先生(おおせんせい)と呼んでいた植芝盛平先生の写真もある。私が大学生の時の大先生はまさにこんな感じであった。大先生の稽古の映画を見つけた。多くの弟子の中で最後にクレジットが入っている田中万川(ばんせん)先生が私の師匠である。大先生の息子の吉祥丸先生もいる。大先生の棒捌きを見れば分かるように、電光石火である。

{youtube}hFM9OViKtAM{/youtube}

セガールの日本語はなんだか変だが、技は決まっている。入り身投げ表、入り身投げ裏、小手返しである。私はこの映画の格闘シーンをストップモーションで何度も見て、彼の技を研究した。投げられる悪漢たちは受け身をとっているので、専門家だ。

{youtube}f7C7t9RuTBA{/youtube}

そのセガールが自身も武術の心得のあるロシアのプーチン大統領と会っている。ロシアでも合気道は人気があるようだ。

{youtube}alYjGuJviRI{/youtube}


 

2013-10-03

ニュートンビーズの力学

ニュートンビーズの力学なるレポートを書いている。解析的計算と数値シミュレーションの二本立てだ。解析計算では、ニュートンビーズの形が逆懸垂線になることは証明した。しかしニュートンビーズが走る速さを、ビーカーの高さなどのパラメターの関数としては出せていなかった。実はアメリカ人の科学ブログがあり、そこでは

v=sqrt(g(H+2L)/2)

と出している。ここでHはビーカー表面の地面からの高さ、Lはビーカー表面からビーズの最高点までの高さ、gは重力加速度である。彼は実験とこの式があうといっている。しかしこの式は導出法に疑問がある。しかもHは実験条件から設定できるものだが、Lは結果であり、あらかじめ与えることは出来ない。

私が出した式は

v=sqrt(gH)

である。こちらの方がもっともらしいのだが、いかんせん、彼は実験とあうと言っているのだ。謎だ。実験してみて分かったことは、鎖の置き方によって結果が大きく異なることだ。つまり鎖が絡まったりすると、鎖は高く上がらないのだ。

数値シミュレーションに関しては、次のようなモデルを考えている。Nこの質点を伸びない糸で結ぶのだ。質点間の距離が一定という拘束条件を課す。運動方程式はラグランジュの未定常数法から導くことが出来る。しかし結構複雑な行列計算をやらねばならない。プログラミングまではまだ出来ていない。


2013-10-02

指紋認証

iPhone 5sの新機軸は指紋認証である。さっそく家内のiPhone 5sでやってみた。iPhoneの下についているスタートボタンに何度か触れていると、だんだんと指紋の形が取れて行く。完全を期すために、指紋の端も記録する。しばらくやっていると、完全に指紋の形が登録される。そして一度切って、スタートボタンのところに指を持って行くと、開いた。とてもうまく働く。感動ものである。私の指でテストしてみたので、家内の携帯は私にはバレバレである。次に家内の指を左右3本登録した。1本で良いというから、その指に何かあったり、指がちぎれた時の用心のためだというと、いやがっていた。

{youtube}iY5x67JeH0w{/youtube}

YouTubeを見ていると猫の肉球を登録した人がいる。すると犬でやったという人も出てきた。猫に指紋があるのだろうか。ところで死人の指には反応しないというから、人を殺して指を切って使ってもダメだという。

{youtube}hxYoHxHkqTQ{/youtube}

 映画「天使と悪魔」では虹彩の認証装置を突破するために、人を殺して目玉をかざしていた。あんなことをされてはたまらない。

{youtube}LR9h_eDGgKE{/youtube}

オーケストラ音源

「天使と悪魔」といえば、映画では「ダビンチコード」の続編だ。その映画音楽は有名な作曲家ハンス・ツィマー(Hans Zimmer)のChevariers de Sangrealが有名である。そのオーケストラ演奏を音楽ソフトウエアでオーケストラ音源のSymphobiaというソフトで演奏したものは、まさに本物とそっくりである。私は結構気に入っている。こんなものが普及したら、オーケストラの演奏家は失業してしまう。クラシックの演奏会をコンピュータでやることは無いだろうが、映画音楽やゲーム音楽ならこれで十分だ。

{youtube}jctc3wrd4KI{/youtube}

 


2013-10-01

夏の終わりは寂しい

今日から10月である。ある学生が夏休みが終わりで寂しいとFaceBookに書いていた。そう、私も小学生の頃から夏休みの終わりが、1年でもっとも嫌な時期であった。小中高の夏休みの終わりは8月の終わりである。そのころになると、あれほど暑かった日々が時々、ふっと涼しくなる。あれほど激しく鳴いていた蝉が、だんだんと少なくなる。寂しい。

大学の夏休みは学校ごとで異なる。私が神戸大学の定年後に教えていた同志社大学では10月から講義が始まるが、甲南大学ではもっと早く始まった。と言う事は同時に、冬休みが早く来るので、それはそれでよい。しかし私は、今年でどちらも定年になったので、講義が始まるという事はない。楽は楽なのだが、講義の準備をする事は、自分の勉強にもなり、それはそれで楽しいのである。

新iPhone 5sへの移行

昨日は家内のiPhoneの4から 5sへの移行の手伝いをした。まず近くのコジマでケースとひもを買った。ケースは色々あるのだが、新しいシルバーのiPhoneの色を見せる為に透明なケースでないとダメ、よくなくするので紐をつけて首からぶら下げたいので、その穴が必要、ということでほとんどユニークな選択になった。

次はデータの移行である。まずiTuneに古いiPhoneのデータをバックアップするのだが、このiTuneは最新のものでないといけないという。家内のデータと私のデータが混じると具合悪いので、私のものはMacに、家内のものはWindowsにバックアップする事にした。DELLのWindowsマシンにiTuneをインストールとしようとしたのだが、ネットの関係か死ぬほど遅い。iTuneを入れるだけで一日仕事になってしまった。さらにこのDELLはそんなに古くないのに、立ち上がりや動作が遅すぎる。私は普段はSSDつきのMacを使っているが、そちらはキビキビしてとても速い。というか、それが当たり前になったので、ハードディスクの遅さにイライラさせられる。今後買うマシンはSSD以外にはありえない。

今朝、家内がiPhoneに充電しようとしてうまくいかないと言う。私のiPad miniと充電ケーブルが共通なので、色々試してみると、iPhoneについて来た充電ケーブルが不良のようだ。ケーブルが2本あったから分かったようなものの、そうでないと悩んだであろう。もしiPhone自体の不良だと、交換などで時間を食って大変だ。充電ケーブルならそれ単体で売っている。

と思って、よくテストしてみたら、なんとUSB端子の刺し方が甘かっただけだった。ソフトバンクに持って行って文句を言ったら、恥を閣だけであった。

客「PCが動かん!!」

お店「電源入れましたか?」

客「バカにしとんか!」

お店「すみませんが、もう一度チェックしていただけますか?」

客「あっ、動いたわ。ははは」

デジタル・デバイド

スマホにしろパソコンにしろ、その使い方は簡単ではない。それらが好きな人はともかく、普通の人で、それらを単に道具として使いたいと言う人たちに取っては、ひとたびトラブルと、ニッチもサッチもいかなくなる。家内はプリンタがうまく動作しないと、買い替えようと言うが、そんなことをしていたら、家中プリンタだらけになる。またうまくいかないと、コジマに聞くとかソフトバンクに聞くとか言っているが、所詮、自己責任で教えてくれるはずもない。家内はよく、僕が死んだらだれに相談すれば良いと言うから、その時は君のデジタルライフは終焉だといっている。

私の周りで、名誉教授だとか教授だとかいう人たちでも、これらのITガジェットを使いこなせていない人は多い。彼らが頭が悪い訳でないのは当然だ。頭の善し悪しと、新しい事に対する適応能力は別なのであろう。IT機器やソフトを使いこなせる人と、そうでない人の間にある格差をデジタル・デバイドとか情報格差いう。アメリカではITを使いこなせる人と、そうでない人には所得格差がある。デジタル・デバイドは一般的に若者、高学歴者、高所得者とそうでないものの差であるが、名誉教授は超高学歴者でありながら、ITを使いこなせないということは、要するに高年齢者なので頭の柔軟性が失われているのだろう。英語は理解するし、微分方程式も分かるが、スマホを使えないとかFaceBookを使えないとか、いびつな状態である。今後この格差は広がる事すらあれ、狭まる事はない。

 

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マッド・サイエンティストのつぶやき Mon, 30 Sep 2013 21:09:13 +0900
2013年9月 https://www.jein.jp/jifs/blog-matsuda/mutter/963-1309.html https://www.jein.jp/jifs/blog-matsuda/mutter/963-1309.html

2013-09-30

iPhone5sとVP400E

iPhone 5sについてと、iOS7についてのアップルの発表会のプレゼンを聞いた。まずはiPhoneについて。CPUチップは64ビットのA7である。そのパフォーマンスはiPhone5用のA6の2倍、私の持つiPhone 4SのA5

富士通VP400Eの4倍近いと言う。メモリは1GBである。私は60年代からコンピュータを使っているので、この値は驚異的である。京都大学に1969年に導入された富士通の大型計算機FACOM 230-60のメモリは最大262Kワードである。1ワードは42ビットであった。

80年代末に私が使っていた富士通のスパコンVP400Eのメモリは256MBであった ので、iPhoneの1/4である。写真の巨大な筐体の中にあるメモリの4倍のメモリがiPhoneの中に入っていると思うと感無量である。

ところで今日、家内のiPhone 4S、32GBのシルバーが届いたと近くのソフトバンクから連絡があった。11時開店だが、10分前にいくと応対してくれた。いろいろ手続きをするのに、1時間近くかかった。私の注文した64GBのゴールドはまだ届いていない。


2013-09-29

iPhoneとアンドロイド

 なかなか興味深い記事を読んだ。Android Google Playの収益の危険な地域性(その3)である。アンドロイド用の有料ソフトの購買者が多いのは、世界的に見て日本と韓国だけであるという。また日本は世界でも例外的にiPhoneのシェアが高い。最近ドコモがついにiPhoneを販売する事にしたので、日本におけるiPhoneのシェアはさらに高まるであろう。するとアンドロイドの有料ソフトが売れる国は韓国だけになり、アンドロイドは崩壊するのではないかと言う観測記事がある。

スマートフォンとタブレットをモバイル機器と呼ぶ。モバイル機器は基本的に二つに分かれる。アップル製のiPhone, iPadとそれ以外である。アップルはiPhone, iPadのハードも基本ソフトであるOSも自社で提供している。一方、アンドロイドの方は基本ソフトはグーグルのAndroidであり、ハードはいろんな会社が作っている。主要なメーカーは韓国のサムソンであり、中国製も多い。

iOSの有料ソフトの販売数のランキングはアメリカ、日本、英国、オーストラリア、ドイツであり、ようするに先進国で、人々が経済的に余裕のある国だ。順当なランキングである。iPhoneなどアップルの製品は高いことで有名であるので、iPhoneを持てるのは基本的にお金に余裕のある人たちだ。

スマホの台数のシェアで言えばアンドロイドの方がiPhoneより多いが、それは要するにアンドロイドのモバイルが安く、発展途上国の人々はそちらを買うからである。アメリカにおいてさえ、iPhoneのユーザーは高所得層で、アンドロイドはそうでないという調査がある。ようするにiPhoneはステータスシンボルの役割を果たしているのだ。

ところがAndroidの有料ソフトのランキングは異常である。グラフを見れば分かるように圧倒的に日本と韓国である。あとはアメリカが少しで、他の国にはほとんど浸透していない。だから先に述べたように、ドコモがiPhoneを発売して日本に置けるiPhoneのシェアがさらに上がると、アンドロイドの有料ソフト勢は崩壊するのではないかと言うのだ。するとソフト開発者がiPhoneを優先するので、ますます差が開いてくる。台数のシェアだけでは語れない側面がある。

私が驚いた事は、日本は世界で見て、ちっぽけな国で、大して影響力がないようにみえるがそうでないこと。韓国のITにおける、ここ10年ほどの恐るべき発展である。それは主にサムソンの躍進である。

アップルはガラクタは売らない

つぎのビデオでアップルのスティーブ・ジョブスが「アップルはガラクタ(Junk)を売らない」と公言している。つまりアップルの製品が高いのは、意図的に良いものを高く売っていると言うのだ。そう聞くと、iPhone 5cがなぜ事前の予測と異なって、安くなかったのかがよくわかる。ガラクタで中国や韓国と競争しないと言うのだ。

{youtube}Yu0qeb_rJYU{/youtube}

ファブレットに関する私の誤解

 Galaxy Noteなど Phabletの真の価値という記事も目から鱗だ。

ファブレット(Phablet)とはフォーン(Phone)とタブレット(Tablet)を掛けた造語であり、要するに大きなスマートフォンである。アップルはそれを出していない。ファブレットの主要なメーカーはサムソンである。私はiPhoneの画面の小ささに、かなり困っている。スマホを主に電話として使うなら小さい方が良いので、iPhoneのサイズは良い。ところがネットの閲覧などを考えると、画面は大きい方が良い。たくさん字数が入るだろうからだ。だからファブレットが発明された。

ところがそうではないと言う。画面のサイズが大きいと、確かに字は大きいが、入る内容量に大差はないと言うのだ。さらに知って驚いた事は、アンドロイドは遅いのでiPhoneほどには画面がスムーズに動かない、それを克服する為に強力なCPUを搭載する、すると電池の消費が激しい、そこで大きい電池を入れたい、そのためにサイズが大きい方が良い、というのがファブレットの画面が大きい理由だと言うのだ。

サムソンと韓国、かつての日本の姿

 サムソンと韓国の躍進を見るにつけ、私は80年代の日本を思い出す。当時、日本も日本のコンピュータメーカーも日の出の勢いであった。80年代末のバブルの頃は、日本の土地の時価総額が米国を凌ぐのではないかと言われた。また「ジャパン・アズ・ナンバーワン」という西欧人の本が売れて、私を含む日本人は天狗になっていた。我々はその勢いがずっと続くと信じていた。21世紀は日本の世紀だと確信していた。しかし90年代に入ると日本の勢はガタンと低下した。そして失われた10年とか20年と言われる時代に突入した。

80年代の日本のコンピューターメーカーである富士通、日立、NECも日の出の勢であった。富士通と日立はIBMの汎用機のコピーを作り、IBMより良い製品をよりやすく売った。またスーパーコンピューターも、それを始めて開発した米国のクレイの製品より、高性能で安いものを販売した。

ところが米国とIBMの画策で日立の社員が米国で逮捕されると言う事件が起こり、日本の会社は多大な賠償金をIBMに支払う事になった。またスパコンもアメリカ政府の激しい介入で、一部の国立大学ではクレイを無理矢理買わされた。また90年代に入り、スパコンのアーキテクチャーが米国主導でかわり、日本の主導権は失われた。ようするに90年代に入り、日本全体の国力も、コンピュータ会社の威勢も失われた。

そういう過去の経験から見ると、現在の韓国とサムソンの勢いも、いつまでも続くとは思われない。実際、サムソンはアップルと米国政府の激しい攻撃を浴びている。韓国人がそれに異論を唱えているのを聞くと、80年代の日本を思い出すのだ。韓国とサムソンの勢は多分、2020年頃までには失われるのではないだろうか。

そもそなぜ日本が90年代に入り勢を失ったのか。いろいろな分析がある。政府の施策の失敗とする説がある。しかしわたしはそれは構造的なものであると思う。つまり少子高齢化である。そのことにより労働力が失われ、福祉に費やす費用が増加した。中国や韓国は(当時)は若い国であった。しかし中国も韓国もこれから少子高齢化に突入する。だからこのまま勢が持続するとは思われない。

つまり日本が衰退を始めたのは、世界でもっとも進んだ国であるからだ、というのが私の見方である。

 

 


2013-09-28

アイアンマン

ツタヤで「アイアンマン Iron Man」のビデオを借りてみた。以前、講義のレポートで学生がぜひ見るように勧めていたものだ。よっぽどのファンなのであろう。という訳で見たのだが、科学的にはあり得ない。エネルギーをどうするのだと言いたい。熱プラズマ反応炉「アーク・リアクター」だって。ありえないつうの。それにあんなに精巧なものを洞窟で手作りできる訳無いつうの。

要するにスーパー・ヒーローものである。スーパーマン、スパイダーマン、バットマン、ウルトラマン、ガッチャマン・・・。彼が着ているのはパワードスーツである。

{youtube}eL_I_9wVOmM{/youtube}

人工知能J.A.R.V.I.S.(ジャーヴィス)は私も欲しい。ただしこれは現代では無理だ。最低でもあと10年、多分20年は必要だろう。

{youtube}D156TfHpE1Q{/youtube}

Mac のUnix

MacのオペレイティングシステムであるOS XはUnixの上に構築されている。しかしほとんどのユーザーは、そんなことは気にしないで、Macの優れたUIを使っている。ところでMac上でそのままUnixのコマンドを発することも簡単にできる。これがWindowsだとバーチャルソフトを立ち上げて、その上で仮想マシンとしてUnixなりLinuxを動かさなくてはならず、厄介である。

私は急にMacのUnixを使ってみたくなった。Unixについては神戸大学時代「情報数理」という講義で使っていたのだ。当時はまず講義をして、次の時間に演習というパターンであった。

ところで長い間使っていなかったので、知識が錆び付いてしまっていた。そこで再び勉強しようと思ったのだが、ネットでは十分に詳しい記事が無いので、いっそのこと教科書を買うことにした。日本語の本もあるがやたら高い。そこでアメリカのアマゾンからKindle版を買うことにした。タイトルは

Learning Unix for OS X: Going Deep With the Terminal and Shell, by Dave Taylor, O'REILLY

$9.31であった。アマゾンの本の値段はコロコロ変わるので、これはあくまで買った時の値段である。この本は初心者用である。私はbashはよく知らない。昔はcsh, tcshを主に使っていたからだ。bashの使い方をマスターするには、この本は不十分かもしれない。最終的にFortanを入れたいと思う。私はWindowsのVisual StudioでIntel Fortranを使っているが、MacでもFortanを使って見たいと思ったのだ。

なぜアメリカのアマゾンで買ったかというと、私のもつKindle, iPad2, iPad3, iPhoneはそれようになっているからだ。日本のアマゾンで買うとiPad mini用になってしまう。この二つが統合できないことが悩みの種である。iPad miniでもクラウドにあげた本は読むことは出来る。しかし辞書が英英辞典になり、和英辞典が使えない。これは痛い。


 2013-09-27

潮汐力と遠心力を巡るよくある誤解

私が8/6に科学の散歩道に書いた「潮汐力と遠心力を巡るよくある誤解」に関して、Twitter上で結構な議論があったようだ。それが「潮汐力と遠心力を巡るよくある誤解を巡るよくある(?)議論」と題してアップされている。9/6のことである。道理で私の当該の記事のアクセス数が急増した訳だ。ネットの威力はすごい。

議論には琉球大学の自称「色物物理学者」こと前野さんと気象庁のアキシオンさんこと木下さんも参加している。彼らはさすがに頭が良い。前野さんが書いた図は私のものより丁寧で分かりやすい。しかし前野さんの図4でも良いのではないかと言う疑問に関しては、そもそも潮汐力の定義が問題になる。潮汐力に寄与するのは、非軸対称(非球対称)な力であるので、図4は間違いなのだ。どんな教科書を見ても、潮汐力の数学的な導出は簡単で、月による重力を微分するだけである。その結果は、地球上の月に対する近地点と遠地点では、潮汐力の大きさは等しく、方向は反対になる。つまり図4は間違いである。

私の議論は、多くの解説で月の潮汐力を説明するのに遠心力を使っているので、その「遠心力」とは何かを解説したものだ。結論は、そこでの「遠心力」は本来の遠心力ではなく、その一部に過ぎないと言う事だ。所詮大した問題ではないのだが、あまりに誤解がはびこるので書いただけだ。

そして、「理系」が世界を支配する

という特集が組まれた雑誌「Courier Japon 11月号」が発売された。読んでみたが、内容は私の知っていることばかりであった。しかしなかなか面白い。アメリカでは理系の卒業生の方が文系よりも給料が高いと言われている。中国もドイツも指導者は理系人間である。日本だけが世界の中で文系人間が威張っている国である。もっとも鳩山元首相や菅元首相は理系人間であるが、必ずしも指導力を発揮できなかった。しかし文系の指導者といえども理系のセンスを持つことはこれからの世界では必須である。

内容は以下の通りである。

Part 1 世界のルールは理系が作る

数字がすべての世界で私たちは「アルゴリズムの奴隷」になるのか

世界を震撼させた「新時代の預言者」ネイト・シルバーとは何者か?

ハーバードの学生たちに広がる、急激な「文系離れ」の波紋

ウォール街を支配しているのは、経済学者ではなく数学者たちだった

米国の「理系学生」の優秀さは、日本の学生とは比べ物になりません

「文系バカ」になりたくないなら、まず統計を転ぶことから始めよう

Part 2 「理系」は世界をこう見ている

もし「数学オタク」のアラフォー女性が、世界的IT企業のCEOになったら

「理系」のお億万長者たちが夢見る、あまりに過激な「未来予想図」

経験や勘に頼らない、 Google流「革命的ベンチャー投資法」

これからのビックデータ時代に「必要とされる人材」の条件とは

「文系人間」でも楽しめる、必読「理系の教養本」ガイド

 


 

2013-09-26

Knowing

ビデオレンタルで借りた映画「ノウイング Knowing」を見た。実はこの映画は9/21の柴田先生の講演の中で、推薦されたものである。というのも映画の最後で全人類が巨大な太陽面爆発であるスーパーフレアで全滅するのである。主人公たちの幼い息子と娘だけが助かり、未来のアダムとイブになるという話だ。柴田さんは、話の内容はともかく、スーパーフレアの危険性に関して、多分、専門家の助言をえているだろうという。主演はニコラス・ケイジである。

{youtube}uHw8URgDvxM{/youtube}

スーパーフレアによる被害

問題は映画の最後にあるように、スーパーフレアで、はたしてあのようにビルが次々と倒壊するような熱風が吹くかということである。今までに記録された最大のスーパーフレアは1859年に英国のリチャード・キャリントンによって記録されたキャリントン・フレア(Carrington Event)である。太陽面でフレアが爆発して、コロナ質量放出を誘起して、それが17時間という短時間で地球に到着して、地球に磁気嵐を引き起こした。そのため巨大なオーロラが発生して、カリブ海でも見ることが出来た。このキャリントン・フレアによる被害は、電報用紙の自然発火程度であった。

しかし1989年にX5クラスの太陽フレアの影響で、カナダのケベック州で12時間の停電が起きて、600万世帯が影響を被りl00億円程度の被害が出た。太陽フレアが爆発して、コロナ質量放出によるプラズマが地球を直撃すると、送電線に大電流が流れて変圧器が焼けきれたりして停電になるのである。キャリントン・フレアより弱いフレアでなぜ大きな被害が出たかというと、人類社会が電気に頼るようになり、電力網が磁気嵐に対して脆弱だからだ。文明が進むほど、この種の自然災害に対して、人類社会は脆弱になる。一番のウイークポイントは電力網なのだ。だからアメリカやカナダといった先進国がスーパーフレアに弱いのである。つまり映画ノウイングにあるような超巨大フレアでなくても、先進国はかなり簡単に壊滅する。

この問題に敏感になったアメリカは2008年にアメリカ科学アカデミーの詳細なレポートを出している。これを読むと、恐ろしいことに、キャリントン・フレア程度のものが現在起きて、地球を直撃した場合、アメリカ東北部だけのシミュレーションでも数百万人が死ぬと予想されている。その原因は映画にあるような直接的影響ではなく、停電が数ヶ月から1年近く続くからである。

原因は異なるがアメリカがサイバー攻撃で攻撃されて、電気、水道などのインフラが破壊されたニューヨークの惨状を小説「Cyber Storm」が描いている。電力網が破壊されると、食料輸送が出来なくなり、人々は餓死するのである。坂本龍一が「たかが電気のために子供たちの命を危険にさらすのは・・・云々」と言ったと伝えられているが、「たかが電気がなくなる」と子供だけでなく、大人もみんな死ぬのである。現代社会は電気を食って生きているのである。単に明かりがなくなるとか、スマホが使えなくなると言った程度ではすまない。

まず病院で生命維持装置で生きている人たちが死ぬ。人工透析ができなくなり、多くの腎臓病患者が死ぬ。薬を運べないし薬を作れない。弱い病人はみんな死ぬ。電車が動かないだけでなく、車も動けない。信号機が働かないので、交通事故が多発する。ガソリンスタンドでガソリンをくみ上げることが出来ない。ガソリンを運ぶ車が動かない。食料が輸送できない。飛行機は当然飛ばない。銀行のコンピュータがやられるので、現金以外は役に立たない。銀行預金は全部パーになり経済は壊滅する。

壊れた変圧器は予備が少ない。あっても運ぶことが出来ない。技術者の数が少ない。変圧器を作り直すには最長1-3年はかかる。だからスーパーフレアによる停電の大被害から回復するには、最長1年近くかかる。スマートグリッドほど弱い。文明度が進んでいるほど脆弱なのだ。

だからスーパーフレアで生き延びるのはアフリカやブータンのような発展途上国であろう。先進国はみんなやられる。ちなみに中国で計画されている電力網は電圧が高いので、よけいに脆弱であると報告書には書いてある。

