研究所紹介  

   

活動  

   

情報発信  

   

あいんしゅたいんページ  

   

2013年7月

 

 

7月31日 記憶操作の時代

科学者はネズミに嘘の記憶を植え付けた。ネズミはそれを信じた。Scientists Plant False Memories in Mice--and Mice Buy It

 人間の記憶は時として全く当てにならない。そのことが重大な結果を生むのは裁判の証言である。間違った証言により有罪になったり、ひどい場合は死刑になった場合もある。アメリカの無罪プロジェクトによると目撃証言のために何年も刑務所に入った人が、後のDNA検査で無罪になった場合がある。証人が嘘をついている訳ではない。間違った記憶を信じ込んでいるのである。実際、DNA検査の結果を示されても、彼らは間違った証言を撤回しないのである。たとえばカリフォルニアで保育園を経営していたマクマーティン一家は子供に対する虐待で訴えられた。7年の歳月と15億円もの費用を使った裁判闘争で、証言の一部は子供のセラピストにより植え付けられた間違いのものであることが明らかになった。これらを偽記憶症候群とよぶ。

昨年利根川進とそのチームはネイチャーに論文を書き、ねずみに間違った記憶を植え付けることに成功したという。ネズミを赤い部屋とよぶ部屋に入れる。ねずみは部屋の中をうろつく。しばらくしてネズミに電気ショックを与え、同時にネズミの脳にファイバーオプティックケーブルで青い光を送り込む。そして赤い部屋が危険な部屋だと言う記憶を植え付ける。

次の日に研究者はネズミを黒い部屋と呼ぶ別の部屋に入れる。そこは特に危険なことはなく、ネズミはうろついている。そこで青い光をフラッシュすると、ネズミは凍り付いた。恐怖の記憶が呼び起こされたのである。記憶を形作るニューロンを刺激するだけで、記憶が呼び起こされるのだ。

サイエンスに最近発表された論文では、彼らは実験をさらに一歩進めた。ネズミは第一の部屋に入れられるが、そこはなんともない。この部屋は安全という記憶が残る。次に第二の部屋に入れる。そして青い光で照らすと第一の部屋の記憶がよみがえる。その時に電気ショックを与える。そして次に元の部屋に戻すと、ネズミは恐怖で走り回る。そこが安全な部屋であるにも関わらずである。第一の部屋が安全だとい記憶が、危険だという記憶に置き換えられたのである。つぎ第三に部屋に入れられる。そこでは光を与えない。するとネズミは怖がらない。研究者はネズミに嘘の記憶を与えて、ネズミはそれを信じたのである。

ネズミにうその記憶を植え付けることができるが、人間は刺激を与えなくても、勝手に嘘の記憶を信じ込む可能性がある。それは人間が想像力に富むからである。人間には想像力と創造力があるので、記憶が不確かなのである。

 

7月30日 人工知能テディベア

 人工知能を利用したおもちゃができようとしている。スーパートイ「テディ」という熊のぬいぐるみである。それに関する記事があった。Supertoy Teddy Is The Teddy Ruxpin We All Dreamed Of - A Stuffed Bear With Conversation Skill

外見は普通のテディベアであるが、話しかけると答えるのである。仕組みは内部にスマートフォンがあり、人間の会話を遠くにあるサーバーに送り、そこで音声認識して、人工知能が適切な返事を返すという仕組みだ。要するにiPhoneに搭載されているSiriと同じようなものだ。ただし次のビデオにおけるテディベアと8歳の女の子の会話は驚くべきものだ。信じてよいかどうかは分からないが。

  

7月29日 頭のよくなる5つの方法

2013-07-29

頭の良くなる5つの方法

Scientific Americanにあるおもしろいゲスト・ブログ記事を読んだ。まさに頭のよくなる方法についてである。


You can increase your intelligence: 5 ways to maximize your cognitive potential
By Andrea Kuszewski 2011/3/7

まずはアインシュタインの言葉から始まる。「簡単なゴールを追求してはならない。最大限の努力をしてぎりぎり出来ることを見つける直感を養いなさい」

知能は生まれつきのものだから、それを改善することは出来ない。子ども達の知能を増強する訓練をしても大して成果はない。あったとしてもすぐに元に戻ってしまう。従来はこのように言われていた。

しかし、このエッセイの著者はその考えに同意しない。著者は行動セラピストとして自閉児童の治療をしていた。実際、知能指数が80であった児童の知能を3年に渡って徹底的に訓練したおかげで100にまで上げることに成功した。この児童だけでなく、著者にはたくさんの経験がある。障害児の知能を増強できるのなら、普通の大人の知能を上げることが出来ないだろうか。

2008年に「ワーキングメモリーを訓練して流動性知能を向上させる。Improving Fluid Intelligence with Training on Working Memory, by Jaeggi, Buschkuehl, Jonides, and Perrig」(2008/3/18)という刺激的な論文が出て我が意を得たりと思ったという。

------

この論文に関しての解説は『流動性知能』を向上させるソフトウエアと題する記事(2008/5/7)を参照のこと。あるいは神経科学者の「トレーニングと知能(2008/5/17)」と題するこのブログ参照。もっと新しい記事は『流動性知能を向上させる簡単な訓練: 研究結果(2011/6/23)』参照。

ここで流動性知能とは新しい問題に遭遇したときにそれを解決する能力である。一方、結晶性知能(crystallized intelligence)は知識や経験と関連した知能である。後者は年とともに増えるかもしれないが、前者は遺伝的なものと考えられていた。それが訓練で流動性知能を増強できるとすれば、すばらしいことだ。もっとも学界では意見の一致は見ていないようだが。

-------

このエッセイの著者はこの論文が正しいと信じて、次のことが分かったと主張する。

1. 流動性知能は訓練で増強できる。

2. 訓練すればするほど知能は増強される。

3. 出発点の如何に関わらず人は誰でも認知能力を増強できる。

4. そのためには普通の知能テスト問題ではなく、n-back問題という困難なテストの練習をしなければならない。

さて著者の提案する知能増強法は以下にまとめられる。

1. 新しいことをする。

2. 自分自身に挑戦する。

3. 創造的に考える。

4. ものごとを難しいやり方でやる。

5. ネットワーク

それぞれについて説明する。

1. 新規性: アインシュタインのような天才は、常に新しいことに挑戦している。新しい情報を求め、新しいことに挑戦し、新しいことを勉強する。新しいことを経験したり、勉強したりすると、新しいシナプス結合が作られる。また新しいことに挑戦すると、ドーパミンが出やすくなり、新しいニューロンが作られる。次のようなサイクルが起きるのだ。 新しいことの勉強->ドーパミンが出る->やる気が増す->ニューロンを刺激する->新しいニューロンが作られ、シナプスの可塑性が増す。

2. 自分自身への挑戦: 著者は通常の頭脳訓練法は推奨しない。たとえば数独をすると、それが上手になるだけである。慣れてしまえば、知能の増強はストップする。一つのことをマスターしたら、新しいことに挑戦すべきである。

3. 創造的に考える: 創造的に考えるとは、普通思われているように右脳だけで考えることではない。左右の脳を同時に働かせねばならない。

4. ものごとを難しいやり方でやる: 物事を効率的に処理することは、より頭を使わないやり方である。例えばある場所を探すのにGPSを使う方法は効率的だが、頭を使わない。

