2024年10月12日

寄付の話(ブログ その188)

今回はNPOあいんしゅたいんにいただいた寄付のお話です。

そもそも、非営利団体であるNPOの経営というのは大変で、出発するときは熱意にまかせて、財政的な将来像は考えずに使命感から始める場合が多いのがNPOです。

我があいんしゅたいんも、まずは物理学でドクターを持った優れた人材が職がないという状態を憂えて、何とかしたい、いわゆる「ポスドク問題」がきっかけでした。

かつて科学技術立国と言われた日本が、科学技術の発展に必要な人材を生かしていないことに対して何とか人材活用の道を広げたいという思いから始まったのです。
若い人だけでなく今は(自分がそうなっていて痛切に感じたことでもありましたが)シルバー人材も、もっと活用すべきであることを視野に入れようとしてきました。

そんな中で、創立間もなく起こった福島原発事故に遭遇したのです。
「湯川博士は、原子力委員会から退いてその後どうなったのか」という声に、素粒子原子核研究者としての責任を感じたことも大きかったのです。あれから私自身も放射線の生体影響の研究に飛び込み、かれこれ10年になります。

この間、ホームページを通じて皆さんにネットワークを広げてきました。当初事務所を我が家にしていたのですが、公的仕事が増えていく中で、京都大学小山田研究室との共同研究という形で研究会や議論のできる場を作っていただき、さらには、「京大ベンチャーズ」の仲間入りもさせていただきました。
しかし、京大の次期計画との兼ね合いで、出ていかざるを得なくなり、大学の外に根拠地が必要となったのです。結構資金が必要になります。事務的な仕事も結構あります。やはり資金がないとやっていけません。

そうなのです。NPOを運営していくのは最初の熱意だけでは続けられません。公的な資金を獲得するといっても、対象は、たいてい大学や研究所のような公的な機関に限られた場合が多く、NPOが申請できる資金は限られていました。
それでもそういう可能性を探してこれまでJSTなどの企画に申請して続けてきました。趣旨を理解していただき会員になった方がたにも、さまざまな支援をしていただき、感謝の気持ちでいっぱいです。

こんな中、最初の大口の寄付をいただいたのが中西真由子先生で、100万円の寄付をいただいたこと、そしてそれを科学教育普及活動に使わせていただいたことで、我があいんしゅたいんの科学普及活動の基盤づくりができたのでした。

実は彼女の伴侶であった故中西健一さんは京大素粒子研究室(湯川研)の後輩で、彼とびは私が愛知大学に勤務していたころに、非常勤講師として授業を受けもっいただき、いろいろな企画を考えたり交通流理論や環境問題の論文を書いたりと、ご一緒に様々な取り組みをしました

真由子さんは、教育学のご専門で大阪教育大学にお尋ねしたこともあり、理科教育にもアドバイスいただいた方でした。
おかげで科学教育の問題に取り組むことができ、今もその活動を続けています。

中西健一さんの関心は幅広くいろいろな問題をほんとによく議論しました。彼は、素行通流理論の研究会で知り合った長谷先生に声をかけられて静岡大学の助手(任期つき)になり、祖の研究室のポストを返却しなければならないのを知って自ら退職願を書いたのでした。そのため失業保険も受け取れなかったのです。
世間知らずだったせいもありますが、解雇してもらった方がよかったのですね。その後また、愛大の非常勤講師としておっ所に仕事をしました。
そんな折、研究室によく出入りしていた三重大学の亀岡先生が「三重大学で手伝ってみませんか?物理のできる人が生物でもほしいのです」と声をかけていただき「三重大学生物資源学部に努めるようになって、すぐにその実力を発揮して確か、果物に赤外線を当てる実験でいろいろな工夫をして計測でいい仕事をし、助教授にまでなって将来を楽しみにしていました。
せっかくの機会をいただき、これからというときに、彼は肺がんを患いあっけなくあの世に行ってしまいました。

そのあと福島原発事故が起きたのです。中西さんがおられたらきっとご一緒に議論し、私も視野をもっと広げられたのになあ、今いてくれたらどんなに頼りになるだろうと何度も思ったことでした。
中西夫妻が関心を持って頂いた科学教育の基礎がこの資金で固められたことは今でもとても感謝しています。

その後も、多くの方々がいろいろな形で、寄付をいただいていますが、こうしたことに気を配って下さる方がおられることをとてもありがたく思っています。

こんな高額でなくても、好奇心が高くいつも世の中の動きをしっかり見つめておられるTさんは、熱心科学の議論を続けて、いつも私たちを引っ張っていただいています。

先日も、こじんまりした勉強会(これもご近所の方が提案下さり開いたのですが)の感想に、「今日は、大変興味深いお話をお伺いする機会を頂戴し、ありがとうございました。美味しいケーキと珍しい枝豆まで頂戴し、孫のような小学生さんともご一緒できて、大変楽しい時間を過ごさせていただきました。幅広い世代の集まりで、それも面白く感じました。」といって下さり、また、別に「哲学と科学」の会を出口先生におねがいしたときもきてくださいました。
そしてこのときおいつも寄付、「先日の勉強会は、参加費が設定されていませんでしたが、あいんしゅたいんの会費から謝礼が用意されていたようでしたし、場所を使わせていただいて、機器・飲み物等のご用意をしていただいていて、有難く存じております。わずかではありますが、寄付をさせていただけると申し訳なさが軽減されます。お手数おかけしますが、手続きをよろしくお願いいたします。」と言ってこられ、気を使っていただいていることに、とても感謝したい気持ちでした。

かえって、少しでも会費をお願いした方がいいのかな、気を遣わしてしまったなあなどと思うこともあります。

「親子理科実験教室」と「おもしろ算数塾」を合わせると合計156回を数えています。これは有料で解説しているので、ほんとは資金援助があればと思う事はよくあります。NPOは常に人材確保と資金確保が最大の課題であるとどの団体もおっしゃいました。