太陽フレアの強さは弱いものから順にC, M, X, X10クラスに分類されている。クラスが上になるとエネルギーは10倍になる。X10クラスのものは1年に1回程度起きる。だからケベックに被害をもたらした程度の太陽フレアはしょっちゅう起きているのだが、プラズマが地球を直撃しない限り問題にはならない。

今まで人類が経験した最大のフレアはX30程度であった。X100クラスで10年に1回、X1000クラスで100年に1回、X10000クラスで1000年に1回起きるとされている。X100クラスのフレアでも地球を直撃すると、宇宙ステーションに滞在している宇宙飛行士は重篤な放射線障害をおこし、死亡する可能性がある。航空機の乗客、乗員も無事ではない。

さてもとの疑問に戻って、映画のノウイングの最後に描かれたような現象は起きるのだろうか。キャリントン・フレア程度のフレアでは起きないことは明らかだ。しかし1000年に1度以下程度のX10000以上のスーパーフレアが起きたらどうだろうか。太陽以外の星で太陽最大のフレアの1000倍のエネルギーのスーパーフレアが起きた場合、その星の明るさが数パーセント明るくなった。もっと明るくなるようなスーパーフレアがもし太陽で起きた場合、地球表面の温度は上昇する。コンピュータシミュレーションによれば、日本が真昼の時にそれが起きたとして、温度上昇は砂漠の中東地方が一番大きい。地表の温度が上昇すると、そこに接した空気の温度が上昇して上昇気流が発生する。そして低気圧が出来る。スーパーフレアの規模にもよるが、巨大な台風が発生する可能性はある。これがノウイングのような現象の起きる機構だと私は思う。しかし、何度も述べているように、そんなに大きなスーパーフレアが起きなくても、キャリントン・フレア程度で先進国は簡単に壊滅するのである。

雑誌Natureの政治性

柴田さんは太陽に似た星のスーパーフレアをたくさん観測して、それが特異な現象でないことを示した。そのため我々の太陽もX10000程度のスーパーフレアが1000年に1回程度起きる可能性があることを警告しようとした。柴田さんはそのことを雑誌ネイチャー(Nature)に書こうとしたら、その部分は編集者に拒否されたという。人を不安に陥れるようなことを書いてはいけないというのだそうだ。

地球温暖化問題に関して、政治的には二酸化炭素原因説が正統派となっている。ネイチャーとかサイエンティフィック・アメリカンはここでも政治性を発揮している。正統派以外の論文を拒否するのである。柴田さんも私も、宇宙物理学者の一部は地球温暖化は太陽のせいではないかと疑っている。20世紀は非常に太陽活動の盛んな時期であった。その時と温暖化が一致している。また17世紀初頭にはマウンダー極小期といって、太陽活動が低迷した時期があった。その時と小氷期が一致するのである。ところが2008年に始まった太陽周期24では太陽活動が異常なほど弱いのである。さらに2019年から始まるはずの周期25は存在しないのではないかという説すらある。すると、今後数十年は地球温暖化どころか寒冷化の危険すらある。生物にとって寒冷化の方が温暖化より遥かに恐ろしい。植物の生産性が低下するので、食料危機になるからだ。

常識とは違って、人間を含む生物にとり「温暖化は善、寒冷化は悪」なのだ。

 


2013-09-25

Evernoteのバグ

最近iPhone 4sとiPad2, 3, miniをiOS7にバージョンアップした。それに伴い、mini以外のEvernoteをバージョン7にアップグレードした。Evernote社はiOS7の精神に則り、グリーンでクリーンなったと自画自賛しているが、ところが多くのデータが消えてしまったのだ。ごく最近のデータと2011年以前のデータのみ見ることが出来て、それ以外のものはない。冷え汗が出た。営々とためたデータが失われたのであろうか。ところがMacのEvernoteから見るとデータはあるので、データが消えたのではなくて、単に新しいバージョンのバグなのであろう。その証拠に、古いバージョンのままのminiのほうは、データがすべて見えるのだ。

App storeに行って、利用者の評価を見ると、ほとんどの人たちが同じ症状を訴えていて、多くの人たちが星一つの評価をしている。そのなかで、再インストールしたら回復したという報告があった。私は昨日、Evernote社にクレームの報告をしたら、今日返事が返ってきて、再インストールしろという。そこでiPhone, iPad3のEvernoteを再インストールしたら、データが回復したのでヤレヤレである。

それはそうと、Evernoteをビジネスとか、もっと重要な用途に使っていたとしたら、データが見えなくなるというのは重大な障害であろう。ルック・フィールがどうでも良いとは言わないが、まずはちゃんと動くことが第一であろう。Evernote社は自社の製品をチェックもしないで、出荷したのだろうか。信じられない話である。彼らに対する信用が一気に失われた。

実は前回のバージョンアップの時も、星一つになった。それは使い方が大幅に変わったので、ユーザーが戸惑ったからである。しかし、その不満はユーザーが慣れるに従い、鎮静した。しかしデータが見られないという今回の障害は、使い方やルック・フィール以前の問題だ。


2013-09-24

ニュートンビーズの数値シミュレーション

昨日、ニュートンビーズの運動についての数値シミュレーションをしようと考えた。今日は1のアイデア、つまり質点をゴムひもでつなぐモデルについて、Matlabでプログラムを組んだ。プログラム自体は、それほど時間もかからずに出来たが、質点の運動が予想したものとは異なる。まだバグがあるのか、モデルが悪いのかは、今日の段階では分からない。

iPhone 5s

iPhone 5sが売れているという。3日間で900万台も出荷したそうで、それは過去のモデルの中でも最大だそうだ。特に金色と銀色のモデルは、圧倒的に不足しているので、私はまだ手にしていない。いつになったら入荷するやら。

「またまた永久機関」の記事に関する神戸大学からの連絡

私はジャパンスケプティックスのホームページに2013/61/11づけで「またまた永久機関・・・海水発電」と題する記事を書いた。神戸大学名誉教授の西岡氏が提案した発電方法は一種の永久機関であるとする解説である。

その記事に関して西岡氏の所属する神戸大学海事科学研究科のホームページ管理者から、先週、メールがあり、私の記事には誤解があるという。それは西岡氏の「発明」が神戸大学のホームページに掲載されて、後に削除されただろうというネットのうわさを私が書いたことに対してである。

管理者氏によれば、西岡氏の記事が神戸大学海事科学研究科のホームページに出た事実は無いこと、共同通信PRワイヤーというところに西岡氏が記事を書き、そこに神戸大学のロゴをコピー・ペーストしたらしいので、それで誤解されたのであろうということだ。

私は管理者氏からのメールの要点をスケプティックスのコラムに書いた。

 


2013-09-23

ニュートンビーズ解説

なんか今日のテレビでニュートンビーズの番組が放映されたらしい。私に問い合わせてきた番組だろう。しかし私に対するクレジットは無かったという。慣性の法則で説明されたらしいが、それだけでは不十分である。そこで書き溜めていた解説をここに一挙公開する。

ニュートンビーズの力学と逆懸垂線

実験成功

今日、秘密研究所で秘密研究会を開き、ニュートンビーズを実験してみた。神戸の東急ハンズで1mあたり単価231円のクロームメッキのボールチェインを30m買った。6930円であった。それをコーヒーマグに入れて、高いところから鎖を落とすと、奇麗に逆懸垂線状に鎖が持ち上がった。

数値シミュレーション

そこでニュートンビーズの運動についての数値シミュレーションをしようと考えた。アイデアとしては、1) 質点をゴム紐でつないだモデル、2) 拘束条件のあるラグランジュ方程式を使う方法、が考えられる。後者について、少し勉強した。


2013-09-22

映画「スタートレック・イントゥ・ザ・ダークネス」を京都の新京極にあるMovixシアターで家内と見た。スタートレック・シリーズは家内の弟が1960年代の高校生の時に見ていて、それに啓発されて私も見た。なかなかおもしろかった。1970年代終わりから80年代にかけての映画も見た。2009年の新キャストによる映画も見た。もとのカーク船長とミスター・スポックに慣れたものとしては、若造のカーク船長があまりに幼稚なので、失望した。

さて今回のウリは悪役ハリソン中佐、実は以前の映画「カーンの逆襲」に出てきたカーンが、今人気上昇中の英国の俳優ベネディクト・カンバーバッチが演じていることだろう。カンバーバッチはBBCのテレビ番組「シャーロック」でシャーロック・ホームズ役を演じて人気を博した。この映画でカーンは悪役というが、それほどでもない。むしろ部下思いであり、艦隊のマーカス提督のほうがよほど悪役だ。カーンは遺伝子操作を受けた優性人類だそうで、抜群の体力と知力を誇るという。私もこうなりたいものだ。しかしその優性人類がアホなカーク船長たちに負けるというのだから、たいしたことないか。

{youtube}yhz4A5BCMAA{/youtube}

シャーロック・ホームズ役のカンバーバッチをどうぞ。

{youtube}eyaS6PgBohU{/youtube}

ちなみに「シャーロック」でジョン・ワトソン役を演じたフリーマンもブレークして「ホビット」でビルボ・バギンズ役で主演を張っている。

{youtube}JTSoD4BBCJc{/youtube}


2013-09-21

本日はNPOあいんしゅたいんのオフィスである、坂東理事長の通称ホワイトハウスでサロン・ド・科学の散歩道が行われた。講師は京都大学付属天文台長の柴田一成先生であった。太陽物理学における日本の権威者の一人だ。参加者は今まで一番多い、20人近くになった。参加者の内訳は名誉教授が5名、講師である教授1名が大学関係者である。さらに私が京都大学工学部航空工学の助教授をしていた時に、大学院修士課程の学生として私の研究室にいた人が二人いた。後の雑談で、実は柴田先生、私のかつての学生諸君、それに東北大学の宇宙論、相対論の権威者であるニ間瀬敏史教授はみんな同級か、それに近いことが分かった。聴衆の中には高校一年生もいて、彼は熱心に毎回参加している。その他の方々は退職者、先生、民間の方である。

柴田さんの話は太陽フレアとはなにか、日本におけるフレアの研究の話から始まった。太陽フレアというのは太陽面上での爆発である。フレアはしょっちゅう起きているのだが、人類にとって重要なのはスーパーフレアと呼ばれる大爆発である。柴田さんの話は下記の著書に詳細に述べられている。

「太陽 大異変」柴田一成、朝日新書407、朝日新聞出版、2013年6月30日、第1刷り、798円

 


2013-09-20

 iPhone 5s発注

今日はアップルのiPhone5sの発売日である。iPhone 5cは予約を受け付けていたのだが、5sの方は生産がトラブっているようで、予約を受け付けていない。今日発売なのである。私は現在はiPhone 4s、家内はiPhone 4を使っている。ちょうど2年目の切りなので、新しいのに買い替えようと思う。実は私のiPhone 4sは16GBなので、写真を撮りすぎたために、メモリが圧迫されてニッチもサッチも行かなくなっていた。iOS5から6へのバージョンアップもままならなかったのだ。そこで写真を大幅に削除してスペースを空けて、なんとかiOS6にアップした。後で述べるが、昨日iOS7にアップした。その話は後で。

私はソフトバンクなので、店の開店時間を調べると11時からだと言う。そこで11時過ぎに家内と出向くと、既に先客が来ていた。さて我々の番になって、何色にしますかと聞かれた。いままでのiPhoneは黒と白だけであったが、今回は金色、銀色、灰色だという。アメリカの購入希望では灰色が圧倒的金銀はほとんどないと読んだ。しかし私は家内のもの、古いものと区別するために、私は金色、家内は銀色にした。メモリは私は64GB、家内は32GBにした。現物は無くて、予約ということになった。

家に帰って調べてみると、日本では金色が人気であるが、非常な品薄らしい。アップルは見込み生産を間違ったと思う。数週間で届くのか、数ヶ月かかるのか、よく分からない。しかし後で述べるように、iOS7にバージョンアップしたので、iPhone 5sの主な特徴はかなり実現しているので、まあ、いつ届いてもかまわない。

ところがiPhone 5cが予想されたほど安くないということで、批評家やブロガーにたたかれ、株価が下がったという。しかし私は5cには興味が無いのでどうでもよい。5sはどうかということだ。新機軸としては指紋認証システムであろう。これはよい。私は最近、パスコード入力を設定した。先日述べたAndroidの遠隔操作ソフトの話を読んで、パスコードの設定が必要と思ったからだ。しかしこれが結構めんどうである。指紋認証はそれを簡単化すると思われる。後の新機軸と言えば、カメラの機能のアップ程度か。

アップルのイノベーション力の枯渇

私はアップルはジョブスの死後、イノベーションが枯渇しかけているように感じる。新製品を発表した時に、ウワッとうならせる新しさが少なくなっている。Siriは新しかったけれど、今回の5sの宣伝文句は指紋認証を別とすれば、64bit CPUのA7を採用してスピートが速くなったということだ。もちろんそれは良いことではあるが、定性的な新しさではなく、定量的なものだ。

しかもアップルの最近のやりかたがせこくなっている。例えばiPad miniだ。私はあの大きさは極めて良い大きさで、必要なものだと思う。ところがスペックはCPUも画面解像度も一時代前のiPad 2と同じである。それしか出来なかったとすれば、技術力が無いということである。しかし新しいCPUもRetinaディスプレイもすでにあるのだ。それをあえて古い技術を投入したのは、次のバージョンでCPUを新しくする、解像度を上げるためであろう。これは簡単なことで、あまり努力を必要としない。これを「せこい」と見るか、技術力が枯渇していると見るか。うわさでは、つぎのiPad miniはCPUは強化するがディスプレイの解像度はアップしないという。もしそうであれば、まったく消費者をバカにした態度であろう。

ジョブスは神格化されているが、彼もいろいろ読み違いをしている。例えばiPad miniだ。彼はあのサイズを断固拒否したという。しかしジョブスの死後、発表してみると、ベストセラーである。大きなiPadよりminiの方が、はるかに人気がある。使ってみれば分かることだが、iPadでは重すぎて、机の前で使うというのが主な使い方になる。iPadを寝転んで使うのはつらい。つまりiPadはデスクトップまたはラップトップの代替、つまりパソコンの代替なのである。ジョブスの頭の中には、パソコンをタブレットで置き換えようとしたのであろう。しかし人々はiPad miniを小さなパソコンとしてよりは、大きなiPhoneとして使いたがっているように思う。

同じ間違いは、iPhoneの画面サイズである。現在のサイズは4インチであるが、サムソンなどの他社はもっと大画面のもの、いわゆるファブレットを出して人気を博している。正直言って、私も大きな画面が良いと思っている。結局スマホをコンピュータでもある電話機ととらえるか、電話も出来るコンピュータととらえるかで、画面サイズが決まる。前者なら小さい方がよいので、現在のiPhoneのサイズはベストであろう。しかし私のように後者を望むものは、画面は大きい方がよいのだ。その意味でサムソンのものは良いが、Androidだから使いたくない。

サイズの上限はiPad miniで抑えられているとすれば、Kindleサイズのものが欲しい。できれば2画面にするか、Microsoft Surfaceのようにキーボードをつけるかである。

アップルの技術力の弱さとして、グーグルが出したGoogle glass相当品を出せていないこと。Pebbleなどの時計型を出せていないことなどがある。もちろん研究は必死でやっているはずだが、まだ出せないということは、技術力が無いということだ。

iOS7

昨日の19日にiOS7がダウンロードが可能なった。そこで私はiPad2, iPad3, iPad mini, iPhone4s, iPhone 4を一挙にiOS6から7にバージョンアップした。印象は非常に良い。ネットでは一部の人たちがたたいているらしいが、それは毎度のことだ。私が使った印象はよいし、家内も非常に良いという。これは成功と思う。iOS6の時は、マップがひどくてさんざん叩かれた。だから私はしばらくはiOS5でやってきたのだ。iOS6にアップしたのは、メモリのこともあり、比較的最近のことだ。


2013-09-19

昨日述べたニュートン・ビーズだが、この鎖の形がなぜああなるのかを一日考えた。結局、分かった。方程式を立てると懸垂線(Catenary)と同じになる。ただし鎖が走って、その速さが一定以上になると、上に凸になるのである。これがビデオで示されている不思議な現象だ。ネットを調べたが、このことを言っている人はいないので、私が世界初かな!!?? 物理自身はそう難しい事ではないのだが、一件常識に反するので、あまりだれも考えた事がなかったのだろう。詳しい式は別にアップする。ところでこの問題は琉球大学の自称「色物物理学者」の前野さんと考えたのだ。彼はとても頭の良い人である。前野さんのホームページはここ


 2013-09-18

昨日あるテレビ番組制作会社からニュートンビーズのメカニズムについて問い合わせがあった。実は私はそのときまでニュートンビーズの何たるかを知らなかったが、紹介されたYouTubeを見ておどろいた。実に不可思議な現象である。ニュートン力学の範疇だが、だれもまだ解明していないのではないかと思う。

http://www.youtube.com/watch?v=6ukMId5fIi0&feature=player_embedded#t=47

 


2013-09-17

昨日アマゾンで注文した「森見登美彦の京都ぐるぐる案内」が届いた。1時間ほどで一気に読んだ。なつかしいなあ。私の好きな京都の景色がここに詰まっている。いわゆる観光名所ではなく、森見氏が過ごした大学時代の京都である。それは私の京都大学工学部航空工学の時代に学生諸君と、あるいはひとりで歩き回った場所なのである。第1作の「太陽の塔」の舞台なんか、京都大学と北大路と東大路が交わる高野までが舞台であり、それは私の活動域と重なるのである。

本書で紹介されている場所を紹介しよう。鴨川デルタ、下鴨神社、京都大学、進々堂、吉田山、大文字山、真如堂、荒神橋、京都市美術館、水路閣、哲学の道、琵琶湖疎水、四条大橋、レストラン菊水、東華菜館、木屋町、先斗町、祇園、伏見稲荷大社、貴船口~鞍馬、竹林、太陽の塔、叡山電車

基本的に京都の東半分である。私に取っても京都の西半分は範囲外である。

ここで紹介されたレストラン、喫茶店、お店は知っているものも、知らないものもある。しらないものをこれから探索したい。このなかでちょっとだけ紹介されている喫茶店の茂庵を私はお勧めする。吉田山の山頂にあり、景色は抜群である。大正時代に立てられたと言う民家を改造したものだ。ただし行くまでの難易度が高い。私はなんども挑戦してようやく行けた。またようやくたどり着いたら休みだったということもあった。ネットで調べてから行った方が良い。

読者コメントもおもしろい。


2013-09-16

昨晩から家内と山科の特異点庵に泊まっていた。映画「ロード・オブ・ザ・リング3」を見る。一月ほど前に最新作の「ホビット」を見たので、その後日潭にあたる「ロード・オブ・ザ・リング」3部作を見ようと思ったからである。これは確か、以前にも見たはずなのだが、忘れてしまっていた。そして1, 2を見て3を見ようと思ったのだが、借りたDVDが不良品で見る事が出来なかった。結局はツタヤに言ったら、新しいものに換えてくれて、かつお詫びの無料券までくれた。

それはそうとして、昨日から激しい雨が降っている。今日も朝から降っている。京都の桂川の上流に当たる亀岡が洪水になっているというニュースを知った。亀岡を流れる川は、保津峡を通って桂川になるのだが、その部分が狭いので、水はけがわるくて洪水になっているのであろう。嵐山の名所である渡月橋も、橋桁ギリギリまで水が来ている。

ところで私のいる特異点庵は京都市営地下鉄の御陵(みささぎ)駅の近くにある。ひとつ向こうが山科で、そこには地下鉄の他にJRと京阪電車の駅があり、また百貨店やショッピングセンターもある、このあたりの中心街である。そこに行こうと思ったら、地下鉄が浸水の為に運休になっていた。一駅だから歩けるだろうと思って歩いてみた。一度、歩いてみたいと思っていたからだ。Google Mapを見ながら歩くと、30分ほどで行けた。途中のバス停には人々が待っていたが、時刻表を見ると、なんと1時間に1本である。たしかにJR、京阪電車、地下鉄が並走しているのだから、バスの必要は普段はない。しかしこんな時は、必須になる。京阪電鉄も途中までは地下鉄と同じ線路を使っているので、こちらも運休である。JR山科駅前も人だかりしていたから、運休かなんかであろう。タクシー乗り場は長蛇の列であった。しかたないからミスドてドーナツを食べて、もとの特異点庵に帰って来た。

家内はその一時間に1本のバスで帰った。私はタクシーで帰った。御陵の駅前に消防車が来ていて、排水していた。明日もどうなる事やら。


2013-09-15

マイクロソフトがアップルの人工知能Siri対抗の人工知能コルタナを用意しているらしいです。コルタナはビデオゲームHaloで登場するセクシーなAIであるとか。Siriは現状、声だけですが、コルタナには顔がつきます。その件に関しての英語のレポートです。コルタナのセクシーな肢体が鑑賞できます。コルタナは人工知能で、会話をすればどんどんと賢くなって行くそうです。実際の発表が楽しみですね。ただしクラウドを使うので、ネット環境によってはレスポンスが遅いかもしれません。これは私がSiriで痛感していることです。

Microsoft's Cortana to rival Apple's Siri

{youtube}IDIW5rAY44Y{/youtube}

その種のものとしてはすでにバーチャルアシスタント・デニスがあります。でもあまり流布しているようには見えません。


本日NPOあいんしゅたいんのオフィスでサロン・ド・科学の散歩第6回(特別企画2)として、宇野賀津子理事が「低線量放射線を超えて」と題して講演した。宇野さんは同名の著書「低線量放射線を超えて・・・福島・日本再生への提案」小学館720円を出版している。宇野さんは印税で同書を買い込み、福島などで配布しているという。本の内容は以下のようなものだ。

「放射線については、その問題について専門家の間でも意見が分かれています。結局のところ、放射線とどのように向き合って生きたらいいのか? 長年、免疫の研究をしている理学博士がこれからの生き方を提言。低線量放射線の影響とその克服法、福島の現状と支援方法、免疫力を上げる実践法を紹介します。どの放射線関連本よりも優しく、わかりやすく、実践的に書かれた本書は、福島をはじめ被災地で生きる人々、さらには日本人に、正しい知識と危機意識、生きる勇気を与えてくれます。」

本書でも述べられているように、3.11 と福島原発事故が起きた時に、NPOあいんしゅたいんでは物理系の坂東理事長と私、それに生物系の宇野理事の間に激しい論争があった。要するに物理系は、放射能は所詮危険なものだから、その危険性を過大に言うのもOKという立場であった。しかし免疫学者の宇野理事はHIV騒動の時に、エイズの危険性を過大に言う学者のせいで、患者たちに無用の差別を助長したこと。当人は正義感で発言していても、結果的には非常な悪をなしていると感じていることを言われた。

放射線に関しても、放射線医学関係ではがんを治すのに、数10シーベルトの放射線を当てて、それでガン治療していると言われた。それは当時福島で騒がれていたマイクロシーベルトの100万倍、1ミリシーベルトの1000倍、100ミリシーベルトの100倍である。喉頭がんの患者に数10グレイ(シーベルト)の放射線を当てると、喉がやけどで赤くなるが、10日もたてばなおってしまう。つまり放射線でガンになることを怖がって放射線治療を拒むと、ガンで死ぬのである。なんと皮肉なことであろうか。

世間の学者で低線量放射線の危険性を喧伝する人たちは、最近の放射線生物学の知識を知らないという。それは私も坂東理事長も同じであった。坂東理事長は、それ以後、宇野理事と低線量放射線検討会を立ち上げて、徹底的に勉強し、最近はそれ関連の論文すら書いている。

ガンの発達には免疫力が大きな役割を果たす。低線量放射線を恐れて疎開した人のなかにはストレスのため、震災関連死した人が多い。ストレスは免疫力を下げて、ガンを促進する。汚染された野菜を恐れて野菜を食べない人は、免疫力の低下でガンになりやすくなる。低線量放射線を恐れて運動場で運動しない児童は、肥満やその他の原因でガンになりやすくなる。ようするに低線量放射線の危険性を過大に言う一部の、あるいは多くの善意の学者や識者は結果的には、ガンを促進しているというのだ。非常な皮肉である。宇野さんの言葉は、低線量放射線の危険性を過大に言うのも、過小に言うのも犯罪だということだ。

私は自分の無知を恥じるとともに、他の識者に、真の専門外のことは言うなと言いたい。


昨日12日から明日の14日まで、日本流体力学会年会2013が東小金井にある東京農工大学で開催されている。本日は朝の9時から宇宙・惑星セッションが開かれた。私は千葉大学の松元亮治教授とともに、このセッションのオルガナイザーをしている。午前中は松元さんが座長、午後の第一セッションは海洋研究開発機構の廣瀬さんが座長、それから私、筑波大学の森さんが座長を務めた。私は午後の始めに松田・猪坂・大杉「ホイル・リットルトン降着流再訪1・解析解」として講演した。その次に大杉、猪坂・松田「ホイル・リットルトン降着流再訪2・数値計算」と題して講演した。その内容は、いずれ別のところでアップしたい。

印象的だったのは京コンピュータがいまやフルに稼働していることである。今後の成果が楽しみである。

 


私は2006年に神戸大学理学部地球惑星科学科の教授を定年退官した。そのときまで運営していたのが宇宙科学研究室である。もっともその研究室は、次の教授によりそのまま存続している。さて本日、渋谷の居酒屋において研究室の同窓会を行った。参加者は私を除いて8名で女性2名、男性6名であった。みんな博士課程か修士課程を修了した諸君である。