5. ネットワーク:  他の人たちと一緒にやる。ツイターでもフェイスブックでも、あるいは直接の会話でも、人々とのコミュニケーションは上記1-4をやりやすくする。新しい人々、アイデア、環境に自己をさらすと認識能力が増す。自分の専門外の人との交流は思いもつかないアイデアを生み出すかもしれない。

-----------

私は特に新しいことを勉強すると頭がよくなるという主張に惹かれる。最近ある学生から、先生はなぜ一つのことに集中しないで、次々と新しいことにのめり込むのですかと尋ねられた。答えは「知的なことは何でもおもしろい」からである。世の中におもしろいこと、知るべきことは山のようにある。定年退職後には時間が十分ある。私は『退屈する』とか『時間をもてあます』という人の気が知れない。本を読めばよい、音楽を聴けばよい、散歩すればよい、やることはいくらでもあるのだ。仕事を持っているときは、やりたくてもできないことが、退職後はいくらでもできるのだ。それに対する唯一の障害は疲れやすい、目が見えにくいといった健康問題である。

私はHugo de Garis教授の主張する『退職後の仕事: After Retirement Career=ARC』に同意する。

 

7月28日 親子理科実験教室

2013-07-28

親子理科実験教室

本日10時から京都大学理学部のセミナーハウスで親子理科実験教室の夏休みコース第1回「電気の不思議」が行われた。今回の講師は3年前の第一回から講師をお願いしてる松林昭先生、それに今回から新しく加わってくださった高見雄一先生で、それぞれ1時間ずつ担当するという形式で行われた。

まずは風船を膨らませて静電気の実験から始まった。風船をロケットみたいに飛ばす子供、大きな音を立てて割ってしまう子供など、にぎやかな実験風景であった。また電気を通すもの、通さないものの実験では、普通の金属などだけではなく、コカコーラなども実験に用いられ、それが電気を通すことを知って子供たちは喜んだ。

本教室に3年前の第一回から通っておられた福岡の小学6年生の宮岡玲奈さん(11)が、物理チャレンジ2013で実験奨励賞を受賞した。参加者はほとんどが高校生で、少数の中学生がいるが、小学生は宮岡さんだけだ。参加者総数1180、中学生26、小学生1。実験優秀賞が9名で全員高校生、実験奨励賞が1名で宮岡さん、アイデア賞が3名で高校生であった。

テーマは温度計を作ろうというものだ。宮岡さんはいろいろ工夫して、塩化ビニールの板の上に銅線を何度も往復させて、その先をおもりで引っ張る装置を作った。温度の変化に応じて、装置が熱膨張するが、その様子をレーザー光を鏡で反射させて拡大する装置を作った。設計図を宮岡さんが書くと、お父さんが大工仕事を担当してくれたという。一家総出のレポートである。

 

7月27日 Open System

2013-07-27

今日の秘密研究会では開放量子系についての大学院コース、Graduate course on open quantum systems , Third term 2004 ,A.J. Fisher et al.を勉強した。結局、前回やった密度行列のところまでたどり着いただけであった。前途はほど遠い。

 

7月26日 日本旅館

 2013-07-26

古川町商店街の日本旅館「小町屋」

私が毎日自宅からオフィスにしている山科の特異点庵に通うために、東山三條でバスから地下鉄東西線に乗り換える。その時、以前紹介した古川町商店街を少しだけ通り抜けるのだが、ここは京町家で構成されたレトロな商店街である。地下鉄東西線の駅の入り口近くに商店街の入り口がある。

ところでその商店街に町家を一軒そのまま貸し出す旅館「小町屋」というものを発見した。二階建ての京町家を1グループが借り切る仕組みである。階下は土間、和室3畳、6畳、キッチン、風呂、坪庭、二階は和室6畳、4畳、4.5畳と板の間であり、十分な広さである。

表においてあるパンフレットを取ってきた。料金は通常料金、ハイシーズン、特別シーズンと別れていて、2名の場合それぞれ25,000円、29,000円、33,000円である。7名までOKでその場合は39,200円、45,500円、52,500円とある。7名で通常料金の場合、一人当たり5,600円とお得である。門限も何も無いのでカップルでも家族、グループでも、いろんな使い方が出来そうだ。

ここから歩いて行ける距離にたくさんの観光名所がある。少し東に歩くと白川が流れている。この辺りは粟田口といい、近くに明智光秀の首塚がある。光秀は秀吉に破れて山崎から坂本に敗走中に山科で落ち武者狩りの農民に殺された。北に行くと平安神宮、美術館、博物館、動物園、東に行くと永観堂、南禅寺、哲学の道、南に行くと知恩院、八坂神社、清水寺などがある。東山の観光地にきわめて近い。

食事は、商店街で食料品を買ってきて自炊するか、あるいは付近に何件もある食堂に行くか、いかようにでもなる。

私は京都に住んでいるので、泊まったことも無いし泊まる必要も無いので、その質に関しては保証しないが、なかなか良さそうな気がする。ちかみに私は小町屋の回し者ではないので、付近の他の日本旅館も紹介しておく。小町屋の3軒となりにやはり「桜香楽(さから)」という旅館がある。ここは普通のホテル風の旅館であるらしい。外からは完全な京町家である。今日はその前でテレビの撮影をしていた。この商店街は有名で、よく撮影が行われる。

古川町通りを北に上がって三条通を超えて次の通りを東に曲がったところに「民宿古梅川」がある。いずれもレトロな京町家風である。くどいが、どこも泊まったことが無いので、外から見る限りよさそうだという紹介である。

 

悪の秘密結社「猫の爪」による世界征服計画

クルドのハッカーによりハックされて消去されたWeb小説「悪の秘密結社「猫の爪」による世界征服計画」が復活しました。まだ全部は復活していませんが、徐々に復活して行く予定です。

2013-07-25

 

7月24日 ディスプレイより紙の方が理解しやすい

2013-07-24

ディスプレイより紙媒体のほうが理解しやすい

パソコンやタブレットなどのディスプレイよりも本や雑誌などの紙媒体の方が、情報を理解させるのにすぐれていることが最近の研究で明らかになった。人がある活動をする時に、脳のどの部分を使っているかを近赤光イメージング装置を使って調べると、紙媒体とディスプレイでは脳は違った反応を示す。情報を理解するための前頭前皮質の反応は紙媒体の方が強い。それは紙媒体は反射光で、ディスプレイは透過光だからだ。そのためディスプレイより紙媒体の方が理解しやすいことが分かった。

デジタル時代の読書脳:  紙とスクリーン

デジタル時代の読書脳:紙対スクリーンの科学(The Reading Brain in the Digital Age: The Science of Paper versus Screens )

 同じような趣旨の記事があった。

我々の脳はもともと字を読むようにはできていない。字を読むという行為はたかだか数千年のことであり、脳の別の機能を援用して字を読んでいるのである。

脳は字をたとえば林檎のようなものと同じような存在としてとらえている。だから字もその形とか、行中の位置とかで認識している。字はそもそも、ものの形をまねた象形文字として始まった。

