科学交流セミナー(ブログ その32)
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2010年7月04日(日曜)12:54に公開
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作者: 坂東昌子
ブログは、1週間に一度はアップしようと決めておりましたが、1つだけ余分にアップします。来る7月10日(土)に行われる 科学交流セミナー(科学カフェ:京都との共催)についてです。これについてのご質問もきておりましたので、説明を付け加えさせてただきます。
そもそも、科学交流セミナーは、これまで基礎物理学研究所とNPO法人 知的人材ネットワーク・あいんしゅたいんの世話人(国友浩・佐藤文隆・坂東昌子)で企画して行ってきました。ここでは、科学の話題を取り上げて、市民をも含めて、広く領域を超えた研究者たちが交流する場にしようと、希望しておりました。これもきっかけは、NPOあいんしゅたいんの理事会での議論です。理事会で集まると、「気候変動は、どこまで分かっているのかな」「飛行機はなぜ飛ぶかは、どこまでわかっているのか」「光の波長が長いほど屈折率は小さいのはなぜか簡単に説明できるか」「法律の中での科学の位置づけ」「近代的な測定機器はどこまで発展しているのか」「潮汐力のメカニズム」など、議論が沸騰することがよくありました。理事会は、しばしば議論の場となりました。
そこで、こうした議論をもっとたくさんの方と共有したい、と、坂東(理事長)と佐藤(名誉会長)で、基礎物理学研究所に申し入れて若い人たちとも一緒になって議論する場を設けてはどうか、と話がもりあがり、これがきっかけとなって始まったものでした。このとき、基研側から、「こういう議論の場は願ってもない企画なので、基研と共催でやっては?」とご提案があり、セミナー係である国友さんが世話人に加わってくださり、基研側の世話人役を引き受けてくださったのです。これまで科学交流会が続いてきたのも、国友さんの適切な処理のおかげでもあります。セミナーについては、当NPOの検索(キーワード「科学交流セミナー」)で様子が分かっていただけると思います。
また、2010年2月11日は、科学交流セミナーの特別企画として、「科学普及・科学教育がどうあるべきか~理科好きの入口から次のステップへ~」では、沢山の方々が議論に参加くださり、ネットワークが広がりました。この日の午前中には、子供たちのための 理科実験教室(校長先生はSEネットの川村先生)を開催しました。この時、お子様を連れて参加いただいた京都大学理学部中家教授ご夫妻が、「パナソニックホールは講演には向いているけど、こういう実験教室は、みんなが周りに座れるような場所でコミュニケーションをとりやすい場所がいいですね」と言われたのです。そして、もうすぐ理学部にセミナーハウスができることを知りました。「こういう行事は、大学としても行う必要がありますので、もし企画される場合には、協力しますよ」と言ってくださったのです。親しみのある笑顔の中家先生が、ご協力いただけることで、今回の「親子理科実験教室」への弾みがついたということでした。親子理科実験教室は、また別の機会に裏話も含めてお話します。SEネットとは協力のネットワークがこうしてできたのです。
さて、これ以後、科学交流セミナーは中断していました。それは、京都府の委託事業が始まって多忙になり余裕がなくなったためでもありました。しかし、科学普及の活動のネットワークはそれ以後も広がっています。科学カフェとの連携は、すでに1年前、科学カフェ講演会60回記念パーティを合同で開催させていただいた時から始まっていました。その絆は、今年度の、「地域の科学舎ネットワーク」の申請に際して、さらに深まりました。残念ながら、これは、不採択になりましたが、これをきっかけに、ネットワークを強めたいという思いは大きくなっていました。
