「教員免許講習教材づくり」のこぼれ話(ブログ その12)
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2009年5月14日(木曜)03:52に公開
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作者: 坂東昌子
考えてみれば、ブログも11回かいたのですね。
その1 ノーベル賞の効果と危惧
その2 小林マコちゃんの思い出
その3 オバマ政権の科学技術補佐官にジョン・ホールドレン前パグウォッシュ会議事務総長が就任へ
その4 教員免許更新講習会を経験しました!
その5 周山中学校 寺嶋先生と出会う記
その6 周山にて・・光と仲良くなろう
その7 女性研究者のネットワーク
その8 原康夫さんと小林益川理論
その9 木谷宝子さんとの出会い・・教員免許更新講習会を通じてのネットワーク
その10 大人のための科学教材への思い
その11 看護学への期待
まず、ご報告です。せっかく皆様のご協力を得たのに、「大人のための科学教材」の申請は、採択に至りませんでした。理由は「今回は、より上位に評価される企画提案があったから」と書いてありました。まだまだ思いが伝わらなかったことを知りました。ご参加くださった組織や個人の皆さんは大変魅力的な方々だったのですが・・・・。期待にこたえられず、残念です。
しかし、その後も、この企画に関心のある方々が、増えており、連絡をとって、今後も、連携を深めていこうという声も上がっており、すでに、今、できているネットワークを大切にしながら、アイデアを練ってこの構想を発展させて再挑戦したいと思っています。どうかご支援とご指導をよろしくお願いします。
さて、今日のお話は、これから始まる教員免許更新講習の電子教材づくりのこぼれ話です。実は、ついこの間、2009年4月24日、教材の最後の仕上げが少し残っており、「お母さんと語る環境問題」の吹き込みのために、金沢に行ってきました。そのこぼれ話です。
日帰りでの強行スケジュールでした。到着後すぐ、録音室に入り、吹き込みをはじめ、午前に2コマ仕上げました。全部で7コマですから、あと5コマが午後に回りました。
このお昼に、お昼ごはんを、教材づくりの責任者である鈴木恒雄さん(アインシュタインの理事でもあります)とごいっしょにと、事務所に行きました。そしたらツネゴン(昔からこう呼んでいるので失礼!)が、レシーバーをつけてにやにや笑っているのです。
「何やっているの?」
と思わず聞いてみました。
そしたら、なんと、できた教材を、鈴木さんは、すべて自分自身で講義をきいて、しかも、コマごとのテストまでやっているのです。
で、
「何がそんなに面白いの?」
ときいたら、 なんと「論語を読む」という教材を聞いていたというのです。
「え?漢文でしょ?」
と一瞬びっくり。
そもそもパワーポイントで、縦書きの漢文なんてうまくかけたのかなあ・・なんて思っていたら、この縦書きでうまく書けるようになるのに、鈴木さんたち苦労したらしいですが、ちゃんとできるようになったのだとか。
まあ、それはいいとして、漢文などというしかめっ面しいものを何でそんなに面白がっているのだ?そう思ったのですが、
「いやいや、話が現代問題やジョークがいっぱいあってねえ?」
「そんなに?」
「そうだよ。『これはちょっとオフレコだけど』・なんていいながらしゃべっているところが、面白いんだよーーー」
へえ・・・。そんなんあり???