全員が著名な、あるいは一流の企業に就職している。アカデミックなポストに就いたもの、つまり研究者になった者はいない。博士号を持ちながらもったいないと思うが、それは私の方針であった。

学部を卒業して修士課程に進学しようと思う者は、試験さえ通れば、そして研究室の定員以内なら受け入れた。博士課程に進学を希望する者は、終了後はアカデミック・ポジション、つまり大学の研究者ではなく企業に就職することをあらかじめ勧めておいた。従って、博士課程修了後、全員が企業に就職した。だからポスドク、高学歴ワーキングプアー、高学歴難民はいない。話を聞く限り全員、それなりに幸福に過ごしている。

世情、高学歴ワーキングプアー、高学歴難民、ポスドクとよばれる人たちがあふれている。日本で2万人近くいると思う。優秀な頭脳をもちながら、結構悲惨な生活を余儀なくされている。全くもったいないことだ。

ポスドク問題が発生する根本的な原因は、アカデミック・ポジションの不足である。しかしその問題が簡単に解決できるとは思えない。特に今後の日本の財政事情を考えると、大学教員を増やす政策は難しい。

そのように外部条件が所与として、ポスドク問題が起きない為には、博士課程に進学しなければ良いだけだ。しかしそうならない理由として、学生側の問題と教員側の問題がある。

学生側の問題としては、研究者になりたいという欲求がある。知的で頭の良い若者には、当然のことだ。研究者というのは極めて魅力的な仕事である。自分のやりたい研究をして給料がもらえるなら理想的だ。だから多くの人がアカデミック・ポジションにつきたがる。そのために競争が激しくなり、あぶれた者が高学歴難民に陥るのである。

研究者の世界は実力の世界である。というかそうあるべきだ。すると超一流の能力、ピカイチの能力を持った一部の者は、だいたいは望みのポジションを得ることが出来る。ただし、ここでいう実力の中には、研究能力だけではなく、世間を泳ぎ渡って行く能力、つまりはコミュニケーション能力も含まれている。このような人々は、約一割はいると思う。

ところで博士課程進学者が全員、超一流の能力を持っている訳ではない。多くは一流の能力、ピカイチではなくピカニの能力である。彼らのうちで運の良い一部の者は、アカデミックポジションにつけるかもしれないが、多くの者は高学歴難民に陥るであろう。

教員側の事情としては、学生、院生を労働力として見ていて、彼らの将来はどうでもよく、ただの労働者としてこき使いたいという需要がある。そのような教員は学生に甘い言葉で、博士課程進学を勧める。勧めておいて、後は知らん顔である。もちろん、知らん顔ではなくて、知った顔をしていても、ないポジションはないのである。無い袖は振れないのだ。それを知りながら、博士課程進学を勧めたとしたら、学生にとっては不幸である。

というわけで私は博士課程進学は認めるが、始めからアカデミック・ポジション狙いではなく、一般企業を狙いなさいと勧めて来た。その結果が、今晩の同窓会であったのだ。

 


Scientific Americanのデジタルニュースを読んでいたら、勉強法に効果的な方法とそうでないものがあるという記述があった。そうでないものは時間のむだだそうだ。要約だけなので、本文を読みたければ買えという。

しかしその要約でも興味あることが分かった。例えば我々がよくやる、本に下線をひくという作業は無駄らしい。またDistributed Practiceは効果的だと書いてあった。そこでそれについて調べてみた。

Distributed Practiceとは日本語に直すと分散学習という。それに対する概念は集中学習だ。分散学習とは、ある物事を勉強するのに、時間を分割して少しずつ勉強する方法だ。それに対して集中学習とは、一夜漬けに代表されるように、長時間、集中的に勉強する方法である。具体例で言えばAとBを勉強するのにA1時間、B1時間、A1時間、B1時間とやるのを分散学習とすると、A2時間、B2時間とやるのが集中学習である。

日本語のWikipediaの学習という項目で当該部分を引用する。


集中学習と分散学習

時間間隔を置かずに学習する事を集中学習という。 時間間隔を置いて学習する事を分散学習という。

次のような理由で、一般的には分散学習のほうが効率的だと言われている。

  • 分散学習では、休憩中に学習した内容をリハーサルする事が可能である。
  • 分散学習の方が、学習対象に注意を集中しやすい。
  • 分散学習の方が、様々な視点から学習対象の符号化を行いやすい。

このことのメカニズムは最近、理化学研究所の研究であきらかになった。

運動学習の記憶を長持ちさせるには適度な休憩が必要

―休憩の間に運動学習の記憶が神経回路に沿って移動し固定化する-

私はそんなことは今まで知らなかった。学校でも習ったことはなかった。しかしそんなことは20世紀の初頭にエビングハウスという学者により、実験的に証明されていたという。もっと早く、教えてほしかった。今となっては手遅れである。

 


今日、梅田の朝日カルチャーセンターで「2045年問題 コンピュータが人類を越える日」と題して講演して来た。私は一昨年前までは、ここで定期的に講演していたのだけれども、昨年度から途絶えた。理由は生徒が集まらないからである。この種のカルチャーセンターの内容は文科的な教養の話と語学を含むお稽古ごとがほとんどで、科学的な内容の物は、私の話だけであった。それでも生徒の数は10人程度と少なく、例えば歩き方のコースなんかより、遥かに少ない。生徒はお年寄りが多い。

グランフロント

大阪駅の北に出来た商業・研究施設のグランフロントに行って来た。ここは5月に開業したのだが、開業当初は芋の子を洗うような混雑だとかで、その頃に行った人は大変だったそうだ。私はたまたま大阪に出たので、この機会に行ってみた。さすがに当初ほどの混雑ではないが、それでも休日ということで、結構混んでいた。私はエスカレーターに乗って、行けるところまで行ったら、屋上庭園に達した。さすがにここは人気は少なかった。人々は下のレストラン街やショッピング・モールに集中しているのだ。私はさらに北に歩いて行くと、階段があり、ずっと下りが続いていた。そして建物の周囲を巡るテラスに到達した。誰も人はいなかった。すぐく歩いてようやく建物の中に入ることが出来た。建築家はこれをどういうつもりで設計したのだろう。人々が散策すると思ったのではないか。それなら出入り口をもっとたくさん設置すべきだ。あまりに不便だから、探検家以外は行かない。設計ミスと思う。

 

 

 


アンドロイドをOSとするスマホが遠隔操作される可能性があることを報告したが、iPhoneはどうだろうか。iPhoneのOSはiOSという。それらの報告されている脆弱性はiOSが387件あり、Androidが13件であるという。これだけ見るとiOSの方が危険に見えるが、実はそうではない。iOSの脆弱性を研究する研究者の数が多いからだろうといわれている。

実際、2012年のモバイルのマルウエアの数を見ると、iOSが1件、Androidが103件と、Androidが圧倒的に多い。iOSのアプリはアップルが管理しているAppStore経由である。そこでは審査が行われていて、やばいアプリは認可されないか、認可されても後で取り消される。それにたいしてAndroidはOS自体が公開されているし、アプリの配布も自由である。そこを突かれる訳だ。

ただしマルウエアは脆弱性をついて感染するタイプではなく、ユーザーをだましてインストールさせるものである。Androidユーザーは怪しげなアプリはインストールしない方がよい。

モバイルOS、脆弱性の報告が多いのはiOS、マルウエアが多いのはAndroid

 


アンドロイド・スマホの遠隔操作

昨日の続きである。スマホの遠隔操作に関して、私は昨日それをネットで知って衝撃的であったのだが、その後調べると、かなり知られているようだ。NHKの番組でやっていたとか。とくにケルベロスが知られているようで、その使い方に関するサイトがあるのでここに書く。

通話履歴、GPS、写真撮影、音声録音なんでも遠隔閲覧可能!悪用厳禁盗難対策特集2

怖! 携帯電話管理アプリの恐怖!!

実際、ある主婦がこの手のアプリを中学生の娘にいれられて、浮気現場をバッチリ録画、録音されて、間男は家庭崩壊、会社クビになる。主婦は離婚は免れるも、家庭の中で居場所を失い地獄の毎日。旦那の母に言われた言葉「自殺するときは電車は止めてね、後が大変だから」

子供たちのスマホ操作で不倫がばれました

人ごととはいえ、いやはや、恐ろしいものだ。とてもアンドロイドのスマホは持てない。iPhoneに限る。

私は個人の力は時に歴史を変えると思う。例えばスティーブ・ジョブスがそうだ。iPod, iPhone, iPadは人類の生活パターンを変えたと思う。iPodは音楽シーンを変え、ソニー凋落の原因を作った。

スマホはiPhone以前からあったと言う人がいるが、普及させたのはジョブスだ。現在、電車の中を見るとよい。人々は(自分も含めて)、じっとスマホを見ている。スマホ中毒である。アメリカの調査では、若者の20%はセックス中にもスマホを使うと言う。

iPadの導入はPCからタブレットへの流れを作った。マイクロソフトも凋落するであろう。

ところでiPhoneとアンドロイドのシェアだが、日本だけ例外でiPhoneのシェアが高い。他の国はすべてアンドロイドのシェアが高い。その理由は外国ではアンドロイドのスマホが安いからだ。外国ではiPhoneを持っていることは、お金持ちの証拠であり、ステータス・シンボルになるという。ところが日本でiPhoneのシェアが高いのは、電話会社の方針でiPhoneが安いからだ。外国に持って行ってドヤ顔をするにはiPhoneがよい。

処女性と結婚に関する考察

未婚男性は結婚相手として処女を好む。それは自分の遺伝子を確実に残すための生物的本能に由来する。日本の女子大学生の性交経験率は現在は47%である。ということは若い日本女性の約半数は非処女である。日中韓米の若者の純潔観でみると、日本女性がとりわけ貞操意識が低い。その ことをあるケーススタディを通して示す。非処女は結婚した場合、離婚しやすいという様々なデータがある。浮気、離婚の割合は、性経験が多いとそれに応じて 上がる。また初体験年齢が若いほど上昇する。

日本人の未婚男性は結婚対象でない恋人、セフレには非処女を選ぶ。楽だし責任を取る必要がないからである。一方、結婚相手には処女を選ぶ。浮気される可能性が少ないからだ。結婚した後に妻の性経験を知った夫は、妻に対する生理的嫌悪を感じ、愛情が薄れ、無関心、セックスレス、 家庭内暴力、浮気に繋がりやすい。日本女性(の半数)の結婚生活は、今後ますます不安定になるであろう。

某大学での衝撃のレポートを含む詳細なレポートは上記表題をクリッのこと。

 


 2chにはまる

このところ2chにはまっている。といっても書き込みをする訳でもないし、ROMをする訳でもない。まとめサイトを読んでいるのだ。これが実に面白い。私は何でも好奇心が旺盛で、のめり込むところがあるのだ。人には時間の無駄だから止めろと言われている。確かに時間の無駄であることは重々承知である。これもそのうちには、止めると思うが、今ははまっていると言う訳だ。

私はいままで2chをバカにしていた。確かに知的と言う訳ではない。そこに登場する人々は、私が普段つきあっているインテリ、高学歴層の人々ではない。普通の人々、つまり庶民である。しかし普通の人々のおりなすさまざまな事件、意見、思いがそこにはある。小説より面白い(ものもある)。リアルタイムに事件が進んで行く(のをまとめた物を後で見る)。

2007年1月15日01:21:080から始まる話がその一例である。冬の真夜中に家を飛び出して、しかし後悔して戻って来た妻と、屋内の夫の息詰るメール交換がある。夫はどうすべきかを2chの住人の意見を求めている。妻は外は寒いので鼻が出たから入れてくれと懇願する。頑としていれない夫。あまりに露骨な話なのでURLは紹介しない。

従来はマスメディアの記者や評論家のような、いわゆるエリートのみが発言できる特権を持っていた。彼らが世論を導いていたのだ。しかし2chやプログに代表されるようなネットの発達により、庶民でも発言できるようになった。これは一種の革命である。テレビや新聞の凋落が激しい。ネットではマスメディアはマスゴミとして叩かれている。庶民はもはやエリートの言うことを聞かなくなってきた。

スマホの遠隔操作

実は今日の主題はそこではない。その種のサイトを見ていたときに、スマホに関する驚くべき事実を知った。それはスマホを外部から操作できるということだ。PCでも可能であるがアンドロイド・スマホでそれが可能と言う。具体的にはCerberusとAndroid Lost Freeというアプリである。前者は有料だが高機能、後者は無料である。

http://koukentag.blog52.fc2.com/blog-entry-523.html

できることは、電話の使用履歴の抜き取り、電話帳の抜き取り、今いる場所の確認、今いる場所の画像と音声を取る。スマホを持つ人物の会話と、会っている人の特定。現在スマホで何をしているか、そのスマホから別なところに電話をかける、スマホの緊急ロックなどもできる。これらが手元のPCで確認できるのだ。

自分のスマホにこの種のアプリを入れてもあまり意味がない。他人のスマホにこのアプリを黙ってインストールするのだ。しかもアプリを隠すことが出来るので、これをやられると、何がどうなっているか分からない。同じキャリア同士なら、自分宛に通話状態にすると、その場の映像と会話が筒抜けになると言う。つまりスマホが究極のスパイ道具になるのだ。

ちなみにこの種のアプリが動くのはアンドロイド・スマホでありiPhoneでは出来ない。iPhoneはアップルがアプリを厳重に監視しているから、こんな危なっかしいアプリは許さないのだ。自分がスパイされたくなければiPhoneにして、他人をスパイしたければアンドロイドを勧めれば良い。恐ろしい世界になって来たものだ。

 


ミニ脳

オーストリアの学者が人間の幹細胞から、人間の脳の小さな物を作り出したと言う。大きさは4mmと豆粒大である。こんなに小さいのは、血管がないのである程度以上には成長できないからである。目的は小頭症の研究、アルツハイマー病や統合失調症の研究の為だと言う。実際の人間の脳を実験室で作るのは技術的にも倫理的にも極めて難しい。しかし、この技術が進めば、いろんな応用が考えられるであろう。

コップの中の嵐と遠心分離機

私の70年代の研究テーマの一つとして回転流体力学があった。当時の日本はウラン濃縮のための遠心分離機を自主開発していた。遠心分離機の中の流れの様子が分からないと効率的な分離が出来ない。ところがこの問題は各国とも秘密のベールに包まれている。アメリカがマンハッタン計画で遠心分離機の研究をしたことは知られている。しかしアメリカは最終的にはガス拡散法を採用した。70年代当時、ヨーロッパでは英国、ドイツ、オランダが共同で遠心分離機を開発していた。しかし詳細は秘密のベールに覆われていた。私と当時の上司の桜井健郎教授は遠心分離機の流体力学を解明することにした。企業とは共同研究しないことに決めた。というのも、企業秘密を知ってしまうと、論文が出版できないからだ。私は手に入る論文を片端から調べた。国会図書館にも行った。アメリカ原子力委員会の論文があるのだが、タイトルだけあり、本文は秘密なのである。仕方ないから、全て一から自前で研究することにした。私はまず回転流体力学を徹底的に勉強した。そして最終的には遠心機の流体力学と題する論文を英国の雑誌に公開した。後で知ったことだが、この理論は英国や米国でも研究されていたのだが、論文が公開されなかったので、我々が世界初ということになった。

私はそれ以降は遠心分離機の研究はやめたのだが、2006年になって北京で開かれた国際会議に招待された。桜井先生が前年に亡くなられたので、その追悼公演であった。一番衝撃的であったことは、一般の予想に反してソ連が熱拡散法ではなく遠心分離法を採用していたことだ。ロシアの研究者から私と桜井教授の論文はバイブルであったと告げられて、うれしかった。中国にはロシア製の遠心分離機が導入されていた。そこで中国の研究者になぜ遠心分離機の研究をするのか、ロシア製の機械を分解してリバース・エンジニアリングすれば良いのではと聞いた。しかし、それは契約で固く禁じられているとのことであった。ロシアは中国にミグやスホーイの戦闘機をコピーされて怒っているのだ。中国の戦闘機はロシアのパクリである。遠心分離機ではそうはさせないと言う訳だ。

私と桜井先生はそのご、回転流体力学の論文を書いたり、学生実験に取り入れたりした。そのときの知識で書いたのが「コップの中の嵐・・・お茶の葉はなぜ中心に集まるか」である。

 


このブログを1月、休んでしまったが、今回から再会する。とこまで書けるか分からないが、ぼちぼちやることにしよう。今日は昔の博士課程の学生の結婚披露宴の為に東京まででかけた。場所は銀座のあるビルの7階にあるレストランであった。最近はこの種のレストランでの披露宴が多いようだ。親族をよんだ結婚式は別にやったと言う。というか、半年以上も前に入籍して、一緒に住んでいるのだから、今回の行事はたんなるお披露目である。新郎も新婦も30代の半ばである。

開放量子系

ところで昨日は私の秘密研究所である特異点庵で開放量子系(Open Quantum System)の勉強会を行った。開放量子系に対応することばに閉鎖量子系(Closed Quantum System)がある。純粋状態の時間発展を支配する方程式はシュレディンガーの波動方程式である。混合状態は密度演算子または密度行列で記述される。密度行列の時間発展を支配する方程式はフォン・ノイマン方程式である。古典的にはリウビルの方程式がこれに相当する。

開放量子系の理論では、全体系を注目する系と環境に分けて、注目する系の時間発展を知りたい。量子コンピュータでは、注目するのは量子ビットであり、それに擾乱を及ぼすのが環境である。フォン・ノイマン方程式の拡張形がリンドブラッドのマスター方程式で、それを勉強するのが、勉強会の目的である。

友人がアマゾンからThe Theory of Open Quantum Systems, by Heinz-Peter Bruere and Francesco Petruccioneという本を買った。アメリカだと$85で日本だと7,566円である。値段の関係がなんだかよくわからない。ともかくこの場合は日本のアマゾンで買った方が良い。私はKindle版がかさばらなくてよいのだが、友人はやはり紙の本が良いと言う。一長一短であろう。

もっと安い本がないかと探したら、Open Quantum Systems: An Introduction (SpringerBriefs in Physics) by Angel Rivas and Susana F. Huelgaというのがあった。こちらはアメリカでは44.96ドルでKindle版は25.11ドル、日本のアマゾンだと5189円である。こちらはアメリカの方が安い。Kindleの場合、アメリカから買うか日本から買うか、どちらかに統一しないとややこしいことになる。私の場合、アメリカ版はiPhone, iPad, Macで読めるが、日本版はiPad miniでしか読めない。二つを統一できないのである。

ところで実のところこの本は、買う必要がないのである。PDFファイルが落ちているのである。arXivサイトである。ダウンロードしてみて分かったことは、短いことと(100ページ程度)、数学的なことで、とても難しい。いきなりバナッハ空間論から話が始まる。バナッハ空間とは完備なノルム空間、つまりノルムつけられた線形空間である。そんなこといわれてもなあ! 要するに何なんや?

 

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マッド・サイエンティストのつぶやき Sun, 01 Sep 2013 02:57:16 +0900
2013年7月 https://www.jein.jp/jifs/blog-matsuda/mutter/865-1307.html https://www.jein.jp/jifs/blog-matsuda/mutter/865-1307.html

 


科学者はネズミに嘘の記憶を植え付けた。ネズミはそれを信じた。Scientists Plant False Memories in Mice--and Mice Buy It

 人間の記憶は時として全く当てにならない。そのことが重大な結果を生むのは裁判の証言である。間違った証言により有罪になったり、ひどい場合は死刑になった場合もある。アメリカの無罪プロジェクトによると目撃証言のために何年も刑務所に入った人が、後のDNA検査で無罪になった場合がある。証人が嘘をついている訳ではない。間違った記憶を信じ込んでいるのである。実際、DNA検査の結果を示されても、彼らは間違った証言を撤回しないのである。たとえばカリフォルニアで保育園を経営していたマクマーティン一家は子供に対する虐待で訴えられた。7年の歳月と15億円もの費用を使った裁判闘争で、証言の一部は子供のセラピストにより植え付けられた間違いのものであることが明らかになった。これらを偽記憶症候群とよぶ。

昨年利根川進とそのチームはネイチャーに論文を書き、ねずみに間違った記憶を植え付けることに成功したという。ネズミを赤い部屋とよぶ部屋に入れる。ねずみは部屋の中をうろつく。しばらくしてネズミに電気ショックを与え、同時にネズミの脳にファイバーオプティックケーブルで青い光を送り込む。そして赤い部屋が危険な部屋だと言う記憶を植え付ける。

次の日に研究者はネズミを黒い部屋と呼ぶ別の部屋に入れる。そこは特に危険なことはなく、ネズミはうろついている。そこで青い光をフラッシュすると、ネズミは凍り付いた。恐怖の記憶が呼び起こされたのである。記憶を形作るニューロンを刺激するだけで、記憶が呼び起こされるのだ。

サイエンスに最近発表された論文では、彼らは実験をさらに一歩進めた。ネズミは第一の部屋に入れられるが、そこはなんともない。この部屋は安全という記憶が残る。次に第二の部屋に入れる。そして青い光で照らすと第一の部屋の記憶がよみがえる。その時に電気ショックを与える。そして次に元の部屋に戻すと、ネズミは恐怖で走り回る。そこが安全な部屋であるにも関わらずである。第一の部屋が安全だとい記憶が、危険だという記憶に置き換えられたのである。つぎ第三に部屋に入れられる。そこでは光を与えない。するとネズミは怖がらない。研究者はネズミに嘘の記憶を与えて、ネズミはそれを信じたのである。

ネズミにうその記憶を植え付けることができるが、人間は刺激を与えなくても、勝手に嘘の記憶を信じ込む可能性がある。それは人間が想像力に富むからである。人間には想像力と創造力があるので、記憶が不確かなのである。

 


 人工知能を利用したおもちゃができようとしている。スーパートイ「テディ」という熊のぬいぐるみである。それに関する記事があった。Supertoy Teddy Is The Teddy Ruxpin We All Dreamed Of - A Stuffed Bear With Conversation Skill

外見は普通のテディベアであるが、話しかけると答えるのである。仕組みは内部にスマートフォンがあり、人間の会話を遠くにあるサーバーに送り、そこで音声認識して、人工知能が適切な返事を返すという仕組みだ。要するにiPhoneに搭載されているSiriと同じようなものだ。ただし次のビデオにおけるテディベアと8歳の女の子の会話は驚くべきものだ。信じてよいかどうかは分からないが。

{youtube}JJCxN2Eawik{/youtube}

  


2013-07-29

頭の良くなる5つの方法

Scientific Americanにあるおもしろいゲスト・ブログ記事を読んだ。まさに頭のよくなる方法についてである。


You can increase your intelligence: 5 ways to maximize your cognitive potential
By Andrea Kuszewski 2011/3/7

まずはアインシュタインの言葉から始まる。「簡単なゴールを追求してはならない。最大限の努力をしてぎりぎり出来ることを見つける直感を養いなさい」

知能は生まれつきのものだから、それを改善することは出来ない。子ども達の知能を増強する訓練をしても大して成果はない。あったとしてもすぐに元に戻ってしまう。従来はこのように言われていた。

しかし、このエッセイの著者はその考えに同意しない。著者は行動セラピストとして自閉児童の治療をしていた。実際、知能指数が80であった児童の知能を3年に渡って徹底的に訓練したおかげで100にまで上げることに成功した。この児童だけでなく、著者にはたくさんの経験がある。障害児の知能を増強できるのなら、普通の大人の知能を上げることが出来ないだろうか。

2008年に「ワーキングメモリーを訓練して流動性知能を向上させる。Improving Fluid Intelligence with Training on Working Memory, by Jaeggi, Buschkuehl, Jonides, and Perrig」(2008/3/18)という刺激的な論文が出て我が意を得たりと思ったという。

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この論文に関しての解説は『流動性知能』を向上させるソフトウエアと題する記事(2008/5/7)を参照のこと。あるいは神経科学者の「トレーニングと知能(2008/5/17)」と題するこのブログ参照。もっと新しい記事は『流動性知能を向上させる簡単な訓練: 研究結果(2011/6/23)』参照。

ここで流動性知能とは新しい問題に遭遇したときにそれを解決する能力である。一方、結晶性知能(crystallized intelligence)は知識や経験と関連した知能である。後者は年とともに増えるかもしれないが、前者は遺伝的なものと考えられていた。それが訓練で流動性知能を増強できるとすれば、すばらしいことだ。もっとも学界では意見の一致は見ていないようだが。

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このエッセイの著者はこの論文が正しいと信じて、次のことが分かったと主張する。

1. 流動性知能は訓練で増強できる。

2. 訓練すればするほど知能は増強される。

3. 出発点の如何に関わらず人は誰でも認知能力を増強できる。

4. そのためには普通の知能テスト問題ではなく、n-back問題という困難なテストの練習をしなければならない。

さて著者の提案する知能増強法は以下にまとめられる。

1. 新しいことをする。

2. 自分自身に挑戦する。

3. 創造的に考える。

4. ものごとを難しいやり方でやる。

5. ネットワーク

それぞれについて説明する。

1. 新規性: アインシュタインのような天才は、常に新しいことに挑戦している。新しい情報を求め、新しいことに挑戦し、新しいことを勉強する。新しいことを経験したり、勉強したりすると、新しいシナプス結合が作られる。また新しいことに挑戦すると、ドーパミンが出やすくなり、新しいニューロンが作られる。次のようなサイクルが起きるのだ。 新しいことの勉強->ドーパミンが出る->やる気が増す->ニューロンを刺激する->新しいニューロンが作られ、シナプスの可塑性が増す。