せっかく始めたセミナーが諸事情のため開催が途絶えておりましたところ、折も折、科学カフェ京都の伊藤さんが、私どもの共同研究室を訪問してくださり、それでは科学交流セミナーと合同で開催してみよう、という話になったのです。より広い層の方々(市民・大学生・高校生など)を対象として、科学カフェ京都と共催で企画するのは、科学交流のネットワークの輪を広げるのに適した企画です。間に入って国友さんがお世話下さり、今回開催にこぎつけました。そして、これからも、基礎物理学研究所の所員に興味を持っていただく話題が出てきたら、基礎物理学研究所で開催することを申し出ることとして、とにかく、始めてみようということになりました。今後、時宜に応じて、科学カフェの定例会を基礎物理学研究所で行う機会が増えてくると思います。どうぞよろしくお願
いします。
今回の講師は、諸熊先生は、1934年生まれ、理論化学ご専門で、ノーベル賞を受賞された故福井謙一先生の研究室で育った方です。アメリカ合衆国エモリー大学名誉教授でもあり、京都大学福井謙一記念研究センターリサーチリーダー、国際量子分子科学アカデミー前会長など、国際的な活動もなさっておられます。また、2008年度 学士院恩賜賞を受賞されています。早くから計算機を駆使した研究日本での計算化学の発展に貢献された方です。分子と分子の間の相互作用が、どのようにして分子の反応に、影響を及ぼすのか、が目に見える形でみえるようになると、理解も進みますし、直感力が働くようになります。分子反応ダイナミックスの可視化という意味でも、なかなか興味深いお話になると思います。福井謙一先生のそもそものフロンティア軌道電子論の伝統を受け継ぐ大仕事なのでしょう。
ここで、科学カフェの事を紹介しておきます。科学カフェ:京都は、大学名誉教授を中心に2004年に設立されたNPO法人です。ここでは、双方向的講演会は月1回、寛いだ雰囲気のなかで、各方面の科学者の講話を聞き、自由に意見を述べ、質問する機会を提供しています。講演を聞くだけでなく、参加者と一緒に議論や意見交換を行っていますが、質疑応答の時間をたっぷり取っているので、活発な議論が展開されています。その意味では科学交流セミナーと似た雰囲気があります。すでに例会は60回を越しており、 科学(15)・技術(14)・生命科学(13)・社会科学(11)など、多方面の分野の講演会を開いています。科学カフェ趣旨書には、
「現在、世界の科学技術の進歩には目を見張るものがあり、その現状を把握することは、それを専門とするものでさえ戸惑うほどである。まして一般の人々には、極めて困難であると言わざるを得ない。いっぽう科学技術は、豊かで健康的な人間社会の構築と、持続可能な発展のために、極めて重要な要素の一つであるとの認識は、世界の国々が既に共有するところである。また、科学技術は単に物質世界への貢献のみならず、芸術や文系諸学問とともに、人類文化の両輪を担い、人類の世界観・人間観に革命的な変化をもたらしてきた側面を持っている。このように我々の生活に大きな関わりをもつ科学技術について、国民自身がよりいっそうその素養と感性を身につけることは、強く推奨されるべきである。それにもかかわらず、昨今の日本においては、科学離れ、理科嫌いの傾向が強まりつつあると指摘されている。我々の開催する「科学カフェ京都」は、この現状を打開する一助として、専門家の話と、それに対する一般聴衆の忌憚のない意見開陳、質問を双方向的に交わし、議論を戦わせることによって、相互の理解を深めようとするものである。なお、この科学カフェは、単なるサークル活動をして位置づけられるべきでなく、英国で始まり、フランス、イタリア、米国、シンガポール、ブラジルなどの諸国で展開されつつある、2004年版科学技術白書でも紹介されているCafe Scientifique運動の考え方につながる国際的運動の一環として位置づけられるべきである。」
とあります。この趣旨は、私たちの目的とも合致するものです。
これからも、科学カフェの定期的な講演会の中で、物理に関係するテーマなどで、あいんしゅたいんとの共同企画とし、基礎物理学研究所で開催する機会を増やしていきたいと思います。どうそ、興味のある方は、ご遠慮なく、講演会に参加してください。