そこで私は、はっと気付きました。実際の授業をするときには、途中で雑談とか、それにちなんだこぼれ話とか、いっぱい話します。それなのに、今吹き込んでいる教材では、相手がいないこともあり、ついつい、格式ばった話になってしまっていました。私のことですから、それでも多少は、ずこけた話もしているし、横道にそれた話もあるのですが、授業に比べた断然少ない。
授業をしていて面白いのは、相手の顔を見ながら、反応を確かめて、面白がったり、へえーというような顔をしたりすると、ついつい、わき道にそれることだよネエ・・。
そこで気がついて、お昼からは、今までとトーンを変えて、雑談とか、ちょっと口の悪いコメントとか、相手の顔を想像しながら、入れてみました。そんなわけで、「お母さんと語る環境問題」は、4コマ目から7コマまで、ちょっと違った雰囲気になっているような気がします。どう違うか楽しみです。さてさて、どういうことになっているか、反応を見てみないとわかりませんが・・・・。
対面でない授業の難しさはこういうところにあります。たぶん、役者でも、演奏家でも、スポーツのエクジビションでも、観客と、心と心が響き合って、演技ができるのでしょう。授業もそういう面があります。
特に、私は、長らく夜間の講義も受け持っていました。その講義になると、いろいろと言いたいことが出てきて、自分でも満足のいく授業ができたなあ、と思い出します。それは、夜間部の授業では、社会的経験を積んだ方々が、いろいろ好奇心をもってくれて、授業の内容が広がっていくのを感じたからです。そういう満足感をよく味わいました。そんな時は疲れを忘れてしまうのですねえ。
実を言うと、「子供と一緒に語る資源エネルギー」の教材の方は、私としては、結構新しい発見があった教材です。何かというと、鉱物資源については、最近になって結構興味を持ち、いろいろと調べたり、考えたりしました。特に、鉱物資源は、細菌、初めて取り上げ、特許との絡みまでいろいろと考えました。
鉱物資源の中では、いうこの地球上に最も多い資源は、鉄です。そのわけも、原子核物理学から説明できる話ですが、それはさておき、この鉄と、人類がどう付き合ってきたか、そこにはいろいろと発見が多くありました。ですから、製鉄法の歴史と、アメリカの鉄道時代の最盛期における特許との絡みは、なかなか、面白いです。
それに、それに・・、レアメタルの最近の動きも、リサイクルという視点から、なかなか興味深いのです。特に、日本は、使い古しの携帯電話、電気器具に、貴重なレアメタルの資源が詰まっています。鉄腕アトムで、すでに、この資源をどう活用するかで、「人工鉱山」構想が出ていたこと、それに遅れて(?)、研究者が結構早い段階で人工鉱山の構想を提案していたことも、驚きでした。
鉱物資源の地球上での物質循環は、いわゆる化石燃料という地下資源の地球上での物質循環とは、ずいぶん違う事情があることを知り、驚きと発見の連続でした。自分で新しい発見をすると、伝えたい気持ちが盛り上がってくることも事実です。それで、「お母さんと語る資源エネルギー問題」では、そういう話を盛り込んでいました。それともう一つ、この吹き込みは京都でやったのですが、そのときは、一緒に教材を作ってきた、当NPOの参与でもある、前さんと山田さんが、ずっときいていてくれましたので、やっぱり多少臨場感が出たのです。
ところが、今回は、金沢で、録音室に入って一人で話しかけるので、なかなか臨場感が出ません。
ひょっとして、録音室でよく音楽を吹き込んでいる風景がドラマで出てきますが、こう形で歌を吹き込んだり、ディスクジョッキーで語っている人って、どういう風に相手の顔が見えるのかなあ、メディアの向こうにある顔が見えなければ、プロとは言えないのかもしれないなあ、などと、初めての経験に、考えることの多い1日でした。
金沢で、現場を見て思ったことは、点検のためとはいえ、専門外の級材まで、鈴木さんが、毎日毎日点検されているのに、すごい忍耐力がいるなあ、と最初は思っていましたが、ひょっとして、教材を結構楽しんでいるのかもしれない・・、などとちょっとうらやましい様な気持ちになりました。
作った教材がどのような評価を受けるのか、そしてそれを、どのように改善していけるのか、ある意味で「進化する教材づくり」みたいな発展があるかもしれないと、楽しみにしています。
計7コマを、休みもあまりとらず、一挙にやり終えて、鈴木さんが駅まで送ってくださいました。車の中で、「やっぱり、受講者の先生方と顔を合わせ、語り合える機会を、うまく作っていきたいなあ」といったら、鈴木さんが「そういう企画を、「あいんしゅたいん」で企画したらどう?そういう企画に対して、文科省の助成制度の計画があるようだよ」といっておられました。要するに、講義を終えた後で、こういう機会を作って、ネットワ―クをひろげる、そんなことができそうなのです。そういう交流が、広がれば、私たち、当NPOの願う「研究者と先生方のネットワーク」がひろがるのではないかなあ。できれば楽しいなあ、などと夢をふくらませて帰途につきました。