個々の字を物体としてとらえるだけでなく、文章を全体として形としてとらえている。文章を見ることは景色を見たり、物体を見たりするのに似ている。ある文章を思い出そうとするときに、どの位置にあったかを考える。本は見開きになっていて、それぞれに4つの角がある。文章をこれらとの位置関係で覚えている。またページの厚みも、文の位置を思い出すのに重要である。つまり本を読むということは、脳の中に地図ができることだ。

ところがコンピュータやタブレット、スマートフォンの画面上の文字は普通はスクロールするので、場所が分からなくなる。KindleやiPadでは文章をページとしてみることができるが、1ページだけであり、別のページに飛ぶと、それは忘れ去られる。つまり今、本全体のどこにいるのかという感覚がつかみにくいのだ。e-bookにはその感覚が欠けているのは、それを作っている人たちが、そのことの重要性を認識していないからだ。

実際、実験で生徒たちの半分は紙の本、残りの半分はコンピュータでPDFファイルを読ませて、後で理解度テストをした結果、紙の本を読んだ生徒の方が好成績を収めた。コンピュータで読む生徒は、文章を探すのに、あちこちスクロールしたり、クリックして別のページに飛んだりする。紙の本では本全体の中から、特定の文章を見つけ出す。この方が直感的で、易しいのだ。本の始め、終わり、途中が把握しやすいのだ。

また紙の本の方が余白に書き込みがしやすい。だから本当に理解したい場合は、多くの人はスクリーンではなく、印刷したものを好む。デジタル時代の若い人でも、80%の人はやはり紙の方を好む。

紙の本は物理的な実体であり、長く読んでいると汚れたりする。コンピュータ上の文章の場合、それはデバイスと一体ではない。いくら読んでも汚れない。

本にはサイズ、厚みの感覚がある。デジタル文章ではスクロールバーの位置がそれに相当するが、直感的に把握しにくい。どんなに長編の小説であれ、重さは同じなのだ。だからe-bookを嫌う人たちが居る。e-bookでは本を読む楽しみが少ないという。もっともe-readerの手軽さを愛する人たちも居る。

英国の学生を使った実験では、紙の本でもスクリーンでも理解度に変わりはなかった。しかし記憶の仕方が異なっていた。紙の本では、ある文章がどの位置にあったかで思い出す。しかしスクリーンで読んだ場合はそれができない。つまり思い出しにくいのである。

またスクリーンで字を読むのは、紙で読むより疲れやすい。一日コンピュータ画面を見ていると疲れる。実験でもスクリーンで字を読む方が疲れることが証明された。というのは、字を読むことと、スクローリングの両方に注意を払わねばならないからだ。

またスクリーンで文章を読む場合、紙で読むときほどには、まじめでないし集中できない。じっくり読むのではなく、あっちこっち飛んだりする。試験の準備を紙の本でする場合と、スクリーンでする場合を比較すると、紙の方が成績がよい。読む心構えが違うのだろう。

しかしデジタル時代が進むと、状況はだんだん変わってくるだろう。まずe-bookしか読まない世代が現れてくる。技術者はe-bookをできるだけ紙の本に似せて作るようになる。またe-bookには紙の本ではできないこともできる。文章に容易に図、写真、映像、音を組み合わせることができる。紙の本にはできない芸当だ。長々しい文章だけ読むのならば、紙の方がよいが、しかし今後の読書は変わって来るであろう。

7月23日 ニューロモルフィック・チップ

2013-07-23 

頭脳を模すマイクロチップ: 脳の情報処理をリアルタイムで模す新しいマイクロチップ

Microchips That Mimic the Brain: Novel Microchips Imitate the Brain's Information Processing in Real Time 

スイスのチューリヒ大学とチューリッヒ工科大学の研究者たちがニューロモルフィック・チップを作ったという。ニューロモルフィック・チップとは脳のニューロンの動作をまねるコンピュータ・チップである。脳の働きをシミュレートするためのいままでのアプローチは普通のコンピュータの上でニューラルネットというソフトウエアを動かすか、あるいはスーパーコンピューターの上で神経回路をシミュレートするものであった。それに対してニューロモルフィック・チップは、ニューロンの働きをシミュレートする回路をハードウエアで実現するものである。一種のアナログコンピュータといえる。使用目的は計算というよりは、パターン認識とか筋肉の制御などである。

ニューロモルフィック・チップの概念は新しいものではなく1980年代後半にCarver Meadという研究者が概念を提案している。最近では必ずしもアナログ回路ではなく、デジタル回路とか、両者の混合もある。

実際のニューロモルフィック・チップは最近になって、いろんなところで作られるようになった。たとえば2011年にMITの研究者、2012年にコーネル大学の研究者がニューロモルフィック・チップを発表している。IBMのシナプス計画、EUのヒューマン・ブレイン・プロジェクトもこの線に沿って、新しいニューロ・モルフィック・チップを作ろうというものである。

従来のデジタル・コンピュータは計算能力は大きいが、パターン認識などは不得意であった。ニューロモルフィック・チップはその欠点を補うものである。

7月22日 流体力学会論文投稿締め切り

 2013-07-22

日本流体力学会講演論文締め切り

今日は9/12-14に東京の農工大でおこなわれる日本流体力学会2013年年会に提出する論文の締め切りである。締め切りというものは、私にとつては、ずっと前から分かっているのだが、直前にならないと、何もしないというものである。今回は私を含めて3名の共著者で2編の論文を出すことにした。締め切りが本日と書いてあるだけで、時刻の指定が無い。ということは、夜の11時59分59秒までよいと解釈して、それまでにアップロードすることにした。実際は、午前を過ぎてもOKであったようだ。

論文は日本語で、アブストラクトと図の説明だけが英文である。私は以前、論文はTeXで書いていたが、この流体力学会の論文はWordで書いている。Wordで書く場合の問題点は数式である。以前はWord 2000とMathTypeを使っていた。ところが今回はWord 2007を使ったのだが、苦労した。というのも、Word 2007では組み込みで数式機能があるのだが、なんと式番号が入れられないというとんでもない仕様なのだ。式番号を入れると、文書内の式と認識されて、字が小さくなってしまう。これを作った人は、これで論文を書いたことが無いのだろうか。Wordというのは、いろいろ「小さな親切、大きなお世話」という機能が多すぎる。ちなみにWindows 8もそうである。Microsoftのアプリは進化すればするだけ、使いにくくなって行くという不思議な仕様である。

そこで以前にMathTypeで書いた論文の式を流用した。ところでそこでも式番号で苦労した。というのも、最終的にはPDFファイルに直さねばならないのだが、その時に式番号が変になったのだ。私はCUBE PDFという無料のPDF変換ソフトを使っている。それで変換すると、式番号が違ってしまうのである。そこで式番号を全部、手入力して事なきを得た。しかし今回の論文の式はMathTypeの式とWord 2007の(式番号のない)式が混じって、不統一になっている。しかし時間がないので、仕方なくそのまま投稿した。余裕を持って仕事をしないバチが当たったのだ。

7月21日 マイクロソフト・サーフエス

2013-07-21

マイクロソフト・サーフェス RTは9億ドルもの大損失を出す必要は無かった

(Microsoft's Surface RT Didn't Have to Be A $900 Million Disaster)