2. 自分自身への挑戦: 著者は通常の頭脳訓練法は推奨しない。たとえば数独をすると、それが上手になるだけである。慣れてしまえば、知能の増強はストップする。一つのことをマスターしたら、新しいことに挑戦すべきである。

3. 創造的に考える: 創造的に考えるとは、普通思われているように右脳だけで考えることではない。左右の脳を同時に働かせねばならない。

4. ものごとを難しいやり方でやる: 物事を効率的に処理することは、より頭を使わないやり方である。例えばある場所を探すのにGPSを使う方法は効率的だが、頭を使わない。

5. ネットワーク:  他の人たちと一緒にやる。ツイターでもフェイスブックでも、あるいは直接の会話でも、人々とのコミュニケーションは上記1-4をやりやすくする。新しい人々、アイデア、環境に自己をさらすと認識能力が増す。自分の専門外の人との交流は思いもつかないアイデアを生み出すかもしれない。

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私は特に新しいことを勉強すると頭がよくなるという主張に惹かれる。最近ある学生から、先生はなぜ一つのことに集中しないで、次々と新しいことにのめり込むのですかと尋ねられた。答えは「知的なことは何でもおもしろい」からである。世の中におもしろいこと、知るべきことは山のようにある。定年退職後には時間が十分ある。私は『退屈する』とか『時間をもてあます』という人の気が知れない。本を読めばよい、音楽を聴けばよい、散歩すればよい、やることはいくらでもあるのだ。仕事を持っているときは、やりたくてもできないことが、退職後はいくらでもできるのだ。それに対する唯一の障害は疲れやすい、目が見えにくいといった健康問題である。

私はHugo de Garis教授の主張する『退職後の仕事: After Retirement Career=ARC』に同意する。

 


2013-07-28

親子理科実験教室

本日10時から京都大学理学部のセミナーハウスで親子理科実験教室の夏休みコース第1回「電気の不思議」が行われた。今回の講師は3年前の第一回から講師をお願いしてる松林昭先生、それに今回から新しく加わってくださった高見雄一先生で、それぞれ1時間ずつ担当するという形式で行われた。

まずは風船を膨らませて静電気の実験から始まった。風船をロケットみたいに飛ばす子供、大きな音を立てて割ってしまう子供など、にぎやかな実験風景であった。また電気を通すもの、通さないものの実験では、普通の金属などだけではなく、コカコーラなども実験に用いられ、それが電気を通すことを知って子供たちは喜んだ。

本教室に3年前の第一回から通っておられた福岡の小学6年生の宮岡玲奈さん(11)が、物理チャレンジ2013で実験奨励賞を受賞した。参加者はほとんどが高校生で、少数の中学生がいるが、小学生は宮岡さんだけだ。参加者総数1180、中学生26、小学生1。実験優秀賞が9名で全員高校生、実験奨励賞が1名で宮岡さん、アイデア賞が3名で高校生であった。

テーマは温度計を作ろうというものだ。宮岡さんはいろいろ工夫して、塩化ビニールの板の上に銅線を何度も往復させて、その先をおもりで引っ張る装置を作った。温度の変化に応じて、装置が熱膨張するが、その様子をレーザー光を鏡で反射させて拡大する装置を作った。設計図を宮岡さんが書くと、お父さんが大工仕事を担当してくれたという。一家総出のレポートである。

 


2013-07-27

今日の秘密研究会では開放量子系についての大学院コース、Graduate course on open quantum systems , Third term 2004 ,A.J. Fisher et al.を勉強した。結局、前回やった密度行列のところまでたどり着いただけであった。前途はほど遠い。

 


 2013-07-26

古川町商店街の日本旅館「小町屋」

私が毎日自宅からオフィスにしている山科の特異点庵に通うために、東山三條でバスから地下鉄東西線に乗り換える。その時、以前紹介した古川町商店街を少しだけ通り抜けるのだが、ここは京町家で構成されたレトロな商店街である。地下鉄東西線の駅の入り口近くに商店街の入り口がある。

ところでその商店街に町家を一軒そのまま貸し出す旅館「小町屋」というものを発見した。二階建ての京町家を1グループが借り切る仕組みである。階下は土間、和室3畳、6畳、キッチン、風呂、坪庭、二階は和室6畳、4畳、4.5畳と板の間であり、十分な広さである。

表においてあるパンフレットを取ってきた。料金は通常料金、ハイシーズン、特別シーズンと別れていて、2名の場合それぞれ25,000円、29,000円、33,000円である。7名までOKでその場合は39,200円、45,500円、52,500円とある。7名で通常料金の場合、一人当たり5,600円とお得である。門限も何も無いのでカップルでも家族、グループでも、いろんな使い方が出来そうだ。

ここから歩いて行ける距離にたくさんの観光名所がある。少し東に歩くと白川が流れている。この辺りは粟田口といい、近くに明智光秀の首塚がある。光秀は秀吉に破れて山崎から坂本に敗走中に山科で落ち武者狩りの農民に殺された。北に行くと平安神宮、美術館、博物館、動物園、東に行くと永観堂、南禅寺、哲学の道、南に行くと知恩院、八坂神社、清水寺などがある。東山の観光地にきわめて近い。

食事は、商店街で食料品を買ってきて自炊するか、あるいは付近に何件もある食堂に行くか、いかようにでもなる。

私は京都に住んでいるので、泊まったことも無いし泊まる必要も無いので、その質に関しては保証しないが、なかなか良さそうな気がする。ちかみに私は小町屋の回し者ではないので、付近の他の日本旅館も紹介しておく。小町屋の3軒となりにやはり「桜香楽(さから)」という旅館がある。ここは普通のホテル風の旅館であるらしい。外からは完全な京町家である。今日はその前でテレビの撮影をしていた。この商店街は有名で、よく撮影が行われる。

古川町通りを北に上がって三条通を超えて次の通りを東に曲がったところに「民宿古梅川」がある。いずれもレトロな京町家風である。くどいが、どこも泊まったことが無いので、外から見る限りよさそうだという紹介である。

 

悪の秘密結社「猫の爪」による世界征服計画

クルドのハッカーによりハックされて消去されたWeb小説「悪の秘密結社「猫の爪」による世界征服計画」が復活しました。まだ全部は復活していませんが、徐々に復活して行く予定です。

2013-07-25

 


2013-07-24

ディスプレイより紙媒体のほうが理解しやすい

パソコンやタブレットなどのディスプレイよりも本や雑誌などの紙媒体の方が、情報を理解させるのにすぐれていることが最近の研究で明らかになった。人がある活動をする時に、脳のどの部分を使っているかを近赤光イメージング装置を使って調べると、紙媒体とディスプレイでは脳は違った反応を示す。情報を理解するための前頭前皮質の反応は紙媒体の方が強い。それは紙媒体は反射光で、ディスプレイは透過光だからだ。そのためディスプレイより紙媒体の方が理解しやすいことが分かった。

デジタル時代の読書脳:  紙とスクリーン

デジタル時代の読書脳:紙対スクリーンの科学(The Reading Brain in the Digital Age: The Science of Paper versus Screens )

 同じような趣旨の記事があった。

我々の脳はもともと字を読むようにはできていない。字を読むという行為はたかだか数千年のことであり、脳の別の機能を援用して字を読んでいるのである。

脳は字をたとえば林檎のようなものと同じような存在としてとらえている。だから字もその形とか、行中の位置とかで認識している。字はそもそも、ものの形をまねた象形文字として始まった。

個々の字を物体としてとらえるだけでなく、文章を全体として形としてとらえている。文章を見ることは景色を見たり、物体を見たりするのに似ている。ある文章を思い出そうとするときに、どの位置にあったかを考える。本は見開きになっていて、それぞれに4つの角がある。文章をこれらとの位置関係で覚えている。またページの厚みも、文の位置を思い出すのに重要である。つまり本を読むということは、脳の中に地図ができることだ。

ところがコンピュータやタブレット、スマートフォンの画面上の文字は普通はスクロールするので、場所が分からなくなる。KindleやiPadでは文章をページとしてみることができるが、1ページだけであり、別のページに飛ぶと、それは忘れ去られる。つまり今、本全体のどこにいるのかという感覚がつかみにくいのだ。e-bookにはその感覚が欠けているのは、それを作っている人たちが、そのことの重要性を認識していないからだ。

実際、実験で生徒たちの半分は紙の本、残りの半分はコンピュータでPDFファイルを読ませて、後で理解度テストをした結果、紙の本を読んだ生徒の方が好成績を収めた。コンピュータで読む生徒は、文章を探すのに、あちこちスクロールしたり、クリックして別のページに飛んだりする。紙の本では本全体の中から、特定の文章を見つけ出す。この方が直感的で、易しいのだ。本の始め、終わり、途中が把握しやすいのだ。

また紙の本の方が余白に書き込みがしやすい。だから本当に理解したい場合は、多くの人はスクリーンではなく、印刷したものを好む。デジタル時代の若い人でも、80%の人はやはり紙の方を好む。

紙の本は物理的な実体であり、長く読んでいると汚れたりする。コンピュータ上の文章の場合、それはデバイスと一体ではない。いくら読んでも汚れない。

本にはサイズ、厚みの感覚がある。デジタル文章ではスクロールバーの位置がそれに相当するが、直感的に把握しにくい。どんなに長編の小説であれ、重さは同じなのだ。だからe-bookを嫌う人たちが居る。e-bookでは本を読む楽しみが少ないという。もっともe-readerの手軽さを愛する人たちも居る。

英国の学生を使った実験では、紙の本でもスクリーンでも理解度に変わりはなかった。しかし記憶の仕方が異なっていた。紙の本では、ある文章がどの位置にあったかで思い出す。しかしスクリーンで読んだ場合はそれができない。つまり思い出しにくいのである。

またスクリーンで字を読むのは、紙で読むより疲れやすい。一日コンピュータ画面を見ていると疲れる。実験でもスクリーンで字を読む方が疲れることが証明された。というのは、字を読むことと、スクローリングの両方に注意を払わねばならないからだ。

またスクリーンで文章を読む場合、紙で読むときほどには、まじめでないし集中できない。じっくり読むのではなく、あっちこっち飛んだりする。試験の準備を紙の本でする場合と、スクリーンでする場合を比較すると、紙の方が成績がよい。読む心構えが違うのだろう。

しかしデジタル時代が進むと、状況はだんだん変わってくるだろう。まずe-bookしか読まない世代が現れてくる。技術者はe-bookをできるだけ紙の本に似せて作るようになる。またe-bookには紙の本ではできないこともできる。文章に容易に図、写真、映像、音を組み合わせることができる。紙の本にはできない芸当だ。長々しい文章だけ読むのならば、紙の方がよいが、しかし今後の読書は変わって来るであろう。


2013-07-23 

頭脳を模すマイクロチップ: 脳の情報処理をリアルタイムで模す新しいマイクロチップ

Microchips That Mimic the Brain: Novel Microchips Imitate the Brain's Information Processing in Real Time 

スイスのチューリヒ大学とチューリッヒ工科大学の研究者たちがニューロモルフィック・チップを作ったという。ニューロモルフィック・チップとは脳のニューロンの動作をまねるコンピュータ・チップである。脳の働きをシミュレートするためのいままでのアプローチは普通のコンピュータの上でニューラルネットというソフトウエアを動かすか、あるいはスーパーコンピューターの上で神経回路をシミュレートするものであった。それに対してニューロモルフィック・チップは、ニューロンの働きをシミュレートする回路をハードウエアで実現するものである。一種のアナログコンピュータといえる。使用目的は計算というよりは、パターン認識とか筋肉の制御などである。

ニューロモルフィック・チップの概念は新しいものではなく1980年代後半にCarver Meadという研究者が概念を提案している。最近では必ずしもアナログ回路ではなく、デジタル回路とか、両者の混合もある。

実際のニューロモルフィック・チップは最近になって、いろんなところで作られるようになった。たとえば2011年にMITの研究者、2012年にコーネル大学の研究者がニューロモルフィック・チップを発表している。IBMのシナプス計画、EUのヒューマン・ブレイン・プロジェクトもこの線に沿って、新しいニューロ・モルフィック・チップを作ろうというものである。

従来のデジタル・コンピュータは計算能力は大きいが、パターン認識などは不得意であった。ニューロモルフィック・チップはその欠点を補うものである。


 2013-07-22

日本流体力学会講演論文締め切り

今日は9/12-14に東京の農工大でおこなわれる日本流体力学会2013年年会に提出する論文の締め切りである。締め切りというものは、私にとつては、ずっと前から分かっているのだが、直前にならないと、何もしないというものである。今回は私を含めて3名の共著者で2編の論文を出すことにした。締め切りが本日と書いてあるだけで、時刻の指定が無い。ということは、夜の11時59分59秒までよいと解釈して、それまでにアップロードすることにした。実際は、午前を過ぎてもOKであったようだ。

論文は日本語で、アブストラクトと図の説明だけが英文である。私は以前、論文はTeXで書いていたが、この流体力学会の論文はWordで書いている。Wordで書く場合の問題点は数式である。以前はWord 2000とMathTypeを使っていた。ところが今回はWord 2007を使ったのだが、苦労した。というのも、Word 2007では組み込みで数式機能があるのだが、なんと式番号が入れられないというとんでもない仕様なのだ。式番号を入れると、文書内の式と認識されて、字が小さくなってしまう。これを作った人は、これで論文を書いたことが無いのだろうか。Wordというのは、いろいろ「小さな親切、大きなお世話」という機能が多すぎる。ちなみにWindows 8もそうである。Microsoftのアプリは進化すればするだけ、使いにくくなって行くという不思議な仕様である。

そこで以前にMathTypeで書いた論文の式を流用した。ところでそこでも式番号で苦労した。というのも、最終的にはPDFファイルに直さねばならないのだが、その時に式番号が変になったのだ。私はCUBE PDFという無料のPDF変換ソフトを使っている。それで変換すると、式番号が違ってしまうのである。そこで式番号を全部、手入力して事なきを得た。しかし今回の論文の式はMathTypeの式とWord 2007の(式番号のない)式が混じって、不統一になっている。しかし時間がないので、仕方なくそのまま投稿した。余裕を持って仕事をしないバチが当たったのだ。


2013-07-21

マイクロソフト・サーフェス RTは9億ドルもの大損失を出す必要は無かった

(Microsoft's Surface RT Didn't Have to Be A $900 Million Disaster)

マイクロソフトのタブレット・コンピュータであるサーフェスRTが売れていない。損失は900億円であるという。さらにマイクロソフトの株価も下がり、時価総額で3兆円が消え去った。600万台のサーフェスが売れ残っているようだ。

昨年にこのマシンが発表された時は、評論家は賛美した。しかし皮肉なことに売れていない。その理由は遅すぎたのである。売れない理由を分析してみよう。

  • 30ヶ月もiPadの発表から遅れた。アップルはその間にアプリや音楽などをiPad用に整備した。マイクロソフトにもっと将来を見通す力があればこんなことにはならなかっただろう。実際マイクロソフトは2000年の頃にタブレットを作ったのであり、技術力の問題ではない。
  • 100ドルiPadより高い。iPadにするかサーフェスにするかを考えたとき、もしiPhoneを持っているならiPadである。アプリや音楽が共有できるからだ。マイクロソフトは最近になって値下げしたが、遅すぎた。
  • 20店舗しか直売店が無い。サーフエスはネットでも買えるがやはり実物を見てからにしたい。そのための店舗数が少なすぎる。

うわさによればマイクロソフトはサーフェスの改良版を出すらしいが、さらに同じ程度の損失を出すだろう。そんな損に耐えられるのはマイクロソフト程度であろう。

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個人的印象

私が昨年サーフエスの発表を聞いた時は、多少興奮して、売り出されたら買おうと思った。ところが日本での発表が遅れに遅れたのである。さらに発売された後も、RTのうわさは芳しいものではなかった。利点としてマイクロソフト・オフィスがつかえるというのだが、RT版はPC用のものとは別である。だから私はサーフエスProに期待したのだが、しかしこれはウルトラブックの一種にすぎず、とくにそれにする必要も無い。実際、私はMacBook Air 13インチにVM Wareを搭載してWindows 7を動かし、その上でオフィスを動かしているので、いまさらサーフエスを買う必要は乏しい。


2013-07-20

第2回サロン・ド・科学の散歩

今日は第二回目の「サロン・ド・科学の散歩」があいんしゅたいんのオフィス、理事長のいうホワイトハウスで行われた。今回の講師は京都大学国際高等教育院教授の小山田耕二先生である。

先生とあいんしゅたいんの関係は、今年の1月まで3年に渡り、先生の実験室の一部である、情報メディアセンター北館の地下にある可視化実験室をお借りしていたのである。そこは廃品置き場の奥にあり危険物貯蔵庫と隣り合わせで、天井にはさまざまなパイプや配線が走り回っているという、いかにも秘密研究所のおもむきがあった。私はマッドサイエンティストとしてそこが好きであった。ところがその建物が耐震工事のために全面的に改築されることになり、我々は退去を余儀なくされて、その近くの民家に移動したのだ。元の場所から歩いて数分のところである。京都大学の本部キャンパスの東側に通りがある。その途中の仕出し屋を東に入った、一軒目である。さらに東は吉田山が迫っている。

参加者はなんと全部で15名いた。実は会場は民家の6帖の居間と6帖のダイニングをつないだ部屋で、椅子が14脚しか無い。それで講師の一人の坂本尚久京大助教はずった立っておられて、申し訳ないことをした。本NPOからは私のほかに理事長の坂東、会長の佐藤、主幹の竹本が参加した。今回新しく参加された方が4名もいた。その一人は私のホームページの「科学の散歩道」の記事「史上初の商業用量子コンピュータD-Wave」を見て、来られたというIT会社の技術者の方であった。その方とは、行事終了後に懇談した。その他、科学ファンの方も来られた。

小山田先生の話は「3次元映像への挑戦」と題するものであった。小山田先生は科学的可視化の専門家であり、日本シミュレーション学会会長を務めておられる。京都大学卒業後、日本IBMに勤め、その後は岩手県立大学の助教授から、京都大学の情報メディアセンターの助教授に転じ、現在は昔の教養部に相当する国際高等教育院の教授である。まずは教養教育の話から始まった。

それから科学的可視化の話になり、最後には先生が現在従事しているプロジェクトの話になった。それは漁業における漁獲量の予測をするアプリの開発である。

講演が終わり、全員で吉田キャンパスにある小山田研究室の3次元没入型可視化装置(CAVE)の見学会になった。左右と下の3面の比較的小規模なCAVEであるが、その没入経験は圧倒的である。Google Earthから持ってきたデータに3次元の建物を貼付けた模型の上を飛行するのである。みたのは京都、ロンドン、パリである。なぜならこれらの町はボランティアにより、3次元立体モデルが構築されているからである。平壌も一部が3次元化されているので、興味深い。

まあCAVEの見学会ができるのも、講演会がこんなに小規模で家族的だからだ。


 

2013-07-19

世界音楽散歩再開

本NPOのホームページは以前にも紹介した通り、クルドのハッカーにより攻撃されて閉鎖を余儀なくされていた。そして私のブログも閉鎖されていた。ホームページ担当の事務長のがんばりで、私の「科学の散歩道」のエッセイと、小説「聖子ちゃんの冒険」は、5月には再開したのだが、その他のものがまだであった。今日、ようやく「世界音楽散歩」が復旧した。これは私の好みの海外の歌手をYouTubeで紹介したものである。

私の歌手に関する信条は、歌手は歌がうまくなければならない、声が良くなければならない、というものである。そのために紹介した歌手の多くはクラシックの訓練を経た歌手で、しかもオペラなどではなくポピュラーな歌を歌っている歌手である。こういったジャンルをクロスオーバーという。代表的歌手として英国のサラ・ブライトマン、イタリアのアンドレア・ボッチェリなどがいる。彼らの声を聞くと、圧倒的であり、ボイス・トレーニングをしていない日本人歌手の出る幕はない。

人はなぜ自分のことばかり話すのか?

 


2013-07-18

適合型学習: アダプティブ・ラーニング

アメリカの雑誌ニューズウイーク: News Weekのデジタル版を取っている。月に250円である。その2013年7月10日号に「もしあなたがあらゆることを学べたらどうしますか? What if You could learn everything」という記事を読んだ。適合型学習(Adaptive learning)についての記事である。過去にEvernoteに記録したものを調べてみると次の記事がクリップされていた。

一人ひとりにあった学習を実現! 教育業界の新潮流「アダプティヴラーニング」

WikipediaのAdaptive Learning

適合型学習とはコンピュータを使って、生徒・学生個人ごとに最適の学習プランを提案するシステムである。

これまでの学校教育は、生徒・学生を大きな部屋に集めて、先生が一方的に講義をするというスタイルであった。このシステムは産業革命以降に広がった工場生産に範を得た物である。

それ以前の教育は、貴族や金持ちだけが受けられた、家庭教師による個別学習、日本では江戸時代に広まった寺子屋という学習塾のような、比較的小規模のものであった。工場式の学校教育の利点は、たくさんの生徒・学生に一度に教育を施すことが出来ると言う、その大量生産性、効率性にあった。近代、現代の社会では国民の教育度が、国力を決めるという側面を持つので、どんな近代国家も教育には注力してきた。

しかし工場式の学校教育の欠点は、多くの生徒・学生を一度に教えるので、良くできる生徒・学生にとっては物足りない、出来ない生徒・学生に取っては退屈なものであることだ。かなり多くの生徒・学生がコースの進度に着いて行けなくて、落ちこぼれると言う欠点がある。

理想は昔の貴族や金持ちが受けたような教育の再現である。つまり個々人に家庭教師をつけるのである。しかしそれは現代の教育の大衆性を考えると不可能である。生徒の数だけ先生が必要だからだ。そこでコンピュータにそれをさせようというのが適合型学習の概念である。生徒・学生の震度に合わせてコンピュータが問題を提示する。

グーグル探索をしたら、個人の探索履歴に応じた広告が表示される。アマゾンで買い物をしたら、これを買った人はこんな物も買っていますと言うお勧めが表示される。これらは機械学習という人工知能を利用したシステムである。適合型学習もやはり機械学習ソフトを用いて、生徒の学習履歴に基づき、最適な学習プランを提示してくれる。

アメリカで現在、適応型学習のさまざまなソフトが開発され、いくつもの会社が出来ている。先のニューズウイークの記事はその一つの会社Knewtonに焦点をあてたものだ。

適合型学習はたくさんの知識を効率的にマスターすることに適している。ただ教育とは単に知識を覚えるだけではなく、集中力の涵養、考え方を学ぶと言う重要な側面がある。それはやはり人間的要素が重要である。従って適応型学習が今後広まっても、人間の先生が必要なくなることは、当面はないであろう。しかし単に知識の受け売りをする先生は必要なくなる。

Knewtonに関してはこちらを参照のこと

 


2013-07-17

今日は一日かかって「飛行機はなぜ飛ぶかまだ分からない?? 」という記事を書いた。これは以前「大学ジャーナル」で書いたものであるが、 YouTubeを使用してpptファイルと同じようにしようと思った。以前とは違うYouTubeのビデオがアップロードされていたので、それを使った。

 


2013-07-16

スマートフォン中毒

面白い記事を読んだ。Nearly 20 Percent Of Young Adults Use Their Smartphones During Sex: Surveyというものだ。内容はそのものズバリだが、あえて訳すと「若者のほぼ20%がセックスの最中にスマートフォンを使う:調査」というものである。もっと具体的に言えば、アメリカの18歳から34歳までの若者の20%が、セックスの時にもスマートフォンを使う、大人全体ではそれが9%だというのだ。どう使うかは調べていないが、多分、最中にFacebookのコメントが気になり、見てしまうというものだろう。

さらに別の状況では、映画鑑賞の時35%、異性と食事デート33%、学校行事32%、運転中55%、シャワー12%、教会でのお祈り中19%である。

上の調査はHarris Interactiveが2013年6月13-17日にアメリカの1100人を対象に調査を行った。

別の研究では、二人が会話中にスマートフォンがその場にあるだけで、たとえ使っていなくても、親密度が落ちるという調査がある。

私は以前にどこかで書いたのだが、有名な京都の鴨川等間隔の法則、つまり鴨川のほとりでカップルが等間隔に座っている現象を橋の上から観察していた時に、カップルの一人が携帯で電話をしているのを目撃した。鴨川でデートする目的は、二人で楽しい会話をすること、つまり二人のつながりを楽しむことだと思う。ところが携帯で電話するということは、そこに第三者が割り込むことを意味する。見ていると、もう一人はつまらなそうであった。

我々はますますスマホ中毒に冒され始めている。先の記事を笑うわけにはいかない。例えば私は朝起きた時に、まずトイレに行くが、その時にiPhoneを持って行かないと不安になるのだ。そしてまずFacebookとメールをチェックする。その後の朝食の時には、できるだけ家内と会話するように努めるのだが、それでもiPadかiPhoneがないと不安になる。良くないと分かっていても、もはや中毒である。

活字中毒というのがあって、活字を読んでいないと不安になる症候である。活字中毒者はトイレにも新聞か文庫本を持ち込む。ただデートの最中に本や新聞を読む人は少ないように思う。しかしスマホは手軽だから使ってしまいやすいのだろう。

iPhoneが導入されてから、Androidを含むスマートフォンが爆発的に広まった。これは人間生活を変えてしまう存在である。その意味では、スティーブ・ジョブスは大きな影響力を人類に与えた人物である。

 

