2024年10月04日

第38回:「『大人の科学』としてのサイエンス・ニュース・ネットワーク」by 保田

サイエンス・ニュース・ネットワーク(SNN) も先週で18回を配信しました。準備期間1ヶ月であわただしく始まり、とにかく目先の取材・制作・配信をこなすように走ってきたプロジェクトですが、何とか序盤をこなすことができました。
企画チームの皆さん、取材先や制作でご協力いただいた皆さんに、心より感謝いたします。

この1ヶ月はまた、科学技術と社会との関係が大いに注目される時期とも重なりました。政府の「事業仕分け」の影響です。

私たちの社会が科学技術無くして成り立たないことは誰もが認める一方で、現実には科学技術と一般社会とのギャップはどんどん広がっているようです。

身近な例では、私の親の時代は自動車を運転する人は必ず自動車の整備の知識も持ち合わせていました。自動車が故障したら自分で対応しなければならないからです。
ところが今は技術が進歩して自動車の故障が減り、一度もボンネットを開けたことがない、と言う人もめずらしくありません。自動車がどのようなしくみで動いているのかも知る必要がなくなりました。

科学技術の進歩自体が科学技術と一般社会のギャップを拡大し、そのことが、ある時は科学技術を「神話化」し、ある時は「亡霊化」しているように思えます。
科学技術に対する理解が非科学的になっている。そんな笑えない矛盾があちこちで起きています。例えば「ニセ科学」の蔓延もそのひとつです。

科学技術と社会のギャップに気づき、それらを埋める活動は数多く行われています。さまざまな実験教室や科学イベント、セミナーなど、これほど科学啓蒙がさかんな時代は過去になかったかもしれません。
これらの活動は非常に意味のあることですが、単に科学技術の入口で終わるとさらにギャップ(誤解)を拡大することにもつながりかねません。

と、ここまで書いたことが、坂東昌子さんが主張する「大人の科学」の必要性の背景であることが、最近やっと私にもわかってきました。

環境・エネルギーや核の問題、生命科学と医療など科学技術と一般社会が深く関係せざるを得ない状況が訪れている今、その間にある壁を取り払い、より広く「真理を探究する」活動が望まれています。それが「大人の科学」なのだと思います。

サイエンス・ニュース・ネットワークも「大人の科学」と言う大きなプロジェクトのひとつとして、科学と一般社会のギャップを少しでも埋める活動にできれば、と思います。

NPO法人・知的人材ネットワークあいんしゅたいん理事、株式会社ズームス(XOOMS)代表 保田充彦