マイクロソフトのタブレット・コンピュータであるサーフェスRTが売れていない。損失は900億円であるという。さらにマイクロソフトの株価も下がり、時価総額で3兆円が消え去った。600万台のサーフェスが売れ残っているようだ。

昨年にこのマシンが発表された時は、評論家は賛美した。しかし皮肉なことに売れていない。その理由は遅すぎたのである。売れない理由を分析してみよう。

  • 30ヶ月もiPadの発表から遅れた。アップルはその間にアプリや音楽などをiPad用に整備した。マイクロソフトにもっと将来を見通す力があればこんなことにはならなかっただろう。実際マイクロソフトは2000年の頃にタブレットを作ったのであり、技術力の問題ではない。
  • 100ドルiPadより高い。iPadにするかサーフェスにするかを考えたとき、もしiPhoneを持っているならiPadである。アプリや音楽が共有できるからだ。マイクロソフトは最近になって値下げしたが、遅すぎた。
  • 20店舗しか直売店が無い。サーフエスはネットでも買えるがやはり実物を見てからにしたい。そのための店舗数が少なすぎる。

うわさによればマイクロソフトはサーフェスの改良版を出すらしいが、さらに同じ程度の損失を出すだろう。そんな損に耐えられるのはマイクロソフト程度であろう。

------

個人的印象

私が昨年サーフエスの発表を聞いた時は、多少興奮して、売り出されたら買おうと思った。ところが日本での発表が遅れに遅れたのである。さらに発売された後も、RTのうわさは芳しいものではなかった。利点としてマイクロソフト・オフィスがつかえるというのだが、RT版はPC用のものとは別である。だから私はサーフエスProに期待したのだが、しかしこれはウルトラブックの一種にすぎず、とくにそれにする必要も無い。実際、私はMacBook Air 13インチにVM Wareを搭載してWindows 7を動かし、その上でオフィスを動かしているので、いまさらサーフエスを買う必要は乏しい。

7月20日 サロン・ド・科学の散歩

2013-07-20

第2回サロン・ド・科学の散歩

今日は第二回目の「サロン・ド・科学の散歩」があいんしゅたいんのオフィス、理事長のいうホワイトハウスで行われた。今回の講師は京都大学国際高等教育院教授の小山田耕二先生である。

先生とあいんしゅたいんの関係は、今年の1月まで3年に渡り、先生の実験室の一部である、情報メディアセンター北館の地下にある可視化実験室をお借りしていたのである。そこは廃品置き場の奥にあり危険物貯蔵庫と隣り合わせで、天井にはさまざまなパイプや配線が走り回っているという、いかにも秘密研究所のおもむきがあった。私はマッドサイエンティストとしてそこが好きであった。ところがその建物が耐震工事のために全面的に改築されることになり、我々は退去を余儀なくされて、その近くの民家に移動したのだ。元の場所から歩いて数分のところである。京都大学の本部キャンパスの東側に通りがある。その途中の仕出し屋を東に入った、一軒目である。さらに東は吉田山が迫っている。

参加者はなんと全部で15名いた。実は会場は民家の6帖の居間と6帖のダイニングをつないだ部屋で、椅子が14脚しか無い。それで講師の一人の坂本尚久京大助教はずった立っておられて、申し訳ないことをした。本NPOからは私のほかに理事長の坂東、会長の佐藤、主幹の竹本が参加した。今回新しく参加された方が4名もいた。その一人は私のホームページの「科学の散歩道」の記事「史上初の商業用量子コンピュータD-Wave」を見て、来られたというIT会社の技術者の方であった。その方とは、行事終了後に懇談した。その他、科学ファンの方も来られた。

小山田先生の話は「3次元映像への挑戦」と題するものであった。小山田先生は科学的可視化の専門家であり、日本シミュレーション学会会長を務めておられる。京都大学卒業後、日本IBMに勤め、その後は岩手県立大学の助教授から、京都大学の情報メディアセンターの助教授に転じ、現在は昔の教養部に相当する国際高等教育院の教授である。まずは教養教育の話から始まった。

それから科学的可視化の話になり、最後には先生が現在従事しているプロジェクトの話になった。それは漁業における漁獲量の予測をするアプリの開発である。

講演が終わり、全員で吉田キャンパスにある小山田研究室の3次元没入型可視化装置(CAVE)の見学会になった。左右と下の3面の比較的小規模なCAVEであるが、その没入経験は圧倒的である。Google Earthから持ってきたデータに3次元の建物を貼付けた模型の上を飛行するのである。みたのは京都、ロンドン、パリである。なぜならこれらの町はボランティアにより、3次元立体モデルが構築されているからである。平壌も一部が3次元化されているので、興味深い。

まあCAVEの見学会ができるのも、講演会がこんなに小規模で家族的だからだ。

7月19日 世界音楽散歩、人はなぜ自分のことばかり話すか

 

2013-07-19

世界音楽散歩再開

本NPOのホームページは以前にも紹介した通り、クルドのハッカーにより攻撃されて閉鎖を余儀なくされていた。そして私のブログも閉鎖されていた。ホームページ担当の事務長のがんばりで、私の「科学の散歩道」のエッセイと、小説「聖子ちゃんの冒険」は、5月には再開したのだが、その他のものがまだであった。今日、ようやく「世界音楽散歩」が復旧した。これは私の好みの海外の歌手をYouTubeで紹介したものである。

私の歌手に関する信条は、歌手は歌がうまくなければならない、声が良くなければならない、というものである。そのために紹介した歌手の多くはクラシックの訓練を経た歌手で、しかもオペラなどではなくポピュラーな歌を歌っている歌手である。こういったジャンルをクロスオーバーという。代表的歌手として英国のサラ・ブライトマン、イタリアのアンドレア・ボッチェリなどがいる。彼らの声を聞くと、圧倒的であり、ボイス・トレーニングをしていない日本人歌手の出る幕はない。

人はなぜ自分のことばかり話すのか?

 

7月18日 適応型学習

2013-07-18

適合型学習: アダプティブ・ラーニング

アメリカの雑誌ニューズウイーク: News Weekのデジタル版を取っている。月に250円である。その2013年7月10日号に「もしあなたがあらゆることを学べたらどうしますか? What if You could learn everything」という記事を読んだ。適合型学習(Adaptive learning)についての記事である。過去にEvernoteに記録したものを調べてみると次の記事がクリップされていた。

一人ひとりにあった学習を実現! 教育業界の新潮流「アダプティヴラーニング」

WikipediaのAdaptive Learning

適合型学習とはコンピュータを使って、生徒・学生個人ごとに最適の学習プランを提案するシステムである。

これまでの学校教育は、生徒・学生を大きな部屋に集めて、先生が一方的に講義をするというスタイルであった。このシステムは産業革命以降に広がった工場生産に範を得た物である。

それ以前の教育は、貴族や金持ちだけが受けられた、家庭教師による個別学習、日本では江戸時代に広まった寺子屋という学習塾のような、比較的小規模のものであった。工場式の学校教育の利点は、たくさんの生徒・学生に一度に教育を施すことが出来ると言う、その大量生産性、効率性にあった。近代、現代の社会では国民の教育度が、国力を決めるという側面を持つので、どんな近代国家も教育には注力してきた。

