大人のための科学教材への思い(ブログ その10)
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2009年5月06日(水曜)02:11に公開
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作者: 坂東昌子
このNPOで、これからどんな活動を展開していくのか、それを実現する1つとして、科学普及を若手と古手が協力して推進していきたいと、今回添付のような申請を致しました。これは、あいんしゅたいんが呼び掛けて、全国の科学普及に取り組む組織の間にネットワークを広げようという試みです。
これは、独立行政法人科学技術振興機構(JST)が、地域の科学舎推進事業として行っている支援事業で、その中の「全国規模ネットワーク支援」にあたるものです。「全国規模のネットワークを持つ機関・団体がそのネットワークを活用して行う、科学技術理解増進活動に効果的な活動手法の開発と普及」に対し支援するものです。
そこに、「大人のための科学教材」のプロジェクトを申請しました。これまでに、物理学会を通じて全国の若い人々や科学者が取り組んでいる人々とのネットワークを持つ強みを生かして、全国規模の協力体制を作ろうというものです。
なにしろ、出来立てほやほやで、時間的余裕もなかったのですが、組織や団体で活動している中心的な方々とは、常日頃いろいろな交流を持っていたので、その方々に声をかけ、東京で開かれた2009年3月春の物理学会大会で声をかけて賛同する方々を広めました。
詳しい内容は、申請書をご紹介しますので、興味のある方は見ていただくとして、ここでは、何故「大人のための科学教材」を目指したかをわかっていただこうと思います。
今、子供たちのための教材とか、市民講座の教材とか、たくさんの教材が、映像を活用して美しい動画も取り入れて出回ってきています。ただ、気になるのは、子供のものも、市民向けのものも、限界があるのです。科学は覚えるものではありません。理解するもののはずなのですが・・・。
というのは、「学校で習っていないもの」「教科書に出てこないもの」を避けて、できるだけやさしい言葉で説明することがまず大切なのはいうまでもないのですが、それだと、どうしても、「なぜ」という問いに迫らず、肝心のことを避けて通ることになりかねません。そうすると、よけい、覚えるだけになってしまいます。わけがわからないものは覚えるしかありませんからね。
いろいろな「わかり方」があるのですが、やはり、少し、興味を持ちだすと、さらに、知りたいと思うようになります。そしてどんどんその興味をつきとめていくと、さらにもっと知りたくなります。こうした時に、なんとなく、それでストップというような教材が多いのです。もっと、会話式に進んでいって、わかるというのをもっと進めることも望まれています。そうしてこそ、現在盛んに論じられている環境問題や、エネルギー問題、また、新しい技術開発に関わる実用商品など、そういった中身の真実が分かるものです。こどもでも、大人でも、そうして自分の「わかる」ことを先に進めていくのだと思います。
このことは、単に、一般市民だけでなく、学校で教える立場の方々、さらにいえば、プロの科学者でさえ、新しい発見やみなおしをして「ああ、そうだったのか」と納得することもまれではありません。時には、えらい科学者でさえ、当たり前の日常の現象を理解するのに、間違うこともあるのです。ですので、ある解説をよんで、「なぜかな」という子供も含めた市民の声をしっかり受け止め、科学的にしっかりした基盤をもとに説明し、そしてさらにまた次の質問につながる・・・そういった「進化する教材」がほしいなあ、と思っています。みんなが疑問に思ったら、まだまだ、わからないこともあるので、科学的に検討して「これでわかりますか?」ときいてみて、「なるほど」という納得のいくところまで突き進むやりとりがほしいなあ、と思っています。こうしたやりとりを、市民と科学者、科学者同志で、くりかえして、「よくわかった間科学的にきちんとした」教材に仕上げていくことを、たくさんの仲間と一緒にやってみたい、というのが、今回の申請内容です。
まだまだ、こうした活動をなさっておられる団体や組織がたくさんあると思います。
また、個人でも、こういう活動に参加したかった方々もおられると思います。そういう方は、ぜひ、あいんしゅたいんのネットワーク会員になっていただき、ご一緒に議論を通して交流を深めようではありませんか。
まだ、この申請は採択されたわけではありませんが、すでに、申請書作成を通じて、協力者と議論が沸騰し、メーリングリスト上で交流を始めて、ウォーミングアップをしている最中です。なかなか大変楽しいネット討論が始まっています。
例えば、光の七色のロマンと電磁波の話、それに、ここでも紹介した周山中学校での出前授業から始まった光の屈折の話など…、いえいえ、まだまだ私たちの納得できていない議論があることを、実感しています。
あいんしゅたいんの理事会でも、会議の後に、議論で花が咲き、好奇心あふれる謎ときが始まっています。先日の理事会では、松田卓也理事から、「潮汐力」・・海面の高さが変わる干潮や満潮が起こる原因になっている力ですが、この説明について議論がふっかけられ、みんなでワイワイ議論をしました。こんなことはよくわかっていると思う人もあると思いますが、実は、これ、あのノーベル賞をもらったファイマンでさえ、間違った理解をしていたらしいです。(松田さんによると、アメリカのウィキペディアで疑問が提出され、それで松田さん自身も確かめたらしいです)。ちゃんと考えて詰めていなかったのでしょうね。また、「雑音を消す」機器が出回っていますが、消えた音のエネルギーはどこへ行ったのか、というような議論もふっかけられました。それって気になりますねえ。そればかりか、「経済物理学というのはどういうことを目標にしているのだろう」といった、議論もでてきます。
- こうした、多彩な仲間の集まる楽しい交流の広がりを、理事の中だけで議論を閉じておくのはもったいないなあという話になりました。ネットワーク会員の間で議論を共有し、その中で新しい発見をしていきたい、学校の先生も、科学に興味を持つ子供も大人も、一緒になって科学の新しい発見を共有してみたいなあ、と夢が広がっています。そのなかで、面白い議論について、まとめた形で、このブログ上で皆さんにお伝えするのはどうかなあ、といった計画も、今、進行中です。
- 皆さん、こういう議論や、それを教材に仕上げることに興味をお持ちの方は、ぜひ会員になって議論に参加してくださいね。会員には、いろいろな種類があります。自分に適した会員種別でご参加くださるとうれしいです。