韓国でもスマートフォン中毒は深刻なようである。中央日報の社説 青少年スマートフォン中毒、まず社会環境の改善を=韓国 


2013-07-15

NSAに対する更なる内部告発

アメリカのNSAが世界中の通信、アメリカ国民の通信を傍受していた問題が、NSAの元の職員のスノードン氏により暴露されて大きな問題になっている。それにたいしてバラク・オバマ大統領は「NSAはあなたの電話での会話を盗聴していない」とNSAを擁護した。NSAが主張したのは、集めているのはメタデータだけであると。メタデータとは、電話や電子メールの内容では無く、だれがいつだれに通信を送ったかというデータである。メタデータだけでも、人々の行動が推測されるので、それでも大きな問題である。

ところがここに来て、2002-2005年にNSAで働いていたラス・タイス氏(Russ Tice)氏がもっとショッキングな内部告発をした。彼は当時の上院議員であったバラク・オバマの電話を盗聴するように命令されたと言う。次の記事を参照。

「NSAの元の内部告発者: 私は2004年にバラク・オバマを盗聴せよという命令を見た」

 ORIGINAL NSA WHISTLEBLOWER: I Saw The Order To Wiretap Barack Obama In 2004

Read more: http://www.businessinsider.com/the-nsa-spied-on-barack-obama-2004-russ-tice-2013-6#ixzz2ZNLkWTEV

上記の記事の内容は以下のようなものだ。

「2004年の夏、私が渡された紙には40歳くらいのイリノイ州の上院議員を盗聴するようにという命令がありました。そいつが今どこに住んでいると思います? ワシントンのホワイトハウスですよ。NSAが盗聴したのです。そいつは現在の米国大統領ですよ」

タイス氏が盗聴するよう命じられたのはヒラリー・クリントン、ジョン・マケイン上院議員、ダイアナ・ファインステイン、当時の国務長官コリン・パウエル、デビッド・ペトロイアス将軍、最高裁判事などだ。

NSAは国内で盗聴してはならないとされているが、NSAは徹底的に盗聴している。高級軍人、上下院議員、特に情報委員会、軍事委員会、法律家、法律事務所、判事、国務省、ホワイトハウスの一部、国際的企業、金融会社、NGO、市民運動家などである。

2005年当時は十分なコンピュータ・パワーを持っていなかったが、現在はあらゆる電話、電子メールなどの通信を集めている。郵便もそうである。

彼はまた「NSAはオバマを脅迫していたか?(NSA blackmailing Obama)」というテレビのインタビュー番組でさらに次のようなことを追加している。

{youtube}d6m1XbWOfVk{/youtube}

テレビの番組で、だれがオバマの盗聴を命じたかと聞かれて、タイス氏は直接は知らないが、チェイニー副大統領からだと聞いたという。 この国を支配しているのは誰かと聞かれて、それは政府ではない、陰の政府、つまり諜報機関だと彼は答えた。

タイス氏がNSAの問題を内部告発したのは現在ではない。2006年である。しかもニューヨーク・タイムズが記事にしている。その記事はピューリッツアー賞を受賞しているのである。それでも他のメディアや人々は問題にしなかった。スノードン氏とラス氏の違いは、前者が証拠の書類を持っていることだと言う。

 

感想

この問題はとても根が深い。アメリカの支配者、真に権力を握っているのは誰かという問題だ。普通は大統領と閣僚、あるいは政府と思うであろう。しかし実はNSAやCIA, FBIなどの諜報機関なのだ。政治家には任期がある。米国では上級官僚にも任期がある。ところが諜報機関の中下級職員には任期はない。彼らが闇の政府なのであろう。上級軍人とて安全ではない。なんと当時のCIAの長官であったデビッド・ペトロイアス大将が不倫がばれてクビになったのである。そもそも不倫がばれたのはFBIが刺したからである。

日本も似たようなものだ。日本の真の権力者は少なくともごく最近までは検察であった。例えば小沢一郎氏は有力な政治家として、自民党幹事長時代から権力を振るってきた。しかし小沢氏を嫌う検察により徹底的に攻撃されて力をなくしてしまった。実は小泉首相も例外ではない。小泉首相は選挙で、当時人気のあったホリエモンを自民党の候補者として擁立した。しかしホリエモンが気に入らない検察は、ホリエモンを逮捕して、刑務所に送り込んだ。マスメディアは本来は、こういった権力の行き過ぎをチェックすることが期待されているのだが、検察と一体化して、自身が権力者になっている。新聞記者にも検事同様任期はないのだ。安心して好き放題に権力が振るえる。もっとも検察は村木事件でみそをつけた。証拠をねつ造したのがばれて、検察は大きく信頼を失った。証拠をねつ造したのは、検事たちは自分こそこの国の主であると言う、思い上がりがあったのだろう。それで犯罪を犯しても、慢心のため十分に隠蔽しなかったことが悔やまれるであろう。

 


2013-07-14

 祇園祭の宵宵宵山に家内と行ってきた。地下鉄で烏丸御池に行き、そこで降りて烏丸通りを少し南に行く。みずほ銀行のところで三条通に入り、西に向かって歩く。昨年は室町通りで南に曲がったのだが、今年はその先の新町通まで歩く。宵山地図はこちらを参照のこと。

森見登美彦の小説「宵山万華鏡」を思いながら歩く。宵山を巡るオムニバス形式の小説だが、そのなかで宵山姉妹では小学生の姉妹がこの近くのバレエ教室に通っている。姉は活発で妹はビビリである。二人で宵山に出かけるのだが、すごい人出で迷子になるといけないので、妹はしっかりと姉の手を握っていた。ところがふとした弾みに手を離してしまい、妹は迷子になる。姉は必死で探すという話だ。最後に危機一髪というところで姉は妹を取り戻す。ファンタジックな話である。感想文はこちら

八幡山、北観音山、南観音山と見て、四条通に出る。途中はすごい人で、歩くのに困難するくらいだ。手を離すと幼い姉妹のようになる。町家が窓を開放して家宝の屏風や絵などを展示している。その奥では宴席が用意されていて、家族と客が食事している様子が見える。宵山の混雑はビデオを参照のこと。

{youtube}gC5hkTx3l9A{/youtube}

子供たちがろうそく売りのわらべ歌を唄っていた。とてもかわいいので、私もビデオを撮ったが、YouTubeにたくさんアップされている。女の子が多いが、男の子もいる。みんなきれいな浴衣を着て、(多分普段よりも)とてもかわいい。つぎのものは南観音山のわらべ歌である。「今晩限り」は最後の夜に唄われる台詞である。

「厄除けのお守りは、これより出ます。
明日は出ません。今晩限り。
ご信心の御方様は、受けてお帰りなされましょ。
ろうそく、一丁、献じられましょう。
ろうそく、一丁、どうですか~」

{youtube}zL-zx9HEgYM{/youtube}

裏通りを歩いても、表通りを歩いても、人人人の群れである。カップル、家族連れ、友人連れ、みんなとても幸せそうである。なぜみんなが幸せかというと、幸せな人しかお祭りに出てこないからである。いわゆる選択効果である。

 


2013-07-13

密度行列とフォン・ノイマン方程式

勉強会で量子力学の密度行列について勉強した。これは大学の時に富田和久先生に習った統計力学の復習である。その時使った教科書はテル・ハールの「熱統計学I」田中友和、池田和義訳、みすず書房、昭和35年、750円であった。第7章 「量子統計におけるアンサンブル」に密度行列がある。

今回読んだのはウイーン大学の素粒子論研究者であるProf. Reinhold A. Bertlmannの講義ノート第9章であった。そこでは密度行列ないしは密度オペレーターの定義と性質について述べてある。純粋状態と混合状態の定義、密度行列の時間変化を規定するフォン・ノイマン方程式の導出がしてある(第9章とあるように、講義の最後に近い部分だ。その後は10章のEntanglement of Quantum Systemsを残すのみである)。密度行列は古典統計力学におけるアンサンブルの密度であり、フォン・ノイマン方程式はリウビルの定理の量子力学版にほかならない。

ところでBertlmannとはなにものか調べたら、最近定年退職したウイーン大学の教授である。彼のホームページはこちら。

密度行列を復習したのは、開放系(Open System)における量子力学を学ぶためである。目的はLindbrad Master Equationの導出にある。そこでOpen Quantum Systemsと題したパワーポイント・ファイルを探し出して読み始めた。これはSubhashish Banerjeeというインドの学者のものだ。読んでみると、これで勉強するものではなく、すでに勉強したものが、知識を整理するのに役立つものだと思われる。やはりもっと体系だったものを読む必要がある。

日本機械学会誌

日本機械学会誌7月号ながれ特集に私の書いた解説「星とダークマターの流れ」が掲載された。銀河と初代星の形成理論を巡る私の個人的な思いで、最近の宇宙シミュレーションの解説などである。最近はスーパーコンピューターの発達により、銀河形成の宇宙シミュレーションがさまざまなグループにより行われている。下記のものは渦巻銀河の形成のシミュレーションである。

{youtube}-feWoMSTiDY{/youtube}

  


2013-07-12

21世紀の世界覇権を握る武器は人工知能とロボット

19世紀から20世紀に掛けての世界の支配権を握る武器は戦艦であった。それから航空機、核兵器と変遷した。現在の世界の支配権を握る武器は明らかに核兵器、ロケット、航空機である。しかし、それは時代遅れになりつつある。21世紀のこれからの世界を支配する武器は人工知能とロボット、サイバー兵器である。世界ではすでに激しいサイバー冷戦が行われている。米国、ヨーロッパは人工知能、ロボット兵器の研究を進めている。中国も同じである。一人、日本だけが取り残されている。

核武装をとなえる老政治家がいるがナンセンスだと思う。日本が核武装したら米中を明らかに敵に回し、外交的に不利になる。また核武装することは、相手に核攻撃する口実を与える。核戦争になった場合、狭く人口密度の高い日本はきわめて脆弱である。たとえば中国と核戦争をして、どちらも3千万人の被害者が出たと想定する。それは日本人口の25%で日本は壊滅するが、中国では2.5%にしかすぎず、かすり傷である。こんな簡単な算数でも、核武装のナンセンスさが分かる。

いっぽう人工知能、ロボットの研究は本来は兵器ではなく、平和目的が主である。その研究を進めても、西欧諸国、中国から文句を言われることはない。日本の政治家や官僚にはグランド・デザインが欠如しているように感じる。その典型が二番ではダメなんですかと発言した政治家が大臣になるような政治風土にも現れていると思う。


2013-07-11

グーグルグラスはポルノから始まる

 From VHS to Google Glass, porn drives the tech marketという記事が英国の新聞ガーディアンに出た。その抄訳を示す。

良く知られているように戦争は技術進歩を加速する。というのも戦争に勝つために技術に集中するからだ。たとえば1939年には英国空軍はまだ複葉機を飛ばしていたが、1945年にはジェット機を飛ばした。スピットファイア戦闘機からステルス爆撃機に至るまで、たくさんの技術者が動員された。

しかし平時に技術進歩を促進するのはセックスである。ポルノ産業自身が技術進歩を行う訳ではないが、新しい技術を素早く応用するのである。映画が発明されて、すぐにポルノ映画が作られた。ビデオテープでパナソニックのVHSとソニーのβマックスが競って、最終的にVHSが勝利を収めた理由の一つは、VHSにポルノが多かったからだと言われている。インスタント・カメラのポラロイドが成功を収めた理由もそれだ。(現像に出さなくてよいからだ。銀塩カメラで怪しげな写真を撮って現像に出すと、押収されてしまう)。

インターネットが発展し始めた1990年に(ポルノ雑誌の)ペントハウスは読者にモデムを提供した。2010年には、もっとも見られる100万のサイトのうち5万はポルノサイトである。10億人のインターネット・ユーザーのうち2.5%は、少なくとも月に一度はポルノサイトを見ている。ウエブ探索の13%はポルノである。2012年のポルノ産業の年商は46億ドル(4600億円)である。

iPadが発表されて、アップルはフラッシュを禁止した。しかしそれでもポルノは止まらない。

さてここでグーグルがグーグル・グラスを発表して、そのコンテンツとしてポルノを容認しないと宣言した。しかしそれがどのくらい保つかは怪しい。すでにポルノ的なアプリが出始めている。グーグルはおもしろくないが、禁止は無理だろう。

セックスと技術はDNAの二重螺旋のようなものだ。好むと好まざるに関わらずポルノグラスは出現する。問題はそれをオープンにしてある程度のコントロールをするか、闇に追いやって規制の効かない暗黒ウエブに追いやるかである。

 


2013-07-10

Google Glassで逮捕現場撮影

グーグル・グラスを装着して米国ニュージャージーのショッピング・モールを歩いていた人が、たまたま喧嘩場面に出くわし、犯人が警察に逮捕される現場を撮影した。ビデオには実際の喧嘩場面は映っておらず、犯人とおぼしき人物が警官に手錠をかけられて連行されるシーンを映しただけである。

しかしこの「事件」は、グーグル・グラスによる市民ジャーナリズムの登場を予感させる。つまりいつでもどこでも、素人ジャーナリストがニュースをレポートできるようになるのだ。現在でもスマホには写真機能、録画機能、録音機能がついており、やろうと思えば同じことは出来る。しかし、その為にはスマホを取り出さねばならないし、歩きながら録画することは、出来ないことはないにしても危険である。ところがグーグル・グラスならそれが簡単にできる。

しかし一方で、その問題点、特にプライバシーの侵害についても、グーグル・グラスが一般に普及する前から心配されている。そのひとつは盗撮である。またそこまで行かなくても、あった相手の写真を許可なく撮ることが、簡単にできる。現在はまだ出来ないが、そうして撮った写真と画像データベースで画像検索をすることにより、相手の名前を割り出すことも出来る。

私は初対面の人とであって名刺交換をした場合、相手の許可をもらって、名刺を持った姿を写真に撮らせてもらっている。そうすると、私の人物データベースが簡単に出来るのである。後で連絡する必要が出来た場合、写真を拡大して、名刺を読み取るのである。グーグル・グラスを使うと、無許可で似たことが出来てしまうのが問題だ。グーグル・グラスでは撮影する場合は、光が明滅したりして知らせるようになっていると言う。それはプライバシー侵害に対するクレームの予防策であろう。

{youtube}4isOSntnpo8{/youtube}

次のBBCの番組では、実際の使い方について説明している。写真を撮ったりビデオを撮ったりするには、「OKグラス、写真を取れ」というように、言葉で命令する。"Thank you for flowers"を日本語で言うとどうなるかという質問もしている。

{youtube}vm7Dmtm_iio{/youtube}

ともかく、これからの世界は変わるのである。 


2013-07-09

YMOについて

6月18日にMYO(マイオ)という腕の動きでコンピュータに指示を与えるデバイスについて述べた。Thalmic Labsという、カナダのベンチャービジネスが開発中のものである。写真に示したような装置を腕にはめて、腕の動きを読み取り、コンピュータに指示を与える。

MYO

それに関するScientific Americanの記事

Forearm Gesters Remotely Control Computers and Dronesを読んだ。 

これを手にはめて、ジェスチャーでゲームをしたり、あるいはドローン(無人航空機)を操縦できる。

面白いと思ったことは、その動作原理である。同様なものとしてLeap MotionKinectがあるが、これは指先やペン先の動きを読み取る装置である。

YMOは腕の筋肉に流れる電流を読み取る。腕の動きとコマンドに一対一の対応をつける。現在20ジェスチャーを区別できるという。そのために機械学習のアルゴリズムが組み込まれている。腕の小さな動きを読み取ろうとすると、ノイズが多くなり、間違う可能性が増える。

この手のものがどれほど実用的になるかは、どのくらい、多様なコマンドを区別できるかであると思う。

筆者が将来的に希望するものは、喉の筋肉の動きを読み取る装置である。発声した時に喉の筋肉が動くが、声を出さなくても筋肉は動くので、無声の音声認識ができれば、現在の音声認識のもつ一つの欠点、つまり静かな環境でないダメとか、声に出て回りが迷惑するといったことがなくなる。ただMYOのように腕の大きな動きでも20しかコマンドを区別できないのでは、もっとたくさんある音素を区別するのは難しいであろう。


日経BP記者によるインタビュー

今日は東京に出張の為にやって来た。日経BPの記者さんから、日経BP社 『日経ビジネス』、8月中旬号の巻頭特集「ロボットで自動化はどこまで可能か?」(仮題)に関してインタビューを受けた。私の著書「2045年問題」を読まれて、インタビューを思いつかれたと言う。

想像するに、この手の雑誌の読者として興味あるのは、技術的特異点の問題のようなウソか本当か分からないような話より、これから10-20年の自分の仕事はどうなっていくかということであろう。カーツワイルの主張するように技術的特異点が2045年だとして、そこに至るまでに普通の人々の暮らしがどうなるかに関心があるであろう。

その大きな問題点は技術的失業である。コンピュータ、人工知能、ロボットが発達すると、それまで人間がやっていた仕事をコンピュータ、ロボットが代替するようになり、人間は失業する。ロボット化の流れは押しとどめられないとして、どのような対策があるか、さまざまな本の著者により、その処方箋は異なる。現在の競争的な資本主義社会を肯定するとすると、勝ち組と負け組が現れる訳で、いかに勝ち組になるかという方法論が一つにはある。

もう一つは、ロボット化は生産性を上げる訳で、社会総体としては豊かになるはずだ。つまり人間はもはや労働しなくても喰って行けるはずだ。それがそうならずに、一握りの金持ちと大勢の貧乏人に分割されるのは、社会システムが悪いからだと言う議論がある。この格差を是正する為には、金持ちから多く税金を取り、貧乏人に配分すると言う考えがある。それは正論ではあるが、その実現はなかなか難しい。経営者、資本家、金持ちがそうやすやすと既得権を手放すはずもない。

さらに別の議論として、格差は認めた上で、貧乏な生活になれようという主張もある。金があることが、即、幸せを保障しないことは知られているので、貧乏でも幸せに生きる道を探ろうと言う議論である。

ともかく、私はいろんなことを話したのだが、そのどの部分が記事になるかは楽しみである。

 


D-Wave量子コンピュータは量子的 

今日は筆者の蟄居する、京都山科の特異点庵と称する筆者の個人オフィスで、秘密研究会と称する勉強会を行った。テーマはD-Wave社の量子コンピュータが真に量子的かどうかを調べて、それに肯定的な結論を下したNatureの論文"Experimental signature of programmable quantum annealing"を分析することである。その論文のアブストラクトを要約する。

量子焼きなまし法は量子断熱進化を使って困難な最適化問題を解く一般的な方法である。理想的な閉じた系の場合、量子焼きなまし法はしミュレーティド焼きなまし法のような、熱化(Thermalization)に基づく古典的な手法よりもはるかに優れていることが、解析的及び数値的に示されている。しかし、量子焼き鈍しコンピューターはデコヒーレントな熱的環境の元では、結局は量子的と言うよりは古典的な熱化を行ったのではないか。この疑問に答える為に、我々はプログラム可能なスピン・スピン結合をもつ超伝導磁束量子ビット(D-Wave)を用いた。その結果は量子焼き鈍しと矛盾せず、古典的な熱化とは矛盾する。デコヒーレンスの時間スケールが断熱進化のタイムスケールよりも遥かに短いにも関わらずである。このことはD-Waveが雑音や量子ビットの欠陥に対して極めて強靭であることを意味している。

この論文の要点は、要するにD-Waveは量子的であるということだ。D-Waveに対しては正統派の量子コンピュータ学者からはさまざまな批判がよせられていた。D-Waveが計算できたとしても、それは量子的な計算ではなく、古典的な計算であろうと言う批判がそのひとつである。本論文はそれに対する反論である。

 

開放系の量子統計力学

論文の本体部分はそれほど長くなく、読むことにそれほど困難はない。ところが本論文にはAからHに至る膨大な付録があり、こちらを読むのは極めて難しい。特に筆者が戸惑ったのはリンドブラッド・マスター方程式なるものだ。筆者は大学時代に量子力学を学んだが、こんなものは習ったことがなかった。

調べてみると、その方程式は開放系の量子統計力学における基本方程式であるらしい。量子状態には純粋状態と混合状態がある。純粋状態を記述するのが波動関数で、その運動を規定するのがシュレディンガー方程式である。いっぽう混合状態を記述するものとして密度演算子あるいは密度行列がある。この運動を支配するのはフォン・ノイマン方程式である。そこまでは当時の教科書に書いてあった。しかしそれは閉じた系に対するものである。

系が開放系である場合、フォン・ノイマン方程式の一般化がリンドブラッド・マスター方程式であると言う。リンドブラッドと聞くと筆者は恒星系力学に置けるリンドブラッド共鳴を思い出すのだが、どうも別人であるらしい。

開放系の量子力学というキーワードで調べるといくつかの大学院クラスの講義録に出くわした。例えば"Graduate course on open quantum systems"などそうである。Lindbradの論文は1976年のものだから、筆者が大学院を卒業した後の話で、習わなかったのも当然である。

 

若気の至り

筆者の大学院時代の印象は、量子力学などすでに完成した学問であり、その応用である物性物理学などは素粒子物理学に比べて格が低いと思っていた。物理帝国主義的思想のなかでも素粒子帝国主義思想に冒されていたのだ。それはその研究室の元の指導者が、かのノーベル賞学者である湯川秀樹先生であったからだ。湯川先生は偉い、だから素粒子論はえらい、そんな考えだった。

だから筆者は大学院修士課程に入り、素粒子・原子核理論研究室を選んだ。素粒子・原子核といっても素粒子論と原子核理論は別で、素粒子論の方がえらいと思っていた。しかし筆者は修士課程2回生の時に天体核物理学研究室に鞍替えした。その理由は、素粒子理論をめざす若者はたくさんいて、みんなとても頭が良さそうで、こんな人たちと競争とても、とても頭角を現せないと思ったからである。筆者の転身は大成功であった。実際、天体物理学、宇宙物理学はその年1965年にブレークしたのである。ペンジアス・ウイルソンによる宇宙背景放射の発見である。素粒子をやっておれば、鳴かず飛ばずになっていたであろう。

今から考えてみると、当時の筆者の素粒子帝国主義的発想は完全な偏見であった。その証拠に筆者が完成した学問と思っていた量子力学が、その後、爆発的に進歩しているのである。そのひとつがこの開放系の量子統計力学である(らしい)。若気の至りと言えばそれまでだが。

さらにいえば、素粒子論、高エネルギー物理学がどんなに進歩しても、人間生活にはほとんど関係ない。ヒッグス粒子が見つかろうが関係ない。超弦理論が証明されても関係ない。しかし量子コンピュータの進歩は、技術的特異点を招来する可能性をますわけで、影響力が大きい。原子や分子の量子力学の方が、素粒子物理学よりはるかに人間生活に大きな影響を及ぼすのである。

 


「2045年問題」啓文堂新書大賞受賞

拙著「2045年問題」が啓文堂新書大賞に選ばれた。啓文堂とは東京の京王電鉄系の書店で、毎年いろんな賞を出している。そのひとつが新書大賞である。その仕組みは、出版社の推薦した新書の中から12冊を候補として選定して、6月の1ヶ月間、啓文堂の各書店でフェアーを行う。そしてそのなかで最多売り上げを上げたものが大賞に選ばれると言うしくみだ。今年度の候補書籍はこのようなものだ。拙著もその中に選ばれた。そして6月のフェアでデッドヒートを繰り広げた結果、拙著が大賞に選ばれたと言う。大賞該当書籍は8月に販売促進のフェアーをすると言う。このやり方はなかなか巧妙なものだと思う。啓文堂は売り上げを伸ばせるし、候補書、および大賞該当書籍も売り上げが伸びる(だろう)から、両者とも損はないという仕組みだ。

筆者は1970年代に講談社ブルーバックスから佐藤文隆さんと共著で「相対論的宇宙論」という本を上梓した。これはかなりベストセラーになった。それと比べると「2045年問題」の印刷部数は一桁少ない。書籍と言うものが売れなくなっているのであろうか。

 

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マッド・サイエンティストのつぶやき Mon, 08 Jul 2013 14:29:16 +0900
2013年6月後半 https://www.jein.jp/jifs/blog-matsuda/mutter/826-1306-laterhalf.html https://www.jein.jp/jifs/blog-matsuda/mutter/826-1306-laterhalf.html

バターの作り方

本日、親子理科実験教室の春夏コースの第二回目が京都大学理学部セミナーハウスで開かれた。講師は自称「おっちゃん」の工藤博幸先生である。参加者は小学校1年から6年までの児童39人と、その父兄である。
 
今回の実験は生クリームからバターを作るというものである。まず十分に冷やした生クリームを用意する。生クリームはスーパーで売っている。乳脂肪45パーセントぐらいのものを用意する。それとは別にペットボトルを用意する。生クリームをペットボトルに入れる。そして栓をしめて水平に激しく降る。先生によると、高校生は比較的短時間でこれをやることができるが、実験に参加したのは小学校低学年が多く、力が無いからなかなかうまくいかない。父兄も参加して、ひたすらにペットボトルを振った。振っているうちに内部はバターと水分に分離してくる。最後にバター部分から水分を追い出すために、激しく下に打ち付けるようにする。こうしてバターができあがる。最後にペットボトルを切り開いてバターを取り出す。
 
このようにしてできたバターは、塩分が含まれていないので無塩バターである。市販されているものはこれに塩分を添加したものだ。実験の後でバターをパンやクラッカーにつけて食べた。塩分がないから、味はほとんどない。後は好みで好みで塩をふれば良い。
 