しかし工場式の学校教育の欠点は、多くの生徒・学生を一度に教えるので、良くできる生徒・学生にとっては物足りない、出来ない生徒・学生に取っては退屈なものであることだ。かなり多くの生徒・学生がコースの進度に着いて行けなくて、落ちこぼれると言う欠点がある。

理想は昔の貴族や金持ちが受けたような教育の再現である。つまり個々人に家庭教師をつけるのである。しかしそれは現代の教育の大衆性を考えると不可能である。生徒の数だけ先生が必要だからだ。そこでコンピュータにそれをさせようというのが適合型学習の概念である。生徒・学生の震度に合わせてコンピュータが問題を提示する。

グーグル探索をしたら、個人の探索履歴に応じた広告が表示される。アマゾンで買い物をしたら、これを買った人はこんな物も買っていますと言うお勧めが表示される。これらは機械学習という人工知能を利用したシステムである。適合型学習もやはり機械学習ソフトを用いて、生徒の学習履歴に基づき、最適な学習プランを提示してくれる。

アメリカで現在、適応型学習のさまざまなソフトが開発され、いくつもの会社が出来ている。先のニューズウイークの記事はその一つの会社Knewtonに焦点をあてたものだ。

適合型学習はたくさんの知識を効率的にマスターすることに適している。ただ教育とは単に知識を覚えるだけではなく、集中力の涵養、考え方を学ぶと言う重要な側面がある。それはやはり人間的要素が重要である。従って適応型学習が今後広まっても、人間の先生が必要なくなることは、当面はないであろう。しかし単に知識の受け売りをする先生は必要なくなる。

Knewtonに関してはこちらを参照のこと

 

7月17日 飛行機はなぜ飛ぶか分からない??

2013-07-17

今日は一日かかって「飛行機はなぜ飛ぶかまだ分からない?? 」という記事を書いた。これは以前「大学ジャーナル」で書いたものであるが、 YouTubeを使用してpptファイルと同じようにしようと思った。以前とは違うYouTubeのビデオがアップロードされていたので、それを使った。

 

7月16日 スマートフォン中毒

2013-07-16

スマートフォン中毒

面白い記事を読んだ。Nearly 20 Percent Of Young Adults Use Their Smartphones During Sex: Surveyというものだ。内容はそのものズバリだが、あえて訳すと「若者のほぼ20%がセックスの最中にスマートフォンを使う:調査」というものである。もっと具体的に言えば、アメリカの18歳から34歳までの若者の20%が、セックスの時にもスマートフォンを使う、大人全体ではそれが9%だというのだ。どう使うかは調べていないが、多分、最中にFacebookのコメントが気になり、見てしまうというものだろう。

さらに別の状況では、映画鑑賞の時35%、異性と食事デート33%、学校行事32%、運転中55%、シャワー12%、教会でのお祈り中19%である。

上の調査はHarris Interactiveが2013年6月13-17日にアメリカの1100人を対象に調査を行った。

別の研究では、二人が会話中にスマートフォンがその場にあるだけで、たとえ使っていなくても、親密度が落ちるという調査がある。

私は以前にどこかで書いたのだが、有名な京都の鴨川等間隔の法則、つまり鴨川のほとりでカップルが等間隔に座っている現象を橋の上から観察していた時に、カップルの一人が携帯で電話をしているのを目撃した。鴨川でデートする目的は、二人で楽しい会話をすること、つまり二人のつながりを楽しむことだと思う。ところが携帯で電話するということは、そこに第三者が割り込むことを意味する。見ていると、もう一人はつまらなそうであった。

我々はますますスマホ中毒に冒され始めている。先の記事を笑うわけにはいかない。例えば私は朝起きた時に、まずトイレに行くが、その時にiPhoneを持って行かないと不安になるのだ。そしてまずFacebookとメールをチェックする。その後の朝食の時には、できるだけ家内と会話するように努めるのだが、それでもiPadかiPhoneがないと不安になる。良くないと分かっていても、もはや中毒である。

活字中毒というのがあって、活字を読んでいないと不安になる症候である。活字中毒者はトイレにも新聞か文庫本を持ち込む。ただデートの最中に本や新聞を読む人は少ないように思う。しかしスマホは手軽だから使ってしまいやすいのだろう。

iPhoneが導入されてから、Androidを含むスマートフォンが爆発的に広まった。これは人間生活を変えてしまう存在である。その意味では、スティーブ・ジョブスは大きな影響力を人類に与えた人物である。

 

韓国でもスマートフォン中毒は深刻なようである。中央日報の社説 青少年スマートフォン中毒、まず社会環境の改善を=韓国 

7月15日 オバマ盗聴さる

2013-07-15

NSAに対する更なる内部告発

アメリカのNSAが世界中の通信、アメリカ国民の通信を傍受していた問題が、NSAの元の職員のスノードン氏により暴露されて大きな問題になっている。それにたいしてバラク・オバマ大統領は「NSAはあなたの電話での会話を盗聴していない」とNSAを擁護した。NSAが主張したのは、集めているのはメタデータだけであると。メタデータとは、電話や電子メールの内容では無く、だれがいつだれに通信を送ったかというデータである。メタデータだけでも、人々の行動が推測されるので、それでも大きな問題である。

ところがここに来て、2002-2005年にNSAで働いていたラス・タイス氏(Russ Tice)氏がもっとショッキングな内部告発をした。彼は当時の上院議員であったバラク・オバマの電話を盗聴するように命令されたと言う。次の記事を参照。

「NSAの元の内部告発者: 私は2004年にバラク・オバマを盗聴せよという命令を見た」

 ORIGINAL NSA WHISTLEBLOWER: I Saw The Order To Wiretap Barack Obama In 2004

Read more: http://www.businessinsider.com/the-nsa-spied-on-barack-obama-2004-russ-tice-2013-6#ixzz2ZNLkWTEV

上記の記事の内容は以下のようなものだ。

「2004年の夏、私が渡された紙には40歳くらいのイリノイ州の上院議員を盗聴するようにという命令がありました。そいつが今どこに住んでいると思います? ワシントンのホワイトハウスですよ。NSAが盗聴したのです。そいつは現在の米国大統領ですよ」

タイス氏が盗聴するよう命じられたのはヒラリー・クリントン、ジョン・マケイン上院議員、ダイアナ・ファインステイン、当時の国務長官コリン・パウエル、デビッド・ペトロイアス将軍、最高裁判事などだ。

NSAは国内で盗聴してはならないとされているが、NSAは徹底的に盗聴している。高級軍人、上下院議員、特に情報委員会、軍事委員会、法律家、法律事務所、判事、国務省、ホワイトハウスの一部、国際的企業、金融会社、NGO、市民運動家などである。

2005年当時は十分なコンピュータ・パワーを持っていなかったが、現在はあらゆる電話、電子メールなどの通信を集めている。郵便もそうである。

彼はまた「NSAはオバマを脅迫していたか?(NSA blackmailing Obama)」というテレビのインタビュー番組でさらに次のようなことを追加している。

テレビの番組で、だれがオバマの盗聴を命じたかと聞かれて、タイス氏は直接は知らないが、チェイニー副大統領からだと聞いたという。 この国を支配しているのは誰かと聞かれて、それは政府ではない、陰の政府、つまり諜報機関だと彼は答えた。

