第64回:「猫と語る -その5 最近,うれしかったこと」by 青山
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2010年8月21日(土曜)05:57に公開
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作者: 青山秀明
ここ数日,数時間しか寝れない日が続いている.
昨夜も3時に起きて,しばしの介護.それがようやく終わってベッドに戻ったがしばらく寝れないでいると,ふと枕元に猫のドロンコが来て,微笑んでいる.
私「ドロちゃん,なに微笑んでいるの?まるでチェシャー猫みたいだよ.」
ド「あはは,うまいこと言うね.でも私は実体があるよ.」
私「どれどれ~,確かに.ふわっふわだけど.(笑)」
ド「アッキー,にゃにか楽しいことあったの?眠りながらニコニコしてたから可笑しかったよ.」
やれやれ,どうやら私はいつのまにか,假寝んでいたらしい.それもニコニコしながらで,猫に笑われてしまった.
私「そうかな,いや,その通りだ.人生は楽しい,私は幸せだ,いや絶対にそのはずだ.(泣)」
ド「まあ,そう無理しないで.最近あった楽しいことを三つ,言ってごらんなよ.」
やけに上から目線の猫だが,実際,ベッドで寝ている私を見おろしているので仕方が無い.
私「う~~~んと,そうそう.私が顧問をしているブーメランサークルがね,ローマの世界大会で活躍してきたよ.日本Bチームに3名参加して,1人はブラジルチームに助っ人で参加.さらにね,その一人,総合人間学部3回生の深澤景光君はカイリーで世界チャンピオンになった.」
ド「カイリーって,にゃに?」
私「簡単に説明すると『ブーメランの元になった、カンガルーにぶつけて失神させる道具。戻らず、直線的に飛行するように作られている.』ということだ.私も一本持っているけど,力学続論の講義で見せるだけで投げたことはないんだ.」
ド「ふ~~~ん,人間は色んな変なことして遊ぶんだね.」
私「猫には分からないかもね.とにかく,私は名前だけの顧問だけど,元気な学生達が楽しく練習を積んで,世界に出て友達を作り,活躍しているのは素晴らしいね.感動した!」
ド「よかったね.じゃぁ二つ目は?」
私「本の出版だな.Cambridge University Press から "Econophysics and Companies: Statistical Life and Death in Complex Business Networks" という本を,研究仲間の藤原さん(ATR & 京大),池田さん(パリ在住), 家冨さん(新潟大学,本NPO副理事長),相馬さん(日大)と共に出したよ.アマゾンではしばらく前から ここ に載ってたけど,実物がようやく今日着いて,感激した!」」
ド「アッキーは日本語の本は何冊か出してるけど,英語では初めてだね.」
私「うん,初めてだよ.これは実によい経験だったよ.特に,Cambridge の出版社としての本気の本作りの姿勢は驚くほどだったよ.外部委託のreaderによる徹底した読み込みと,こちらとの何回ものやりとり.それでできたと思ったら,最後にまた別のreaderがついて,これまでの修正のチェックや洗い直しがあってね.こちらで一旦完成したと思った原稿をずいぶん直した.おかげで,当初の原稿からずっと良くなったと思うよ.日本の出版社では考えられない高度のレベルの作業だったよ.」
ド「よかったじゃない.で,次の本は?」
私「うん,ガンバ!」
ド「じゃ,三番目のハッピーは?」
私「やっぱり論文の執筆だな.これは,さっき言ってた本の執筆メンバー5人に東大の経済学者吉川洋さんが加わった景気循環の論文なんだ.第1原稿に,二人のreviewersが,好意的だけど長くて詳細なレビューを付けてきたんだ.それで,ここ数カ月間かけて,新しい計算をしたり,論文を書き換えたりと作業してきた.reviewersへの返事だけでも12ページにも及ぶよ.先日は吉川さんが京都に来てくれて,皆で全部の最終的な確認をして,論文を送りだした.長い大変な作業が一段落して,よい論文になったと思う.これぞ,生きてる意味があるように思うね.」
ド「アッキー,良い学生,良い仕事,良い仲間に囲まれて,幸せ一杯だにゃ~.」
私「うん,その通りだ.その通り~.Zzzzzz~.」
と,いつまにか私は眠りについた.そう,猫のドロンコにはいつも助けられている.
感謝してるよ,ドロちゃん.