なぜこんな簡単なことでバターができるのだろうか。材料の生クリームには乳脂肪の小さな塊が水の中に浮いている。乳脂肪分同士がぶつかるとそれが合体する。激しく振っているうちに乳脂肪分が大きくなっていくのだ。バターは乳脂肪の固まりである。
 
そういえばアジアの遊牧民族はバター茶というもの飲んでいる。これはお茶にバターを溶かしたものだ。

 


 


 

 


幸福を買う為のお金の使い方に関する研究の紹介です。

 


 

昨日、一昨日と話題にしたヒューゴ・デ・ガリス教授の「退職後の仕事」と題するエッセイを科学の散歩道にアップした。デ・ガリス教授は中国の大学教授をしていたが、現在は退職して、自分の好きなこと、つまり純粋数学と数理物理学の研究をして、楽しく退職後の生活を送っているという。退職後には、今までの仕事とは別のキャリアーを開発すべきだと言う彼の意見、および彼の生活が明らかにされる。月の生活費が150ドル、つまり15,000円程度とは、いかに中国の生活費が安いとはいえ、慎ましい生活である。その割にはいままでに100万ドルを投じて12,500冊の本を買ったとか、また昼の2時に起きて、朝の7時に寝るという夜型生活も度肝を抜く。

私は彼のキャリアに親近感を抱くのは、私が容貌、キャリア、好みなど、少し似ているからである。私は彼よりは数年年長の、既に定年退職した神戸大学名誉教授である。今年の3月に同志社大学と甲南大学で教える仕事からも完全に退職した。しかし私も彼同様、知的なことは大好きである。現在は京都の山科にある民家を借りて、特異点庵となづけて個人的研究所にしている。現在の勉強、研究テーマも以前の本職であった宇宙物理学、数値流体力学からは少し離れて、デ・ガリス教授の本職であった人工知能の勉強をしている。

ただ彼と違う点は、彼のように夜型生活は送っていない点、それに彼ほどには健康に自信が無いことである。私の父は太平洋戦争で戦死したので、父の本来の寿命は分からない。母は今年92歳で永眠した。

私が思うには、ネットでいろいろ勉強していると、世の中、知的な面白いテーマは有り余るほどあって、面白くて仕方が無い。ただデ・ガリス教授ほどには、ひとつのことにじっくりと取り組めていない憂いはある。

 


昨日はオーストラリアの人工知能学者デ・ガリス(Hugo de Garis)の論文について紹介しました。彼のインタビュー・ビデオはたくさんあります。彼の話は基本的にどれも同じです。YouTubeでHugo de Garisのキーワードで検索するといろいろと見つかるでしょう。結構長大なインタビューが多く、英語で語られるので、フォローするのがしんどいでしょう。

ここに示すのは、2011年にAdam A. Fordという人の行ったインタビューです。先の論文にそって、人工知性に至る道が語られています。

まずは技術的特異点に対する人々の懐疑的な捉え方を話します。人間は偉いのだから、機械などに人間の知能がまねられるはずは無いという議論、というよりは信念、信仰です。それに対してデ・ガリスはムーアの法則と、ナノテクと神経科学の融合による脳の機能の解明が、人工知性(Artilect=Artificial Intelect)を作ると主張します。

YouTubeのコメントの中に、「髪の毛をちゃんと、といておけ」というのがありました。デ・ガリスは研究者らしく、身なりをかまわない人のようです。また彼をEduot(Educated Idiot)と呼ぶものもいました。しかしその人は単なるIdiotか、もし科学者ならデ・ガリスの言う、想像力のないCD(Competent Dulard: 専門バカ)でしょう。デ・ガリスの容貌はマッド・サイエンティストを思わせます。なんとなく私と似ているようです。

人工知性が出来るかどうかはともかく、今後数十年のコンピュータと人工知能、ロボットの進歩は恐るべきものが予感され、人間の生活を根本的に変えるでしょう。

{youtube}zl66OdpO6u8{/youtube}

この話の続きはここです。人工知性への二つの道が語られます。工学的なアプローチと、神経科学的なアプローチです。前者はコンピュータの進歩です。後者は人間の頭脳の機能の解明です。それが分かると、知能理論という数学分野が生まれます。それにより天才と凡人の差、人間と猿の差が分かります。そこで知能を決定するパラメターを極限まで進めて、知能の強化をはかります。さらに進化工学によりパラメターをランダムに変えて、知能が増強されるかをみます。次の議論はサイボーグは無いという話です。人工知性が出来た暁は、砂粒程度のコンピュータを身につけるだけで、人間は人工知性と同じ程度の知能になるので、サイボーグと人工知性の区別がつかないという話です。

{youtube}FBVq-Jx6JCo{/youtube}

人間が機械を装着した状態をサイボーグというのなら、現在でも人間はサイボーグ化しています。しかしそれは眼鏡であったり、入れ歯であったり、義肢、義足、人工心臓程度です。頭脳を機械に入れ替えると、知能が増強されます。そして真のサイボーグになります。人の知能の1兆倍の1兆倍の能力をもつコンピュータを人間が装着すると、それは機械的な人工知性と区別がつきません。

{youtube}6Uo6TYnPJ8o{/youtube}

 つぎのテーマは技術の力です。過去の産業革命と、来るべき特異点、ラダイト運動の過去と未来、ニューエイジ、スピリチュアリズム的反応、機械は意識を持てるかといったことが語られます。

{youtube}tDfOJFVwf5g{/youtube}

 次のビデオでは世界観、大衆の知識、理神論が語られます。心についての科学的知見が明らかになり、大衆の常識となった時、世界観は変わるでしょうか。デ・ガリスがモルモン教の本拠地であるユタ州の大学にいたときの奇妙な体験を語ります。科学の教授が科学者であると同時に、敬虔なモルモン教徒であるのです。頭脳には別の引き出しがあり、互いに矛盾した考えでも同居できるようです。最後に理神論についてかたります。理神とは、キリスト教などの言う神とは違う神、スピノザ的な神です。しかしこの場合、別の宇宙の宇宙人が作った人工知性が、この宇宙を作ったと言う考えです。造物主とは、いわゆる神ではなく、別の宇宙の人工知性だと言うのです。

{youtube}-nFpbezdZaI{/youtube} 


科学の散歩道にオーストラリアの人工知能学者ヒューゴ・デ・ガリスの論文人工知性戦争・・宇宙派対地球派 人類は神のようにきわめて知的な機械を作るべきかどうかに関する激しい闘争の抄訳をアップしました。これに関してデ・ガリスは同じ題名の著作があり、また彼の同趣旨の講演やインタビューがYouTubeで見ることが出来ます。

デ・ガリスは日本にいたこともあり、その後、米国、ベルギーを経て中国のアモイ大学の教授になり、中国初の人工頭脳の作成を指導しました。現在は定年になり引退していますが、数学、物理学の博士課程クラスの勉強を続ける傍ら、著作や講演にはげんでいます。またフェムト・テクノロジーの研究をしているとも言います。彼の後任にはまた西欧人の教授を推薦して、中国が人工知性競争に遅れをとらないように、ハッパをかけています。彼は、日本は西欧人の研究者を引きつけることに失敗したと発言しています。つまり中国はそれに成功しているということです。

20世紀の世界を支配する兵器は核兵器でした。21世紀はそれがロボットとサイバー兵器です。いずれもコンピュータ、人工知能の応用です。EUは2013年にヒューマン・ブレイン・プロジェクトを開始して、頭脳と意識の解明をはかっています。究極的には人工知性を作る気なのでしょう。アメリカも負けじと、オバマ大統領は2013年の年頭教書でブレイン・アクティビティ・マップ計画を打ち上げ、EUに対抗しようとしています。ひとり日本だけが、何をしているのか見えません。

先の論文に書いてあるように人工知性の進歩は諸刃の剣です。西欧諸国と中国は、それを利用して世界の支配権を握ろうと考えているのでしょうが、暴走して人類が支配される、あるいは滅亡する可能性もあります。しかし論文に書いてあるように、その動きは止められないようです。

デ・ガリスは人工知性が作られると、その目的は新しい宇宙を作ることだと予想しています。とてつもない話ですが、それに関しては「人間原理と数学原理・・・宇宙はなぜこれほどうまくできているのか? 」を参照してください。


筋肉の動きを読み取るジェスチャー入力アームバンドMYO

またまた面白いガジェットが発表された。MYOというジェスチャー入力デバイスだ。これは既に紹介したLeap motionと似ているのだが、Leapは箸や指などの尖った部分の運動を追うのに対してMYOはアームバンド型のセンサーを腕にはめて、筋肉の動きを読むと言う。通信はBluetoothで、OSは当面WindowsとMacだという。

<MYO - Wearable Gesture Control from Thalmic Labs

{youtube}oWu9TFJjHaM&feature=player_embedded{/youtube} 

予約注文を既に受け付けていて、$149というから、1万5千円の程度だ。さらに送料は別だと思う。会社のホームページはここ。今予約すると、来年初頭に出荷されると言う。ただ私はLeapが同じような約束をしながら、出荷が半年以上遅れている経験からして、この種の約束は、もはや信じないことにしている。


 

親子理科実験教室

NPO法人「あいんしゅたいん」では、親子理科実験教室と題して、小学生対象の科学教室を開催している。会場は京都大学の北部キャンパスにある理学部セミナーハウスである。3年前から行っており、好評を博している。内容は理科の実験であるが、必ずしも文部科学省の指導要領にとらわれることなく、理科好きを増やそうと言う意図のもとに、いろいろと面白い企画を考えてきた。しかし指導は小中高や科学館の先生、大学教授でも初等中等教育の専門家にお願いしている。

理事長の坂東昌子は元日本物理学会会長で、私は元日本天文学会の理事長であるので、一応は物理学の専門家を称している。しかし小学生相手の指導は大学生、大学院生の指導とは異なり、非常に難しいと実感している。正直言って、理事長も私も実験はまったくの素人である。だから小学生相手の指導は、その道の専門家にお願いするのがベストであると考えている。我々の役割は、実験教室で行う実験や、その科学の内容の検証である。その活動の中で、我々はいろんな面白いことを発見して来た。

例えば、電流について初等中等教育では電流の水流モデルというものを教えている。電流とはパイプの中を流れる水に例えられるとするモデルである。私たちはそのモデルに疑問を抱いた。このモデルは電流の性質のある側面は表すが、別の側面は表せないだけではなく、とてつもなく大きな誤解を生むことを発見した。

具体的に言えば、電流をパイプの中を流れる水に例えるとすれば、電流の速度は水の速度、電流のエネルギーは水の運動エネルギーになるであろう。ここで電流の速度は実験的に光速度に近いことが分かっている。 しかし電流とは電線の中を運動する電子であるので、電流の速度を電子の速度と考えると、実はこれがとんでもないことになる。

電線の中の電子の速度はドリフト速度とよび、簡単な計算から求められる。それによると典型的な値の場合、秒速1mm以下である。つまり電流は電子の流れであることは確かなのだが、電流の速度を電子の流れる速度と考えると、全くつじつまが合わないのである。

また電流のエネルギーも水流モデルに従えば、水の運動エネルギーと考えるのが妥当だが、これも全くの見当違いである。このことを我々は実験準備の議論の中で発見した。発見したと言っても、知っている人は知っているのだが、初等中等教育に携わる先生を始め、物理学の専門家といえども、多くは知らない。それに関しては、私は「電流のエネルギーは電線の外を流れる」と題して長大な解説記事を書いた。

この他にも、教科書や科学解説書には多くの間違いがあることを私は発見した。それについては、いずれ少しずつ解説して行く予定である。


 

サロン・ド・科学の散歩

別に告知されているように、NPO法人「あいんしゅたいん」付置・基礎科学研究所の行事として、今月から月一度のペースで「サロン・ド・科学の散歩」と称してセミナーを行うことになった。昨年度も基礎科学研究所のコロキウムは、月一度のペースで京都大学情報メディアセンター地下にある可視化実験室(通称秘密研究所)で行われて来た。

今回はその行事を独立行政法人科学技術振興機構(通称JST)の支援により行うことになった。場所はあいんしゅたいんの新オフィスである通称「ホワイトハウス」である。この名前は理事長・坂東昌子がつけたものである。実は私は以前、Web小説「悪の秘密結社猫の爪による世界征服計画」を書いた。そのなかで私は米帝国の首都ヒューストンにある皇帝官邸をブラックハウスと名付けた。米帝の初代皇帝はバラコ・オババという日系女性で、日本名を御馬場薔薇子という。その写真として理事長の写真を拝借したのである。いかにも悪の帝王という雰囲気が漂っている良い写真であった。残念ながら、この小説はクルド人ハッカーのハックの為に消去されてしまい、まだ復活していない。このクルド人は米帝の手先ではないだろうか。

さてサロン・ド・科学であるが第一回目は6月29日(土)13:00-18:00に行う。 講師は私で「コンピュータが人類を超える日」と題して、技術的特異点の話を行う。このテーマは私の著書「2045年問題・・・コンピュータが人類を超える日」廣済堂新書、松田卓也著で展開した話の続きである。時間が許せば「史上初の量子コンピュータD-Wave」の話とか、「サイバー戦争の時代」、NSAによる大々的なスパイ活動の話もしたいと思っている。しかし5時間も私が話し続ける訳ではなく、またそんなことも出来ない。聴衆を含んだパネル討論や、懇親会も行い親睦を図ると言うのが、この企画の趣旨であるので、気軽に参加されたい。

ところで拙著であるが、東京の啓文堂という書店グループによる啓文堂新書大賞の候補にノミネートされた。10作ほどがノミネートされ、6月の1月間、啓文堂でフェアが行われ、そこで売り上げが1位になったものが選ばれると言う。なかなかうまい販売促進策であると思う。

会場のホワイトハウスは、アメリカの大統領官邸などとは大違いで、ただの民家である。場所は京都大学の本部キャンパスの東の住宅街にある。部屋は狭く、15人も入れば身動きならないははずである。従って、出来るだけ多くの人に来ていただきたいのはやまやまだが、告知にあるように、希望者は参加申し込みフォームからお申し込みいただきたい。

これも余談だが、森見登美彦の小説「太陽の塔」で、主人公が京大生狩りに追われて逃げ惑ったのは、このあたりではないかと推測される。

 

 

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マッド・サイエンティストのつぶやき Tue, 18 Jun 2013 09:38:39 +0900
2013年6月 https://www.jein.jp/jifs/blog-matsuda/mutter/808-1306.html https://www.jein.jp/jifs/blog-matsuda/mutter/808-1306.html

 


 

この続きは6月後半へ

 


 

フェイスブックとマイクロソフトが米国政府に情報を漏らしていたことを発表

6/15の英国の新聞ファイナンシャル・タイムスの記事によると、NSAについての内部告発問題に関して、米国のIT会社が真相を発表し始めた。

NSAを含むアメリカ政府機関がアメリカの主要なIT会社マイクロソフト、ヤフー、グーグル、フェイスブック、YouTube、アップルなどから情報の提供を受けていた件に関して、いままでこれらの会社のトップは、そんなことは聞いたこともないとか、バックドアーは用意していないとか否定していた。

しかしフェイスブックは、当初の否定とは裏腹に、6/14日に実は情報を提供していたことを明らかにした。それによると、2012年の後半には18,000-19,000のユーザーの情報を政府に情報を提供していた。そのなかには9,000-10,000の中央、地方の警察などの政府機関も含まれている。しかし米国外のユーザの情報暴露はないとしている。

マイクロソフトは2012年後半だけで6,000-7,000件の要請を受け、31,000-32,000のユーザー情報を漏らしたと言う。

合衆国司法長官ホールダー(Eric Holder)はスノードン氏の内部告発は「アメリカ国民の安全を脅かす。合衆国の安全は内部告発のため危険にさらされた」と述べた。

EU側はこの問題に危機感を抱き、米国とPRISM問題を共同調査することに同意した。

フェイスブックはグーグル同様、外国のユーザーの信用を守る為に、事実を発表する許可を政府に求めていた。実際、アメリカ政府は、この情報収集は外国人向けのもので、米国民には関係ないと主張していた。今まではこれらの会社は、政府から秘密命令を受けていたことを発表することを禁じられていた。フェイスブックによれば、政府の要請の一部を拒否したり、スケールを小さくして来たと弁明した。もっともフェイスブックの発表は報告数だけで、内容には触れていない。

感想

問題はオバマの演説によれば、IT会社が政府の要請でユーザーの個人情報をリークしたことが合法的であることだ。議会も同意し、(秘密)裁判所の(秘密)判事の許可も得ている。全てが秘密裏に行われていたことが合法的で、その秘密を暴露することが非合法になるということだ。 やはりアメリカはビックブラザー国家になっていた。 中国、ロシアとそれほど変わりはない国だ。「アメリカは自由な国だ」などという看板は早急におろすべきだろう。また我々も、インターネットを使う限りプライバシーはすべてアメリカに握られていることを自覚すべきであろう。

メールなどの通信を暗号化することでプライバシーを守ることも考えられる。しかしその暗号の作成にもNSAが関与していて、暗号鍵を長くすることをNSAは反対して許可していない。また暗号技術を外国に輸出することも禁止している。ようするに我々が通信を暗号化しても、それは解読が少し難しくなった程度である。その気になれば、米国政府が必ず解読できるようになっているのだ。

ところでフェイスブックが当初の否定から一転して公表に至ったのはなぜだろう。アメリカの関係者の憶測では、政府の要請はフェイスブックのトップのザッカーバーグには知らされずに、技術担当者と法務担当者のみに知らされ、その段階で処理されていたのではないかという。この事件があらわになり、ユーザーの信頼が失われたので、トップが大慌てで対処したのであろう。アップルが計画に参加したのは、スティーブ・ジョブスがなくなってからであり、彼は米国政府の要請に抵抗してきたのではないか。しかし後のアップルの経営者は屈したのではないかという憶測もある。

しかし今回の事件で分かったことは、米国のIT会社は信用できないということだ。そのことは今までにも薄々感じられていたのが、今回の事件でそれが決定的になったのだ。


 

技術的特異点後の7つの予想もつかない世界

上記のタイトルで科学の散歩道にエッセイをアップしました。

 

ビッグブラザーの世界にようこそ

上記のタイトルでここにエッセイをアップしました。

面白いビデオを見つけました。若い女性が、公開討論の講師陣に聞きます。「アメリカはなぜ世界で最も偉大な国なのか?」と。それに対して講師陣は「可能性」とか「自由、自由、自由」と一応は答えます。しかし会場の別の女性が「違う」というプラカードを掲げます。すると講師の一人が「自由な国はアメリカだけではない。カナダ、日本・・・」と続けて、アメリカが如何に世界レベルで見て偉大でないかという話を延々とします。

これは実は"The Newsroom"という、ペイテレビ局HBOの番組の1シーンです。政治ドラマです。しゃべっている男性はJeff Danielsという俳優で、ニュースキャスターを演じています。この場面はいかにアメリカ人が「アメリカは偉大だ、自由だ」という根拠のない幻想を抱いているかを皮肉ったものでしょう。NSAスキャンダルに関して、興味深いので紹介しました。

<Why America is NOT the greatest country in the world, anymore.>

{youtube}VMqcLUqYqrs{/youtube}


6月10日月曜日にアップルの製品発表会であるWWDC 2013がサンフランシスコのモスコーン・コンベンション・センターで行われた。発表の目玉はiPhoneやiPadの新しいOSであるiOS 7、マックの新しいOSであるOS X Marvericksである。さらに新しいMacBook Airも公開された。

しかし正直言ってこれらのものは以前の製品のちょっとした改良にすぎず、あっと驚かせるほどのものではなかった。例えばMacbook airではでRetinaディスプレイになるかと期待されたがそうならなかった。SSDが1TBになるという噂もあったが、そうならなかった。期待はずれなのである。 

iOS7に関しては、私のiPhoneはまだ4Sであり5ではない。例の2年縛りの為である。メモリが16GBとメモリ不足なのでiOS 6にすら更新できていないのだ。家内に至ってはiPhone 4でiOS 4のままだ。というわけでアップグレードできないのである。今秋に予想されるiPhone 5Sまで待とうと思う。しかし現状のiOS 5で不満な訳ではない。むしろiOS 6にすると、評判の悪いアップルの地図アプリを押し付けられる。

最近アップルのCEOであるトム・クックのインタビューを読んだ。そのなかでインタビューアーが最近のアップルはクールではないのではないかと聞いた。クックは当然否定したが、私はその感じを持っている。例えばグーグルはGoogle Glassという新しいコンセプトを世に問うている。Pebbleはウオッチを出した。サムソンは大画面のスマートフォンを出している。アップルにはそのどれもない。iGlass、iWatch、大画面スマートフォンはずっと噂になっているのだが、でていない。出ていないと言うことは、技術力が不十分と言うことだろう。

アップルは革新的な会社と言われているが、実はそうではなく、堅実な会社で、機が熟するのを待っていると言う説がある。たとえはiPhoneは確かに画期的だったが、スマートフォン自体はその前にもあった。iPhoneはキーボードをなくしたと言うのが画期的なのである。それで大流行して、世界を変えた。だから今回も機が熟するのを待っていると言う説もある。

というわけで最近のアップルはクールでないという話をしたのだが、しかし今回の発表で私が度肝を抜かれたのが、新しいMac Proである。2013年のWWDCで発表された新しいMacPro

これはクールそのものだ。Mac ProとはMacの最上位の製品で、最も強力なコンピュータだ。もっぱらクリエイターなどに愛用されている。さて新しいMac Proの何がクールなのか。その性能ではない。CPUにしろSSDにしろ、目を剥くものではない。目を剥くのはデザインである。なんと円筒形をしているのだ。いままでのPCでこんなものはなかった。この円筒の上部に大きなファンを置き、円筒の中心を通る空気で全体を冷却している。まさにクールなのである。

形が類似と言えば1980年代のスーパーコンピューターであるクレイ1くらいであろう。実はMac Proは公称、最大スピートが7TFLOPSという。Cray 1のスピードは160 MFLOPSだから、実にクレイ1の43000倍である。もっとも、これは大げさで普通の計算では7TFLOPSの1/100程度であろうが、それでも大したものだ。

 

この新しいMac Proのデザインが公表されて、一挙に注目が集まった。その形の類似性からゴミ箱のnew TUBELORに注目が集まった。値段がアマゾンで3504円と、ゴミ箱にしてはえらく高いが、当然Mac Proよりは安いであろう。Mac Proの高さはほぼ10インチ、つまり25cm程度と小さい。このゴミ箱はそれより少し大きい。そこでこのゴミ箱を買って、その内部に安いMac miniをかくして、Mac Proだと言い張るのはどうだろうか。ちょっと見た目では分からないのではないか。 


 

レスベラトロール

 レスベラトロールとはポリフェノールの1種で、ぶどうの果皮などに含まれている抗酸化物質として知られている。レスベラトロールは赤ワインに含まれており、フレンチパラドックスとの関連が指摘されている。フレンチパラドックスとはフランス人が相対的に飽和脂肪酸が豊富に含まれる食事をとりながら心臓疾患が少ないことを言う。その原因としてフランス人が赤ワインをたくさん飲むことが原因と推測されている。赤ワインの中にレスベラトロールが多く含まれているので、レスベラトロールにその原因があるのではないかと考えられてきた。

最近の研究ではレスベラトロールに寿命延長効果があることが分かった。動物実験では寿命延長のほかに抗炎症、抗がん、認知症予防、放射線による障害予防、血糖降下、動脈硬化予防などの効果もある。まさに夢の化合物である。

レスベラトロールに寿命延長効果があるかどうかに関しては、近年、論争の的になっていたという。しかし2013年3月8日のサイエンス誌に掲載された論文では、そのことが確認されたばかりでなく、分子的なメカニズムが解明されたと言う。

 レスベラトロールの効果はサーチュインという一群の遺伝子と関係がある。サーチュインは老化を防ぐ遺伝子で、レスベラトロールはそれを活性化する。サーチュインの中でも特定のSIRT1が健康に大きな効果を及ぼす。ミトコンドリアを活性化するのである。

これまでの薬は特定のタンパク質の活動を抑えるというものがあったが、活性化するというものはなかった。その意味でレスベラトロールは特異である。と先の論文の著者であるハーバード・メディカル・スクールのシンクレア教授(David Sinclair)は語っている。シンクレア教授はベンチャービジネスのシルトリス(Sirtris)の創始者であり、その会社は後に巨大な製薬会社であるグラクソに買収され、シンクレアはグラクソのアドバイザーになった。これらの話の詳細はこの記事を参照のこと。

レスベラトロールとSIRT1の関係は、他の研究者からはいままで偶然であるとか、人為的なものと批判されて来た。シルトリス自身が一時は、その関係を否定して研究をやめたと言う経緯がある。それが今回の研究で確認されたのだ。今やレザベラトロールがSIRT1にどのように作用するかの分子メカニズムが解明された。

普通SIRT1はカロリーの制限とか運動で活性化される。飢餓に陥ると、身体を保護するメカニズムが動き出すのである。粗食が健康に良く、過食は悪いと言う根拠がここにある。しかし普通人が粗食や運動をすることは難しい。それがレスベラトロールを飲むだけで良いのだ。レスベラトロールは延命効果があるだけでなく、ガン、心臓病、2型糖尿病、アルツハイマー病、パーキンソン病、白内障、骨粗そう症、睡眠障害、関節炎、乾癬、潰瘍性大腸炎などにも効くと言う。

