2024年10月05日

「親子理科実験教室ジュニアアシスタント研修会」へのお誘い(ブログ その112)

こんな声が、お正月を越した頃に届きました。

「とうとう(春には)中学生になります。でも、親子理科実験教室にもう行けないと思うとさびしいです。学校では、いろいろ質問すると嫌な顔をされるのですが、ここではみんな喜んで教えてくださるので楽しいのです」

親子理科実験教室の生徒さん、そうか、もう中学生になるのだ、と感慨深い思いでした。ここを卒業された方を、「あいんしゅたいん同窓生」という意味で、「ジュニアあいん」、略して「J-Ein」と呼ぶことにしましょう。

J-Einのみなさまに、ずっと科学の好きな大人に育ってほしいなあ、いつも「なんで?」といって目を輝かせている子でいてほしいな、その好奇心をいつまでも持っていてほしいなあ、と願っている私たちにとって、このままお会いできないのは寂しいな、何かネットワークが続いていくような、そんなつながりのある企画ができなかなあと考えました。

そこで、2014年度は、「科学普及員研修会(JEINET)」の中で、「親子理科実験教室ジュニアアシスタント研修会(通称:JEINETジュニア)」というジュニアコースを開催することにしました。

実施研修の具体的日程については、既にホームページに掲載していますが、これは親子理科実験教室で協力してもらっているアシスタント・ティーチャー(AT)のお兄さん・お姉さんたちのアシスタントとして、実験教室に、今度はちょっとだけ成長してお手伝いをしながら参加するという形です。
これを続けていくことによって、当あいんしゅたいんが前から設けているJEINETとしての資格を得られるという制度です。

小学生を対象にした実験教室に出て、中学生で何か得るところがあるのかなと思うかもしれません。しかし、実は、当あいんしゅたいんの実験教室は、小学生を対象としながらも、中学校にならないと出てこないような内容にまで、無理のないように工夫しながら踏み込んでいます。小学生でも理解できて、しかも、ほんとは、もっと大人になってもっと理解が進むような事柄を、必要とあれば取り上げるという方針を取っているのです。学校では「中学生のことだから教えない」と言われている内容でも、もっと理解が深まることは積極的に取り上げるようにしているのです。

例えば、私たちは、原子の概念はもっと早くから取り入れてもいいと思っています。昨年の親子理科実験教室で、「宇宙をつくるものアトム」をご紹介しましたら、皆さんとても興味を持ってくださいました。

例えば、水は水分子からできているのですが、この分子が密に詰まっているのがスカスカで個体、もう少し余裕があるのが液体、そしてスカスカの中を飛び回っているのが気体と、同じ分子でも密度によって性質が異なることを理解できます。そして、温度が高くなるということは、分子が活発に動き回ることだと理解していると、水も温度が高くなると水分子が暴れ出し、水の中から飛び出すのだということで、お湯が沸いて沸騰していくのイメージが具体的になります。

仮説実験授業の板倉聖宣氏は、「原子という言葉を、なぜ小学生には使わないのか」と言われているが、同感である。今年の春夏コースでは、「アトムの冒険」と銘打ってちょっと原子の話から電気というものを理解してみよう、と松林先生が今、構想を練っておられます。

原子分子の話で、電気磁気を理解すると大変面白いと思います。それは中学生になっても、学ぶべきものがたくさんあるはずです。

角山先生の植物の話も、植物の最小単位が細胞であること、その細胞は、さらに構造を持っていて、それは原子が集まって大きな分子(高分子)になっていることが多いこともつながってくるでしょう。

ある親子理科実験教室に通っていたお子さんは、大人の科学教室に、おかあさんといっしょに出てこられました。前から、小学生なのに原子のこともよく知っておられるので、お母さんに「どうしてこんなことを知っているのですか」と聞いたら、「あ、あの子は、漫画を面白がって読んでいます」ということでした。面白いなあと思っていたのですが、まあ「漫画で覚えているだけでは、きっとまだまだ本質はわかっていないかなあ」とか半信半疑でした。

