歩くことと健康
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- 作成日 2021年10月26日(火曜)11:15
- 作者: 松田卓也
運動とくに歩くことは体の健康にとっても脳にとって良いという話をする。運動とくに歩行が健康に良いことは常識だが、どう体に良いのか、なぜ良いのか、どのくらい歩けばよいのかについて話す。
なぜこの問題に興味を持ったかというと。私がつけているアップル・ウオッチにはアクティビティというアプリがあり、これが使用カロリー、運動した時間、歩いた距離と歩数、心拍数などを計測してくれるのである。これで私は限界に挑戦しようと思ったわけだ。
運動は大きく分けて有酸素運動、無酸素運動、ストレッチに分けられる。有酸素運動とは歩く、走る、泳ぐ、自転車に乗る、ダンスをするといった、時間をかけて行う運動である。無酸素運動は筋トレに代表されるように、短時間に力を発揮する運動である。ストレッチは関節の可動範囲を広げる運動である。どれも体に良いのだが、ここでは有酸素運動に話を絞る。というのも、有酸素運動が特に健康にとって良いのである。
運動をその強さで分類することもできる。強度の高い運動、中程度の運動、軽い運動である。たとえば歩くことを例にとると、歩きながらなんとか話ができる程度の早歩きは中程度の運動である。ゆっくりと歩く場合は軽い運動である。ジョギングの場合は中程度の強度の運動から、強い運動に分類できるだろう。その区別は心拍数で決まる。
さて今後は話を歩行に限定する。走ることに関しては別に取り上げる。
歩くことの効果はいろいろあるがその一つに、様々な病気を防ぐことがある。具体的には心臓疾患などの循環器病、糖尿病、ある種のがんである。またストレスを減少させる。肥満を防ぐなどもある。免疫系を改善して感染を防ぐので風邪にかかりにくくなる。関節に循環液を供給してひざや背中の痛みが軽減する。骨や関節が強くなる。消化が促進される。肺の体積が大きくなる。目がよくなる。精神が落ち着き、うつや不安が改善する。ともかくいいことばかりなのである。
ちなみに免疫に関して言うと、強すぎる運動は逆に免疫を弱くするという説が有力である。たとえばマラソンをすると風邪をひきやすくなるという話がある。その意味でも歩くことは、運動の強度が適当なのでよいのだ。
それでは、どのくらい歩けばよいのか? 一つの目標は一日30分歩くことだ。これでどれだけ歩けるか。普通、ゆっくりと歩くと時速4キロメートルくらいといわれている。これでは少し遅い。その倍の速さ、つまり時速8キロメートルで歩くとすれば、30分なら4キロメートルくらい歩けるだろう。これがまずは一つの目標といえよう。歩数で言えば5000歩くらいか。ただしこれはかなり早歩きだから、かなり大股で結構大変だ。
もう少し大胆な目標を設定してみよう。それは一日1万歩である。この1万歩という数字は、元は日本のメーカーが作った万歩計からきているのだが、キリの良い数字なので、アメリカでも一つの目標として採用されている。
それでは現実には人々はどのくらい歩いているのだろうか。ある統計によればアメリカ人の平均は4キロメートルを5000歩程度で歩く。日本人の平均は7000歩、スイス人やオーストラリア人は平均1万歩であるという。
そもそも歩くことはなぜ健康に良いのか。それは、人間は進化的にみて歩くことが生存に適しているようにできているからだ。人類の祖先であるチンパンジーやゴリラは実はあまり歩かない。森で生活しているので、歩く必要があまりないのだ。だから彼らはあまり歩かなくても健康に問題はない。
しかし草原に進出した人類の祖先は、食べるものを求めて歩かなければならなくなった。その食物が植物であっても動物であってもそれを探しに歩かなければならない。つまり歩かないとか、歩けない人間は淘汰されるのである。
現在もアフリカには狩猟採集生活をしている人々がいる。タンザニアのハッザ族がそうだ。ハッザ族の人々にGPSをつけてもらって測定した結果、ハッザ族の男性は一日に9-14キロメートル程度、歩数にして12,000-18,000歩程度、歩くという。彼らには心臓疾患、脳卒中、糖尿病のような慢性疾患はない。現代人でもたとえばグラスゴーの郵便配達人に関する研究では、彼らはその程度歩く。郵便配達人にもやはり慢性疾患が少ない。
だから理想的には一日に12キロメートル、15000歩、1時間半歩けばよいことになるが、これはなかなか厳しい目標である。ちなみ私はというと、この目標を少し下回るがほぼクリアしている。例えば一日に歩いた距離は平均10キロメートル、14000歩程度である。
<まとめ>
歩くことは体にとって良い。なぜなら人間は進化的に見て、歩くようにできているのだ。だから会社で一日中座ってPCを見ているとか、家に帰ってソファに座ってテレビを見たり、スマホを見たりするのは、本来の人間から見れば不自然であり、健康に良くないのである。歩くことは脳にも体にも極めて良い影響を及ぼす。
歩く目標としては一日に30分間程度、できれば速足で4キロメートル程度歩くのがよい。もっと野心的な目標としては一日1万歩、歩くことである。私は当面はそれをクリアしている。もっともそんなことができるのは、私は定年退職した後期高齢者だからだ。忙しく働いている人はそんなことはできないかもしれない。それでもできるだけ歩く、近くへ行くのに自動車に乗らない、バスや電車の一駅分を歩く、エスカレーターやエレベーターを使わないで階段を上る、いろいろできることはあるはずだ。