2024年10月05日

日本学術会議in京都(ブログ その140)

来る12月22日、京都で「日本学術会議in京都」が開かれます。
といっても、「日本学術会議って、それなんですか?」と若い人は言います。「学者の国会ですよ。昔は学会の選挙で学術会議員が選ばれていたんだけど、2004年からは学会が推薦する方式に、そしてその後、現会員が後任の会員を選ぶ方式に変わったのよ。学会の利益代表になるというのが理由のようだけどねえ。」

学術会議が生まれたのは、1948年7月。
当時は、政府に影響力を持った権威のある会議だっただけでなく、科学技術の将来計画について議論を進め、日本の科学政策について建議や勧告をして、大きな影響力を持っていました。
しかし、政策決定の場が学術審議会(1967年)、そして2001年には総合科学技術会議が発足して、実際の予算を動かすのは、これらの組織に移ってしまって影が薄くなったのは事実です。
それでも、日本で純粋に分野を超えた科学者の集まりはこれだけです。痩せても枯れても、時の風潮に惑わされず、純粋にアカデミーの世界で真理を追究し、科学と社会との関係を真正面から考え、科学倫理を貫く場として、この学術会議は大切な存在です。
そこで、若い世代や市民にも、もっと身近に学術会議を感じてもらい、共に歩んでいきたいということで、今回地方巡業(?)を始めようということになったそうです。それが「地方学術会議」です。
そして、なんとその1回目の開催地として京都が選ばれたのでした。
現在、日本学術会議会長でもあり京大総長でもある山極壽一ゴリラ先生が、山田啓二前京都府知事や学術会議近畿地区代表幹事である伊藤公雄先生とご一緒に、「日本学術会議in京都」の企画の呼びかけ人になっておられます。
「伝統的文化・芸術という点で、京都が日本を代表する場所であることは明らかです。ここには現代の新しい動きとともに、西欧思想とは異なる古くて新しい文化もまた今なお息づいています。」と趣意書にありますが、この京都で、伝統文化・芸術と現代の科学・学術の出会いをめぐって、今市民と一緒になって科学者が議論することは、とても意義深く、ココロオドル企画だと思います。詳しくはこちらをご覧ください。

さて、この第二部では、伝統産業に加えて、京都や先端産業などの複数テーマを設けた分科会方が開かれます。その第1分科会のお世話役を、京都の中で生まれたNPO法人あいんしゅたいんの私が引き受けることとなりました。  

第二部:第1分科会 16:30~18:00 
京都市民にとっての科学・学術

やんわりしていて新しがりや、好奇心の強い京都人、ここに市民の力で作った初の医学校ができ、日本初のノーベル賞をとった湯川先生が、初の共同利用研究所を作りました。そして、今年の物理ノーベル賞は異分野の成果をつないで新しいものを作ったこと、知っていますか?こんな町で、子供たちが実験教室を大学生や大学院生のお兄さんやお姉さんに教えてもらい、子供を持ったお母さんたちが市民と仲良く議論するおしゃべりの会をもっています。そんな経験を交換し合います。あなたも何かやってみたくなりませんか?イノベーションを起こしてみませんか?

 京都は、表面はやんわりいけずするという面もありながら、議論を徹底的にすると いう気風や、権威に追従しない伝統的な反骨精神があふれた街です。古いものを大切にする伝統がありながら、新しい動きをいち早く受け入れる街でもあります。
こんな伝統を振り返りながら、若者と古手が意見を取り交わし、未来を創造するエネルギーを分かち合い、異分野を結ぶネットワークが広がる集まりにしたいと思います。
本庶さんの「基礎科学を大切に」という発言も含めて、目先の現象や利益だけに目を奪われず、より広くより遠くを視野に入れた展望を持ちたいものです。

この分科会では、まずいくつかの科学分野をピックアップして、極微の世界、素粒子や、広大な宇宙の誕生と進化を探求してきた心意気、そして人間社会とかかわる医療の世界での先進的な営みにあふれたモノづくりの歴史を振り返り、現代の科学の最先端の取り組みをノーベル賞にちなんで話してもらいます。さらに、京都大学のすぐ近くで繰り広げている実験教室や、女性たち、ニワトリグループから生まれた画期的な取組み、そして親子理科実験教室やゆりかもめチームの活動などをご紹介して、ご一緒に、この京都でもっともっと素晴らしいネットワークを作っていこうというエネルギーをもらいたいと考えています。老いも若きも、小学生でもいいのです。そして、男も女も、自由闊達に議論し合うことによって、明日からの元気をもらおうではありませんか。

問題提起(5分 質疑応答2分)

1.京から全国へ伝搬した西欧医学の衝撃波 藤田晢也(ルイ・パストゥール医学研究センター)

明治維新の始まりのころ、多くの負傷した兵士を収容していた京都の養源院に領事館付きのイギリス人医師だったウイリスが招かれて、その鮮やかな外科的手術にカルチャーショックを受けた京都人たち。彼らは、政府の後押しもないのに、お寺さんや花街から寄付を集め、民間主導で医学校を作ろうと動き出した。京都はこんな歴史があります。この経緯とその伝統がどう受け継がれているか、話していただきます。

2.基礎物理学研究所:共同利用研究所の精神と分野横断的挑戦 佐藤文隆(京都大学名誉教授 NPOあいんしゅたいん名誉会長)

湯川ノーベル賞受賞の影響の最も大きな成果は「共同利用研究所」という自由で闊達、しかも分野横断的研究の拠点を作ったことです。この中で、宇宙の謎を解き生命物理を切り開いて世界に誇る成果を出してきました。こうした精神が息づくと新分野への挑戦を可能にしてきました。対等平等で自由闊達、批判精神旺盛な科学者の共同研究所の存在がどんな役割を果たしてきたか、振り返ります。

3.光をめぐるイノベーション・・・今年のノーベル賞にちなんで 草場哲(京都大学理学部大学院D3)

2018年ノーベル物理学賞の受賞対象となったChirped Pulse Amplification(チャープパルス増幅法)とはどういうものか、ちょっとややこしい名前ですが、この仕事はいろいろな関連分野の英知を集めて新しい技術を作り出し たものです、の解説をしていただきます。今や新しいモノづくりは、まさにこのようなイノベーションなのです。たくさんの人々が見つけたそれぞれの分野の素晴らしい発見・発明が関連しあって新しいものを作り出す典型的な例なのです。次はどんなイノベーションが、京都のベンチャーにつながってくるか考えながら解説してもらいます。

4.多様性をイノベーションに繋ぐ試み 企業と科学者の連携 鈴木和代(JSPS研究開発専門委員会委員長)

京都の一角で女性がランチ会で自由にしゃべる場を創ったら、古手と若手がお互いにネットワークを作り世代の壁を越えて、様々な取り組みを始めた。その1つが市民フォーラムであり、もう一つが学術振興会に新しく設置された委員会です。ここでの取り組みの一端をご紹介します。

5.子供たちと一緒に科学する 市民と科学 ゆりかもめの試み 中川寛治(京都大学理学部大学院M2)天羽悠月(中学生)

京都大学の近くで始めた知的あいんしゅたいんが中心に取り組んだ子どもたちの科学普及活動に参加した子どもたちとそれを指導した若者たちからその様子を紹介してもらいます。

**** フロアとの自由な議論 58分******

問題提起の時間はパネラーには申し訳ないのですが、少なくして、 皆さんと十分に何でも、ご遠慮なく議論できる時間をたくさんとりました。 パネラーへの質問も、ご自分の言いたいことも、皆さんに聞きたいことも、 大いに語り合いましょう。