2024年10月08日

第70回:「教員免許状更新講習制度のこれから」by 鈴木

民主党が昨年夏の衆議院選挙で大勝し、支持団体の日教組の意向もあり、始まったばかりの教員免許更新講習制度は、今にも廃止されそうだといわれました。実際、昨年秋、中央教育審議会に、法案化に先立ち、教員免許制度の見直しの審議を要請し、現在審議が始まっております。2年目の今年度は、該当する教員は、廃止されるかもしれないと受講を先延ばした人も多いと聞いております。講習を開催した大学も今年度は、多くの大学で講習の開設を取りやめたり、回数を減らしたりしました。しかし、参議院選挙で民主党は大敗し、参議院では多数を失いました。講習制度を廃止するには、法律の改正が必要です。

教員免許制度に関する法律は、衆議院で3分の2以上を占めていない限り、参議院での可決もないと改正はできません。免許更新制度を作った自民党と公明党は、参議院で廃止法などの法律改正には賛成しないということは、予想されます。「あいんしゅたいん」も参加している金沢大+東京学芸大+愛知教育大+千歳科技大の4大学によるeラーニングによる教員免許状更新講習(KAGAC)の中心メンバーでもあり中央にも詳しい教育行政のT先生に11月の初めにお聞きしたところ、民主党もこの状況で急いで廃止法案などをだすことを止めたといわれています。

それでは、今後どうなることが予想されるでしょうか?やはりT先生によれば、中教審は、今年度中に改正の大枠を示し、答申は2~3年後くらいで、法案がその後出されて、新制度の法案が可決されても(このこと自体が、これからの国会の力関係によりますが)6年間はかかる。その後新制度の下での学生が卒業するのに4年かかる(6年制にしなければ)ので、これから10年は継続されるであろうということです。10年に1回講習を受けるという制度を始めた以上、始まれば10年間は公平性から廃止はできないだろうと推測していましたが、どうもそのようになりそうです。新しい教員養成制度ができても、教員が10年に1回ぐらい大学で講習を受けるという制度が、すべて廃止されるかどうかも不明です。強制的にしかも自己負担で受講させるということには、多くの反対がありますが、教員が10年に1回大学で講習を受けて新しい科学的知見を学ぶことは、大変素晴らしいことだと思います。大学教員にとっても、初等中等教育に関心を持って共に考えていけるためにも、望ましいと思います。

ところで、文科省の調査によると、来年1月末までに講習を履修し、各教育委員会に認定を受けなければならない85,487人(全都道府県合計(推計))の内5100名位がまだ受講していないと推測されています。多くの大学が、受講回数を絞ったこともあり、現時点で開講している大学は、昨年に比べて大幅に減っており、これらの教員の方は、大変苦労されているでしょう。各県の教育委員会も指導を強めていると言われています。

KAGACは来年度も、原則的には今年度と同様に開設する予定です。今年度は、夏季のみの開設で1500人ほどの受講生でしたが、来年度はことし様子見した1万人くらいが受けるので、大幅に増えるだろうといわれています。KAGACは、3000人程度を目安に行おうとしているようです。しかし、最終試験を管理する事務が大変ということで、今年度と同様に夏季のみ(初年度は夏季と秋季の2回開催で合計約2000名の受講生)としたいと言われています。事務作業を中心的に担ってきた金沢大学の事務局では、教員に代わって、学生部が、これまで以上に表に立って進める体制を作ってきています。事務側の意向が大きくなってきています。eラーニングのいい点は、年間何回でも開設でき、最終試験管理などは受講料さえ入れば、専門業者に外注すればいいのですが、積極的に全国に打って出るという姿勢が事務主導では消えているのが残念です。