2024年10月07日

周山にて・・光と仲良くなろう(ブログ その6)

2月11日、寺嶋先生が、地下鉄太秦天神川駅まで迎えに来てくださいました。そして、先生の車で周山まで約40~50分のドライブです。嵯峨野もいいですが、その奥の周山は、北山杉に囲まれ、素朴で懐かしさのあふれた風景が広がっていました。この途中の話など色々語りたいことはあるのですが、今日は、周山中学校での私達の授業の様子を紹介します。

最初に中学校へ着いたときに、生徒達が作っている「しいたけ」栽培の現場を見せてくださいました。先生は、みたこともないほど肉厚のしいたけをもぎ取られ、「おみやげです。バター焼きにしたらおいしいですよ」と下さったのです。これ、実は、後の話に関係あるのよ。

校長室に入ると、「白衣を着ますか?」といって、塚田さんと私の分をロッカーから取り出してくださいました。そういえば子ども達に話すときは、白衣を着たほうがいいって佐藤文さんがいつかいってたなあ・・・と思いながら借りることにしました。白衣なんて着たことないんですけどね!校長先生、やっぱりベテランでよく状況を把握しておられるのですねえ!さりげなくやってのける、さすがプロです。

新聞記者もきておられ、「最初にノーベル賞の話しをされますか?」といわれたので、「あ、あまり考えていなかったけどしたほうががいいですかね」ということで、最初に一寸、ノーベル賞の話をすることになりました。

さ、はじまりました。そして「こんにちは」っていうと、みんな「こんにちは」っていってくれました。「私は、おばちゃんっていたほうがいいのかおばあちゃんっていったほうがいいのか、どう?」ときいてみたけど、あまり笑ってくれません。だめだな!

次に、「みんな、去年ノーベル物理学賞もらった人の名前知ってるよね?」ときいて、「どう?」といっても答えてくれないんです。「知らない?じゃあ湯川秀樹博士は?」ときいても黙っています。うーん!

とりあえず、きめたことなので益川さんの話をしました。「益川さんは、理屈が好きな人で、昔、ボーリングを皆でいくことになったとき、『ボールはこういう風に回転をつけてこういう風に投げると、全部倒せるよ』というので、『で、益川さん やったことあるの?』と聞いたら『いや1回もない』というような調子です」という話だけして、簡単にきりあげて、早速話の内容にはいりました。

あとで、「本当にみんな小林とか益川とか湯川とかしらないのかなあ」といったら、「知らないはずないでしょう。きっと恥ずかしかったんだと思いますよ」と一緒にいってビデオ撮影をしてくださった下浦さん(科学カフェ)がいわれました・・。

しまったと思ったのはあとです。考えてみたら、生徒達が丹精こめて作ってくれたしいたけのお礼から始めたらよかった!すぐ親しくなれたはず。校長先生はそういう意図もあって、わざわざしいたけを下さったんじゃなかったかなあ?光の話の前に、皆とまず仲良しになる・・これが大切だったのですね。しいたけのお礼も言わずに帰ってからこのことに気がついたとは!残念です。

最初に炎色反応の実験をするというのは成功でした。校長先生が、ナトリウム、マグネシウム・銅・カリウムなどの炎色反応をみせると、きれいな色が出るたびに、生徒達から「ワー」というような声が上がります。校長先生のアイデアはさすがにすごいです。少し盛り上がってきました。興味をもったようです。やっぱりびっくりしたり感動したりという情動をまず呼び起こさせること、これが大事ですね。

そして、塚田さんが、発光ダイオードで光の混ぜ合わせの実験をしました。だんだん会場がリラックスしてきました。

  • 光の3原色と混合の話は、「RGBって何の頭文字かな?」と聞くと、[Red] [Green] [Blue] とちゃんと答えてくれました。光の色の足し算がわかれば、物の色の引き算もわかったみたい!よかった! 

さらにクイズ。

  • RGB表示の 000000 FF0000 FFFFFFなど色のコードをクイズでやる頃には、 「黒」とか「赤」とか「白」とか答が飛び出しました。うーん、この問題、つい先ほどの愛知大学定期テストで出したんだよね!難なく関門を通り抜けたなあ!とうれしかったです。

発光ダイオード物語は、塚田さんの一番やりたいところ、熱が入っていました。中村修二著「考える力、やりぬく力、私の方法」(三笠書房)をわざわざ持ってきて熱演です。校長先生も私も随所でちゃちゃをいれ、掛け合い漫才みたいでした。

予定の2時間が迫ってきて、残念ながら「科学者と特許」の話は、大急ぎでやりました。見る見る時間がすぎて、終わりとなりました。

ところで、この中で、「プリズム」で太陽光を分離する話(10)のとき、校長先生から「どうして赤色の方があまり曲げられないで紫の方がたくさん曲がるかな?」と質問が投げかけられました。屈折率の違いを説明するには、波の進む速さを説明しなければなりません。「光の進み方を妨げるものがあるとき、長い波長はあまり邪魔されないけど短い波長は邪魔される程度が大きいでしょう?」といわれました。ふーん、なるほど、そういう説明けっこう直感とあっているなあ、と思いました。で、ついでながら「赤い光は霧がかかっても遠くまで届くから自動車のテールランプに使われるんだよ。もっと長い波長は目には見えないけど、遠くに届く電波ですね。」とコメントを付け加えました。

さて、皆さんはどう思われますか?この説明で誤解はないでしょうか?

校長先生が言われた「プリズムで太陽の光の色が分かれる理屈について」、実は気になっていたので、翌日開かれた、あいんしゅたいん の理事会終了後(認可がおりて発足後初めての理事会だったので、もらい物のワインとおすしで雑談をしました)、この話になりました。確かに、空気中を光が通過するときは、長波長の赤色が通過して、短波長の青色が散乱(レーリー散乱)される。だから、空が青く見えるという説明の場合は、長波長の方が影響を受けないといっていいでしょうが、「屈折」を同じ原理で説明してもいいのかな、という話を議論しました。子ども達に分るように話をするってことによって、光の屈折をどう理解するのか問われることになりました。さて、この後どういう議論があったか、それは次回紹介します。

※ 先日の周山中学での授業の様子(ビデオ)は、科学カフェ京都のホームページに掲載されていますので、興味のある方はご覧下さい。