「あいんしゅたいん」でがんばろう 11
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2009年6月09日(火曜)06:08に公開
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作者: 佐藤文隆
「理科教材に400億円」
5月28日に「夏はなぜ暑いのか」(岩波書店)という本が出たが、最近は次の本の原稿に追われぎみである。そんな中でも5月25日には「あいんしゅたいん」と基研が共同でやる「交流会」でしゃべる準備をし、日本版次世代GPS準備を勉強した。おふくろと兄貴の法事で山形に帰ったついでに少し旅行し、帰って6月2,3日と“けいはんな”の国際高等研で研究会「天知人」に出席した。2000年有珠山噴火の時にテレビでよく顔を見た岡田弘氏(北大名誉教授)の「事前に勉強しておくととっさの行動も違う」という話には説得性があった。
最近、慌しい生活になっているもう一つの理由が高校教科書「物理基礎」の編集会議でよく週末に東京に行くからである。高校教員との会議なので日曜日とかになる。休憩時の彼ら同士の話題を聞いていると例の麻生内閣バラマキ予算と批判されている第二次補正で小中高の理科教材費200億円がつき慌しく各学校が何を購入するかの申請に追われているようであった。多くの補助金がそうであるように同額を自治体や学校法人が負担することが条件だから、合計で400億円の理科教材費がいっきに購入されるのである。各学校百万円オーダーの申請をするようだ。公立でも県と区市町村の負担率や半額負担を拒否してる自治体もあって悲喜こもごものようである。
興味をもって調べてみると理科教材費というのは通常にも予算化されているがここ数年は13億円で推移していて、理数教育重視を受けて本年度当初予算では20億円にアップしていた。それまで額からいうと今回のバラマキは15倍である。この予算は平成9年までは45億円弱で推移していたのだから13億円台に落ちていたのが異常だったと言える。ともかく“サブプライムローン騒動”が400億円の理科教材を日本の学校にふらすことになったのである。
慌しく発表された指導要領の改訂で約40年ぶりに理科の授業時間数が大きく増加する。小学校は55時間で16%の増、中学校では95時間で33%の増である。これは移行措置で最終的にはもっと増えるのかもしれない。なにしろ1971年当時小学校の理科授業時間数は628時間であったが2008年度には350時間にまで減っていたのである。中学校でも420時間から290時間へと減少していた。
理科教材の充実が叫ばれだしと大きな理由のひとつがこの理科の授業時間増であるようである。増えた時間で充実した授業をやるにはオーラルだけではだめだということである。そして現場の教師には理科教材を用いた授業への訓練も必要になってくるから、機材を購入すれば終わりという問題ではない。大学での理科教員の養成にも反映していく必要があろう。
それはともかく不況にあえぐモノづくり業界に理科教材の400億円の神風が吹いたようなものである。「そういう会社はどこなんだ?」と興味があるかも知れない。意外と京都が根拠地なのである。島津理化は日本での理科教材の草分であり現在も研究機器と教育機器を手広くやっている。平成21年度指導要領改訂に合わせた実験キッドをもう売り出している。それから京都科学がある。ここは人体モデルなどの模型や標本に特化しているようだ。さらに堀場製作所は環境測定の化学機器などに力を入れているようだ。リテンという宇治にある会社もある。この他に大阪・近畿に4,5社、東京にやはりそれぐらいあるようだ。関西に多いのが特徴である。
ひろくこの業界の実情を知るには業界団体である「日本理科教育振興協会」のHPを覗かれることを勧める。日本は理科教材の開発・製造では世界的だそうであるが、少量しか出荷しないので儲けは薄いらしい。ぜひアジアにも販路を拡げて日本のお家芸にして欲しいものである。ノーベル賞の数も増えた科学立国としてのステータスを世界の理科教育にも役立てていくのは大事なことである。