シンクレア教授のグループは、一杯のワインの100倍の効果を持つ化合物を4000種も合成してテストし、その中から3種類が、人間で臨床試験が行われている。

ネットで調べるとレスベラトロールは既に、たくさんの会社から健康食品として売られている。

 

またまた永久機関・・・海水発電

このブログを参照してください。

 


 

日本人は無神論者か?:  フランス人記者のインタビュー


上記のタイトルのエッセイをジャパン・スケプティックスのコラム欄に掲載しました。

 


深層学習(Deep Learning)

 

人工知能の1つの技術にニューラル・ネットワークというものがある。その進歩形である深層学習(Deep Learning)という技術が最近注目を浴びている。グーグルX研究所がたくさんのコンピューターを使い、コンピューターに猫という概念を発見させたと言われる「グーグルの猫」が有名である。これは深層学習の大きな成果である(「猫を認識できるGoogleの巨大頭脳」) 

本解説ではMIT Technology ReviewのDeep Learningの解説記事を簡単に紹介する。

技術的特異点が2045年に来ると盛んに宣伝しているレイ・カーツワイルがグーグルに入社した。カーツワイルは最近「心の作り方(How to create a mind)」という本を出版したのだが、それに関してグーグルのCEOのラリー・ペイジと懇談した。 2人とも強力な人工知能を作ることを目指している。

カーツワイルにとってグーグルの巨大なコンピューター資源が魅力である。ページはカーツワイルの会社に個人的にコンピューターを使わせるわけにはいかないが、カーツワイルがグーグルの社員になれば使わせてやるという。というわけでカーツワイルはグーグルの研究部門の長になったのだ。

カーツワイルがグーグルにひかれたのはそのコンピュータ資源だけではない。グーグルが最近人工知能に関して達成した偉大な進歩のためである。グーグルは最近、深層学習の研究を進めている。深層学習とは大脳皮質にあるニューロンをシュミレートしようとする試みである。それによって音、画像、その他のデーターに含まれるパターンを認識しようというものだ。

 人工「ニューラルネット」の概念は新しいものではない。1950年代に開発された手法である。コンピューター上に仮想的なニューロンのネットワークを構成する。そしてニューロン同士の結合部分に重みの数値を割り当てる。その重みは学習によって変化していく。

 ニューラルネットは大きな進歩もあったが、同時に失望でもあった。思ったほどの成果をあげなかったのである。ところが最近のコンピューターとアルゴリズムの進歩により人工ニューラルネットワークは非常に強力になった。

 先にのべたようにグーグルはYouTubeから1000万枚のイメージを取り出し、それを16,000個のCPUを使った深層学習にかけて、猫という概念を発見させることに成功した。ニューラルネットには教師あり学習と教師なし学習があるが、グーグルの猫は教師なし学習である。その認識率は以前の倍になっている。

 グーグルはその技術をアンドロイドOSを利用するモバイル機器に搭載し、その言語認識における認識率はアップルのSiriを凌ぐと言われている。(実際そのことは最近のグーグル検索を、音声入力で行ってみれば良い。 iPhoneやiPad、Macに搭載されているSiriの音声認識よりも優れていることがわかる。もっとも私はこの文章をマックの音声認識で書いているのだが、十分に実用に耐える。) 

 2012年10月マイクロソフトの主任技術者リック・ラシッドは中国で講演を行った。彼の講演は英語で行われたが、その英語はまず英語テキストに変換された。その変換の誤差率は7%である。そのテキストがさらに中国語のテキストに翻訳され、そして最後にマンダリンの音声で話されて聴衆の喝采をあびた。

<Speech Recognition Breakthrough for the Spoken, Translated Word>

{youtube}Nu-nlQqFCKg{/youtube}

  カナダのトロント大学のコンピューター科学者であるヒントン(Geoffrey Hinton)はニューラルネットワークを研究して来たのだが、1,980年代に深層学習という概念を発展させた。それは学習を何層にも分ける技術である。最初の層は最も簡単な特徴、画像であれば例えば辺を抽出する。その層が十分に学習すると、次の層に情報が送られる。その層はもっと複雑な特徴、例えば角を抽出する。さらに階層が構築され、最終的に画像が認識されるまでこのプロセスが繰り返される。

 ヒントンのグループは、最近その技術を使って新薬を発見するコンペに優勝した。さっそくグーグルはヒントンの作った会社を買収してそのノウハウとヒントンを手に入れた。ヒントンのホームページはここ

 深層学習の日本語の解説に関しては「ニューラルネットの逆襲」を参照のこと。 


 

美人ハッカー ケレン・エラザリ(Keren Elazari)

知り合いがエストニアの首都タリンで6/4-6/7に開かれたサイバー戦争に関する国際会議に参加した(5th International Conference on Cyber Conflict)。

サイバー戦争に関してはまた書くとして、今日の話題はその友人が会った美人ハッカーの話である。彼女の名前はケレン・エラザリ(Keren Elazari)といい、イスラエル人である。テル・アビブに生まれ育った彼女はサイバー・セキュリティの専門家で、サイバー・セキュリティ会社や政府に雇われている。現在はNASAにある特異点大学(Singularity University)でも教えている。そしてサイバー・セキュリティについての国際会議に参加して、講演をしている。

彼女のホームページを見ると、ビデオ欄で今年の二つの国際会議で講演した様子が公開されている(The Power of Hacking DLD13, Munich, January 2013; The Cyberpunk Express, Re:Publica 2013, Berlin, May 2013)。タイトな服を着て、とても魅力的である。サイバーパンクの話ではまず、攻殻機動隊の主人公草薙素子のビデオから始まる。Major Kusanagiである。エラザリはその草薙素子か、映画『マトリックス』の女性ハッカーであるトリニティを彷彿とさせる。エラザリは合気道をたしなむと言うから、私とその意味でも同趣味で、是非会いたいものだ。

<DLD13-Interviw Keren Elazari>

{youtube}xQByRv51Yww{/youtube}

<草薙素子>

{youtube}tLXIcCbQyw4{/youtube}

 

<The Matrix: Trinity escapes (HD)>

{youtube}u31OjOPF-ZI{/youtube}


優しくさわることで脳梗塞を救う

脳梗塞とは脳の血管が詰まり、脳の組織が酸素や栄養の不足のため壊死する病気である。日本においては患者数は約150万であり、毎年約50万が発症すると言われている。 寝たきり患者の約3割、全医療費の1割を占めている。 治療法としては発症直後に設備の整った病院で血管内カテーテルによって薬を投与し血栓を溶かすことができる。しかしそれによって救われる患者は少数である。 それ以外有効な治療法というものはあまりない。

最近アメリカの研究で、脳梗塞の治療法の曙光が見えてきた。実験室での偶然の発見なのだが、脳梗塞になったネズミのひげを触ったり、大きな音を聞かせて感覚器官を刺激すると、脳梗塞で切られたニューロンが再活性化し、また血液を別のルートで通すという現象が発見された。

この発見から脳梗塞患者の有効な治療法の開発されるのはまだ道は遠いかもしれない。しかし例えば脳梗塞に陥った患者の唇や顔、指先を優しく触り、耳元でを歌ったり話しかけたりして、常に患者の脳に刺激を与え続けることにより、救急隊が到着するまでに、脳梗塞患者のニューロンを再活性化し、血液を別ルートで流すことができるかもしれない。

 

Leap Motionのその後

私は昨年の2012年5月28日の記事で画期的な入力デバイスであるLeap Motionを紹介した。それがいかに画期的であるかは次のビデオを見てもらえればわかる。

<Leap Motion makes the Kinect and its kin look like yesterday news-720p>

{youtube}XepVFRZrGa8&list=PLA898F62D75A7FADE{/youtube}

このすごいデバイスがたった70ドルで予約販売をするというのである。出荷予定は2012年の年末か2013年の年始めであると言う。また出荷するまでクレジットカードから現金をおろさないという。それを聞いて私は即座に予約した。

しかしいくら待っても出荷されないのである。そのうちに5月に出荷を延期すると言うメールが来た。ところが5月になっても出荷されないのである。私はこれは新手の詐欺だと思い始めた。しかしその頃に台湾のPCメーカーのASUSとアメリカのPCメーカーのHPがLeepを採用するというニュースが流れてきた。またコンピューター・ショーでもディスプレーしたというニュースも流れてきた。

これなら詐欺では無いであろうと思っているところに、会社から言い訳のメールが来た。最終的な出荷は7月にするという。また6月からβテストを始めるという 。さらにネットを通して事情の説明会が行われた。その記録は配信されているが、私と同様早くから予約した人たちの怒りの声で溢れていた。会社の説明ではハードとソフトの開発に手間取っているという。プロモーション・ビデオを見る限り完璧に見えたのだが、あれはインチキだったのだろうか。

ともかくもすべては軌道に乗ったようで、いろんな新しいアプリが開発され始めた。以下に示すビデオは指先だけで指揮をするアプリである。私はこれを夢見ていたのだ。

<Leap Orchestra>

{youtube}4LuVl_T397g&utm_source=Leap+Motion+News+and+Updates&utm_campaign=3ddc242f0e-Consumer_Newsletter_06_06_2013&utm_medium=email&utm_term=0_18571fbf89-3ddc242f0e-59551001{/youtube}

次のビデオはCADソフトであるAutoCADを指先だけで操作するアプリである。まぁこれで詐欺という疑いは消えた。

<Leap Motion and AutoCAD-command execution and model navigation>

{youtube}fp9G6hx9Fts{/youtube}

 

宗教心は人間の脳に組み込まれている

 

ジャパンスケプティックスのコラムを参照のこと。


男は笑ったら負けよ、女は笑ったら勝ちよ」というエッセイをジャパン・スケプティクスのコラムに載せました。 

 

想像力は傷をいやす

最近の研究(Mental Imagery May Hasten Recovry after Surgery)によると、手術後にメンタル・セラピーを受けた患者はそうでない場合に比べて、傷が治りやすいことが示された。具体的には、傷に血液が流れ込んで酸素や栄養分を運んで、傷が治る様子を想像するのである。

恋のホルモンは人を引き離すこともある

オキシトシンというホルモンは恋のホルモンとして知られている。脳にこのホルモンが分泌されると信頼と親愛感が増し、恋に陥るのである。恋愛の初期に分泌される。しかし最近の研究によると(Oxytocin, the Love Hormone, Also Keeps People Apart)、それも状況によると言う。実験室に被験者の男性と、研究者が用意した魅力的な女性を同室させる。そのときの二人の間の距離を測定する。オキシトシンを摂取した普通の男性は、女性に魅惑されて距離を縮める。ところが既に一人の相手がある(Monogamy)男性は、逆に10-15cmよけいに距離を遠ざけるのである。それはその男性が女性に魅力を感じていないからではない。オキシトシンは親しい二人を近づけるだけではなく、見知らぬ相手には警戒心を増し、遠ざけるのである。


義体化の時代近づく

義体とはアニメ「攻殻機動隊」、「イノセンス」に出てくる言葉で、体を機械に置き換えてサイボーグ化することである。これは必ずしもSF的な概念ではなく、人間はすでに、いろんな形で行っている。めがねをかけるとか入れ歯を入れるといったことも、初歩的な義体化といえるだろう。最近はそれがさらに進み、人工心臓などの技術も進歩してきた。ここで紹介するのは、義手である。

6年前に事故で腕を失ったアックランド氏(Nigel Ackland, 53)は、ターミネーターのようなカーボン・ファイバーの義手を装着した。拳の部分はアルミでできている。この義手は筋肉の神経とつながっているので、意志でかなり自由に動かすことができる。非常に巧妙にできているので、キーボードをタッチタイプすることもできる。

<'Terminator' arm is world's most advanced prosthetic limb>

{youtube}_qUPnnROxvY{/youtube}

アックランド氏は視聴者の疑問に答えて、さらにいろんなことをしてみせる。たとえば靴紐を結ぶ、カードを配るなどである。おもしろいことは、手首を360度回転させられることである。これは当然人間にはできない芸当である。

<'Terminator' false arm ties shoelace and deals cards>

{youtube}Al5RhaJgxxU&feature=player_embedded{/youtube}

米軍ではイラク戦争などのために2000人以上の兵士が手を失った。 米国の国防省高等研究局(DARPA)では洗練された義手の研究を行っている。義手をコントロールするのは、神経かまたは筋肉である。次のビデオはイラクで手を失った兵士が義手を操作しているところである。

<Targeted Muscl Re-innveration (TMR) for Advanced Prosthetic Control>

{youtube}-u8KkvZvVVI{/youtube}

もっとすごいのは、義手を考えるだけで動かすDARPAの技術である。これは脳にチップを埋め込んで、離れたところにある技手を操作する。

<DARPA prothetic arm>

{youtube}bDvJEKfT5TI{/youtube}

 

イノセンスの突入シーン

「攻殻機動隊」(こうかくきどうたい、英語タイトル:Ghost in the shell)は士郎正宗による漫画でサイバーパンクSFである。 それが押井守監督により映画化され(1995年)公開された。日本では公開当時あまりヒットしなかったが、アメリカでは非常に評判になり 、ウォシャウスキー兄弟監督がそれを参考に映画「マトリックス」を制作した事は有名である。その続編が 「イノセンス」(2004)である。

時代は2030年代の日本である。 マイクロマシン技術を使用して、脳の神経ネットに素子を直接接続する電脳化技術や、義手・義足にロボット技術を付加した発展形であるサイボーグ(義体化)技術が発展、普及している。その結果人間は電脳によって直接にインターネットにアクセスできる。その時代には生身の人間、電脳化した人間、サイボーグ化した人間、アンドロイドなどが混在する。テロなどの犯罪を事前に察知して防ぐためにできた内務省直属の公安9課(通称、攻殻機動隊)の活躍を描く作品である。

「攻殻機動隊」では主人公は草薙素子(くさなぎもとこ、通称少佐)である。草薙素子は脳だけが人間で、それ以外の部分はすべて機械に置き換わっている。映画の最後では、素子は最後に残った脳すら捨てて、ネットの世界に融合してしまう。

「 イノセンス」では主人公はバトーというサイボーグ化した刑事である。ロックス・ソロス社というロボット会社が、ガイノイドという愛玩用の少女型ロボットを作っている。工場は択捉島の海上に浮かぶ船である。ガイノイドを作る製造工程で犯罪があり、それを捜査している刑事のバトーとトグサは、工場に突入する。ロックス・ソロス社の警備担当者たちは中国語をしゃべっている。 ちなみにこの映画では至る所中国語があふれている。バトーたちは、少佐の助けを得てガイノイドと戦い、工場船を占拠する。私はDVDを買って、このシーンだけで100回ほど見たであろうか。

<イノセンス戦闘シーン>

{youtube}-hKuTjSxI50{/youtube}

ちなみにこのシーンで演奏される映画音楽は「傀儡歌(くぐつうた) 陽炎(かぎろひ)は 黄泉に待たむと」川井憲次作曲で、合唱は西田和枝社中、和太鼓は茂戸藤浩司(もとふじひろし)である。ちなみに川井は打楽器を演奏している茶髪のおじさん、西田和枝は合唱団の中央で歌っている少し太めのおばさんである。歌詞は万葉時代の言葉である。

<陽炎は黄泉に待たむと>

{youtube}vJsEYwguuj8{/youtube}

傀儡歌 

陽炎(かぎろひ)は 黄泉に待たむと

陽炎は 黄泉に待たむと

咲く花は 神に祈(こ)ひ祷(の)む

生ける世に

我(あ)が身 悲しも

夢は 消(け)ぬ

怨恨(うら)みて 散る

怨恨(うら)みて 散る

百夜(ももよ)の悲しき

常闇(とこやみ)に

卵(かいこ)の来世(こむよ)を

統神(すめかみ)に 祈(の)む


 Professor Bernard Schutz

昨日、旧友のシュッツ教授にあった(Bernard Schutz)。現在、京都大学基礎物理学研究所で「湯川国際セミナー YKIS2013 "Gravitational waves -Revolution in Astronomy and Astrophyscs-"」というものが開催されている。シュッツ教授はそれに参加して、初日の最初のセッションで「Gravitational Wave Astronomy in the Next Decade (重力波天文学の今後の10年)」と題する講演を行った。

シュッツ教授はアメリカ人で、一般相対性理論の大家である。長らく英国のカーディフ大学の教授をしていたが、後にドイツのポツダムにあるマックス・プランク研究所・重力物理学研究所(Albert Einstein Institute)に移った。そこで相対論的宇宙物理学グループを率いている。

私は1975-77年にカーディフ大学(当時のUniversity College Cardiff)の応用数学・天文学教室に客員教授として滞在していた時、シュッツは講師をしていた。そこで彼と知り合い、いろいろと啓発された。とても頭の良い人だと思った。

シュッツは相対性理論の本をたくさん書いているが、日本語にも翻訳されている。たとえば「シュッツ相対論入門」である。下に述べるニ間瀬さんが翻訳している。

私は当時、京都大学工学部航空工学教室の助教授をしていたのだが、当時の修士課程院生であったニ間瀬敏文さん(現在東北大学天文学教室教授)を、修士課程修了後にカーディフに送り、彼はシュッツのもとで博士号を取得した。先のWikipediaの記事では、ニ間瀬さんは「相対論の研究を反対されながらも押し通し」とあるが、反対したのは私ではなく、ニ間瀬さんの形式上の指導者である講座の教授であった。たしかに「航空工学教室」で相対性理論の研究をするのは、他の教授の目もありまずかろうという教授の心配の為である。私自身も宇宙論の研究ではなく、流体力学の研究をするように言われた。そこで私はニ間瀬さんをカーディフまで連れて行き、シュッツにゆだねたのだ。ニ間瀬さんもとても頭の良い人であった。ニ間瀬さんは現在では日本に置ける宇宙論、相対性理論の権威者である。

前回、シュッツ教授が京都を訪れたときは、当時私が蟠踞していた情報メディアセンター北館の地下にある可視化実験室(通称秘密研究所)に案内した。その後、北白川のかに道楽で家内共々話し合った。この店は小部屋を予約することが出来るので、外国人の客が来るときは、いつも使っている。今回も、そのつもりで招待しようと思ったのだが、彼はなんと日曜に日本に来て火曜にはドイツに戻ると言う。忙しいことだ。

年寄りはだまされやすい

この記事に関しては、ジャパンスケプティックスのコラムを参照してください。


 

二酸化炭素の増加で地球の緑化が促進されている

二酸化炭素はなんか地球温暖化を通じて悪の帝王みたいにいわれているが、そうではない。植物は基本的には葉で太陽エネルギーを受けて、二酸化炭素と水から光合成作用ででんぷんを作り、葉や幹を作る。植物の生産量は二酸化炭素が増えると増大する。また温度が上昇したり、水が増えると上昇する。

1982年から2010年までの人工衛星の観測データから、地球の緑化が進んでいることが確認されているが、その原因について色々取りざたされて来た。オーストラリアの研究チームは、アメリカの南西部、オーストラリア、中東、アフリカの一部について研究した。植物の生育に及ぼす他の効果、温度上昇、湿度の変化、光の量の変化、土地利用の変化、これらを考慮して、二酸化炭素の影響のみを抽出すると、11%の緑化促進が認められた。これは二酸化炭素の肥料効果と呼ばれている。今までの研究では、研究者は観測された緑の増加の原因を温度上昇とか湿度上昇のせいと考えて来たが、今回の研究で二酸化炭素増加の肥料効果が明らかになった

二酸化炭素が増えると葉の量が増える。しかしジャングルのようにすでに緑に覆われている部分は、それ以上増えようがないが、砂漠のような不毛な土地の緑は、二酸化炭素の増加によって増える。観測によると緑地が増えているが、草よりは木の方に影響が大きい。木が緑地に浸食していると言う。木は土地に根を張るので、草よりも二酸化炭素増加の影響を受けると言う。

私の感想

気候学者は二酸化炭素増加による地球温暖化のマイナス面ばかり強調するが、プラス面が明らかにされたことは、興味深い。地球の歴史の中で、温度が現在よりも遥かに高いときがあった。二酸化炭素の量が10倍も多いときもあった。そんなときは北極や南極まで緑に覆われていた。地球温暖化は生物総体に取っては善、寒冷化は悪である。

なぜ地球温暖化の脅威をヨーロッパなどの先進国が叫ぶかと言うと、地球の現在の気候でもっとも利益を受けているのが、中緯度にあるヨーロッパであるからだ。地球温暖化が進むとロシアやカナダなどに好影響が及ぶ。そこでの食料生産は増えるであろう。しかしヨーロッパにはマイナスの影響があるかもしれない。西欧先進国の学者は、そうは言わないで、アフリカやアジアなどの発展途上国に被害が及ぶ、バングラデッシュや島嶼国が、海面上昇で被害を受けると言う。

西欧先進国はまた地球温暖化ビジネスでもうけようともしている。鳩山元首相のようにナイーブな人は、西欧先進国の深いプロットに乗せられて二酸化炭素削減25%などと、できもしないことを約束したのだ。

興味を持たれた読者はジャパン・スケプティックスのコラムも参照してください。

地球の気温の変化

近年、地球温暖化の脅威が叫ばれているが、過去の地球の温度変化はどのようなものであったか。現在は広い意味の氷河期にある。氷河期とは、地球のどこかに氷河がある時代である。現在では南極大陸、グリーンランド、ヒマラヤなどに氷河があるので、氷河期である。しかしそのなかでも、比較的暖かい間氷期と氷期が交互におとずれていた。約1万年前に氷期が終わり、暖かい間氷期になり、人類は農耕を始めて文明が開花した。過去数千年前には現在よりも温暖なときがあり、その時期を気候最適期(Climatic optimum)とよんでいる。

過去1万2千年の気温変化を示す。以下の図はすべてWikipediaから取った。(Temperature record, 図の右端が現在で、左端が1万2千年前である。1万年前に前の氷期が終わり、温度は急上昇して間氷期に突入した。過去8千年から4千年前の気温は、現在よりも高い。この時期はサハラ砂漠も緑に覆われていたし、カバや象もいた。この時期に農耕が始まり、文明が開花した。地球温暖化が文明の鍵である。

過去12000年間の平均気温の変化

過去80万年間の気温変化。右端が現在で左端は80万年前。ほぼ10万年続く氷期と1万年続く間氷期が交互に訪れている。現在は間氷期が始まって既に1万年が経過したので、自然のサイクルに任せると、いつ氷期になってもおかしくはない。

過去80万年の気温変化

過去500万年の気温変化。右端が現在で左端は550万年前。現在は寒冷な氷河期である。そのなかでも何度も比較的温暖な間氷期(図のピーク)と寒冷な氷期が交互に訪れている。ほぼ300万年前から寒冷な気候になったことが見える。

過去500万年の気温変化

過去6500万年の気温変化。右端が現在で左端が6500万年前。現在は寒冷期で、過去には現在よりはるかに高温期があった。この図では過去300万年間は気候変動が激しく、温度変動が大きい。南極に氷河が出来たのは3400万年前で、それが溶けて、また1200万年前に氷河に覆われた。5000万年前は非常に暑かったことが読み取れる。

過去6500万年の気温変化

要するに地質学的なデータを見ると、現在の地球の平均気温は過去の温度と比較すると低いのである。それではなぜ地球温暖化が騒がれるかと言うと、現在の西欧文明が現在の気候に最適化しているので、これが変化すると困るからである。それもゆっくりな変化ならともかく、急速な変化の場合、適応が困難になる。いわば既得権益者が、既得権の喪失を騒いでいるのである。


 

ワインシュタイン騒動

昨日紹介したアインシュタイン(Einstein)を超えるワインシュタイン(Weinstein)の話の続きである。Facebookのお友達から、New Scientistでもワインシュタインの理論の紹介があると教えてくれた。それによるとワインシュタインの最初の講演は聴衆が少なかったらしい。しかし新聞に取り上げられたことで、結構な騒動になったようだ。そこでもう一度講演したら、今度は聴衆が集まったらしい。

New Scientistの意見記事の中で、オックスフォード大学とユニバーシティ・カレッジ・ロンドンの宇宙論学者ポンツェン(Andrew Pontzen)は、重要な理論の発表と言いながら、素粒子論学者がいないところで、こっそりとセミナーをするなんてけしからんという意見を乗せた。もっとも、セミナーを主催したオックスフォードの数学者ソートイ(Marucus du Sautoy)は電子メールをまわし、ポスターも作ったのだが、手違いでうまく行かなかっただけだ。そこでポンツェンは訂正して謝罪の文章を載せている。早のみこみで、人を攻撃するのはあやぶいものだ。

昨日紹介したScientific Americanのブログ記事でも、ブロガーのオエレット(Jennifer Ouellette)はワインシュタインに対して批判的であったが、ポンツェンとeメールを交換して、間違った情報で攻撃したようだ。このブロガーも訂正文を出し、少し態度を和らげているが、それでも、ソートイとワインシュタインのやり方は、正統科学の方法に反していると批判している。しかし、セミナーをする前に論文を出しておくべきだとするのは、少し言いすぎだろう。ソートイはワインシュタインのアイデアが革命的だから、まずはセミナーをしてプロの物理学者の意見を聞き、それから論文にすると言っているが、そちらのほうがもっともらしい。もっとも、オエレットはセミナーをガーディアンのような一流紙に広告したのはけしからん、またガーディアンもけしからんと述べたが、そちらもガーディアンの記者から連絡もなしにいきなり攻撃するのはどうかと、批判されている。

疑似科学の跳梁跋扈

ところでワインシュタイン騒動を調べていると、ワインシュタイン自身とその理論、数学者のソートイを強烈に批判する文章に出くわした。"The Latest Hoax in Physics: Eric Weinstein"(物理学における最近のでっち上げ:エリック・ワインシュタイン)と題する文章でマチス(Miles Mathis)なる人物が書いている。とても長いので読むのが大変だが、ようするに徹底的に攻撃的な文章である。そこでこの人物のホームページを調べると、どうも良く分からない。そこに書かれていた彼の本なるものを読むと、既成の物理学を徹底的に攻撃している。どうやらこの人物は疑似科学者であるらしい。そこでさらに調べると、マチスはインターネットにおける悪名高い疑似科学者であると指摘するサイトに出くわした。マチスは円周率のパイが4であると主張していると言うのだ。やれやれ。

彼は独自の理論を展開していて、それですべてを説明できるという。私はこの手の理論を「オレオレ理論」とよぶ。オレオレ理論が世間に認められれば、オレは天才だ。認められなければ、オレは不遇な天才だ。彼は本まで書いていて、アマゾンで売っている。その書評を読むと星が5と1-2にはっきりと分かれる。5のものはマチスが天才だと褒めそやし、1-2のものは疑似科学者だという。5のものは最初に集中しているので、これはたぶんマチス自身が変名で書評を書いているのであろう。アマゾンの書評にはこの手の、自分ないし身内の書評が時々あるようだ。書評数が増えて行けば、この手のサクラの密度は減るであろう。

ニュー・サイエンティストの記事の後にコメント欄があり、読者は間違った情報でワインシュタインを批判しているが、それは後には訂正されている。すべてはポンツェンの早とちりから出ている。しかし興味深いことは、このコメント欄でも別の人が『オレオレ理論』を披露して、批判されていた。日本にも世界にも、疑似科学者の種は尽きまじ。

筆者が会長を務めるジャパン・スケプティックスのホームページのコラム記事も参照のこと。


 

アインシュタインを超えるワインシュタインの14次元統一場理論!!??

