2013年 新年のご挨拶(ブログ その97)
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2013年1月16日(水曜)12:37に公開
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作者: 坂東昌子
「お義母さん、髪を自分でカットされました?」新年の朝、そう言われてしまいました。
孫たちも「へんやーヘン!」と大笑いする。「わかるかな?暇がないのではさみでチョキチョキ・・」
そういえば、忙しかったなあ。お正月の1日から、艸場さんや影山さんと、「放射線データ集 ―人体への影響を正しく理解するために―」の構想についての打ち合わせをしました。正しく知ることが生きる力につながる、そんな思いのこもった高関心層向けの本の企画が動き出したのです。3・11以来、「低線量放射線検討会」で勉強してきた仲間の艸場さんが編集長です。影山さんは昨年、京大ウイルス研で博士をとり東北大で仕事中、お正月は京都に帰省中と連絡が入ったので、「一緒に仕事やらない?」と声をかけたというわけです。お正月1月1日なら、ということになり、艸場さんがワインとおせち料理を引っ提げてやってきました。4日には、教員免許更新の新しいテキスト「電磁気お役立ちメニュー」の仕上げのために、松林・高見両先生と集まりました。KAGAC(E-learning方式による教員免許状更新)の教材として、今まであいんしゅたいんは、「お義母さんと語る環境問題」「子供と考える資源エネルギー」「風景の物理」を開講していますが、また1つ増やそうというわけで、作成中なのです。6日は福島おひさまネット(FON)の伊藤・土田の女性たちと集まりましたが、この時は何とお抹茶を持ってきてお正月気分を味わいました。その間をぬうようにして、原稿書き、それになんと、部屋の片づけを連日いたしました。
実は、この研究室も、建物全体の耐震工事が始まるので、1月末には全部引き上げることとなるのです。引越の段取りと片付けを、お正月中にめどを立てないと、と焦っており、毎日可視化実験室にきて荷物の整理をしたのです。小山田研究室のもの、あいんしゅたいんのもの、実験道具や資料など、より狭い事務所へ運ぶので選り分け、処理するのです。片付けていると、つい思い出がよみがえります。この研究室での仕事も、この1月でちょうどまる3年になるなあ、たくさんの思い出があるなあ、たくさん勉強会や研究会をしたなあ・・・・。
私たちNPOが、今まで共同研究室として使わせていただいた情報メディアセンター北館の地下にある「可視化実験室」(通称 秘密研究所!)は、小山田教授と共同研究(「可視化プロジェクト」と「大学科学教育の普及」を柱にした研究課題)を組んで居候をさせていたところです。小山田研究会に参加したり、全学共通教育学生シンポジウムに協力させていただいたり、学生とのゼミ、親子理科実験教室、大人の科学教室などの科学普及活動も企画実行しました。3.11以後には、震災後の科学講演会シリーズ、東日本大震災情報発信ページで交流しながら、講演会に熱心に参加された高関心の市民も加わって「低線量放射線検討会」でご一緒に勉強を続けてきました。さらに昨年から、京都在住の福島からの避難者といっしょに県外避難者の健康調査の取り組みやその中での勉強会が集中的に行われています。(最近、忙しすぎて、低線量放射線検討会にとって代わって福島おひさまネットワークFONの勉強会のご報告が遅れていますが、勉強会は持続的に行っています。やっと一息ついたので、このあたりのご報告をこれからしていくつもりです。福島からの避難者との交流は、人生にとって最大の感激をもたらしたのですが、これについては、ここで簡単に報告するには、まだまだいっぱいありますので、それは新しくホームページにコーナーを作って報告します)。東日本震災を契機に始まった低線量放射線検討会は、こうして思わぬ方向へ発展していったのですね。
いつの間にか、「秘密研究所で議論したい」という方々が増えてきました。「ついでの折にはぜひおいでください」という呼びかけで訪問下さった方々もたくさんになりました。「ここにくるとほっこりする」と言われる。コーヒーがわかせ、故郷からの学生さんたちのお土産、手作りのケーキなどお菓子を一緒に楽しみ(いつもあるとは限りませんが)、みんなでシェアしています。
それよりも何よりも、ここの最大のご馳走はそこで交わされる議論です。「あそこへ行くといつも新しいことを学んで帰ります」といてくださる人もあり、異分野の人との交流は、私のように後期高齢者になっても「ああ、こんなことがあったのだ」という新鮮な発見がありますね。
例を1つ2つ・・・・。あいんしゅたいん名誉会長の佐藤文隆さんが、「数学は凡人も科学できるようにした」といわれたことがあります。「へえー?みんな数学嫌いで困っているのに、なんで?」と思ったのですが、考えてみれば、小学校の時、鶴亀算だの旅人算などとやっている間は、ひらめきで推理するしか答が出せなかったのですが、代数を学ぶと、「なんや、誰でも当たり前にやれば答えが出るやん」となります。筋道立ててやれば必ず答えがわかる、これって本当は素晴らしい事なんだと今更ながら納得しました。佐藤さんのお話にはいつもハッとさせられるのですが、佐藤さんの直感力と分析力のすごさは今も衰えないなあ、と感心しました。また、松田卓也さんにプレゼンを見てもらった人はたくさんいます。ここに来た人は、プレゼン力が上がります。論文の書き方やレポートのまとめ方、ここではなかなかの達人が育っているような気がします。
そんな知的人材のネットワークが、ここ3年の間に、その伝統が根付いてきたということです。ありがたいことです。こうして、「秘密研究所」はネットワークを広げ見識を高めるたまり場になっています。あいんしゅたいんが京都大学の中で、科学教育と最先端研究のネットワークの場として果たしてきた役割は大きかったのではと、いまさらながら振り返って、自画自賛しています。
今度の基地は、この研究室からごく近いところで、本部キャンパスの東側の道路沿いにあります。白い家なので「ホワイトハウス」という愛称がいつの間にかついてしまいました。愛称は、秘密研究所から、今度はホワイトハウスです!2月中旬には、新しい事務所から案内を出すつもりですが、ご一緒に前進しようとする人はどなたでも歓迎いたします!(今まで同様、どうかお気軽にお越しください!)。
NPOとしては、これからは財政的には大変厳しい運営になるでしょう。この難関を突破して、さらに大きなネットワークを広げ、財政的にも安定した運営を続けていくには、相当な工夫と努力を必要とするでしょう。みなさんの温かいご支援を心からお願いいたします。ともに、未来に向かって、前進したいと願っています。今年もどうかよろしくお願いします。
2013年1月16日(遅まきながらの新年のごあいさつです)