ところで、この教室で、今問題になっている食料品の放射能を図って「食品1kgあたりに**ベクレル」というのを、今な福島では毎日の生活で必要になってきて測っています。既に、福島に住んでいる人たちは、放射線が体に与える影響はシーベルトという単位で見当をつけるので、どれくらいのシーベルトの線量を浴びたかを知るためには換算しなければなりません。ベクレルからシベールとへの換算の計算は、インターネットなどを見ても色々と解説が出ています。そこで、大人の科学教室では、担当した間浦指導員(当時、京大理学部2回生・今4回生)が、練習問題を出してみんなに計算する課題を出しました。

ここでは、ベクレルという単位が出てきます。これは、原子1つが放射線を出すときの単位で、「1秒に1発放射線を出すのが1ベクレルです。「1秒1発1ベクレル」と覚えましょう、というわけです。一方、シーベルトは放射線が当たると、どれくらいのエネルギーで体にぶっつかって体の中のものを破壊するかを表す量で、いわば被害の大きさをああ合わす単位ですから、日常、私たちが感覚でわかるような量です。例えば水1gの温度を1度上げるのに必要なエネルギーがおよそ1カロリーです。まあ普通の感覚の量ですね。

ところが、この量を原子の感覚での量に変換するには、どういう違いがあるかということを考えてみましょう。

今、水18gを今取り出しますと、この中の水原子の数は、およそ、

600000000000000000000000個

もあるのですね。え?いくつ0がついているの?と思うじゃないですか。0が23個です!

じゃあ、水分子1つの質量はいくらになるでしょうか?

18g÷600000000000000000000000=0.0000000000000000000003

となって、今度はべらぼうに小さい量になります。水18gの中にある水分子の数は、およそべらぼうに大きな数なのです。

ですので、水1g持ってくると

33000000000000000000000個

あるってことです。こんなとき、0の数を間違いそうになるでしょう。ややこしいので、普通はこれだけ集まったものを一つにまとめて1モルと言います。中学生になるとこの、1モルというのが出てきます。中学校の先生には、「1盛り」と覚えればいいと教えてもらった、と孫がいっていました。

1モル→1盛り

と覚えるのだそうですね。つまりひとかたまりと勘定するのです。まあ、こんなことは、今度また、親子理科実験教室の、春夏コースで、電気磁気の話を、「アトムの冒険」という形で教えてくださる松林先生が、丁寧にお話されるかもしれません。ともかく、中学生になると、習うのだな、と思いました。この基礎を知っていて、親子理科実験教室を手伝っていると理解が深まると思いますよ。「ものは原子からできている」という基本を知っていれば、いろいろな世の中の現象が、もっとよく理解できるはずなのです。

そこで、今回、J-Einのみなさんに、今度は親子理科実験教室のお手伝いをしながら、中学校で学ぶ1モルの話なども、出てきた時に少し親しみが持てるようになればいいな、などと思っています。

生物の角山先生も、DNAを抽出するおつもりのようです。生物では、細胞というものから生物を組み立てるとわかりやすいですね。

ところで、ついでながら、エピソードです。

何度も親子理科実験教室に通ってくださる皆さんに、いろいろと驚くことが多くあります。さきほどの大人の科学教室で、原子のような小さな量がでてきて、しかも、えいきょうがでるのは、1モルという大きな量なので、頭がこんがらがってしまいますね。まあ、私たちでもついついややこしいなあ、と思ってしまいます。で、私は、お母さんについてきていた、常連の小学校2年生に、

「ややこしいでしょ?0.001などと、0がたくさんついて・・・」

といったら、なんと、

「これ10のマイナス3乗でしょ?」と言われてびっくりしたことがありました。いつも一生懸命来てくれるお子さんなのですが、え?小学校でこんなこと知っているの?

と思ってしまったのです。でも学校でそんなこと言ったら、先生どうされるのかな?嫌がるかもしれません。でも、これを知っているととても便利なんですね。

親子理科実験教室も、今年の夏には50回目を迎えます。科学のすきな大人になってほしいなあ、好奇心の高いJ-Einがたくさん育ってくれることを期待しています。小学校卒業とともに、J-Einのみなさん、アドバンスコースに出て一緒に成長してきましょう。「実験教室のアシスタント」という形で、出席することで、さらにたくさんのことを学んでほしいですね。「自分も自ら教える方になってみる」ことによって、今まで受け身だった理解が一段と進むと思いますよ。