研究所紹介  

   

活動  

   

情報発信  

   

あいんしゅたいんページ  

   

世界征服計画 その25

詳細

25. 猫の爪の成功

猫の爪の成功は最初は密やかなものであった。しかし2年目になると、関西科学研究所の文殊菩薩システムは、全世界の科学者の知るところとなった。世界中からポスドク希望が殺到した。またシステムを使う為に諸外国の研究者は争って、関西科学研究所に長期、短期の滞在を希望した。僕は予算の許す限り、それらの要望に応えた。また費用を全部こちらがもって国際会議を京阪奈だけでなく、大阪、京都、神戸などで開催した。

それから大阪湾に浮かぶ人工島に全寮制大学を新設した。授業料や寮費は総額で300万円だが、それは全て奨学金で賄えるようにした。2年目に試験をして、3年目に学部、修士1回生をそれぞれ1000人ずつ入学させた。かかる費用は60億円である。次の年からは、さらに60億円ずつかかる事になる。最終的には9000人の学生とポスドクを1年間だけ認めて、計1万人の学生になる。必要経費は300億円である。教員は名誉教授、他大学の非常勤講師、関西科学研究所の研究員を当てるので、人件費は比較的抑えられる。この大学は教育専門で研究はしない。研究は研究所で行うのが建前である。

アテナは文殊菩薩のようなシステムを使って、完全にバーチャルな、つまり俳優を使わない映画作りも始めた。アニメ映画を作るのだが、完全3次元の、全くそれらしい映画である。題材としては色んな歴史物を作った。実は人間の歴史に関しては、宇宙人が昔から世界各地にスニッファーを設置しており、非常によく分かっている。だからきわめてリアリスティックな映画ができる。しかし例えば、邪馬台国と卑弥呼の映画を作る場合、当時の言葉をしゃべらせたのでは、全く分からないから、これは現代語にする。昔の人間は、背が低く、体格が優れないし、美人の基準が今と昔では違うので、登場人物は現代風にした。そのため多少の、いや、かなりのフィクションは避けられない。しかし歴史的事実としては、基本的に正しいものを採用した。こんな映画がボンボンできるので、ハリウッドはあがったりになった。これはアメリカ(後のアメリカ連邦)の利害と対立することで、いずれは悶着の種になっていくのである。

猫の目のさらなる発展

アテナはバルカンと組んで、大阪湾周辺に第二のシリコンバレーと呼べるような最新のコンピュータ産業を育成した。これはまさにアメリカ連邦の警戒心をあおり立てるものとなっていく。

ポセイドンは20万トンクラスの研究船を作る構想を持っているが、これを商業ベースで作ると2千億円程度かかるので、自前の造船所を持つまでは、あまり大量に作る事は出来ない。それでも研究船第一号は3年目に完成した。さらに大阪湾に浮かべる病院船も出来た。これは太平洋に浮かぶ小規模島嶼国家に船籍を持つ便宜置藉船である。規制がゆるい事に目を付けて、宇宙人伝授の全く新しい医療を施し、大部分の難病を治せる事になった。欧米、アラブの金持ちを相手に若返りを施し、多額の金を請求した。ポセイドンはさらに、観測船を造り始め、世界の海に派遣した。国際救難船も造った。さらに海軍の軍艦作りを密かに無人島で始めた。

ポセイドンが交渉して、インドネシアの東端の島に宇宙基地を作り、人工衛星をボンボンと打ち上げ始めた。まずは自前の通信衛星、偵察衛星、GPS衛星、観測衛星などである。最初は1月に1機、そのうちには週に1機の割で打ち上げられるようになった。1年で52機である。10年がたつ頃には、当初の構想はかなり達成されてきた。研究所船も日本の造船所と、海外に自前で作った造船所で、10隻程度作ることができた。ポセイドンはさすがに空母を持つところまでは至っていないが、それ以外の駆逐艦、潜水艦、補給艦、強襲揚陸艦からなる艦隊を作り上げた。これが米帝と中国を刺激することになったのである。

バルカンは東チモールには研究用のトリウム原子炉を設置した。設計は分かっているので、短期間に実証炉、商業炉と発展した。そしてそれを発展途上国政府に持ちかけて、設置し始めた。その周辺に様々な製品を作る工場を造り、先進国に輸出し始めた。問題はこの工場はほとんど無人なので、現地の雇用にはほとんど貢献しない。ただ政府、地方政府に税金を納めるだけである。それらの国は、税金を納めてくれるだけでもありがたいので、我々の施設の誘致に熱心になった。このため中国の世界の工場としての意味がだんだん薄れてきた。そのことは中国を刺激することになる。

バルカンはまた北海道と青森に色んな実験施設と工場、造船所を造り始めた。北海道の工場ではロケット、人工衛星などの重工業製品を作った。海外の工場では、日本の規制に引っかかるもの、つまり未認可の薬品とか、軍艦、戦闘機などの兵器を作った。ただし兵器は売り物ではなく、従って死の商人にはならない。すべて自分の軍備のためのものだ。しかしこれも当然、米帝と中国を刺激することになる。

続く

   
© NPO法人 知的人材ネットワーク・あいんしゅたいん (JEin). All Rights Reserved