誰も寝てはならぬ・・・Nessun Dorma
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- 2011年5月15日(日曜)12:10に公開
- 作者: 松田卓也
「誰も寝てはならぬ・・・ネッスン・ドルマ」はプッチーニのオペラ「トゥーランドット」のアリアである。トゥーランドット姫が、国民に寝てはならないと命令するのである。この歌はテノールのためのアリアとして、あまりにも有名である。それは多くのテノール歌手により歌われている。ここではその一端を紹介しよう。
ポール・ポッツ(Paul Pots)
以前にも紹介したが、ポール・ポッツはイギリスのタレント発掘番組ブリテンゴットタレントで彗星のようにデビューした歌手である。もとは携帯電話のセールスマンをしていた。その彼がスターダムにのし上がるきっかけとなったのが、ここで紹介するウエールズの首都カーディフで行われたオーディションである。彼は冴えない身なりをしていた。それが歌い出すと、聴衆は感動と感激の嵐に巻き込まれた。審査員の女性は涙すら見せていた。これ以後、ポール・ポッツは順当に勝ち進んで、そして最後に優勝した。
ルチアーノ・パバロッティ(Luciano Pavarotti)
現代のオペラのテノール歌手と言えば、なんといってもイタリアのパバロッティであろう。彼の「誰も寝てはならぬ」は全世界で1200万枚以上売ったという。そして後で紹介するように、ルチアーノ・パバロッティ、プラシド・ドミンゴ、ホセ・カレーラスの3大テノール公演が行われるようになった。1998年に歌ったものだ。
プラシド・ドミンゴ(Plácido Domingo)
ドミンゴはスペイン生まれのテノール歌手で、指揮者、歌劇場芸術監督もしている。三大テノールの一人である。そのオペラ公演での「誰も寝てはならぬ」
ホセ・カレーラス(Jose Carreras i Coll)
ホセ・カレーラスもスペインのテノール歌手である。3大テノールの中では一番若い。そのカレーラスの「誰も寝てはならぬ」
ホセ・カレーラスは白血病を患ったが、回復した。そのため「ホセ・カレーラス国際白血病財団」を設立した。3大テノールの公演はこの財団の支援のために始められた。1992年のバルセロナ・オリンピックでは音楽監督を務めて、サラ・ブライトマンとオリンピックのテーマソングAmigos para Siempreを歌った。
マイケル・ボルトン(Michael Bolton)
アメリカのハード・ロック歌手でシンガー・ソングライターという。私はロックには興味がないので、彼を全く知らなかったが、彼のネッスン・ドルマを聞いて圧倒された。全くオペラ的な歌い方ではないが、そんなことは関係ない。この腹から出る圧倒的な声量はどうだろう。これがロック歌手だろうか。全く負けたと思った。日本のロック歌手であれ、ポップス歌手であれ、こんな声の出る人がいるだろうか。これが私の言う音楽文化の差である。もっとも、批評ではオペラ的な歌い方でないことに不満を漏らす人も多い。
ボノとパバロッティのアベ・マリア
しかしながら有名なロックバンドU2のリードボーカルであるボノとパバロッティのアベ・マリアはどうだろうか。ちょっと恥ずかしい気がする。マイケル・ボルトンと比肩できるものではない。もっともパバロッティはかなり抑えている。
YouTubeのコメント:おおマイゴッド、なさけないボノ、マイケル・ボルトンはどこにいるのだ?
ラッセル・ワトソン(Russel Watson)
これは英国の歌手ラッセル・ワトソンが2005年に日本で歌ったネッスン・ドルマである。我々素人の耳には、すごくオペラ的に歌っているように聞こえるが、一部の批判家はそうではないという。マイケル・ボルトンの時と同じような批判が、このラッセル・ワトソンにも浴びせられた。彼はオペラの正式な訓練を受けていないからだ。彼らはオペラのファンなのであろう。彼らの神聖な殿堂でオペラの訓練を受けていない、彼らからすれば素人が歌うのが許せないのだろう。
私はこの種の批判には、全く同調しない。実際、マイケル・ボルトンもラッセル・ワトソンも圧倒的な支持を集めている。多くの人々、それもオペラファンではない素人を感動させているのである。
先に紹介した3大テノールは、これは押しも押されもせぬオペラ歌手である。しかし3大テノールのパフォーマンスは、サッカーのワールドカップ開催を記念して行われた。これに対してもオペラを俗化するというたぐいの批判がある。私は3大テノールにせよ、マイケル・ボルトン、ラッセル・ワトソンにせよ。クラシック音楽を一部の好事家のものから、大衆のものに解放したという大きな功績があると思う。