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ララ・ファビアンとセルジョ・ラマ

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以前にも述べたが、私の持論は歌手は歌がうまくなければならない、声が良くなければならないというものである。女性歌手の場合には、さらに美人であれば言うことがない。

前回紹介したララ・ファビアン(Lara Fabian)はまさにその条件を満たしている。彼女はさらに文字通り息が長い。これも前回紹介したキャサリーン・マクフィーは歌がうまく美人でもあるが、息が長く続かないのである。だからアンドレア・ボチェッリの歌について行けなかった。ララ・ファビアンなら大丈夫であろう。さらにララ・ファビアンは表現が劇的である。非常に感情を込めて歌っている。

ララ・ファビアン(1970-)はベルギー人の女性歌手で父はベルギー人、母はイタリア人である。現在はカナダの国籍をもっている。英語、フランス語、イタリア語で歌ってい。さらにスペイン語、ポルトガル語、ロシア語、ヘブライ語、ギリシャ語、ドイツ語でも歌うことができる。声域が非常に広いリリック・ソプラノである。

前回はファビアンの歌の中でアダージョとカルーソを紹介した。私はそれしか聞いていなかったのだが、たまたま別の曲も聴いて、なかなかたいしたものだと思ったので紹介したい。そのひとつは「Je suis malade(私は病気)」という恋の曲だ。フランス語のシャンソンである。内容は2年前に恋人と別れて(生き別れ?死別?)それ以来、自分は半病人であると言った内容の歌だ。歌詞はフランス語と英語訳が字幕にある。ファビアンは最近はアカペラ部分をもっと劇的に演出しているが、私はこちらのほうがよい。

作曲はセルジョ・ラマ(Serge Lama, 1943-)というフランスのシンガー・ソングライターである。この曲はラマ本人のほかに、ダリダ(Dalida,1933-1987)も歌っている。こちらも大物だが、表現を比べてみるのも興味深い。ちなみにダリダは1954年のミス・エジプトだそうだ。ダリダは恋の悩みで自殺した。そのことを知り、ダリダの歌を聴くと、ファビアンとは違うなにかを感じるであろう。

さらに調べると作曲者のラマ本人とファビアンがデュエットしているものがある。正直言って、ラマの歌には感動しない。ファビアンとのデュエットは、ファビアンの良さを殺している。最後の息比べは完全にファビアンの勝ちである。しかしラマは歌手としては並であるが、作曲者としてはたいしたものである。

そのラマがファビアンのために歌っている「Je t'aime(愛してる)」という曲である。ラマが歌い始めると、ファビアンはウルウルしはじめて、最後は大粒の涙が一筋。ここに至ると歌は上手い、下手だけの問題ではない、心だ。これが歌の力であろう。ラマの歌を聴いて、ファビアンは何を思って涙したのであろう。

ちなみにラマはなんと1943年2月生まれ、私と同年の69歳ではないか。フェビアンは奇しくも息子と同年の42歳である。これなら私もまだできる!!なにが?? 女を泣かすこと??

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ララ・ファビアンがその「愛してる」を、ソ連の元大統領のゴルバチョフの80歳の誕生日に、ロンドンのプリンス・アルバート・ホールで歌っている。こちらは堂々と歌っている。

ちなみに、私はゴルバチョフは偉大な人物だと思っている。あの巨大な共産帝国ソ連をほとんど独力で崩壊に導いたのだから。もちろん彼はロシアでは人気がない。しかし西欧では人気がある。だから誕生日をロンドンで祝ってもらえたのであろう。皮肉は別として、普通、個人の力は大したことがないと、人々は思うのだが、世界を動かすこともできるのだ。それは政治家だけではない。たとえばアップルのスティーブ・ジョブスも世界の方向性を決めたのである。個人の力を侮ることはできない。

   
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