なつかしの愛大:糸野さんとの交流2(ブログ その201)
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作成日 2025年5月24日(土曜)09:30
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作者: 坂東昌子
愛知大学で文系学生相手の授業では、学生たちの創造力に感心することがたくさんあった。特に今でもよく来てくれる学生のほとんどは、教養ゼミで一緒に取り組んだ学生たちである。
教養ゼミは当初、専門学部の先生方が、@酔うようにゼミができるのか」と言って反応もあって、初めてのことだったので、心配されるような状況だったが、教養のみんなで専門に移る前に一般的なテーマでいろいろ学生たちが議論できる場があってもいいのではという熱心さに押されて成立したかもであった。
この教養ゼミがなかなか面白く充実したものだった。坂東ゼミは、みんなに「ネアカばかり集まってますね」と言われたが元黄な学生たちだった。初めからそうだったのか、ゼミの仲間が面白かったのでみんなネアカになったのか、どちらかなとも思うが・・・・・。
そのゼミの1つのテーマに、「理科嫌いの調査を使用」を取り上げたことがあった。その内容を考え、仕上げまで持っていくのに、とうとうゼミ生と研究室で徹夜したことがあった。
愛大では、そんなに遅くまでいる人はほとんどないので、夜中の12時を過ぎると消灯となるのに、まだ点灯しているので、心配して門衛さんが見に来られたこともあった。朝、みんなで帰途についたが、「ゼミで徹夜したのは初めてで面白かった」と言ってくれた。そういうゼミを経験したことがなかったらしい。
このような楽しい坂東ゼミのゼミ長に選ばれた1人が糸野さんだった。断っておくが私はゼミ長だけが偉いのではなく、ほんとはいい仲間、協力できる人が一番素晴らしいのだといつも言っていた。
その年はエネルギー問題や環境問題を議論したように思う。単にゼミで話し合ったり勉強するだけでなく、積極的に関連する機関を訪問したり、ネットで聞き合わせをしたりと結構積極的にどこにでもアプローチしていた。
ちょうどそのころ、私の京大大学院で同級だった百田弘さん[1]が核融合の研究をされていたので、お話を聞いたりしたことを思い出す。この頃は当時立ち上がっていたトカマク計画に私自身も批判的であった。
糸野さんは、早速、原子力発電の仕組みを検討し、核分裂のほかに核融合というのがあり、この方が放射線廃棄物が少なくて済む場合があること、効率的だということを知って、勇敢にも、岐阜県土岐市の核融合科学研究所にまで出かけて、調査してきた。そして、ゼミレポートを書いた。それは、仮想の「有限株式会社 BANDO」設立文書で、今見てもなかなかの出来だ。このレポートが残っていたので、それを紹介する。
神納レポート 
ところで、その後百田さんは「日本では実現しそうにない夢」だということで、ちょうど宇宙開発に乗り出したアメリカにわたってしまった。その後どうなったのか、時に思い出して、懐かしい。確か、ビデオも作って宣伝していたのになあ、と思う。
糸野さんはレポート(2003年)だけでなく、自分のお子図解で月の土地を買ったそうだが、果たしで月の土地の所有権はあるのかな・・と今も不思議に思っている。
あれから、もう29年たった今、こうして再び糸野さんと楽しく集える私は幸せ者だなあ、とつくづく思う。
あとがき
糸野さんは、次のように言ってくれた。
月のヘリウムの話は半分本気で半分は当時の学生さんが面白いと思う題材を選んだのですが、先生が覚えてくださっていたことの方が驚きでした。そういうことを考えて発表できてしまう、その時先生の講義は大講義室でかなりたくさんの生徒さんが座る中での発表だったのも印象的に残っています。あと50年もしたら現実になるんでしょうね(わくわく) |
コメント:核融合については、D+ He3反応は時思ったほど簡単ではなく、実現の見通しは立っていない。核融合反応を起こさせる温度が、約100–150百万K(TDに対して約500百万K (DHe)とけた違いの超高温で、まだまだ到達できるものではない。CHATGPTに聞いてみた。
結論;D-³He核融合はクリーンで理想的だが、³Heの供給問題と超高温プラズマの制御がネックとなり、現在の技術では実用化の見通しが立っていない。
ということであった。百田さんは今頃どうしているのかなと懐かしい。どなたか知っている方がいれば聞いてみたいものだ。
とはいえ、私自身は、現在のトカマク方式についても批判は持っていたが、最近青森県両県のエネルギー支部を見学して、新たな発見があった。1つは技術の先端を懸命に追及する際、当初の目的が達成される場合もあれば、そうでない場合もある。しかし、目標に向かって科学技術者の真摯な取り組みの過程で、思わぬ新たな発見やイノベーションが伴う場青が多い。国際規模の加速器開発では、それに伴って様々な新技術、例えばナノ加工や構造解析、地球・環境動態研究、放射線医療、核種分析のイノベーションなど、多くの副産物を生み出している。エネルギー開発部門の科学技術者がバイプロダクトも大切にしながら開発を進めておられ姿に接して感銘を受けた。と同時に、膨大な費用を使って新しい技術に挑戦する方々が、市民の理解を得ながら社会に還元する姿勢を持っておられことにも心を打たれた。その姿勢が、市民の理解を得ながらともに社会の発展のために協力できる原動力だと思うこの頃である。
[1] 百田弘氏 核融合科学研究所名誉教授
https://dl.ndl.go.jp/view/prepareDownload?itemId=info%3Andljp%2Fpid%2F10451399&contentNo=1
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E6%A0%B8%E8%9E%8D%E5%90%88%E7%82%89
2015年2月17日 於:核融合アーカイブ室、インタビュー時間:4h
インタビュアー:4名記録:アーカイブ室資料整理番号:100-14-01(希望者に配布可)