タイス氏がNSAの問題を内部告発したのは現在ではない。2006年である。しかもニューヨーク・タイムズが記事にしている。その記事はピューリッツアー賞を受賞しているのである。それでも他のメディアや人々は問題にしなかった。スノードン氏とラス氏の違いは、前者が証拠の書類を持っていることだと言う。

 

感想

この問題はとても根が深い。アメリカの支配者、真に権力を握っているのは誰かという問題だ。普通は大統領と閣僚、あるいは政府と思うであろう。しかし実はNSAやCIA, FBIなどの諜報機関なのだ。政治家には任期がある。米国では上級官僚にも任期がある。ところが諜報機関の中下級職員には任期はない。彼らが闇の政府なのであろう。上級軍人とて安全ではない。なんと当時のCIAの長官であったデビッド・ペトロイアス大将が不倫がばれてクビになったのである。そもそも不倫がばれたのはFBIが刺したからである。

日本も似たようなものだ。日本の真の権力者は少なくともごく最近までは検察であった。例えば小沢一郎氏は有力な政治家として、自民党幹事長時代から権力を振るってきた。しかし小沢氏を嫌う検察により徹底的に攻撃されて力をなくしてしまった。実は小泉首相も例外ではない。小泉首相は選挙で、当時人気のあったホリエモンを自民党の候補者として擁立した。しかしホリエモンが気に入らない検察は、ホリエモンを逮捕して、刑務所に送り込んだ。マスメディアは本来は、こういった権力の行き過ぎをチェックすることが期待されているのだが、検察と一体化して、自身が権力者になっている。新聞記者にも検事同様任期はないのだ。安心して好き放題に権力が振るえる。もっとも検察は村木事件でみそをつけた。証拠をねつ造したのがばれて、検察は大きく信頼を失った。証拠をねつ造したのは、検事たちは自分こそこの国の主であると言う、思い上がりがあったのだろう。それで犯罪を犯しても、慢心のため十分に隠蔽しなかったことが悔やまれるであろう。

 

7月14日 宵宵宵山

2013-07-14

 祇園祭の宵宵宵山に家内と行ってきた。地下鉄で烏丸御池に行き、そこで降りて烏丸通りを少し南に行く。みずほ銀行のところで三条通に入り、西に向かって歩く。昨年は室町通りで南に曲がったのだが、今年はその先の新町通まで歩く。宵山地図はこちらを参照のこと。

森見登美彦の小説「宵山万華鏡」を思いながら歩く。宵山を巡るオムニバス形式の小説だが、そのなかで宵山姉妹では小学生の姉妹がこの近くのバレエ教室に通っている。姉は活発で妹はビビリである。二人で宵山に出かけるのだが、すごい人出で迷子になるといけないので、妹はしっかりと姉の手を握っていた。ところがふとした弾みに手を離してしまい、妹は迷子になる。姉は必死で探すという話だ。最後に危機一髪というところで姉は妹を取り戻す。ファンタジックな話である。感想文はこちら

八幡山、北観音山、南観音山と見て、四条通に出る。途中はすごい人で、歩くのに困難するくらいだ。手を離すと幼い姉妹のようになる。町家が窓を開放して家宝の屏風や絵などを展示している。その奥では宴席が用意されていて、家族と客が食事している様子が見える。宵山の混雑はビデオを参照のこと。

子供たちがろうそく売りのわらべ歌を唄っていた。とてもかわいいので、私もビデオを撮ったが、YouTubeにたくさんアップされている。女の子が多いが、男の子もいる。みんなきれいな浴衣を着て、(多分普段よりも)とてもかわいい。つぎのものは南観音山のわらべ歌である。「今晩限り」は最後の夜に唄われる台詞である。

「厄除けのお守りは、これより出ます。
明日は出ません。今晩限り。
ご信心の御方様は、受けてお帰りなされましょ。
ろうそく、一丁、献じられましょう。
ろうそく、一丁、どうですか~」

裏通りを歩いても、表通りを歩いても、人人人の群れである。カップル、家族連れ、友人連れ、みんなとても幸せそうである。なぜみんなが幸せかというと、幸せな人しかお祭りに出てこないからである。いわゆる選択効果である。

 

7月13日 密度行列

2013-07-13

密度行列とフォン・ノイマン方程式

勉強会で量子力学の密度行列について勉強した。これは大学の時に富田和久先生に習った統計力学の復習である。その時使った教科書はテル・ハールの「熱統計学I」田中友和、池田和義訳、みすず書房、昭和35年、750円であった。第7章 「量子統計におけるアンサンブル」に密度行列がある。

今回読んだのはウイーン大学の素粒子論研究者であるProf. Reinhold A. Bertlmannの講義ノート第9章であった。そこでは密度行列ないしは密度オペレーターの定義と性質について述べてある。純粋状態と混合状態の定義、密度行列の時間変化を規定するフォン・ノイマン方程式の導出がしてある(第9章とあるように、講義の最後に近い部分だ。その後は10章のEntanglement of Quantum Systemsを残すのみである)。密度行列は古典統計力学におけるアンサンブルの密度であり、フォン・ノイマン方程式はリウビルの定理の量子力学版にほかならない。

ところでBertlmannとはなにものか調べたら、最近定年退職したウイーン大学の教授である。彼のホームページはこちら。

密度行列を復習したのは、開放系(Open System)における量子力学を学ぶためである。目的はLindbrad Master Equationの導出にある。そこでOpen Quantum Systemsと題したパワーポイント・ファイルを探し出して読み始めた。これはSubhashish Banerjeeというインドの学者のものだ。読んでみると、これで勉強するものではなく、すでに勉強したものが、知識を整理するのに役立つものだと思われる。やはりもっと体系だったものを読む必要がある。

日本機械学会誌

日本機械学会誌7月号ながれ特集に私の書いた解説「星とダークマターの流れ」が掲載された。銀河と初代星の形成理論を巡る私の個人的な思いで、最近の宇宙シミュレーションの解説などである。最近はスーパーコンピューターの発達により、銀河形成の宇宙シミュレーションがさまざまなグループにより行われている。下記のものは渦巻銀河の形成のシミュレーションである。

  

7月12日 世界覇権

2013-07-12

21世紀の世界覇権を握る武器は人工知能とロボット

19世紀から20世紀に掛けての世界の支配権を握る武器は戦艦であった。それから航空機、核兵器と変遷した。現在の世界の支配権を握る武器は明らかに核兵器、ロケット、航空機である。しかし、それは時代遅れになりつつある。21世紀のこれからの世界を支配する武器は人工知能とロボット、サイバー兵器である。世界ではすでに激しいサイバー冷戦が行われている。米国、ヨーロッパは人工知能、ロボット兵器の研究を進めている。中国も同じである。一人、日本だけが取り残されている。

核武装をとなえる老政治家がいるがナンセンスだと思う。日本が核武装したら米中を明らかに敵に回し、外交的に不利になる。また核武装することは、相手に核攻撃する口実を与える。核戦争になった場合、狭く人口密度の高い日本はきわめて脆弱である。たとえば中国と核戦争をして、どちらも3千万人の被害者が出たと想定する。それは日本人口の25%で日本は壊滅するが、中国では2.5%にしかすぎず、かすり傷である。こんな簡単な算数でも、核武装のナンセンスさが分かる。

