2024年10月07日

教員免許状更新講習 e-TAMAGO(ブログ その128)

今年から、私たちが作った教材を含んだ新しい教員免許状更新のためのインターネット方式での講習が、e-TAMAGO に移りました。
長らく、金沢大学の下で協力させていただいておりましたが、突然、昨年10月に「文部科学省が主催している教員免許状更新事業ですが、平成28年度から、必修科目を中心に大幅な変更がされます。その時期に合わせたようになりましたが、金沢大学を幹事校として、NPOあいんしゅたいんなども準連携組織として参加していたインターネットを介しての講習について、幹事校であった金沢大学は、学長や理事の交代もあり、eラーニングによる教員免許更新講習は27年度講習をもって最終とし、28年度以降は行わないと決定しました。」と連絡がありました。
このため、金沢大学が提供していた14本の講習やお世話をしていたNPO関連の教材は自由に他の形で利用してよいということになったというのです。このままでは、2016年度から金沢大学・NPO関連の20本くらいの講習は、すべて利用されなくなることになったというお知らせにびっくりしました。

これまでのインターネット講習で、必修講習の責任者を務められてきたT教授はこのことを憂慮され、28年度以降もぜひ続けたいと希望されました。実際、金沢大学を主幹校としたeラーニ ングによる講習は、21年度から7年間、毎年2300名ほど、延べ約15000名の教員が受講され、アンケートでも大変好評であることから分かるように、社会的な要請も大きかったのです。
そこで、T先生は、ご自分が特任教授も務められている教員養成で有名な玉川大学に働きかけ、新しく「玉川大学及び協力機関によるeラーニング教員免許状更新講習(略称e-TAMAGO)」を準備されました。急なことで、慌ただしい中でしたが、これまでの成果を引きついで継続発展させようという心意気に、当あいんしゅたいんも共感し、これに加わることとなりました。まだまだ準備が十分ではないですが、これまでの蓄積した教材もありますし、T先生たちが玉川大学を中心に新しい教材も開発されています。
このe-TAMAGOは、大きな志を持っております。28年度は、とりあえず大学の了解を得られた玉川大学が講習開設の申請と認定を行うことになったのだそうです。
将来的には、法人組織を立ち上げて公益法人化して、法人の名前で事業を行う予定だそうです。さらに、全国の約400大学の教職課程を有する私立大学の連合体である全国私立大学教職課程研究連絡協議会(全私教協)が平成28年5月頃に社団法人化されるので、その活動の重要な柱として、eラーニングによる教員免許状更新講習を位置付けられていますが、その動きとも何らかの連携を持っていきたいと考えられています。また、e-TAMAGOには、大学だけでなく、教育関係のNPOや社団法人にも参加を呼びかけるそうで、これはとてもうれしく、心強いことだと思っています。
というのは、教員免許状更新講習は、教員の方々が新しい情勢にあわせた知識を取得する場です。例えば、2011年3月の東日本大震災に伴う福島第1原発事故、そしてそれに伴う放射線教育の問題など、様々な新しい動きがでてきており、またその後続発する地震の問題など、たくさんの課題が出てきました。なかんずく放射線の生体への影響については、科学者の間でも両極端の評価が飛び交い、学校の先生方は戸惑うばかりでした。実際、放射線の生体影響について、なかなか元に戻って論文から読むのは大変です。こうした問題に対面して当NPOは、市民と一緒になって勉強し、市民の鋭い疑問に応えつつ、生物学、物理学、疫学など、分野を横断した専門家が集ってこれまでの放射線の生体影響に対する科学の成果を検討いたしました。そして、5年の年月をかけて、「放射線必須データ32」の出版にこぎつけたのです。
今もなお、科学としてどこまでわかっているかを知りたいという先生方は多くおれるでしょう。それで、「この本の簡単明快な解説を電子教材にしたいな」と持ちかけていたのです。忙しい中、こうした問題にじっくり取り組む余力のない現役の先生方に代わって、「知的人材ネットワークあいんしゅたいん」ならこそ取り組めたのではと考えています。何より先生方だけでなく市民がいろいろと注文質問を繰り返して徹底的にわかるように説明する中で生まれたものですから、まあ大袈裟に言えば、こんな本は世界中探してもありません。この本に携わってくださったベテランの専門家は若い先生方も巻き込んですばらしいネットワークができました。大学を飛び越え、全国に広がるネットワークです。

こんな提案をしていた直後その機会がなくなるという話になり、がっかりしていました。そして、再びe-TAMAGOの出発で、すばらしい連携の場ができることになり心を躍らせています。
また、私たちは、3・11をきっかけとして、物理学から放射線生物学に足を踏み入れ、新し研究を始めました。当初は「素人が何を言っている」みたいな反応もありましたが、少しずつこの方法が生物学の異なった見方を提供することをわかってくださる方も増えてきました。そして、科学研究費も採択されて、さらに新しい方向へ足を踏み出せます。このなかで、物理から見た生物の統一的描像が描ける段階になってきました。こういう折、「基礎生物学」というテキストが出ました。これをみて、「あ、これってテキストだけど、私たちによくわかる!」と思いました。この経緯についてはまた別途お話しするとして、これも紹介したいなあなどと思っていたのです。これに携わった木谷さんは、実を言うと教員免許更新講習の受講生として知り合った女性の方ですが、議論の中でいろいろ教えていただきました。よくよく聞いてみると、非常勤の高校の先生をしておられますが、実は大学の博士コースで生物の専門家だったことがわかりました。教える側と講習する側で、質問コーナーを通して知り合いになって教えられたこともたくさんあります。そういうものを盛り込んで、【生きた教材】を作っていけたら面白いな、仲間にしてくださるならほんとにうれしいな、と思っているところです。

NPO法人「知的人材ネットワーク・あいんしゅたいん」が発足したのは、2009年2月5日です。佐藤文隆名誉会長と2人、私たちは同級生で年齢70歳でしたから2人合わせて140歳で発足となったなあと、2人で冗談を言ったのを覚えています。もうこれで7年になります。なによりも、目標にしたのは「知的人材をもっと活用すべきだ」とうことでした。それと同時に、市民・子供たちに科学技術の面白さを知ってもらうことが、社会の科学技術発展につながるという思いでした。教員免許更新はこのなかの大きな柱でした。

みなさん、ぜひともeラーニングによる教員免許状更新講習 e-TAMAGO を、応援してください。そしてこのたまごを大きく育ててください。