2024年04月19日

第12回:「一巡して」by 青山

この「あいんしゅたいん」ブログは,坂東さんと佐藤さん以外の役員が書くものとしてスタートして,はや一巡しました.一通りの自己紹介も終り,これからが本当のブログ...

というところで,さて,何を書こうかと迷いましたが,私は今どきの大学生について書いてみます.私が大学生だった頃からはや30年余り,大学も大学生もすっかり変わってしまって....というのは半分嘘です.ちまたでは学力低下などが言われていますが,私の居る京都大学には相変わらず,元気で勉学熱心な学生が溢れています.

私は理工系学生の主に一回生を対象とした物理の講義をいくつか持っています.そこでは,単に物理を学ぶだけじゃなく,物理,ひいては科学が(受験技術のような)公式の寄せ集めではなく,原理から出発して万象を理解し,説明し,予言すること,実験と理論の行きつ戻りつで理解が進んで行くこと.疑いを忘れず,厳密な議論と数学を駆使して突き詰めることで真理へ迫り,そこで科学が初めて成立すること...などなどを知って欲しくて,講義しています.そして,それに対する学生の反応は敏感です.

特に4月の初回の講義では,学生の皆さんに「これからの日本の学問,産業,社会を支え,作るのは皆さんだ.そのために,大学でとにかく必死で勉強してほしい.」とお願いします.本学の理学部では昔から自分たちで自主ゼミを組織して,どんどんと先へ先へと勉強を進める学生たちが毎年いますが,それについても触れて,我々教員がそれをサポートすることを述べます.それに答えるかのようにこちらを向いている瞳がどれもキラキラと輝いていること!実際に,次の講義からは,講義の後に,何人かの学生諸君が先の方まで勉強していて出てきた良い質問を持ってきりなぞします.そんな講義の後は,いつも深い喜びに満たされます.

また,一回生からアイビーリーグの大学へ勉強の場を移す学生が出たり(京都大学にとっては損失ですが),今日は(祝日だけど)今から,ある国際的なスクールへの参加について相談しに学生が研究室にやってきたりします.みな素晴らしい若者たちです.

Billy Joel の "Lullaby (Good night my angel)" をご存じでしょうか?そこでは彼が自分の赤ちゃんに語りかけるように,

"Someday your child will cry and if you sing this lullaby
Then in your heart there will always be a part of me"

と歌います.私には子供が居ないので,この歌詞が美しいだけに,そこに悲しいものを感じてきました.でも科学者・教師は科学の発展させ,それを人類の共通知へと昇華させることで永遠の命を得られます(よね?).

"Someday we'll all be gone 
But lullabies go on and on
They never die that's how you and I will be".