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知識爆発と技術的特異点・・・私はサイボーグになりたい

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人工知能に感情は不要

人工知能には強い人工知能と弱い人工知能という概念がある。強い人工知能とは、意識を持った人工知能である。現状の人工知能はすべて弱い人工知能である。

哲学者や人工知能研究者の一部には、強い人工知能をつくることは不可能であるとする立場がある。私の意見では、コンピュータに意識や感情を与えることは、きわめて難しいか不可能かもしれないが、それは必要ないと思う。コンピュータに意識を持たせることは必要ではないどころか、有害かもしれないと思う。SyNAPSE計画にしろ、Human Brain Projectにしろ、意識を生み出すとは言っていない。新しいタイプのコンピュータ・チップを作ると言っているのだ。それで十分だ。

コンピュータを利用して人間の知能を増強させる、つまりガリスの言うサイボーグ型人間が望ましいと私は考えている。つまり意識や感情の部分は人間が担う、理性の部分をコンピュータが増強する。これが少なくとも(2030年程度の)近未来の、望ましい、あり得る方向性であると思う。

強い人工知能に反対するか、できないと主張する人々は、意識は人間特有のものであり、機械にできるはずはないと主張する。人間の方がえらいという素朴な信仰である。私は彼らを人間主義者(ヒューマニスト)とよぶことする。彼らは人間の感情というものを過大評価していると思う。人間には愛とか美を感じる心が大切だという。しかし感情の中には、愛や美を感じるようなポジティブな側面のほかに、怒り、憎しみ、妬み、恐怖といったネガティブな側面も存在する。コンピュータに感情を植え付けることができたとしたら、それは(人間に対して)強い怒り、憎しみの感情を持つかもしれない。人間の怒りの、1兆倍の1兆倍の強い怒りの感情を、人間に向けられてはたまったものではない。コンピュータに感情など持たせるべきではない。

コンピュータによる知能増強

現在の人間は、コンピュータを利用して知能をアップさせている。たとえばグーグル検索やWolfram Alpha、Evernote、YouTubeなどはその例だ。これらを利用して私は、以前の私より遙かに賢くなっている。

人間にはとうてい処理できない膨大なデータが与えられたとして、そこから何らかのパターンを、コンピュータを使って見つけることができる。人間にはとうてい読めない、膨大な量の文章をコンピュータに読ませて、処理することができる。

実例としては、電子開示(e-discovery)というものがある。あらゆる電子データ、機械可読データのデータベースを作ることである。米国では法律でこれが義務づけられている。裁判において、膨大な証拠書類を従来は人間の弁護士が読んでいたが、その大部分をコンピュータに読ませて、人間は要点だけを見ればよい。多くの弁護士は不必要になる

日本で特捜ががさ入れするときに、多くの検事や事務官が捜査先にぞろぞろ入っていって、膨大な書類を押収して、段ボールに詰めて持ち帰るシーンをよくテレビで見る。あの押収した書類は、彼らが逐一読むのであろう。ほとんどが関係ない書類の中から、人間が目で必要な書類を探し出すのであろう。将来は、証拠書類は全部スキャナーで電子化して、それをコンピュータに読ませて、重要なものを抜き出して、それだけを人間の検察官が読む。すると、あの多くの検察官や事務官は不必要になる。

学校では生徒や学生の書いたエッセイをコンピュータが採点することができる。それによるとコンピュータは人間の先生と同等以上の能力を発揮するという。なみの先生も不必要になる。

SyNAPSEプロジェクトやHuman Brain Projectにより、ノイマン・ボトルネックを凌駕したコンピュータができれば、そのパターン認識能力を利用して、人間の知能をさらに増強することができる。たとえば世界中の気象データがあるとする。現在の天気予報では、そのデータから数値予報プログラムを走らせて未来の天気を予報する。いわば決定論的に未来を予測する。しかし新しいコンピュータは、現状のデータを見て、未来を過去の経験と勘に照らし合わせて予測するのである。漁師が空を見て明日の天気を占うようなものだ。未来の天気予報は、理性と感性をあわせもったコンピュータで行われるであろう。

未来の研究者

未来の研究者を想像してみよう。彼はある研究をしたいと思う。何をしたいかは、人間が決める。そこでヘッドマウント・ディスプレーに浮かぶ、眼前の人間型のバーチャルアシスタント、つまり電子秘書にたいして、先行研究を抽出するよう依頼する。2年前のバーチャルアシスタント「デニス」の現状はこの程度である。未来にはこのアシスタントが3次元になり、もっと賢くなる。

未来のアシスタントは即座にネットをサーチして、要点を報告してくれる。そこで研究者は先行研究の穴、不足分を発見する。それを見て、研究者はある手法で数値シミュレーションしようと思ったとする。アシスタントは、即座にプログラムをネットから探し出すか、新たに作ってくれる。そしてそれを用いて計算してくれる。計算結果は研究者の眼前に3次元のアニメーションとして現れる。それを検討した研究者はこれで良いと思うと、論文を書く段階になる。研究者は頭の中で言葉を発すると、それが眼前に文章として表れる。アシスタントは文法間違いや不適切な言い回しを即座に訂正してくれる。そして自動的に論文を雑誌に投稿してくれる。

さらに将来(2030年以降)は、研究者がアシスタントに、適当に論文を書いてくれと依頼することもできるだろう。論文ができるとアシスタントは自動的に投稿してくれる。現在の研究者なら、論文を書くのに数ヶ月はかかるであろう。未来の科学者は数時間で完成するのである。慣れた研究者なら、30分もあれば十分だろう。

人間の反応速度の関係から論文をそれより速く書くことはできない。そこで未来(2040年以降)には、研究者はアシスタントに適当にやっておいてよと言う。すると世界中のバーチャルアシスタントは、あるときは協力し、あるときは競争して研究論文を分速、秒速で書いていく。科学の国際会議もバーチャルアシスタントだけで行われて、発表論文数は数百万にも及ぶ。それを彼らは数秒で処理する。こんな国際会議が数分間隔で行われる。もはや人間は傍観するしかないのである。こうしてネットで結ばれたバーチャルアシスタント共同体は、世界に関する知識を加速度的に集積していくのである。やがて知識爆発が起こり、技術的特異点に到達するのである。これが2045年になるのかどうかは、私は分からないが、そのあたりだろうと思う。

   
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