いっぽう人工知能、ロボットの研究は本来は兵器ではなく、平和目的が主である。その研究を進めても、西欧諸国、中国から文句を言われることはない。日本の政治家や官僚にはグランド・デザインが欠如しているように感じる。その典型が二番ではダメなんですかと発言した政治家が大臣になるような政治風土にも現れていると思う。

7月11日 技術進歩はミリとエロから

2013-07-11

グーグルグラスはポルノから始まる

 From VHS to Google Glass, porn drives the tech marketという記事が英国の新聞ガーディアンに出た。その抄訳を示す。

良く知られているように戦争は技術進歩を加速する。というのも戦争に勝つために技術に集中するからだ。たとえば1939年には英国空軍はまだ複葉機を飛ばしていたが、1945年にはジェット機を飛ばした。スピットファイア戦闘機からステルス爆撃機に至るまで、たくさんの技術者が動員された。

しかし平時に技術進歩を促進するのはセックスである。ポルノ産業自身が技術進歩を行う訳ではないが、新しい技術を素早く応用するのである。映画が発明されて、すぐにポルノ映画が作られた。ビデオテープでパナソニックのVHSとソニーのβマックスが競って、最終的にVHSが勝利を収めた理由の一つは、VHSにポルノが多かったからだと言われている。インスタント・カメラのポラロイドが成功を収めた理由もそれだ。(現像に出さなくてよいからだ。銀塩カメラで怪しげな写真を撮って現像に出すと、押収されてしまう)。

インターネットが発展し始めた1990年に(ポルノ雑誌の)ペントハウスは読者にモデムを提供した。2010年には、もっとも見られる100万のサイトのうち5万はポルノサイトである。10億人のインターネット・ユーザーのうち2.5%は、少なくとも月に一度はポルノサイトを見ている。ウエブ探索の13%はポルノである。2012年のポルノ産業の年商は46億ドル(4600億円)である。

iPadが発表されて、アップルはフラッシュを禁止した。しかしそれでもポルノは止まらない。

さてここでグーグルがグーグル・グラスを発表して、そのコンテンツとしてポルノを容認しないと宣言した。しかしそれがどのくらい保つかは怪しい。すでにポルノ的なアプリが出始めている。グーグルはおもしろくないが、禁止は無理だろう。

セックスと技術はDNAの二重螺旋のようなものだ。好むと好まざるに関わらずポルノグラスは出現する。問題はそれをオープンにしてある程度のコントロールをするか、闇に追いやって規制の効かない暗黒ウエブに追いやるかである。

 

7月10日 Google glass

2013-07-10

Google Glassで逮捕現場撮影

グーグル・グラスを装着して米国ニュージャージーのショッピング・モールを歩いていた人が、たまたま喧嘩場面に出くわし、犯人が警察に逮捕される現場を撮影した。ビデオには実際の喧嘩場面は映っておらず、犯人とおぼしき人物が警官に手錠をかけられて連行されるシーンを映しただけである。

しかしこの「事件」は、グーグル・グラスによる市民ジャーナリズムの登場を予感させる。つまりいつでもどこでも、素人ジャーナリストがニュースをレポートできるようになるのだ。現在でもスマホには写真機能、録画機能、録音機能がついており、やろうと思えば同じことは出来る。しかし、その為にはスマホを取り出さねばならないし、歩きながら録画することは、出来ないことはないにしても危険である。ところがグーグル・グラスならそれが簡単にできる。

しかし一方で、その問題点、特にプライバシーの侵害についても、グーグル・グラスが一般に普及する前から心配されている。そのひとつは盗撮である。またそこまで行かなくても、あった相手の写真を許可なく撮ることが、簡単にできる。現在はまだ出来ないが、そうして撮った写真と画像データベースで画像検索をすることにより、相手の名前を割り出すことも出来る。

私は初対面の人とであって名刺交換をした場合、相手の許可をもらって、名刺を持った姿を写真に撮らせてもらっている。そうすると、私の人物データベースが簡単に出来るのである。後で連絡する必要が出来た場合、写真を拡大して、名刺を読み取るのである。グーグル・グラスを使うと、無許可で似たことが出来てしまうのが問題だ。グーグル・グラスでは撮影する場合は、光が明滅したりして知らせるようになっていると言う。それはプライバシー侵害に対するクレームの予防策であろう。

次のBBCの番組では、実際の使い方について説明している。写真を撮ったりビデオを撮ったりするには、「OKグラス、写真を取れ」というように、言葉で命令する。"Thank you for flowers"を日本語で言うとどうなるかという質問もしている。

ともかく、これからの世界は変わるのである。 

7月9日 MYO続き

2013-07-09

YMOについて

6月18日にMYO(マイオ)という腕の動きでコンピュータに指示を与えるデバイスについて述べた。Thalmic Labsという、カナダのベンチャービジネスが開発中のものである。写真に示したような装置を腕にはめて、腕の動きを読み取り、コンピュータに指示を与える。

MYO

それに関するScientific Americanの記事

Forearm Gesters Remotely Control Computers and Dronesを読んだ。 

これを手にはめて、ジェスチャーでゲームをしたり、あるいはドローン(無人航空機)を操縦できる。

面白いと思ったことは、その動作原理である。同様なものとしてLeap MotionKinectがあるが、これは指先やペン先の動きを読み取る装置である。

YMOは腕の筋肉に流れる電流を読み取る。腕の動きとコマンドに一対一の対応をつける。現在20ジェスチャーを区別できるという。そのために機械学習のアルゴリズムが組み込まれている。腕の小さな動きを読み取ろうとすると、ノイズが多くなり、間違う可能性が増える。

この手のものがどれほど実用的になるかは、どのくらい、多様なコマンドを区別できるかであると思う。

筆者が将来的に希望するものは、喉の筋肉の動きを読み取る装置である。発声した時に喉の筋肉が動くが、声を出さなくても筋肉は動くので、無声の音声認識ができれば、現在の音声認識のもつ一つの欠点、つまり静かな環境でないダメとか、声に出て回りが迷惑するといったことがなくなる。ただMYOのように腕の大きな動きでも20しかコマンドを区別できないのでは、もっとたくさんある音素を区別するのは難しいであろう。

7月8日 日経BPインタビュー

日経BP記者によるインタビュー

今日は東京に出張の為にやって来た。日経BPの記者さんから、日経BP社 『日経ビジネス』、8月中旬号の巻頭特集「ロボットで自動化はどこまで可能か?」(仮題)に関してインタビューを受けた。私の著書「2045年問題」を読まれて、インタビューを思いつかれたと言う。

想像するに、この手の雑誌の読者として興味あるのは、技術的特異点の問題のようなウソか本当か分からないような話より、これから10-20年の自分の仕事はどうなっていくかということであろう。カーツワイルの主張するように技術的特異点が2045年だとして、そこに至るまでに普通の人々の暮らしがどうなるかに関心があるであろう。

その大きな問題点は技術的失業である。コンピュータ、人工知能、ロボットが発達すると、それまで人間がやっていた仕事をコンピュータ、ロボットが代替するようになり、人間は失業する。ロボット化の流れは押しとどめられないとして、どのような対策があるか、さまざまな本の著者により、その処方箋は異なる。現在の競争的な資本主義社会を肯定するとすると、勝ち組と負け組が現れる訳で、いかに勝ち組になるかという方法論が一つにはある。