今朝はなかなか画期的なニュースが飛び込んできた。英国の権威ある新聞ガーディアンの報じたところによると、アメリカのワインシュタイン( Eric Weinstein)という人が、現在の素粒子論の究極の問題である量子論と一般相対性理論を融合する統一場理論を提唱したというのである。興味深い話は、このワインシュタインという人は確かにハーバード大学で数理物理で博士号をとったのだが、ここ20年間はアカデミックな世界とは関係なく、ヘッジファンドで働いてきたという経歴である。そのことは上のワインシュタインの名前をクリックすると、彼のサイトに飛ぶが、そこには金融関係の論文が列挙されているが、それとならんで「経済学はゲージ理論だ」、「生物科学における競争とキャリア」などという論文もある。

ワインシュタインはオックスフォード大学でセミナーをしたのだが、それをアレンジしたのはオックスフォードの Marcus du Sautoyという著名な数学の教授である。ソートイはかのリチャード・ドーキンスが占めていたシモニー教授職である。ソートイはワインシュタインと1990年代にヘブライ大学でポスドクとしてともに研究したのだが、その後の進路は別々になった。ワインシュタインは統一理論のアイデアを20年間暖めていたのだが、2年前にソートイにアイデアを話した。ソートイのもとには、この手の話がたくさん舞い込んでくるのだが、彼はあまりまじめに考えていない。しかしワインシュタインの話を聞くうちにこれは現在の物理学の根本問題を解決する大変な大理論だと確信するようになった。そこで話を専門家に聞かせようとセミナーをアレンジしたという。ソートイのガーディアンの記事はここを参照のこと。

これらの記事を要約しよう。現代物理学には解決されていないいろいろな問題がある。例えばこの宇宙を構成する物質はたったの5%以下で、25%程度はダークマター、70%はダークエネルギーである。これらのものが何者なのかは、ほとんど分かっていない。また素粒子の問題として3つの種族があることが知られている。それぞれの種族には2種のクオーク、ニュートリノ、電子などのレプトンが属している。しかしそもそもなぜ3種類の種族があるのか。さらに20世紀の物理学の最大の発見である量子力学と一般相対性理論の融合という難問がある。これらの問題、特に最後のものは最大の難問で、アインシュタイン自身を含む多くの研究者が解明を試みてきたが成功していない。

ワインシュタインは自分の理論を「幾何学的統一理論」と呼ぶ。彼は14次元の観測宇宙(Observerse)というものを考え、我々の住む4次元世界はそのなかに埋め込まれている(embedded)と考える。この二つの関係は、例えてみれば野球場の観客席とグラウンドみたいなものだ。観客はグラウンドのプレイは見ることは出来るが、その詳細は見えない。

観測宇宙では見えないダークマターは存在しないという。現在の素粒子の標準理論は右手系と左手系の非対称性を仮定する。しかしワインシュタインの理論ではこの非対称性は存在しない。我々がダークマターを容易に観測できないのは、観測宇宙が比較的平坦な場合、左手系と右手系は非常に分離しているからである。

また彼の理論では、ダークエネルギーは重力、電磁気力、強い力、弱い力とならんで基本的な力であると考える。彼の理論ではダークエネルギーは時間的に変化する(アインシュタインの宇宙定数は変化しない)。ワインシュタインの理論では150もの新しい素粒子の存在が予言される。それらは奇妙なもので電荷が2であったり、スピンが3/2であったりする。

現在の有名な統一理論として超弦理論があるが、いまだにテストできる予言をしていない。ワインシュタインの理論は、一般相対性理論を量子化するというアプローチではなく、その逆、つまりすべてを幾何学的に説明しようとするアプローチである。これはアインシュタインが試みて失敗した統一場理論と類似の理論である。

ワインシュタインの理論の最大の問題は、内容自体よりも、それが論文の形になって物理学のコミュニティによって試されるという、現代科学の取る正統的方法を取っていないことだ。ワインシュタインは彼のアイデアを何人かの学者には話している。学者たちは賛否両論である。内容が間違っているというよりは、あらゆることを一挙に説明しようとするワインシュタインの態度、あるいはやり方に批判的なのだ。詳細な数式を示した論文が無ければ、一般の研究者にはその正しさを調べようが無い。ワインシュタインは論文をプレプリント・サイトに投稿予定だと言う。

ソートイはワインシュタインのやり方を擁護する。今までの科学は大学や研究所に所属するプロの研究者が行い、結果を論文にして雑誌に投稿し、それをレフェリーが査読して、満足すれば掲載する。それを読んだ他の研究者は、その研究を確認するか否認するか、あるいは無視する。このようにして現代科学は進んできた。しかし今や、インターネットで情報はいくらでも得ることが出来るのだから、アカデミックな世界に属さない研究者でも研究は出来る。毎日象牙の塔のエレベーターに乗っている研究者も、外部からやってくるアイデアにもっと心を開くべきである。

もっともこの世はソートイのような人たちばかりではない。例えばScientific Americanの最近の記事では、それにたいして非常に批判的である。いずれにせよ、ワインシュタインの理論はプレプリントになるのだから、世界の研究者の厳しい検証を受けることになるだろう。

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マッド・サイエンティストのつぶやき Sat, 01 Jun 2013 02:31:58 +0900
2013年5月 https://www.jein.jp/jifs/blog-matsuda/mutter/801-1305.html https://www.jein.jp/jifs/blog-matsuda/mutter/801-1305.html

 マッド・サイエンティストのつぶやき

 


 

明晰夢 続き

昨日、明晰夢のことを書いた。後に述べるYouTubeの指示通りに6時に目覚ましを鳴らし、少し起きてから二度寝して、再び6時半に目覚ましを鳴らした。一度目に目覚めたときには、確かに夢を見ていてそれを記憶に止めたのだが、二度寝した後では忘れてしまっていた。一度目に記録しておくべきであった、残念。初回の挑戦はかくて失敗した。

明晰夢を意識的に見る能力を獲得したら、人生はバラ色になるであろう。自分の夢が叶うのだから。夢の中だから好きなことが出来るのだ。空を飛んだり、好きな人とデートしたり。

明晰夢に関してYouTubeを調べると、その方法を示したものがたくさんある。日本ではあまり知られていないようだが、アメリカでは明晰夢はけっこうなブームになっているようだ。4つばかり見た。短いものもあるが18分もの長いものもある。どれも英語なので、下に内容の要点を記すので、特に見る必要はない。私個人の心覚えと思っていただいて結構である。

How to Lucid Dream 明晰夢の見方

{youtube}llw717IARpQ{/youtube}

 上のビデオには次のような指示が述べられている。

ステップ1  夢の記録を取る

ベッドの横にペンとノートを常備しておく。目覚めたときにすぐに夢の内容を記録する。夢の中でいろんな模様を見るので、今夢の中だと分かる。

ステップ2 新しい習慣を付ける

普段から鏡、本のタイトル、時計などをじっとなんども見る癖を付けておく。すると夢の中でもそれらが現れる可能性が高い。夢の中ではこれらの像はぼやけて見える。すると今見ているのが夢だと分かる。こういったものを、起きている間に見る習慣をつけると、夢でも現れやすい。すると夢かそうででないか判断しやすい。

起きている時に体をつねる習慣も良い。夢の中でつねっても痛くないから。

ステップ3 自分に語りかける

寝ようとするときに、これから明晰夢を見るのだと自分に語りかける。研究によると、とくにうつらうつらしているときに、そうすると暗示にかかりやすい。

ステップ4 目覚ましを早めにならす

起床時間の半時間前に目覚ましを鳴らす。なったら30秒から1分間起きてから、また寝る(ビデオでは30分から60分と言っているけど、違うよね)。夢を見やすいレム睡眠を中断したので、明晰夢を見る確率が20-50%あがる。

ジョージ・クルーニーがあなたにキスしようとしている時に、目覚めたいですか(私ならそんな悪夢から目覚めたい)。夢の中で身体を一回転させる。すると夢の中に居続けられる可能性が96%に高まる。 

ステップ5 夢の中で好きなことをする

明晰夢を見ていると意識したら、やりたいことを始める。例えば、山を飛び越える、姑を言い負かす、「夢のような」デートをする。あるいはテスト問題を解く、論争に勝つ、亡くなった親しい人に語りかける。

ルイス・キャロルは明晰夢を見た後で「不思議の国のアリス」を書いたことを知ってます?

 

流体力学会

ことしの日本流体力学会年会は9/12-14に小金井にある東京農工大学で行われる。私は千葉大学の松元亮治さんとともに毎年、宇宙・惑星セッションのオーガナイザー兼座長になっている。毎回、論文数が十分な数になるか不安である。毎年、締め切り日が延期されるのだが、今回は延期しないという。だから自分自身も、数を稼ぐために投稿することにした。それも2編投稿しようと思う。登録の締め切り日は6/10で迫っている。原稿提出の締め切りは7/22だ。昨年度と異なる点は、従来会場で配布していた講演予稿集が廃止となるので、従来のA4が1枚の予稿論文は必要なくなったことだ。論文はA4で10枚以内(標準2-4枚)でUSBメモリで配布されるという。著者としては、予稿原稿と本論文の2編を用意する必要がなくなったことは楽だが、紙の予稿集が無いということは、聴講者としてはきわめて不便である。どの論文を聞くべきか、どれが興味があるかが簡単には分からない。会場にPCを持ち込んで、USBの論文を見るしか無いだろう。

 


 

明晰夢 (Lucid Dream)

Facebookのお友達の1人が毎日膨大な記事をアップしている。いろんな興味あるサイトの紹介が主である。昨晩非常に長い夢を見たという話を書いてきた。そこでここでは夢について書こうと思う。よく「夢がない」というような言葉を使う。実際私も子どもの頃は非常に色々な夢を見たものだ。とても長編の夢を見たこともある。しかし最近はあまり夢を見なくなった。夢がなくなったのである。

夢の中で特に興味ある種類の夢が明晰夢(Lucid Dream)である。明晰夢とは自分が夢を見ていることを意識している夢である。そして見ている夢の内容を意識的にコントロールすることができる。自分のやりたいようにできるのだ。明晰夢のひとつの典型例は空を飛ぶ夢である。私は今までの人生の中で明晰夢を見たことは数度しかない。しかしとても楽しい夢であった。なんせ夢であり、かつ意思で好きなように出来るのだから楽しいのだ。ただし、夢の中まで理性が働きすぎて行動をストップしてしまった。もう一度見る場合、これが夢だと確信すれば、好きなことをしてみたいものだ。

明晰夢を主題とした映画にインセプションがある。デカプリオ主演で渡辺謙も出演している。映画の中で現実性チェックの小道具としてコマが使われている。現実であればコマはいずれ倒れるが、夢の中では回り続ける。これが夢か現実かを調べるもので、明晰夢かどうか判定するのに必要な技術である。

ところで本題から少し外れるが、この映画の音楽は有名なハンス・ジマーの作である。クリムゾン・タイド、パイレーツ・オブ・カリビアン、ダビンチ・コード、天使と悪魔などたくさんの名曲を作っている。

<'Inception' Trailer 2 HD>

{youtube}66TuSJo4dZM{/youtube}

明晰夢を見る為にはこつがあるらしく、練習するとできるようになるという。まず、起きたときに、今まで見ていた夢を記録することだそうだ。夢は見ているときは非常にビビッドでも、起きた瞬間から急速に忘れて行く。目覚めた直後に記録すると、後々思い出せる。起床後に他のことをしたり、考えたり、動いたりしないで、夢を思い出す。そしてそれを書き留める。

明晰夢の解説として下記の日本語のWikiは簡単すぎるし、英語のそれは長くて読むのがしんどい。

明晰夢

http://ja.wikipedia.org/wiki/%E6%98%8E%E6%99%B0%E5%A4%A2

Lucid dream

http://en.wikipedia.org/wiki/Lucid_dream

世の中には明晰夢を週に何度も見ることが出来る人もいる。下記のサイトは実用的である。まずサイトを作っているのはレベッカ・ターナーという若い女性である。サイトは以下に示す。

World of Lucid Dreaming: Developing concious dream control

http://www.world-of-lucid-dreaming.com/

英語でかつ膨大なホームページである。そこを十分に読めば、明晰夢を見ることができるという。意識的に正しい練習法を行えば、数日から数週間でできるという。明晰夢を見るには、いろんな問題がある。

明晰夢か現実かをチェックするために、現実性チェックをつねにしなければならない。夢の場合、たとえば字を読もうとするとぼやけてしまう。時計を見るとぼやけている。この場合は夢である。

明晰夢と分かったときに、目が覚めてしまうとか、普通の夢に戻ってしまうという問題点がある。その克服法も記されている。両手をこすって、「私は今、夢を見ている」というのだそうだ。この人は1時間も明晰夢の世界に浸れるという。

明晰夢と分かった時に、自分のしたいことをするには、シーンを変えねばならない。それを意識的にするには、たとえばドアや鏡を潜り抜ける、テレビのチャンネルを変える、振り返る、スピンするなどして、意識的に別の世界に入るという手法があるそうだ。

誰でも空を飛びたいと思うが、それはなかなかむつかしい。というのも、空を飛ぶことは日常の経験にないからである。まずは飛び上がってみることだ。夢の世界は現実世界の物理法則が働かないので、すぐには落下しない。

量子コンピューターD-Wave

私は最近、ロッキード・マーチンとグーグルが、カナダのD-Wave社の量子コンピューターを買ったというニュースを読み、調べてみた。それについては科学の散歩道にエッセイとしてまとめた。

調べてみて、分かったことはD-Wave社の「量子コンピューター」は英国のドイッチュが発明した、いわゆる真の量子コンピューターとは、非常に原理が異なることである。学界の主流がD-Wave社のコンピューターを量子コンピューターと認めない気持ちもよく分かる。ただし、いわゆる真の量子コンピューターはまだまだ研究段階であり、商用のものができるにはさらに最低10年はかかるであろう。あるいはそもそも成功しないかもしれない。しかもたとえ出来たとしても、現状のアルゴリズムでは、因数分解程度にしかつかえないので非常に制限されたマシンである。その点、汎用コンピューターとは全く異なる。世間では、量子コンピューターを夢のマシンのようにもてはやしているが、それはかいかぶりであろう。

それに対してD-Waveは組み合わせ最適化問題に特化したコンピューターである。さらにいえば、スピンの2次元イジング模型の最低エネルギーを計算する、ただそれだけのマシンである。しかし組み合わせ最適化問題には、人工知能始め多くの応用がある。しかもD-Waveは完成して稼働しているし、今後ハード的にもソフト的にもさらに急速に進歩して行くことがほぼ確実である。

調べて面白かったのは、会社の創始者のローズのねばりである。彼は起業のクラスを受けていて、なんか会社を作ろうという話になった時に、他の学生の量子コンピューターという言葉を聞いて、興味を持ち、それで会社を作ったのだ。大胆であるが、若いというのはそんなものであろう。それに投資した教授も偉い。それでしばらくは、他の学者の量子コンピューターの研究を支援した。結局、ローズが結論したことは、真の量子コンピューターには実現の可能性が乏しいということである。この結論を彼が公言するものだから、量子コンピューター学界の人たちは面白くないのであろう。当然だ。

しかし最近になって、ロッキード、グーグルという大企業が導入し、またアマゾンの創始者のベゾスとCIAも投資することに決めた。D-Waveは現在は512量子ビットだが、すぐに2048量子ビットになる予定だ。真の量子コンピューターは太刀打ちできないだろう。

それにしてもローズの、いわば若気の至りと信じたことへの思い込み、それに対する権威者たちの反発、この劇はなかなか面白い。世界を変えていくのは無鉄砲な若者かもしれない。

私がまだ完全に理解していない問題は、組み合わせ最適化問題をイジング模型に落とし込むプロセスである。ここをしばらく勉強したい。それからD-Waveの基礎になっている、量子焼き鈍し法についても勉強したい。

 


 

ブライトリンク・アクロバット・チームの日本訪問

ブライトリンク・アクロバット・チームが神戸、福岡、福島を訪問して華麗なアクロバット飛行を見せた。そこでチームとその使っている飛行機について調べてみた。

<Breitling Jet Team in Japan - Kobe, Fukushima and Mount-Fuji>
{youtube}fqGGC8lefuk{/youtube}

アクロバット・チームは軍に属しているものが多い。自衛隊のブルー・インパルス、米空軍のサンダーバーズ、米海軍のブルーエンジェルスなどである。それにたいしてブライトリンクは民間のものである。そもそもブライトリンクというのは、スイスの時計メーカーである。上記のビデオで時計が出てきたのはそのせいである。

ブライトリンクのホームページ

http://www.breitling.co.jp/

ブライトリンクの使っている飛行機はチェコスロバキア製のアエロL39アルバトロスという練習機である。練習機であるから二人乗りである。コクピットの構造はソ連の名戦闘機MIG21と同じにしてある。これは軽攻撃機としても使われる。冷戦中の1960年代に開発され、その後、チェコ、ソ連、ウクライナ、ベラルーシなどで採用された。非常に信頼性の高い機体である。冷戦終結後は旧ソ連の国々は不要になったL39を安く売却して、西欧諸国に流れた。とくにアメリカでは人気が高く、中古市場で2000万円程度で買える。この値段は現役の戦闘機の1/100程度であり、高級車程度なので自分でジェット機を操縦したい人たちに人気である。

<Flight in an L-39 Fighter Jet>
{youtube}INeByLkB0O0{/youtube}

L39中古価格

http://www.controller.com/list/list.aspx?mdlgrp=L-39&FullText=l-39

ちなみにこの機体は映画007のTomorrow never diesの冒頭のシーンに出てくる。武器商人たちの秘密のバザールに忍び込んだ007は、妨害工作を行う。英国の諜報組織MI6と軍はそこに軍艦HMS Chester(23型フリゲート艦、現在はその名のフリゲートは無い)から巡航ミサイルを撃ち込む(ハープーン発射管から発射しているが、ミサイルの形はハープーンではない。そもそもハープーンは艦対艦用ミサイルである。このシーンならトマホークを使うべきだろう)。007危うし。彼は核魚雷を搭載したL39を奪い脱出するが、後部座席の悪漢、追跡してきたL39と戦い、勝利を収める。

<Tomorrow Never Dies rescore - White Knight>
{youtube}k6y3lwwokg4{/youtube}

この映画の次のシーンも私のお気に入りなので、このさい一挙に紹介しよう。英国の軍艦HMS Devonshire (Type 23フリゲート)が南シナ海を遊弋している。メディア王カーバーは、記事を作るために英国と中国を戦争させようとする。そのためGPSを操作してデボンシャーに位置を誤らせて、中国の領海に誘い込む。そこに中国の戦闘機が現れて警告を発する。カーバーのカタマラン(双胴船)型のステルス艦は、デボンシャーにドリル型魚雷を撃ち込み撃沈し、ミグ戦闘機にはミサイルを打ちこみ撃墜する。

<Tomorrow Never Dies Part2>
{youtube}p6eUgRv2K8I{/youtube}

映画の最後ではジェームス・ボンドは中国の女性エージェント、ウェイとともにカーバーのステルス艦に侵入して破壊工作を行う。ボンドは状況を英国海軍のHMS Bedfordに知らせる。ベッドフォードはステルス艦にはレーダーが効かないので目視砲撃を行い、ステルス艦を撃沈する。

<Tomorrow Never Dies Alternate Ending 3>
{youtube}fwxPAg8HD0w{/youtube}

 


 

ホームページの私のブログの体裁の刷新

本日からこの「穴蔵マッド・サイエンティストのつぶやき」は体裁を新たに、副所長である私、松田の日記とすることにした。3月にあいんしゅたいんのホームページがイラクのクルド人のハッカーによりハックされ、閉鎖を余儀なくされていた。最近、ようやく再会のめどが立ったので、それを機に、私のブログも体裁を改めることにした。NPO法人あいんしゅたいんに関する記事、科学の散歩道としてまとまったエッセイにするにはまだ不十分な話、いろいろ考えていること、日々の雑感などを記す。世界音楽散歩などは「散歩シリーズ」として、世界音楽散歩、日本音楽散歩、世界文学散歩、日本文学散歩、京都名所巡りに分類した。それ以外のエッセイは妄想として別建てにする。Web小説は現在は「シミュレーション世界の聖子ちゃんの冒険」を連載中である。既に連載の終わった「悪の秘密結社「猫の爪」による世界征服計画」は、まだ復旧していない。これはある編集者の目に留まり、ライトノベルとして単独で出版する計画がある。その場合は内容は大幅に加筆訂正するつもりである。

サロン・ド・科学の散歩

今日は月に1度のNPO法人あいんしゅたいんの常任理事会の日である。理事長の坂東、理事の宇野、私、事務局長が集まった。科学技術振興機構(JST)に応募した企画が通ったので、今後月に1度「サロン・ド・科学の散歩」を開くことにした。場所はNPOのオフィスである通称ホワイトハウスである。時間は1時から5時をめどにしている。第1回は6月29日である。講演者は松田「コンピュータが人類を超える日」、佐藤文隆「コンピュータが科学を変えた(仮題)」である。私は技術的特異点に関して2045年問題について話す。佐藤さんが何を話すかは分からないが、量子コンピュータに関して一家言あるというから、そのことかもしれない。パネルディスカッションは講演者に加えて、あいんしゅたいん理事長の坂東昌子である。聴講者は場所の関係から、最大15名くらいをめどにしている。そのため、いちおう申込制にしたい。

紀要

昨年度からの懸案であったあいんしゅたいんの論文集である紀要だが、ホームページが復活したことを機会に、ホームページに掲載することにしたいと思っている。内容は原著論文、解説、研究ノートとして、邦文、英文の論文を掲載する。著者は基本的には基礎科学研究所の所員である。レフェリーをつけて、業績リストに掲載できるようにする。

現役研究者はPublish or Perishといって、論文を書かないと出世できないし、昇進も出来ない。そのために価値があろうがなかろうが、論文数を増やすことが至上命題になっている。しかし我が基礎科学研究所の所員は名誉教授が多いので、もはや業績リストの行を増やす動機が無い。しかし研究はしているので、それを発表する場は必要である。私個人としては、いろいろ研究して発見したこともあり、いろいろ発表したいことはあり、紀要に期待している。

古川町商店街

私は普段、京都大学の北の高野にある団地から、山科にある特異点庵と自称しているオフィスに毎日通っている。高野から東山三條までバスに乗り、そこで地下鉄東西線に乗り換えて御陵(みささぎ)まで行く。その途中に古川町商店街を通る。ここはいかにも京都の商店街という感じである。しかし商店街の常としていわゆるシャッター商店街である。かなりのお店がシャッターを下ろしたままである。私はこの商店街で昼食を食べることにしている。 先日はいかにも京町家という風情の食堂を見つけた。店の奥が坪庭になっているのである。そこで私はきつねうどんを食べた。今日はもっと奥のお店を探すことにした。 途中に何か人だかりがしている。映画かテレビの撮影であろうか、たくさんのカメラとたくさんの人たちがうろうろしていた。普段はこの商店街は閑古鳥が鳴いているのだが、今日はたくさんの人がいた。私は商店街のはずれの食堂に入った。店主のおばあさんと客のおばさんがいろいろ話をしている。いつ死んでもいいが苦しんで死ぬのは嫌だとか、年金の話とか、セールスの電話がうるさいという話を延々としていた。僕はそこでにゅうめんを注文した。店の窓から外を見ると白川が流れていて、そこにはきれいな花が咲いていた。いかにも京都的な風情であった。

<古川町商店街>
{youtube}2g9wIdM2z-g{/youtube}

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マッド・サイエンティストのつぶやき Tue, 28 May 2013 06:21:51 +0900