もう一つは、ロボット化は生産性を上げる訳で、社会総体としては豊かになるはずだ。つまり人間はもはや労働しなくても喰って行けるはずだ。それがそうならずに、一握りの金持ちと大勢の貧乏人に分割されるのは、社会システムが悪いからだと言う議論がある。この格差を是正する為には、金持ちから多く税金を取り、貧乏人に配分すると言う考えがある。それは正論ではあるが、その実現はなかなか難しい。経営者、資本家、金持ちがそうやすやすと既得権を手放すはずもない。

さらに別の議論として、格差は認めた上で、貧乏な生活になれようという主張もある。金があることが、即、幸せを保障しないことは知られているので、貧乏でも幸せに生きる道を探ろうと言う議論である。

ともかく、私はいろんなことを話したのだが、そのどの部分が記事になるかは楽しみである。

 

7月7日 開放系の量子統計力学

D-Wave量子コンピュータは量子的 

今日は筆者の蟄居する、京都山科の特異点庵と称する筆者の個人オフィスで、秘密研究会と称する勉強会を行った。テーマはD-Wave社の量子コンピュータが真に量子的かどうかを調べて、それに肯定的な結論を下したNatureの論文"Experimental signature of programmable quantum annealing"を分析することである。その論文のアブストラクトを要約する。

量子焼きなまし法は量子断熱進化を使って困難な最適化問題を解く一般的な方法である。理想的な閉じた系の場合、量子焼きなまし法はしミュレーティド焼きなまし法のような、熱化(Thermalization)に基づく古典的な手法よりもはるかに優れていることが、解析的及び数値的に示されている。しかし、量子焼き鈍しコンピューターはデコヒーレントな熱的環境の元では、結局は量子的と言うよりは古典的な熱化を行ったのではないか。この疑問に答える為に、我々はプログラム可能なスピン・スピン結合をもつ超伝導磁束量子ビット(D-Wave)を用いた。その結果は量子焼き鈍しと矛盾せず、古典的な熱化とは矛盾する。デコヒーレンスの時間スケールが断熱進化のタイムスケールよりも遥かに短いにも関わらずである。このことはD-Waveが雑音や量子ビットの欠陥に対して極めて強靭であることを意味している。

この論文の要点は、要するにD-Waveは量子的であるということだ。D-Waveに対しては正統派の量子コンピュータ学者からはさまざまな批判がよせられていた。D-Waveが計算できたとしても、それは量子的な計算ではなく、古典的な計算であろうと言う批判がそのひとつである。本論文はそれに対する反論である。

 

開放系の量子統計力学

論文の本体部分はそれほど長くなく、読むことにそれほど困難はない。ところが本論文にはAからHに至る膨大な付録があり、こちらを読むのは極めて難しい。特に筆者が戸惑ったのはリンドブラッド・マスター方程式なるものだ。筆者は大学時代に量子力学を学んだが、こんなものは習ったことがなかった。

調べてみると、その方程式は開放系の量子統計力学における基本方程式であるらしい。量子状態には純粋状態と混合状態がある。純粋状態を記述するのが波動関数で、その運動を規定するのがシュレディンガー方程式である。いっぽう混合状態を記述するものとして密度演算子あるいは密度行列がある。この運動を支配するのはフォン・ノイマン方程式である。そこまでは当時の教科書に書いてあった。しかしそれは閉じた系に対するものである。

系が開放系である場合、フォン・ノイマン方程式の一般化がリンドブラッド・マスター方程式であると言う。リンドブラッドと聞くと筆者は恒星系力学に置けるリンドブラッド共鳴を思い出すのだが、どうも別人であるらしい。

開放系の量子力学というキーワードで調べるといくつかの大学院クラスの講義録に出くわした。例えば"Graduate course on open quantum systems"などそうである。Lindbradの論文は1976年のものだから、筆者が大学院を卒業した後の話で、習わなかったのも当然である。

 

若気の至り

筆者の大学院時代の印象は、量子力学などすでに完成した学問であり、その応用である物性物理学などは素粒子物理学に比べて格が低いと思っていた。物理帝国主義的思想のなかでも素粒子帝国主義思想に冒されていたのだ。それはその研究室の元の指導者が、かのノーベル賞学者である湯川秀樹先生であったからだ。湯川先生は偉い、だから素粒子論はえらい、そんな考えだった。

だから筆者は大学院修士課程に入り、素粒子・原子核理論研究室を選んだ。素粒子・原子核といっても素粒子論と原子核理論は別で、素粒子論の方がえらいと思っていた。しかし筆者は修士課程2回生の時に天体核物理学研究室に鞍替えした。その理由は、素粒子理論をめざす若者はたくさんいて、みんなとても頭が良さそうで、こんな人たちと競争とても、とても頭角を現せないと思ったからである。筆者の転身は大成功であった。実際、天体物理学、宇宙物理学はその年1965年にブレークしたのである。ペンジアス・ウイルソンによる宇宙背景放射の発見である。素粒子をやっておれば、鳴かず飛ばずになっていたであろう。

今から考えてみると、当時の筆者の素粒子帝国主義的発想は完全な偏見であった。その証拠に筆者が完成した学問と思っていた量子力学が、その後、爆発的に進歩しているのである。そのひとつがこの開放系の量子統計力学である(らしい)。若気の至りと言えばそれまでだが。

さらにいえば、素粒子論、高エネルギー物理学がどんなに進歩しても、人間生活にはほとんど関係ない。ヒッグス粒子が見つかろうが関係ない。超弦理論が証明されても関係ない。しかし量子コンピュータの進歩は、技術的特異点を招来する可能性をますわけで、影響力が大きい。原子や分子の量子力学の方が、素粒子物理学よりはるかに人間生活に大きな影響を及ぼすのである。

 

7月1日 啓文堂新書大賞

「2045年問題」啓文堂新書大賞受賞

拙著「2045年問題」が啓文堂新書大賞に選ばれた。啓文堂とは東京の京王電鉄系の書店で、毎年いろんな賞を出している。そのひとつが新書大賞である。その仕組みは、出版社の推薦した新書の中から12冊を候補として選定して、6月の1ヶ月間、啓文堂の各書店でフェアーを行う。そしてそのなかで最多売り上げを上げたものが大賞に選ばれると言うしくみだ。今年度の候補書籍はこのようなものだ。拙著もその中に選ばれた。そして6月のフェアでデッドヒートを繰り広げた結果、拙著が大賞に選ばれたと言う。大賞該当書籍は8月に販売促進のフェアーをすると言う。このやり方はなかなか巧妙なものだと思う。啓文堂は売り上げを伸ばせるし、候補書、および大賞該当書籍も売り上げが伸びる(だろう)から、両者とも損はないという仕組みだ。

筆者は1970年代に講談社ブルーバックスから佐藤文隆さんと共著で「相対論的宇宙論」という本を上梓した。これはかなりベストセラーになった。それと比べると「2045年問題」の印刷部数は一桁少ない。書籍と言うものが売れなくなっているのであろうか。

 

   
© NPO法人 知的人材ネットワーク・あいんしゅたいん (JEin). All Rights Reserved